(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一定の巻回方向に連続導線が巻回されたコイルが、最も近い2つのセグメントに接続され、前記一定の巻回方向とは逆方向に連続導線が巻回されたコイルが、最も近い2つのセグメント以外のセグメントに接続される、請求項1ないし3のいずれかに記載のモータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、
図1の中心軸J1に平行な方向において、シャフトの出力側を単に「上側」、反対側を単に「下側」と呼ぶ。「上側」および「下側」という表現は、必ずしも重力方向と一致する必要はない。また、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」、中心軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。
【0010】
図1は、本発明の例示的な一の実施形態に係るモータ1の縦断面図である。モータ1はブラシ付きモータである。断面の細部については平行斜線を省略している。モータ1は、静止部2と、回転部3と、軸受部4と、を含む。軸受部4は、上下方向を向く中心軸J1を中心に回転部3を静止部2に対して回転可能に支持する。
【0011】
静止部2は、ハウジング21と、界磁用磁石22と、ブラシ群23と、回路基板24と、ブラケット25と、を含む。ハウジング21は、有蓋略円筒状である。ブラケット25は、ハウジング21の下部を閉塞する。界磁用磁石22は、ハウジング21の円筒部の内周面上に配置される。ブラシ群23は、回路基板24上に配置される。
【0012】
回転部3は、シャフト31と、アーマチュアコア32と、複数のコイル33と、コミュテータ34と、を含む。シャフト31は、中心軸J1に沿って延びる。アーマチュアコア32は、薄板状の電磁鋼板が積層されたものである。アーマチュアコア32は、シャフト31に取り付けられる。シャフト31の中心軸、アーマチュアコア32の中心軸および界磁用磁石22の中心軸は、モータ1の中心軸J1に一致する。
【0013】
軸受部4は、2つの軸受要素41,42である。軸受要素41は、ハウジング21に取り付けられる。軸受要素42は、ブラケット25に取り付けられる。軸受要素41,42は、例えば、玉軸受や滑り軸受である。軸受部4は、1つの軸受要素であってもよい。軸受部4により、回転部3は、中心軸J1を中心として回転可能に支持される。
【0014】
図2は、ブラシ群23、回路基板24およびブラケット25を取り外した状態のモータ1を示す底面図である。界磁用磁石22は、複数の磁石要素221にて構成される。界磁用磁石22の中心軸J1側には、周方向に沿ってN極とS極とが交互に配置される。本実施の形態では、4対のN極とS極とが存在し、磁極数は8個である。なお、界磁用磁石22は、環状の部材であってもよい。
【0015】
アーマチュアコア32は、複数のティース321を含む。各ティース321は、径方向外方に向かって放射状に延びる。本実施形態では、ティース321の数は12個である。ティース321と界磁用磁石22とは径方向に対向する。複数のコイル33は、複数のティース321にそれぞれ設けられる。すなわち、アーマチュアコア32では、いわゆる、集中巻きにてコイル33が形成される。ただし、後述するように、1つのコイル33を形成する導線は、連続する1本のものには限定されない。コイル33に電流が流れることにより、回転部3と界磁用磁石22との間に中心軸J1を中心とするトルクが発生する。
【0016】
コミュテータ34は、複数のコイル33に電気的に接続される。コミュテータ34は、セグメント群341を含む。セグメント群341は、周方向に配列された複数のセグメント342からなる。
図1および
図2に示すように、セグメント342は、接触部343と、接続部344と、を含む。接触部343は中心軸J1に平行に延びる。接触部343は、ブラシ群23に接する。接続部344は、接触部343から径方向外方に突出する。
【0017】
接続部344は、コイル33からの導線に接続される。詳細には、コイル33からの導線が接続部344に掛けられた後、加熱融着により導線と接続部344とが電気的に接続される。各コイル33を形成する導線の各端部は、いずれかのセグメント342に接続される。
【0018】
図3は、コイル33、セグメント342およびブラシ群23の位置関係を簡略化して示す図である。
図3では、12個のコイル33に時計回りに番号1ないし12を付す。24個のセグメント342に番号1ないし24を付す。コイル33の周方向の位置はティース321の周方向の位置に一致する。コイル33の中心軸は径方向に延び、セグメント342間の境界と一致する。具体的には、1番コイル33の中心軸は、1番セグメント342と2番セグメント342との間の境界に重なる。2番コイル33の中心軸は、3番セグメント342と4番セグメント342との間の境界に重なる。
