(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090103
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170227BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20170227BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/02 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-217280(P2013-217280)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-80367(P2015-80367A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋明
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 宏昌
【審査官】
田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−528070(JP,A)
【文献】
特開2001−169463(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0156566(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/111478(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが直列接続された電池モジュールと、
前記電池モジュールから電力供給を受けて前記電池モジュールの異常を監視する監視手段と、
前記監視手段のグランド端子とアノードが接続され、前記電池モジュールの負の端子とカソードが接続されたダイオードと、
一端が前記電池モジュールの負の端子と前記ダイオードのカソードとの接続点に接続され、前記監視手段によりオン/オフ制御されるスイッチ手段と、
を有する複数の電源ユニットを備え、
前記複数の電源ユニットにおいて、
各々の前記電池モジュールの正の端子が共通接続され、かつ各々の前記スイッチ手段の他端が共通接続され、かつ各々の前記監視手段の前記グランド端子が共通接続され、
前記ダイオードは、オン状態の前記スイッチ手段に接続された電池モジュールからオフ状態の前記スイッチ手段に接続された電池モジュールへ電流が回り込むのを防止することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電池モジュールの正の端子から前記監視手段の電力供給端子へ電力が供給されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記複数の電源ユニット内の各々の前記監視手段を監視制御する監視制御手段を有し、
前記監視制御手段は、
前記電池モジュールの正の端子からへ電力供給を受け、前記監視制御手段のグランド端子は前記複数の電源ユニットの各々の前記ダイオードにおける各アノードに共通接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の複数のセルが直列接続され、各セルの異常監視機能を備えた電池モジュールを並列に接続した電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセルが直列接続され、各セルの異常監視機能を備えた電池モジュールを並列に接続した電源装置に関して、例えば、下記特許文献1〜3のような文献がある。
下記特許文献1には、複数のセルが直列接続された電池と、セルの異常を監視し、異常を検出した場合にスイッチオフ信号によりオフ状態となるスイッチと、を有する複数の電池ユニットが並列接続された電池システムが記載されている。又、下記特許文献2には、複数のセルが直列接続された組電池と、電池の異常を監視する電池監視手段とを有する電源装置が記載されている。更に、下記特許文献3には、複数のセルが直列接続された組電池と、複数の電池間の出力電圧の差によって生じる電流の逆流を防止する1つ以上の逆流防止ダイオードとを有する電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−88202号公報
【特許文献2】特開2004−120856号公報
【特許文献2】特開2011−205866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電源装置では、スイッチオフ信号によりオフ状態となるスイッチが電池の正の端子側に配置されているため、スイッチを電界効果トランジスタ等で構成する場合に制御電圧を高い電圧にする必要がある。低い制御電圧で電界効果トランジスタ等のスイッチを制御するためには、スイッチを電池の負の端子側に配置する必要があるが、電池の負の端子側を共通グランドにすると、オン状態のスイッチに接続された電池から、オフ状態のスイッチに接続された電池に電流が回り込み、並列接続された電池を独立にオン/オフ制御できない。
【0005】
