特許第6089770号(P6089770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6089770-誘電体磁器組成物および電子部品 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6089770
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】誘電体磁器組成物および電子部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/468 20060101AFI20170227BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20170227BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C04B35/468 200
   H01G4/12 358
   H01G4/30 301E
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-35141(P2013-35141)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-162679(P2014-162679A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森ケ▲崎▼ 信人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝
(72)【発明者】
【氏名】福岡 智久
(72)【発明者】
【氏名】松永 裕太
(72)【発明者】
【氏名】小松 和博
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241129(JP,A)
【文献】 特開2002−087880(JP,A)
【文献】 特開2009−203089(JP,A)
【文献】 特開2011−201761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
H01B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式ABO(AはBa、CaおよびSrから選ばれる少なくとも1つであり、BはTiおよびZrから選ばれる少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を主成分として含有し、
前記AをBa1−x−yCaSr、前記BをTi1−zZrと表した場合に、0≦x≦0.1,0≦y≦0.1および0≦z≦0.3であり、
前記化合物100モルに対して、副成分として
Raの酸化物(RaはDy、GdおよびTbからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、Ra換算で0.6モル以上1.4モル以下、
Rbの酸化物(Rbは、HoおよびYからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、Rb換算で、0.2モル以上0.7モル以下、
Rcの酸化物(Rcは、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、Rc換算で、0.2モル以上0.7モル以下、
Mgの酸化物を、Mg換算で、0.6モル以上1.6モル以下
Siを含む化合物を、Si換算で、0.6モル以上1.2モル未満、含有することを特徴とする誘電体磁器組成物。

【請求項2】
前記Raの酸化物、Rbの酸化物、Rcの酸化物の総量がそれぞれRa、Rb、Rc換算で、1.5モル以上2.4モル以下であり、かつRaの酸化物、Mgの酸化物、Siの酸化物のモル比率が点A(28、34、38)、点B(37、27、37)、点C(41、35、24)、点D(27、46、27)の4点に囲まれた範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
副成分として、さらにV、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物を、V、MoおよびW換算で、0.05〜0.10モル含有する請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項4】
副成分として、さらにMnおよび/またはCrの酸化物を、MnおよびCr換算で、0.10〜0.20モル含有する請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
【請求項5】
焼結後の平均粒子径が150nm〜260nmである請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
【請求項6】
Ba/Ti=1.004〜1.015である請求項1〜5のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の誘電体磁器組成物から構成される誘電体層と、電極層とを有するセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物、および該誘電体磁器組成物から構成される誘電体層を有するセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、小型で高性能、かつ高信頼性を有する電子部品として広く利用されている。特に電気機器および電子機器に多数、利用されている。近年、電気機器および電子機器が小型化かつ高性能化するに伴い、積層セラミックコンデンサに対して、更なる小型化、高性能化および信頼性の向上の要求が高まっている。このような要求に答える積層セラミックコンデンサとして特許文献1、2に記載されている積層セラミックコンデンサが提唱されている。
【0003】
