(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、舞台照明や演出照明においては照明状態を数100ms単位で制御する要求があるため、DMX512プロトコルにおいては、コントローラから全ての照明制御機器に1回の通信で制御できるように構成されている。しかし、特許文献1の構成によると、照明制御信号が各制御機器の処理回路に取り込まれ、種々の処理を行った後に後段の制御機器に送出されるため、照明制御信号は各制御機器を通過する毎に遅延される。この遅延の蓄積により、操作手段に近い(例えば先頭の)制御機器と操作手段から遠い(例えば最後尾の)制御機器との間の遅延が拡大する。従って、特に、制御機器の接続数が多い場合に、1回の通信において先頭の制御機器と最後尾の制御機器との間で同期が取り難くなり、照明制御上好ましくない。
【0006】
またさらに、同文献の構成によると、各制御機器に入力される信号がその内部回路を介して後続の制御機器に伝搬されるため、電源がOFFの制御機器がデイジーチェーン中に接続されている場合には、その制御機器よりも後段の制御機器のアドレス設定及び照明制御を行うことができなくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、各照明制御機器へのアドレス自動設定を可能としつつも照明制御用の信号の遅延を低減することを可能とする照明制御機器及びそれを用いた照明制御システムを提供することを課題とする。また、このような照明制御機器及び照明制御システムにおいて、デイジーチェーン接続中に電源がOFFの照明制御機器があっても、電源がONの他の照明制御機器ではコントローラからの信号を確実に受信できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の照明制御機器は、通信ラインによってデイジーチェーン接続されるとともに通信ラインからの通信データ信号に応じて対応する照明器具の動作を制御するものであり、通信ラインから受信される通信データ信号に含まれる通信データを出力するレシーバ出力端子、通信データが入力されて通信データ信号を通信ラインに出力するドライバ出力端子、及びドライバ出力端子の出力を有効化/無効化する送信有効/無効化手段を有するトランシーバと、レシーバ出力端子から出力される通信データを受信する受信部、受信部で受信された通信データに基づいてアドレスを設定するアドレス設定手段、及びアドレス設定手段によるアドレス設定前に送信有効/無効化手段に送信無効化信号を出力してドライバ出力端子の出力を無効化し、アドレス設定後に送信有効/無効化手段に送信有効化信号を出力してドライバ出力端子の出力を有効化する送信状態切換部を有する中央処理ユニットを備える。
【0009】
さらに、通信データがアドレス設定データでありかつアドレス未設定の場合にはアドレス設定手段がアドレス設定データに基づいてアドレス設定を行い、通信データがアドレス設定データでありかつアドレス設定済みである場合にはアドレス設定手段がアドレス設定データに対する処理を行わないように構成される。
【0010】
ここで、トランシーバはレシーバ及びドライバを備え、レシーバが、通信ラインに接続されるレシーバ入力端子、及びレシーバ出力端子を有し、ドライバが、レシーバ出力端子に接続されたドライバ入力端子、ドライバ出力端子、及び送信有効/無効化手段としてドライバの動作を有効化/無効化する送信イネーブル制御端子を有する構成とすることが好ましい。
【0011】
また、レシーバ入力端子とドライバ出力端子の間に開閉可能に接続され、制御信号が入力されない場合に閉状態となり、制御信号が入力される場合に開状態となるリレーと、照明制御機器への電源が供給される場合に制御信号をリレーに入力する電源ユニットを更に備える構成としてもよい。
【0012】
またさらに、通信データが新たなアドレス設定を命令するモード移行データである場合に、アドレス設定手段が設定済みアドレスを消去した後に、送信状態切換部が送信無効化信号を出力するように構成されるようにすることが好ましい。
【0013】
本発明の照明制御システムは、通信ラインによってデイジーチェーン接続されたn台(2≦n)の上記いずれかの照明制御機器と、通信ラインに通信データ信号を送出するコントローラを備え、コントローラが、コントローラから見てk番目(1≦k≦n−1)の照明制御機器のアドレス設定データを含むアドレス設定信号を通信ラインに送出した後に、k+1番目の照明制御機器のアドレス設定データを含むアドレス設定信号を通信ラインに送出するように構成される。
【0014】
