(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、前記基板の上方に位置する薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタの上方に位置する層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上方に位置する画素電極と、前記層間絶縁膜の上方に位置し、前記画素電極と離間した補助配線と、前記層間絶縁膜の上方に位置し、前記画素電極の上方および前記補助配線の上方のそれぞれに開口部を有する隔壁層と、前記画素電極上方の開口部内に位置する有機発光層と、前記画素電極上方の開口部内にて前記画素電極と対向し、前記有機発光層を介して前記画素電極と電気的に接続されるとともに、前記補助配線上方の開口部内にて前記補助配線と対向し、前記補助配線と電気的に接続される共通電極と、を備え、前記層間絶縁膜は、前記補助配線が上方に位置する領域内に少なくとも一組の凹下部と非凹下部とを有し、前記凹下部の上面が前記非凹下部の上面に対して凹下しており、前記補助配線は、前記凹下部上の部分と前記非凹下部上の部分とを有し、前記凹下部上の部分の上面が前記非凹下部上の部分の上面に対して凹下している。
【0012】
上記構成によれば、層間絶縁膜に凹下部と非凹下部が設けられ、それに伴い、補助配線にも凹下部上の部分と非凹下部上の部分とが設けられる。このように補助配線に凹下部上の部分と非凹下部上の部分とを設けることで、共通電極における補助配線に電気的に接続される領域の面積を広げることができる。したがって、共通電極と補助配線とのコンタクト抵抗を低減することができ、これにより、パネル中央部の電圧降下のさらなる低減を図ることができる。
【0013】
また、前記凹下部の上面の全域に、前記層間絶縁膜を構成する絶縁性材料が露出していることとしてもよい。即ち、層間絶縁膜の凹下部は、層間絶縁膜の上面から下面まで貫通する貫通孔ではない。これにより、補助配線の電気的な絶縁性を確保しつつ、補助配線に凹下部上の部分と非凹下部上の部分とを設けることができる。
【0014】
また、前記層間絶縁膜は、前記薄膜トランジスタの上方に位置するパッシベーション膜と、前記パッシベーション膜の上方に位置する平坦化膜と、を含み、前記凹下部の上面が、前記平坦化膜内に位置する、または、前記パッシベーション膜と前記平坦化膜との境界に位置する。これにより、補助配線の電気的な絶縁性を確保しつつ、補助配線に凹下部上の部分と非凹下部上の部分とを設けることができる。
【0015】
また、さらに、前記基板の上方に位置する、前記薄膜トランジスタの動作を制御する走査信号を伝達するための走査線を備え、前記層間絶縁膜の前記補助配線が上方に位置する領域は、平面視で前記走査線と重なる領域と重ならない領域とを有し、前記層間絶縁膜の凹下部は、前記補助配線が上方に位置する領域内の前記走査線と重ならない領域に位置し、前記走査線と重なる領域には位置しないこととしてもよい。
【0016】
走査線に入力される信号の遅延を少なくする観点からは、走査線の寄生容量はできるだけ小さいことが望ましい。上記構成によれば、層間絶縁膜の凹下部は、平面視で走査線と重なる領域には形成されないので、補助配線と走査線との距離をある程度確保することができる。したがって、走査線の寄生容量を小さくすることができ、その結果、走査線により伝達される走査信号の遅延を少なくすることができる。
【0017】
また、前記層間絶縁膜の前記走査線と重なる領域の上面が平坦であることとしてもよい。
【0018】
また、前記走査線は、平面視で前記補助配線と交差していることとしてもよい。
【0019】
また、さらに、前記基板の上方に位置する、前記薄膜トランジスタに電源電圧を印加するための電源配線を備え、前記層間絶縁膜の前記凹下部は、平面視で前記電源配線と重なる領域に位置し、前記補助配線の前記凹下部上の部分は、前記層間絶縁膜を構成する絶縁性材料を挟んで前記電源配線の上方に位置していることとしてもよい。
【0020】
また、前記補助配線の前記凹下部上の部分と前記共通電極との間に、前記有機発光層と同一の材料が介挿されていることとしてもよい。
【0021】
また、前記層間絶縁膜の凹下部は、前記補助配線に沿う第1の溝部と、前記第1の溝部の少なくとも一部と交差する第2の溝部とからなり、前記第2の溝部の幅は、前記第1の溝部の幅よりも広いこととしてもよい。
【0022】
また、前記層間絶縁膜の凹下部は、前記補助配線に沿う第1の溝部と、前記第1の溝部の少なくとも一部と交差する第2の溝部とからなり、前記第2の溝部の深さは、前記第1の溝部の深さよりも深いこととしてもよい。
【0023】
また、さらに、前記画素電極上方の開口部内にて前記有機発光層と接するとともに、前記補助配線上方の開口部内にて前記補助配線と接する機能層を備え、前記共通電極は、前記補助配線上方の開口部内にて前記機能層に接していることとしてもよい。
