【実施例1】
【0011】
図1は、フライアッシュの分級装置1の部分断面正面図であり、
図2(A)は、フランジ部11と解砕板10の配置を示した平面図であり、
図2(B)は、蓋体9の平面図であり、
図3(A)は、蓋体9に固定された解砕板10周辺の一部断面正面図であり、
図3(B)は、蓋体9に固定された解砕板10の右側面図である。
【0012】
分級装置1は、分級を行う分級器2と、フライアッシュを含む気体を分級器2に導入する導入管3と、分級された微粒子のフライアッシュを導出する導出管4と、分級された粗粒子のフライアッシュを排出する排出部5を備えている。
【0013】
<導入管>
導入管3は、内部中空の筒状であり、この実施例では円筒状に形成されている。この導入管3の一端は、分級器2の周壁外方側に連結されており、分級器2の周壁に形成された導入管3の内径と同じ径の導入側連結孔6に連通している。
【0014】
導入管3の中心軸は、水平で分級器2の中心軸に向いている。すなわち、導入管3は、水平方向の流動経路が当該流動方向から見て分級器2の左右中心位置に向かうように配置されている。
【0015】
導入管3は、図示省略するポンプに接続されており、供給される分級前のフライアッシュを含む気体を分級器2内に導入する。
【0016】
<導出管>
導出管4は、内部中空の筒状であり、この実施例では円筒状に形成されている。この導出管4の一端は、分級器2の周壁外方側に連結されており、分級器2の周壁に形成された導出管4の内径と同じ径の導出側連結孔7に連通している。
【0017】
導出管4の中心軸は、水平で分級器2の中心軸に向いている。すなわち、導出管4は、水平方向の流動経路が当該流動方向の反対方向から見て分級器2の左右中心位置に向かうように配置されている。導出管4の中心軸は、導入管3の中心軸と一致する。従って、導入管3から導出管4まで一直線につながるように配置されており、この一直線につながる導入管3と導出管4の間に分級器2が配置されている。
【0018】
導出管4の断面積は、導入管3の断面積とほぼ等しい。このため、導出管4内を流動する分級された微粒子のフライアッシュを含む気体の流速は、導入管3内を流動するフライアッシュを含む気体の流速とほぼ等しくなる。
【0019】
<分級器>
分級器2は、筒状の筐体8と、筐体8上に設けられている蓋体9と、蓋体9に固定されている解砕板10とを備えている。
【0020】
筐体8は、内部中空であり、この実施例では円筒状に形成されている。筐体8は、その中心軸が上下方向を向いており、上下方向に長い。筐体8の上下方向の長さは、筐体8の内径より長くなっている。筐体8の水平断面積は、導入管3の半径方向の断面積の2倍以上であり、且つ導出管4の半径方向の断面積の2倍以上になっている。筐体8の上部側の周壁に、上述の導入側連結孔6と導出側連結孔7とが設けられている。尚、導入側連結孔6と導出側連結孔7は、筐体8の中心軸を挟んで筐体8の周壁に対向して設けられている。筐体8の上端には、筐体8の周壁から外方に向けて張り出すフランジ部11が設けられている。
【0021】
図2(A)に示すように、フランジ部11は、リング状で、上下方向に貫通するボルト挿入孔12が、外周に沿って等間隔に複数形成されている。フランジ部11の上面には、蓋体9が載置され固定されている(
図1参照)。
【0022】
図2(B)に示すように、蓋体9は、板状であり、この実施例では円板状に形成されている。蓋体9の外周は、上述のフランジ部11の外周に沿うように形成されている。蓋体9の周部には、ボルト13を通すための上下方向に貫通するボルト挿入孔12aが、フランジ部11のボルト挿入孔12に対応する位置に形成されている。
【0023】
蓋体9は、蓋体9のボルト挿入孔12とフランジ部11のボルト挿入孔12aに挿入されたボルト13とナット14(
図1参照)により筐体8に固定されている。蓋体9の上面には、取手15が取り付けられ、蓋体9の下面には、解砕板10が固定されている。
【0024】
図3(A)に示すように、解砕板10は、解砕板本体16と衝突板17と支持板18とを備えて構成されている。
