(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記集合部材は、前記濾過部材の端部に接続されて該濾過部材で濾過された被処理体を集める本体部と、該本体部から被処理体を取り出す取出部と、を備え、前記濾過部材と前記集合部材の接続部は、前記ヘッダーにより包み込まれて一体的に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の濾過膜モジュール。
前記自硬性無機質部材は、水硬性セメントと水とを混合して流動性を持たせ、水和反応により凝固して所望の強度、耐水性、耐薬品性、耐熱性を得られるものであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の濾過膜モジュール。
膜本体に濾過膜及び該濾過膜で濾過された被処理体が流通する多数の流通路を形成した濾過部材と、該濾過部材の一端部に設けられたフッターと、前記濾過部材の他端部に設けられて前記濾過膜で濾過された被処理体を集合して導出するヘッダーと、を備えた濾過膜モジュールの製造方法において、
前記濾過部材の一端部に筒状の集合部材を接続し、該集合部材と前記濾過部材の接続部を自硬性無機質部材のヘッダーで包み込んで両者を一体的に結合することを特徴とする濾過膜モジュールの製造方法。
前記筒状の集合部材内に棒状のシール部材を挿入した状態で前記ヘッダーを成形し、ヘッダー成形後に、前記棒状のシール部材を前記集合部材内から抜き出すことを特徴とする請求項9に記載の濾過膜モジュールの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の膜モジュールは、中空糸膜101、固定部材102、集水部材103が同様の樹脂で形成されている場合には、これら相互を融着や接着等により比較的強固に結合することができるが、中空糸膜101が無機質であるセラミックスで形成され、集水部材103が高分子樹脂で形成されているような場合には、高分子樹脂からなる接着剤では、十分な結合強度を得ることができない。
【0007】
また、特許文献2においては、上述したように、加熱焼成してシールを行なわなければならず加熱焼成炉等が必要となるために設備費コストが高くなる。
【0008】
また、特許文献3においては、セラミック中空繊維膜121の一端を自硬性無機質部材(コンクリート)122で束ねているので、加熱焼成等を必要とせずに、自硬性無機質部材(コンクリート)122を自然硬化によりでセラミック中空繊維膜121の一端を結束することが出来るが、セラミック中空繊維膜121の端部は、開口124された侭の状態になっているので、これを実際に使用するためには、セラミック中空繊維膜122の両端部に集水部材を取り付け、或いは特許文献2のように、セラミック中空繊維膜122の一端を閉塞し、他端にアルミナ質ガス管112を取り付けて処理したガスを取り出す必要がある。
【0009】
本発明は、濾過部材の一端部と他端部にフッターとヘッダーを設け、濾過部材で処理した被処理体をヘッダー内に設けた集合部材で集合して取り出すようにした濾過膜モジュールであり、フッターとヘッダーを自硬性無機質部材でモールド成形することにより、接着剤や加熱焼成を必要とせずにフッターとヘッダーを形成し、ヘッダーに設けた集合部材から被処理体を取り出すようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、膜本体に濾過膜及び該濾過膜で濾過した被処理体が流通する多数の流通路を形成した濾過部材と、前記濾過部材の一端部に設けられたフッターと、前記濾過部材の他端部に設けられていて該濾過部材で処理された被処理体を集合して導出するヘッダーと、を備え、
前記ヘッダーは、前記濾過部材で濾過された被処理体を集めて外部に取り出す集合部材を中心部に備え、前記フッターとヘッダーは、前記濾過部材の一端部と他端部に自硬性無機質部材によりモールド形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項
2の発明は、請求項
