特許第6089757号(P6089757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089757
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】チューブクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20170227BHJP
   A61M 39/28 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61M5/168 500
   A61M39/28 120
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-29092(P2013-29092)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-155658(P2014-155658A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 純也
【審査官】 渋谷 善弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−199823(JP,A)
【文献】 特表昭57−501941(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/023913(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/121923(WO,A1)
【文献】 米国特許第05800386(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168 − 5/175
A61M 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通するチューブを潰して閉塞するクランプ部と、
上記クランプ部を駆動するクランプ駆動装置とを備え、
上記クランプ駆動装置により、上記クランプ部を、上記チューブを潰して閉塞した状態と、上記チューブを開放した状態とに切り替えるように構成されたチューブクランプ装置において、
上記クランプ駆動装置は、上記クランプ部を駆動するための電動モーターと、上記クランプ部を手で駆動するための操作ハンドルと、上記電動モーターの回転力を上記クランプ部に伝達し、かつ、上記操作ハンドルには伝達しない一方、上記操作ハンドルの操作力を上記クランプ部に伝達し、かつ、上記電動モーターには伝達しないクラッチ機構を備えていることを特徴とするチューブクランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブクランプ装置において、
上記クランプ駆動装置は、上記電動モーターの回転及び上記操作ハンドルの操作によって回動するカムを備えており、該カムによって上記クランプ部を駆動するように構成され、
上記操作ハンドルは、回動可能に装置本体に設けられ、
上記クランプ駆動装置には、上記操作ハンドルの回動操作による上記カムの回動角度が上記チューブを開放する角度となったときに該カムを停止させるストッパが設けられていることを特徴とするチューブクランプ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のチューブクランプ装置において、
上記クランプ部が上記チューブを閉塞した状態と、上記チューブを開放した状態との少なくとも一方の状態にあるときに、その一方の状態を保持するように上記クランプ部の動作をロックするロック装置が設けられ、
上記ロック装置は、電気信号によって作動してロック状態を解除する自動ロック解除部と、手動操作によってロック状態を解除する手動ロック解除部とを備えていることを特徴とするチューブクランプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のチューブクランプ装置において、
上記ロック装置は、上記自動ロック解除部及び上記手動ロック解除部によって操作される単一のロック部材を有し、
上記手動ロック解除部は、上記自動ロック解除部によって上記ロック部材が操作されたときの該ロック部材の動きを許容して該手動ロック解除部を不動状態にする不感帯部を有していることを特徴とするチューブクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬液等が流通するチューブを所定時に閉塞するチューブクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1〜3に開示されているように、腹膜透析や輸液治療の際には、薬液等が流通するチューブが用いられている。チューブは柔軟性のある素材から構成されているので、薬液等を流したくない場合にはチューブを径方向に押しつぶして閉塞し、一方、薬液等を流す場合にはチューブを開放するように動作するチューブクランプ装置を用いて薬剤等が不要時に流れないようにしている。
【0003】
特許文献1のチューブクランプ装置は、チューブに当接する当接部材を有するカムをモーターで回動させ、当接部材をチューブに当接させて押し付けることによってチューブを閉塞する。チューブを開放する際には、当接部材がチューブから離れるまでカムを回動させる。
【0004】
