(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明の作業車両にかかる一実施の形態の薬液散布作業車について説明する。
【0016】
(実施の形態1)
まず、
図1〜
図3を用いて、本実施の形態1の薬液散布作業車についてその概略構成及び動作を説明する。
【0017】
図1は、本発明にかかる実施の形態1における薬液散布作業車の平面図であり、
図2は、本発明にかかる実施の形態1における薬液散布作業車の左側面図である。また、
図3は、本発明にかかる実施の形態1における薬液散布作業車の正面図である。尚、これら
図1〜
図3は、後述する左右散布ブームを走行車体の左右両側面に収納した状態を示す。
【0018】
図1、
図2に示す通り、本実施の形態1の薬液散布作業車1の下部には車体フレーム2があり、その車体フレーム2の前側の左右両側には、前輪用車軸(図示省略)を収納したフロントアクスルハウジング30a及び左右一対のギヤユニット40L、40Rを介して、左右一対の前輪3L、3Rが配置されている。また、これと同様に、その車体フレーム2の後側の左右両側には、後輪用車軸(図示省略)を収納したリアアクスルハウジング30b及び左右一対のギヤユニット40L、40Rを介して、左右一対の後輪4L、4Rが配置されている。
【0019】
尚、本発明の車軸ケースの一例が、本実施の形態のフロントアクスルハウジング30a又はリアアクスルハウジング30aに該当する。
【0020】
車体フレーム2の前方には、防除散布装置11が取り付けられている。
【0021】
車体フレーム2のフロントアクスルハウジング30a側の上方には、ボンネット5で覆われたエンジンEが搭載されている。
【0022】
また、車体フレーム2の、左右一対の前輪3L、3Rと左右一対の後輪4L、4Rの間の上面側には、フロアー6が設けられており、フロアー6の上方には操縦席7を設け、操縦席7の前方にハンドル8が設けられている。ハンドル8を左右に操舵すると、左右一対の前輪3L、3R及び左右一対の後輪4L、4Rが同時に連動して操舵され、小回り走行のできる四輪操舵構成としている。
【0023】
また、車体フレーム2の前側の下方には、フロントアクスルハウジング30aが配置されており、車体フレーム2の後側の下方には、リアアクスルハウジング30bが配置されている。そして、それらの間の車体フレーム2の下方には、エンジンEからの駆動力を左右一対の前輪3L、3Rと左右一対の後輪4L、4Rの側のそれぞれに伝えるための伝動ケース31が配置されており、伝動ケース31から前方側と後方側に出力される駆動力を、左右一対の前輪3L、3R及び左右一対の後輪4L、4Rの側の前輪用車軸と後輪用車軸(図示省略)に伝えるための前伝動軸32aと後伝動軸32bが設けられている。
【0024】
また、これらフロントアクスルハウジング30a、前伝動軸32a、伝動ケース31、後伝動軸32b、リアアクスルハウジング30b、及び、防除ポンプ10を下方から覆うための覆いカバー100が、車体フレーム2に取り付けられている。尚、覆いカバー100については、
図4,
図5等を用いて更に後述する。
【0025】
また、車輪が作物を踏みつけたり巻き込んだりして、作物に損傷を与えることを防止するために、左右一対の前輪3L、3Rと、左右一対の後輪4L、4Rの前方側にそれぞれ張り出した分草杆12が配置されている。分草杆12は、その一端が左右一対のギヤユニット40L、40Rの上部ギヤケース41L、41Rの側面に固定されている。
【0026】
また、フロアー6の左側には、作業者用の昇降ステップ6aが設けられている。操縦席7の左右側と後側の3方を取り囲むように防除タンク9が設けられ、その防除タンク9の後部であって車体フレーム2の下方に防除ポンプ10が設けられている。
【0027】
防除散布装置11は、車体フレーム2の前方に配置されたセンター散布ブーム11Cと、センター散布ブーム11Cの左右両側に回動可能に設けられた左右一対の散布ブーム11R、11Lとで構成されている。また、防除散布装置11のセンター散布ブーム11Cの中央部近傍には、防除散布装置11を昇降する昇降シリンダー15が設けられており、更に、センター散布ブーム11Cの左右両端側近傍には、左右一対の散布ブーム11L、11Rを開閉する開閉シリンダー17が設けられている。
【0028】
これにより、防除散布装置11を昇降シリンダー15(
図2参照)により昇降し、開閉シリンダー17(
図1参照)により左右一対の散布ブーム11L、11Rを左右に突出した薬液散布作業状態(図示省略)と、薬液散布作業車1の両側方に沿わせた収納状態に移動する(
