(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090023
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】二次電池の充電システムおよび充電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20170227BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
H02J7/10 H
H02J7/10 B
H01M10/44 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-150195(P2013-150195)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-23684(P2015-23684A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】波多野 順一
(72)【発明者】
【氏名】西垣 研治
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−185060(JP,A)
【文献】
特開平08−203563(JP,A)
【文献】
特開2007−311107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12、
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流供給手段によって二次電池に一定値の充電電流を供給し、該充電電流によって前記二次電池の閉回路電圧が所定の閾値電圧に到達するまで定電流充電を行った後、前記電流供給手段によって現在供給されている充電電流を所定の電流減少量だけ減少させてこれを新たな充電電流とし、該新たな充電電流によって前記二次電池の閉回路電圧が所定の電圧上昇量だけ上昇するまで定電流充電を行うことを所定の回数繰り返すことによって、前記二次電池の充電を行う充電システムにおいて、
前記所定の回数の繰り返しにおける各所定の電流減少量は、前記電流供給手段によって現在供給されている充電電流を該所定の電流減少量だけ減少させた際の前記二次電池の閉回路電圧が前記二次電池の満充電電圧を上回るように設定されることを特徴とする、二次電池の充電システム。
【請求項2】
前記所定の回数の繰り返しにおける各所定の電流減少量はすべて等しく、該所定の電流減少量をΔIc、前記二次電池にはじめに供給される充電電流の一定値をIcc、前記所定の回数をNとすると、
ΔIc=Icc/(N+1)
によって決定され、
前記Nの値は、前記二次電池の内部抵抗をR、前記満充電電圧をVfull、前記所定の閾値電圧をVccとすると、
N>(R×Icc)/(Vcc−Vfull)−1
の関係を満たすように設定されることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池の充電システム。
【請求項3】
前記所定の回数の繰り返しにおける各所定の電圧上昇量はすべて等しく、該所定の電圧上昇量をΔVxとすると、
ΔVx=(Vfull−(Vcc−R×Icc))/N
によって決定されることを特徴とする、請求項2に記載の二次電池の充電システム。
【請求項4】
二次電池に一定値の充電電流を供給し、該充電電流によって前記二次電池の閉回路電圧が所定の閾値電圧に到達するまで定電流充電を行った後、前記二次電池に現在供給している充電電流を所定の電流減少量だけ減少させてこれを新たな充電電流とし、該新たな充電電流によって前記二次電池の閉回路電圧が所定の電圧上昇量だけ上昇するまで定電流充電を行うことを所定の回数繰り返すことによって、前記二次電池の充電を行う充電方法において、
前記所定の回数の繰り返しにおける各所定の電流減少量は、前記二次電池に現在供給している充電電流を該所定の電流減少量だけ減少させた際の前記二次電池の閉回路電圧が前記二次電池の満充電電圧を上回るように設定されることを特徴とする、二次電池の充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次電池の充電システムおよび充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な二次電池の充電方法としては、はじめに定電流充電(CC充電)を行って二次電池の閉回路電圧(CCV)を所定電圧まで上昇させた後、定電圧充電(CV充電)を行って二次電池を満充電状態にする方法が一般的である。しかしながら、二次電池の定電圧充電を行う際には満充電状態に近づくに従って充電電流を連続的に減少させる必要があり、それに伴って単位時間あたりの充電量も減少していくため、充電時間が長くなってしまう。