【0025】
解砕板本体16は、平面を有する板状である。尚、解砕板本体16は、上下方向の軸周りに湾曲する板状など、他の形状に形成してもよい。この場合もフライアッシュを跳ね返すことができる。
【0026】
図3(B)に示すように、この実施例では、解砕板本体16は、略矩形状の平板で形成されている。解砕板本体16の上辺16aは、蓋体9の直径に沿うようにして蓋体9の下面に固定されている。解砕板本体16は、蓋体9の下面からほぼ垂直に垂下している。当該上辺16aの中点は、蓋体9の中央に位置している。解砕板本体16の横幅は、筐体8の内径より小さく、解砕板本体16の左右の側辺16bは、筐体8の周壁8aから離隔している。
【0027】
解砕板本体16の縦幅は、筐体8の縦幅より小さい。解砕板本体16の下辺16cは、筐体8の下端に設けられた後述する排出側連結孔19より上方に位置し、当該排出側連結孔19から大きく離隔している。この解砕板本体16の下辺16cから排出側連結孔19までの距離は、解砕板本体16の高さよりも長く、2倍以上長く形成されている。解砕板本体16の下辺16cの高さ位置は、筐体8の上下幅の1/2以上の高さ位置にある。他方、解砕板本体16の下辺16cは、導入側連結孔6及び導出側連結孔7の下端より下方に位置している。
【0028】
図3(A)に戻って、衝突板17は、板状であり、この実施例では略矩形状に形成されている(
図3(B)参照)。衝突板17は、解砕板本体16の表面に貼り合わせるようにして設けられている。
【0029】
図3(A)に示すように、衝突板17は、導入側連結孔6を含む筐体8の周壁8aに対向している。衝突板17の下辺17cは、
図3(B)に示すように、導入側連結孔6の下端より下方に位置している。衝突板17は、上辺17aが導入側連結孔6の上端より上方に位置し、横幅が導入側連結孔6の直径より長く形成されている。衝突板17の中心の高さ位置は、導入側連結孔6の中心の高さ位置と一致する位置かわずかに低い位置に設定されている。衝突板17の表面積は、導入側連結孔6の面積(フライアッシュの導入方向に直交する断面の断面積)より大きい(
図3(B)参照)。従って、導入側連結孔6と衝突板17は、フライアッシュの導入方向に見ると導入側連結孔6が衝突板17の表面内に収まるように配置されている。衝突板17と導入管3は、衝突板17の法線方向と、導入側連結孔6からのフライアッシュの導入方向が一致若しくは平行になるように配置されている。衝突板17は、耐摩耗鋼が用いられている。そのため、衝突板17は、摩耗による劣化が生じにくくなっている。衝突板17は、その四隅が解砕板本体16にネジ止めされて取り付けられている(
図3(B)参照)。これにより、衝突板に不具合が生じた場合等に、新規の衝突板に取り替えるのが容易である。
【0030】
支持板18は、
図3(A)に示すように、解砕板本体16の裏面に設けられている。支持板18は、二辺が直角である直角三角形の板状で、当該二辺が解砕板本体16の裏面と蓋体9の下面とに固定されている。そして、支持板18は、解砕板本体16の裏面及び蓋体9の下面の何れに対しても垂直になっている(
図2(A)参照)。また、支持板18は、解砕体本体16の幅方向へ離隔して2つ設けられている(
図2(A)参照)。これらの支持板18により、解砕板本体16は、その表面側からの外力による変形や歪みが生じにくくなっている。尚、支持板18に替えて支柱を用いるなど、フライアッシュの衝突や気流による解砕体本体16の変形や傾きを防止する適宜の支持体とすることもできる。すなわち、支柱は、その両端を解砕板本体16の裏面と蓋体9の下面とに固定して用いることができる。
【0031】
上述のように、解砕板10は、蓋体9に固定されている。そのため、分級器2に蓋体9を固定するボルト13を外して分級器2から蓋体9を取り外すと、解砕板10も同時に取り外すことができる。これにより、分級器2の内部の点検や清掃がやり易く、また、解砕板10の点検及び衝突板16の交換も同時に実施することができ、効率的である。
【0032】
