(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷媒を圧縮する圧縮部、前記圧縮部を駆動させる電動モータ、及び前記電動モータを駆動させるモータ駆動回路がハウジング内に収容されており、前記ハウジングには、前記圧縮部側に位置する第1取付脚部と、前記モータ駆動回路側に位置する第2取付脚部とが突設されており、前記第1取付脚部及び前記第2取付脚部は、エンジンに設けられた被締結部に締結される締結部と、前記締結部と前記ハウジングとを連結する連結部とをそれぞれ有しており、各締結部と前記被締結部とが締結されることで、車両のエンジンルーム内に配置される車載用電動圧縮機であって、
前記車両にかかる外力を前記ハウジングの前記圧縮部側で受けることで、前記外力の前記第2取付脚部への伝達が緩和されるように、前記第1取付脚部の連結部を、前記第2取付脚部の連結部よりも折れ易くしたことを特徴とする車載用電動圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両にかかる外力を受けて、車載用電動圧縮機がエンジンルーム内で移動した場合、エンジンルーム内において車載用電動圧縮機の周りに配置されている補機などに車載用電動圧縮機が衝突して、モータ駆動回路が収容されているハウジングの部位が破損し、モータ駆動回路へ外力が伝達してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、モータ駆動回路への外力の伝達を緩和することができる車載用電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車載用電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮部、前記圧縮部を駆動させる電動モータ、及び前記電動モータを駆動させるモータ駆動回路がハウジング内に収容されており、前記ハウジングには、前記圧縮部側に位置する第1取付脚部と、前記モータ駆動回路側に位置する第2取付脚部とが突設されており、前記第1取付脚部及び前記第2取付脚部は、エンジンに設けられた被締結部に締結される締結部と、前記締結部と前記ハウジングとを連結する連結部とをそれぞれ有しており、各締結部と前記被締結部とが締結されることで、車両のエンジンルーム内に配置される車載用電動圧縮機であって、前記車両にかかる外力を前記ハウジングの前記圧縮部側で受けることで、前記外力の前記第2取付脚部への伝達が緩和されるように、前記第1取付脚部の連結部を、前記第2取付脚部の連結部よりも折れ易くした。
【0007】
これによれば、車両にかかる外力をハウジングの圧縮部側で受け、圧縮部側に位置する第1取付脚部の連結部が折れることで、第2取付脚部への外力の伝達が緩和される。よって、第2取付脚部の連結部を折れ難くすることができ、エンジンルーム内で車載用電動圧縮機が移動してしまうことを抑制することができる。その結果、車載用電動圧縮機がエンジンルーム内で移動して、エンジンルーム内において車載用電動圧縮機の周りに配置されている補機などに衝突して、モータ駆動回路が収容されているハウジングの部位が破損してしまうことを抑制することができ、モータ駆動回路への外力の伝達を緩和することができる。
【0008】
上記車載用電動圧縮機において、前記第1取付脚部の連結部には、局所的に剛性が弱い部位が設けられていることが好ましい。
これによれば、第1取付脚部の連結部を、車両にかかる外力によって、剛性が弱い部位にて折れ易くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、モータ駆動回路への外力の伝達を緩和することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図3にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、車両10のエンジンルーム10a内にはエンジンEが搭載されている。エンジンEには被締結部としてのブロック体E1が設けられている。ブロック体E1には、エンジンルーム10a内に配置された車載用電動圧縮機(以下、単に「電動圧縮機11」と記載する)11が締結されている。
【0012】
図1(b)に示すように、電動圧縮機11のハウジング11aは、有蓋筒状の吐出ハウジング12と、吐出ハウジング12に接合される有底筒状の吸入ハウジング13と、吸入ハウジング13の底壁13aに取り付けられる有蓋筒状のカバー部材16とから形成されている。吐出ハウジング12、吸入ハウジング13及びカバー部材16はアルミニウム製(金属材料製)である。吸入ハウジング13内には、冷媒を圧縮するための圧縮部14と、圧縮部14を駆動するための電動モータ15とが収容されている。なお、本実施形態では、特に図示は省略するが、圧縮部14は、吸入ハウジング13内に固定された固定スクロールと、固定スクロールに対向配置された可動スクロールとで構成されている。
【0013】
吸入ハウジング13の底壁13aとカバー部材16との間には、電動モータ15を駆動させるためのモータ駆動回路17が収容されている。本実施形態では、圧縮部14、電動モータ15及びモータ駆動回路17がこの順序でハウジング11aの軸方向(矢印Xの方向)に沿って並んで配置されている。
【0014】
吸入ハウジング13には、第1取付脚部21,22及び第2取付脚部23が突設されている。第1取付脚部21,22及び第2取付脚部23は吸入ハウジング13に一体形成されるとともに、ブロック体E1に電動圧縮機11を取り付けるために用いられる。第1取付脚部21,22及び第2取付脚部23は、ボルトBが挿通可能な締結部21a,22a,23aと、締結部21a,22a,23aと吸入ハウジング13とを連結する連結部21b,22b,23bとを有している。
