(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜6のいずれか一項に記載の誘導加熱発熱体を非導電性材料からなる容器本体に取り付けることによって、電磁調理器を用いた加熱調理が可能とされた誘導加熱容器であって、
前記周縁側領域における前記ヒートシール層の少なくとも一部が、前記容器本体にヒートシールされていることを特徴とする誘導加熱容器。
前記容器本体の側壁部に沿って立ち上がる立ち上がり部を前記周縁側領域の周縁部に形成し、前記立ち上がり部における前記ヒートシール層の少なくとも一部を前記容器本体の側壁部にヒートシールした請求項7に記載の誘導加熱容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、容器本体に取り付けた発熱体が発熱するに際し、加熱効率の点からは発熱体を容器本体の内底面上に載置するのが好ましいが、発熱体からの熱によって容器本体が過剰に加熱されてしまうと、容器本体が変形したり、焼損してしまったりするおそれがある。特に、発熱体を内底面へ固定した場合、この問題が顕著になる。特許文献1〜3では、そのような不具合が生じないように、発熱体の取り付け方に種々の工夫を凝らしているものの、本出願人は、その後の検討において、先に提案したものには未だ改善の余地があるとの知見に達した。
【0007】
例えば、特許文献1では、導電性材料を非導電性材料でラミネートして発熱体を形成し、導電性材料を容器底部に位置させるとともに、非導電性材料の端部を容器側壁に沿って湾曲させ、容器側壁の内面下部にヒートシールすることによって発熱体を取り付けている。しかしながら、このような取り付け方では、導電性材料よりも非導電性材料の方が大きくなるように両者を異なる大きさで別々に裁断しておき、その後、これらをラミネートするというように、発熱体の製造工程が煩雑になってしまい、製造に要するコストを削減するにも限界があった。
【0008】
また、特許文献2では、発熱体の上端縁側に係止部を形成するとともに、この係止部を容器本体の開口縁部側に係止させて、容器底部との間に隙間が形成されるようにして発熱体を取り付けている。しかしながら、このような取り付け方では、容器底部との間に一定の間隔が確保されるように発熱体を取り付けるには、発熱体が十分な剛性を備えていなければならず、容器本体と発熱体との位置関係を適切に維持するのが困難であった。
【0009】
また、特許文献3では、所定の接着パターンで、容器本体の内底面に発熱体を部分的に接着させて、水などの液状の被加熱物が容器本体と発熱体との間に行き渡るように発熱体を取り付けている。しかしながら、このような取り付け方にあっても、線状のごく狭い面積ではあるものの、発熱体が容器本体の内底面に固定されていることに変わりなく、発熱体からの熱による影響を全くなくすことはできなかった。
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、非導電性材料からなる容器本体に、誘導加熱によって発熱する導電性材料からなる発熱体を取り付けて、電磁調理器による誘導加熱が可能な容器を安価に提供するにあたり、発熱体からの熱による影響を格段に低減し、容器本体が変形したり、焼損したりするなどの不具合を従来にも増してより有効に回避することができる誘導加熱発熱体、
及びそのような誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る誘導加熱発熱体は、非導電性材料からなる容器本体に取り付けて、電磁調理器を用いた加熱調理を可能とするための誘導加熱発熱体であって、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する導電層と、前記容器本体に対してヒートシール性を有するヒートシール層とを少なくとも備える積層体を所定形状に切り出してなり、前記導電層が、中央側領域と周縁側領域とに分断されているとともに、前記周縁側領域が周方向に分断されて
、前記周縁側領域における発熱量が抑制されている構成としてある。
【0012】
また、本発明に係る
誘導加熱発熱体は、