また、分級器2に蓋体9を取り付けるに際して、上下に合わせる蓋体9とフランジ部11のボルト挿入孔12、12aの対応位置を平面視回転させるように変更することにより、解砕板10の配置角度を変更することができる。すなわち、衝突板17の正面を分級器2の中心軸周りに角度変更することができる。これにより、導入管3から分級器2に導入されたフライアッシュを真正面に跳ね返す流動方向対向配置と、導入されたフライアッシュを分級器2の軸の半径方向に角度をつけて跳ね返す流動方向傾斜配置のどちらの配置にもセッティングできる。流動方向傾斜配置の場合、当該気体は旋回運動をすることになる。これにより、当該気体に含まれるフライアッシュには遠心力が加わり、重いフライアッシュと軽いフライアッシュの分離を促進することができる。
【0033】
<排出部>
図1に示すように、排出部5は、排出側連結孔19を介して分級器2の下端に設けられている。排出部5は、下方に行くに従って徐々に内径が小さくなる第1の筒状体20と当該第1の筒状体20の下端に連結された第2の筒状体21とで構成されている。この実施例では、第1の筒状体20は逆円錐台状の筒状体で、第2の筒状体21は円筒で形成されている。
【0034】
<分級器の内部空間>
図4に示すように、分級器2の内部空間は、その主たる機能が異なる以下の3つの領域に分けられる。
【0035】
(1)水平解砕領域22
解砕板10の表面を含む平面と、対向する導入側連結孔6を含む筐体8の周壁8aと、蓋体9の下面と、解砕板10の下辺10c位置の水平面とで囲まれた領域。
(2)目的フライアッシュ導出前領域23
解砕板10の裏面を含む平面と、対向する導出側連結孔7を含む筐体8の周壁8aと、蓋体9の下面と、解砕板10の下辺10c位置の水平面とで囲まれた領域。
【0036】
(3)沈降撹拌領域24
解砕板10の下辺10c位置の水平面と、排出側連結孔19を含む水平面と、筐体8の周壁8aとで囲まれた領域。
【0037】
図5に示すように、解砕板10は、その左右の側辺10bが筐体8の周壁8aから離隔している。このため、解砕板10の左右の側辺10bと対向する筐体8の周壁8aとの間隙は、水平解砕領域22と目的フライアッシュ導出前領域23とを連通する2つの水平連通口25(水平連通領域)を形成している。
【0038】
2つの水平連通口25の合計面積は、導入側連結孔6の面積とほぼ同じ、あるいは導入管3の半径方向の断面積とほぼ同じ面積に設定されている。これにより、水平解砕領域22及び目的フライアッシュ導出前領域23内で流動するフライアッシュを含む気体の当該領域内流動速度が、導入側連結孔6から導入される分級前のフライアッシュを含む気体の導入流動速度とほぼ等しくなる。尚、2つの水平連通口25の全面積は、導入側連結孔6の面積、あるいは導入管3の半径方向の断面積の0.5〜2倍とすることができ、0.8〜1.5倍が好ましく、等面積が好適である。ここで言う水平連通口25の面積は、気体が流動する範囲の面積を指す。つまり、例えば水平連通口25が上方に10倍長く設けられたような場合、上方部分の気体があまり流動しない領域(気体が流動しないか気体の流動速度が遅くなる領域)を含まない。この気体の流動速度が遅くなる領域とは、気体の流動速度が水平連通口25における最高流動速度に対して50%以下になる領域とすることができ、60%以下とすることが好ましく、70%以下とすることがさらに好ましく、80%以下とすることがより好ましく、90%以下とすることが好適である。
【0039】
また、水平解砕領域22と沈降撹拌領域24との境界面は、これら2つの領域を連通する平面視半円形の導入側垂直連通口26(導入側垂直連通領域)を形成する。
【0040】
同様に、目的フライアッシュ導出前領域23と沈降撹拌領域24との境界面は、これら2つの領域を連通する平面視半円形の導出側垂直連通口27(導出側垂直連通領域)を形成する。
【0041】
以上のように構成された分級装置1は、次のように動作する。
図4に示すように、分級前のフライアッシュを含む気体は、矢印Y1に示すように、導入管3内を分級器2内の解砕板10に向かって水平方向に流動している。
