(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メモリ(90)は、最高速設定ダイヤル(14a)の設定値と車速緩慢応答ダイヤル(14b)の設定値をそれぞれ複数記憶できる構成であることを特徴とする請求項1記載の作業車両。
走行車体(1)に該走行車体(1)の前後傾斜センサ(26)を設け、該前後傾斜センサ(26)が予め設定された前輪(2)が地面から浮き上がる傾斜を検知した場合に前記最高速設定ダイヤル(14a)と車速緩慢応答ダイヤル(14b)によりそれぞれ設定したエンジン回転数を予め設定した値だけ減少させる制御構成を制御装置(100)に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を図面と共に説明する。
作業車両の一例としてトラクタを例に以下説明する。
図1(
図1にはフロントローダのない図を示す)に全体側面図、
図2に
図1のトラクタの平面図(キャビンを除いている)を示している。
図3は
図1のトラクタの変速装置の動力伝動機構線図、
図4は本実施例のトラクタの静油圧式無段変速装置の油圧回路図であり、
図5は本実施例のトラクタの制御ブロック図である。
【0016】
なお、本明細書において作業車両の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後ろという。
図1,
図2に示すトラクタは走行車体1の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、車体1の前部に搭載したエンジン5の回転動力を伝動ケース内の変速装置によって適宜減速して、これらの前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。
【0017】
車体1の中央のハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が支持され、その後方には座席9が設けられている。
図1に示すように、燃料タンク8をボンネット22内に収め、燃料タンク8本体の後側はハンドルポスト6内に収納状態となっている。
【0018】
また、ステアリングハンドル7の下方には車体1の進行方向を前後方向に切り替える前後進レバー10が設けられている。この前後進レバー10を前側に移動させると車体1は前進し、後方へ移動させると後進する。また、ハンドルポスト6を挟んで前後進レバー10の反対側にはエンジン回転数を変更するスロットルレバー11が設けられ、また、ステップフロア13の右コーナー部にはアクセルペダル15と左右のブレーキペダル16,16が配置されている。前記アクセルペダル15は、基本的には路上走行時に使用し、その踏み込み量に応じてエンジン回転数が上昇すると共に、アクセルペダル15の踏み込み量をアクセルペダル位置センサ15a(
図5)が検出し、このアクセルペダル位置センサ15aの検出値に応じてトラニオン油圧比例弁65により静圧式無段変速装置(HST)34のトラニオン軸30(
図4)の回動角度を変更させることができる。該トラニオン軸30の回動角度により斜板34d(
図4)の傾斜角度を変化させてHSTの出力を無段階状に連続的に変更させることができる。
【0019】
前記スロットルレバー11はエンジン回転数を変更するもので、作業走行時に使用する。スロットルレバー11は操作した位置で手を離してもその位置が保持される構成である。また、操縦席9の左側に低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー21が配置され、その後方に前輪2と後輪3の間に装着しているミッド作業機(モーア等)のPTO軸の入り切りと変速を行うミッドPTO変速レバー23aと、機体後部に装着する作業機(モーア、ロータリ、除雪機等(図示せず))のPTO軸の入り切りと変速を行うリヤPTO変速レバー23bが設けられている。また、車体1の後方には作業機(図示せず)を連結するリンク31が設けられている。
【0020】
エンジン5の回転動力はHST入力軸33からHST34に伝達される。また、HST入力軸33から導入された動力により