1に記載の濾過膜モジュールにおいて、前記集合部材は、前記濾過部材の端部に接続されて該濾過部材で濾過された被処理体を集める本体部と、該本体部から被処理体を取り出す取出部と、を備え、前記濾過部材と前記集合部材の接続部は、前記ヘッダーにより包み込まれて一体的に結合されていることを特徴とする。
【0012】
請求項
3の発明は、請求項
2に記載の濾過膜モジュールにおいて、前記本体部は、前記濾過部材の端部を嵌合する長孔状の切欠部を周面に備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項
4の発明は、請求項
1〜3の何れかに記載の濾過膜モジュールにおいて、前記集合部材は、耐熱性、機械的強度、耐薬品性を有する金属、セラミックス又は樹脂の何れかの材料で形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項
5の発明は、請求項1〜
4の何れかに記載の濾過膜モジュールにおいて、前記濾過部材は、セラミックスフィルタ膜であることを特徴とする。
【0015】
請求項
6の発明は、請求項1〜
5の何れかに記載の濾過膜モジュールにおいて、前記自硬性無機質部材は、水硬性セメントと水とを混合して流動性を持たせ、水和反応により凝固して所望の強度、耐水性、耐薬品性、耐熱性を得られるものであることを特徴とする。
【0016】
請求項
7の発明は、請求項1〜
6の何れかに記載の濾過膜モジュールにおいて、前記フッター及び/又は前記ヘッダーの表面を保護皮膜で被覆したことを特徴とする。
【0017】
請求項
8の発明は、請求項1〜
7の何れかに記載の濾過膜モジュールにおいて、前記フッターと前記濾過部材の境界部分及び/又は前記ヘッダーと前記濾過部材の境界部分の表面を保護皮膜で被覆したことを特徴とする。
【0018】
請求項
9の発明は、膜本体に濾過膜及び該濾過膜で濾過された被処理体が流通する多数の流通路を形成した濾過部材と、該濾過部材の一端部に設けられたフッターと、前記濾過部材の他端部に設けられて前記濾過膜で濾過された被処理体を集合して導出するヘッダーと、を備えた濾過膜モジュールの製造方法において、
前記濾過部材の一端部に筒状の集合部材を接続し、該集合部材と前記濾過部材の接続部を自硬性無機質部材のヘッダーで包み込んで両者を一体的に結合することを特徴とする濾過膜モジュールの製造方法。
【0019】
請求項
10の発明は、請求項
9に記載の濾過膜モジュールの製造方法において、前記筒状の集合部材内に棒状のシール部材を挿入した状態で前記ヘッダーを成形し、ヘッダー成形後に、前記棒状のシール部材を前記集合部材内から抜き出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
(1)請求項1の発明は、特許文献1〜3のように、加熱焼成等を使用せずに自硬性無機質部材の自然硬化でフッターとヘッダーを形成することができる。
また、ヘッダーの中心部に前記濾過部材で濾過された被処理体を集めて外部に取り出す集合部材を配置したので、ヘッダーの中心部に、直接、中空の被処理体流路を形成する場合に較べて、被処理体流路の形成が容易になる。(ヘッダーの中心に直接、中空を容易に形成する場合には、ヘッダーを成形後に中子の除去作業が必要となる)。
さらに、ヘッダーの中心部に集合部材を配置したので、該集合部材でヘッダーの機械的強度を補強することができる。
(
2)請求項
2の濾過膜モジュールは、濾過部材と集合部材の本体部との接続部を自硬性無機質部材のヘッダーで包み込んで一体に結合したので、濾過部材とヘッダーを接着剤などで結合固定する場合に較べて耐久性や耐薬品性等を向上させることができる。
(
3)請求項
3の濾過膜モジュールは、管状の集合部材の周面に濾過部材の端部を嵌合する長孔状の切欠部を設け、該切欠部に濾過部材の端部を嵌合し、濾過部材と集合部材を位置決めした状態で前記ヘッダーを成形することができる。
(
4)請求項
4の濾過膜モジュールは、前記集合部材を、耐熱性、機械的強度、耐薬品性に優れたもので形成したので、濾過体集合部材の劣化を防止し、濾過膜モジュールの耐久性を向上させることができる。
(
5)請求項