【0015】
第1取付脚部21,22は、吸入ハウジング13の外周面において、ハウジング11aの径方向に対向する位置に配置されている。第2取付脚部23は、吸入ハウジング13の外周面において、第1取付脚部21,22よりもカバー部材16側(モータ駆動回路17側)に位置している。第1取付脚部21,22は、吸入ハウジング13の外周面において、吐出ハウジング12側(圧縮部14側)に位置している。各締結部21a,22a,23aは、ハウジング11aの軸方向に直交する方向に延びている。
【0016】
そして、締結部21a,22a,23aに挿通されたボルトBをブロック体E1にねじ込むことにより、締結部21a,22a,23aがブロック体E1に締結される。本実施形態では、エンジンルーム10a内において、吐出ハウジング12がエンジンルーム10aの外側に近い位置に配置されるように、電動圧縮機11がエンジンEに取り付けられる。よって、第1取付脚部21,22は、第2取付脚部23よりもエンジンルーム10aの外側に近い位置に配置されている。
【0017】
図2(a)に示すように、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bは、延在方向(
図2(a)に示す矢印Zの方向)の幅H1,H2が同じになっている。具体的には、連結部21b,22bの延在方向の幅H1,H2が同じになるように、吸入ハウジング13の外周面と締結部21a,22aの外周面との連結面R1,R2が、連結部21b,22bの延在方向に向けて抉られている。
【0018】
図2(b)に示すように、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bの延在方向の幅H1,H2は、第2取付脚部23の連結部23bの延在方向の幅H3よりも短くなっている。具体的には、吸入ハウジング13の外周面と締結部21a,22aの外周面との連結面R1,R2は、吸入ハウジング13の外周面と締結部23aの外周面との連結面R3よりも、連結部21b,22b,23bの延在方向に向けて深く抉られている。
【0019】
図1(b)に示すように、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bは、ハウジング11aの軸方向の幅H10,H20が同じになっている。また、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bにおけるハウジング11aの軸方向の幅H10,H20は、第2取付脚部23の連結部23bにおけるハウジング11aの軸方向の幅H30よりも短くなっている。
【0020】
図2(a)に示すように、第1取付脚部21,22の締結部21a,22a及び連結部21b,22bには、肉抜き部21d,22dが形成されている。
図1(a)及び
図3に示すように、第1取付脚部21,22の締結部21a,22aには、締結部21a,22aの軸方向一端部と他端部とを繋ぐ連繋部21e,22eが形成されている。
【0021】
次に、本実施形態の作用について説明する。
エンジンルーム10aの外側に近い位置に配置される第1取付脚部21,22は、第2取付脚部23に比べて、車両10にかかる外力を受け易い。ここで、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bの延在方向の幅H1,H2が、第2取付脚部23の連結部23bの延在方向の幅H3よりも短くなっている。また、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bにおけるハウジング11aの軸方向の幅H10,H20が、第2取付脚部23の連結部23bにおけるハウジング11aの軸方向の幅H30よりも短くなっている。よって、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bは、第2取付脚部23の連結部23bよりも剛性が弱くなっている。
【0022】
そして、車両10にかかる外力をハウジング11aの圧縮部14側で受け、圧縮部14側に位置する第1取付脚部21,22の連結部21b,22bが折れることで、第2取付脚部23への外力の伝達が緩和される。よって、第2取付脚部23の連結部23bが折れ難く、エンジンルーム10a内で電動圧縮機11が移動してしまうことが抑制される。その結果、電動圧縮機11がエンジンルーム10a内で移動して、エンジンルーム10a内において電動圧縮機11の周りに配置されている補機などに衝突して、モータ駆動回路17が収容されているハウジング11aの部位が破損してしまうことが抑制され、モータ駆動回路17への外力の伝達が緩和される。
【0023】
さらに、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bに局所的に剛性が弱い部位として肉抜き部21d,22dが形成されている。よって、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bが、車両10にかかる外力によって折れ易くなっている。