【0042】
導入管3内を流動する分級前のフライアッシュを含む気体の流速は、秒速約20メートルである。この流速は、秒速10〜40メートル程度とすることができ、秒速15〜30メートルとすることが好ましく、秒速20メートル程度が好適である。
【0043】
導入管3内を流動してきた分級前のフライアッシュを含む気体は、導入側連結孔6を介して分級器2内に導入される。分級器2内に導入された分級前のフライアッシュを含む気体は、矢印Y2に示すように、導入管3の中心軸の延長線上に沿って、水平方向を維持したまま流動する。すなわち、分級器2内に導入された分級前のフライアッシュを含む気体は、水平流となって、分級器2の解砕板10の衝突板17へ向かう。そして、当該気体は、矢印Y3に示すように解砕板10左右の水平連通口25(
図5参照)を通過して目的フライアッシュ導出前領域23へ向かうものと、矢印Y4に示すように導入側垂直連通口26を通過して解砕板10の下方の沈降撹拌領域24へ向かうものに分かれる。
【0044】
こうして搬送されてきた分級前のフライアッシュは、重いものほど左右に流れずまっすぐ進み、解砕体10の衝突板17に対してほぼ垂直に衝突する。すなわち、導入側連結孔6を介して導入管3から分級器2に気体とともに勢いよく導入された分級前のフライアッシュは、多くが衝突板17に向かって流動し、衝突板17に衝突する。この衝突時に、分級前のフライアッシュに含まれるクラスターや、夾雑物とフライアッシュとが結合したものは、その多くが衝突板17から受ける衝撃力により解砕され、粒度の異なる複数の単粒子のフライアッシュと夾雑物に分離される。さらに、衝突したフライアッシュは、流動方向が反転し、導入管3から分級器2に導入される後続の分級前のフライアッシュとほぼ正面で衝突する。これにより、フライアッシュの解砕がさらに促進される。
【0045】
なお、勢いよく導入するとは、導入された際に重力によって下方へまっすぐ落下するのではなく、気体によって搬送されてきた慣性力によって搬送方向へまっすぐ進むか、まっすぐ進みつつ重力の影響で少しずつ下方へ方向を変えて放物線を描くように導入することを指す。
【0046】
後続の分級前のフライアッシュと衝突した当該フライアッシュは、多くが下方へ落下し、粒径の大きいフライアッシュ粒子や未燃カーボン等の夾雑物が導入側垂直連通口26から沈降撹拌領域24へ流動して矢印Y5に示すように排出部5に集まっていく。
【0047】
図4に示すように、導入側垂直連通口26を通って沈降撹拌領域24に流動したフライアッシュを含む気体は、沈降撹拌領域24内で、矢印Y4に示すように導入側垂直連通口26側が下方へ、矢印Y6に示すように導出側垂直連通口27側が上方へ移動するように回転する。この間に、フライアッシュ同士が接触してさらに解砕されると共に、重いものが下方に貯まっていき、軽いものが矢印Y6に示すように導出側垂直連通口27へ導出されていく。すなわち、衝突および解砕によってできた未燃カーボンが付着していない必要なサイズである平均粒径が2〜3μmのフライアッシュ粒子(すなわち1種相当のフライアッシュ粒子)は、気体の流動によって搬送され、導出側垂直連通口27から導出側連結孔7へ搬送される。
【0048】
なお、1種相当は、平均粒径2〜3μmのフライアッシュ粒子を指し、2種相当は、平均粒径10〜20μmのフライアッシュ粒子を指し、4種相当は、平均粒径30〜60μmのフライアッシュ粒子を指す。
【0049】
一方で、分級器2内に導入された分級前のフライアッシュの内、軽いもの、すなわち、未燃カーボンが付着していない必要なサイズである平均粒径が2〜3μmのフライアッシュ粒子は、導入されてきた流速と同じ速度で矢印Y3に示すように水平連通口25を流動する気体と共に水平連通口25(
図5参照)を通過し、そのままの速度で目的フライアッシュ導出前領域23から導出管4へ搬送される。
【0050】