例えば、非導電性材料からなる容器本体に取り付けて、電磁調理器を用いた加熱調理を可能とするための誘導加熱発熱体の製造方法であって、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する導電層と、前記容器本体に対してヒートシール性を有するヒートシール層とを少なくとも備える積層体を形成する工程と、前記積層体に対してハーフカット処理を施して、前記導電層を中央側領域と周縁側領域とに分断するとともに、前記周縁側領域を周方向に分断する工程と、前記積層体を所定形状に切り出す工程とを含む方法
によって製造することができる。
【0013】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、前述したような誘導加熱発熱体を非導電性材料からなる容器本体に取り付けることによって、電磁調理器を用いた加熱調理が可能とされた誘導加熱容器であって、前記周縁側領域における前記ヒートシール層の少なくとも一部が、前記容器本体にヒートシールされている構成としてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誘導加熱によって発熱する誘導加熱発熱体を非導電性材料からなる容器本体に取り付けて電磁調理器による誘導加熱を可能とするにあたり、誘導加熱発熱体からの熱による影響を格段に低減し、容器本体が変形したり、焼損したりするなどの不具合を従来にも増してより有効に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
図1Aは、本実施形態に係る誘導加熱容器の概略を示す斜視図であり、
図1Bは、
図1AのA−A断面図である。
【0018】
図1A及び
図1Bに示す容器1は、非導電性材料からなる容器本体2と、この容器本体2の内底面21側に取り付けられた誘導加熱発熱体3とを備えている。
容器本体2の内底面21は、ほぼ正方形状とされており、容器本体2は、この内底面21の周りを囲むように側壁部22を立設させることで、水などの液状の被加熱物を収容できるようにしてあるが、内底面21の形状は、図示する例には限定されない。例えば、矩形状、円形状とするほか、三角形、五角形、六角形などの多角形状としてもよい。容器本体2の全体的な形状も、使い勝手などを考慮して種々の形状とすることができる。
【0019】
ただし、容器1は、一般に、市販の電磁調理器の上に置いて使用されることから、容器本体2の内底面21や、容器本体2の内底面21側に取り付けられる誘導加熱発熱体3の大きさは、使用する電磁調理器が備える加熱コイルの大きさに応じて設定するのが好ましい。例えば、市販の家庭用電磁調理器が備える一般的な加熱コイルは、内径5cm程度、外径20cm程度であり、業務用のものであれば、これよりも大きいものもあるが、使用が想定される電磁調理器に応じて大きさを適宜定めておくものとする。
【0020】
本実施形態において、容器本体2は、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂材料、さらには、紙や、ガラスなど、種々の汎用の非導電性材料にて形成することができる。これらの材料にて容器本体2を形成することにより、電磁調理器を用いた加熱調理が可能な誘導加熱容器を安価に提供することが可能となる。
【0021】
また、誘導加熱発熱体3は、電磁調理器が備える電磁誘導加熱コイルから発生する高周波磁界により渦電流が誘起され、その電気抵抗によりジュール熱が生じて発熱する導電性材料からなる導電層31と、容器本体2に対してヒートシール性を有するヒートシール層32とを少なくとも備えている。
【0022】
導電層31を形成する導電性材料としては、例えば、アルミニウム,ニッケル,金,銀,銅,白金,鉄,コバルト,錫,亜鉛などの金属、又はこれらの合金など、高周波磁界による誘導加熱によって発熱する種々の導電性材料を用いて形成することができる。より具体的には、例えば、導電性材料としてアルミニウムを用いる場合、好ましくは0.10〜100μm程度、より好ましくは1〜80μm程度の厚みのアルミニウム箔を用いて導電層31を形成することができる。アルミニウム箔などの金属箔を用いて導電層31を形成すれば、誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付ける際に、誘導加熱発熱体3を容器本体2の内底面21や側壁部22に沿って折り曲げるなどの立体加工を施して、容器本体2の形状に適合させるのが容易となる。
【0023】