又、特許文献2の電源装置は、劣化判定対象の組電池と劣化判定対象外の組電池とを分けて充放電試験を行うことができるが、異常が検出された組電池を切り離す機能を有していない。更に、特許文献3の電源装置は、各電池の異常を検出し、異常が検出された組電池を切り離す機能を有していない。
【0006】
本発明は、複数のセルが直列接続され、各セルの異常監視機能を備えた複数の電池モジュールを並列に接続した電源装置において、複数の電池モジュールを低い電圧で独立にオン/オフ制御できる電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電源装置は、複数のセルが直列接続された電池モジュールと、前記電池モジュールから電力供給を受けて前記電池モジュールの異常を監視する監視手段と、前記監視手段のグランド端子とアノードが接続され、前記電池モジュールの負の端子とカソードが接続されたダイオードと、一端が前記電池モジュールの負の端子と前記ダイオードのカソードとの接続点に接続され、前記監視手段によりオン/オフ制御されるスイッチ手段と、を有する複数の電源ユニットが、各々の前記電池モジュールの正の端子が共通接続され、かつ各々の前記スイッチ手段の他端が共通接続され、かつ各々の前記監視手段の前記グランド端子が共通接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各電源ユニットが、監視手段のグランド端子とアノードが接続され、電池モジュールの負の端子とカソードが接続されたダイオードを有している。このダイオードにより、オン状態のスイッチに接続された電池から、オフ状態のスイッチに接続された電池への電流の回り込みを防止し、各電源ユニットのスイッチ手段を独立にオン/オフ制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態の電力供給システムの概略を示すブロック図
【
図3】
図2の電源装置20における電流回り込みを説明する図
【
図4】本発明の第1実施形態の電源装置10の要部の回路図
【
図6】本発明の第2実施形態の電源装置10Aの要部の回路図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電力供給システムの概略を示すブロック図である。
【0011】
図1の電力供給システムは、電源装置10と、負荷Zとを有し、電源装置10から負荷Zへ電流Itが供給されている。負荷Zから電源装置10へは、負荷の状態を示す信号が出力されている。
【0012】
図2は、比較例の電源装置20の回路図であり、
図3は、
図2の電源装置20における電流の回り込みを説明する図である。
図2の電源装置20は、複数のセルが直列接続された複数の電池モジュール1−1,1−2を有している。電池モジュール1から電力供給を受けて電池モジュール1の電圧、電流、温度の少なくとも1つの異常を監視する監視手段としての監視電子制御ユニット(Electronic Control Unite、以下「ECU」という。)2(2−1,2−2)を有している。更に、一端が電池モジュール1の負の端子に接続され、監視ECU2が出力する制御信号によりオン/オフ制御されるスイッチ手段3(3−1,3−2)を有している。スイッチ手段3は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)等により構成される。電池モジュール1と、監視ECU2と、スイッチ手段3と、により電源ユニットが構成されている。
【0013】
電源装置20は、複数の電源ユニットの、各々の電池モジュール1の正の端子が共通接続され、かつ各々のスイッチ手段3の他端が共通接続され、かつ各々の監視ECU2のグランド端子がスイッチ手段3の一端と共通接続されて、構成されている。各々の監視ECU2のグランド端子が共通接続されているのは、各々の監視ECU2同士が相互に通信を行うためである。電源装置20は、監視ECU2から出力される低電圧のオン/オフ信号によりスイッチ手段3(3−1,3−2)を独立に制御することを意図した回路である。
【0014】
図3において、スイッチ3−1はオフ状態であり、スイッチ3−2はオン状態である。この場合、オン状態のスイッチ3−2に接続された電池モジュール1−2から負荷Zに電力が供給される。しかし、監視ECU2−1及び2−2のグランド端子が共通に接続されているため、オフ状態のスイッチ3−1に接続された電池モジュール1−1にも、一点鎖線の矢印で示した経路で電流が回り込む。そのため、各々のスイッチ手段3−1,3−2を独立にオン/オフ制御することができない。
【0015】
図3では、スイッチ3−1はオフ状態であり、スイッチ3−2はオン状態であるとして説明したが、スイッチ3−1がオン状態であり、スイッチ3−2がオフ状態であって良い。この場合には、オン状態のスイッチ3−1に接続された電池モジュール1−1から負荷Zへ流れる電流の一部が、オフ状態のスイッチ3−2に接続された電池モジュール1−2へ回り込み、各々のスイッチ手段3−1,3−2を独立にオン/オフ制御することができない。
【0016】
尚、
図2,
図3では、説明の都合上、電源装置20は、2つの電源ユニットが並列接続された構成を例に説明したが、並列接続される電源ユニットの数は2つに限定されず、任意の数の電源ユニットを並列接続した電源装置について、同様の電流の回り込みが発生する。
【0017】