特許文献2のチューブクランプ装置は、永久磁石、可動鉄心、2つのコイル等で構成された電磁ソレノイドからなる直動アクチュエータを用いている。一方のコイルへ通電すると、チューブを閉塞する可動クランプ部がチューブを押しつぶす方向に移動して、チューブを閉塞する。他方のコイルへ通電すると、可動クランプ部がチューブから離れる方向に移動してチューブを開放する。特許文献2のものでは、可動クランプ部が閉塞位置にあるときに停電した場合には、ソレノイドの可動鉄心を指で押すことによって可動クランプ部を開放位置に切り替えることができるようになっている。
【0005】
特許文献3は、エアシリンダからなるアクチュエータを用いている。エアシリンダに圧縮空気を給排することにより、チューブを閉塞する可動アームを動かすようにしている。特許文献3のものでは、停電時には専用治具を用いて可動アームを手動で開放方向に動かすことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2874724号公報
【特許文献2】特開平7−80063号公報
【特許文献3】特開2005−34515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のチューブクランプ装置では、カムを回動させるモーターが停電や故障等で動かなくなった場合に、カムを動かす手段がないので、閉塞状態にあるチューブを開放したり、開放状態にあるチューブを閉塞することをすぐに行うのは困難である。
【0008】
そこで、停電時等に、特許文献2のようにソレノイドの可動鉄心を指で押して可動クランプ部を手動操作することや、特許文献3のように専用治具を用いて可動アームを手動操作することが考えられる。ところが、特許文献2では、通常、可動鉄心を指で動かすことは行っていないので、現場の医療従事者がどのように可動鉄心を動かせばよいか、直ちに理解するのは難しく、不便であるとともに、誤動作の心配もある。また、特許文献3の専用治具を用いる場合も、現場の医療従事者にとっては不便であるとともに、誤動作の心配もある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チューブを自動で閉塞及び開放するように構成されたチューブクランプ装置において、停電や動力源の故障等によって自動で動かなくなった場合に、簡単に、かつ、誤動作を起こすことなく、チューブのクランプ部を手動操作できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、通常時には電動モーターで、停電時等には医療従事者が手で操作ハンドルを操作することによってクランプ部を駆動するようにし、電動モーターの回転力は操作ハンドルに伝達しないようにするとともに、操作ハンドルの操作力は電動モーターに伝達しないようにした。
【0011】
第1の発明は、流体が流通するチューブを潰して閉塞するクランプ部と、
上記クランプ部を駆動するクランプ駆動装置とを備え、
上記クランプ駆動装置により、上記クランプ部を、上記チューブを潰して閉塞した状態と、上記チューブを開放した状態とに切り替えるように構成されたチューブクランプ装置において、
上記クランプ駆動装置は、上記クランプ部を駆動するための電動モーターと、上記クランプ部を手で駆動するための操作ハンドルと、上記電動モーターの回転力を上記クランプ部に伝達し、かつ、上記操作ハンドルには伝達しない一方、上記操作ハンドルの操作力を上記クランプ部に伝達し、かつ、上記電動モーターには伝達しないクラッチ機構を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、通常時には、電動モーターによってクランプ部を駆動することで、チューブを潰して閉塞した状態と、チューブを開放した状態とに切り替えることができる。このとき、電動モーターの回転力は操作ハンドルに伝達されないので、操作ハンドルがクランプ部の動きを阻害することはなく、チューブの閉塞と開放とが確実に行える。
【0013】
一方、例えば停電時や電動モーターが故障した場合には、操作ハンドルを操作することでクランプ部を駆動することができるので、チューブの閉塞と開放との切り替えが行えるようになる。
【0014】
このとき、操作ハンドルの操作力が電動モーターに伝達されないので、誤動作を誘発することがなく、操作も簡単に行える。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
上記クランプ駆動装置は、上記電動モーターの回転及び上記操作ハンドルの操作によって回動するカムを備えており、該カムによって上記クランプ部を駆動するように構成され、
上記操作ハンドルは、回動可能に装置本体に設けられ、
上記クランプ駆動装置には、上記操作ハンドルの回動操作による上記カムの回動角度が上記チューブを開放する角度となったときに該カムを停止させるストッパが設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、操作ハンドルを回動操作すると、カムが回動してクランプ部を操作することが可能になる。操作ハンドルの回動角度がチューブを開放する角度となったときに、ストッパによってカムが停止するので、操作ハンドルによってカムが回動し過ぎるのを防止してチューブを開放状態で維持することが可能になる。
【0017】
第3の発明は、第1または2の発明において、
上記クランプ部が上記チューブを閉塞した状態と、上記チューブを開放した状態との少なくとも一方の状態にあるときに、その一方の状態を保持するように上記クランプ部の動作をロックするロック装置が設けられ、
