(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.二軸延伸ポリプロピレンフィルム
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、表面粗度の異なる最外層A層及び最外層B層を有する積層フィルムであって、
A層が、プロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成され、下記(a)〜(c)を満たし、
(a)外表面の最大ピークの高さの値(Sp)が0.1μm以下、
(b)外表面の高さデータの二乗平均平方根(Sq)が0.01μm以下、かつ
(c)外表面の粗さ曲線から得られる負荷曲線における突出山部高さ(Rpk)が0.01μm以下、
B層が、プロピレン系重合体及びα−オレフィン系重合体を含む樹脂組成物から形成され、下記(d)〜(f);
(d)外表面の最大ピークの高さの値(Sp)が0.5μm以下、
(e)外表面の高さデータの二乗平均平方根(Sq)が0.01〜0.05μm、かつ
(f)外表面の粗さ曲線から得られる負荷曲線における突出山部高さ(Rpk)が0.01〜0.05μm、を満たすことを特徴とする。
【0025】
A層は、被保護体と張り合わせる面(平滑面)側の最外層であり、B層は、その反対面(粗化面)側の最外層を構成する。A層とB層との間に、少なくとも1層の中間層を設けてもよい。
【0026】
1−1.A層(被保護体と貼り合わせる面(平滑面)側の最外層)
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるA層は、被保護体と張り合わせる側の最外層である。
【0027】
A層は、プロピレン系重合体を含む樹脂組成物から形成される。
【0028】
(1)プロピレン系重合体
プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、少量のエチレンを共重合成分とするプロピレン−エチレン共重合体等が挙げられる。離型性の向上の観点から、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)を用いることが好ましい。2種類以上のプロピレン系重合体を混合して使用することもできるが、各原料の流動性の違いに起因するフィッシュアイ発生の抑制や、平滑性向上のため、1種類のプロピレン系重合体を使用する態様が好ましい。
【0029】
ホモポリプロピレンとしては、剥離性向上の観点から、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマーが好ましい。中でも、アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が、90%〜97%であることが好ましく、91%〜95%であるとより好ましい。
【0030】
アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって求められる立体規則性度である。アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が90%以上であると、非晶成分による非保護体の汚染を防止しやすく、また離型性も向上する傾向にある。また、アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が97%以下であると、延伸性が向上し、平滑性や厚みのばらつきの少ないフィルムとすることができる傾向にある。
【0031】
プロピレン−エチレン共重合体におけるエチレンの共重合比率としては、5重量%以下であることが好ましい。また、プロピレン−エチレン共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0032】
該プロピレン系重合体のMFRは、JIS K7210(1999)に準じて測定できる。具体的には、温度230℃、荷重21.18Nの測定条件で、2〜15g/10分であることが好ましく、2.5〜10g/10分であることがより好ましい。2g/10分以上とすることで、フィルムを製膜する際の押出し・濾過工程において、溶融された樹脂組成物のフィルター通過性を向上させることが出来る。また、15g/10分以下とすることで、平滑性や厚みのばらつきの少ないフィルムとすることができる。
【0033】
該プロピレン系重合体は、公知の重合方法で得ることができる。重合方法としては、例えば気相重合法、塊状重合法、スラリー重合法等が挙げられる。重合触媒としては特に制限はなく、チーグラー触媒等のチタン系触媒等を好適に使用できるが、特にシングルサイト触媒を用いて重合されたプロピレン系重合体が好ましく用いられる。シングルサイト触媒を用いて重合することで分子量分布の狭いプロピレン系重合体を得られやすく、低分子量成分の含有が少ないため非保護体の汚染を防止しやすい。
【0034】
シングルサイト触媒とは、実質的に均質な重合活性点によって構成された触媒を指称し、具体的にはメタロセン系遷移金属化合物(いわゆるカミンスキー触媒)、あるいは非メタロセン系遷移金属化合物(ブルックハルト系触媒、フェノキシイミン系錯体等)と、助触媒(メチルアルミノキサンや硼素化合物等)から構成される重合触媒等が挙げられる。
【0035】
好ましいシングルサイト触媒としては、メタロセン系遷移金属化合物を主成分とするメタロセン触媒を挙げることができる。メタロセン触媒として、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、あるいは、その置換体等の非架橋型メタロセン触媒を使用することもできる。
【0036】
該プロピレン系重合体中の灰分は、100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、30ppm以下がさらに好ましく、20ppm以下が特に好ましい。100ppm以下であると、フィッシュアイの発生を抑制しやすい。
【0037】
該プロピレン系重合体の灰分は、重合触媒残渣や、該プロピレン系重合体に使用される中和剤(塩素補足剤)に由来するものが多い。そのため、重合後の洗浄工程で重合触媒残渣を低減させることは有効である。また中和剤(塩素補足剤)としては、ステアリン酸カルシウムやハイドロタルサイト等の公知の中和剤が使用できるが、その添加量は300ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましく、50ppm以下が特に好ましい。300ppm以下とすることで、フィッシュアイの発生を抑制しやすく、かつ中和剤による非保護体の汚染を防止しやすい。
【0038】
(2)他の配合成分