しかしながら、近年、積層セラミックコンデンサのさらなる小型化、大容量化の要求が高まっており、誘電体層の薄層、多層化が必須となっている。
【0004】
したがって、薄層、多層化した場合でも十分な信頼性と良好な温度特性が得られる誘電体磁器組成物の要求が大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−223471
【特許文献2】特開2011−201761
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされ、従来よりも誘電体層を薄層化して誘電体層にかかる電界強度が高くなった場合や、誘電体層数を増やした場合であっても、良好な温度特性と十分な信頼性を満足する誘電体磁器組成物および電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘電体磁器組成物は、一般式ABO(AはBa、CaおよびSrから選ばれる少なくとも1つであり、BはTiおよびZrから選ばれる少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を主成分として含有し、前記化合物100モルに対して、副成分としてRaの酸化物(RaはDy、GdおよびTbからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、Ra換算で0.6〜1.4モル、Rbの酸化物(Rbは、HoおよびYからなる群から選ばれる少なくとも1つである)をRb換算で、0.2〜0.7モル、Rcの酸化物(Rcは、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つである)を、Rc換算で、0.2〜0.7モル、Mgの酸化物を、Mg換算で、0.6〜1.2モル、Siの酸化物を、Si換算で、0.6〜1.2モル(1.2モルは含まない)含有することを特徴とする。
【0008】
また、前記Ra、Rb、Rcの総量が、それぞれRa、Rb、Rc換算で、1.5モル以上2.4モル以下であり、かつRaの酸化物、Mgの酸化物、Siの酸化物のモル比率が点A(28、34、38)、点B(37、27、37)、点C(41、35、24)、点D(27、46、27)の4点に囲まれた範囲内であることが好ましい。
【0009】
副成分として、さらにV、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物を、V、MoおよびW換算で、0.05〜0.10モル含有することが好ましい。
【0010】
副成分として、さらにMnおよび/またはCrの酸化物を、MnおよびCr換算で、0.10〜0.20モル含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る誘電体磁器組成物は、平均粒径は150nm〜260nmであることが好ましい。また、Ba/Ti=1.004〜1.015であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るセラミック電子部品は、上記誘電体磁器組成物から構成される誘電体層と、電極層とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
図2図2は、実施例1の試料1〜40のうち、Raの酸化物、Rbの酸化物、Rcの酸化物、Mgの酸化物、Siの酸化物の範囲が本発明の範囲内である試料を図示した三角図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対抗する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0015】
コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、図1に示すように、通常、直方体とされる。また、その寸法にも特に制限はない。
【0016】
誘電体層2は、本実施形態に係る誘電体磁器組成物から構成されている。本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、主成分として、一般式ABO(AはBa、CaおよびSrから選ばれる少なくとも1つであり、BはTiおよびZrから選ばれる少なくとも1つである)で表される化合物を有している。また、誘電体磁器組成物は、主成分がABOである誘電体粒子を有している。
【0017】
一般式ABOで表される化合物の具体例として、{(Ba1−x−yCaSr)O}(Ti1−zZrで表される化合物が挙げられる。なお、u、v、x、y、zはいずれも任意の範囲であるが、以下の範囲であることが好ましい。
【0018】
上記式中、xは好ましくは0≦x≦0.1、より好ましくは0≦x≦0.05ある。xを前記範囲とすることにより、本発明に係る誘電体磁器組成物から構成される誘電体層の温度特性や比誘電率を好ましい範囲に制御することができる。xが大きすぎると、誘電体層の比誘電率が低くなりすぎる傾向にある。また、本実施形態においては、必ずしもCaを含まなくても良い。すなわち、xが0でもよい。
【0019】
上記式中、yは好ましくは0≦y≦0.1、より好ましくは0≦y≦0.05である。yを前記範囲とすることにより、本発明に係る誘電体磁器組成物から構成される誘電体層の比誘電率を向上させることができる。yが大きすぎると、誘電体層の温度特性が悪化する傾向にある。また、本実施形態においては、必ずしもSrを含まなくても良い。すなわち、yが0でもよい。
【0020】
上記式中、zは好ましくは、0≦z≦0.3、より好ましくは0≦z≦0.15である。zを上記範囲とすることにより、本発明に係る誘電体磁器組成物から構成される誘電体層の比誘電率を向上させることができる。zが大きすぎると、誘電体層の温度特性が悪化する傾向にある。また、本実施形態においては必ずしもZrを含まなくても良い。すなわち、zが0でもよい。
【0021】
