特許第6089660号(P6089660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6089660電動送風機、及び、この電動送風機を用いた機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089660
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】電動送風機、及び、この電動送風機を用いた機器
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/16 20060101AFI20170227BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F04D29/16
   F04D29/08 E
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-270957(P2012-270957)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-114783(P2014-114783A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100117695
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 環
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(74)【代理人】
【識別番号】100115543
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 康男
(74)【代理人】
【識別番号】100154173
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 治郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 純
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 光将
(72)【発明者】
【氏名】早津 守
(72)【発明者】
【氏名】菅野 稔弘
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−236098(JP,A)
【文献】 特開2007−009796(JP,A)
【文献】 特開2004−083822(JP,A)
【文献】 特開平06−323297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/16
F04D 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
該電動機の回転軸に固定されたファンと、
該ファンを覆うファンカバーと、
を有し、
前記ファンカバーは、吸込口と、該吸込口を囲む環状の溝部を有し、
該溝部の内部には、該溝部の壁面に近づくにつれて厚さが増すように表面の断面形状凹形状に窪んだ形状のシール部材が設けられ、
前記ファンカバーは、前記溝部の内部に前記ファンの一部が回転可能に入り込み且つ前記ファンの吸込口端縁部が前記シール部材の表面に接触した状態で前記電動機に固定されることを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
前記シール部材の原料は、紫外線を受けることにより硬化する紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする請求項に記載の電動送風機。
【請求項3】
前記シール部材の原料は、着色されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動送風機。
【請求項4】
請求項1から請求項の何れか1項に記載の電動送風機を用いたことを特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機等の電気機器に用いられる電動送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動送風機は、電動機の回転軸に取り付けられたファンと、このファンを覆うファンカバーを有する。そして、このファンカバーには、空気を取込む吸気口が形成され、この吸気口を囲むように、ファンカバーとの間に隙間を空けて回転自在にファンが配置されている。
このような構成の電動送風機において、動作時に、ファンとファンカバーとの隙間を通り吸気口へと流れる循環流を抑止する為に、ファンカバーの吸気口の周囲に環状のシール材を設け、このシール材にファンを当接させて、上記の隙間を小さくすることで、送風効率を向上させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−208390号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、製品完成が完成した状態では、シール材とファンが強く当接しているので、この状態で運転すると、ファンの回転によりシール材が多く削られ、電動機内部にシール材の削りかすが塵埃として多く放出される。
これにより、このような電動送風機を搭載した機器の内部にもシール材の削りかすが多く放出され、機器内部の汚れの原因となる課題がある。
また、電動送風機及びこの電動送風機を搭載した機器の製造現場では、これらが完成した際に試験運転を行う。この時、上記の削りかすが放出されるので、製造現場で舞う塵埃の原因となる課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、使用に伴う塵埃の放出を低減した電動送風機及びこの電動送風機を搭載した機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためには、電動送風機において、電動機と、この電動機の回転軸に固定されたファンと、このファンを覆うファンカバーとを有し、ファンカバーは、吸込口と、この吸込口を囲む環状の溝部を有し、この溝部の内部には、該溝部の壁面に近づくにつれて厚さが増すように表面の断面形状凹形状に窪んだ形状のシール部材が設けられ、ファンカバーは、溝部の内部にファンの一部が回転可能に入り込み且つファンの吸込口端縁部がシール部材の表面に接触した状態で電動機に固定することで、課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塵埃の放出が低減した電動送風機、及び、この電動送風機を用いた機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る電動送風機を上方から見た斜視図
図2】実施の形態に係る電動送風機を側方から見た平面図
図3図1のX−X断面図
図4】(a)図3における要部Aの拡大図、(b)シール部材が設けられる前の溝部の拡大図、(c)シール部材が設けられた溝部の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1図3を参照すると、電動送風機10は、電動機部20及び送風機部30から構成されている。