上記ロック装置は、電気信号によって作動してロック状態を解除する自動ロック解除部と、手動操作によってロック状態を解除する手動ロック解除部とを備えていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、チューブを閉塞した状態のクランプ部をロック装置でロックするようにした場合には、クランプ部が不意に開放状態になるのを確実に防止することが可能になる。また、チューブを開放した状態のクランプ部をロック装置でロックするようにした場合には、クランプ部が不意に閉塞状態になるのを確実に防止することが可能になる。
【0019】
通常時には、ロック装置を自動ロック解除部によって自動で解除することで、医療従事者の操作は必要なくなり、利便性が向上する。一方、停電時や自動ロック解除部が故障した場合には、医療従事者が手動ロック解除部を操作することで、ロック状態を確実に解除することが可能である。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、
上記ロック装置は、上記自動ロック解除部及び上記手動ロック解除部によって操作される単一のロック部材を有し、
上記手動ロック解除部は、上記自動ロック解除部によって上記ロック部材が操作されたときの該ロック部材の動きを許容して該手動ロック解除部を不動状態にする不感帯部を有していることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、通常時、自動ロック解除部によってロック部材を操作する際、そのロック部材の動きが手動ロック解除部材の不感帯部で吸収されるので、手動ロック解除部材が動くことはない。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、クランプ部を駆動する電動モーターと操作ハンドルとを設け、電動モーターの回転力を操作ハンドルには伝達しないようにするとともに、操作ハンドルの操作力を電動モーターには伝達しないようにしている。これにより、電動モーターが動かなくなった場合に、簡単に、かつ、誤動作を起こすことなく、クランプ部を操作してチューブの閉塞と開放とを切り替えることができる。
【0023】
第2の発明によれば、操作ハンドルの回動操作によるカムの回動角度がチューブを開放する角度となったときにストッパによってカムを停止させるようにしたので、カムが回動し過ぎるをの防止することができる。
【0024】
第3の発明によれば、クランプ部をロックするロック装置が、自動ロック解除部と手動ロック解除部とを備えているので、クランプ部をチューブの閉塞状態と開放状態との少なくとも一方で確実にロックして誤作動を防止できるようにしながら、停電等の際には、ロックを手動で容易に解除できるようにして利便性を向上させることができる。
【0025】
第4の発明によれば、自動ロック解除部及び手動ロック解除部によって単一のロック部材を操作する場合に、自動ロック解除部の操作によってロック部材が操作されたときの動きを許容して手動ロック解除部を不動状態にすることができる。よって、手動ロック解除部が不必要に動くことはなく、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るチューブクランプ装置を正面側から見た斜視図である。
図2】チューブ開放状態にあるチューブクランプ装置の正面図である。
図3】チューブクランプ装置の右側面図である。
図4】チューブクランプ装置を背面側から見た斜視図である。
図5】チューブ開放状態にあるチューブクランプ装置の背面図である。
図6図5のVI−VI線断面図である。
図7】チューブクランプ装置の分解斜視図である。
図8】チューブ閉塞状態にある図2相当図である。
図9】ソレノイドによってロック解除した瞬間の図2相当図である。
図10図5のX−X線断面図である。
図11】手動操作部材によってロック解除した瞬間の図2相当図である。
図12】カムの正面図である。
図13】ストッパの正面図である。
図14】ストッパの平面図である。
図15】ストッパの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るチューブクランプ装置1を示す斜視図である。このチューブクランプ装置1は、例えば人工心肺装置と共に用いることができるものであり、人工心肺装置から延びるチューブ100(仮想線で示す)を開放した状態(図2に示す)と閉塞した状態(図8に示す)とに切り替えるためのものである。チューブクランプ装置1は、人工心肺装置のチューブ100以外にも、例えば腹膜透析の透析液が流れるチューブ、輸液装置から延びるチューブ、CHDF(持続的血液濾過透析)装置から延びるチューブを閉塞、開放する場合等に使用することができる。また、チューブ100に気体が流れる場合に、該チューブ100を閉塞、開放する場合等に使用することができる。尚、一般に、チューブ100は上下方向に延びている。
【0029】
図1図6に示すように、チューブクランプ装置1は、装置本体10と、チューブ100を閉塞するクランプ部20と、クランプ部20を駆動するクランプ駆動装置40と、クランプ部20の動作をロックするロック装置60と、クランプ駆動装置40及びロック装置60を制御する制御装置70(図4にのみ示す)とを備えている。
【0030】