また、誘電体磁器組成物に含まれるBaとTiの比がBa/Ti=1.004〜1.015であることが好ましく、より好ましくは1.007〜1.012である。Ba/Tiが高すぎると焼結不足気味になり比誘電率が低下し、信頼性も低下する傾向にあり、Ba/Tiが低すぎると焼成安定性が悪化し、温度特性が悪化する傾向にある。
【0022】
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、上記の主成分に加え、副成分として、Raの酸化物とRbの酸化物とRcの酸化物と、Mgの酸化物とSiの酸化物と、を含有する。ここで、RaはDy、GdおよびTbからなる群から選ばれる少なくとも1つである。RbはHoおよびYからなる群から選ばれる少なくとも1つである。RcはYbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0023】
ABO、100モルに対するRaの酸化物の含有量をαとすると、αはRa換算で、0.6モル以上1.4モル以下、好ましくは0.7モル以上1.2モル以下である。αが多すぎると、比誘電率が低下し、温度特性が悪化する傾向にある。逆に少なすぎると、誘電体層の高温負荷寿命が悪化する傾向にある。また、RaとしてDyを含むことが特に好ましい。
【0024】
ABO、100モルに対するRbの酸化物の含有量をβとすると、βはRb換算で0.2モル以上0.7モル以下、好ましくは0.2モル以上0.6モル以下である。βが多すぎると、誘電体層の比誘電率が低下し、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。逆に少なすぎると、誘電体層の温度特性が悪化する傾向にある。また、RbとしてHoを含むことが特に好ましい。
【0025】
ABO、100モルに対するRcの酸化物の含有量をγとすると、γはRc換算で、0.2モル以上0.7モル以下、好ましくは0.2モル以上0.5モル以下である。γが多すぎると、誘電体層の比誘電率が低下し、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。逆に少なすぎると、誘電体層の温度特性が悪化する傾向にある。また、RcとしてYbを含むことが特に好ましい。
【0026】
また、α、β、γの総量RTはそれぞれRa、Rb、Rc換算で1.5モル以上2.4モル以下にすることが好ましく、より好ましくは、1.5モル以上2.0モル以下である。RTが多すぎるとRa、Rb、Rcが誘電体層中に偏析するため、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。逆に少なすぎると誘電体層の温度特性が悪化する傾向にある。
【0027】
本実施形態では、ABOが主成分である誘電体粒子には、副成分の金属元素、例えばRa、Rb、Rcが固溶している。なお、誘電体粒子は、いわゆるコアシェル構造を有していることが好ましいが、完全固溶系の粒子が含まれていても構わない。
【0028】
本実施形態では、特定の希土類元素をRa、Rb、Rcに分類しているが、当該分類は、希土類元素の6配位時の有効イオン半径の値に基づいて行っている。有効イオン半径に関して、Aサイト原子との差が小さい希土類元素はAサイトを置換(固溶)しやすく、Aサイト原子との差が大きい希土類元素は、Aサイトを置換(固溶)しにくい傾向にある。
【0029】
本実施形態では、Aサイト原子とのイオン半径の差が小さい希土類元素がRaに該当し、差が大きい希土類元素がRcに該当する。RaとRcとでは、ABOへの固溶の度合いが異なり、RaはABOに完全固溶しやすい傾向にある。RcはABOの周辺部のみに固溶し、いわゆるコアシェル構造を形成しやすい傾向にある。その結果、Raを誘電体磁器組成物に添加すると誘電体磁器組成物の高温負荷寿命を向上させるものの、温度特性が悪化する傾向にある。一方、Rcを誘電体磁器組成物に添加すると、誘電体磁器組成物の温度特性を良好にできるものの、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。また、RbはAサイト原子とのイオン半径の差が、おおむねRaとRcとの中間である
【0030】
本実施形態では、Ra、Rb、Rcの3種類の希土類元素のグループの含有量を調整することにより、Ra、Rb、Rcの固溶状態を制御し、良好な温度特性と優れた高温負荷寿命を両立させることが実現できた。
【0031】
また、本実施形態では、誘電体磁器組成物に、さらにMgの酸化物を含有させる。Mgの酸化物の含有量は、ABO、100モルに対して、MgO換算で0.6〜1.2モル、より好ましくは0.7〜1.1モルである。Mgの酸化物の含有量が多すぎると、誘電体層の高温負荷寿命が悪化する傾向にある。逆に少なすぎると、誘電体粒子の異常粒成長を引き起こし、誘電体層の温度特性が悪化する傾向にある。
【0032】
また、本実施形態では、誘電体磁器組成物に、さらにSiの酸化物を含有させる。Siの酸化物は、主に焼結助剤としての役割を有している。また、Siの酸化物の含有量は、ABO 100モルに対して、Si換算で、0.6モル以上1.2モル未満、より好ましくは0.8モル以上1.1モル以下である。Siの酸化物が多すぎると、高温負荷寿命および誘電体層の温度特性が悪化する傾向にある。また、Siの酸化物が少なすぎると、高温負荷寿命およびCR積が悪化する傾向にある。なお、本願実施形態では、酸化物には複合酸化物が含まれるものとする。
【0033】
以上より、本実施形態では、希土類元素Ra、RbおよびRcの総量を、ABO 100モルに対して、1.5モル以上2.4モル以下に制御することで比誘電率が向上し誘電体層の層間厚みを厚く設計できるため、ひいてはセラミック電子部品の寿命が向上する。また、Raの酸化物、Rbの酸化物、Rcの酸化物、Mgの酸化物およびSiの酸化物の比率を制御することで、所望の容量温度特性を維持したまま、寿命をさらに向上できる。
【0034】