また、導電層31は、図示するような始点と終点が一致する閉曲線状の第一分断線10によって、中央側領域3aと周縁側領域3bとに分断されているとともに、周縁側領域3bには、第一分断線10に接続し、かつ、導電層31の周縁に達して周縁側領域3bを周方向に分断する一又は複数(図示する例では四つ)の第二分断線20が形成されている。
【0024】
本実施形態にあっては、このような誘導加熱発熱体3を容器本体2の内底面21側に取り付けることで、電磁調理器による誘導加熱によって、容器本体2に収容された被加熱物を加熱できるようにしているが、導電層31を中央側領域3aと周縁側領域3bとに分断し、さらに、周縁側領域3bが周方向に分断されるようにすることで、中央側領域3aの発熱効率を確保しつつ、周縁側領域3bにおける発熱量を抑制している。
【0025】
すなわち、電磁調理器の上に容器1が置かれて、電磁調理器が備える電磁誘導加熱コイルから発生する高周波磁界によって誘導加熱発熱体3の導電層31に渦電流が誘起される際に、渦電流は分断されたそれぞれの領域ごとに誘起されることとなるが、中央側領域3aから分断された周縁側領域3bは、周方向にも分断されているため、電磁調理器が備える電磁誘導加熱コイルの中心回りの強い渦電流は誘起されなくなり、中央側領域3aに比べて発熱量が抑制される。そして、周縁側領域3bを周方向に分断する数を多くするほど、分断された各領域内で誘起される渦電流は小さくなるので、より有効に周縁側領域3bでの発熱を抑制することができる。
【0026】
このようにすることで、本実施形態にあっては、発熱量が抑制された周縁側領域3bにおけるヒートシール層32を容器本体2にヒートシールし、これによって誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けることで、誘導加熱発熱体3が発する熱の影響が、容器本体2に及ばないようにすることができる。特に、誘導加熱発熱体3は、容器本体2の内底面21側から(電磁誘導加熱コイルから)離れるにつれて発熱量が小さくなるので、容器本体2の側壁部22に沿って周縁側領域3bの周縁部を立ち上げた立ち上がり部3cでヒートシールするのが好ましい。このとき、側壁部22の全周にわたって立ち上がり部3cの全面をヒートシールすると、より確実に誘導加熱発熱体3を容器本体2に固定できて好ましいが、周方向または放射方向の線状、点状などのパターンで部分的にヒートシールしてもよく、このようにすれば、側壁部22と誘導加熱発熱体3との間にも被加熱物が流入でき、加熱効率をよくすることができる。
【0027】
ここで、ヒートシール層32は、容器本体2に対してヒートシール性を有するものであれば特に限定されず、容器本体2を形成する非導電性材料に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂,ポリスチレン系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリアミド系樹脂など、容器本体2に使用できるのと同様の合成樹脂材料を用いてヒートシール層32を形成することができるが、成形加工しやすく、ヒートシール性が良好で、適度な耐熱性を有するポリプロピレンが好ましい。容器本体2側に、これらの樹脂とのヒートシールが可能な層を設けておくこともできる。
【0028】
一方、電磁誘導加熱コイル上に位置する中央側領域3aでは、電磁誘導加熱コイルの中心回りの強い渦電流が誘起され、最も高い温度に加熱される。このため、誘導加熱が効率よくなされるようにするためには、誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けたときに、容器本体2の内底面21上に中央側領域3aが位置するようになっているのが好ましく、特に、容器本体2の内底面21の大部分が中央側領域3aで覆われるようにするのが好ましい。
【0029】
ここで、
図2は、導電層31を分断する第一分断線10や第二分断線20の長手方向に直交する断面を示す誘導加熱発熱体3の要部拡大断面図である。導電層31を分断する第一分断線10や第二分断線20は、導電層31とヒートシール層32とを少なくとも備える積層体に対して、トムソン刃、ピナクル刃等の切断刃や、YAGレーザー、YVO4レーザー、ファイバレーザー等のレーザーなどを用いて導電層31が選択的に分断されるようにハーフカット処理を施すことによって形成することができる。
【0030】
また、
図3A,
図3B及び