装置本体10は、例えば鋼板等を折り曲げてなるものであり、例えば人工心肺装置等に取り付けることができる。装置本体10は、上下方向に延びる正面板部11と、正面板部11の左縁部に沿って上下方向に延びる左側板部12と、正面板部11の右縁部に沿って上下方向に延びる右側板部13とを備えている。尚、チューブクランプ装置1の左とは、正面板部11に向かって左となる側をいい、チューブクランプ装置1の右とは、正面板部11に向かって右となる側をいうものとする。
【0031】
クランプ部20は、装置本体10の左側に配置される左側可動アーム21と、装置本体10の右側に配置される右側可動アーム22と、左側可動アーム21及び右側可動アーム22を連結する第1〜第3リンク23〜25とを備えている。左側可動アーム21及び右側可動アーム22は、正面板部11の表側に配置されており、チューブ100を径方向に挟んで潰すことによって閉塞するためのものである。
【0032】
図5に示すように、第1〜第3リンク23〜25は、正面板部11の背面側に配置されている。第1リンク23は最も左側に位置し、第2リンク24は左右方向の略中央に位置し、第3リンク25は最も右側に位置している。
【0033】
第1リンク23は、略上下方向に延びており、下部が右側に位置し、上部が左側に位置するように傾斜している。第1リンク23の上端部には爪部23aが形成されている。第1リンク23の上下方向中間部には、支軸23bが形成されている。支軸23bは、装置本体10の正面板部11の上側に形成された軸受孔11a(図7参照)に回動可能に挿入されており、第1リンク23は、軸受孔11aに支持された状態で支軸23b周りに揺動可能となっている。図1に示すように、この支軸23bに左側可動アーム21の上部が固定されている。
【0034】
図5に示すように、第2リンク24も略上下方向に延びており、下部が左側に位置し、上部が右側に位置するように傾斜している。第2リンク24の下部は、第1リンク23の下部に回動可能に連結されている。
【0035】
第3リンク25も略上下方向に延びており、下部が右側に位置し、上部が左側に位置するように傾斜している。第3リンク25の上部は、第2リンク24の上部に回動可能に連結されている。第3リンク25の上下方向中間部には、支軸25bが形成されている。支軸25bは、装置本体10の正面板部11の上側に形成された軸受孔11b(図7参照)に回動可能に挿入されており、第3リンク25は、軸受孔11bに支持された状態で支軸25b周りに揺動可能となっている。図1に示すように、この支軸25bに右側可動アーム22の上部が固定されている。図5図7に示すように、第3リンク25の下部には、下方へ向かって先細に形成された先細部25cが設けられている。また、第3リンク25の支軸25bと先細部25cとの間には、バネ係合突起25dが形成されている。
【0036】
クランプ駆動装置40は、引っ張りバネ41と、電動モーター42と、操作ハンドル43と、動力伝達軸44と、電動モーター側クラッチ機構45と、操作ハンドル側クラッチ機構46と、クランプ部20に駆動力を伝達するカム47と、ストッパ48とを備えており、これらは装置本体10の正面板部11の裏側に配置されている。また、クランプ駆動装置40は、電動モーター42の回転力及び操作ハンドル43の回転力をクランプ部20に伝達するためのねじ歯車(ウォーム)50とはす歯歯車(ウォームホイール)51も備えている。
【0037】
引っ張りバネ41は、左右方向に延びるように配置されている。引っ張りバネ41の左端部は、装置本体10の正面板部11の左側に固定されている。引っ張りバネ41の右端部は、第3リンク25のバネ係合突起25dに係合した状態で固定されている。引っ張りバネ41は、第3リンク25の下側を左側へ常時付勢するように付勢力を作用させる。第3リンク25の下側が左側へ付勢されると、第3リンク25は支軸25b周りに回動して上側が右側へ移動し、この第3リンク25に連結されている第2リンク24は、右側へ移動する。第2リンク24の右側への移動により、第1リンク23は支軸23b周りに回動して下側が右側に回動する。第1リンク23及び第3リンク25の回動により、左側可動アーム21及び右側可動アーム22は、それらの下部が互いに接近する方向、即ち、チューブ100を閉塞する方向に回動する。引っ張りバネ41の付勢力は、左側可動アーム21及び右側可動アーム22によってチューブ100を潰して完全に閉塞できる力以上に設定されている。このチューブクランプ装置1は、引っ張りバネ41以外の外力(電動モーター42の回転力や操作ハンドル43の回転力)が伝達されない場合にはチューブ100を閉塞するように構成された、いわゆるノーマルクローズタイプの装置である。
【0038】
電動モーター42は、制御装置70により制御される。制御装置70は例えば人工心肺装置からの信号を受信し、必要に応じて電動モーター42を回転させるように構成されている。電動モーター42は、装置本体10の正面板部11の下部において、その出力軸が左側へ延びる姿勢で固定されている。電動モーター42の出力軸には、ワンウェイクラッチ42bを介して駆動ギヤ42aが取り付けられている。ワンウェイクラッチ42bは、電動モーター42の回転力を駆動ギヤ42aに伝達するが、駆動ギヤ42aが電動モーター42以外の外力によって回転した場合、その駆動ギヤ42aの回転力は電動モーター42の出力軸には伝達させないように構成されている。
【0039】