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、副成分としてさらに、V、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の酸化物と、Mnおよび/またはCrの酸化物とを含有することが好ましい。上記の成分を含有することで、より特性を向上させることができる。本実施形態ではMnがCrよりも信頼性の観点で好ましい。
【0035】
V、MoおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸化物の含有量は、ABO、100モルに対して、V、MoおよびW換算で、好ましくは0.03モル以上0.10モル以下、より好ましくは0.05モル以上0.09モル以下である。上記酸化物の含有量が多すぎると、絶縁抵抗(CR積)が低下する傾向にある。また、本実施形態ではVを用いることが好ましい。
【0036】
また、Mnおよび/またはCrの酸化物の含有量は、ABO、100モルに対して、Mnおよび/またはCr換算で、好ましくは0.10モル以上0.20モル以下である。Mnおよび/またはCrの酸化物の含有量が多すぎても少なすぎても、絶縁抵抗(CR積)が低下する傾向にある。
【0037】
本実施形態に係る誘電体磁器組成物に含まれる誘電体粒子の焼結後の平均結晶粒子径は特に制限されないが、誘電体層の薄層化の要求に応えるため、好ましくは150〜260nm、さらに好ましくは170〜250nmである。平均結晶粒子径が小さいと、比誘電率が低下し、温度特性が悪化する傾向がある。また、平均結晶粒子径が大きいと、高温負荷寿命が悪化する傾向がある。また、本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、所望の特性に応じて、さらにその他の成分を含有していても良い。
【0038】
本実施形態に係る誘電体層の厚みは特に制限されないが、1.0μm以上10.0μm以下が好ましい。
【0039】
誘電体層の積層数は特に制限されないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特に好ましくは100以上である。積層数の上限は、特に限定されないが、例えば2000程度である。
【0040】
内部電極層に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層を構成する材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各微量成分が合計0.1重量%程度以下含まれていても良い。内部電極層の厚さは用途に応じて適宜変更でき、特に限定されない。通常、0.1〜3.0μm、好ましくは0.5〜2.0μm程度である。
【0041】
外部電極に含有される導電材は特に限定されないが、本実施形態では安価なNi、Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
【0042】
(積層セラミックコンデンサ1の製造方法)
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0043】
まず、誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を準備し、これを塗料化して、誘電体層を形成するためのペースト(誘電体層用ペースト)を調製する。
【0044】
誘電体原料として、まずABOの原料とRa、RbおよびRcの酸化物の原料とを準備する。これらの原料としては、上記した成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。ABOとしてはBaTiOで表されるチタン酸バリウムを用いることが好ましい。
【0045】
また、前記ABOの原料としてBaTiで表されるチタン酸バリウムを用いる場合には、u/vが1.000≦u/v≦1.005の範囲内であることが好ましい。
【0046】
ABOの原料は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。
【0047】
誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体原料の粒径は、通常、平均粒径0.1〜1μm程度である。
【0048】
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、誘電体原料と水系ビヒクルとを混練した水系の塗料であってもよい。
【0049】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。バインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等、一般的な有機ビヒクルに用いられる各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0050】
水系ビヒクルとは、水溶性バインダや分散剤などを水中に溶解したものである。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂等、一般的な水系ビヒクルに用いられる各種バインダから適宜選択すればよい。
【0051】
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。また、内部電極層用ペーストには、共材が含まれていてもよい。共材としては特に制限されないが、主成分と同様の組成を有していることが好ましい。
【0052】
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0053】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜10重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0054】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0055】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷し内部電極パターンを形成した後、これらを積層してグリーンチップとする。