図4に示す油圧ポンプ34aを作動させて、油圧ポンプ34aに設けられた斜板34dの傾斜角度に応じた圧油を油圧閉回路34cから油圧モータ34bに供給し、該油圧モータ34bにより走行出力軸35を駆動させて噛合式の変速装置38へ動力を伝達させる。
【0021】
図3に示すように、噛合式の変速装置38の副変速クラッチシフタ39は、変速軸43の回転がデフ装置46を介して後輪3が副変速高速段の走行速度で駆動される。
前記HST34から出力された動力は、走行出力軸35から回転軸36に伝達される。変速装置38による変速段は次のように設定される。すなわち、副変速高速段(3速)はギヤ38aからギヤ38bで変速された動力が変速軸43へ伝達される。また、副変速中速段(2速)は、ギヤ38cからギヤ38dで変速された動力が変速軸43へ伝達され、副変速低速段(1速)は、ギヤ38eからギヤ38fで変速された動力が変速軸43へ伝達される。これら副変速の3段変速は、副変速レバー21を操作してシフタ39が左右にスライドすることで切り替わる。変速軸43の回転がデフ装置46を介して後輪3が副変速中速段の走行速度で駆動される。
【0022】
一方、HST入力軸33から容量可変式の油圧ポンプ34a(
図4)に入力された動力はポンプ出力軸51(
図3にのみ図示)からPTO油圧クラッチ54などを経由してPTO軸52に設けられたPTO用の駆動系に伝達される。PTO軸52からはリヤPTO軸55とミッドPTO軸56に動力伝達される。
【0023】
また、変速軸43の副変速下手側のギヤ58からPTO軸52のギヤ47、このギヤ47と一体のギヤ59を経由して、前輪出力軸48のギヤ57に伝達され、前輪2が駆動される。
【0024】
さらに、車体1の前方又は後方にローダ(図示せず)を取り付けたときはローダ昇降シリンダ(図示せず)でローダを昇降させる。
また、静油圧式無段変速装置(HST)34はトラニオン軸30(
図4)の回動角度、すなわち斜板34dの回動角度により、制御装置100で設定されているトラニオン軸30の回転数が決まり、詳細な説明は省略するが、アクセルペダル15の踏み込み量がアクセルペダル位置センサ15aで検出されると、アクセルペダル位置センサ15aの検出値に応じてトラニオン軸30の作動量(回転数)がトラニオン油圧比例弁65により制御装置100により自動的に設定され、静油圧式無段変速装置(HST)34の油圧出力が自動的に適切な値に設定される。
【0025】
なお、前後進レバー10の前進側又は後進側への切り替えで前後進レバー10の回動基部に設けている図示しない切替スイッチを作動させる等の方法で、制御装置100が静油圧式無段変速装置(HST)34のトラニオン軸30の回動方向を前進側又は後進側に設定する。このトラニオン軸30の回動方向は、切替弁63(
図4)で決定する。そして、トラニオン軸30の回動角度が、アクセルペダル15の踏み込み量に応じて変化する。トラニオン軸30の回動角度は、トラニオン油圧比例弁65の電磁弁への電流量で決定する。
【0026】
さらに、バルブスティック時などの緊急時には、操縦部にあるブレーキペダル16,16を目一杯踏み込むと強制的にHSTトラニオン軸30をニュートラルに戻すことができる。ブレーキ16,16を踏むときは、オペレータはアクセルペダル15から足を離しているので、トラニオン軸30は中立に戻る。このときトラニオン軸30が自然に戻るまたは強制的に高速で戻すかは、機種により異なる。
【0027】
図4に示すHST34の油圧回路34cにおいて、不純物でバルブなどが詰まる(バルブスティック)際には、操縦部にある緊急停止レバー(図示せず)を引いて、HST34のトラニオン軸30をニュートラルに戻す。また、本実施例のトラクタの制御装置100の制御ブロック図を
図5に示す。
【0028】
図1に示すトラクタの全体平面図に示すように、ハンドル7の回りのハンドルポスト6にはスロットルレバー11(
図2)と前後進レバー10が左右に配置されている。スロットルレバー11の右側のステップフロア13上にはアクセルペダル15が配置されている。アクセルペダル15はHST34のトラニオン軸30の回動角度の調整を行うことができる。
【0029】