操作ハンドル43は、装置本体10の右側板部13の下部に左右方向に延びる軸周りに回転可能に支持されたベース部43aと、ベース部43aの回転中心線に対し直交する方向に延びるピン43bを介して該ベース部43aに支持された棒状のハンドル本体43cと、ハンドル本体43cの先端部に設けられたつまみ43dとを備えている。ハンドル本体43cは、ピン43b周りに回動して図5に実線にて示す格納状態と、図5に仮想線にて示す使用状態とに切り替えられるようになっている。図1に示すように、格納状態では、つまみ43dが装置本体10の右側板部13の上部に形成された収容孔13aに収容されるようになっている。ハンドル本体43cを使用状態にしてつまみ43dを手で持つことで操作ハンドル43をベース部43aの回転軸周りに容易に回転させることができるようになっている。
【0040】
図5に示すように、動力伝達軸44は、電動モーター42の出力軸よりも上方で、かつ、第1〜第3リンク23〜25よりも下方において左右方向に延びている。動力伝達軸44の左端部は、装置本体10の正面板部11に回転可能に支持されている。動力伝達軸44の左端部には、電動モーター42の回転力が入力されるようになっている。動力伝達軸44の右端部は、装置本体10の右側板部13に回転可能に支持されている。動力伝達軸44の右端部には、操作ハンドル43の回転力が入力されるようになっている。
【0041】
動力伝達軸44は、軸方向に3分割されており、左側軸部44a、中央軸部44b及び右側軸部44cで構成されている。左側軸部44aの左端部には、従動ギヤ44dが上記電動モーター42の駆動ギヤ42aと噛み合うように固定されている。左側軸部44aの右端部と中央軸部44bの左端部とは、電動モーター側クラッチ機構45を介して連結されている。電動モーター側クラッチ機構45は、ワンウェイクラッチであり、電動モーター42の回転力を中央軸部44bには伝達するが、中央軸部44bの回転力は電動モーター42に伝達しないように構成されている。
【0042】
動力伝達軸44の中央軸部44bには、ねじ歯車50が固定されている。中央軸部44bの右端部と右側軸部44cの左端部とは、操作ハンドル側クラッチ機構46を介して連結されている。操作ハンドル側クラッチ機構46は、ワンウェイクラッチであり、操作ハンドル43の回転力を中央軸部44bには伝達するが、中央軸部44bの回転力は操作ハンドル43に伝達しないように構成されている。操作ハンドル側クラッチ機構46の中央軸部44b側の部分(中央軸部44bに固定された側)には、突起46aが左側へ突出するように形成されている。突起46aの形成部位は、中央軸部44bから径方向に離れている。突起46aは中央軸部44bと回転一体である。この突起46aには、後述するストッパ48が係合するようになっている。また、動力伝達軸44の右側軸部44cの右端部に、上記操作ハンドル43のベース部43aが固定されている。
【0043】
上記はす歯歯車51は、装置本体10の正面板部11の裏面に突設された支軸11c(図7に示す)に回転一体に、かつ、上記ねじ歯車50に噛み合うように固定されている。この支軸11cの基端部は、正面板部11に対して表裏方向に延びる回転中心線周りに回転可能に支持されている。図6に示すように、はす歯歯車51と装置本体10の正面板部11との間には、上記カム47とストッパ48とを配設するためのスペースが設けられている。
【0044】
図7図12に示すように、カム47は、板状に形成されており、その中心部から偏位した部位に貫通孔47aが形成されている。この貫通孔47aには、上記装置本体10の正面板部11の支軸11cが挿通するようになっている。カム47が支軸11cに固定されて回転一体となっている。カム47の外周縁部47bは、上記第3リンク25の先細部25cに摺接するようになっており、この外周縁部47bの形状によって第3リンク25を所定のタイミングで、所定量回動させることができる。外周縁部47bは、カム47の回転中心線に最も近い最接近部47cと、回転中心線から最も離れた離間部47dと、最接近部47c及び離間部47dを繋ぐように滑らかに延びる中間部47eとで構成されている。
【0045】
カム47の回動により、最接近部47cが第3リンク25の先細部25cに対応する位置にくると、先細部25cと最接近部47cとは離れ、カム47は先細部25cに押圧力を作用させない状態になる。一方、カム47が図5の反時計周りに回動すると、中間部47eが第3リンク25の先細部25cに摺接し、この中間部47eは、離間部47dに近づくにつれて回転中心線から離れているので、カム47は先細部25cを右側へ押圧し、カム47の反時計周りへの回動角度が大きくなるほど、先細部25cの押圧量が大きくなる。これにより、第1及び第2リンク23、24も動き、チューブ100の閉塞状態にある左側可動アーム21及び右側可動アーム22が開放方向に回動していく。
【0046】
図13図15に示すように、ストッパ48は、ベース板部48aと、ベース板部48aから厚み方向に膨出する膨出部48bと、ベース板部48aに突設された縦板部48cとを有している。図6に示すように、ベース板部48aは、カム47と装置本体10の正面板部11の裏面との間において板厚方向に移動可能に配置されている。図13に示すように、ベース板部48aは、上下方向に長い形状である。ベース板部48aの上側には、円弧状の切欠部48dが形成されている。この切欠部48dに、装置本体10の支軸11cの一部が入るようになる。図6に示すように、ベース板部48aと装置本体10の正面板部11の裏面との間には、クランプ駆動装置40の一部を構成する部材としてコイルバネ53が配設されている。コイルバネ53は、ストッパ48を正面板部11から離れる方向に常時付勢している。ベース板部48aと装置本体10の正面板部11との間には、ベース板部48aが板厚方向に所定量(少なくとも膨出部48bの膨出量以上)、移動可能な隙間が形成されている。