【0056】
(脱バインダ条件)
脱バインダ条件に特に制限はないが、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜48時間とする。また脱バインダの雰囲気は、空気中もしくは還元雰囲気中とすることが好ましい。
【0057】
(焼成条件)
脱バインダ後、グリーンチップの焼成を行う。焼成条件に特に制限はないが、昇温速度を好ましくは100〜1000℃/時間とする。焼成時の保持温度は、好ましくは1300℃以下、より好ましくは1150〜1280℃であり、焼成時の保持時間は、好ましくは0.5〜20時間、より好ましくは1.0〜15時間である。保持温度が低すぎると緻密化が不十分となりやすく、高すぎると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
【0058】
焼成の雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましい。雰囲気ガスには特に制限はなく、例えば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることが出来る。
【0059】
また、焼成時の酸素分圧は、内部電極用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定すればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は10−14〜10−10MPaとすることが好ましい。酸素分圧が低すぎると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が高すぎると、内部電極層が酸化する傾向にある。降温速度に特に制限はないが、好ましくは50〜1000℃/時間である。
【0060】
(アニール条件)
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体にはアニール処理を施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより誘電体層の絶縁抵抗(IR)を著しく上げることができ、信頼性(IR寿命)も向上することができる。
【0061】
アニールの雰囲気に特に制限はないが、酸素分圧を10−9〜10−5MPaとすることが好ましい。酸素分圧が低すぎると誘電体層の再酸化が困難であり、高すぎると内部電極層が酸化する傾向にある。
【0062】
アニールの際の保持温度に特に制限はないが、1100℃以下とすることが好ましく、950〜1090℃とすることが特に好ましい。保持温度が低すぎると誘電体層の酸化が不十分になりやすく、誘電体層の絶縁抵抗(IR)が低くなり信頼性(IR寿命)も低下する傾向にある。一方、保持温度が高すぎると、内部電極層が酸化してコンデンサの容量が低下しやすくなるだけでなく、内部電極層が誘電体層と反応して、誘電体層の温度特性の悪化、IRの低下、IR寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニール工程は昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
【0063】
上記以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜4時間、降温速度を好ましくは50〜1000℃/時間、より好ましくは100〜600℃/時間とする。またアニールの雰囲気ガスに特に制限はないが、例えば、加湿したNガスを用いることが好ましい。
【0064】
上記脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するためには、例えばウェッター等を使用すればよい。ウェッターを使用する場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
【0065】
脱バインダ処理、焼成、アニールは連続して行ってもよく、それぞれ独立に行ってもよい。
【0066】
(実施例1)
まず、ABOの原料粉体として平均粒子径が200nmのBaTiO粉末(u/v=1.004)を、Raの酸化物原料としてDy粉末を、Rbの酸化物の原料としてHo粉末を、Rcの酸化物の原料としてYb粉末を、それぞれ準備した。また、Baの酸化物の原料としてBaCO粉末を、Mgの酸化物の原料としてMgO粉末を、Mnの酸化物の原料としてMnCO粉末を、Vの酸化物の原料としてV粉末を、焼結助剤としてSiO粉末を、それぞれ準備した。
【0067】
次に、上記で準備した各原料粉末を、表1に示す量となるように秤量し、ボールミルで20時間湿式混合・粉砕し、乾燥して、誘電体原料を得た。また、BaCOとMnCOは、焼成後にはそれぞれBaO、MnOとして誘電体磁器組成物中に含有されることとなる。焼結後のBa/Ti比率が1.010となるようにBaCOを0.6mol%添加した
【0068】
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0069】
また、上記とは別に、Ni粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0070】
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが4.5μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0071】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
【0072】
脱バインダ処理条件は、昇温速度25℃/時間、保持温度:235℃、保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
【0073】