A層を形成する樹脂組成物には、化学的な安定性を付与するため、酸化防止剤を配合してもよい。酸化防止剤には、少なくとも、二軸延伸ポリプロピレンフィルム製造時の押出成形機内での熱や酸化による劣化を抑制する目的で配合される1次剤としての役割と、長期使用した際の経時的な劣化を抑制する目的で配合される2次剤としての役割とがある。これら2つの役割に応じて、各々異なる種類の酸化防止剤を用いても構わないし、1種類の酸化防止剤に2つの役割を持たせてもよい。
【0039】
異なる種類の酸化防止剤を用いる場合、押出成形機内での劣化抑制を目的とする1次剤としては、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(一般名称:BHT)を、ポリプロピレン樹脂組成物中に1000〜3000ppm程度添加することが好ましい。この目的で配合された酸化防止剤は、押出成形機内での成形工程でほとんどが消費され、二軸延伸ポリプロピレンフィルム中にはほとんど残存しない。そのため、一般的には残存量は100ppmより少なくなり、酸化防止剤による非保護体の汚染がほとんどない点で好ましい。
【0040】
2次剤としては公知の酸化防止剤が使用可能だが、例えば、フェノール系、ヒンダードアミン系、フォスファイト系、ラクトン系、トコフェロール系の熱安定剤及び酸化防止剤が挙げられる。具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシ)ベンゼン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等を挙げることができる。より具体的には、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製の酸化防止剤である、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)1330、Irgafos(登録商標)168が挙げられる。
【0041】
中でも、フェノール系酸化防止剤系から選ばれた少なくとも1種あるいはそれらの組み合わせ、フェノール系とフォスファイト系との組み合わせ、フェノール系とラクトン系との組み合わせ、フェノール系とフォスファイト系とラクトン系の組み合わせが、フィルムを長期使用した際の経時的な劣化を抑制する効果を付与でき、好ましい。
【0042】
2次剤としての該酸化防止剤の含有量は、300ppm以上2500ppm以下が好ましく、500ppm以上1500ppm以下がより好ましい。300ppm以上とすることでフィルムを長期使用した際の経時的な劣化を抑制する効果を付与できやすく、2500ppm以下とすることで、酸化防止剤による非保護体の汚染を防止しやすい。
【0043】
また、A層を形成する樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の各種添加剤(紫外線吸収剤等の安定剤、結晶核剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等)を添加してもよい。
【0044】
(3)表面特性
本発明のA層は、その外表面(被保護体と貼り合わせる面;平滑面)が、下記(a)〜(c);
(a)外表面の最大ピークの高さの値(Sp)が0.1μm以下、
(b)外表面の高さデータの二乗平均平方根(Sq)が0.01μm以下、かつ
(c)外表面の粗さ曲線から得られる負荷曲線における突出山部高さ(Rpk)が0.01μm以下、を満たすことを特徴とする。
【0045】
ここで、最大ピークの高さの値(Sp)とは、ISO25178に記載のパラメータ「Maximum peak height」である。また、表面の高さデータの二乗平均平方根(Sq)とは、ISO25178に記載のパラメータ「Root mean square height」である。また負荷曲線における突出山部高さ(Rpk)とは、JIS B−0671−2:2002で、線形負荷曲線による高さ特性より計算される、粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さである。該(Rpk)は、フィルム表面の連続した起伏の影響を取り除きながら、被保護体との接触に影響が大きい突出した凸部の状態を判定することを可能とする指標である。
【0046】
該最大ピークの高さの値(Sp)、高さデータの二乗平均平方根(Sq)、及び負荷曲線における突出山部高さ(Rpk)は、例えば、触針による接触式や可視光反射、レーザー光干渉による非接触式、走査プローブ顕微鏡(SPM/AFM)等による原子間力位相差測定等により測定することができる。具体的には、例えば、実施例に記載した方法で測定することができる。
【0047】
(Sp)が0.1μmより大きい、あるいは、(Sq)又は(Rpk)が0.01μmより大きいと、被保護体との貼り合わせの際に、空隙等の貼り合わせ異常が発生したり、またフィルムを被保護体から剥離する際に、フィルムの粗さに起因する糊残りが発生したりするといった問題が発生する傾向がある。(Sp)は、より好ましくは0.05μm以下であり、さらに好ましくは、0.03μm以下である。下限は特に限定されないが、0.01μm程度以上が好ましい。また、好ましい(Sq)及び(Rpk)は、0.008μm以下であり、さらに好ましい範囲は、0.006μm以下である。下限は特に限定されないが、0.003μm程度以上が好ましい。
【0048】
A層の厚みは、3μm以上であることが好ましい。3μm以上とすることで、粗化面側の粗さの影響を遮断して高平滑な面を形成しやすくすることができる。より好ましくは、5μm以上である。上限は、フィルムの総厚み、及びB層の厚みとの兼ね合い、また、中間層を設けた場合はその厚みも含めた兼ね合いで決定されるが、概ね30μm以下であることが好ましい。
【0049】
なお、フィルムの各層の厚みの測定は、フィルムの断面切片を顕微鏡観察することで層の境界を確認して測定することができるが、積層方法等によっては境界の確認が困難な場合があるため、その際は、予め各層単層の溶融押出しを行って樹脂吐出量を測定し、フィルムの総厚みと、各層の吐出量から比率計算される計算値をもって代用できる。
【0050】
1−2.B層(反対面(粗化面)側の最外層)
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるB層は、被保護体と張り合わせる最外層とは反対面側の最外層である。
【0051】
B層は、プロピレン系重合体及びα−オレフィン系重合体を含む樹脂組成物から形成される。
【0052】
(1)プロピレン系重合体
プロピレン系重合体としては、例えば、A層と同様のプロピレン系重合体が挙げられる。A層を形成するために用いられるプロピレン系重合体と、B層を形成するために用いられるプロピレン系重合体は、同一でも異なってもよいが、フィッシュアイ抑制や、巻取り中でB層中の成分が染み出して平滑面を汚染することにより、非保護体を汚染してしまう問題を抑制しやすいという観点から、同一であることが好ましい。