【0024】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板を用意する第1工程と、前記基板の上方に薄膜トランジスタを形成する第2工程と、前記薄膜トランジスタの上方に層間絶縁膜を形成する第3工程と、前記層間絶縁膜の上方に、画素電極と前記画素電極と離間する補助配線とを形成する第4工程と、前記層間絶縁膜の上方に、前記画素電極の上方および前記補助配線の上方のそれぞれに開口部を有する隔壁層を形成する第5工程と、前記画素電極上方の開口部内に有機発光層を形成する第6工程と、前記画素電極上方の開口部内にて前記画素電極と対向し、前記有機発光層を介して前記画素電極と電気的に接続されるとともに、前記補助配線上方の開口部内にて前記補助配線と対向し、前記補助配線と電気的に接続される共通電極を形成する第7工程と、を含み、前記第3工程において形成された前記層間絶縁膜は、前記補助配線が上方に形成される領域内に少なくとも一組の凹下部と非凹下部とを有し、前記凹下部の上面が前記非凹下部の上面に対して凹下しており、前記第4工程において形成された前記補助配線は、前記凹下部上の部分と前記非凹下部上の部分とを有し、前記凹下部上の部分の上面が前記非凹下部上の部分の上面に対して凹下している。
【0025】
本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
[実施の形態1]
<全体構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示パネルの構造を示す部分断面図である。同図では3画素分が示されている。
【0027】
有機EL表示パネルは、基板1、電源配線2、薄膜トランジスタ(TFT)3、層間絶縁膜4、画素電極5、補助配線6、正孔注入層7、隔壁層8、正孔輸送層9、有機発光層10、電子輸送層11、共通電極12および封止層13を備える。
【0028】
基板1は、ガラスまたは樹脂などの絶縁性材料からなる。
【0029】
電源配線2は、基板1の上方に位置している。電源配線2の材料としては、導電性があれば良く、公知の配線材料を用いることができる。
【0030】
TFT3は、基板1の上方に位置している。A部の拡大図に示すように、TFT3は、ゲート電極31、ゲート絶縁膜32、半導体層33、ドレイン電極34、ソース電極35を含む。TFT3の構造はこれに限らず、別の構造であってもよい。
【0031】
層間絶縁膜4は、TFT3の上方に位置している。同図には現れていないが、層間絶縁膜4は、画素毎に画素電極5とTFT3とを電気的に接続するためのコンタクトホールを有している。なお、本実施の形態では、層間絶縁膜4は、パッシベーション膜41および平坦化膜42からなる。パッシベーション膜41は、電源配線2およびTFT3を被覆することにより、電源配線2およびTFT3を保護するために設けられている。また、平坦化膜42は、パッシベーション膜の上方に位置し、画素電極5の下地を平坦化するために設けられている。パッシベーション膜41および平坦化膜42の材料としては、絶縁性があれば良く、公知の無機材料または有機材料を用いることができる。本実施の形態では、平坦化膜42の材料として感光性樹脂を採用した場合で説明する。
【0032】
画素電極5は、層間絶縁膜4の上方に位置している。画素電極5は、画素毎に個別に設けられる。画素電極5の材料としては、導電性があれば良く、また、トップエミッション型の場合には光反射性があれば良い。このような材料として、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金などが挙げられる。
【0033】
補助配線6は、層間絶縁膜4の上方において画素電極5から離間して位置している。補助配線6の材料としては、導電性があれば良い。なお、画素電極5と同じ工程で形成する場合には、必然的に画素電極5と同じ材料となる。
【0034】
正孔注入層7は、画素電極5から供給される正孔を有機発光層10に注入する機能を有する。正孔注入層7の材料としては、例えば、タングステン酸化物やモリブデン酸化物などの遷移金属酸化物が挙げられる。なお、正孔注入層7は、画素電極5上に存在すればよく、補助配線6上に存在する必要はない。ただし、本実施の形態では、製造プロセスの簡略化の観点から、正孔注入層7が層間絶縁膜4の上方の全体を覆うように形成されている。その結果、正孔注入層7は、補助配線6の上方にも存在している。
【0035】
隔壁層8は、層間絶縁膜4の上方に位置し、画素電極5の上方と補助配線6の上方のそれぞれに開口部を有している。隔壁層8の材料としては、絶縁性があれば良く、公知の無機材料または有機材料を用いることができる。本実施の形態では、隔壁層8の材料として感光性樹脂を採用した場合で説明する。
【0036】
正孔輸送層9は、隔壁層8の画素電極上方の開口部内に形成されている。正孔輸送層9の材料としては公知の材料を利用することができる。例えば、特開平5−163488号に記載のトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体を用いることができる。特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることができる。
【0037】
有機発光層10は、隔壁層8の画素電極上方の開口部内において正孔輸送層9上に形成されている。有機発光層10は、正孔と電子の再結合によりR、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。有機発光層10の材料としては公知の材料を利用することができる。例えば、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2−ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体等の蛍光物質を用いることができる。