図3Cに示すように、誘導加熱発熱体3は、導電層31を被覆する表面保護層33を備えることができる。表面保護層33を形成する樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ヒートシール層32と同様の樹脂材料を用いることができる。表面保護層33を備える場合にも、ハーフカット処理を施すことによって第一分断線10や第二分断線20を形成することができる。このとき、表面保護層33は、
図3Aに示すように、ハーフカット処理によって導電層31とともに切断されるようにしてもよいが、切断刃を用いてハーフカット処理を施す場合には、切断刃の温度や刃先の角度などを適宜調整して、表面保護層33を引き延ばしつつ導電層31を分断することによって、
図3Bに示すように、導電層31の分断面が表面保護層33で被覆されるようにすることができる。このようにすることで、導電層31の分断面が外部に露出しないようにして、導電層31を形成する導電性材料の溶出を防ぐことができる。
このような技術としては、本出願人が特開2003−165194号公報に開示した技術を利用することができる。
【0031】
また、レーザーを用いてハーフカット処理を施す場合には、導電層31とともに表面保護層33が溶断されるようにしてもよいが、表面保護層33を形成する樹脂材料に対して透過性のある、例えば、1064nmの波長帯のレーザーを用いれば、
図3Cに示すように、表面保護層33を溶断することなく、導電層31だけが分断されるようにすることができる。これによっても、導電層31の分断面が外部に露出しないようにして、導電層31を形成する導電性材料の溶出を防ぐことができる。この場合に用いるレーザーとしては、YAGレーザー、YVO4レーザー、ファイバレーザーが好ましい。
【0032】
なお、切断刃を用いてハーフカット処理を施す場合には、誘導加熱発熱体3が表面保護層33を備えていれば、ヒートシール層32側からハーフカット処理を施すようにしてもよい。ヒートシール層32と表面保護層33のいずれか一方が連続した一体の状態を維持し、誘導加熱発熱体3が中央側領域3aと周縁側領域3bとに分離してしまうことがなければ、ハーフカット処理を施す方向は特に限定されない。また、レーザーを用いてハーフカット処理を施す場合には、ヒートシール層32を形成する樹脂材料に対して透過性があれば、表面保護層33の有無にかかわらず、ヒートシール層32側からレーザー照射してハーフカット処理を施してもよい。
【0033】
さらに、誘導加熱発熱体3を所定形状に切り出す際にも同様に、導電層31を形成する導電性材料の溶出を防ぐようにするのが好ましい。
例えば、切断刃を用いて誘導加熱発熱体3を所定形状に切り出す場合には、前述したように切断刃の温度や刃先の角度などを適宜調整し、表面保護層33を引き延ばしつつ導電層31とヒートシール層32とを切断すればよい。このようにすることで、
図4Aに示すように、導電層31の切断された周端面が表面保護層33で被覆されるようにすることができる。
また、誘導加熱発熱体3を所定形状に切り出すにあたっては、レーザーを用いることできる。この場合には、レーザーの出力を適宜調整し、溶融した表面保護層33とヒートシール層32の両方又は一方が、導電層31の切断された周端面に回り込むようにすることで、
図4Bに示すように、当該周端面が被覆されるようにすることができる。
【0034】
また、誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けるには、前述したように、周縁側領域3bの周縁部に、容器本体2の側壁部22に沿って立ち上がる立ち上がり部3cを形成し、この立ち上がり部3cにおけるヒートシール層32の少なくとも一部を容器本体2の側壁部22にヒートシールするのが好ましい。また、容器本体2の内底面21と誘導加熱発熱体3との間に一定の隙間が維持される位置に固定することもでき、これによっても誘導加熱発熱体3からの熱の影響が容器本体2に及ばないようにすることができる。
このとき、容器本体2の内底面21と誘導加熱発熱体3との間に被加熱物が滞留してしまうのを避け、被加熱物が対流しやすくなるように、誘導加熱発熱体3の中心側の任意の位置には、対流孔としての抜き孔35を形成するのが好ましい。
【0035】
図5は、誘導加熱発熱体3の一例を示す平面図であり、
図1A及び