焼成条件は、昇温速度200℃/時間、保持温度1260℃とし、保持時間を2時間とした。降温速度は200℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN+H混合ガスとし、酸素分圧が10−12MPaとなるようにした。
【0074】
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1050℃、保持時間:3時間、降温速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−7MPa)とした。
【0075】
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを使用した。
【0076】
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をバレル研磨した後、外部電極としてCuペーストを塗布し、還元雰囲気にて焼付け処理をおこない、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサの試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.7mmであり、誘電体層の層間厚みは3.0μm、内部電極厚み1.0μmとした。また、一般的に内部電極に挟まれた誘電体層の数が増えると、高温負荷寿命などの信頼性は低下する傾向にあることから、本発明の実施例では誘電体層の数を100層として高温負荷寿命の変化を観察しやすくした。
【0077】
得られたコンデンサ試料について、比誘電率、CR積、125℃での容量変化率および高温負荷寿命(HALT)、焼結体平均粒子径の測定を、それぞれ下記に示す方法により行った。
【0078】
(比誘電率)
比誘電率εrは、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃においてデジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1.0kHz、入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定した。コンデンサ試料に対し、150℃にて1時間熱処理を行い、24時間後の静電容量値から比誘電率εrを算出した(単位なし)。比誘電率は高い方が好ましく、本実施例では2200以上を良好とした。結果を表1に示す。
【0079】
(CR積)
コンデンサ試料に対し、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、25℃において25Vの直流電圧を1分間印加した後の絶縁抵抗IRを測定した。CR積は、上記にて測定した静電容量C(単位はμF)と絶縁抵抗IR(単位はMΩ)との積を求めることにより算出した。CR積は高い方が好ましく、本実施例では500以上を良好とし、1000以上を特に良好とした。結果を表1に示す。
【0080】
(125℃での容量変化率(温度特性))
コンデンサ試料に対し、周波数1.0kHz、入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で、−55℃〜125℃における静電容量を測定し、25℃における静電容量を基準として静電容量の変化率ΔCを算出し、EIA規格の温度特性であるX7R特性を満足するか否かについて評価した。本実施例では高温側(125℃)での容量変化率ΔCが±15%以内であるか否かを評価した。125℃での容量変化率が±15%を満足していれば−55℃での容量変化率もX7R特性を満足できる。結果を表1に示す。
【0081】
(高温負荷寿命)
コンデンサ試料に対し、175℃にて25V/μmの電界下で直流電圧の印加状態を保持し、コンデンサ試料の絶縁劣化時間を測定することにより、高温負荷寿命を評価した。本実施例においては、電圧印加開始から絶縁抵抗が1桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。また、本実施例では、上記の評価を20個のコンデンサ試料について行い、これをワイブル解析することにより算出した平均故障時間(MTTF)をそのサンプルの平均寿命と定義した。本実施例では、平均寿命50時間以上を良好とし、100時間以上を特に良好とした。結果を表1に示す。
【0082】
(焼結体平均粒子径)
誘電体粒子の平均結晶粒径の測定方法としては、まず、得られたコンデンサ試料を内部電極に垂直な面で切断し、その切断面を研磨した。そして、その研磨面にケミカルエッチングを施し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行い、約1000個の粒子をカウントし誘電体粒子の形状を球と仮定して算出した。実施例1では、焼結体平均粒子径は210nmであった。
【0083】
【表1】
【0084】
表1により、Ra酸化物、Rb酸化物、Rc酸化物、Mg酸化物およびSi酸化物の含有量が本発明の範囲内の場合には、X7R特性を満足しつつ、良好な高温負荷寿命が得られ、しかも高い比誘電率が得られることが確認できた。さらに、Ra酸化物とRb酸化物、Rc酸化物の総量RTが1.5モル以上2.4モル以下であり、かつRa酸化物とMg酸化物、Si酸化物の組成比が図2の点線の範囲内である場合には、X7R特性を維持したまま高温負荷寿命が特に向上することが確認できた。
【0085】
ここで、図2は、試料番号1〜40のうち、Ra酸化物、Rb酸化物、Rc酸化物、Mg酸化物およびSi酸化物の含有量が本発明の範囲内の試料について、Ra、Mg、Siの酸化物のモル比率を図示したものである。点線および頂点の○は、点A(28、34、38)、点B(37、27、37)、点C(41、35、24)、点D(27、46、27)の4点に囲まれた範囲を図示したものである。◎は点線の範囲内の試料であり、Ra、Rb、Rcの総量RTが1.5モル以上2.4モル以下の試料である。
【0086】