さらに、操縦席9の右側のレバーガイド12aには最高速設定ダイヤル14a、車速緩慢応答ダイヤル14b及びクルーズ走行スイッチ14cが前側から後側に順に一列に配置されている。なお、前記ダイヤル14a,14bとスイッチ14cは前後方向に一列に順に配置されていれば良く、ダイヤル14a,14bとスイッチ14cの配列順序にはこだわらない。
【0030】
最高速設定ダイヤル14aはダイヤル式であり、トラニオン軸30の回動角度を調整して車体の最高速度を規制するものであり、所定の最高速を操縦者が決めることができるように、例えば約15〜30km/hの範囲にダイヤル式に変更できる構成としている。したがって、アクセルペダル15を最大まで踏み込んでも、最高速設定ダイヤル14aで規制している速度までしか出せない構成(最高速設定ダイヤル14aの全ストロークのセンサ値とトラニオン軸30の回転の全ストロークのセンサ値を一致させる構成)としている。
【0031】
車速緩慢応答ダイヤル14bもトラニオン軸30の回動速度を変更設定するものである。アクセルペダル15を踏むと、アクセルペダル位置センサ15aで目標となる速度、すなわち目標となるトラニオン軸30の回動角度が決まるが、この目標となるトラニオン軸30の回動角度の位置に、トラニオン軸30が到達する時間を変更するものである。例えば、車速緩慢応答ダイヤル14bを鈍感(スロー)にしておくと、アクセルペダル15を素早く踏んでも、トラニオン軸30の目標となる回動角度への到達時間がゆっくりとなるので、ゆっくりと加速していく構成である。この目標位置への到達時間の変更は、トラニオン油圧比例弁65(
図4)への電流のデューティー比を変更することで行う。この車速緩慢応答ダイヤル14bによる所定の車速に達するまでの時間は、例えば約3秒間から約6秒間までとダイヤル式に変更できる構成としている。
【0032】
クルーズ走行スイッチ14cは入り切り式のスイッチであり、ある特定の速度で走行しているときにこのクルーズ走行スイッチ14cを入りにすると、アクセルペダル15から足を離しても、そのときの速度を維持する構成である。すなわち、クルーズ走行スイッチ14cは該クルーズ走行スイッチ14cを入れたときの車速に合致するように、トラニオン軸30の回動角度を一定とし、したがってHST34の出力が一定に保持されて車速が一定に保持される。クルーズ走行スイッチ14cを入れた後でアクセルペダル15から足を離しても、そのときの速度を維持する。
【0033】
このように最高速設定ダイヤル14a、車速緩慢応答ダイヤル14b及びクルーズ走行スイッチ14cのいずれかを入りとするだけで、HST34のトラニオン軸30の回動角度を予め設定された3種類のいずれかに設定できるので、これらのダイヤル14a,14bとスイッチ14cを設けない場合に比較して操縦性が良くなる。しかも、ダイヤル14a,14bとスイッチ14cは操縦席9の隣接位置に前後方向に一列に並べて配置されるので、これらのダイヤル14a,14bとスイッチ14cの選択に迷うことがなく、目的のダイヤル、スイッチを素早く入れることができる。
【0034】
これらのダイヤル14a,14bとスイッチ14cはまとめてサーボスイッチとも呼ばれているが、操縦席9に隣接する右のレバーガイド12aに前後方向に一列に並べる順序としては前側から後側に最高速設定ダイヤル14a,クルーズ走行スイッチ14c及び車速緩慢応答ダイヤル14bの順に配置しても良い。
【0035】
最高速設定ダイヤル14aと車速緩慢応答ダイヤル14bを制御装置100のメモリ14aに記憶でき、次回使用時にはメモリ14aの記憶値から最高速および車速緩慢応答速を始動できるようにした。
【0036】
従来技術では、最高速設定ダイヤル14aと車速緩慢応答ダイヤル14bで設定した基本となるような値はダイヤル14a、14bでその都度設定していたので、以前設定していた速度に設定したいと思ってもできなかった。しかし、本実施例ではそれぞれダイヤル14a、14bで設定した最高速および車速緩慢応答速をメモリ90に記憶できる構成になっている。
【0037】
すなわち、
図2、