図1、
図2参照)ように構成している。
【0029】
また、防除タンク9の薬液は防除ポンプ10(
図2参照)により防除散布装置11に送られ、センター散布ブーム11C及び左右一対の散布ブーム11L、11Rに複数設けられた散布ノズル14(
図2参照)から、薬液が散布される。
【0030】
尚、操縦席7の左横の防除タンク9の表面には、乗降用ハンドル300が設けられている。これについては、
図10、
図11を用いて、更に後述する。
【0031】
次に、
図4、
図5を参照しながら、本実施の形態の薬液散布作業車1の構成及び動作について更に説明する。
【0032】
ここで、
図4は、本実施の形態の薬液散布作業車1の車体フレーム2及び、その下方に配置された要部の構成を示す平面図である。また、
図5は、本実施の形態の薬液散布作業車1の車体フレーム2及び、その下方に配置された要部の構成を示す左側面図である。
【0033】
図4、
図5に示す通り、車体フレーム2は、互いに平行な左右一対のフレーム部材2L、2Rを有し、それら左右一対のフレーム部材2Lと2Rのそれぞれの前端縁部2La、2Raを連結したフロントフレーム部材2Aと、左右一対のフレーム部材2Lと2Rのそれぞれの後端部2Lb、2Rbを連結したリアフレーム部材2Bは、長四角状の枠体を構成している。
【0034】
また、
図4、
図5に示す通り、フロントアクスルハウジング30aと、リアアクスルハウジング30bは、それぞれ左右一対のフレーム部材2Lと2Rに固定されている。また、伝動ケース31と前伝動軸32aと後伝動軸32bは、左右一対のフレーム部材2Lと2Rの間に配置されている。
【0035】
また、
図5に示す通り、フロントアクスルハウジング30aの上端30a1、及びリアアクスルハウジング30bの上端30b1が、何れも、左右一対の前輪3L、3Rの上面、及び左右一対の後輪4L、4Rの上面より上方に位置しており、アクスルハウジングの地面からの高さを高くした構成である。
【0036】
また、
図4、
図5に示す通り、車体フレーム2の下方であって、左右一対のフレーム部材2Lと2Rの間に配置された、前伝動軸32a、後伝動軸32b、伝動ケース31、及び、ミッションのオイルシール(図示省略)やその他の配管ゴムホース(図示省略)等を下方から覆う覆いカバー100が、車体フレーム2に着脱自在に取り付けられている。
【0037】
この覆いカバー100は、
図5に示す通り、側面視で前方部101aと後方部101bにおいて鈍角に折り曲げられた厚手で腰のあるシート状部材であって、前方部101aと後方部101bの間の中央部101cは凹凸の無い平面状に形成されている。尚、覆いカバー100は、散布する薬剤に対して劣化し難い材質であることが好ましく、例えば、ゴム(CR)等が好適である。
【0038】
また、覆いカバー100の左右の長辺側の端部には、長手方向に沿って4箇所にそれぞれ2つずつ、即ち、片側の長辺に8つの貫通孔102が設けられており、これら4箇所の貫通孔102の位置に対応する、左右一対のフレーム部材2Lと2Rの所定位置には、所定長さに調整された覆いカバー保持用ワイヤー112がそれぞれ予め固定されている。覆いカバー保持用ワイヤー112は、一対の貫通孔102を利用して、覆いカバー100を保持する構成である。
【0039】
これにより、車体フレーム2の下部に配置された、回転系や駆動系、ゴム等の配管部材等と作物が直接接触しない構成とすることが出来る。
【0040】
また、これにより、防除作業中において、前伝動軸32a、後伝動軸32b、及び伝動ケース31等の回転系や駆動系に作物が絡み、走行不具合が発生することを未然に防止することが出来る。また、散布した農薬などの薬剤がミッションのオイルシール(図示省略)やその他の配管ゴムホース(図示省略)等へ付着して、それらの部材を劣化させることを防止することが出来る。
【0041】
また、回転系や駆動系は車体フレーム2の中心部に集中して配置されており、本実施の形態の覆いカバー100は、そうした車体フレーム2の中心部に集中して配置され機構を効果的に覆うことが出来る構造である。
【0042】
また、本実施の形態では、分草杆12と、覆いカバー100を同時に備えた構成としている為、より作物に与えるダメージを低減出来る。
【0043】
また、本実施の形態では、旋回時等で、車輪が最大角度まで切れた時、分草杆12が、覆いカバー100へ接近するが、平面視で車体フレーム2の外形状にほぼ一致しているので、分草杆12と覆いカバー100が干渉することは無い。その為、薬液散布作業車1の運転者は、旋回時において、分草杆12と覆いカバー100との干渉防止に注意を払う必要が無いので、ストレスを感じること無く運転操作に専念出来る。