【0019】
本実施の形態では、ブラシ群23は、1つの第1ブラシ231と、1つの第2ブラシ232とから構成される。
図1に示すように、第1ブラシ231は、弾性部233によりセグメント342に向かって押圧される。第2ブラシ232も同様である。
図3に示す状態では、1番コイル33の周方向の位置は、第1ブラシ231の周方向の位置と一致する。この状態では、第1ブラシ231は、1番セグメント342および2番セグメント342に接する。第2ブラシ232の周方向の位置は、5番コイル33と6番コイル33との間の中間位置と一致する。第2ブラシ232は、10番セグメント342および11番セグメント342に接する。
【0020】
第1ブラシ231および第2ブラシ232は、回路基板24を介して電源の正極および負極にそれぞれ接続される。第1ブラシ231の電位は所定の第1の電位であり、セグメント342に第1の電位を与える。第2ブラシ232の電位は、第1の電位とは異なる第2の電位であり、異なるセグメント342に第2の電位を与える。第1ブラシ231と第2ブラシ232との周方向の間隔は、磁極のピッチの奇数倍である。
図3では、第1ブラシ231と第2ブラシ232とは、周方向において135°離れる。本実施の形態では、135°は、磁極のピッチの3倍である。
【0021】
なお、ブラシ群23には、他の第1ブラシ231および第2ブラシ232が含まれてもよい。この場合、複数の第1ブラシ231の周方向の間隔は、磁極のピッチの偶数倍である。複数の第2ブラシ232に関しても同様である。さらに、ブラシ群23には、第1および第2の電位と異なる電位をセグメント342に与える第3ブラシが設けられてもよい。例えば、第1ブラシ231と第3ブラシとが切り替えられることにより、モータ1の出力トルクが変更される。このように、ブラシ群23は、少なくとも1つの第1の電位のブラシと少なくとも1つの第2の電位のブラシとを含む。
【0022】
図4は、コイル33とセグメント342との接続構造を示す図である。数字を囲む丸はセグメント342を示す。数字を囲む四角はコイル33またはティース321を示す。セグメント342間の数字は、導線が渡されるティース321の番号を示す。コイル33の右に示される「CW」は、径方向外側から見て時計回りに導線がティース321に巻回されることを示す。「CCW」は、径方向外側から見て反時計回りに導線がティース321に巻回されることを示す。以下、コイル33とセグメント342との接続構造を「巻線構造」と呼ぶ。
【0023】
図4では、巻線構造を4段にて示しているが、破線にて示すように、これらは順に1本の導線にて連続している。
図5.Aは、
図4の最上段における巻線の様子を示す。
図5.Bは、
図4の最下段における巻線の様子を示す。
図5.Aおよび
図5.Bにおける丸および四角は、
図4と同様に、セグメント342、および、コイル33またはティース321を示す。
【0024】
具体的には、導線は、1番セグメント342に掛けられた後、1,2,3番ティース321の根元を渡って7番セグメント342に掛けられる。ティース321の根元とは、ティース321の径方向内側に存在する環状のコアバック側の部位である。導線がセグメント342に掛けられる際には、例えば、導線は接続部344に1周だけ巻回される。次に、導線は、7番セグメント342から5,6,7番ティース321の根元を渡って13番セグメント342に掛けられる。次に、導線は、13番セグメント342から7,8,9番ティース321の根元を渡って19番セグメント342に掛けられる。次に、導線は、19番セグメント342から11,12,1番ティース321の根元を渡って1番セグメント342に掛けられる。1,7,13,19番セグメント342に導線を掛けることにより、1,7,13,19番セグメント342は同じ電位となる。
【0025】
1番セグメント342からは、導線は、1番ティース321に時計回りに巻回され、1番コイル33が形成される。導線は、1番コイル33から2番セグメント342に掛けられる。次に、導線は、2番セグメント342から1,2,3番ティース321の根元を渡って8番セグメント342に掛けられる。以後、
図4に示すように、導線のセグメント342への引っ掛けおよびティース321への巻回が繰り返し行われ、12個のコイル33が形成される。最後に、導線は、7番セグメント342に掛けられる。
【0026】
図6は、セグメント群341における電位の分布を示す図である。第1ブラシ231に接するセグメント342の電位は、第1ブラシ231と同様の第1の電位である。第2ブラシ232に接するセグメント342の電位は、第2ブラシ232と同様の第2の電位である。ここで、第1の電位は、第2の電位よりも高いものとする。
