特許第6089749号(P6089749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6089749-ガスケット 図000002
  • 特許6089749-ガスケット 図000003
  • 特許6089749-ガスケット 図000004
  • 特許6089749-ガスケット 図000005
  • 特許6089749-ガスケット 図000006
  • 特許6089749-ガスケット 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089749
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20170227BHJP
   F02M 35/12 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F16J15/10 L
   F16J15/10 D
   F02M35/12 L
   F02M35/12 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-26408(P2013-26408)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-152925(P2014-152925A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【弁理士】
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】二又 久夫
【審査官】 中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−014279(JP,A)
【文献】 米国特許第05722357(US,A)
【文献】 特開2005−307980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F02M 35/12
F02M 35/10
F16L 55/02
F02M 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面に挟み込まれることによって、これらの管同士の隙間を封止する封止部を備えたゴム状弾性体製のガスケットにおいて、
吸気通路の一部を遮るように配されて、吸気音を低減する吸気音低減部を備え、
該吸気音低減部は、気体の流れに応じて揺れ動くように構成された複数の垂れ下がり部により構成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記複数の垂れ下がり部には、それぞれ少なくとも一つの貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気管に備えられるガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、吸気マニホルドなどに設けられている吸気管には、エンジンに吸気を行う際に多量の空気が流れ込む。その際、吸気マニホルドから異音が発生してしまう問題がある。これに対して、従来、例えば吸気マニホルドのスロットルガスケット部に吸気音低減板を設けることによって、吸気音(異音)を低減させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、かかる技術においては、吸気音低減板がSUS,アルミニウム又は樹脂などの減衰性の低い材料が用いられているために、吸気音の低減効率が低いという問題がある。また、ガスケットとは別に吸気音低減板を設けなければならないため、コストが高くなってしまう問題もある。
【0004】
なお、本出願人は、弾性体製のガスケットに吸気音を低減させる機能を兼ね備えた技術を提案している(特許文献2参照)。かかる技術は、気体の圧力と流量の変化を妨げることにより異音の抑制を図るものである。しかしながら、この技術では、吸気通路の2か所で気体の流れを部分的に遮ることにより、気体の圧力と流量の変化を妨げるようにしているため、圧力の損失が大きくなってしまうという短所を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3726672号公報
【特許文献2】特開2011−12760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、吸気される気体の圧力損失を抑えつつ、吸気音を低減させる機能を兼ね備えたガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明のガスケットは、
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面に挟み込まれることによって、これらの管同士の隙間を封止する封止部を備えたゴム状弾性体製のガスケットにおいて、
吸気通路の一部を遮るように配されて、吸気音を低減する吸気音低減部を備え、
該吸気音低減部は、気体の流れに応じて揺れ動くように構成された複数の垂れ下がり部により構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、複数の垂れ下がり部によって、気体の流れが分散される。また、複数の垂れ下がり部はゴム状弾性体製であることから、その減衰性により音の発生エネルギーを吸収することができる。以上のことが相俟って、吸気音を効果的に低減させることができる。また、複数の垂れ下がり部は、気体の流れに応じて気体の流れる方向に変形するため、気体の流入抵抗を抑制することができる。従って、吸気される気体の圧力損失が大き
くなってしまうことはない。
【0010】
前記複数の垂れ下がり部には、それぞれ少なくとも一つの貫通孔が設けられているとよい。
【0011】
これにより、気体の流入抵抗をより一層下げることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、吸気される気体の圧力損失を抑えつつ、吸気音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の実施例1に係るガスケットが吸気管内に取り付けられた状態を示す模式的断面図である。
図2図2は本発明の実施例1に係るガスケットの正面図である。
図3図3は本発明の実施例1に係るガスケットの断面図である。
図4図4は本発明の実施例2に係るガスケットの正面図である。
図5図5は本発明の実施例2に係るガスケットの断面図である。