【0044】
また、フロントアクスルハウジング30a、リヤアクスルハウジング30b、及び伝動ケース31やその他の駆動部品の地面からの高さを、ほぼ同じに構成したことにより、覆いカバー100の中央部101cが、凹凸の無い平面状に形成することが出来た。
【0045】
凹凸の有る覆いカバーを用いた時には、例えば、稲等の花粉がこれらの凹凸に何度も触れることで大きく損傷する可能性があるが、本実施の形態では、上述した通り、覆いカバー100の中央部101cが、凹凸の無い平面状に形成することが出来た為、稲等の花粉が大きく損傷することを防止出来るので、作物の収量の低下をより一層抑制出来るという効果を発揮する。
【0046】
次に、
図6、
図7を用いて、上述したフロントアクスルハウジング30a及びリアフロントハウジング30bを分割構造とした時の、覆いカバー100の変形例について説明する。
【0047】
図6は、フロントアクスルハウジング30aの中央付近で、左側フロントアクスルハウジング30aLと、右側フロントアクスルハウジング30aRに分割可能な構造を示す概略斜視図である。また、
図7は、本実施の形態の覆いカバー100の変形例としての第2覆いカバー120を示す平面図である。
【0048】
図6に示す通り、左側フロントアクスルハウジング30aLと、右側フロントアクスルハウジング30aRは、合わせ面33において締結部材33aにより連結されており、更に、その合わせ面33での連結状態を補強するために、側面視でL字状の補強部材34が、左右のフロントアクスルハウジング30aLと30aRに対してボルト34aにより固定されている。
【0049】
また、補強部材34の下面の両端側には、第2覆いカバー120の前側の両端部を着脱自在に保持するための保持ピン34bが下方に向けて突出した状態で固定されている。この左右一対の保持ピン34bの先端側の径は、根元側の径より大きく形成されており、第2覆いカバー120の前側の両端部に設けられた保持用孔120aの径は、左右一対の保持ピン34bの先端側の径より小さく、根元部の径より大きく形成されている。
【0050】
第2覆いカバー120は有る程度の柔軟性を有する素材で形成されていて、且つ、保持ピン34bは先端部がほぼ円錐形状を呈しているため、保持ピン34bは保持用孔120aに挿入し易く抜けにくい構成となっている。
【0051】
尚、リアアクスルハウジング30bについても、その中央付近で、左側リアアクスルハウジング30bLと、右側リアアクスルハウジング30bRに分割可能な構造となっており、上記補強部材34と同じ補強部材により補強されていて、上記と全く同様に、第2覆いカバー120の後側の両端部(図示省略)が、保持ピンにより補強部材に保持される構成である。
【0052】
これにより、第2覆いカバー120は、最小限のサイズで、前伝動軸32a、伝動ケース31、及び後伝動軸32b等の回転系や駆動系等を効果的に覆うことが出来る。
【0053】
次に、
図8、
図9を用いて、ラジエ−タタンクへの補給水を貯留するリザーブタンクの配置について説明する。
【0054】
図8(a)は、ボンネット5で上部を覆われたエンジン収納室の概略左側面図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示す部分の概略正面図である。また、
図9は、ボンネット5を開けた状態のエンジン収納室の概略左側面図である。
【0055】
図8(a)、
図8(b)に示す通り、左右一対のヘッドライト200、200の中央にリザーブタンク210が搭載されている。
【0056】
これにより、スペースを有効活用出来て、且つ、エンジンEの後方に配置されたラジエータタンク220とエンジンEとの間に位置するエンジンファン230からの風で、リザーブタンク210内の温度上昇を抑制出来る。
【0057】
また、
図9に示す通り、ボンネット5を開けることで、リザーブタンク210の中を確認出来る構成である。
【0058】
また、
図9に示す通り、リザーブタンク210の位置はエンジンEの前方の上部であって、且つ、リザーブタンク210の給水口211が、ラジエータタンク220の給水口221より低い位置に配置したことにより、地上からのメンテナンスや、冷却水の補給作業が容易に行える。
【0059】
次に、主として
図10、
図11を用いて、防除タンク9に設けられた乗降用ハンドル300について説明する。
【0060】
図10は、本実施の形態の薬液散布作業車1における操縦席7近傍の概略側面図であり、