【0047】
また、膨出部48bは、ベース板部48aの上側に位置しており、カム47側に膨出している。膨出部48bは、左右方向に長い形状であり、右側へ行くほど膨出量が小さくなっている。また、図5に示すように、膨出部48bは、カム47の最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分に嵌るようになっている。すなわち、ストッパ48がコイルバネ53による付勢力を受けているので、カム47が回動して最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分が膨出部48bと一致すると、ストッパ48全体が正面板部11から離れる方向に移動して膨出部48bが最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分に嵌る。
【0048】
膨出部48bは、第3リンク25が回動して先細部25cが左側へ移動したときに先細部25cに摺接するように配置されている。第3リンク25の先細部25cは、左側へ移動することによって膨出部48bを正面板部11側へ押すように形成されている。図10に示すように、先細部25cが膨出部48bを正面板部11側へ押すと、ストッパ48全体がコイルバネ53の付勢力に抗して正面板部11に接近する方向に移動して膨出部48bが最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分から出る。
【0049】
図15に示すように、縦板部48cは、側面視で略Y字状をなすように形成されており、幅方向中央部には、上記操作ハンドル側クラッチ機構46の突起46aが嵌る凹部48fが形成されている。膨出部48bが最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分に嵌ってストッパ48全体が正面板部11から離れた状態にあるときに(図6に示す)、凹部48fに突起46aが嵌り、一方、膨出部48bが最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分から出てストッパ48全体が正面板部11に接近する方向に移動した状態にあるときに(図10に示す)、突起46aが凹部48fから抜け出るようになっている。凹部48fに突起46aが嵌ると、操作ハンドル側クラッチ機構46の中央軸部44b側の回動が阻止される。また、突起46aが凹部48fから抜け出ると、操作ハンドル側クラッチ機構46の中央軸部44b側の回動が許容される。
【0050】
ロック装置60は、クランプ部20がチューブ100を開放状態にあるときに、その開放状態を保持して不意に閉塞状態にならないようにロック状態を作り出すためのものであり、ロック状態を解除する方法として、自動で解除する方法と、手動で解除する方法との両方に対応している。図6に示すように、ロック装置60は、制御装置70から出力される電気信号によって作動してロック状態を解除するソレノイド(自動ロック解除部)61と、手動操作によってロック状態を解除する手動操作部材(手動ロック解除部)62と、ソレノイド61及び手動操作部材62によって操作される単一のロック部材63と、ロック部材付勢バネ64とを有しており、これらは、装置本体10の正面板部11の裏側に配置されている。
【0051】
ロック部材63は、第1リンク23の上方に設けられ、左右方向に延びている。ロック部材63の左右方向中間部は、正面板部11から裏側へ突出する支軸11dに回動可能に支持されている。ロック部材63の左端部には、第1リンク23の爪部23aに引っ掛かって係合するように形成された係合凸部63aが設けられている。ロック部材63の左側には、ソレノイド61の出力軸が当接する当接板63bが設けられている。一方、ロック部材63の右側は上方へ延びており、図1に示すような切欠部63cを有している。手動操作部材62の左側が切欠部63cの周縁部に係合するようになっている。
【0052】
ソレノイド61は、装置本体10の左側板部12に固定されており、例えば周知の電磁ソレノイド等で構成することができる。ソレノイド61の出力軸は、上方へ突出するように設けられている。ソレノイド61は、制御装置70が開状態にあるクランプ部20を閉塞状態にする場合に作動するようになっている。図9に示すように、ソレノイド61の出力軸が進出するとロック部材63は、支軸11d周りに係合凸部63aが上に変位する方向に回動する。尚、図9ではソレノイド61の出力軸が進出状態で停止しているように示しているが、出力軸は進出後、直ちに後退するようになっている。
【0053】
手動操作部材62は、左右方向に長い棒状をなしている。手動操作部材62の右側は装置本体10の右側板部13を貫通して装置本体10の内外方向に延びている。この状態で、手動操作部材62を左右方向に移動させることができるようになっている。手動操作部材62の右端部には、ノブ62aが設けられており、このノブ62aが右側板部13に当接してストッパとして機能することにより手動操作部材62全体が装置本体10内に入らないようになっている。
【0054】
手動操作部材62における装置本体10内に位置する部位には、ロック部材付勢バネ64が設けられている。ロック部材付勢バネ64は、ロック部材63に対しロック方向(支軸11d周りに係合凸部63aが下へ変位する方向)に付勢力を与えている。
【0055】
