(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して本発明の実施形態であるスピーカ装置について説明する。
図1は、このスピーカ装置1の外観図であり、
図1(A)が正面図、
図1(B)が右側面図、
図1(C)が背面図である。
【0018】
スピーカ装置1は、複数のスピーカが収容される筐体11、筺体11を床面から支持する円板状のベース14、および、筺体11とベース14とを接続する棒状のピロー13を備えている。筐体11は、ピロー13およびベース14によって支持されて鉛直方向に立設される。
【0019】
筐体11は、略四角柱の形状をなしており、上方向に向けて若干幅が狭まっている。すなわち、正確には四角錐台形状(四角錐の頂点側(頭部)を底面に平行な面で水平に切削した形状)である。筐体11の側面は、鉛直線に対して2パーセント傾斜している。スピーカ装置1は、2つの側面に挟まれる稜線部19を正面(ユーザ方向)にして設置される。以下の説明では、正面方向を前方、背面方向を後方と呼ぶ。また、左右の方向は、正面方向のユーザからスピーカ装置1を見たときの方向を用いる。
【0020】
このスピーカ装置1では、
図1(B),(C)に示されるように、スピーカユニット210L、Rが後ろ向きに設けられており、筺体11の背面側にスピーカグリル12が設けられている。これにより、スピーカ装置1の正面側には、スピーカグリル12を設ける必要がなくなる。
【0021】
筐体11の内部は、2枚の仕切り板によって仕切られており、上下方向に3つの空間を有する構造になっている。上部の空間がスピーカユニット211Cを収容する中音域用スピーカボックス30、中央部の空間がスピーカユニット210L、Rを収容するステレオスピーカボックス31、下部の空間が電子回路15を収容する回路ボックス32として用いられる。
【0022】
また、中音域用スピーカボックス30は上面に開口しており、この開口部にスピーカユニット211Cが上向きに取り付けられている。スピーカユニット211Cのさらに上には、スピーカユニット211Cから放音された音声を前方に反射するヘッドピース10が設けられている。
【0023】
スピーカユニット210L,Rは、低音域と高音域の放音を担当する左右チャンネル別のフルレンジのスピーカユニットである。スピーカユニット211Cは、中音域の放音を担当する左右チャンネル共通のミッドレンジ用のスピーカユニットである。ここで、中音域は主として人の声をカバーする周波数帯域であり、例えば100Hz〜7000Hzの範囲である。なお、中音域はこれに限定されない。たとえば、電話回線の使用帯域である300〜3400Hzとしてもよい。高音域は中音域よりも高い周波数帯域、低音域は中音域よりも低い周波数帯域である。以下、中音域の下限周波数をFLと呼び、中音域の上限周波数をFHと呼ぶ。
【0024】
図2は、ヘッドピースの斜視図である。ヘッドピース10は、放音口110を有する上部の本体部101と、本体部101の上面に配置された天板102と、下部のスカート106を備えている。本体部101の形状は略立方体である。ヘッドピース10の底板103には、その中央部に円形の開口部103Aが形成されている。開口部103Aの口径は、スピーカユニット211Cの口径とほぼ同じである。
【0025】
本体部101の内側には、背板104である2つの側面113,114に挟まれた辺の下側の頂点105Cと、放音口110である(切り欠かかれた)2つの側面111、112の上辺とをつなぐ2つの三角形の面であるリフレクタ105(105A,105B)が形成されている。本体部101は略立方体であるため、リフレクタ105の左右の面105A、105Bは、それぞれ底板103などの水平面に対して約45度の角度をなしている。
【0026】
スピーカユニット211Cの放音面は、ヘッドピース10の下方かつ同じ中心軸で真上に向けて設置されている。また、ヘッドピース10のリフレクタ105の面は、スピーカユニット211Cの放音面に対向して配置され、その傾斜角度は約45度である。そのため、スピーカユニット211Cから上方向に放音された音声は、
図2に示す矢印130のようにリフレクタ105で反射されて左右の斜め前方に広がるように伝搬される。これにより、スピーカユニット211Cから音声が上向きに放音されても、リフレクタ105で反射されて筐体11側面の前面側から前方左右方向に、損失少なく伝搬することが可能になる。