なお、上記の照明制御機器又は照明制御システムにおいて、DMX512プロトコルに準拠した通信データ信号を用いることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本発明の実施例による照明制御システムのブロック図を示す。照明制御システム1は、コントローラ(以下、「親機」という)2、照明制御機器(以下、「子機」という)3−1、3−2、・・・3−n、及び照明器具4−1、4−2、・・・4−nを備える。親機2を始点として子機3−1〜3−nは通信ライン5を介してデイジーチェーン(数珠繋ぎ)接続され、DMX512プロトコルに準拠した通信が行われる。コントローラ2は専用のDMXコントローラであってもよいし、DMX512プロトコルを実現できるRS485インターフェイスを有するパソコン等であってもよい。なお、以降の説明において、子機3−1〜3−nを総称して、又は任意の1つを指定して子機3といい、照明器具4−1〜4−nを総称して、又は任意の1つを指定して照明器具4というものとする。
【0017】
DMX512プロトコルでは、EIAによるRS485規格がインターフェイスとなり、2線式半二重の通信(片方向通信)、非同期方式、及び250Kbit/sの通信速度が採用される。
図2に、DMX512フレームのデータ部の一例を示す。DMX512フレームはスロットNo.0からスロットNo.512までの513個のスロットを有する。スロットNo.0には開始コードが格納され、スロットNo.1〜No.512には、順にチャンネル1〜512のデータが格納される。格納されるデータの内容には、調光レベル、投影光の色、ゴボ(種板、即ち、投影される模様)、水平移動(パン)及び垂直移動(チルト)がある。
【0018】
例えば、親機2に3台の子機3−1〜3−3が接続され、それぞれの調光レベルが制御される場合には、
図2に示すように、スロットNo.1、No.2及びNo.3にそれぞれ子機3−1、3−2及び3−3の調光データが割り当てられ、他のスロットは未使用となる。また、各子機に複数のスロットを割り当てることもできる。例えば、
図3に示すように、子機3−1〜3−3の赤色、緑色及び青色の光の調光レベルが制御される場合には、スロットNo.1〜No.3、No.4〜No.6及びNo.7〜No.9にそれぞれ子機3−1、3−2及び3−3の各色の調光データが割り当てられる。
【0019】
各子機は自身のアドレスに対応するスロットに格納されたデータを参照して対応する照明器具を制御する。例えば、
図3に示す例の場合、親機2から子機3−1に通信データ信号が伝搬されると、子機3−1はスロットNo.1〜No.3のデータのみを参照し、他のスロットのデータには反応しない。同様に、子機3−2及び子機3−3はそれぞれスロットNo.4〜No.6のデータ及びスロットNo.7〜No.9のデータのみを参照する。なお、各子機はデータの受信に対して応答を返さない。
【0020】
図4に子機3の構成のブロック図を示す。子機3はトランシーバ10、中央処理ユニット(以下、「CPU」という)20、メモリ30、電源ユニット40、及びリレー50を備える。
【0021】
トランシーバ10はレシーバ11及びドライバ12を備える。レシーバ11はレシーバ入力端子11a及び11b並びにレシーバ出力端子11cを有する。レシーバ入力端子11a及び11bは通信ライン5に接続され、レシーバ出力端子11cはCPU20の受信部21に接続される。ドライバ12はドライバ入力端子12c、ドライバ出力端子12a及び12b並びに送信有効/無効化手段としての送信イネーブル制御端子12dを有する。ドライバ入力端子12cはレシーバ出力端子11cに接続され、ドライバ出力端子12a及び12bは通信ライン5に接続される。送信イネーブル制御端子12dは、例えば、イネーブル端子であり、CPU20の送信状態切換部27から制御入力を受ける。
【0022】
レシーバ11では、レシーバ入力端子11a及び11bにそれぞれ通信データ信号R+及びR−が入力されてレシーバ出力端子11cから通信データRが出力される。なお、通信データ信号R+と通信データRとはデータの内容は実質的に同一である。ドライバ12では、送信イネーブル制御端子12dへの入力信号に従って動作が有効化/無効化される。ドライバ12の動作が有効状態の場合には、ドライバ入力端子12cに通信データT(即ち、通信データR)が入力されてドライバ出力端子12a及び12bからそれぞれ通信データ信号T+及びT−が出力される。なお、通信データ信号T+と通信データTとはデータの内容は実質的に同一である。従って、ドライバ12の出力が有効化されている場合には、通信データ信号R+/R−と通信データ信号T+/T−のデータの内容は同一である(なお、入力インピーダンスと出力インピーダンスが異なり得る)。
【0023】