【0053】
プロピレン系重合体の含有割合としては、B層を形成する重合体組成物(100質量%)中、70〜95質量%が好ましく、80〜92質量%がより好ましく、85〜90質量%がさらに好ましい。
【0054】
(2)α−オレフィン系重合体
α−オレフィン系重合体としては、例えば、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、ヘキセン系重合体、オクテン系重合体、デセン系重合体、4−メチル−1−ペンテン系重合体等が挙げられる。これらの重合体は、公知のオレフィン重合用触媒、例えば、バナジウム系触媒、チタン系触媒、マグネシウム担持型チタン系触媒、メタロセン系触媒等の存在下で、公知のモノマーを重合することにより製造される。該公知のモノマーとしては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン及び1−エイコセン等を挙げることができる。これらのα−オレフィンは、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
α−オレフィン系重合体としては、特に、ブテン系重合体、4−メチル−1−ペンテン系重合体を、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
【0056】
ブテン系重合体としては、1−ブテンの単独重合体、又は1−ブテンを主成分とし、これにエチレン、プロピレン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び/又はその他のオレフィンを共重合させたものを含有する。なお、共重合の態様としては、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれも含む。
【0057】
具体的には、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、1−ブテン・1−ヘキセン共重合体、1−ブテン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−ブテン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・1−デセン共重合体、1−ブテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、等の2成分系の共重合体、1−ブテン・エチレン・プロピレン共重合体、1−ブテン・エチレン・1−ヘキセン共重合体、1−ブテン・エチレン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・プロピレン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・エチレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・エチレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体のような多成分系の共重合体を挙げることができる。
【0058】
これらブテン系共重合体のうちでも、特に、1−ブテン・エチレン共重合体を用いると、粗化面の(Sq)及び(Rpk)を本発明特定の範囲としやすいため好ましい。市販の1−ブテン・エチレン共重合体としては、例えば、三井化学(株)社製、タフマー(登録商標)BL3450等が入手可能である。
【0059】
該ブテン系重合体のMFRは、JIS K7210(1999)に準じて測定できる。具体的には、温度230℃、荷重21.18Nの測定条件で、3〜20g/10分であることが好ましく、5〜15g/10分であることがより好ましい。この範囲とすることで、プロピレン系重合体の流動性と近くなり、均一な溶融混錬がなされて粗化面に粗大突起が発生し難くなり、また、(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を本発明特定の範囲としやすくなる。
【0060】
該ブテン系重合体の融点は、通常60〜130℃、好ましくは100〜130℃であると延伸性に優れる上、(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を本発明特定の範囲としやすくなる。
【0061】
4−メチル−1−ペンテン系重合体としては、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体や、4−メチル−1−ペンテンを主成分とし、これにその他のオレフィンを共重合させたものを含有する。なお共重合の態様としては、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれも含む。
【0062】
前記4−メチル−1−ペンテンと共重合する他のモノマーとしては、エチレン又は4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン及び1−エイコセン等が挙げられる。これらのうち、好ましくは炭素原子数3〜8のα−オレフィンであり、さらに好ましくは、炭素原子数3〜4のα−オレフィン、及び3−メチル−1−ペンテンである。これらのα−オレフィンは、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
これら4−メチル−1−ペンテン系重合体のMFRは、JIS K7210(1999)に準じて測定できる。具体的には、温度260℃、荷重49.05Nの測定条件で、15〜150g/10分であることが好ましく、20〜100g/10分であることがより好ましい。
【0064】
この範囲とすることでプロピレン系重合体の流動性と近くなり、均一な溶融混錬がなされて粗化面に粗大突起が発生し難くなり、(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を本発明特定の範囲としやすくなる。
【0065】
該4−メチル−1−ペンテン系重合体の融点は230℃以下が好ましく、さらには、B層を形成する樹脂組成物に用いるプロピレン系重合体の融点以上225℃以下であると、延伸性に優れる上、(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を本発明特定の範囲としやすくなる。
【0066】
市販の4−メチル−1−ペンテン系重合体としては、例えば、三井化学(株)社製、TPX(登録商標) MX002O、MX004、RT31、DX845等が入手可能である。