△は、Ra酸化物、Rb酸化物、Rc酸化物、Mg酸化物およびSi酸化物の含有量が本発明の範囲内であるが、Ra、Mg、Siの酸化物のモル比率が4点に囲まれた範囲外の試料である。
【0087】
▽は、試料番号23であり、Ra、Mg、Siの酸化物のモル比率が4点に囲まれた範囲内であるが、Ra、Rb、Rcの総量RTが2.5モルであり、1.5モル以上2.4モル以下の範囲外の試料である。
【0088】
図2において◎、△、▽で表した試料は、全て好ましい特性を得ることができる。その中でも、◎で表した試料は、総合評価で特に好ましい特性を得られることが確認できた。
【0089】
また、試料番号30のようにRa酸化物とSi酸化物の量に対してMg酸化物が過剰に入る場合や試料番号31のようにRa酸化物やMg酸化物に対して極端にSi酸化物が少ない場合は、今回の焼成条件では焼結不足となり、誘電体層部が十分緻密化されないことから、電気的導通が取れなくなるため各測定の評価ができなかった。
【0090】
表1で◎を付けた試料はRa酸化物、Rb酸化物、Rc酸化物、Mg酸化物およびSi酸化物の含有量が本発明の範囲内であり、Ra、Mg、Siの酸化物のモル比率が4点に囲まれた範囲内であり、さらにRa、Rb、Rcの総量RTが1.5モル以上2.4モル以下の範囲内の試料である(図2の◎)。※を付けた試料は、Ra酸化物、Rb酸化物、Rc酸化物、Mg酸化物およびSi酸化物の含有量が本発明の範囲外の試料である。無印の試料は、Ra酸化物、Rb酸化物、Rc酸化物、Mg酸化物およびSi酸化物の含有量が本発明の範囲内であるが、Ra、Mg、Siの酸化物のモル比率が4点に囲まれた範囲外である(図2の△)か、Ra、Rb、Rcの総量RTが1.5モル以上2.4モル以下の範囲外である(図2の▽)。
【0091】
(実施例2)
Ra、Rb、Rcの含有量を表2に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様の方法で積層セラミックコンデンサの試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。また、Ra、Rb、Rc以外の添加物元素の組成は試料番号19と同一とした。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2よりRa、RbおよびRcとして、Dy、Ho、Yb以外の元素を用いた場合であっても、含有量が本発明の範囲内であれば同様の効果が得られることが確認できた。また、表2で◎をつけた試料は、RaとしてDy、RbとしてHo、RcとしてYbを用いた試料である。この場合、寿命・比誘電率・CR積が特にバランスよく好適に得られることが確認できた。
【0094】
(実施例3)
Ra、Rb、Rcの酸化物元素を表3に記載のとおりとした以外は、実施例1と同様の方法で積層セラミックコンデンサの試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。また、Ra、Rb、Rc以外の添加物元素の組成は試料番号19と同一とした。結果を表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
表3で、※を付けた試料は、希土類元素が2種類以下の試料である。この場合には、所望する特性が得られないことが確認できた。
【0097】
(実施例4)
Vの酸化物およびMnの酸化物の含有量を変化させた以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサ試料を作製し、実施例1と同様の特性評価を行った。なお、試料番号64については、MnOに変わってCrを、試料番号65と試料番号66はVに変わってWOとMoOを用いた。また、その他の添加物元素の組成は試料番号19と同一とした。結果を表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
表4で、◎を付けた試料は、V(W、Mo)の酸化物およびMn(Cr)の酸化物の含有量が0.05モル以上0.10モル以下の試料である。この場合、CR積および高温負荷寿命が特に優れていることが確認できた。
【0100】
(実施例5)
主成分となる原料のチタン酸バリウムの平均粒子径を130nm(試料番号73)、250nm(試料番号74)に変化させた以外は実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサ試料を作製し、焼結後の平均粒子径を測定したほか、実施例1と同様の特性評価を行った。また、各種の添加物元素の組成は試料番号19と同一とした。結果を表5に示す。
【0101】
また、主成分となる原料のチタン酸バリウムの平均粒子径は200nmとして、Ba/Ti比率を表5のように変化させた以外は実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサ試料(試料番号75a、75、76、76a)を作製し、焼結後の平均粒子径を測定したほか、実施例1と同様の特性評価を行った。焼結後のBa/Ti比を表5に記載されている値とするための調整は、例えばチタン酸バリウムの原料のu/vを1.004とし、試料番号75ではBaOを添加せず、試料番号76では、主成分とは別にBaOを添加することにより行った。また、各種の添加物元素の組成は試料番号19と同一とした。結果を表5に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
表5より、焼結後の粒子径が小さい場合には比誘電率が低下し、容量変化率が悪化するが、高温負荷寿命が優れる傾向がある。焼結後の粒子径が大きいと、容量変化率が優れるが、高温負荷寿命が低下する傾向がある。また、Ba/Ti比が小さいと容量変化率が悪化し、焼成安定性も悪化する傾向がある。Ba/Ti比が大きいと、CR積と高温負荷寿命が低下するが、容量変化率が優れる傾向がある。
【符号の説明】
【0104】
1・・・ 積層セラミックコンデンサ
2・・・ 誘電体層
3・・・ 内部電極層
4・・・ 外部電極
10・・・ コンデンサ素子本体
図1
図2