目的フライアッシュ導出前領域23内は、導出側垂直連通口27を通過して下方から上がってきた粒径が小さく軽いフライアッシュ(目的サイズの球状フライアッシュ粒子)と、水平連通口25を通過して側方から入ってきた粒径が小さく軽いフライアッシュ(目的サイズの球状フライアッシュ粒子)が混ざり合い、乱流となりながら、矢印Y7に示すように導出側連結孔7から導出されて導出管4内に流動し、矢印Y8に示すように分級器2外に搬送されていく。
【0051】
ここで、筐体8の水平断面積は、導入管3の半径方向の断面積の2倍以上になっている。そのため、導入側垂直連通口26を通って沈降撹拌領域24に流動したフライアッシュを含む気体の流速は、導入管3を通って分級器2に導入された直後の分級前のフライアッシュを含む気体の流速より小さく、導入側垂直連通口26近傍で秒速約6.6メートル、分級器2内下部ではさらに小さく、秒速約3.3メートルになっている。尚、この筐体8の水平断面積と導入管3の半径方向の断面積の比率を変えることにより、沈降撹拌領域24に流動するフライアッシュを含む気体のこれら流速を調節することが可能である。
【0052】
また、導入管3を通って分級器2に導入される分級前のフライアッシュは、粒度の異なる球状ガラス質の単粒子のフライアッシュだけでなく、粒度の異なる複数の単粒子のフライアッシュがブドウの房のように塊となったクラスター状粒子のフライアッシュも多く含んでいる。また、分級前のフライアッシュには、夾雑物が含まれることがあり、夾雑物とフライアッシュとが結合したものが存在することもある。
【0053】
上述のように、導入管3から導入された際の流速に対して、沈降撹拌領域24での流速が1/2以下になるように、さらに言えば1/3程度になるように筐体8の水平断面積の大きさ(さらに沈降撹拌領域24の体積)を設計することで、所望の粒径以下の微粒子であるフライアッシュを導出管4から導出しつつ、所望の粒径より大きい粗粒子や夾雑物を沈降させることができる。
【0054】
分級器2内の下方に貯まっていく重いフライアッシュは、排出部5に堆積する。排出部5に堆積した重いフライアッシュは、排出部5の下端に連結され上端と下部側とに夫々開閉可能なダンパー28、29が設けられて構成されている円筒状の排出機構30を用いて排出される。詳述すると、まず、下部ダンパー29を閉じた状態で、上端ダンパー28を開ける。これにより、排出部5に堆積した重いフライアッシュを落下して下部ダンパー29上の空間に移動させる。次に、上端ダンパー28を閉じ、その状態で、下部ダンパー29を開ける。これにより、下部ダンパー29上で上端ダンパー28までの空間にあった夾雑物を含む重いフライアッシュは、落下し、分級器2外に排出される。上述の一連の排出操作を繰り返すことにより、夾雑物を含む重いフライアッシュを、分級器2外に連続して排出できる。また、排出操作の回数を増減することにより、夾雑物を含む重いフライアッシュの排出量を制御することができる。これによって下部ダンパー29から排出されるフライアッシュは、4種相当のフライアッシュとなる。
【0055】
以上の構成と動作により、分級装置1は、粒度の異なる球状ガラス質の単粒子のフライアッシュだけでなく、クラスター状粒子のフライアッシュや、夾雑物とフライアッシュとが結合したものを含む分級前のフライアッシュを、導入管3から分級器2内に導入し、分級器2内で解砕することができる。
【0056】
そして、分級装置1は、解砕したフライアッシュについて、粒径の小さい軽いフライアッシュ粒子を導出管4から導出し、粒径の大きい重いフライアッシュ粒子を排出部5から排出することができ、フライアッシュの分級が可能となる。
【0057】
分級装置1は、排出側連結孔19よりも上方に、導入側連結孔6と導出側連結孔7とが設けられている。そのため、導入側連結孔6を介して気体に含まれて導入された重いフライアッシュ、及び導入後分級器2内で解砕され生じた重いフライアッシュは、重力の影響を受け、下方の排出側連結孔19に向けて沈降するようになっており、一方、同様にして導入され、あるいは解砕されて生じた軽いフライアッシュは、気体の流れに乗って、導出側連結孔7に向けて流動する。このため、特別な外力を新たに加える必要がなく、装置の構造が簡略化される。
【0058】