【0003】
上記の問題を解決するために、特許文献1には、二次電池に一定の充電電流を供給して定電流充電を行い、二次電池のCCVが所定の切替電圧に到達すると充電電流を所定の電流量だけ減少させてこれを新たな充電電流とし、当該新たな充電電流によってさらに定電流充電を行うことを繰り返すことによって、二次電池を満充電状態にする方法が記載されている(特許文献1の
図6参照)。この方法においても二次電池が満充電状態に近づくに従って充電電流を段階的に減少させていくが、各定電流充電の期間中は電流を減少させないため、上記方法に比べて単位時間あたりの充電量を多くすることができ、充電時間を或る程度まで短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−203563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、充電電流の切替時に二次電池のCCVが満充電状態における電圧(
図6のV3)を下回る程に充電電流を大幅に減少させるため、その分だけ単位時間あたりの充電量が減少してしまい、充電時間を十分に短縮することができない。この発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、充電時間を十分に短縮することができる二次電池の充電システムおよび充電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明に係る二次電池の充電システムは、電流供給手段によって二次電池に一定値の充電電流を供給し、当該充電電流によって二次電池の閉回路電圧が所定の閾値電圧に到達するまで定電流充電を行った後、電流供給手段によって現在供給されている充電電流を所定の電流減少量だけ減少させてこれを新たな充電電流とし、当該新たな充電電流によって二次電池の閉回路電圧が所定の電圧上昇量だけ上昇するまで定電流充電を行うことを所定の回数繰り返すことによって、二次電池の充電を行う充電システムにおいて、所定の回数の繰り返しにおける各所定の電流減少量は、電流供給手段によって現在供給されている充電電流を当該所定の電流減少量だけ減少させた際の二次電池の閉回路電圧が二次電池の満充電電圧を上回るように設定されることを特徴とする。
【0007】
好適には、所定の回数の繰り返しにおける各所定の電流減少量はすべて等しく、当該所定の電流減少量をΔIc、二次電池にはじめに供給される充電電流の一定値をIcc、所定の回数をNとすると、
ΔIc=Icc/(N+1)
によって決定され、
Nの値は、二次電池の内部抵抗をR、満充電電圧をVfull、所定の閾値電圧をVccとすると、
N>(R×Icc)/(Vcc−Vfull)−1
の関係を満たすように設定される。
【0008】
さらに好適には、所定の回数の繰り返しにおける各所定の電圧上昇量はすべて等しく、当該所定の電圧上昇量をΔVxとすると、
ΔVx=(Vfull−(Vcc−R×Icc))/N
によって決定される。
【0009】
また、この発明に係る二次電池の充電方法は、二次電池に一定値の充電電流を供給し、当該充電電流によって二次電池の閉回路電圧が所定の閾値電圧に到達するまで定電流充電を行った後、二次電池に現在供給している充電電流を所定の電流減少量だけ減少させてこれを新たな充電電流とし、当該新たな充電電流によって二次電池の閉回路電圧が所定の電圧上昇量だけ上昇するまで定電流充電を行うことを所定の回数繰り返すことによって、二次電池の充電を行う充電方法において、所定の回数の繰り返しにおける各所定の電流減少量は、二次電池に現在供給している充電電流を当該所定の電流減少量だけ減少させた際の二次電池の閉回路電圧が二次電池の満充電電圧を上回るように設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る二次電池の充電システムおよび充電方法によれば、二次電池の充電時間を十分に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施の形態に係る二次電池の充電システムの構成を示す図である。
【
図2】この発明の実施の形態に係る二次電池の充電システムによって実行される充電処理を示すフローチャートである。
【
図3】(a)は二次電池のCCVとOCVの時間変化を示す図であり、(b)は二次電池に供給される充電電流の時間変化を示す図である。
【
図4】この発明の実施の形態に係る二次電池の充電システムにおいて、電池の分極の効果を考慮する場合としない場合の比較について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態.