5の濾過膜モジュールは、濾過部材にセラミックスフィルタ膜を使用したので、耐熱性や耐薬品性等に優れ、且つ濾過性能にも優れたものになる。従って、この濾過膜モジュールは、河川水、湖水、各種下廃水などの濾過や、酸やアルカリ廃液から固形混入物質を分離するための耐薬品性を有する分離膜、或いは焼却炉などから発生する高温(例えば200〜800℃)の排気ガス中の各種物質を捕捉し浄化する煤塵除去用バグフィルタ或いはオイルサンドからビッチュメンを生産する場合の加温含油水に含まれる油分を除去する油水分離膜などの被処理物が高温で耐熱性や耐薬品性が要求される場合にも使用することが可能になる。
(
6)請求項
6の濾過膜モジュールは、水硬性セメントと水とを混合して自硬性無機質部材に流動性を持たせたので、金型に流し込んでモールド成形することができる。そして、金型に流し込んだ後は放置しておくことにより、水和反応により凝固して所望の強度、耐水性、耐薬品性、耐熱性を有するフッターとヘッダーを得ることができる。
(
7)請求項
7の濾過膜モジュールは、フッター及び/又はヘッダーの表面を保護皮膜で被覆したので、フッター及び/又はヘッダーの水密性や耐薬品性を向上させることができる。
(
8)請求項
8の濾過膜モジュールは、フッターと濾過部材の境界部分及び/又はヘッダーと濾過部材の境界部分の表面を保護皮膜で被覆したので、フッターと濾過部材の境界部分やヘッダーと濾過部材の境界部分の防水性を向上させることができる。
(
9)請求項
9の濾過膜モジュールの製造方法は、濾過部材の一端の集合部材を結合する部分を、ヘッダー成形用の金型内に挿入する一方、濾過部材の他端部をフッター成型用の金型内に挿入して、これらヘッダー成形用の金型及びフッター成型用の金型内に流動性を有する未硬化の自硬性無機質部材を注入して硬化させることにより、ヘッダー及びフッターを形成することができる。特に、濾過部材の一端に集合部材を突き合せた状態で、該突き合せ部をフッター成型用の金型内に挿入して、該成形金型内に未硬化の流動性を有する自硬性無機質部材を注入して硬化させることにより、前記突き合せ部をヘッダーで包み込んだ状態で、ヘッダーを濾過部材の一端に形成することが出来る。
(
10)請求項
10の濾過膜モジュールの製造方法は、濾過部材の端部に取り付けた管状の集合部材内に棒状のシール部材を装填した後に、前記濾過部材と集合部材の結合する部分を成形金型内に収容してヘッダーを形成するので集合部材内への自硬性無機質部材の浸入を阻止することができる。そして、ヘッダー成形後に、前記シール部材を抜き取ることにより集合部材を元の管状に戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜
図13は、第1の実施形態の濾過膜モジュール1を示す。この実施形態は、主に河川水、湖水、各種下廃水などの濾過や、酸やアルカリ廃液から固形混入物質を分離するための耐薬品性を有する分離膜など液体の濾過に用いる濾過膜モジュールを例にとって説明する。
【0024】
図1と
図2は、濾過膜モジュール1を縦配置方式のモジュールユニット5に設置した形態を示す。
図1は濾過膜モジュール1の正面図である。濾過膜モジュール1は、濾過部材としてのセラミックスフィルタ膜(以下、濾過部材をセラミックスフィルタ膜と称する)2と、セラミックスフィルタ膜2の一端側に設けられたフッター3と、セラミックスフィルタ膜2の他端側に設けられたヘッダー4と、を備えている。フッター3とヘッダー4は、自硬性無機質部材で形成されている。
【0025】
図2に示すように、濾過膜モジュール1は、フッター3を下にし、ヘッダー4を上にした状態で所定の間隔Dをもって複数並列に配置されて縦配置方式のモジュールユニット5として構成されている。
【0026】
フッター3は、断面コ字状のフッター間隔保持部材6に下端を嵌合した状態でフッター支持部材7に支持されている。
【0027】
ヘッダー4は、ヘッダー間隔保持部材8により両側を挟まれた状態でヘッダー支持部材9に支持されている。なお、10はヘッダー3の上部に配置されたヘッダー上部押さえ、11はヘッダー上部押さえ10を支持しているフレームである。