従って、ドライバ12の動作が有効状態の場合には、CPU20の動作にかかわらず、通信ライン5からレシーバ11で受信される通信データ信号がドライバ12から通信ライン5にそのまま出力され、CPU20への入力とは別にCPU20のバイパス経路が形成される。一方、ドライバ12の動作が無効状態の場合には、通信ライン5からレシーバ11を介して受信される通信データはCPU20で終端され、ドライバ12から通信ランプ5には何も出力されない。
【0024】
CPU20は、受信部21、処理決定部22、アドレス検出部23、アドレス処理部24、制御データ抽出部25、照明制御出力部26、及び送信状態切換部27を備え、これらはバス28によって相互にデータのやりとりができるように接続されている。なお、CPU20はバス28によってメモリ30に接続される。
【0025】
受信部21はレシーバ11のレシーバ出力端子11cから出力される通信データ(通信データR)を受け入れる。親機2から通信ライン5を介して子機3に入力される通信データ信号には、新たなアドレス設定モードに移行するための命令であるモード移行信号、アドレス設定用の指令であるアドレス設定信号、及び照明制御用の照明制御信号(
図2及び
図3参照)がある。なお、受信部21に入力されるデータについて、モード移行信号、アドレス設定信号及び照明制御信号に対応する(含まれる)データを、説明の便宜上、それぞれモード移行データ、アドレス設定データ及び照明制御データというものとするが、対応する信号とデータの内容は実質的に同じである。
【0026】
アドレス設定信号のデータ構成例を
図5に示す。通信データ信号がアドレス設定信号の場合には、例えば、スロットNo.0にコマンドとして0x02が格納され、スロットNo.1及びNo.2にそれぞれアドレス上位ビット及び下位ビットが格納され、スロットNo.3以降は未使用となる。なお、通信データ信号がモード移行信号の場合には、例えば、スロットNo.0にコマンドとして0x01が格納され、他のスロットは未使用となる。また、通信データ信号が照明制御信号の場合には、スロットNo.0にコマンドとして0x00が格納されるようにすればよい。
【0027】
処理決定部22は、通信ライン5から子機3に入力される通信データ信号の種類、即ち、受信部21から入力される通信データの種類を判別する。具体的には、処理決定部22は、通信データが、モード移行データであるのか、アドレス設定データであるのか、照明制御データであるのかを判別する。処理決定部22は、判別された通信データの種類に対応する処理を決定し、関連する要素に命令を出力する。通信データがモード移行データである場合には、処理決定部22はアドレス処理部24に、既に設定されているアドレスを消去させるとともにアドレス設定済みフラグをリセットさせ、送信状態切換部27にドライバ12の動作を無効化させる。通信データがアドレス設定データである場合には、処理決定部22はアドレス検出部23及びアドレス処理部24にアドレス設定処理を行わせるとともにアドレス設定済みフラグをセットさせ、送信状態切換部27にドライバ12の動作を有効化させる。通信データが照明制御データである場合には、処理決定部22はアドレス検出部23、制御データ抽出部25及び照明制御出力部26に照明器具4の動作を実行させる。なお、各処理の詳細は後述する。
【0028】
アドレス検出部23は、通信データがアドレス設定データであり、かつ処理決定部22から命令を受けた場合に、アドレス設定データからアドレスを検出する。即ち、アドレス検出部23はデータフレームに記述されているアドレスデータ(
図5では、スロットNo.1及びNo.2)を抽出する。
【0029】
アドレス処理部24は、通信データがモード移行データである場合に、処理決定部22の命令により、メモリ30に記憶されているアドレス設定(設定済みアドレス)を消去するとともにアドレス設定済みフラグをリセットする。また、アドレス処理部24は、通信データがアドレス設定データである場合にはアドレス検出部23によって抽出されたアドレスをメモリ30に書き込むことによりアドレス設定を行うとともに、アドレス設定済みフラグをセットする。なお、アドレス設定済みフラグのリセット及びセットは処理決定部22が行ってもよい。アドレス設定済みフラグが既にセットされている場合には、アドレス処理部24はアドレス設定データに対する処理を何も行わない(無視する)。このように、アドレス検出部23及びアドレス処理部24並びに必要に応じて処理決定部22がアドレス設定手段を構成する。
【0030】
制御データ抽出部25は、通信データが照明制御データである場合に、処理決定部22の命令により、照明制御データの中から設定済みアドレスに対応する照明制御データを抽出し、その照明制御データを照明制御出力部26に出力する。照明制御出力部26は、制御データ抽出部25によって抽出された照明データに従って照明器具4の照明動作を制御する。例えば、