この発明の実施の形態に係る二次電池の充電システム100の構成を
図1に示す。充電システム100は、二次電池1と、二次電池1に充電電流を供給する電流制御型の電源2と、二次電池1の電圧を測定する電圧センサ3と、二次電池1と電源2の間に設けられるスイッチ4と、制御ユニット5とから構成されている。
【0013】
制御ユニット5は、マイクロコンピュータによって構成されており、電圧センサ3によって測定される二次電池1の電圧を取得すると共に、電源2の出力電流およびスイッチ4の開閉状態を制御することによって、
図2のフローチャートに示される二次電池1の充電処理を制御する。以下、
図2のフローチャートに示される充電処理における各ステップの詳細について順次説明する。なお、充電処理の開始時においては、電源2は電流を出力しておらず、またスイッチ4は開状態である。
【0014】
まず、ステップS1において、制御ユニット5は、電圧センサ3によって測定される二次電池1の開回路電圧(OCV)を取得し、予め測定してある二次電池1の満充電状態におけるOCV(満充電電圧Vfull)と比較する。そして、二次電池1のOCVが満充電電圧Vfull未満である場合には、ステップS2〜S12の各ステップを実行する。一方、二次電池1のOCVがVfull以上であり既に満充電状態である場合には、充電処理を終了する。
【0015】
ステップS2において、制御ユニット5は、時刻t0においてスイッチ4を閉状態にすると共に電源2から一定値Iccの充電電流を出力させ、当該充電電流によって二次電池1の定電流充電(CC充電)を開始する(
図3(b)参照)。これにより、二次電池1の充電量が時間の経過ともに増加していき、充電量と閉回路電圧(CCV)との間には相関関係があるため、電圧センサ3によって測定される二次電池1のCCVも時間の経過とともに上昇していく(
図3(a)参照)。
【0016】
ステップS3において、制御ユニット5は、二次電池1の内部抵抗Rを推定する。詳細には、ステップS2で電源2から二次電池1への充電電流の供給が開始される直前直後に電圧センサ3によって測定される二次電池1の電圧から、内部抵抗Rを以下の式に従って推定する。
【0018】
ただし、上式において、V1は電流供給開始直前のOCV、V2は電流供給開始直後のCCVである。
【0019】
ステップS4において、制御ユニット5は、電源2から二次電池1への充電電流の供給を継続したまま、二次電池1のCCVが所定の閾値電圧Vccに到達するまで待機する。なお、閾値電圧Vccは、満充電電圧Vfullより大きく、かつ、二次電池1のCCV=Vccの状態におけるOCV(
図3(a)のVo1)が満充電電圧Vfull未満になるように設定されている。
【0020】
上記ステップS4において二次電池1のCCVが閾値電圧Vccに到達したと判定されると、ステップS5において、制御ユニット5は、その状態における二次電池1のOCV(
図3(a)のVo1)を、以下の式に従って推定する。
【0022】
なお、上式では二次電池1の分極の効果を考慮していない。通常、OCVの推定の際には電池の分極の効果を考慮したほうがより正確であり、その場合、OCVの推定値は上式によって得られる値よりも小さくなる。しかしながら、本願発明では分極の効果をあえて無視し、OCVの推定値を実際の値よりも大きく見積もる。この理由については後述する。
【0023】
ステップS6において、制御ユニット5は、後のステップS8で使用する所定の電流減少量ΔIcを、以下の式に従って決定する。
【0025】
ただし、上式においてNは正の整数であり、
図3(b)にはN=3の例が示されている。本願発明では、後のステップS8で充電電流をΔIcだけ減少させた際の二次電池1のCCV(
図3(a)のVd1、Vd2、Vd3)が満充電電圧Vfullを上回るようにNの値を設定することによって、単位時間あたりの充電量をできるかぎり多くする。具体的には、充電電流をΔIcだけ減少させた際のCCVが満充電電圧Vfullを上回るためには、
【0029】
であることを考慮して、Nの値は
N>(R×Icc)/(Vcc−Vfull)−1
の関係を満たすように設定される。
【0030】
ステップS7において、制御ユニット5は、後のステップS10で使用する所定の電圧上昇量ΔVxを、以下の式に従って決定する。
【0031】
ΔVx=(Vfull−Vo1)/N
=(Vfull−(Vcc−R×Icc))/N
【0032】
上式においてΔVxは、
図3(a)における満充電電圧VfullとOCV推定値Vo1との間のギャップをN分割した電圧として定義されている。
【0033】