本実施の形態の電動機部20は、整流子形電動機であって、一端面側が開口した有底筒状のハウジング21とエンドブラケット22によって区画される空間内に、固定子23及び回転子24が収納される。
【0010】
固定子23は、界磁巻線23aを施した固定子鉄心23bをハウジング21に固定している。また、回転子24は、回転軸24aに嵌着した電機子巻線24bを施した電機子鉄心24c及び前記電機子巻線24bと接続される整流子24dを、軸受25,26により回転自在に支持して構成されている。
ハウジング21の外周壁部には、螺子止めして固定されたブラシ保持器27が取り付けられている。このブラシ保持器27には、カーボンブラシ28が収納されており、バネ等で付勢されて整流子24dの外周面に当設して給電するように構成されている。
【0011】
次に、送風機部30は、エンドブラケット22の上に螺子止めされた固定案内羽根31と、エンドブラケット22及び固定案内羽根31を貫通して伸びる回転軸24aに螺子32によって固定された遠心ファン33と、エンドブラケット22の外周に圧入固定された固定案内羽根31及び遠心ファン33を覆うように取り付けられたファンケーシング34とを備えている。
遠心ファン33は、前面シュラウド33aと後面シュラウド33dとこの両部材の間に設けられる複数のブレード33cからなる。
【0012】
この遠心ファン33が回転することにより送風機部30で発生した気流は、エンドブラケット22に形成した風窓22aから電動機部20内に導かれ、電動機部20内を冷却した後、ハウジング21の外周壁に形成した排気孔21aから機外に排出するように構成されている。
【0013】
次に、図3図4を参照して、送風機部30のシール部材35について説明する。図3は、図1におけるX−X断面図を示す。図4は、図3における送風機部30のシール部35の縦断面の拡大図である。
図に示すように、ファンケーシング34の頂部には、吸込口34aが開口している。この吸込口34aの開口縁は、内部に湾曲したベルマウス部34bとなっている。また、遠心ファン33の前面シュラウド33aの吸込口33bを形成する吸込口端縁部33cは、このベルマウス部34bの背面部となる溝部34dの内側に伸びている。
尚、この溝部34dは、吸込口34aの縁を軸方向に膨出して構成されており、内部に所定の空間が形成された形状を成している。また、溝部34dは、吸込口34aの周囲を環状(リング状)に囲むように形成される。
【0014】
そして、この溝部34dの内部には、吸込口34aの開口縁と遠心ファン33の吸込口端縁部33cとの間の隙間を小さくする為のシール部材35が設けられている。
このシール部材35は、表面の断面形状が窪んだ形状(凹形状)に形成されており、耐熱性、低摩耗性、柔軟性を有する合成樹脂を用いるとよい。
本実施の形態では、シール部材35の原料として、紫外線を照射することで硬化させることができる紫外線硬化性シリコーン樹脂を用いている。この樹脂は、主成分がシリコーンであるので、耐熱性、ヒートサイクル性に優れており、硬化後はゴム弾性を有する硬化物となる。
【0015】
このような樹脂を用いたシール部材35は、次のように形成される。
図4(b)(c)を参照すると、まず、溝部34dの開口が上方を向く状態となるようにファンケーシングをセットし、溝部34d全周に渡ってシール部材35の原料である紫外線硬化性シリコーン樹脂の原料を充填する。溝部34dへの樹脂の充填量は、溝部34dの容積より少ない量とする。
また、この樹脂の原料は、硬化する前は液状であり、ある程度の流動性を有することから、溝部34dの内部で均一の厚さとなるように広がる。
【0016】
この時、樹脂の原料は、溝部34dの壁面34eとの間に生じる界面張力により、壁面34eと接する樹脂の原料の縁側が、壁面34eに沿って引き上げられ、表面の断面形状が凹形状(窪んだ形状)となる。
そして、上記のように、表面の断面形状が窪んだ形状(凹形状)となった状態の樹脂の原料に紫外線を照射して硬化させて、窪んだ表面形状のシール部材35を形成する。
【0017】
この様に各部が構成された電動送風機10は、遠心ファン33の前面シュラウド33aの一部である吸込口端縁部33cが、溝部34dの内部に入り込むことから、シール部材35と吸込口端縁部33cが接触した状態となる。
そして、初期の運転の際に遠心ファン33が回転することで、吸込口端縁部33cにシール部材35の一部が削り取られ、シール部材35と吸込口端縁部33cが、摺接可能な状態となる。
【0018】
この様に構成された電動送風機10が動作すると、遠心ファン33が回転し、ブレード33cは、前面シュラウド33aの吸込口33bから吸い込んだ空気を加速してその外周から吐出する。
この吐出空気は遠心ファン33の流路後段側に位置する固定案内羽根31に回収されて電動機部20側に案内されるが、一部は前面シュラウド33aとファンケーシング34の間に流れ込んで外部の圧力を高める。
【0019】
シール部材35は、遠心ファンの吸込口33b側において、前面シュラウド33aとファンケーシング34との隙間に介在して、この吐出空気が吸込口33bに還流するのを防止する。
特に、溝部34dの内部にファンの一部であるシュラウドの吸込口端縁部33cが入り込んでいるので、溝部34dの凹形状と、シール部材35と、シュラウド33aによりラビリンス構造が形成され、より吐出空気が吸込口33bに還流するのを防止する。
【0020】
また、シール部材35の窪んだ部分は、シュラウド33aの吸込口端縁部33cと接触する部分となる。このように、シール部材35のシュラウド33aと接触することで削られる部分が窪んでいるので、シール部材35が削れる量を少なくすることができる。
これにより、電動送風機内部やこの電動送風機を搭載した機器の内部に放出されるシール材の削りかすを低減することができる。
尚、このような電動送風機を搭載する機器の例として、電気掃除機やハンドドライヤーなどがある。
【0021】
また、溝部34dの壁面に近づくにつれてシール部材35が厚くなっているので、遠心ファン33が回転時に振れて、シール部材を溝34dの幅方向に削った場合でも、吐出空気が吸込口33bに還流するのを防止するシール性能は確保することができる。
また、溝部34dに充填するシール部材の原料である樹脂の量を溝部の容積より少なくすることで、溝部34dの壁面に接した位置に原料と空気の境目がくるので、原料と溝部34dの壁面との間に界面張力を生じさせて窪んだ形状を形成しやすい。
また、シール部材の原料を着色されたものを用いることで、製造現場において、形成されたシール部材の表面形状を確認しやすく、窪んだ形状が形成されているか否かを判断しやすい。
【符号の説明】
【0022】
10 電動送風機、20 電動機部、21 ハウジング、22 ブラケット、23 固定子、24 回転子、24a 回転軸、25 軸受、26 軸受、27 ブラシ保持器、28 ブラシ、30 送風機部、31 固定案内羽根、32 螺子、33 遠心ファン、34 ファンケーシング、34d 溝部、35 シール部材。
図1
図2
図3
図4