【0027】
図6では、各セグメント342の電位の高低を、平行斜線の密度により表現している。
図6の第1ブラシ231に接するセグメント342から周方向に90°間隔で存在するセグメント342の電位は、第1の電位である。第2ブラシ232に接するセグメント342から周方向に90°間隔で存在するセグメント342の電位は、第2の電位である。周方向に沿って見た場合、機械角90°の周期でセグメント342の電位は第1の電位と第2の電位との間で漸次変動する。90°は界磁用磁石22における磁極対の角度ピッチであり、電気角360°に対応する。
【0028】
一般的に表現するために、界磁用磁石22の磁極の数を2n、コイル33の数をm・n、セグメント342の数を2m・nとする。すなわち、磁極対の数をn(nは2以上の自然数)、相数をm(mは3以上の奇数)とすると、ブラシ群23がコミュテータ34に接することにより、セグメント群341において、周方向に関して、2mセグメント(=(2m・n)/n)の周期にて、電位が、第1の電位と第2の電位との間で増減する。第1の電位のセグメント342と、これに最も近い第2の電位のセグメント342との間には、(m−1)個のセグメント342が存在する。
図6の場合、nは4であり、mは3である。
【0029】
また、このような電位分布を実現するために、第1の電位のセグメント342と第2の電位のセグメント342との間において、セグメント342を介しつつコイル33が直列に接続される。コイル33間のセグメント342の数は少なくとも1つであり、直列に接続されるコイル33の数は、mである。
図4に示すように、隣接するコイル33には、互いに反対方向に導線が巻回される。
【0030】
周方向において電位が漸次変化することにより、セグメントの数とコイルの数とが等しい場合に比べて、セグメント342間における電位の差が小さくなる。その結果、ブラシとセグメントとの間に生じるスパークが小さくなり、ブラシの摩耗を低減してブラシの寿命を向上することができる。一方、従来、セグメントの数をコイルの数の2倍にするために、各ティースに時計回りおよび反時計回りに導線を巻回していたが、モータ1では、各ティース321には一方向のみに導線が巻回される。これにより、巻線工程を簡素化することができ、巻線に要する時間を削減することができる。その結果、モータ1の製造コストを削減することができる。
【0031】
次に、セグメント数がコイル数の2倍であり、かつ、巻線工程を簡素化することができる巻線構造の原理について説明する。説明を簡素化するために、4ポール6スロットの場合について説明する。以下の説明において、上記説明と同様の構成要素には同符号を付す。
【0032】
図7は、4ポール6スロットの場合のコイル33、セグメント342およびブラシ群23の位置関係を簡略化して示す図であり、
図3に対応する。セグメント342の数は12である。第1ブラシ231と第2ブラシ232とは、周方向に90°ずれて配置される。
図8は、4ポール6スロットの場合の巻線構造を示す図であり、
図4と同様に表現している。
図9は、
図8の最上段における巻線の様子を示す。
【0033】
図10は、セグメント群341における電位の分布を示す。セグメント群341では、180°の周期にて、電位が、第1の電位と第2の電位との間で変化する。上述の説明におけるnは2であり、mは3である。
【0034】
図11は、特開2008−113485号公報に開示される、4ポール6スロットの場合の巻線構造を示す図である。
図11においても丸はセグメントを示し、四角はコイルを示す。ただし、1つのティースに時計回りに導線が巻回された1/2個のコイルと、反時計回りに導線が巻回された1/2個のコイルとが配置されるため、時計回りのコイルの番号に「a」を追記し、反時計回りのコイルの番号に「b」を追記している。以下の説明では、1/2個のコイルを「半コイル」とも呼ぶ。
【0035】
図11に示す巻線構造は、
図12に示すように、一列に繋げることができる。ここで、“4a”の半コイルや“1b”の半コイル等は、
図13に示すように、巻線方向を変えてさらに電気角で360°移動しても同様に機能する。これは、“1a”の半コイルと“4a”の半コイルとが電気角で360°ずれた位置に配置され、“1a”の半コイルと“4a”の半コイルとで発生するトルクは同等と扱うことができることを発見したためである。これにより、第1ブラシ231に接するセグメント342が、1番セグメントから2番セグメントに切り替わることが、1番コイルにおける励磁の切り替えのみに利用される。同時に、第2ブラシ232に接するセグメント342が、4番セグメントから5番セグメントに切り替わることが、4番コイルにおける励磁の切り替えのみに利用される。その結果、