【0027】
図3は、スピーカ装置1の設置形態の例を示す図である。
図3(A)は、スピーカ装置1を部屋の角(コーナー)81(図示が無い)を背にして設置した例を示す図である。この設置形態では、スピーカ装置1の背後に、角81の左右の壁80L,80Rが、スピーカ装置1の前後方向から約45度の角度で反射面として位置する。また、
図3(B)は、スピーカ装置1を、壁80を背にして設置した例を示す図である。この設置形態では、スピーカ装置1の背後に、壁80が、スピーカ装置1の前後方向と約90度の角度で反射面として位置する。
【0028】
スピーカ装置1に音声信号が入力されたとき、スピーカユニット210L、Rから、左右チャンネルの音声がそれぞれ放音される。スピーカユニット210L、Rは背面方向(壁向きに)設けられているため、スピーカ装置1が
図3に示すように設置された場合、スピーカユニット210L、Rから放音された左右チャンネルの音声は、背面方向の壁80(L,R)で反射して前方(室内方向)に伝搬する。このため、スピーカユニット210L,Rから放音された音声は、上面のスピーカユニット211Cから放音され、直接前方に伝搬する音声よりも、壁80で反射する距離を伝搬する時間遅れる。そこで、スピーカ装置1の信号処理部201(
図5参照)では、スピーカユニット211Cに入力するオーディオ信号を、上記の壁80で反射する距離分の時間遅延させることにより、スピーカユニット210L、R、および、スピーカユニット211Cによって放音された音声がユーザに到達するタイミングを一致させている。
【0029】
また、スピーカ装置1が
図3に示すように設置された場合、スピーカユニット210L、Rから放音された左右チャンネルの音声は、背面方向の壁80(L,R)で反射して前方(室内方向)に伝搬する。スピーカユニット210L、Rから放音された音声のうち、高音域の音声は直進性が強いため壁で良く反射し、聴取者にステレオ感を与えることに寄与する。また、低音域の音声は聴感上定位感が強くないため、壁面付近で鳴っているように聴こえてもユーザ(聴取者)にとって違和感が少ない。一方、中音域の音声は、人の話し声や歌声を含む音域であり、壁面で反射させると減衰が大きく、いわゆる「こもり」となって音声の明瞭度を低下させてしまう。そこで、このスピーカ装置1は、左右チャンネルの音声から中音域の成分を抽出し、この中音域の音声を上向きのスピーカユニット211Cから放音する。スピーカユニット211Cは上向きであるが、その上に設けられているヘッドピース10により、放音された中音域の音声は良好に前方に伝搬する。これにより、ユーザに、低音域から高音域までの音声を違和感なく明瞭に聴かせることが可能になる。
【0030】
筺体11の回路ボックス32には電子回路15が内蔵されている。
図4は、電子回路15の主要部のブロック図である。また、
図5は、電子回路15の信号処理部201およびスピーカ駆動部202の詳細なブロック図である。
図4において、電子回路15は、制御部50、信号処理部201、スピーカ駆動部202、入力選択部53、Bluetooth(登録商標)通信回路54、ケーブルコネクタ55などを有している。
【0031】
制御部50はマイコンで構成される。制御部50には、Bluetooth通信回路54が接続されている。Bluetooth通信回路54は、コントローラ機能を有する多機能携帯電話機(スマートフォン)などの機器から受信したコマンドを制御部50に入力する。制御部50は、Bluetooth通信回路54から入力されたコマンドに基づいて、信号処理部201の設定や入力選択部53が入力する信号の選択などを行う。入力選択部53にはBluetooth通信回路54およびケーブルコネクタ55が接続されている。入力選択部53は、制御部50から入力される選択信号により、Bluetooth通信回路54またはケーブルコネクタ55のいずれかを選択し、そこから入力されるオーディオ信号を信号処理部201に入力する。
【0032】
信号処理部201は、入力選択部53から入力された(2チャンネルステレオ)のオーディオ信号の音質を調整するとともに、左右チャンネルの信号から中音域の成分を取り出してこれを合成し、第3チャンネル(センタチャンネル)のオーディオ信号として出力する。また、信号処理部201は、センタチャンネルのオーディオ信号を遅延させることにより、各スピーカユニット210L,Rおよび211Cから放音される音声のユーザへの到達時間を一致させる。