図1Bに示す誘導加熱発熱体3の展開図に相当する。この例において、誘導加熱発熱体3は、ほぼ正方形の平面形状とされ、図中鎖線で示す谷折り線VLと、図中二点鎖線で示す山折り線MLとによって折り返すことにより、容器本体2の形状に適合させている。そして、立ち上がり部3cに生じる余剰部分の収まりをよくするために、角部にはヒダ折り加工を施している。このように、周縁側領域3bの周縁部に、容器本体2の側壁部22に沿って立ち上がる立ち上がり部3cを形成する場合には、立ち上がり部3cの少なくとも一部にヒダ折り加工を施すことで、誘導加熱発熱体3に生じる余剰部分の収まりをよくすることができる。
【0036】
本実施形態において、誘導加熱発熱体3を形成する具体的な方法は特に問わないが、例えば、導電層31を形成する導電性材料としてアルミニウム箔などの金属箔を用いる場合には、まず、長尺状の金属箔原反を連続的に繰り出しつつ、押出ラミネート法などによってヒートシール層32や表面保護層33を積層することによって、導電層31、ヒートシール層32、表面保護33を備える積層体を形成する。そして、このようにして形成された積層体にハーフカット処理を施して導電層31を前述したように分断するのと同時に、又は分断した後に、当該積層体を容器本体2の内底面21の形状に応じて所定形状に切り出すことによって、煩雑な工程を伴わずに生産性よく誘導加熱発熱体3を製造することができる。
なお、当該積層体を所定形状に切り出した後にハーフカット処理を施してもよく、また、分断のパターンによっては、ハーフカット処理を多段階に分割して施すこともできる。
【0037】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図6Aは、本実施形態に係る誘導加熱容器の概略を示す斜視図であり、
図6Bは、
図6AのB−B線断面図である。
【0038】
前述した第一実施形態では、内底面21の周りを囲むように側壁部22を立設させて容器本体2を形成し、この容器本体2の内底面21側に誘導加熱発熱体3を取り付けるようにしているが、本実施形態にあっては、容器本体2が、底部を欠いた円筒状の側壁部22からなり、容器本体2に取り付けられた誘導加熱発熱体3が容器底部を兼ねるようにしてある。
【0039】
本実施形態にあっても、誘導加熱発熱体3の導電層31は、第一分断線10によって中央側領域3aと周縁側領域3bとに分断されているとともに、
図6A及び
図6Bに示す例では、周縁側領域3bを周方向に分断する八つの第二分断線20が形成されている。さらに、
図6A及び
図6Bに示す例では、中央側領域3aに誘起される渦電流を整えて、中央側領域3a内の発熱を均等化するために、中央側領域3a内に同心状に導電層31を分断する分断線30を形成している。
【0040】
図7は、誘導加熱発熱体3の一例を示す平面図であり、
図6A及び
図6Bに示す誘導加熱発熱体3の展開図に相当する。この例において、誘導加熱発熱体3は、円形状の平面形状とされ、図中鎖線で示す谷折り線VLと、図中二点鎖線で示す山折り線MLとによって折り返すことにより、周縁に沿ってヒダ折り加工が施されて立ち上がる立ち上がり部3cが形成されるようになっている。
なお、
図6Aに示すように、本実施形態にあっては、誘導加熱発熱体3の全周にわたってヒダ折り加工を施しているが、
図7では、作図上、ヒダ折り加工の谷折り線VLを示す鎖線と、山折り線MLを示す二点鎖線の一部だけを図示し、それ以外の図示を省略している。
【0041】
本実施形態において、このような誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けるには、その立ち上がり部3cにおけるヒートシール層32の少なくとも一部を容器本体2の側壁部22にヒートシールすることになるが、この際、収容される被加熱物の容積に対して立ち上がり部3cの高さが十分に確保されていれは、周方向または放射方向の線状、点状などのパターンで部分的にヒートシールしてもよい。被加熱物が漏れてしまうなどの不具合を確実に防ぐには、周方向に沿って線状に連続するパターンでヒートシールするのが好ましく、側壁部22の全周にわたって立ち上がり部3cの全面をヒートシールするのがより好ましい。
【0042】
このように、本実施形態では、容器本体2が、底部を欠いた円筒状の側壁部22からなり、このような容器本体2に取り付けられた誘導加熱発熱体3が容器底部を兼ねるようにすることで、誘導加熱発熱体3からの熱の影響が容器本体2により及ばないようにすることができる。