【0028】
図1に示すように、縦配置方式のモジュールユニット5は、被処理水槽12の中に配置されている。そして、被処理水槽12内の被処理水13は、セラミックスフィルタ膜2により濾過されて処理水(以下、濾過水)となり、該濾過水は、前記ヘッダー4の一端部に接続された接続配管14を介して導水部材としての濾過水導管15に供給され、該濾過水導管15によって所望の場所、例えば濾過水貯水槽等に供給される。
【0029】
図3はセラミックスフィルタ膜2の断面図である。セラミックスフィルタ膜2は、膜本体2aに濾過膜2b及び該濾過膜2bで濾過した被処理体が流通する多数の流通路(以下、濾過水流通路と称する)2cを設けることにより形成されている。
【0030】
図4に示すように、セラミックスフィルタ膜2の上端には、前記濾過水流通路2bを流れてきた濾過水を集める集合部材(以下、濾過水集合部材と称する)21が接続されている。濾過水集合部材21は、筒状に形成されていて、内部を濾過水が流れる構成になっている。
【0031】
図5,
図6に示すように、濾過水集合部材21は、セラミックスフィルタ膜2の濾過水流通路2cから流入してきた濾過水を受ける本体部(以下、集水部と称する)21aと、集水部21aの濾過水を外部に取り出す取出部(以下、濾過水取出部と称する)21bを備えている。
【0032】
集水部21aの周面には、長さ方向の一端部から他端部の濾過水取出部21b側に向けて延びる長孔状の切欠部21cが形成されていて、
図4に示すように、長孔状の切欠部21cには、セラミックスフィルタ膜2の一端部が嵌合される。
【0033】
濾過水集合部材21は、
図5に示すように、全長に亘って直管状に形成されたものであっても、或いは
図6に示すように、濾過水取出口21b側の外周に、接続した接続配管14の脱落を防止する配管脱落防止ストッパー21dを設けたものであってもよい。濾過水取出部21bには、2点鎖線で示すように接続配管14が接続される。
【0034】
濾過水集合部材21は、SUS材或いはセラミックス繊維筒を無機接着剤などで硬化したものが用いられる。濾過水集合部材21は、使用温度が200℃程度以下であれば、有機系材料、例えばポリテトラフルオルレチン(PTFE)、ポリイミド、ポリフェニリンサルファイト(PPS)、セラミックフッ素繊維からなるパイプであってもよい。
【0035】
濾過水集合部材21は、ヘッダー4の中心部に配置されていて、自硬性無機質部材製のヘッダー4を補強している。フッター3やヘッダー4に用いられる自硬性無機質部材は、ポリマーセメントを除いて曲げ強度が低い傾向にある。濾過水集合部材21は、ヘッダー4の中心部に配置されていてヘッダー4の補強材として機能する。
【0036】
図7に示すように、フッター3は、セラミックスフィルタ膜2の下端部に設けられていて、濾過水流通路2bの下端部を閉塞している。
【0037】
図8,
図9に示すように、ヘッダー4は、セラミックスフィルタ膜2の上端部に設けられていて、セラミックスフィルタ膜2の上端部及び濾過水集合部材21の集水部21aを包み込んで両者を一体的に結合している。フッター3とヘッダー4は、前述したように、自硬性無機質部材で形成されている。
【0038】
ここで、自硬性無機質部材とは、粉末状の材料、例えばセメントや骨材に適量の水を混合して流動性を確保し、流し込み用モールド部材として使用可能なものであり、水和反応により凝結して強度が得られ、その後、水中に置いても強度が低下しない水硬性を発現する性質を持つ材料である。
【0039】
自硬性無機質部材として各種組成からなるキャスタブル材や各種組成からなるセメント系材料を使用できる。
【0040】
各種組成からなるキャスタブル材としては、水硬性セメント(アルミナセメントなど)を結合材として使用し、耐火骨材と混合した耐火物であり各種製品が市販されている。
【0041】
骨材には粘土質、高アルミナ質などの種々の耐火物が用いられ、結合材としてリン酸塩(例えば第一リン酸アルミニウム)やケイ酸ナトリウムを配合すると耐酸性をもたせることができる。
【0042】