図3のデータ内容において、子機3が子機3−2である場合には、制御データ抽出部25はスロットNo.4〜No.6のデータを抽出し(他のスロットのデータを無視し)、照明制御出力26はスロットNo.4〜No.6のデータに従って照明器具4−2を動作させる。
【0031】
送信状態切換部27は、処理決定部22からの命令に応じて送信有効化信号又は送信無効化信号をドライバ12の送信イネーブル制御端子12dに出力する。即ち、送信状態切換部27から送信有効化信号が出力される場合には、ドライバ12の出力動作が有効化されてCPU20のバイパス経路が形成される。一方、送信状態切換部27から送信無効化信号が出力される場合には、通信ライン5はCPU20で終端される。上述したように、送信状態切換部27は、通信データがモード移行データである場合には送信無効化信号を出力してドライバ12の出力を無効化し、通信データがアドレス設定データである場合には、アドレス設定後に送信有効化信号を出力してドライバ12の出力を有効化する。
【0032】
なお、本実施例では、送信状態切換部27が送信有効化信号及び送信無効化信号(ロー信号及びハイ信号又はその逆)を出力する構成を示すが、送信状態切換部27が無出力(例えば、オープン)の状態でドライバ12の動作が有効化され、送信無効化信号を出力した場合にドライバ12の動作が無効化されるようにしてもよい。また逆に、送信状態切換部27が無出力(例えば、オープン)の状態でドライバ12の動作が無効化され、送信有効化信号を出力した場合にドライバ12の動作が有効化されるようにしてもよい。
【0033】
本実施例では、メモリ30は不揮発性メモリであるが、揮発性メモリであってもよい。メモリ30が不揮発性メモリの場合、一旦アドレス設定が行われた後は、子機3の電源のON/OFFにかかわらず、親機2で管理されているアドレスと複数の子機3のアドレスがずれてしまうことはない。一方、メモリ30が揮発性メモリである場合には、子機3の電源が一旦OFFされた場合(照明制御システム1の使用を終了した場合)にアドレスが消去されるが、本発明による自動アドレス設定を用いれば、次回電源ON時にアドレスを再設定しても手間とはならない。
【0034】
電源ユニット40は制御電源生成部41及びリレー制御部42を備える。制御電源生成部41は、商用電源等の電源供給を受けて、トランシーバ10、CPU20及びメモリ30の制御電源となる定電圧を生成し、その定電圧をトランシーバ10、CPU20及びメモリ30に不図示の配線を介して供給する。リレー制御部42は電源供給を受けてリレー50の制御信号を出力する。本実施例においては、交流電源による電源供給を示しているが、直流電源が供給される構成にも本発明の構成を適用できる。この場合、制御電源生成部41及びリレー制御部42において、整流平滑のための回路が省略される。またさらに、直流電源が低電圧源(例えば12V)である場合は、降圧回路等が省略される。
【0035】
リレー50は双極単投型のスイッチであればよく、制御信号が無い状態では閉状態となり、閾値を超える制御信号があると開状態となる。リレー50は、B接点スイッチ等であればよく、制御信号が無入力の状態では通信ライン5の同極性ライン同士を閉状態(接続状態)とし、制御信号が入力されるとそれらを開状態(遮断状態)とする。即ち、入力スイッチSWがオフされて子機3への電源供給が遮断された状態においては、リレー制御部42からリレー50への制御信号は入力されず、リレー50は閉状態を維持する。一方、子機3への電源が供給された状態においては、リレー制御部42からリレー50に制御信号が入力され、リレー50は開状態を維持する。
【0036】
この構成により、デイジーチェーン接続された複数の子機のうちの一部の子機の電源がOFFの状態であっても、その子機が閉状態のリレーによってバイパスされるので通信ライン5に流れる通信データ信号がその子機によって遮断されることはない。即ち、親機2からの通信データ信号は、電源がONされている最後尾の子機3まで確実に伝送される。
【0037】
図6に子機3のCPU20の動作のフローチャートを示す。なお、子機3の電源は既にON(即ち、リレー50は開状態)であるものとする。
【0038】
ステップS10において、受信部21が通信データを受信する。
ステップS15において、処理決定部22は受信された通信データがモード移行データであるか否かを通信データのコマンド(スロットNo.0)から判別する。通信データがモード移行データである場合には(ステップS15、Yes)処理はステップS20に進み、通信データがモード移行データでない場合には(ステップS15、No)処理はステップS45に進む。
【0039】