【0067】
α−オレフィン系重合体の含有割合としては、B層を形成する重合体組成物(100質量%)中、5〜30質量%であり、8〜20質量%がより好ましく、さらに好ましくは10〜15質量%である。5〜30質量%含有させると、(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を本発明特定の範囲としやすい。
【0068】
(3)他の配合成分
B層を形成する樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、A層を形成する樹脂組成物に配合するものと同様の酸化防止剤や、他の各種添加剤(紫外線吸収剤等の安定剤、結晶核剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等)を添加してもよい。
【0069】
(4)表面特性
本発明のB層は、その外表面(粗化面)が、下記(d)〜(f);
(d)外表面の最大ピークの高さの値(Sp)が0.5μm以下、
(e)外表面の高さデータの二乗平均平方根(Sq)が0.01〜0.05μm、かつ
(f)外表面の粗さ曲線から得られる負荷曲線における突出山部高さ(Rpk)が0.01〜0.05μm、を満たすことを特徴とする。
なお、上記値の測定方法は、A層の外表面の測定方法と同じである。
【0070】
(Sq)及び(Rpk)が0.01μmより小さいと、ブロッキングや巻滑り、シワが発生する等の巻取り適性に問題が起きやすく、また、巻き込んだ空気が巻取りから均一に抜けずに空気溜まりとなり、巻き取り内部でフィルムに凹凸を生ずるといった問題が発生しやすい。
【0071】
また、(Sp)が0.5μmより大きい、あるいは、(Sq)又は(Rpk)が0.05μmより大きいと、巻取りで保管した場合に、巻取り内部にてフィルムにかかる圧力により、粗化面の急峻な粗大突起が平滑面に微小な凹みを発生させてしまう、「粗化面の転写」問題が発生する。粗化面の転写により平滑面の平滑性が低下してしまうと、非保護体との貼り合わせの際の不具合の原因となる。
【0072】
(Sp)の好ましい範囲は、0.3μm以下であり、さらに好ましい範囲は0.02μm以下である。また、(Sq)と(Rpk)のより好ましい範囲は、0.012μm以上0.04μm以下であり、さらに好ましい範囲は、0.014μm以上0.03μm以下であり、特に好ましい範囲は0.015μm以上0.025μm以下である。
また(Sq)と(Rpk)の関係は、(Sq)≧(Rpk)であると、急峻な粗大突起が少なく均一な粗化面となる傾向にあり、より粗化面の転写を抑制しやすく好ましい。
【0073】
B層の厚みは、0.5μm以上5μm以下が好ましい。厚みを厚くすると(Sp)、(Sq)及び(Rpk)が上昇する傾向があり、薄くすると(Sp)、(Sq)及び(Rpk)が低下する傾向がある。(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を前述の範囲とするために、この厚みの範囲内とすることが好ましい。より好ましくは1μm以上4μm以下、さらに好ましくは1.2μm以上3μm以下、特に好ましくは1.4μm以上2.5μm以下である。
【0074】
1−3.中間層
本発明のA層及びB層の間には、必要に応じて、さらに少なくとも1層の中間層を設けてもよい。
【0075】
中間層は、使用目的に適したフィルム厚みや、フィルムの剛度、伸び、弾性率の調整、あるいは、必要に応じてフィルムの視認性を上げるための着色、また、生産性を上げるための延伸性の調整等のために設けることが好ましい。
【0076】
中間層は、例えば、エチレン系重合体、プロピレン系重合体等からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含む樹脂組成物により形成することができる。中でも、フィッシュアイの抑制、また、平滑面側の最外層及び粗化面側の最外層との良好な接着性を得るために、プロピレン系重合体を主成分とする樹脂組成物から形成されることが好ましい。
【0077】
プロピレン系重合体としては、例えば、A層と同様のプロピレン系重合体が挙げられる。A層を形成するために用いられるプロピレン系重合体と、中間層を形成するために用いられるプロピレン系重合体は、同一でも異なってもよいが、被保護体から剥離する際等に層間での剥離を防止する観点や、温度変化によるカールを抑制する観点から、同一であることが好ましい。
【0078】
プロピレン系重合体の含有割合としては、中間層を形成する重合体組成物(100質量%)中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0079】
中間層を形成する樹脂組成物には、結晶核剤を配合することが好ましい。結晶核剤を配合することにより、フィルムの透明性、熱的安定性及び/又は機械的特性を向上させることができる。
【0080】
結晶核剤としては、特に限定はなく、公知公用の微粒子タイプや溶解タイプの核剤を使用することができる。例えば、微粒タイプとしては、タルク系やアルミ系の無機物質を挙げることができ、溶解タイプとしては、アミド系やソルビトール系の有機核剤等を挙げることができる。溶解タイプを使用すると、フィルムを製膜する際の押出し・濾過工程において、溶融された樹脂組成物をフィルターで濾過する際に、フィルターの目詰まりを起こし難いため、好ましい。
【0081】
結晶核剤の添加量としては、使用する結晶核剤に最適な量を使用すればよいが、フィルムの平滑性を高める観点からは、1000ppm以下が好ましい。
【0082】
中間層を形成する樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、A層を形成する樹脂組成物に配合するものと同様の酸化防止剤や、各種添加剤(酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等)を添加してもよい。特に、中間層を設ける場合には、A層及びB層ではなく、中間層を形成する樹脂組成物に添加剤を添加することが、添加剤による非保護体の汚染を防止する観点から好ましい。
【0083】
1−4.層構成
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの層構成としては、A層とB層が積層された2層構造、A層/中間層/B層の順に積層されてなる3層構造、A層/中間層/中間層/B層の順に積層されてなる4層構造、A層/中間層/中間層/中間層/B層の順に積層されてなる5層構造等が挙げられる。
【0084】
1−5.フィルムの物性