図6に示すように、操縦席9に隣接する右のレバーガイド12aの右側にメモリ1スイッチ17を設け、該メモリ1スイッチ17を長押しすることにより、最高速設定ダイヤル14aと車速緩慢応答ダイヤル14bでそれぞれ設定した値を記憶することができる。またメモリ1スイッチ17を短押しすることにより、最高速設定ダイヤル14aと車速緩慢応答ダイヤル14bでそれぞれ設定した記憶値を実行することができる。なお、メモリ1スイッチ17を短押しすると、当該メモリ1スイッチ17が点灯するので認識し易い。
【0038】
こうして、次回の作業時において、ダイヤル14a、14bの使用時には改めて設定することなく、前回使用したダイヤル14a、14bの値で操作できる利点があり、操作性が従来技術より向上する。
【0039】
また、それぞれダイヤル14a、14bで設定した複数の最高速および車速緩慢応答速をメモリ90に記憶できるようにすると、作業体系に合わせて複数個の基本設定値を設定でき、さらに操作性が従来技術より向上する。
【0040】
メモリ2スイッチ18を長押しすることにより、現在のアクセルペダル15の踏み込み量を記憶することができる。またメモリ2スイッチ18を短押しすることにより、アクセルペダル15の踏み込み量で設定した記憶値を実行することができる。なお、メモリ2スイッチ18を短押しすると、当該メモリ2スイッチ18が点灯するので認識し易い。
【0041】
こうして、次回の作業時において、ダイヤル14a、14bの使用時には改めて設定することなく、前回使用したダイヤル14a、14bの値で操作できる利点があり、操作性が従来技術より向上する。
【0042】
また、複数のアクセルペダル15の踏み込み量で設定した記憶値を実行できるようにすると、作業体系に合わせて複数個の基本設定値を設定でき、さらに操作性が従来技術より向上する。
【0043】
PTO専用スイッチ19(
図2参照)を設け、該PTO専用スイッチ19を押しながら最高速設定ダイヤル14a又は車速緩慢応答ダイヤル14bで最高速又は車速緩慢応答速(目標とするPTO軸の回転数に到達する迄の時間)を設定することでトラクタ(走行車両)に連結したモーアなどの作業機を最高速又は車速緩慢応答速で走行させることができ、作業性と汎用性が向上する。
【0044】
このとき、
図7に示すように操作パネル9bに最高速設定ダイヤル14a又は車速緩慢応答ダイヤル14bでそれぞれ設定した走行系の設定値(最高速度又は目標とする回転数に到達する迄の時間)を表示することができるようにする。
【0045】
このように走行系の最高速度などの設定手段を用いてPTO軸の最高回転数又は車速緩慢応答速(目標とするPTO軸の回転数に到達する迄の時間)も設定することができるので、スイッチ類の設置数を従来より減少させることができる。
【0046】
また、トラクタが登り坂を走行中に前輪2が地面から浮いた場合、最高速及び車速緩慢応答速の設定値が自動で約30〜40%低減されるような制御構成を有する制御装置100を採用することで登り坂を走行中の安全性を確保することができる。ここでトラクタが登り坂を走行中であることは走行車体1に取り付けた前後傾斜センサ26で検知する。
【0047】
最高速設定ダイヤル14a又は車速緩慢応答ダイヤル14bで最高速又は車速緩慢応答速を設定しようするときに、それぞれの最高速設定ダイヤル14a又は車速緩慢応答ダイヤル14bがそれぞれのダイヤル14a、14bの切り位置K(
図6に示す)に無いとエンジン5を始動できないようにすることで、トラクタの安全性を保つことができる。
【0048】
これはエンジン5の始動時にいきなり最高速設定値又は車速緩慢応答速に設定されると危険であることとエンジン始動時にエンジン5に大きな負荷が掛かり、エンジン5の耐久性を損なうことになるからである。
【0049】
前記最高速設定ダイヤル14aと車速緩慢応答ダイヤル14b以外に、エンジン回転数を設定できるエンジン回転ダイヤル27を設けてもよい。この場合はスロットルレバー11を設ける必要がない。
【0050】
トラクタの初動時に前記最高速設定ダイヤル14a又は車速緩慢応答ダイヤル14bが最大値に近い場合にエンジン回転数を上げることを出来なくすると、トラクタが突然急発進などをするおそれが無くなる。
【0051】
最高速設定ダイヤル14aで設定した最高速でトラクタが走行中には、安全性を確保するために、車速緩慢応答ダイヤル14bでの設定ができないようにしている。