図5においてスピーカ駆動部202は、3チャンネルのアンプ226L,Rおよびアンプ229を有しており、それぞれ左チャンネル、右チャンネルおよび中音域のオーディオ信号を増幅し、増幅した信号をそれぞれスピーカユニット210L、Rおよびスピーカユニット211Cに出力する。信号処理部201およびスピーカ駆動部202の詳細を、
図5を参照して説明する。
【0033】
図5は、スピーカ装置1の信号処理部201およびスピーカ駆動部202のブロック図である。このブロック図において、信号処理部201は、ローパスフィルタ220L,220R,227L,227R、ハイパスフィルタ221L,221R、ゲイン調整部223L,223R,224L,224R,228L,228R、加算器225L,225R,230C、および、遅延部231Cを有している。また、スピーカ駆動部202は、アンプ226L,226R,229Cを有している。
【0034】
左チャンネルオーディオ信号入力部212Lは、左チャンネルのオーディオ信号を入力し、ローパスフィルタ220L,227L、および、ハイパスフィルタ221Lに供給する。ローパスフィルタ220Lは、中音域の下限周波数FL以下の信号を通過させるフィルタである。ローパスフィルタ220Lの周波数特性を
図6(B)に示す。左側の曲線LPFがローパスフィルタ220Lの特性である。ローパスフィルタ220Lを通過した低音域のオーディオ信号は、ゲイン調整部223Lでゲインが調整されたのち加算器225Lに入力される。ハイパスフィルタ221Lは、中音域の上限周波数FH以上の信号を通過させるフィルタである。ハイパスフィルタ221Lの周波数特性を
図6(B)に示す。右側の曲線HPFがハイパスフィルタ221Lの特性である。ハイパスフィルタ221Lを通過した高音域のオーディオ信号は、ゲイン調整部224Lでゲインが調整されたのち加算器225Lに入力される。加算器225Lは、左チャンネルの低音域および高音域のオーディオ信号を加算合成する。この加算合成された オーディオ信号は、アンプ226Lで増幅されてスピーカユニット210Lに供給される。なお、ゲイン調整部223L、224Lは、それぞれローパスフィルタ220L、ハイパスフィルタ221Lに含まれていてもよい。
【0035】
右チャンネルオーディオ信号入力部212Rは、右チャンネルのオーディオ信号を入力し、ローパスフィルタ220R,227R、および、ハイパスフィルタ221Rに供給する。
【0036】
ローパスフィルタ220Rは、中音域の下限周波数FL以下の信号を通過させるフィルタである。ローパスフィルタ220Rの周波数特性も、ローパスフィルタ220Lと同様に
図6(B)の左側に示すものである。ローパスフィルタ220Rを通過した低音域のオーディオ信号は、ゲイン調整部223Rでゲインが調整されたのち加算器225Rに入力される。ハイパスフィルタ221Rは、中音域の上限周波数FH以上の信号を通過させるフィルタである。ハイパスフィルタ221Rの周波数特性も、ハイパスフィルタ221Lと同様に
図6(B)の右側に示すものである。ハイパスフィルタ221Rを通過した高音域のオーディオ信号は、ゲイン調整部224Rでゲインが調整されたのち加算器225Rに入力される。加算器225Rは、右チャンネルの低音域および高音域のオーディオ信号を加算合成する。この加算合成された オーディオ信号は、アンプ226Rで増幅されてスピーカユニット210Rに供給される。なお、ゲイン調整部223R、224Rは、それぞれローパスフィルタ220R、ハイパスフィルタ221Rに含まれていてもよい。
【0037】
また、左チャンネルのローパスフィルタ227Lは、中音域の上限周波数FH以下の信号を通過させるフィルタである。ローパスフィルタ227Lの周波数特性を
図6(A)に示す。ローパスフィルタ227Lを通過したオーディオ信号は、ゲイン調整部228Lでゲインが調整され、加算器230Cに入力される。右チャンネルのローパスフィルタ227Rは、中音域の上限周波数FH以下の信号を通過させるフィルタである。ローパスフィルタ227Rの周波数特性も、ローパスフィルタ227Lと同様に
図6(A)に示すものである。ローパスフィルタ227Rを通過したオーディオ信号は、ゲイン調整部228Rでゲインが調整され、加算器230Cに入力される。加算器230Cは、左右チャンネルの中音域のオーディオ信号を加算合成する。
【0038】