図11は、乗降用ハンドル300の斜視図である。
【0061】
図1、
図10、
図11に示す通り、昇降ステップ6aの右上方で、操縦席7の左横の防除タンク9の上面部9aには、断面が略L字形状であって、乗降用ハンドル300が立設された乗降用ハンドル取り付け板310が1本の取り付け板固定用ボルト312により固定されている。そして、乗降用ハンドル取り付け板310は、その後側の左端部が突き出した状態に形成されたゲージホース浮き止め部311が、薬液ゲージホース320をタンク溝9cの凹部に押さえ込むことで、その浮きを防止する役割を兼ねている。
【0062】
また、
図11に示す通り、乗降用ハンドル取り付け板310の側面部310bの内面側には、前後方向に亘って滑り止め用の第1ゴム板315が張り付けられており、防除タンク9の内側面部9bに接触して滑りを防止している。また、乗降用ハンドル取り付け板310の上面部310aの内面側には、前側にのみ滑り止め用の第2ゴム板316が張り付けられており、防除タンク9の上面部9aに接触して滑りを防止している。
【0063】
上述した通り、昇降ステップ6aの右上方であって、操縦席7の左横の防除タンク9の上面部9aに乗降用ハンドル300を設けたことにより、オペレータの乗降が容易になる。
【0064】
また、上述した通り、滑り止め用のゴム板を張り付けることにより、取り付け板固定用ボルト312にかかる荷重を分散・軽減出来る。
【0065】
尚、上記実施の形態では、乗降用ハンドル300が乗降用ハンドル取り付け板310の上面部310a、即ち、防除タンク9の上面部9a上に立設した例を説明したが、これに限らず例えば、
図12、
図13に示す通り、乗降用ハンドルの取っ手部351が、乗降用ハンドル取り付け板より下方、即ち、防除タンク9の上面部9aより左側方であって且つ下方に位置する構成でも良い。
【0066】
ここで、
図12は、第2乗降用ハンドル350の取り付け状態を示す概略平面図であり、
図13は、第2乗降用ハンドル350の斜視図である。
図10、
図11で示した構成と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図12、
図13に示す通り、昇降ステップ6aの右上方で、操縦席7の左横の防除タンク9の上面部9aより左側方であって且つ下方の位置に、第2乗降用ハンドル350の取っ手部351が配置され、その根元部352は、第2乗降用ハンドル取り付け板360の上面部360aに溶接固定されている。
【0068】
また、
図12に示す通り、第2乗降用ハンドル350は、平面視で逆略L字形状を呈しており、背面視で略への字形状を呈している。また、第2乗降用ハンドル350の根元部352の近傍で、薬液ゲージホース320がタンク溝9cの凹部に押さえ込まれている。また、第2乗降用ハンドル350のストレート部353と防除タンク9の上面部9aとの間には、取り付け板固定用ボルト312にかかる荷重を軽減するために、取っ手部351に近いストレート部353の表面に滑り止め用の第3ゴム板317が張り付けられている。
【0069】
上述した通り、第2乗降用ハンドル350では、取っ手部351の位置が、上記実施の形態で説明した第1乗降用ハンドル300の位置に比べて低いので、オペレータの乗降がより一層容易になる。
【0070】
また、上記実施の形態では、覆いカバーは、厚手で腰のあるシート状部材である構成について説明したが、これに限らず例えば、軟性の樹脂シート、或いは、鉄板や硬性の樹脂板等でも良い。
【0071】
また、上記実施の形態では、左右一対のフレーム部材2Lと2Rの所定位置には、所定長さに調整された覆いカバー保持用ワイヤー112がそれぞれ予め固定されている構成について説明したが、これに限らず例えば、覆いカバー保持用ワイヤー112に代えて、複数の紐が、左右一対のフレーム部材2Lと2Rに適宜巻き付けられているだけの構成でも良い。
【0072】
また、上記実施の形態では、前輪と後輪の両方に駆動力が伝達される構成について説明したが、これに限らず例えば、左右一対の前輪にのみ駆動力が伝達される構成であっても良いし、左右一対の後輪にのみ駆動力が伝達される構成であっても良い。そして、例えば、前輪にのみ駆動力が伝達される構成であれば、覆いカバーは、少なくとも、伝動ケース(
図4の符号31参照)と前伝動軸(
図4の符号32a参照)を覆う構成であれば良い。また、例えば、後輪にのみ駆動力が伝達される構成であれば、覆いカバーは、少なくとも、伝動ケース(
図4の符号31参照)と後伝動軸(
図4の符号32b参照)を覆う構成であれば良い。