本発明の二軸延伸ポプロピレンフィルムの総厚みは、10〜150μmであることが好ましく、より好ましくは12〜100μm、さらに好ましくは15〜80μmである。フィルムの総厚みが10〜150μmであることにより、被保護体への貼り付けや、剥離の際の取り扱い性(フィルム強度、伸び、剛性等)に優れたフィルムを得ることができる。
【0085】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの、JIS−K7136に準じたヘーズ度は、0.5%〜8%が好ましく、1%〜5%がより好ましく、1.5%〜4%がさらに好ましい。透明フィルムにおいては、ヘーズ度は表面における光の散乱に起因して変化しており、ヘーズ度をこの範囲内とすると、粗化面の(Sp)、(Sq)及び(Rpk)が前述の範囲となりやすくなる。
【0086】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの透明度(最小透明度)は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。当該透明度は、(株)村上色彩技術研究所製透明度測定器TM−1Dにて測定できる。透明度が高いと、被保護体の高い視認性を求められるような場合に有効である。上限は特に定めないが、85%程度以下である。
【0087】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおける、面積0.0045mm
2以上のフィッシュアイを計数した結果を1m
2あたりに換算した個数は、700個/m
2以下であることが好ましく、400個/m
2以下であることがより好ましく、200個/m
2以下であることがさらに好ましく、ゼロであることが特に好ましい。
【0088】
フィルム中のフィッシュアイとは、フィルムを製造する際の材料中の異物、未溶融物、酸化劣化物等が、フィルム製品中に取り込まれたもののことである。特に平滑面側の最外層(A層)にフィッシュアイが多いと、電子部品、電子基板や感光性材料の製造工程等に使用される保護フィルムとして貼り合せた際の、異物汚染やボイド、エアーボイドの原因となるため、なるべく少ないことが求められる。
【0089】
フィッシュアイの個数及び大きさを計測する方法については、CCDカメラ等を用いてフィルム表面の画像を取り込み、画像をコンピューター等により解析する方法等の公知の技術を使用でき、例えば、フロンティアシステム(株)社製フィッシュアイカウンターを用いると、面積0.000225mm
2以上のフィッシュアイを精度よく計数できる。
【0090】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含有される灰分は、フィッシュアイ抑制の観点から、100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、30ppm以下がさらに好ましく、20ppm以下が特に好ましい。
【0091】
2.二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、A層及びB層、必要に応じて中間層を形成する樹脂組成物をそれぞれ調製する工程と、該調製工程により得られた樹脂組成物を押出し濾過する押出・濾過工程と、得られた濾過物を積層、成型してキャストシートを製造するキャストシート製造工程と、得られたキャストシートを二軸延伸する延伸工程とを有する方法により製造できる。
【0092】
(1)調製工程
B層の調製工程は、ドライブレンド又は溶融混錬(メルトブレンド)により行うことができる。A層及び中間層では、複数の原料重合体を使用する場合、添加剤を混合する場合、同様にドライブレンド又は溶融混錬により行うことができる。
ドライブレンドは、工程が簡易であり、製造コストにおいて優位にあるが、B層調製時には、プロピレン系重合体とオレフィン系重合体をより均一に混錬して、外表面(粗化面)の(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を前述の範囲としやすくする観点から、溶融混錬が好ましい。特に、α−オレフィン系重合体の融点がプロピレン系重合体の融点より高い場合や、α−オレフィン系重合体のMFRがプロピレン系重合体の融点より低い場合には、溶融混錬が好適である。
【0093】
溶融混錬の場合は、樹脂(組成物)温度は200℃以上270℃以下が好ましい。270℃以下とすることで、プロピレン系樹脂の熱劣化を抑制してフィッシュアイを抑制することができる。また200℃以上とすることで、より均一に混錬することができ、粗化面の(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を前述の範囲としやすくなる。混練混合の際の熱劣化を抑制するため、混練機に窒素等の不活性ガスをパージしてもよい。また、そうすることが好ましい。
【0094】
溶融混練機には特に制限はなく、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、多軸スクリュータイプのものを適宜使用できるが、より均一な混錬のためには、2軸以上のスクリュータイプの混練機を用いることが好ましい。
溶融混練された樹脂を、公知の造粒機を用いて適当な大きさにペレタイズすることによって、原料樹脂を得ることができる。
【0095】
一方、ドライブレンドする際の混合装置としては、タンブラーやウイングミキサー等のバッチ式や、連続式の計量混合機が、いずれも好ましく使用できる。
【0096】
(2)押出・濾過工程
押出・濾過工程は、粉状又はペレット状等の原料重合体や、上述の調製工程において調製されたペレット状等の樹脂組成物を押出成形機に供給し、加熱溶融・押出しした後、フィルターで濾過することにより行う。
【0097】
押出機に特に制限はなく、公知のものが使用できる。例えば、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、多軸スクリュータイプのものを適宜使用できる。
【0098】
押出時の樹脂(組成物)温度は220℃以上270℃以下が好ましい。270℃以下とすることで、プロピレン系重合体の熱劣化を抑制することができる。また220℃以上とすることで、より均一に混錬して粗化面の(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を前述の範囲としやすくなり、かつ、フィルターで濾過する際の樹脂の通過性をよくすることができる。押出成型の際の熱劣化を抑制するため、押出機に窒素等の不活性ガスをパージしてもよい。また、そうすることが好ましい。
【0099】