この加算合成されたオーディオ信号は、遅延部231Cに入力される。遅延部231Cは、このオーディオ信号を所定の遅延時間だけ遅延して出力する。遅延時間は、スピーカユニット210L,Rから放音された音声が壁80で反射してスピーカ装置1の設置位置付近まで戻ってくるまでの時間に設定される。これにより、スピーカユニット210L,Rから放音された音声とスピーカユニット211Cから放音された音声のユーザ到達タイミングを一致させることができる。遅延部231Cで遅延されたオーディオ信号は、アンプ229Cで増幅されてスピーカユニット211Cに供給される。なお、ゲイン調整部228L、228Rは、それぞれローパスフィルタ227L、ローパスフィルタ227Rに含まれていてもよい。
【0039】
ローパスフィルタ227L、Rから出力されたオーディオ信号には低音域の成分も含まれるが、スピーカユニット211Cがミッドレンジ用のスピーカユニットで低音域の音声がでない特性であるため、スピーカユニット211Cから放音される音声は、上述の
図2(A)のフィルタ特性を点線のスピーカ特性で修正した中音域のみの音声となる。なお、ローパスフィルタ227L、Rは、中音域のバンドパスフィルタでもよい。
【0040】
なお、遅延部231Cの遅延量(遅延時間)、および、ゲイン調整部223L,R、224L,R、228L,Rのゲインは、制御部50により設定される。低音域のゲインを調整するゲイン調整部223L,R、高音域のゲインを調整するゲイン調整部224L,R、中音域のゲインを調整するゲイン調整部228L,Rのゲインを独立して制御することにより、ゲイン調整部223L,R、ゲイン調整部224L,R、および、ゲイン調整部228L,Rをイコライザとして機能させることが可能である。隣接する音域を別々のスピーカユニットから放音しているので、高音域、中音域、低音域のゲイン調整した場合に、隣接する音域に影響を与えることなく独立してゲイン調整された音声が放音される。
【0041】
このように、低音域の成分信号と高音域の成分信号を同じアンプで増幅して同じスピーカユニット210から放音するとともに、中音域の成分信号を低音域の成分信号と別のアンプで増幅し別のスピーカユニットから放音することにより、2ウェイのスピーカ装置で、高音域、中音域、低音域を分離することができ、独立したゲイン調整が容易になる。また、例えば低音域をブーストする場合、中低音/高音で系統を分ける従来のスピーカ装置では、中音域も低音域のブーストの影響を受けてゲインが上昇してしまい、中音域の音質が変化するうえ、中低音を増幅するアンプに負担を掛けることになるが、この実施形態のスピーカ装置1では、低音域をブーストしても中音域に影響を与えることがなく、音質が変化することや、スピーカユニットに負担を掛けることがない。
【0042】
図7は、遅延部231Cに設定される遅延量(遅延時間)の算出方式を説明する図である。
図7(A)は設置形態が「角置き」の場合の遅延量の算出方式を説明する図、
図7(B)は設置形態が「壁置き」の場合の遅延量の算出方式を説明する図である。ここで、Aはスピーカ装置1の平面形状(略正方形)の対角線の1/2の長さ、Bはスピーカ装置1の平面形状の中心からスピーカユニット210(L/R)までの長さであり、B=A*cos40°である。すなわち、スピーカユニット210は筺体11の前後方向の対角線から40°の方向に向けて設けられている。
【0043】
これらスピーカ装置1の平面サイズA,Bは予め記憶されている。またスピーカ装置1の背後の壁80(コーナー81)までの距離L、および、設置形態は、ユーザによって入力される。設置形態と壁80までの距離Lが入力されると、以下の演算式でスピーカユニット210と壁面との距離Xを算出する。式1は、角置きの場合の演算式、式2は、壁置きの場合の演算式である。距離Xは、スピーカユニット210から放音された音声が壁80に到達するまでの距離に相当する。
【0044】
X=((L+A)/cos45°)/cos5° ・・(式1)
【0045】
X=((L+A)/cos40°・・(式2)
【0046】
そして、この実施形態では、この算出された距離Xの2倍(2X)を、近似的に、スピーカユニット210から放音された音声がユーザに到達するまでの経路とスピーカユニット211から放音された音声がユーザに到達するまでの経路の距離差とみなし、この距離差2Xをキャンセルする遅延時間Dを算出して、遅延部231Cに設定する。なお、「スピーカユニット210から放音された音声がユーザに到達するまでの経路とスピーカユニット211から放音された音声がユーザに到達するまでの経路の距離差」をキャンセルするための遅延時間の算出方式は、