市販されているキャスタブル材の最高使用温度は、使用する骨材の種類により差があり、高アルミナ質耐火物は、粘土質耐火物よりも最高使用温度が高い。ただし、粘土質耐火物であっても最高使用温度は900℃以上あるので、濾過膜モジュールを、焼却炉などから発生する高温(例えば200〜800℃)の排気ガス中の各種物質を捕捉し浄化する煤塵除去用バグフィルタに使用する場合でも十分に耐熱条件を果たす。
【0043】
キャスタブル材の選択基準は、使用環境(耐熱性、耐薬品性など)、材料特性(要求される圧縮強度・熱膨張率・熱伝導率など)や作業性に基づいて行われる。
【0044】
また、自硬性無機質部材には靭性強化のために必要に応じて繊維物質が混入される。繊維物質としては、ガラス繊維、ロックウール、セラミックファイバー、(Al2O3とSiO2からなるファイバー)、Al2O3含有量の高いアルミナ繊維などが使用される。
【0045】
繊維の大きさは、直径6〜10μm程度、繊維の長さは1〜5mm程度(適用する長さは、成形体の厚みを考慮する)とする。
【0046】
繊維物質の使用量は、無機質部材100重量部に対して、0.5〜3重量部程度とする。0.5重量部未満では、機械的強度向上の効果は少なく、3重量部を超えると、混練物の流動性が低下して作業性が悪くなる。
【0047】
また、上記キャスタブル材に代えて、各種組成からなるセメント系材料(セメント、骨材)も使用することができる。
【0048】
セメントと水を練り混ぜたものはセメントペーストと呼ばれ、セメント、水、砂などを練り混ぜたものがモルタルである。また、セメント、水、砂などの細骨材、砂利などの粗骨材を練り混ぜたものがコンクリートである。そして、使用環境の要求仕様を満たす濾過膜モジュールを成形するために、その条件を満たすセメント系材料であるセメントペースト、モルタルやコンクリートにて上記キャスタブル材の場合と同様にして製造する。
【0049】
粗骨材は、5mm以上のものが重量で85%以上含まれる骨材であり、細骨材とは、10mm篩を全て通過し、5mm以下のものが重量で85%以上含まれる骨材を指し、これらの含有率を含めたセメント系材料の種類は、フッター、ヘッダー部分の平滑程度などを含めて膜モジュールの機能上、使用に支障の無いことを条件に選択される。
【0050】
ここで、セメントは、「ポルトランドセメント」、ポルトランドセメントを主体として混合材料を混ぜ合わせた「混合セメント」、その他の「特殊セメント」の3つに大別されるが、用途に応じて選択すれば良い。
【0051】
成形したセメント材料の強度、耐久性、水密性は、セメントと水を練り混ぜる際の水・セメント比と密接な関係があるので、膜モジュールの用途に応じた水・セメント比を選択すれば良い。例えば、水密性の高いセメント系材料とするならば水・セメント比は、55%以下にすると良い。
【0052】
また、耐酸性、耐熱性をもたせる場合には、セメントとしては特殊セメントに分類されるアルミナセメントを選択し、骨材としては、耐熱性の富むアルミナ、コージェライト、ムライト、シリカなどの微粉末や粒子を適用することが好ましい。
【0053】
さらに、上記セメント系材料以外にも、ポリマーセメントモルタルやポリマーセメントコンクリートを使用できる。ポリマーセメントモルタルやポリマーセメントコンクリートとは、セメント、水、骨材を練り混ぜる際にセメント改質材としてポリマー混和剤を混和したコンクリート及びモルタルのことであり、各種ポリマー混和剤があり普通のモルタルに比べて接着性、耐薬品性、水密性などに優れた性質をもたせることができる。
【0054】
なお、水・セメント比の調整と併せて、フッターやヘッダーの表面に合成樹脂塗料を塗布する等して、フッターやヘッダーに保護皮膜を形成することで、フッターやヘッダーの水密性や耐薬品性などを更に向上させることができる。
【0055】
更に、フッターと濾過部材の境界部分及び/又はヘッダーと濾過部材の境界部分の表面に合成樹脂塗料を塗布し、保護被覆を形成することで耐薬品性が向上するとともに、フッターと濾過部材の境界部分やヘッダーと濾過部材の境界部分の防水性が向上するので膜モジュールの信頼性をさらに向上させることができる。
【0056】