アクセルペダル15がロックした場合には、アクセルペダル位置センサ15aがアクセルペダル15が元の位置に戻らないことを検知するので、制御装置100は安全の為にエンジン5を停止する制御をおこなう。
【0052】
トラクタがクルーズ走行中に操縦者が操縦席9から離れるとトラクタの緊急停止が働くように制御をする。操縦席9にはシートスイッチ32が配置されているので、操縦者が操縦席9から離れるとシートスイッチ32が起動してエンジン5を停止させる。
【0053】
トラクタが、ローダなどの重負荷作業中、エンストしそうになると機敏性が失われるので車速緩慢応答ダイヤル14bでの設定をより機敏側にしておくような制御構成を制御装置100に設けても良い。
【0054】
また、一括オフスイッチ20を設け、該一括オフスイッチ20をオンにすることで、最高速設定ダイヤル14a、車速緩慢応答ダイヤル14b及びオートクルーズスイッチ14cの設定ができなくなるような構成にしても良い。
【0055】
一括オフスイッチ20をオンにしておくことによって、上記ダイヤル14a,14b及びスイッチ14cを誤って操作しても作動しないので安全である。
前後進レバー10を廃止して最高速ダイヤル14aのある位置にトラクタの前後進機能を取り入れたダイヤル14xを設け、「最高速(前進)←低速←N→低速(後進)→最高速」と当該ダイヤル14xを回すことで多数の走行モードを設定できるようにすると、使い勝手が良くなる。
【0056】
トラクタが路上条件によりスリップした場合、車速緩慢応答ダイヤル14bによる設定値を少し低くするような制御を制御装置100が行うことで安全走行を維持できる。ここでトラクタがスリップしたことは、車速センサ53の検出値が急激に低下することで分かる。
【0057】
また、トラクタが旋回中には安全のために車速緩慢応答ダイヤル14bによる設定ができないように制御を行っている。なお前記トラクタの旋回中かどうかの判断はハンドル7の操作軸部に設けた操舵センサ28で行うことができる。
【0058】
さらに、トラクタが登り坂を後進しながら登っているときに急に坂道を下らないように、また登り坂を前進中に急に後退して坂道を下らないように、それぞれ車速緩慢応答ダイヤル14bでの設定値がどのような値であっても、車速緩慢応答速をより鋭敏となるように制御を行う制御構成を制御装置100に設けても良い。このとき登り坂は車体1の前後傾斜センサ26で容易に検知できる。
【0059】
また、同様に下り坂を後進しながら下がっている間に坂道を落ちないように車速緩慢応答ダイヤル14bでの設定値がどのような値であっても、車速緩慢応答速をより鋭敏となるように制御を行う制御構成を制御装置100に設けても良い。
【0060】
反対に、下り坂を前進中にスピードが急に上がらないように車速緩慢応答速をより鈍感に(弱く)するように制御する制御構成を制御装置100に設けても良い。
前後進レバー10の代わりにアクセル(前後進)ペダル15を用いて、しかも、そのペダル15が前後シーソー式の、いわゆるワンペダル構成である場合に、前進から後進にペダル操作した際、ショックをなくすためにニュートラル付近で車速緩慢応答速を鈍感に(弱く)するような制御を行う制御構成を制御装置100に設けることで安全性を確保する。この場合も、車速緩慢応答ダイヤル14bの設定値がどのような値であっても鈍感に(弱く)する。この場合は踏み込み式のアクセルペダル15に代えてワンペダルスイッチ15xを用いる。
【0061】
またトラクタへの最高速設定ダイヤル14aの取り付けを廃止したときには、走行停止時(走行前)にアクセルペダル15の踏み込み量を目一杯にしたときを最高速度として設定する制御構成にすることができる。この場合は最高速設定ダイヤル14aの取り付けを廃止してコストを低減することができる。
【0062】
アクセルペダル15を一定位置で保持した場合、自動的にオートクルーズ走行ができるような制御構成にすることができる。例えば、アクセルペダル15を一定位置で保持することで所定距離(例えば10m)走行する。このような場合には、例えば10m走行したときの速度で走行する制御を行う。このような構成にすると、オートクルーズ走行スイッチ14cの設置を省略することができる。