図7に説明した方式に限定されない。
【0047】
設置形態、および、壁80までの距離Lは、スピーカ装置1とBluetoothで通信するリモコン装置を用いて、ユーザにより入力される。リモコン装置としては、たとえば、コントローラアプリケーションプログラムがインストールされた多機能携帯電話機(スマートフォン)が用いられる。ユーザによって入力された設置形態および距離Lに基づく、距離Xおよび遅延時間Dの算出は、リモコン装置が行ってもよく、スピーカ装置1の制御部50が行ってもよい。また、これらの演算をリモコン装置と制御部50が分担してもよい。
【0048】
図8は、リモコン機能を備えた多機能携帯電話機(以下、単に携帯電話機と呼ぶ)スピーカ装置1とBlutoothで通信し、音響設定を行うDTAコントローラアプリケーションプログラム350が実行される携帯電話機300のブロック図である。なお、DTAコントローラアプリケーションプログラム350が実行されている携帯電話機300は、機能的に
図9に示すDTAコントローラ400を構成する。
【0049】
携帯電話機300は、バス326上に、制御部320、操作部330、メディアインタフェース331、3G/4G通信回路332、Bluetooth通信回路333、および、Wi−Fi通信回路334を有している。制御部320は、CPU321、ROM(フラッシュメモリ)322、RAM323、画像プロセッサ324および音声プロセッサ325を含んでいる。画像プロセッサ324には、ビデオRAM(VRAM)340が接続され、VRAM340には表示部341が接続されている。表示部341は、液晶のディスプレイを含み、待ち受け画面や電話番号などを表示する。また、DTAコントローラ400の画面も表示部341に表示される。音声プロセッサ325には、D/Aコンバータを含むアンプ342が接続され、アンプ342にはスピーカ316が接続されている。
【0050】
画像プロセッサ324は、待ち受け画面や電話番号等などの種々の映像を生成するGPU(Graphics Processing Unit,グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を備えている。画像プロセッサ324は、DTAコントローラアプリケーションプログラム350が起動された場合には、CPU321の指示に従って
図11〜13に示すようなDTAコントローラの画像を生成し、これをVRAM340上に展開する。VRAM340上に展開された画像は表示部341に表示される。
【0051】
音声プロセッサ325は、通話音声をエンコード/デコードするDSP(Digital Signal Processor:デジタル・シグナル・プロセッサ)を有している。音声プロセッサ325は、デコード/生成した音声をアンプ342に出力する。アンプ342は、この音声信号を増幅してスピーカ316に出力する。
【0052】
3G/4G通信回路332は、携帯電話通信網を介して、音声通話およびデータ通信を行う。データ通信によってDTAコントローラなどのアプリケーションプログラムのダウンロードが行われる。なお、アプリケーションプログラムの取得は、3G/4G通信でダウンロードするのみならず、Wi−Fi通信やUSBなどのインタフェース経由で取得するようにしてもよい。
【0053】
Bluetooth通信回路333は、相手装置として選択設定した(ペアリングした)機器と通信する。DTAコントローラアプリケーションプログラム350(DTAコントローラ400)は、スピーカ装置1と通信し、上述の設置形態や距離Lを送信する。
【0054】
Wi−Fi通信回路334は、無線アクセスポイントとの間でIEEE802.11g規格の無線通信を行う。スピーカ装置1との通信は、DLNA(Digital Living Network Alliance)であってもよい。
【0055】
操作部330は、表示部341上に形成されたタッチパネルを含み、タッチパネル上のタッチ操作、フリック操作を検出する。メディアインタフェース331にはメモリカード315が接続される。メモリカード315は、たとえばマイクロSDカードである。3G/4G通信回路332によってサーバからダウンロードされたアプリケーションプログラムは、メモリカード315またはROM322に保存される。この携帯電話機300では、