ステップS20において、アドレス処理部24はメモリ30に記憶された設定済みアドレスを消去し、アドレス設定済みフラグをリセットする。
ステップS25において、送信状態切換部27は送信無効化信号を出力してドライバ12の動作を無効化し、通信ライン5から受信される通信データ信号をその子機3で終端させ、後段の子機との経路を遮断する。
【0040】
ステップS30において、処理決定部22は通信データがアドレス設定データであるか否かを通信データのコマンド(スロットNo.0)から判別し、通信データがアドレス設定データでない場合には(ステップS30、No)アドレス設定データの受信を待機する。 通信データがアドレス設定データである場合には(ステップS30、Yes)処理はステップS35に進む。
【0041】
ステップS35において、アドレス検出部23はアドレス設定データからアドレスを検出及び抽出し、アドレス処理部24は抽出されたアドレスをメモリ30に書き込み、アドレス設定済みフラグをセットする。
ステップS40において、送信状態切換部27は送信有効化信号を出力してドライバ12の動作を有効化してバイパス経路を形成させ、子機3とその後段の子機が通信ライン5によって直接接続されるようにする。その後処理はステップS10に戻り、CPU20は次の通信データを待機する。
【0042】
ステップS45において、処理決定部22はメモリ30にアドレスが設定されているか否か、即ち、アドレス設定済みフラグがセットされているか否かを、アドレス処理部24を介して又は直接に判別する。アドレスが設定済みの場合(ステップS45、Yes)、処理はステップS50に進む。アドレスが未設定、即ち、不定の場合(ステップS45、No)、処理はステップS10に戻り、CPU20は通信データを待機する。
【0043】
ステップS50において、処理決定部22は受信された通信データが照明制御データであるか否かを通信データのコマンド(スロットNo.0)から判別する。通信データが照明制御データである場合(ステップS50、Yes)、処理はステップS55に進む。通信データが照明制御データでない場合(ステップS50、No)、処理はステップS10に戻り、CPU20は次の通信データを待機する。
【0044】
ステップS55において、制御データ検出部25は設定済みアドレスに対応する照明制御データを抽出し、照明制御出力部26は抽出された照明制御データに従って照明器具4の動作を制御する。照明制御データの抽出は、設定済みアドレスに基づいて基準となる子機(例えば、子機3−1)からのオフセット値を求め、そのオフセット値に対応するスロットNoの制御データを参照することにより行われる。その後、処理はステップS10に戻り、CPU20は次の通信データを待機する。
【0045】
なお、上記実施例では、アドレス設定フラグの設定及びリセットによりアドレス設定の有無を区別する構成を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、各子機3において、アドレス設定前にアドレスとして特定のデータ(例えば全てのビットが0)を書き込んでおき、アドレス抽出時に上記特定のデータが識別された場合に、抽出されたアドレスを書き込む構成としてもよい。
【0046】
次に、
図7〜
図10を参照して、照明制御システム1の動作を説明する。ここでは、照明制御システム1は3台の子機3−1〜3−3を備えるものとし、子機3−1〜3−3は全て電源がONであるものとする。
【0047】
図7に示すように、動作開始において、ドライバ12の動作は有効状態となっており、親機2から子機3−3までの連続した信号経路が形成されているものとする。ここで、親機2からモード移行信号が通信ライン5に送出されると、モード移行信号は子機3−1〜3−3全てに到達する。これにより、子機3−1〜3−3の各々において、既に設定されているアドレスが消去され、アドレス設定済みフラグがリセットされる。その後、子機3−1〜3−3の送信動作が無効化されることにより、
図8に示すように各子機とその後段の子機との経路が遮断された状態が得られる。
図8に示す状態から親機2はアドレス設定信号S1、S2及びS3を通信ライン5に順次送出する。
【0048】
図8に示すように、親機2に子機3−1のみが接続された状態において、親機2は、子機3−1のアドレスを格納したアドレス設定信号S1(
図5参照)を通信ライン5に送出する。子機3−1において、アドレス設定信号S1が受信されると、アドレス設定信号S1から子機3−1のアドレスが抽出されてアドレス設定処理が行われる。アドレス設定処理が完了すると、子機3−1におけるアドレス設定済みフラグがセットされるとともに、ドライバの送信動作が有効化されることにより、