溶融押出しされた樹脂は、押出機とTダイとの間に設置される、いわゆるポリマーフィルターにて濾過される。フィッシュアイの抑制のためには、高い濾過精度を有するフィルターを用いるのがよい。濾過精度としては、20μm(98%カットサイズ)以下と小さくするのがよく、好ましくは10μm以下とするのがよく、さらに好ましくは5μm以下とするのがよい。ただし、濾過精度を高く(サイズを小さく)すると微小異物の除去率は高くなるが、ポリマーフィルターの入出の樹脂差圧(圧力損失)が大きくなり、樹脂吐出が不安定となりやすいため、濾過精度は1μm以上とすると樹脂吐出が安定して好ましい。
【0100】
該ポリマーフィルターは、1機のみの設置でもよいが、2機以上の多段階で設置してもよく、特に多段階で、濾過精度の低いものから濾過精度の高いものに段階的に設置すると、樹脂差圧が大きくなり難く、安定した吐出が得られる上、濾過精度も向上するため好ましい。
【0101】
ポリマーフィルターの使用濾材としては、一般に公知の濾材を制限なく利用可能である。例えば、焼結金属不織布(ファイバー焼結体)、積層焼結金網、パウダー焼結体等を挙げることができる。
【0102】
また、フィルタータイプとしては、リーフディスクフィルター、キャンドルフィルター、パックフィルター等を制限なく利用可能である。
【0103】
中でも、焼結金属不織布(ファイバー焼結体)を用いたリーフディスクタイプのフィルターが、樹脂差圧も大きくならず安定した吐出が得られる上、使用寿命も長いので好ましく採用できる。
【0104】
(3)キャストシート製造工程
延伸前のキャストシート(原反シート)を成形するキャストシート製造工程では、濾過された各層の樹脂組成物を積層し、Tダイから溶融押出しする。
【0105】
濾過された樹脂組成物は、樹脂の合流装置を用いて、A層/必要に応じて1層以上の中間層/B層、の構成を形成する。該合流装置としては、特に限定されないが、樹脂組成物をTダイの口金前のポリマー管内で合流する方法、Tダイの口金の樹脂導入部に設けられた積層ユニットで合流するフィードブロック法、Tダイの口金内で拡幅後に両樹脂を積層するマニホールド積層法等を挙げることができる。積層された樹脂組成物は、Tダイリップ部から押出しされる。
【0106】
Tダイから溶融押出された積層樹脂は、エアーナイフにより冷却成型ロールに密着させて、冷却、固化され、これにより未延伸のキャストシートが得られる。冷却成型ロールは、冷却効率を上げるために複数個用いても構わない。また、水冷等の他の冷却方法を併用してもよい。
【0107】
冷却成型ロールの温度は、20℃以上60℃以下が好ましい。冷却ロールの温度を60℃以下とすることで、大きなβ晶の生成を抑制し、延伸時にフィルム表面にβ晶による粗大粗化が発生するのを防止できるため、平滑面の高い平滑性を得、A層における平滑面及びB層における粗化面の(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を前述の範囲としやすくする観点から好ましい。かつ大きなα晶の生成を抑制し、フィルムの透明性を向上させることができ好ましい。冷却成型ロールの温度を20℃以上とすることで、厚みの均一性を良化させることができる。
【0108】
また、最初の冷却成型ロールに接する樹脂層は、平滑面側の最外層(A層)とすることが、平滑面側に高い平滑性を得、平滑面の(Sp)、(Sq)及び(Rpk)を前述の範囲としやすくする観点から好ましい。
【0109】
キャストシート製造工程において、製造されるキャストシートの厚みには特に制限はないが通常0.5〜5mmである。
【0110】
(4)延伸工程
延伸工程では、キャストシート製造工程で得られたキャストシートに二軸延伸処理を行う。二軸延伸方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれも採用可能である。
【0111】
逐次二軸延伸方法の例としては、まず、キャストシートを好ましくは120〜155℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向(縦方向、MD方向)に4〜7倍に縦延伸する(縦延伸工程)。引き続き、縦延伸された一軸延伸フィルムをテンターに導いて、好ましくは150〜175℃の温度で、流れ方向と直交する方向(横方向、幅方向、TD方向)に7〜11倍に横延伸した後(横延伸工程)、好ましくは160〜180℃の温度で、横延伸の倍率を5〜10%程度、緩和・熱固定する(緩和工程)。
【0112】
同時二軸延伸方法の例としては、キャストシートをテンターに導いて、好ましくは150〜175℃の温度で、流れ方向に4〜11倍に縦延伸するとともに、流れ方向と直交する方向に4〜11倍に横延伸し(延伸工程)、好ましくは160〜180℃の温度で、縦延伸及び横延伸の倍率を5〜10%程度、緩和・熱固定する(緩和工程)。
【0113】
各延伸工程での温度を上記範囲に適切に調整することにより、延伸性や厚みの均一性よく延伸することが可能である。また各延伸工程での温度が高いとA層における平滑面及びB層における粗化面の(Sp)、(Sq)及び(Rpk)が上昇する傾向があるため、これらが前述の範囲内となるよう、各延伸工程での温度を適宜調節するのが好ましい。
【0114】
緩和・熱固定されたフィルムは、端部をトリミングした後、ワインダーで巻き取られる。巻き取られたフィルムは、必要に応じて20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に断裁される。
【0115】
フィルムには、必要に応じてコロナ放電処理を行うこともできる。コロナ放電処理により、被保護体に貼り付ける際の平滑面と被保護体あるいは接着剤との接着性を調整したり、粗化面側へ印刷適性を付与したりすること等ができる。コロナ放電処理には公知の方法を採用できる。
【実施例】
【0116】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
また、実施例及び比較例における、各種測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0117】
[特性値の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)重合体のメルトフローレート(MFR)
JIS K−7210(1999)に準じて、(株)東洋精機製作所社製メルトインデクサーを用いて測定した。測定条件は、使用する樹脂の融点に応じて、前述のように、(i)測定温度230℃、荷重21.18N、又は(ii)温度260℃、荷重49.05Nとした。
【0118】
(2)プロピレン系重合体のメソペンタッド分率(mmmm)
プロピレン系重合体を溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件でメソペンタッド分率(mmmm)を求めた。
【0119】
測定機:日本電子(株)社製、高温FT−NMR JNM−ECP500