そこで、各々のスイッチ手段3−1,3−2を独立にオン/オフ制御できる本発明の第1実施形態の電源装置10を発明した。
図4は、本発明の第1実施形態の電源装置10の要部の回路図であり、
図5は、
図4の電源装置10の動作を説明する図である。
【0018】
図4において、電源装置10は、複数のセルが直列接続された電池モジュール1と、電池モジュール1から電力供給を受けて電池モジュール1の電圧、電流、温度の少なくとも1つの異常を監視する監視手段としての監視ECU2(2−1,2−2)と、監視ECU2のグランド端子とアノードが接続され、電池モジュール1の負の端子とカソードが接続されたダイオード4(4−1,4−2)と、一端が電池モジュール1の負の端子とダイオード4のカソードとの接続点に接続され、監視ECU2によりオン/オフ制御されるスイッチ手段3(3−1,3−2)と、を有する複数の電源ユニットが、複数の電源ユニットの各々の電池モジュール1の正の端子が共通接続され、かつ複数の電源ユニットの各々のスイッチ手段3の他端が共通接続され、かつ複数の電源ユニットの各々の監視ECU2のグランド端子が共通接続されている。
【0019】
監視ECU2は、電源供給端子が電池モジュール1の正の端子に接続され、グランド端子がダイオード4を介して電池モジュール1の負の端子に接続され、電池モジュール1から電力供給を受けて電池モジュール1の異常を監視すると共に、負荷Zが必要とする電力量の状態に応じて、異常でない電池モジュールを接続するスイッチ手段3をオン状態にするオン/オフ信号を出力する。更に、各監視ECU2同士で通信を行うため、各監視ECU2のグランド端子は、共通接続されている。
【0020】
次に、
図5に基づいて、第1実施形態の電源装置10の回路の動作について説明する。
図5において、
図3と同様に、スイッチ3−1はオフ状態であり、スイッチ3−2はオン状態である。この場合、オン状態のスイッチ3−2に接続された電池モジュール1−2から負荷Zに電力が供給される。
【0021】
この場合、
図3と異なり、監視ECU2−1のグランド端子にダイオード4−1のアノードが接続され、ダイオード4−1のカソードが電池モジュール1の負の端子に接続されているため、オフ状態のスイッチ3−1に接続された電池モジュール1−1には、電流が回り込まない。そのため、各々のスイッチ手段3−1,3−2を独立にオン/オフ制御することができる。
【0022】
図4に示された第1実施形態の電源装置10の構成によれば、各電源ユニットが、監視ECU2のグランド端子とアノードが接続され、電池モジュール1の負の端子とカソードが接続されたダイオードを有している。このダイオードにより、オン状態のスイッチ3−2に接続された電池モジュール1−2から、オフ状態のスイッチ3−1に接続された電池モジュール1−1へ電流が回り込むのを防止でき、各電源ユニットのスイッチ手段3を独立にオン/オフ制御することができる。
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態の電源装置10Aの要部の回路図であり、比較例の電源装置20を示す
図2、及び第1実施形態の電源装置10を示す
図4と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0023】
電源装置10Aは、
図4に示された電源装置10と同様の電池モジュール1(1−1,1−2)、監視ECU2(2−1,2−2)、スイッチ手段3(3−1,3−2)、及びダイオード4(4−1,4−2)を有し、新たに、監視ECU2(2−1,2−2)を監視制御する監視制御手段としての制御ECU5が追加されている。制御ECU5は、電源端子が電池モジュール1の正の端子に接続され、電池モジュール1から電力供給を受けて監視ECU2と制御信号の送受信を行うと共に、監視ECU2へ電力供給を行うものである。制御ECU5は、グランド端子が複数の電源ユニットの各々のダイオード4のアノードに共通接続され、ダイオード4を介して各々の電池モジュール1の負の端子に接続され、制御ECU5のグランド端子と、監視ECU2−1,2−2のグランド端子を共通にしている。
更に、制御ECU5は、図示しない上位の制御手段からの命令に従って制御されても良い。尚、監視ECU2への電力供給は、制御ECU5を介して電力供給を行っても、電池モジュール1から監視ECU2へ直接電力供給を行っても良い。
【0024】
図7は、
図6の電源装置10Aの動作を説明する図である。
図7において、電池モジュール1−1,1−2の正の端子から制御ECUの電源端子へ供給された電流は、スイッチ手段3−1,3−2のオン/オフ状態に関係なく、ダイオード4−1,4−2を介して電池モジュール1−1,1−2の負の端子へ還流している。
【0025】
これにより、制御ECU5が消費する電力を、並列接続された電池モジュール1−1,1−2から均等に使用することができる。そのため、もし、電池モジュール1−1と1−2との端子間電圧がばらついた場合には、端子間電圧が高い方の電池モジュール1−1又は1−2を使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1,1−1,1−2 電池モジュール
2,2−1,2−2 監視ECU
3,3−1,3−2 スイッチ手段
4,4−1,4−2 ダイオード
5 制御ECU
10,10A,20 電源装置
Z 負荷