手動操作部材62の左側には、ロック部材63がソレノイド61によって操作されたときに、該ロック部材63の動きを許容して該手動操作部材62を不動状態にする不感帯部62cが設けられている。不感帯部62cは、手動操作部材62の一部を小径にしてロック部材63の切欠部63cの周縁部に係合しないようにした部分である。
【0056】
次に、上記のように構成されたチューブクランプ装置1の動作について説明する。通常時には、チューブクランプ装置1は、人工心肺装置等から出力される信号に基づいてチューブ100を閉塞状態にしたり、開放状態にする。すなわち、チューブ100を開放状態にする場合には、制御装置70が電動モーター42に駆動信号を所定時間だけ出力し、電動モーター42を回転させる。電動モーター42の回転力は、駆動ギヤ42aを介して従動ギヤ44dを回転させ、動力伝達軸44の左側軸部44aに入力されて電動モーター側クラッチ機構45を介して中央軸部44bを回転させる。このときの電動モーター42の回転方向は、中央軸部44bを図5中の矢印方向に回転させる方向である。中央軸部44bの回転によってねじ歯車50が回転し、ねじ歯車50に噛み合っているはす歯歯車51が回転する。はす歯歯車51の回転により、支軸11cに固定されたカム47が矢印方向に回転し、カム47の外周縁部47bが第3リンク25の先細部25cを右側へ押圧して第1及び第3リンク23,24が動き、これにより、左側可動アーム21及び右側可動アーム22が開放方向に回動する。左側可動アーム21及び右側可動アーム22が開放状態になったときに電動モーター42を回転を停止させる(図2及び図5に示す状態)。
【0057】
動力伝達軸44に電動モーター側クラッチ機構45及び操作ハンドル側クラッチ機構46を設けているので、電動モーター42の回転力は上述のようにクランプ部20には伝達するが、操作ハンドル43には伝達しない。よって、操作ハンドル43が回転してしまうことはない。
【0058】
開放状態にするとき、ロック部材63の係合凸部63aがロック部材付勢バネ64によって下方へ付勢されているので、係合凸部63aが、開放状態になった第1リンク23の爪部23aに引っ掛かり、これにより、第1リンク23が閉塞方向に回動しないようにロックされる。
【0059】
また、開放状態になったときには、図5に示すように、ストッパ48の膨出部48bが、カム47の外周縁部47bの最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分に嵌るので、図6に示すようにストッパ48全体がコイルバネ53の付勢力によって装置本体10の正面板部11から離れる方向に移動する。これにより、ストッパ48の凹部48fに、操作ハンドル側クラッチ機構46の突起46aが嵌る。
【0060】
開放状態にある左側可動アーム21及び右側可動アーム22を閉塞状態にする場合には、制御装置70がソレノイド61に動作信号を出力し、図9に示すようにソレノイド61が出力軸を進出させる。ソレノイド61の出力軸は、ロック部材63の当接板63bに下方から当接して当接板63bを上方へ押圧する。このソレノイド61による押圧力を受けたロック部材63は、係合凸部63aが上方へ変位するように支軸11d周りに回動する。すると、係合凸部63aが第1リンク23の爪部23aから離脱し、第1〜第3リンク23〜25は、引っ張りバネ41の付勢力によって閉塞状態となるまで動き、これにより、左側可動アーム21及び右側可動アーム22が閉塞状態になる。
【0061】
ソレノイド61によってロック部材63を動かした場合には、手動操作部材62に不感帯部62cが設けられているので、ロック部材63の動きによって手動操作部材62が動くことはない。
【0062】
第3リンク25が閉塞状態になると、第3リンク25の先細部25cがストッパ48の膨出部48bを正面板部11に接近する方向に押圧するので、ストッパ48全体が正面板部11に接近する方向に移動して、図10に示すように、操作ハンドル側クラッチ機構46の突起46aがストッパ48の凹部48fから出て中央軸部44bが回転可能になる。
【0063】
以上が通常時における動作であるが、例えば、停電時のように電源の供給が無い時や、電動モーター42やソレノイド61が故障した場合には、手動でチューブクランプ装置1を操作することができる。
【0064】
チューブ100を開放状態にする場合には、まず、操作ハンドル43のハンドル本体43cをピン43b周りに回動させて図5に仮想線で示すように使用状態に切り替える。その後、操作ハンドル43のつまみ43dを持って手で操作ハンドル43を矢印方向に回す。このとき、操作ハンドル側クラッチ機構46の突起46aがストッパ48の凹部48fから出て中央軸部44bが回動可能になっているので、操作ハンドル43の回転を阻止することはない。
【0065】
操作ハンドル43の回転力は、動力伝達軸44の右側軸部44cに入力されて操作ハンドル側クラッチ機構46を介して中央軸部44bを回転させる。中央軸部44bの回転によってねじ歯車50及びはす歯歯車51が回転し、支軸11cに固定されたカム47が矢印方向に回転する。これにより、左側可動アーム21及び右側可動アーム22が開放方向に回動する。左側可動アーム21及び右側可動アーム22が開放状態になったときに、ストッパ48の膨出部48bが、カム47の外周縁部47bの最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分に嵌る。これにより、ストッパ48の膨出部48bがカム47の回動を阻止するので、開放状態となった後に操作ハンドル43を更に回転させることはできなくなり、カム47を停止させることができる。