図8に示すように、DTAコントローラアプリケーションプログラム350がメモリカード315に保存されている。なお、DTAコントローラアプリケーションプログラム350は、プログラム本体に加えてプログラムの実行に必要なデータを含んでいる。プログラムの実行に必要なデータは、たとえば、
図11〜13に示す画面を表示するための画像データや、
図14に示すゲイン補正テーブルなどである。
【0056】
ROM322には、この携帯電話機300の通話やアプリケーションプログラムを実行するための基本プログラムが記憶されている。また、ROM322はフラッシュメモリであり、基本プログラムのほか、ダウンロードされたアプリケーションプログラムなどを記憶することも可能である。RAM323には、CPU320がDTAコントローラアプリケーションプログラム350を実行する際に使用されるワークエリアが設定される。
【0057】
携帯電話機300は、メモリカード315に保存されているDTAコントローラアプリケーションプログラム350との協働によって、
図9に示すようなDTAコントローラ400を構成し、Bluetooth経由でスピーカ装置1にメッセージを送信してスピーカ装置1を制御する。
【0058】
図9の機能ブロック図を参照して、携帯電話機300(ハードウェア)にDTAコントローラアプリケーションプログラム350が読み込まれることによって実現されるDTAコントローラ400について説明する。DTAコントローラ400は、操作画面表示部410、操作検出部420、メッセージ編集送信部430および状態取得部440を有している。
【0059】
操作画面表示部410は、制御部320、VRAM340、表示部341およびDTAコントローラアプリケーションプログラム350の協働によって実現され、携帯電話機300の表示部341に、各種の操作画面を表示する。また、操作検出部420は、制御部320、操作部330およびDTAコントローラアプリケーションプログラム350の協働によって実現され、表示部341に表示された操作画面に対する操作(たとえば、設置形態の選択操作や距離Lの入力操作)を検出する。検出された操作情報は、操作画面表示部410、メッセージ編集送信部430などに入力される。
【0060】
メッセージ編集送信部430は、制御部320、Bluetooth通信回路333およびDTAコントローラアプリケーションプログラム350の協働によって実現される。メッセージ編集送信部430は、操作検出部420から入力された設置形態、距離Lなどの操作情報に基づき、その操作情報に対応するメッセージを編集する。そして、そのメッセージをスピーカ装置1に送信する。設置形態および距離Lに基づく距離Xおよび遅延時間Dの演算を、DTAコントローラ400が行う場合、メッセージは遅延時間D(および距離X)を含む。上記演算をスピーカ装置1の制御部50が行う場合には、メッセージは、設置形態および距離Lを含む。
【0061】
状態取得部440は、制御部320、Bluetooth通信回路333およびDTAコントローラアプリケーションプログラム350の協働によって実現される。状態取得部440は、スピーカ装置1に対して問い合わせを行い、スピーカ装置1の動作状態を取得する。動作状態とは、設置形態、距離L、上述のゲイン調整部223L,R、ゲイン調整部224L,Rおよびゲイン調整部228L,Rで構成されるイコライザの設定内容などである。取得された動作状態は、
図12などに示す操作画面の初期値に反映される。
【0062】
図10は、DTAコントローラ400の表示画面のツリー構造を示す図である。
図11〜
図13は、表示画面のうちのオプション画面の例を示す図である。
【0063】
図10において、DTAコントローラ400が起動すると、操作画面表示部410により、表示部341上にトップ画面501が形成される。トップ画面501には、再生ボタン502、スケジュールボタン503、設定ボタン504が表示される。トップ画面501で再生ボタン502がタップ(短く押す操作)されると、表示部341上に形成される画面がトップ画面501から再生画面510に移行する。再生画面510には、ソース機器選択ウィンドウ511および操作ボタン群512が表示される。ソース機器選択ウィンドウ511には、複数のソース機器(たとえば、Blutoothで選択している機器、ケーブルコネクタ55で接続している機器)が表示される。ユーザは、これらの機器のうち、所望のものをタップして選択する。そうすると、その選択された機器を操作するための操作ボタン群512が表示部341に表示される。