解砕板10が、分級室2内において、導入側連結孔6から導入された分級前のフライアッシュが衝突する位置に配置されている。そのため、導入側連結孔6から導入される当該フライアッシュは、解砕板10に衝突して跳ね返るようになっている。これにより、導入側連結孔6から導入された当該フライアッシュが、分級器2内に導入された直後の高速で直進性の高い気体の流れに乗って、ほとんど分級されないまま、導出側連結孔7を通ってそのまま導出される恐れが少ない。他方、分級器2内に導入された直後の高速で直進性の高い気体の流れに乗って、解砕板10に備えられた衝突板17に当該フライアッシュは衝突するため、当該フライアッシュの解砕が効率よく行える。
【0059】
分級器2内には、解砕板10の下方位置に重いフライアッシュを存在させる排出側空間(沈降撹拌領域24)と、解砕板10のその他の位置で軽いフライアッシュを導出管4へ流動させる流動側空間(水平解砕領域22と目的フライアッシュ導出前領域23(水平連通口25を含む))とが形成されている。
【0060】
これにより、導入側垂直連通口26を通って沈降撹拌領域24に流動した重いフライアッシュを含む気体は、沈降撹拌領域24内で、導入側垂直連通口26側が下方へ、導出側垂直連通口27側が上方へ移動するように回転する。これにより、気体に含まれる重いフライアッシュに遠心力が加わり、重いフライアッシュは、下方の排出側連結孔19に向けて流動しやすく、重いフライアッシュの捕捉効率が向上する。
【0061】
他方、流動側空間(水平解砕領域22及び目的フライアッシュ導出前領域23(水平連通口25を含む))内では、軽いフライアッシュが、水平解砕領域22から水平連通口25を介して目的フライアッシュ導出前領域23に水平流に乗ってスムーズに流動するため、軽いフライアッシュの捕集効率が高まる。
【0062】
解砕板10は、導入側連結孔6に対向する導入側対向面となる衝突板17の面積が、導入側連結孔6および導出側連結孔7の少なくとも一方よりも広く形成されている。これにより、導入側連結孔6から導入される分級前のフライアッシュは、そのほとんどが衝突板17に衝突するため、フライアッシュの解砕効率が高まる。
【0063】
流動側空間(水平連通口25)内を流動する軽いフライアッシュを含む気体の分級器内流動速度が、導入側連結孔6から導入される分級前のフライアッシュを含む気体の導入流動速度の0.5〜2倍となっている。そのため、水平解砕領域22及び目的フライアッシュ導出前領域23内での気体の流れや気圧の変動が低く抑えられるようになる。また、水平解砕領域22及び目的フライアッシュ導出前領域23に接する沈降撹拌領域24内においても、乱流が生じにくく、フライアッシュの分級がよりスムーズに行える。
【0064】
排出側空間の入り口の面積、すなわち、導入側垂直連通口26の面積は、導入側連結孔6の面積よりも広く形成されている。そのため、導入側垂直連通口26を介して水平解砕領域22から沈降撹拌領域24に流入する重いフライアッシュを含んだ気体の流動速度は、導入側連結孔6から導入される分級前のフライアッシュを含む気体の導入流動速度より遅くなる。そのため、沈降撹拌領域24の上部の導入側垂直連通口26近傍で重いフライアッシュ(粗粒子)の分級が開始される。他方、導入側垂直連通口26から遠く離れた沈降撹拌領域24の下部には、気体の流れが生じにくく、重いフライアッシュの沈降が乱されにくくなっている。よって、沈降撹拌領域24の下部では、重いフライアッシュの濃縮、さらには堆積がスムーズに進行する。
【0065】
分級器2の内壁は、側壁部分における導入側連結孔6から導出側連結孔7までの部位が外側へ凸となる円弧状に形成され、解砕板10と当該円弧状の部位の間に流動側空間(水平解砕領域22及び目的フライアッシュ導出前領域23(水平連通口25を含む))が設けられている。そのため、水平解砕領域22では、衝突板17に衝突した後のフライアッシュは、当該円弧状の筐体8の周壁8aや解砕板10とのその後の衝突により、水平解砕領域22の中心に向かって詰まることなくスムーズに流動する。これにより、フライアッシュ同士は衝突し合い、フライアッシュの解砕が促進される。また、フライアッシュの水平解砕領域22に滞留する時間が増加するため、解砕された後のフライアッシュから重いフライアッシュが振り落とされやすくなる。さらに、軽いフライアッシュは、当該円弧状の筐体8の周壁8aに沿うようにして、水平連通口25を介して水平解砕領域22から目的フライアッシュ導出前領域23に流動する。そのため、軽いフライアッシュの流動はスムーズである。