図6図6は吸気音の周波数と音圧レベルとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
(実施例1)
図1図3を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットについて説明する。図1は本発明の実施例1に係るガスケットが吸気管内に取り付けられた状態を示す模式的断面図である。図2は本発明の実施例1に係るガスケットの正面図である。図3は本発明の実施例1に係るガスケットの断面図である。なお、図3図2中のAA断面図である。
【0016】
<ガスケット>
本実施例に係るガスケット10は、吸気マニホルドなどに設けられている吸気管に備えられる。すなわち、本実施例に係るガスケット10は、吸気管を構成する2つの管(以下、説明の便宜上、これら2つの管をそれぞれ第1管20,第2管30と称する)同士の結合部分に備えられる。第1管20の端部と第2管30の端部には、それぞれフランジ部21,31が設けられている。そして、これらのフランジ部同士が重ね合わせるようにされた状態で、ボルト40によってフランジ部21とフランジ部31が固定されることで、第1管20と第2管30は結合される。ここで、第1管20と第2管30は、いずれも円筒形状であり、吸気通路における中心軸線に垂直な断面(管の伸びる方向に垂直な断面)は円形である。
【0017】
ガスケット10は、このように結合される第1管20の端面と第2管30の端面に挟み込まれることによって、これら第1管20と第2管30の隙間を封止する。このように、ガスケット10には、これら第1管20と第2管30の隙間を封止する環状の封止部11が設けられている。なお、封止部11には、第1管20側に向かって突出する環状の突出部11aが設けられている。一方、第1管20の端面には環状溝22が設けられている。この環状溝22に突出部11aが嵌め込まれた状態で、ガスケット10における封止部11が、第1管20の端面と第2管30の端面に挟み込まれる。
【0018】
ゴム状弾性体製のガスケット10は、上記の封止部11と、吸気通路の一部を遮るように配されて、吸気音を低減する吸気音低減部を構成する複数の垂れ下がり部12とを備えている。また、ガスケット10の外形は円形であり、中央付近には、吸気通路に沿うように円形(垂れ下がり部12が設けられている部分を除き円形)の孔13が形成されている。複数の垂れ下がり部12は、この円形の孔13のうち上方の半円形の領域内に収まるように設けられている。従って、円形の孔13のうち下方の半円形の領域については、吸気通路を塞いでいない。
【0019】
複数の垂れ下がり部12は、吸気通路を流れる気体に応じて揺れ動くように構成されている。図1中、矢印Pは気体の流れる方向を示している。吸気通路を気体が流れると、点線で示すように、垂れ下がり部12は下流側に向かって弾性的に変形する。
【0020】
<ガスケットの動作及び機能>
特に、図1を参照して、本発明の実施例に係るガスケット10の動作及び機能を説明する。ガスケット10よりも上流側から流れてきた気体の一部は複数の垂れ下がり部12に当った後に、下流側へと流れていく。これにより、これら複数の垂れ下がり部12の付近において、気体の流れに乱れが生じる。また、ガスケット10はゴム状弾性体製のため、上記の通り、複数の垂れ下がり部12は、気流によって、図中、点線で示すように、撓むように変形した状態となる。
【0021】
<本実施例の優れた点>
本実施例に係るガスケット10によれば、複数の垂れ下がり部12によって、気体の流れが分散される。これにより、吸気マニホルドに用いられた場合には、スロットルの開き始めに発生する多量の空気の塊の流入を分散させることができるので、共鳴等の異音の発生を抑制することが可能となる。また、複数の垂れ下がり部12はゴム状弾性体製であることから、その減衰性により音の発生エネルギーを吸収することができる。以上のことが相俟って、吸気音を効果的に低減させることができる。
【0022】
また、複数の垂れ下がり部12は、気体の流れに応じて気体の流れる方向に変形するため、気体の流入抵抗を抑制することができる。従って、吸気される気体の圧力損失が大きくなってしまうことはない。
【0023】
このように、本実施例に係るガスケット10によれば、2つの管同士の隙間を封止するというガスケット本来の機能に加えて、吸気音を効果的に低減させることができる。従って、ガスケットと吸気音低減板を別々に設ける場合に比べて、コストを削減することができる。
【0024】
ここで、図6は、本実施例に係るガスケットを用いた場合と、従来技術に係る吸気音低減部材を用いた場合とで、周波数(Hz)に対する音圧レベルを比較したグラフである。なお、従来例に係る吸気音低減部材としては、特許文献1に示されたような金属メッシュを用いた。
【0025】
なお、音圧レベルは、吸気マニホルドに設けられる吸気管に本実施例に係るガスケット又は従来技術に係る金属メッシュを配置させた状態で、吸気マニホルドのポート部から吸引機で吸気を行いながら、吸気マニホルドの音圧をマイクロフォンによって測定した。
【0026】
図から、従来技術に係る金属メッシュの場合に比べて、本実施例に係るガスケットの場合の方が、音圧レベルを(周波数に拘わらず)全体的に低下させることができることが分かる。
【0027】
(実施例2)
図4及び図5には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、上記実施例1で示すガスケットにおいて、垂れ下がり部に複数の貫通孔を設けた場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0028】
図4は本発明の実施例2に係るガスケットの正面図である。図5は本発明の実施例2に係るガスケットの断面図である。なお、図5図4中のAA断面図である。
【0029】
図示のように、本実施例に係るガスケット10においては、複数の垂れ下がり部12に、それぞれ複数の貫通孔12aが設けられている。これにより、気体の流入抵抗をより一層下げることができ、吸気される気体の圧力損失をより一層低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
10 ガスケット
11 封止部
11a 突出部
12 垂れ下がり部
12a 貫通孔
13 孔
20 第1管
21 フランジ部
22 環状溝
30 第2管
31 フランジ部
40 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6