前記合成樹脂塗料として、フェノール樹脂塗料、合成樹脂調合ペイント、フタル酸樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、タールエポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、アルキド変性シリコン樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料、塩化ゴム系樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、フッ素樹脂塗料などが使用できる。また、上記合成樹脂塗料は、使用目的に応じて1つ又は複数を組み合わせて選択できる。
【0057】
第1の実施形態のセラミックス濾過膜モジュール1は、前述のような構成であって、セラミックスフィルタ膜2で濾過された濾過水は、セラミックスフィルタ膜2の一端部に取り付けた濾過水集合部材21で集水され、該濾過水集合部材21の端部の濾過水取出部21bに接続された接続配管14を介して濾過水導管15に供給され、該濾過水導管15を介して濾過水貯水槽等に供給される。
【0058】
なお、上記実施形態では、濾過膜モジュール1にセラミックスフィルタ膜2を使用した場合を説明したが、セラミックスフィルタ膜2に限定されるものではなく、例えば、有機中空糸膜、有機平膜、無機平膜、無機単管膜などを用いることもできる。この濾過部材の材料としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)などが例示される。
【0059】
次に、前記セラミックス濾過膜モジュール1の製造方法について説明する。なお、前記本発明のセラミックス濾過膜モジュール1と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
図10,
図11は、前記濾過膜モジュールの製造に用いる第1の金型31と、第2の金型41を示し、第1の金型31で前記フッター3を形成し、第2の金型41でヘッダー4を形成する。
【0061】
図12に示すように、第1の金型31は、一対の割型31a,31bからなっている。(一方の割型31bは図示省略)。
【0062】
図10,
図11に示すように、第1の金型31の割型31a,31bの間にはフッター3をモールド形成するためのキャビティ(成形空間)32と、キャビティ32内にセラミックスフィルタ膜2の一端部を導入するための膜導入用凹部33と、第1のシールパッキン受溝34が設けられている。
【0063】
第1のシールパッキン受溝34内には前記セラミックスフィルタ膜2の一端部(濾過水集合部材21と反対側の端部)の外周に巻き付けた角リングやOリングからなる第1のシールパッキン35が収容される。
【0064】
第1のシールパッキン35は、第1の金型31の割型31a,31bを型締めしたときに、前記第1のシールパッキン受溝34内で圧縮されて、金型31とセラミックスフィルタ膜2の間をシールしてキャビティ32内の流動性のある自硬性無機質部材が外部に漏れるのを防止する。
【0065】
また、第2の金型41は、第1の金型31と同様に一対の割型41a,41bからなっている。(一方の割型41bは図示省略)。第2の金型41は、割型41a,41bの間にヘッダー4を成形するためのキャビティ(成形空間)42と、キャビティ42内にセラミックスフィルタ膜2の一端部を導入するための膜導入用凹部43と、濾過水集合部材21の濾過水取出部21b側の端部を第1の金型41の下端から突出させるための集合部材導出部44と、第1、第2のシールパッキン受溝45,46を備えている。
【0066】
前記濾過水集合部材21の下端側の外周にはOリング等からなる第2のシールパッキン47が取り付けられている。第2のシールパッキン47は、第2の金型42の割型42a,42bを型締めしたときに、第2のシールパッキン受溝45内で圧縮されて、第2の金型42と濾過水集合部材21の間をシールしてキャビティ42内に注入した流動性を有する自硬性無機質部材が第2の金型42の外部に漏れるのを防止している。