図9に示すように子機3−1と子機3−2が接続された状態が得られる。
【0049】
図9に示すように、親機2に子機3−1及び3−2が接続された状態において、親機2は、子機3−2のアドレスを格納したアドレス設定信号S2(
図5参照)を通信ライン5に送出する。子機3−1は、アドレス設定信号S2が受信しても、既にアドレス設定済みであるので、アドレス設定信号S2を無視する(反応しない)。即ち、子機3−1におけるCPU20の処理決定部22は受信部21から入力されたアドレス設定データに対して何も処理を行わない。子機3−2において、アドレス設定信号S2から子機3−2のアドレスが抽出されてアドレス設定処理及びアドレス設定済みフラグのセットが行われる。子機3−2において、アドレス設定処理が完了し、ドライバの送信動作が有効化されることにより、
図10に示すように全ての子機3−1〜3−3が接続された状態が得られる。
【0050】
図10に示すように、親機2に子機3−1〜3−3が接続された状態において、親機2は、子機3−3のアドレスを格納したアドレス設定信号S3(
図5参照)を通信ライン5に送出する。子機3−1及び3−2は、アドレス設定信号S3が受信しても、既にアドレス設定済みであるので、アドレス設定信号S3を無視する(反応しない)。子機3−3において、アドレス設定信号S3から子機3−3のアドレスが抽出されてアドレス設定処理が行われる。これにより、子機3−1〜3−3におけるアドレス設定が完了する。
【0051】
即ち、親機2にn台(2≦n)の子機3が接続される場合、親機2は、親機2から見てk番目(1≦k≦n−1)の子機3−kに対応するアドレス設定信号Skを通信ライン5に送出した後に、後段の子機3−(k+1)に対応するアドレス設定信号S(k+1)を通信ライン5に送出するように構成される。また、上述したように、子機3−1〜3−nのうちの一部の電源がOFFの場合には、その子機がリレー50によってバイパスされる。従って、k又はn番目のアドレス設定信号Sk又はSnが指定するアドレスがk又はn番目の子機3−k又は3−nに設定されるとは限らないが、電源がONされている子機については、予定の順序に従ってアドレスが設定される。
【0052】
その後、
図11に示すように、親機2に全ての子機3−1〜3−3がアドレス設定済みで接続された状態で、親機2は照明制御信号を通信ライン5に送出する。親機2からの照明制御信号は実質的に同時に子機3−1〜3−3で受信され、各子機は自身のアドレスに対応する照明制御データのみを抽出し、それに応じて対応の照明器具の照明制御を行う。
【0053】
このように、上記構成によると、子機がデイジーチェーン接続される照明制御システムにおいて、その接続数が増加した場合でも、自動アドレス設定が可能でありかつアドレス設定後の照明制御において各子機における遅延はトランシーバの伝播遅延時間のみとなり、最小限の遅延しか発生しない。従って、本発明によると、自動アドレス設定可能なデイジーチェーン接続を採用しつつも、アドレス設定後はいわゆるマルチドロップ接続並の制御速度を実現できる。また、バイパス経路の形成(即ち、送信状態の有効化及び無効化)をレシーバとドライバによって構成したので簡素な構成で子機を構成することができ、子機のサイズ及びコストの点においても有利である。
【0054】
このように、本発明の照明制御機器及びそれを用いた照明制御システムによると、各照明制御機器へのアドレス自動設定を可能としつつも照明制御用の信号の伝搬遅延を大幅に低減することが可能となる。従って、本発明によると、操作性が良く、かつ演出精度の高い照明制御システムを構築することができる。
【0055】
上記に本発明の好適な実施例を示したが、本発明は以下のように種々の変形が可能である。
例えば、上記実施例では送信有効/無効化手段がドライバ12の送信イネーブル制御端子12dで構成されるものを示したが、ドライバ12のドライバ入力端子12cの入力ラインを接続/遮断するスイッチ素子で構成されるようにしてもよい。例えば、
図12に示すように、ドライバ入力端子12cには、レシーバ出力端子11c及びCPU20との接続状態を切り換えるスイッチ素子13が接続される。この場合、CPU20の送信状態切換部27が送信有効化信号を出力する場合にはスイッチ素子13がオンされ、送信無効化信号を出力する場合にはスイッチ素子13がオフされる。この構成は、上記実施例の構成に比べて部品点数が増加するが、ドライバ12にイネーブル端子が設定されていないような場合に有用である。
【0056】
なお、上記実施例では、通信構成が比較的シンプルで汎用性及び堅牢性の高いDMX512プロトコルに準拠する通信に特化して実施例を説明したが、本発明は、DMX512に限らず、類似のフレーム構成を有する他の通信プロトコルにおいても適用可能である。