【0063】
また、アクセルペダル15に一定時間足を置いて走行していると、自動的にオートクルーズ走行ができるような制御構成にすることができる。この場合もオートクルーズ走行スイッチ14cの設置を省略することができる。
【0064】
さらに、オートクルーズメモリを設けておき、オートクルーズスイッチ14cを一定時間押すと、オートクルーズ設定がされて走行し始める構成にすることもできる。こうして、オートクルーズ走行設定の簡易化が可能となる。
【0065】
アクセルペダル15の踏み込みに合わせてPTO軸55の回転数が上がるように構成すると、PTO軸55の回転数制御が可能となる。この制御により、例えばトラクタで芝刈り作業を行う場合に、車速を上げて、モーアを下ろしてカッタの回転数を高くして芝刈りを効果的に行うことができる。
【0066】
オートクルーズスイッチ14cとして、該スイッチ14cを引き上げるとオンとなり、押し下げるとオフとなる構成にすると、オートクルーズ設定時、又は不具合があるときには、オートクルーズスイッチ14cを押すという動作だけで安全が確保できる。
【0067】
アクセルペダル15の踏み込み後、一定時間又は一定距離を走行した後に初めてオートクルーズスイッチ14cの操作が有効になる構成にすると安全性が従来より高くなる。
また、操縦席9の左側には副変速レバー21,ミッドPTO変速レバー23a,リヤPTO変速レバー23b及び4WDレバー24が配置されている。4WDレバー24の外側には副変速レバー21が配置され、リヤPTO変速レバー23bの外側にはミッドPTO変速レバー23aが配置されている。
【0068】
バルブスティック時などの緊急時には、
図2に示す操縦部にあるブレーキペダル16,16を目一杯踏み込むと強制的にHSTトラニオン軸30をニュートラルに戻すことができる。
【0069】
HSTサーボ付きのトラクタにおいて、スロットルレバーセンサ11aで検知するスロットルレバー11の操作位置がハーフスロットル位置の近傍にある場合(エンジン回転数が最高回転数の約半分の場合)には、機体の前方に昇降自在に取り付けられるローダ(図示せず)のバケット内に負荷のかかる荷をのせて作業中であると判定して、前後進レバー10が前進側にある場合(トラニオン軸30の回転方向が前進側にある場合)は、スロットルレバー11はそのままとしてエンジン回転数を一定に維持し、アクセルペダル15を踏み込んでHST34の油圧出力を上げて車速のみを上げるが、前後進レバー10が後進側にある場合にはアクセルペダル15の踏み込み量に応じたトラニオン軸30の回動角度に対応した回転数で、かつダイヤル14bで設定される車速緩慢応答速度より遅い変速速度で変化させて、車速を緩やかに上げる制御を行うようにしても良い。
【0070】
また、アクセルペダル15の踏み込みによりトラニオン軸30の回動角度を上げていき、エンジン回転数がハーフスロットル相当以上になってもアクセルペダル15の踏み込みがさらに続くと、エンジン回転数を上げる。このような車速の上げ方はアクセルペダル15の踏み込み量に応じてコントローラ100で制御されるトラニオン軸30の回動角度調整用のトラニオン油圧比例弁65の作動量の増加により行われる。
【0071】
上記したエンジン回転数の制御によりハーフスロットル状態では低燃費化が図れる。特に後進時にはエンジン回転数を緩やかに上げることで、エンジン駆動力を減らすことができて低燃費化が図れる。
【0072】
また、前後進レバー10の基部に設けた前後進レバーセンサ10cで検出される前後進レバー10の前後進切替速度に応じて目標速度への到達速度を変更することができる。例えば、オペレータの意図を考慮して前後進レバー10が速く切り替わった場合は目標速度に達する時間を短くすることができる。
【0073】
さらに、前後進レバー10の前後進の切替速度に応じて目標速度への到達速度を変更することができる制御構成(前後進レバー10の前後進の切替速度に応じて、オペレータの意図を考慮し、速く前進と後進が切り替わると、目標とする速度に達するまでの時間を短くする構成)を採用した上で、さらにこのとき後進から前進への切替速度は前進から後進への切替速度に比べて、目標とする速度に達するまでの時間を長くする。これは、オペレータが後進から前進への切り替えに恐怖感を感じやすいので、それを防ぐためである。