次に、ステップS8において、制御ユニット5は、電源2が現在供給している充電電流を上記ステップS6で決定した電流減少量ΔIcだけ減少させてこれを新たな充電電流とし、当該新たな充電電流によって二次電池1の定電流充電を行う(
図3(b)の時刻t1)。
【0034】
ステップS9において、制御ユニット5は、ステップS8で充電電流をΔIcだけ減少させた際に電圧センサ3によって測定される二次電池1のCCV(
図3(a)のVd1)を取得する。
【0035】
ステップS10において、制御ユニット5は、電源2から二次電池1への充電電流の供給を継続したまま、二次電池1のCCVがVd1+ΔVxに到達するまで待機する。すなわち、二次電池1のCCVが上記ステップS7で決定した電圧上昇量ΔVxだけ上昇するまで待機する。
【0036】
上記ステップS10において二次電池1のCCVが電圧量上昇ΔVxだけ上昇したと判定されると、ステップS11において、制御ユニット5は、ステップS8〜S10がN回繰り返されたか否かを調べる。そして、ステップS8〜S10の繰り返しがN回未満である場合には、ステップS8に戻る。一方、N回の繰り返しが完了している場合には、ステップS12に進み、スイッチ4を開状態にすると共に電源2から二次電池1への充電電流の供給を停止させ、二次電池1の充電処理を終了する。
【0037】
上記ステップS8〜S10をN回(この実施の形態の例では3回)繰り返すことによって、二次電池1のOCVは満充電電圧Vfullに漸近してき、二次電池1の充電が行われる(
図3(a)の点線)。この過程において、電源2から二次電池1に供給される充電電流はΔIcずつ段階的に減少していき(
図3(b))、二次電池1のCCVは充電電流の減少時に一端減少してからΔVx上昇することを繰り返しながら次第に下降していく(
図3(a)の実線)。この際、上述したように二次電池1のCCVが満充電電圧Vfullを下回ることはないため、充電電流の切替時にCCVが満充電電圧を下回る程に充電電流を減少させる特許文献1の方法に比べて単位時間あたりの充電量を多くすることができ、充電時間が十分に短縮される。
【0038】
以上説明したように、この実施の形態に係る二次電池の充電システム100では、二次電池1に一定値Iccの充電電流を供給し、当該充電電流によって二次電池1のCCVが所定の閾値電圧Vccに到達するまで定電流充電を行った後、現在供給している充電電流を所定の電流減少量ΔIcだけ減少させてこれを新たな充電電流とし、当該新たな充電電流によって二次電池1のCCVが所定の電圧上昇量ΔVxだけ上昇するまで定電流充電を行うことを所定の回数(N回)繰り返した後、充電電流の供給を停止する。この際、電流減少量ΔIcは、現在供給している充電電流を当該ΔIcだけ減少させた際の二次電池1のCCVが二次電池1の満充電電圧Vfullを上回るように設定される。これにより、特許文献1の方法に比べて単位時間あたりの充電量を多くすることができ、充電時間を十分に短縮することができる。
【0039】
なお、
図2のステップS5において、二次電池1のOCVを推定する際に電池の分極の効果を考慮しなかったのは、以下のような理由による。
上記の実施の形態では、
図2のステップS7において、電圧上昇量ΔVxを
図3(a)の満充電電圧VfullとOCV推定値Vo1との間のギャップをN分割した電圧として定義した。しかしながら、VfullとVo1との間を厳密にN分割してまったく余裕をもたせないと、
図4の点線(電圧上昇量ΔVx’)に示されるように、充電終了時に二次電池1のOCVが満充電電圧Vfullを超過してしまう可能性がある。そのため、ステップS5でOCVを推定する際に分極の効果を無視することにより、Vo1の値を意図的に実際よりも大きく推定し、電圧上昇量ΔVxがVfullとVo1との間を厳密にN分割した値よりも若干小さくなるように調整する。これにより、
図4の実線(電圧上昇量ΔVx)に示されるように、充電終了時に二次電池1のOCVが満充電電圧Vfullを確実に下回るようにすることができる。
【0040】
その他の実施の形態.
上記の実施の形態では、
図2のステップS8〜S10のN回の繰り返しにおいて、各電流減少量ΔIcと各電圧上昇量ΔVxは、それぞれすべて等しい値に設定されていたが、繰り返しごとにそれらに異なる値を設定してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 二次電池、2 電源(電流供給手段)、Icc 一定値、Vcc 閾値電圧、ΔIc 電流減少量、ΔVx 電圧上昇量、N 所定の回数、Vfull 満充電電圧、R 内部抵抗。