【0066】
分級器2の軸心に垂直な断面積である筐体8の水平断面積は、導入管3の半径方向の断面積の2倍以上であり、且つ導出管4の半径方向の断面積の2倍以上になっている。すなわち、筐体8の水平断面積は、導入側連結孔6及び導出側連結孔7の面積の2倍以上となっている。そのため、沈降撹拌領域24の下部では、気体の流動速度は、導入管3内を流動し導入側連結孔6から導入されるフライアッシュを含む気体の導入流動速度よりかなり小さくなる。これにより、重いフライアッシュや夾雑物ほど沈降撹拌領域24に留まり易くなり、最終的に捕捉すべき重いフライアッシュや夾雑物を選別することが容易になる。
【0067】
解砕板10に備えた衝突板17の正面を分級器2の中心軸周りに角度変更して固定することができる。これにより、導入されたフライアッシュを分級器2の軸の半径方向に角度をつけて跳ね返す流動方向傾斜配置にセッティングすることが可能になる。そのため、当該気体に含まれるフライアッシュに遠心力を加えることができ、重いフライアッシュと軽いフライアッシュの分離を促進することができる。
【0068】
このようにして、目的物である2〜3μmのフライアッシュ粒子を小型コンパクトな分級装置1によって短時間で効率よく取得することができる。この実施例では、重量でフライアッシュ3.5t/hの処理を実現できる。従って、1種相当のフライアッシュを簡単かつ迅速に得られるため、分級処理の効率を高めることができる。
【0069】
また、ダンパー28、29から4種相当のフライアッシュ粒子(2種相当のものも含まれる)を処理量に対して5%ほど排出すれば、1種相当のフライアッシュ粒子を導出管4から導出できるため、効率よく多くの1種相当のフライアッシュ粒子を得ることができる。
【0070】
このようにして得られた1種相当のフライアッシュ粒子は、コンクリート混和剤として好適であり、このフライアッシュ粒子を混和したコンクリートペーストの流動性を向上させることができる。
【0071】
尚、本願発明と実施形態の対応において、
導入部は、導入管3に対応し、
導出部は、導出管4に対応し、
解砕体は、解砕板10に対応し、
排出側空間は、沈降撹拌領域24に対応し、
流動側空間は、水平解砕領域22と目的フライアッシュ導出前領域23(水平連通口25を含む)に対応し、
角度変更固定手段は、蓋体9と蓋体9のボルト挿入孔12aとフランジ部11とフランジ部11のボルト挿入孔12とボルト13とナット14に対応するが、本願発明は本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。
【0072】
例えば、分級装置1は、フライアッシュを自燃温度以上である600℃〜800℃に加熱して未燃カーボンを取り除く加熱改質装置の後段に設置し、改質後のフライアッシュをさらに解砕して分級する構成とすることができる。これにより、加熱改質後の分級を小型コンパクトな分級装置1で実現することができる。
【0073】
また、上述した加熱改質装置の前段に分級装置1を備えることもできる。この場合、分級したフライアッシュを加熱改質装置に投入できるため、例えば夾雑物等を除去した状態で加熱改質を実行して熱効率を高めて処理するといったことができる。
【0074】
また、解砕板本体16の上辺16a(ここでは、解砕板10の上辺10aと同義)を蓋体9から離隔するようにしてもよい。この場合、解砕板本体16の上辺16aを乗り越えて、水平解砕領域22から目的フライアッシュ導出前領域23に流動する気体には、より軽いフライアッシュしか含まれないため、軽いフライアッシュの分級が効率よく行えるようになる。