【0074】
上記HSTサーボ付きトラクタにおいて、前後進レバー10の前後進の切替速度に応じて目標速度への到達速度を変更する制御と同時に、後進から前進への切替速度はその反対の前進から後進への切替速度より遅くして、目標速度への到達速度が遅くなるようにすることで、オペレータの恐怖感をなくすと共に、さらにHST出力軸回転センサ35aの検出値とトラニオン軸回動角度センサ30aの検出値との偏差(両検出値の差異における所定値からのずれ)により作業機の牽引負荷を判断し、その牽引負荷に応じて静油圧式無段変速装置34の出力の変更速度を調節することで、ローダ作業などの作業を容易に行うことができる。例えば、トラクタの牽引負荷を判断してローダ(図示せず)のバケットに土砂が入っていると判断されると、ローダバケットから土砂を落とさないように、土砂が入っていないときより緩やかに前後進の切り替えを行う制御構成を採用する。
【0075】
この制御構成もオペレータが後進から前進への切り替えに恐怖感を感じやすいので、それを防ぐために行う。
また、トラニオン軸回動角度センサ30aとHST出力軸回転センサ35aの両検出値の差異が所定値からずれていると、トラクタに牽引負荷があると判断してフィードバックのスピードを変更することができる。
【0076】
通常はトラニオン軸回動角度とHST出力軸回転数とは比例関係にあるが、走行負荷によってはトラニオン軸回動角度が一定でも、負荷が掛かるとHST出力軸回転数が変化する。エンジン回転数が一定のときに、エンジン回転数の変化を読み取り、その時間当たりの変化量に応じてトラニオン油圧比例弁65の変更速度を調整する。例えば、HSTトラニオン油圧比例弁65(
図4)の変更速度をゆっくりにすると、車速もゆっくり下げることができる。
【0077】
また、トラニオン軸回動角度センサ30aとHST出力軸回転センサ35aの前記偏差により、トラクタの牽引負荷を判断してフィードバックのスピードを変更する際に、トラクタの牽引負荷に変化がないにも拘わらず、エンジン回転数が減少する場合には、PTO負荷があると判断して車速を下げる制御を行い、PTO負荷によるエンストを防止する。
【0078】
また、トラニオン軸回動角度センサ30aとHST出力軸回転センサ35aの前記偏差により、トラクタの牽引負荷を判断して、牽引負荷に変化がなく、スロットルレバー11を操作していないためにスロットルレバーセンサ11aによるスロットルレバー11の動きの検知がない場合に、PTO負荷によるエンジン回転数の変動があったときにはHSTトラニオン油圧比例弁65の変更速度を調整して車速を下げる。
【0079】
これはPTO作業時に一定車速で走行中にPTO負荷によりエンジンドロップがあった場合は、最悪の場合にエンストするので、そのエンストの防止のためである。
また、トラニオン軸回動角度センサ30aとHST出力軸回転センサ35aの前記偏差とエンジン回転数の変動を総合的に判断して(トラニオン軸回動角度センサ30aとHST出力軸回転センサ35aの検出値にズレがあり、かつエンジン回転数が低下しているときは、負荷大と判定する。またトラニオン軸回動角度センサ30aとHST出力軸回転センサ35aの検出値にズレがあっても、エンジン回転数が低下していない場合は、負荷ではなく機械的な部材の構成によるトラブルが考えられる)、トラクタの牽引負荷とPTO負荷の変動とを両方感知してトラニオン油圧比例弁65の変更速度を調整して車速を変更する制御構成としても良い。
【0080】
こうしてPTO負荷と牽引負荷の変動を検出し、この負荷に応じて車速を下げることでエンストの防止を図ることができる。
また、静油圧式無段変速装置(HST)34はトラニオン軸30の回動角度によりその出力が決まり、詳細な説明は省略するが、前述のようにアクセルペダル位置センサ15aの検出値に応じてトラニオン油圧比例弁65によりトラニオン軸30の作動量が制御装置100により自動的に設定され、静油圧式無段変速装置(HST)34の油圧出力が自動的に適切な値に設定される。