図9に示す巻線構造が導かれる。
【0036】
この点を、特開2008−113485号公報に開示される従来の巻線構造(以下、「第1従来巻線構造」という。)と比較すると、第1従来巻線構造では、第1ブラシにおける1番セグメントから2番セグメントへのスイッチングを、第1ブラシの位置を基準として電気角0°に位置する1番コイルの半分と、電気角360°に位置する4番コイルの半分とにおける励磁の切り替えに利用し、第1ブラシからみて電気角180°に位置する第2ブラシにおける4番セグメントから5番セグメントへのスイッチングを、電気角0°に位置する1番コイルの残りの半分と、電気角360°に位置する4番コイルの残りの半分とにおける励磁の切り替えに利用している。
【0037】
なお、第1ブラシは、電気角360°の位置にあっても同様に機能し、第2ブラシは電気角540°の位置にあっても同様に機能する。そのため、磁極対数をn(nは2以上の自然数)とし、iを0以上(n−1)以下の少なくとも1つの整数として、第1ブラシの位置は、電気角(360・i)°と表現することができ、jを0以上(n−1)以下の少なくとも1つの整数として、第2ブラシの位置は、電気角(360・j+180)°と表現することができる。
【0038】
そして、pを0以上(n−1)以下の整数として、第1従来巻線構造では、電気角(360・p)°に位置するコイルの励磁の切り替えは、いずれかの第1ブラシとセグメントによるスイッチングと、いずれかの第2ブラシとセグメントによるスイッチングとを均等に利用している、といえる。同様に、qを0以上(n−1)以下の整数として、電気角(360・q+180)°に位置するコイルの励磁の切り替えも、いずれかの第1ブラシとセグメントによるスイッチングと、いずれかの第2ブラシとセグメントによるスイッチングとを均等に利用する。
【0039】
これに対し、モータ1では、電気角(360・p)°に位置するコイル33の励磁の切替は、少なくとも1つの第1ブラシ231および少なくとも1つの第2ブラシ232のうちのいずれか1つのブラシ(例えば、1つの第1ブラシ231)とセグメント342によるスイッチングのみを利用している、と表現することができる。同様に、電気角(360・q+180)°に位置するコイル33の励磁の切替も、少なくとも1つの第1ブラシ231および少なくとも1つの第2ブラシ232のうちのいずれか1つのブラシ(例えば、1つの第2ブラシ232)とセグメント342によるスイッチングのみを利用する。
【0040】
上記第1従来巻線構造およびモータ1の巻線構造を、セグメントの数がコイルの数に等しいさらに従来の一般的なモータの巻線構造(以下、「第2従来巻線構造」という。)を参照して別の表現にて説明すると次のようになる。
【0041】
第2従来巻線構造では、第1ブラシに接触するセグメントの切り替えと、第2ブラシに接触するセグメントの切り替えとが、交互に生じる。接触セグメントの切り替えは、コイルの中心、すなわち、ティースの中心がブラシを通過する際に生じる。
【0042】
第1従来巻線構造では、第2従来巻線構造から、セグメントの数を2倍に増やし、ブラシがコイル間の中心、すなわち、スロットの中心と通過する際の接触ブラシの切り替えを、電気角で(±180)°ずれた位置の2つのコイルの半分に利用することにより、スパークの発生の低減を実現している。このため、第1従来巻線構造では、1つのティースに正逆双方の巻線を行う必要がある。
【0043】
これに対し、モータ1の巻線構造では、スロットの中心と通過する際の接触ブラシの切り替えを、電気角で(+180)°または(−180)°ずれた位置、より一般的には、qを0以上(n−1)以下の整数として、電気角(360・q+180)°に位置する1つのコイルのみで利用することにより、1つのティースに一方向のみの巻線を行うことが実現される。その結果、セグメントの数をコイルの数の2倍としてスパークを低減しつつ、巻線工程が簡素化される。
【0044】
さらに換言すれば、モータ1の巻線構造では、p,qを0以上(n−1)以下の整数として、第1従来巻線構造において、電気角(360・p)°のコイルの半分と、電気角(360・q+180)°のコイルの半分とを入れ替えた構造となっている。そのため、モータ1の巻線構造では、電気角(360・p)°のティース321では時計回りのみに導線が巻回され、電気角(360・q+180)°のティース321では反時計回りのみに導線が巻回される。
【0045】
次に、モータ1の巻線構造の原理を、6ポール9スロットのモータに適用した場合について説明する。
図14は、6ポール9スロットの場合の巻線構造を示す図であり、
図8と同様に表現している。セグメント342の数は18である。この場合、上記説明におけるmは3であり、nは3である。第1ブラシ231と第2ブラシ232とは、周方向に60°の奇数倍だけ離れる。