【0067】
また、セラミックスフィルタ膜2の他端部(濾過水集合部材21側の端部)の外周には角リングやOリングからなる第3のシールパッキン48が巻き付けられている。第3のシールパッキン48は、第2の金型41の割型41a,41bを型締めしたときに、第3のシールパッキン受溝46内で圧縮されて、第2の金型41とセラミックスフィルタ膜2の間をシールして、キャビティ42内に注入した流動性のある自硬性無機質部材が第2の金型41の外部に漏れるのを防止している。
【0068】
流動性を有する自硬性無機質部材とは、粉末状の材料、例えばセメントや骨材に適量の水を混合して流動性を確保し、流し込み用モールド部材として使用可能なものであり、水和反応により凝結して強度が得られ、その後、水中に置いても強度が低下しない水硬性を発現する性質を持つ材料をいう。
【0069】
なお、モジュールユニット5を高温仕様とする場合には、第1,第2,第3のシールパッキン35,47,48は、金属系又は耐熱性の有機物系(例えばポリテトラフルオロレチン(PTFE)、ポリイミド、ポリフェニリンサルファイト(PPS)とする。また、配管やフレーム等も同様の仕様とする。
【0070】
図10に示すように、管状の濾過水集合部材21内には、棒状のシール部材51が挿抜可能に取り付けられていて、ヘッダー4を成形する際に自硬性無機質部材が濾過水集合部材21内に浸入するのを防止している。
【0071】
シール部材51は、
図4に示すように、前記長孔状の切欠部21cにセラミックスフィルタ膜2の先端を嵌合する際に、セラミックスフィルタ膜2の先端が当接して必要以上に濾過水集合部材21内に入り込まないようにするストッパーとしても機能している。
【0072】
シール部材51は、適度の弾性を有する合成樹脂等の素材で、
図13Aに示すように棒状に、或いは
図13Bに示すように、中心に心材51aを有する棒状に形成されている。シール部材51は、濾過水集合部材21内に予め挿入しておくことにより、ヘッダー4を成形する際に、第2の金型41内において、流動性を有する自硬性無機質部材が濾過水集合部材21内に浸入するのを防止する。
【0073】
図10に示すように、棒状のシール部材51は、その上端を濾過水集合部材21の上端に至るまで挿入したときに棒状のシール部材51の下端51bが濾過水集合部材21の下端から突出する長さに形成されている。
【0074】
図12に示すように、第1,第2の金型31,41は、それぞれの割型31a,31b、41a,41b(
図12において第2の金型41は図示省略)を開閉可能にした状態で、架台60上に配置されている。
【0075】
次に、前記第1,第2の金型31,41を使用して、濾過膜モジュール1を
製造する方法の一例を説明する。
【0076】
図11に示すように、濾過部材としてのセラミックスフィルタ膜2の一端側(フッター3を形成する側の端部)の外周に前記第1のシールパッキン35を巻き付ける一方、セラミックスフィルタ膜2の他端側(ヘッダー4を形成する側の端部)の外周に前記第3のシールパッキン48を巻き付ける。
【0077】
そして、セラミックスフィルタ膜2の先端に濾過水集合部材21を取り付ける。濾過水集合部材21の下端側には前記第2のシールパッキン47を巻き付ける。
【0078】
濾過水集合部材21内には予め前記棒状のシール部材51を挿入しておいて、該シール部材51の下端51bを濾過水集合部材21の下端から突出させる。
【0079】
次に、第1の金型31の割型31a,31bを開き、これら割型31a,31b間にセラミックスフィルタ膜2の一端部(フッター3を形成する側の端部)を挿入して、前記キャビティ32の中央部に位置させると共に、前記第1のシールパッキン35を前記第1のシールパッキン受溝34の位置に対応させる。
【0080】
そして、第1の金型31の割型31a,31bを閉じると、前記第1のシールパッキン受溝34内で圧縮されて、金型31とセラミックスフィルタ膜2の間をシールしてキャビティ32内に注入した流動性のある自硬性無機質部材が外部に漏れるのを防止する。
【0081】