観測核:13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン〔ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(体積混合比=4/1)〕
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4500回
シフト基準:CH3(mmmm)=21.7ppm
5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrm等)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrm等に由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等のスペクトルの記載を参考とした。
【0120】
(3)重合体の融点
Perkin Elmer,Inc.社製Diamond DSCを用いて、以下の条件で測定した。
【0121】
まず、重合体を約5mg量りとり、アルミニウム製のサンプルホルダーに封入し、DSC装置にセットする。窒素流下、30℃から280℃まで20℃/分の速度で昇温し、5分間保持する。その後20℃/分の速度で30℃まで降温し、5分間保持する。次いで、20℃/分で再度昇温して結晶の融解ピークを測定して、吸熱ピークのトップの温度を測定する。複数の吸熱ピークを示す場合は、最大の吸熱ピークのトップの温度を測定する。上記測定を3回繰り返し、3点の平均値を融点とした。
【0122】
(4)重合体及びフィルムの灰分
JIS−K7250−1(2006)A法に準じて、測定試料量200gで測定した。
【0123】
(5)フィルムの表面形状(最大ピークの高さの値(Sp)、高さデータの二乗平均平方根(Sq)、負荷曲線における突出山部高さ(Rpk))
<測定>
光干渉式非接触表面形状測定器((株)菱化システム社製、非接触表面・層断面形状測定システム、VertScan(登録商標)2.0(型式:R5500GML))により、以下の条件にて測定した。
【0124】
測定モード: WAVE
フィルタ: 530white
対物レンズ倍率: ×10
視野: 470.92μm×353.16μm(640×480pixel)
測定数: フィルム表面の任意の10箇所について測定
<画像処理>
上記10箇所の測定データにつき、解析ソフトウェア「VS−Viewer」を用いて、以下の画像処理を行った。
【0125】
ノイズ除去処理: メディアンフィルタ(5×5画素)
粗さ成分の抽出処理: ガウシアンフィルタ処理(カットオフ値30μm以上)
<Sp、Sq、Rpkの算出>
上述のように画像処理して得られた10箇所の表面形状データの各画像それぞれについて、解析ソフトウェア「VS−Viewer」を用いて各パラメータを測定した。
最大ピークの高さの値として測定された10個の値の最大値を(Sp)とした。
高さデータの二乗平均平方根の値として測定された10個の値の平均値を(Sq)とした。
負荷曲線における突出山部高さの値として測定された10個の値の平均値を(Rpk)とした。
【0126】
(6)フィルムの厚み
シチズンセイミツ(株)社製紙厚測定器MEI−11を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
【0127】
(7)フィルムのヘーズ度
日本電色工業(株)社製ヘーズメーターNDH−5000を用いて、JIS−K7136に準拠して測定した。
【0128】
(8)フィルムの透明度
(株)村上色彩技術研究所製透明度測定器TM−1Dを用いて測定した。その最小透明度を記録した。
【0129】
(9)フィルムのフィッシュアイ個数
フロンティアシステム(株)社製フィッシュアイカウンターを用いて、面積0.0045mm
2以上のフィッシュアイの個数を計測した。計測は1回の測定あたり0.01351m
2の面積について行い、この測定を6回行って、その結果を合計して得られた面積0.08106m
2中のフィッシュアイ個数を、1m
2あたりに換算した。
【0130】
(10)フィルムの巻取り適性
巻取られたフィルムを、巻取りのまま1週間室温にて宙吊り保管したのち、巻取りをワインダーで巻戻しながら、以下のような問題の発生の有無を確認した。
【0131】
ブロッキング:フィルム同士の接着が見られる。重度であれば、フィルムを巻戻す際に破れや変形が発生する、あるいはフィルムを剥がすことができないといった問題が発生する。
【0132】
シワ:フィルムの流れ方向又は巾方向にシワが見られる。重度であれば、フィルムを引き出した後も回復せず、被保護体との貼り合わせ不良を発生する。
【0133】
凹凸:巻取り内部に不均一に残留した空気溜まりにより、フィルムに凹凸が発生する。重度であれば、フィルムを引き出した後も回復せず、被保護体との貼り合わせ不良を発生する。
(判定基準)
◎:ブロッキング、シワ、凹凸の発生は無く、良好に使用可能
○:ブロッキング、シワ、凹凸のいずれかが軽度に見られるが、使用可能
△:ブロッキング、シワ、凹凸のいずれかが中度であり、使用に難あり
×:ブロッキング、シワ、凹凸のいずれかが重度であり、使用不可
【0134】
(11)フィルムの平滑面への、粗化面の転写
フィルムから60mm×60mmのサンプルを2枚切り出し、粗化面と平滑面が接するように重ね合わせ、両側を平滑な金属板(200mm×200mm)で挟み込み、30℃に調温した。(株)東洋精機製作所社製MINI TEST PRESS−10にて、30℃にて、30MPaを10分間負荷した後、平滑面側への凹みの発生(転写)を評価した。
【0135】
転写の有無は、光干渉式非接触表面形状測定器((株)菱化システム社製、非接触表面・層断面形状測定システム、VertScan(登録商標)2.0(型式:R5500GML))により、以下の条件にて、フィルム表面に干渉光を当てながら観察した。
【0136】
測定モード: WAVE
フィルタ: 530white
対物レンズ倍率: ×5
(判定基準)
◎:粗化面突起による凹み発生が全く認められず、良好に使用可能
○:極うっすらと粗化面突起による凹み認められるが、使用可能
△:粗化面突起による浅い凹みが認められ、使用に難あり
×:粗化面突起による深い凹みが明らかに認められ、使用不可
【0137】
[実施例及び比較例で用いた重合体の種類]
・プロピレン系重合体A:(株)プライムポリマー社製、MFR=2.8g/10分、(mmmm)=93%、融点=164℃、灰分=25ppm、中和剤としてステアリン酸カルシウムを50ppm使用(アイソタクティックポリプロピレンのホモポリマー)
・α−オレフィン系重合体A:三井化学(株)社製、タフマーBL3450、融点104℃、MFR=12g/10分(1−ブテン・エチレン共重合体)