【0064】
また、再生画面510にはオプションボタン513も表示される。オプションボタン513は、画面を上述の設置形態や距離Lを入力するためのオプション画面520に移行させるためのボタンである。オプションボタン513がタップされると、表示部341上に形成される画面が再生画面510からオプション画面530に移行する。
【0065】
なお、トップ画面501でスケジュールボタン503がタップされると、表示部341上に形成される画面が、トップ画面501から、スピーカ装置1の再生や照明のスケジュールを週単位で設定するスケジュール画面520に移行する。また、トップ画面501で設定ボタン504がタップされると、表示部341上に形成される画面が、トップ画面501から、Bluetoothのペアリング処理や時計の同期などを行うための設定画面521に移行する。
【0066】
図11(A)は、表示部341上に形成されたオプション画面530を示す図である。オプション画面530には、音環境ボタン531、EQ(音調整)ボタン532、および、戻りボタン533が表示される。音環境ボタン531は、表示部341上に形成される画面を、
図12に示す音環境設定画面540に移行させるためのボタンである。音環境設定画面531は、上述の設置形態や距離L入力するための画面である。EQボタン532は、表示部341上に形成される画面を、
図11(B)に示すイコライザ画面560に移行させるためのボタンである。また、戻りボタン533は、表示部341上に形成される画面を、再生画面510に戻すためのボタンである。
【0067】
図11(B)において、イコライザ画面560には、低音域ゲイン調整部561、中音域ゲイン調整部562、高音域ゲイン調整部563、および、フラットボタン564が表示される。低音域ゲイン調整部561は、設定されているゲインを示す棒グラフ561A、アップボタン561U、ダウンボタン561Dを含む。ユーザによってアップボタン561Uが押し下げ操作されると、その操作時間または回数に応じて低音域のゲインが上昇し、棒グラフ561Aの着色部が上方向に伸びてゆく、または、下方向に伸びていたものが縮んでゆく。ユーザによってダウンボタン561Dが押し下げ操作されると、その操作時間または回数に応じて低音域のゲインが下降し、棒グラフ561Aの着色部が下方向に伸びてゆく、または、上方向に伸びていたものが縮んでゆく。中音域ゲイン調整部562、高音域ゲイン調整部563も、低音域ゲイン調整部561と構成および動作は同様である。また、フラットボタン564がタップされると、低音域、中音域、高音域の全てのゲインが0dB(グラフの中央)にリセットされる。ユーザによって、このイコライザ画面が操作されると、その操作によって設定されたゲインを、メッセージ編集送信部430が、リアルタイムにスピーカ装置1に送信する。
【0068】
図12において、音環境設定画面540には、配置選択ボタン541(541A,541B,541C)、距離入力部542、壁選択ボタン544、および、戻りボタン545が表示される。配置選択ボタン541(541A,541B,541C)は、スピーカ装置1の設置形態を入力するボタンである。ボタン541Aは、スピーカ装置1が
図7(A)に示した角置きの場合にユーザによりタップされる。ボタン541Cは、スピーカ装置1が
図7(B)に示した壁置きの場合にユーザによりタップされる。また、ボタン541Bは、スピーカ装置1が、角置きと壁置きの中間的な置き方、すなわち、部屋の角で壁を背に設置されている場合にタップされるボタンである。配置選択ボタン541のいずれかがタップされると、操作画面表示部410は、音環境設定画面540に選択された設置形態の平面
図543を表示する。
図12の平面
図543は、角置きのボタン541Aがタップされたときの表示例を示している。
【0069】
図12において、平面