また、第2の金型41の割型41a,41bを開き、これら割型41a,41b間にセラミックスフィルタ膜2の他端部(ヘッダー4を形成する側の端部)を挿入し、前記濾過水集合部材21を前記キャビティ42の中央部に位置させると共に、前記第2のシールパッキン47を前記第2のシールパッキン受溝45の位置に対応させる。また、第3のシールパッキン48を前記第3のシールパッキン受溝46の位置に対応させる。
【0082】
そして、第2の金型42の割型42a,42bを型締めすると、第2のシールパッキン受溝45内で第2のシールパッキン47が圧縮されて、第2の金型42と濾過水集合部材21の間をシールしてキャビティ42内に注入した流動性を有する自硬性無機質部材が外部に漏れるのを防止すると共に、第3のシールパッキン48が第3のシールパッキン受溝46内で圧縮されて、第2の金型41とセラミックスフィルタ膜2の間をシールして、キャビティ42内に注入した流動性のある自硬性無機質部材が外部に漏れるのを防止する。
【0083】
前述したように、第1の金型31のキャビティ32内にセラミックスフィルタ膜2の一端部をセットし、第2の金型41のキャビティ42内にセラミックスフィルタ膜2の他端部をセットしたら、キャビティ32,42内に流動性を有する自硬性無機質部材を注入して、フッター3とヘッダー4を成形する。
【0084】
キャビティ32,42内に注入した自硬性無機質部材をキャビティ32,42内の隅々に行き渡らせせるには水分が多いほどよいが、水分が多すぎると硬化するまでの時間が長くなり、硬化後のフッター3やヘッダー4の強度にも悪影響を及ぼす。過剰にならない水分量として、例えば18〜24質量%程度が適当である場合が多い。
【0085】
キャビティ32,42内に注入した自硬性無機質部材にバイブレータで振動を与え、或いは棒等で突いて脱気を行なえば、より確実に自硬性無機質部材をキャビティ32,42の隅々に行き渡らせることができる。自硬性無機質部材をキャビティ32,42の隅々に行き渡らせた後は、外力を加えずに静置して十分に乾燥硬化させる。乾燥硬化を促進させるために加熱しても良い。なお、キャビティ32,42内に自硬性無機質部材を注入する前に、キャビティ32,42の周面にグリース等の油を塗布しておくと製品の型離れを良くすることが出来る。
【0086】
フッター3とヘッダー4が硬化したら、金型31,41から濾過膜モジュール1を取り出し、濾過水集合部材21から棒状のシール部材51を引き抜くことにより、ヘッダー4の中心部に濾過水集合部材21を有する濾過膜モジュールが形成される。
【0087】
図14〜
図15は、第2の実施形態のセラミックス濾過膜モジュール1を示す。第2の実施形態において、セラミックス濾過膜モジュール1の長さ方向の一端部にフッター3Aが設けられ、他端部にヘッダー4Aが設けられている。
【0088】
フッター3Aとヘッダー4Aは、前記第1の実施形態のヘッダー4と略同様に形成されている。
【0089】
そして、多数の濾過膜モジュール1を横長状に、且つ濾過膜モジュール1相互間に所定の間隔Dを持たせて配置し、小ユニット61を形成し、これら小ユニット61を多段積みすることにより中型或いは大型のモジュール横配置方式のユニット62が形成される。63は、多段積みした小ユニット61を連結している連結ボルトである。
【0090】
多数の濾過膜モジュール1のヘッダー3の下部にはコネクター64を介して第1の濾過水導管65が接続、配置されている。そして、各濾過膜モジュール1で濾過された濾過水は、第1の濾過水導管65で集められて、該第1の濾過水導管65の一端部に接続された第2の濾過水導管66を介して所望の場所、例えば濾過水貯水槽等に供給される。
【0091】
第2の実施形態の濾過膜モジュール1は、濾過膜モジュール1の一端部に設けたフッター3Aと、他端部に設けたヘッダー4Aを、前記第1の実施形態のヘッダー4と略同様の構成としたので、濾過水をヘッダー4A側から取り出すことができるのは勿論のこと、フッター3A側からも濾過水を取り出すことができるので、第1の実施形態のセラミックスフィルタ膜2の一端側に設けたヘッダー4のみから濾過水を取り出すものに較べて濾過水の取り出し効率を倍増させることができる。