・α−オレフィン系重合体B:三井化学(株)社製、タフマーXM7070、融点75℃、MFR=7g/10分(1−ブテン・プロピレン共重合体)
・α−オレフィン系重合体C:三井化学(株)社製、TPX MX002O、融点224℃、MFR=21g/10分(4−メチル−1−ペンテン系重合体)
・α−オレフィン系重合体D:三井化学(株)社製、TPX DX845、融点232℃、MFR=9g/10分(4−メチル−1−ペンテン系重合体)
実施例1
(1)調製工程、押出・濾過工程
・A層
プロピレン系重合体Aの樹脂ペレットを、一軸押出機にホッパーより投入し、樹脂温度230℃で、5kg/単位時間の吐出量で溶融押出した後、焼結金属不織布(ファイバー焼結体)を濾材とし、濾過精度10μmである長瀬産業(株)社製・ディスクフィルターを使用したポリマーフィルターにて濾過し、濾過物を得た。
・中間層
プロピレン系重合体A99部と、有機結晶核剤として新日本理化(株)社製リカクリアPC1を2%含有するマスターバッチ1部とを、ドライブレンド装置にて混合した。
【0138】
該混合原料を、一軸押出機にホッパーより投入し、樹脂温度230℃で、18kg/単位時間の吐出量で溶融押出した後、焼結金属不織布(ファイバー焼結体)を濾材とし、濾過精度10μmである長瀬産業(株)社製・ディスクフィルターを使用したポリマーフィルターにて濾過し、濾過物を得た。
・B層
プロピレン系重合体A88部と、α−オレフィン系重合体A12部とを、ドライブレンド装置にて混合した。
【0139】
該混合原料を、一軸押出機にホッパーより投入し、樹脂温度230℃で、2kg/単位時間の吐出量で溶融押出した後、焼結金属不織布(ファイバー焼結体)を濾材とし、濾過精度10μmである長瀬産業(株)社製・ディスクフィルターを使用したポリマーフィルターにて濾過し、濾過物を得た。
(2)キャストシート製造工程
前記工程で得られたA層、中間層、及びB層を形成する各樹脂組成物(濾過物)を、合流装置にてこの順に積層した後、Tダイより押出しした。押出しされた積層樹脂をA層が表面温度を40℃に調整した冷却成型ロールに接するように、B層側からエアーナイフにて押し当て、次いで、B層を表面温度30℃の2段目の冷却成型ロールに押し当てて冷却固化し、厚さ約1.2mmのキャストシートを得た。
(3)延伸工程
前記工程で得られたキャストシートを金属ロールに接触させて130℃に加熱後、周速差のあるロール間で4.5倍に縦延伸した。次いで、該一軸延伸フィルムをクリップに挟みながら熱風オーブン中に導入して、165℃に予熱した後に10倍に横延伸し、引き続き幅方向に10%の弛緩をしながら170℃で熱固定を行い、厚さ25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、端部をトリミングした後、巻き取った。
【0140】
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面粗さを評価し、結果を表2に示した。また、得られたフィルムの総厚み、ヘーズ度、透明度、灰分、フィッシュアイ個数、巻取り適性、平滑面への粗化面の転写を評価し、結果を表3に示した。
【0141】
実施例2
B層を形成する樹脂組成物における、プロピレン系重合体A及びα−オレフィン系重合体Aの含有量を、表1に示したとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、総厚み25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの評価結果を表2及び表3に示した。
【0142】
実施例3
B層を形成する樹脂組成物におけるα−オレフィン系重合体Aを、オレフィン系重合体Bに変更した以外は、実施例1と同様にして、総厚み25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの評価結果を表2及び表3に示した。
【0143】
実施例4
B層を形成する樹脂組成物におけるα−オレフィン系重合体Aを、オレフィン系重合体Cに変更し、プロピレン系重合体A及びα−オレフィン系重合体Cの含有量を表1に示したとおりに変更して、一軸押出機による押出しの際の樹脂温度を250℃とし、縦延伸の際の加熱温度を145℃とした以外は、実施例1と同様にして、総厚み25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの評価結果を表2及び表3に示した。
【0144】
実施例5
B層を形成する樹脂組成物におけるオレフィン系重合体Aを、α−オレフィン系重合体Dに変更し、プロピレン系重合体A及びα−オレフィン系重合体Dの含有量を表1に示したとおりに変更した以外は、実施例4と同様にして、総厚み25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの評価結果を表2及び表3に示した。
【0145】
比較例1
B層を形成する樹脂組成物におけるオレフィン系重合体Aを、高密度ポリエチレン((株)プライムポリマー社製Hi−Zex7000F、融点130℃)とし、プロピレン系重合体A及び高密度ポリエチレンの含有量を表1に示したとおりに変更した以外は、実施例4と同様にして、総厚み25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの評価結果を表2及び表3に示した。
【0146】
比較例2
B層を形成する樹脂組成物において、α−オレフィン系重合体を配合せず、縦延伸の際の加熱温度を140℃とした以外は、実施例1と同様にして、総厚み25μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの評価結果を表2及び表3に示した。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
実施例1〜5の結果から明らかなように、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、平滑面及び粗化面の表面粗さが適切であることから、巻取り適性に優れ、また平滑面への粗化面の転写も良好である。加えて、フィッシュアイが少なく、ヘーズ度や透明性にも優れている。
【0151】
しかしながら、α−オレフィン系重合体の代わりに高密度ポリエチレンを用いた比較例1は、粗化面の表面粗さが適切ではなく、平滑面への粗化面の転写が悪く、またヘーズ度や透明度も劣る傾向にあった。また、α−オレフィン系重合体を使用しなかった比較例2の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、粗化面の表面粗さが適切ではなく、巻取り適性に問題があった。