図14に示すように、6ポール9スロットの場合、一部のティース321には、第1従来巻線構造と同様に、時計回りおよび反時計回りに導線が巻回される。
図15.Aおよび
図15.Bは、
図14の最上段および最下段の一部における巻線の様子を示す図である。
【0046】
図16は、特開2008−113485号公報に開示される、6ポール9スロットの場合の巻線構造を示す図であり、
図11に対応する。
図16においても、
図17に示すように、巻線を一列に繋げることができる。ここで、3つの半コイルが直列に接続される。“7a”の半コイルや“1b”の半コイル等は、巻線方向を変えて電気角で360°移動しても同様に機能する。ただし、3つの半コイルのうち、1つの半コイルは残ってしまうため、この半コイルを独立してセグメントに挟まれるように移動することにより、
図18に示す接続が得られる。その結果、
図14に示す巻線構造が得られる。
【0047】
上記手法による巻線構造の変換では、3つのティース321において半コイルが残ってしまうが、モータの回転は可能である。より一般的には、mが3であり、nが偶数の場合は、全てのティース321に時計回りまたは反時計回りのうちの一方向に導線が巻回されたコイル33を設けることができるが、mが3であり、nが奇数の場合は、少なくとも3つのティース321にて互いに逆向きに導線を巻回した一対の半コイルが設けられる。なお、セグメント342とコイル33との接続関係は様々に変更可能であることから、半コイルが配置されるティース321は必ずしも周方向に連続して並ぶ必要はない。
【0048】
上記説明ではmは3であるが、mが3以上の奇数であり、nが2以上の偶数の場合、全てのティース321に一方向に導線を巻回することができる。この場合、時計回り導線が巻回されたコイル33と反時計回りに導線が巻回されたコイル33とが周方向に交互に配置される。nが2以上の奇数の場合、mの奇数倍個のティース321に一対の半コイルが配置され、残りのティース321には一方向に導線を巻回したコイルが配置される。1本の導線にて形成されるコイルのみが存在する場合と、1本の導線にて形成されるコイルと2本の導線にて形成されるコイルとが混在する場合とがあるため、モータでは、各コイル33を形成する少なくとも1本の導線の各端部は、いずれかのセグメント342に接続される。
【0049】
さらに一般的に表現すれば、m・n個のティース321のうちk個のティース321のぞれぞれに、一定の巻回方向に連続導線が巻回されたコイル33のみが配置され、当該k個のティース321のそれぞれから、電気角で360・i度(iは(n―1)以下の自然数)離れた位置に配置されるティース321に、逆方向に連続導線が巻回されたコイル33のみが配置される。ただし、kは、(m・n/2)以下の自然数である。そして、上記説明において全てのティース321に導線が時計回りまたは反時計回りのいずれか一方向に巻回される場合は、2kがnである、すなわち、極数が4の倍数である場合に対応する。m個のティース321のみに一対の半コイルが配置される場合は、2kが(n−1)である場合に対応する。半コイルの数が少ないほど、容易に巻線を行うことができる。
【0050】
ここで、コイル33の導線は、最も近いセグメント342に接続されることが好ましい。第1ブラシ231の位置におけるセグメント342の切り替えにより第1ブラシ231の位置を通過するコイル33のスイッチングを行うには、時計回りまたは反時計回りのいずれか一方向に連続導線が巻回されたコイル33が、最も近い2つのセグメント342に接続されることが好ましい。この場合、逆方向に連続導線が巻回されたコイル33は、最も近い2つのセグメント342以外のセグメント342に接続される。
【0051】
上記実施の形態では、複数のコイル33の全体が、1本の導線により形成される。また、ブラシ群23に含まれる第1の電位の第1ブラシ231の数が1であり、第2の電位の第2ブラシ232の数が1である。これにより、モータ1の構造が最も簡素化される。もちろん、巻線構造において複数の導線が用いられてもよい。この場合、導線がセグメント342間を渡ることをある程度省き、複数の第1ブラシ231または複数の第2ブラシ232が設けられてもよい。例えば、電気角360°毎に第1ブラシ231が設けられ、各第1ブラシ231から電気角180°だけずれた位置に第2ブラシ232が設けられてもよい。
【0052】
時計回りのコイルと反時計周りのコイルとは周方向に交互に配置される必要はない。例えば、電気角で360°ずれた位置のコイル同士を適宜入れ替えてよい。さらには、周方向のある位置に時計回りのコイルをまとめて配置し、他の位置に反時計回りのコイルをまとめて配置してもよい。
【0053】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。