【0081】
なお、前後進切替レバー10の前進側又は後進側への切り替えで前後進切替レバー10の回動基部に設けている前後進レバー位置センサ10c(
図5にのみ図示)の検出値により、又は前進側ソレノイド10aと後進側ソレノイド10b(
図5にのみ図示)の作動等の方法で、制御装置100が静油圧式無段変速装置(HST)34のトラニオン軸30の回動方向を前進側又は後進側に設定する。このトラニオン軸30の回動方向は、切替弁63(
図4)で決定する。そして、トラニオン軸30の回動角度が、アクセルペダル15の踏み込み量に応じて変化する。トラニオン軸30の回動角度は、トラニオン油圧比例弁65への電流量で決定する。
【0082】
さらに、バルブスティック時などの緊急時には、操縦部にあるブレーキペダル16を目一杯踏み込むと強制的にHSTトラニオン軸30をニュートラルに戻すことができる。
前述のように、アクセル(HST)ペダル15の踏み込み量に応じてトラニオン油圧比例弁65により、静油圧式無段変速装置(HST)34の油圧出力を変化させ、HST34のトラニオン軸30の回動角度を変更してトラニオン軸30に設けられる斜板34dの傾斜角度を変化させてHST34の出力を無段階状に変更させるが、アクセル(HST)ペダル15の踏み込み量を検出するアクセルペダル位置センサ15a等に異常があると、操作パネル9bにアクセル(HST)ペダル15の何らかの異常があることを適宜の図形、文字、音声などにより表示画面に表示出力を行う。
【0083】
また、アクセルペダル15の操作量からトラニオン油圧比例弁65による制御油圧を変化させ、オートクルーズ走行中にアクセルペダル15のペダル位置センサ15aの値が規定範囲外のときには、操作パネル9bにアクセルペダル15の何らかの異常があることを適宜の図形、文字、音声などにより表示画面に表示出力を行い、さらに、オートクルーズコントロールを解除することでフェールセーフできる。
【0084】
アクセルペダル15の操作量からトラニオン油圧比例弁65の電磁弁(ソレノイド)への出力を規定するアクセルペダル位置センサ15aの異常処理において、オートクルーズ制御中にセンサ値が規定範囲外のときには、アクセルペダル15の何らかの異常があることを適宜の図形、文字、音声などにより操作パネル9bに表示出力を行うと共に、オートクルーズランプを消灯する。
1 走行車体 2 前輪
3 後輪 5 エンジン
5a エンジン回転センサ 6 ハンドルポスト
7 ステアリングハンドル 8 燃料タンク
9 操縦席(座席) 9b 操作パネル
10 前後進レバー 10a 前進側ソレノイド
10b 後進側ソレノイド 10c 前後進レバー位置センサ
10d 前後進レバー切替速度センサ
11 スロットルレバー 11a スロットルレバーセンサ
12a,12b レバーガイド 13 ステップフロア
14a 最高速規制ダイヤル 14b 車速緩慢応答ダイヤル
14c オートクルーズスイッチ 15 アクセルペダル
15a アクセルペダル位置センサ 16 ブレーキペダル
17 メモリ1スイッチ 18 メモリ2スイッチ
19 PTO専用スイッチ 20 一括オフスイッチ
21 副変速レバー 21a 副変速レバー位置センサ
22 ボンネット 23a ミッドPTO変速レバー
23b リヤPTO変速レバー 24 4WDレバー
26 車体前後傾斜センサ 27 エンジン回転ダイヤル
28 操舵用センサ 30 トラニオン軸
30a トラニオン軸角度センサ 31 リンク
32 シートスイッチ 33 HST入力軸
34 静油圧式無段変速装置(HST) 34a 油圧ポンプ
34b 油圧モータ 34c 油圧閉回路
34d 斜板 35 走行出力軸
35a HST出力軸回転センサ 36 回転軸
38 噛合式変速装置 39 副変速クラッチシフタ
43 変速軸 46 デフ装置
47,57,58,59 ギヤ 48 前輪出力軸(4WD軸)
51 ポンプ出力軸 52 PTO軸
53 回転速度センサ(車速センサ) 54 油圧クラッチ
55 リヤPTO軸 56 ミッドPTO軸
63 切替弁 65 トラニオン油圧比例弁
77a 左ブレーキスイッチ 77b 左ブレーキスイッチ
90 メモリ 100 コントローラ