【0066】
動力伝達軸44に電動モーター側クラッチ機構45及び操作ハンドル側クラッチ機構46を設けているので、操作ハンドル43の回転力は上述のようにクランプ部20には伝達するが、電動モーター42には伝達しない。よって、操作ハンドル43の操作力は軽く、操作性が良好である。
【0067】
また、ストッパ48の膨出部48bが、図5に示すようにカム47の外周縁部47bの最接近部47cと離間部47dとの間の窪んだ部分に嵌ると、図6に示すようにストッパ48全体がコイルバネ53の付勢力によって装置本体10の正面板部11から離れる方向に移動する。これにより、ストッパ48の凹部48fに、操作ハンドル側クラッチ機構46の突起46aが嵌るので、カム47を停止させることができる。
【0068】
左側可動アーム21及び右側可動アーム22を開放状態にするとき、ロック部材63の係合凸部63aがロック部材付勢バネ64によって下方へ付勢されているので、係合凸部63aが、開放状態になった第1リンク23の爪部23aに引っ掛かり、これにより、第1リンク23が閉塞方向に回動しないようにロックされる。
【0069】
開放状態にある左側可動アーム21及び右側可動アーム22を閉塞状態にする場合には、図11に示すように手動操作部材62を右側へ引っ張る。すると、手動操作部材62の左側がロック部材63の切欠部63cの周縁部に係合し、ロック部材63は、係合凸部63aが上方へ変位するように支軸11d周りに回動する。これにより、係合凸部63aが第1リンク23の爪部23aから離脱し、第1〜第3リンク23〜25は、引っ張りバネ41の付勢力によって閉塞状態となるまで動き、これにより、左側可動アーム21及び右側可動アーム22が閉塞状態になる。
【0070】
第3リンク25が閉塞状態になると、第3リンク25の先細部25cがストッパ48の膨出部48bを正面板部11に接近する方向に押圧するので、ストッパ48全体が正面板部11に接近する方向に移動して、操作ハンドル側クラッチ機構46の突起46aがストッパ48の凹部48fから出て中央軸部44bが回転可能になる。
【0071】
以上説明したように、この実施形態に係るチューブクランプ装置1によれば、クランプ部20を駆動する電動モーター42と操作ハンドル43とを設け、電動モーター42の回転力を操作ハンドル43には伝達しないようにするとともに、操作ハンドル43の操作力を電動モーター42には伝達しないようにしている。これにより、停電時等に、簡単に、かつ、誤動作を起こすことなく、クランプ部20を操作してチューブ100の閉塞と開放とを切り替えることができる。
【0072】
また、操作ハンドル43を操作してカム47を回動させる際、カム47の回動角度がチューブ100を開放する角度となったときにストッパ48によってカム47を停止させるようにしたので、カム47が回動し過ぎるをの防止することができる。
【0073】
また、クランプ部20をロックするロック装置60を設けたので、クランプ部20をチューブ100の開放状態で確実にロックして誤作動を防止できる。そして、ロック装置60が、自動でロックを解除するためのソレノイド61と、手動でロックを解除する手動操作部材62とを備えているので、停電等の際には、ロックを手動で容易に解除できるようにして利便性を向上させることができる。
【0074】
また、ソレノイド61及び手動操作部材62によって単一のロック部材63を操作する場合に、手動操作部材62に不感帯部62cを設けてソレノイド61の操作によってロック部材63が操作されたときの動きを許容して手動操作部材62を不動状態にすることができる。よって、手動操作部材62が不必要に動くことはなく、信頼性を高めることができる。
【0075】
尚、上記実施形態では、チューブ100の開放状態でクランプ部20をロック装置60によってロックするようにしているが、これに限らず、チューブ100の閉塞状態でロックするようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、左側可動アーム21及び右側可動アーム22を第1〜第3リンク23〜25で連結して連動させるようにしているが、これに限らず、左側可動アーム21及び右側可動アーム22を歯車等で連動させるようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、左側可動アーム21及び右側可動アーム22を共に動かして開放状態と閉塞状態とに切り替えるようにしているが、これに限らず、一方のアームを固定しておき、他方のアームのみ動かすようにしてもよい。
【0078】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明に係るチューブクランプ装置1は、例えば、人工心肺装置等のチューブを閉塞する場合に用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 チューブクランプ装置
10 装置本体
20 クランプ部
21 左側可動アーム
22 右側可動アーム
40 クランプ駆動装置
42 電動モーター
43 操作ハンドル
45 電動モーター側クラッチ機構
46 操作ハンドル側クラッチ機構
47 カム
48 ストッパ
60 ロック装置
61 ソレノイド(自動ロック解除部)
62 手動操作部材(手動ロック解除部)
63 ロック部材
63c 不感帯部
70 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15