図543には、スピーカ装置1から壁80(角81)のどの位置までが距離Lであるかが示されている。距離入力部542は、距離Lを表す棒グラフ542A、+ボタン542U、−ボタン542Dを含む。ユーザによって+ボタン542Uが押し下げ操作されると、その操作時間または回数に応じて距離Lが上昇し、棒グラフ542Aの着色部が右方向に伸びてゆく。また、ユーザによって−ボタン542Dが押し下げ操作されると、その操作時間または回数に応じて距離Lが下降し、棒グラフ542Aの着色部が左方向に縮んでゆく。表示部341上に形成される画面が、ユーザの操作により、この音環境設定画面540から離れるとき、この音環境設定画面540で入力された設置形態および距離Lが確定する。
【0070】
DTAコントローラ400が、距離Xおよび遅延時間Dを算出する場合には、この入力された設置形態および距離Lに基いて、操作検出部410が距離Xおよび遅延時間Dを算出し、メッセージ編集操作部430がこの遅延時間Dをスピーカ装置1に送信する。スピーカ装置1では、Bluetooth通信回路54がこの遅延時間Dを受信して制御部50に入力し、制御部50が信号処理部201の遅延部231Cにこの遅延時間Dを設定する。
【0071】
スピーカ装置1の制御部50が、距離Xおよび遅延時間Dを算出する場合、DTAコントローラ400のメッセージ編集操作部430は、入力された設置形態および距離Lをそのままメッセージにしてスピーカ装置1に送信する。スピーカ装置1では、Bluetooth通信回路54が設置形態および距離Lを受信して制御部50に入力し、制御部50が、距離Xおよび遅延時間Dを算出し、この遅延時間Dを信号処理部201の遅延部231Cにこの遅延時間Dを設定する。
【0072】
また、音環境設定画面540で壁選択ボタン544がタップされると、表示部341上に形成される画面が、音環境設定画面540から、
図13に示す壁選択画面550に移行する。壁選択画面550には、壁選択ボタン551および低音域ゲイン調整部552が表示される。この壁選択画面550は、壁の種類によって音声の反射効率が異なるため、ユーザにスピーカ装置1の背後の壁80の種類を入力させ、これによってイコライザを補正するための画面である。例えば、選択された壁が反射率が低い材質の場合は低音を強調し、反射率が高い材質の場合は低音の強調を抑えるなどの処理をスピーカ装置1に行わせるための設定画面である。
【0073】
壁選択ボタン551は、スピーカ装置1の背後にある壁の種類(材質)を選択するボタンであり、以下の4種類のボタン、中空の壁を示す「間仕切り壁・ドア」ボタン551A、中実の硬い壁を示す「コンクリート壁」ボタン551B、紙または布の仕切りを示す「襖・障子」ボタン551C、および、その他の壁または不明の場合に操作されるその他ボタン551Dを含んでいる。
【0074】
そして、DTAコントローラ400(メッセージ編集送信部430または状態取得部440)は、
図14に例示するようなゲイン補正テーブルを記憶している。ゲイン補正テーブルは、スピーカ装置1の背後の壁80の種類に応じてイコライザの低音域、中音域および高音域のゲインの補正値が書き込まれている。ユーザによって壁選択ボタン551が操作され、壁の種類が選択されると、DTAコントローラ400は、その壁の種類に応じたゲイン補正値を読み出し、
図11(B)のイコライザ画面560の設定値をこのゲイン補正値を加算して補正し、その補正された設定値をスピーカ装置1に送信する。
【0075】
また、低音域ゲイン調整部552は、更にユーザの好みに応じて低音域のゲインを調整するための操作部であり、
図11(B)のイコライザ画面の低音域調整部561と同様のものである。この低音域ゲイン調整部552は、低音域のゲインを表す棒グラフ552A、+ボタン552U、−ボタン552Dを含んでいる。ユーザによって+ボタン552Uが押し下げ操作されると、その操作時間または回数に応じて低音域のゲインが上昇し、棒グラフ552Aの着色部が右方向に伸びてゆく。また、ユーザによって−ボタン552Dが押し下げ操作されると、その操作時間または回数に応じて低音域のゲインが下降し、棒グラフ552Aの着色部が左方向に縮んでゆく。ユーザによって、このイコライザ画面が操作されると、その操作によって設定されたゲインを、メッセージ編集送信部430が、リアルタイムにスピーカ装置1に送信する。
【0076】
なお、スピーカ装置1の筐体11の形状は四角錐台形状に限るものではなく、円錐台形状、円柱状、多角柱状など概ね柱状であればよい。この実施形態のいずれの構成部も、本発明の趣旨を損なわない範囲で変形は自由である。なお、中音域用のスピーカユニット211Cは、上向きでなく、前面向きに設けられていてもよい。