【0024】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)車両10にかかる外力をハウジング11aの圧縮部14側で受けることで、外力の第2取付脚部23への伝達が緩和されるように、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bを、第2取付脚部23の連結部23bよりも折れ易くした。これによれば、車両10にかかる外力をハウジング11aの圧縮部14側で受け、圧縮部14側に位置する第1取付脚部21,22の連結部21b,22bが折れることで、第2取付脚部23への外力の伝達が緩和される。よって、第2取付脚部23の連結部23bを折れ難くすることができ、エンジンルーム10a内で電動圧縮機11が移動してしまうことを抑制することができる。その結果、電動圧縮機11がエンジンルーム10a内で移動して、エンジンルーム10a内において電動圧縮機11の周りに配置されている補機などに衝突して、モータ駆動回路17が収容されているハウジング11aの部位が破損してしまうことを抑制することができ、モータ駆動回路17への外力の伝達を緩和することができる。
【0025】
(2)第1取付脚部21,22の連結部21b,22bに、局所的に剛性が弱い部位として肉抜き部21d,22dを設けた。これによれば、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bを、車両10にかかる外力によって折れ易くすることができる。
【0026】
(3)第1取付脚部21,22の連結部21b,22bの延在方向の幅H1,H2を、第2取付脚部23の連結部23bの延在方向の幅H3よりも短くした。また、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bにおけるハウジング11aの軸方向の幅H10,H20を、第2取付脚部23の連結部23bにおけるハウジング11aの軸方向の幅H30よりも短くした。これによれば、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bの剛性を、第2取付脚部23の連結部23bの剛性よりも弱くすることができる。また、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bに比べて、第2取付脚部23の連結部23bを折れ難くすることができる。
【0027】
(4)第1取付脚部21,22に肉抜き部21d,22dを形成した。これによれば、第1取付脚部21,22に肉抜き部21d,22dが形成されていない場合に比べると、電動圧縮機11の重量を軽くすることができる。
【0028】
(5)締結部21a,22aには、締結部21a,22aの軸方向一端部と他端部とを繋ぐ連繋部21e,22eが形成されている。よって、第1取付脚部21,22に肉抜き部21d,22dが形成されていても、締結部21a,22aの軸方向一端部と他端部とが連繋部21e,22eにより繋がっている。このため、ボルトBを介した第1取付脚部21,22とブロック体E1との締結の際に、締結部21a,22aが軸方向において撓んでしまうことを抑制することができる。
【0029】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、締結部21a,22aに連繋部21e,22eが形成されていなくてもよく、締結部21a,22aの軸方向一端部と他端部とが連結部21b,22bのみで繋がっていてもよい。
【0030】
○ 実施形態において、第1取付脚部21,22に肉抜き部21d,22dが形成されていなくてもよい。
○ 実施形態において、第1取付脚部21,22及び第2取付脚部23の連結部21b,22b,23bにおけるハウジング11aの軸方向の幅H10,H20,H30が同じであってもよい。
【0031】
○ 実施形態において、第1取付脚部21,22及び第2取付脚部23の連結部21b,22b,23bの延在方向の幅H1,H2,H3が同じであってもよい。
○ 実施形態において、第1取付脚部21,22が、吸入ハウジング13の外周面において、ハウジング11aの軸方向にずれて配置されていてもよい。
【0032】
○ 実施形態において、第1取付脚部21,22の連結部21b,22bを、第2取付脚部23の連結部23bよりも剛性の低い材料により形成してもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機11は、ボルトBを介した締結部21a,22a,23aとブロック体E1との締結により、エンジンEに取り付けられていなくてもよい。例えば、取付脚部の締結部とブロック体E1とが溶接により締結されることで、電動圧縮機11がエンジンEに取り付けられていてもよい。
【0033】
○ 実施形態において、取付脚部の数は特に限定されるものではない。
○ 実施形態において、電動圧縮機11におけるエンジンルーム10a内の配置位置は特に限定されるものではない。なお、電動圧縮機11は、エンジンルーム10a内において、吐出ハウジング12がエンジンルーム10aの外側に近い位置に配置されるようにエンジンEに取り付けられていることが好ましい。
【0034】
○ 実施形態において、例えば、モータ駆動回路17が吸入ハウジング13の径方向外側で、第2取付脚部23側に配置されていてもよい。
○ 実施形態において、圧縮部14は、例えば、ピストンタイプやベーンタイプ等であってもよい。
【0035】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記第1取付脚部の連結部における延在方向の幅は、前記第2取付脚部の連結部における延在方向の幅よりも短くなっている。
【0036】
(ロ)前記第1取付脚部の連結部における前記ハウジングの軸方向の幅は、前記第2取付脚部の連結部における前記ハウジングの軸方向の幅よりも短くなっている。
(ハ)前記第1取付脚部の締結部及び連結部には、肉抜き部が形成されている。
【0037】
(ニ)前記締結部には、前記締結部の軸方向一端部と他端部とを繋ぐ連繋部が形成されている。
(ホ)前記圧縮部、前記電動モータ及び前記モータ駆動回路がこの順序で前記ハウジングの軸方向に沿って並んで配置されている。