すなわち、本実施形態にあっては、前述した第一実施形態における内底面21に相当するものがないので、中央側領域3aに生じる熱が容器本体2に直接には伝わらず、このため、熱による影響が容器本体2に及び難くなっている。
しかも、円筒状とされた容器本体2の側壁部22の下端面が接地するので、容器本体2は形状的にも変形しにくく、誘導加熱発熱体3が被加熱物の重さや熱で撓んでも、電磁調理器などの上に容器1を置いたときの安定性を良くすることができる。
【0043】
このような本実施形態に係る誘導加熱容器は、容器本体2が、底部を欠いた円筒状の側壁部22からなり、容器本体2に取り付けられた誘導加熱発熱体3が容器底部を兼ねるようにした点において第一実施形態と異なるが、これ以外の構成については第一実施形態と共通するため詳細な説明は省略する。
【0044】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0045】
例えば、前述した第一実施形態では、周縁側領域3bの周縁部に、容器本体2の側壁部22に沿って立ち上がる立ち上がり部3cを形成し、この立ち上がり部3cを容器本体2の側壁部22にヒートシールした例を示したが、誘導加熱発熱体3は、容器本体2の内底面21とほぼ一致する形状としてもよい。このような態様の例を
図8に示すが、この場合には、周縁側領域3bにおけるヒートシール層32の少なくとも一部を容器本体2の内底面21にヒートシールすることによって、容器本体2に誘導加熱発熱体3を取り付けることになる。
【0046】
また、前述した第一実施形態では、始点と終点が一致する閉曲線状の第一分断線10によって、導電層31が中央側領域3aと周縁側領域3bとに分断されているとともに、第一分断線10に接続し、かつ、導電層31の周縁に達して周縁側領域3bを周方向に分断する一又は複数の第二分断線20を形成した例を示した。本発明にあっては、導電層31が、中央側領域3aと周縁側領域3bとに分断されているとともに、周縁側領域3bが周方向に分断されていれば、
図9に示すような態様とすることもできる。
図9に示す例では、両端が導電層31の周縁に達する分断線11によって、正方形状に切り出された誘導加熱発熱体3の四隅に、周方向に分断された四つの周縁側領域3bが形成されている。
【0047】
また、前述した第一実施形態では、誘導加熱発熱体3の中心側の任意の位置に対流孔としての抜き孔35を形成した例を示したが、このような抜き孔35に代えて、前述した第二実施形態において、中央側領域3a内の発熱を均等化するために、中央側領域3a内に同心状に形成した分断線30と同じものを形成することもできる。
【0048】
また、前述した第二実施形態では、容器本体2が円筒状の側壁部22からなる例を示したが、角筒状とすることもできる。そして、例えば、容器本体2を水平断面が四角形となる角筒状とした場合には、前述した第一実施形態の
図1A及び
図1Bに示した形態の誘導加熱発熱体3と組み合わせて本発明を実施することもできる。
また、筒状の側壁部22の下端近傍の内縁を庇状に張り出して、この張出部に誘導加熱発熱体3の周縁側領域3bのヒートシール層32をヒートシールするようにすれば、
図8や
図9に示した形態の誘導加熱発熱体3と組み合わせることもできる。
【0049】
このように、本発明は、第一実施形態と第二実施形態に示した個々の構成を任意に組み合わせて実施することができ、第一実施形態及び第二実施形態のいずれにおいても、容器本体2や誘導加熱発熱体3の具体的な形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意の形態とすることができるのはいうまでもない。
【0050】
また、前述した第一実施形態及び第二実施形態のいずれにおいても、誘導加熱発熱体3には、誘導加熱によって誘導加熱発熱体3を発熱させたときに、他の部位よりも選択的に過剰に発熱する部位を設けておき、例えば、容器本体2に収容された被加熱物が水分の蒸発によって減少し、誘導加熱発熱体3が水面上に露出していく過程で、誘導加熱発熱体3に設けられた他の部位よりも選択的に過剰に発熱する部位が、所定のタイミングで熱溶融によって破断するようにし、これによって、安全機構が働いて電磁調理器が停止するようにすることができる。このような技術としては、例えば、特開2010−44929号公報や特開2009−95420号公報などにおいて、本出願人が先に提案した技術を適用することができる。