【0038】
電子輸送層11は、画素電極上方の開口部内にて画素電極5と対向し、補助配線上方の開口部内にて補助配線6に対向している。共通電極12から供給される電子を有機発光層10に輸送する機能を有する。
電子輸送層11の材料としては公知の材料を利用することができる。例えば、特開平5−163488号公報に記載のニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体を用いることができる。なお、電子注入性を更に向上させる点から、上記材料に、Na、Ba、Caなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属をドーピングしてもよい。なお、電子輸送層11は、画素電極上方の開口部内に存在すればよく、補助配線上方の開口部内に存在する必要はない。ただし、本実施の形態では、製造プロセスの簡略化の観点から、電子輸送層11が隔壁層8の上方の全体を覆うように形成されている。その結果、電子輸送層11は、補助配線6の上方にも存在している。
【0039】
共通電極12は、画素電極上方の開口部内にて画素電極5に対向し、電子輸送層11、有機発光層10、正孔輸送層9および正孔注入層7を介して画素電極5に電気的に接続され、補助配線上方の開口部内にて補助配線6に対向し、電子輸送層11および正孔注入層7を介して補助配線6に電気的に接続されている。具体的には、共通電極12は、画素電極上方の開口部内に位置する第1部分と、補助電極上方の開口部内に位置する第2部分と、隔壁層8の上方に位置する第3部分とを含む。第1部分と第2部分とが第3部分により連結されている。共通電極12の材料としては、導電性があれば良く、また、トップエミッション型の場合には光透過性があれば良い。光透過性を確保するには、ITO、IZO、ZnO等の透明導電材料を採用するか、あるいは、10nm乃至20nmの薄膜のAg、Au、Al等の金属材料を採用することが考えられる。
【0040】
封止層13は、有機発光層10に水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。封止層13の材料としては窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、アルミナなどの公知の材料を利用することができる。
【0041】
本実施形態では、有機EL素子が、画素電極5、正孔注入層7、正孔輸送層9、有機発光層10、電子輸送層11および共通電極12から構成されている。そして、1つの画素が1つの有機EL素子と1つの画素回路を備える。
図2に、画素回路の一例を示す。
【0042】
画素回路30は、p型のTFT3a、3bとキャパシタとを含む。TFT3aのソースはデータ線36に接続され、TFT3aのドレインはTFT3bのゲートに接続され、TFT3aのゲートは走査線14に接続されている。また、TFT3bのソースは電源配線2に接続され、TFT3bのドレインは有機EL素子のアノード(画素電極)に接続され、TFT3bのゲートはTFT3aのドレインに接続されている。キャパシタは、TFT3bのソースとゲートとの間に接続されている。また、有機EL素子のカソード(共通電極)は補助配線6に接続されている。電源配線2は、TFT3bのソースに電源電圧を印加するための配線である。補助配線6は、有機EL素子のカソードにグラウンド電圧を印加するための配線である。走査線14は、TFT3aの動作を制御する走査信号を伝達するための配線である。データ線36は、TFT3bの動作を制御するデータ信号を伝達するための配線である。
【0043】
電源配線2、補助配線6およびデータ線36は、有機EL表示パネルの列方向に沿って延在している。また、走査線14は、有機EL表示パネルの行方向に沿って延在している。そして、電源配線2は、パネル周縁部において外部電源の電源端子に電気的に接続されている。補助配線6は、パネル周縁部において外部電源のグラウンド端子に電気的に接続されている。また、データ線36および走査線14は、パネル周縁部において外部の駆動回路に電気的に接続されている。
【0044】
<補助配線の詳細>
本実施の形態は、補助配線の形状に特徴を有する。以下、補助配線の形状について詳細に説明する。
【0045】
図3は、画素電極、補助配線、隔壁層および走査線のレイアウトを示す平面図である。同図のA−A断面図が
図1に相当する。画素電極5は、それぞれ矩形状であり、互いに離間して行列状に配置されている。補助配線6は、列方向に沿ってストライプ状に配置されている。隔壁層8は、画素電極5の上方に開口部8aを有し、補助配線6の上方に開口部8bを有している。走査線14は、行方向に沿って配置されている。即ち、補助配線6と走査線14は平面視で直交していることになる。
【0046】
補助配線6は、溝状の凹下部6aと非凹下部6bとを有する。凹下部6aの長手方向の長さは、1画素の列方向の長さよりも短く、且つ、凹下部6aの数量は、1行に対して1個である。補助配線6の凹下部6aと非凹下部6bについては、
図4の有機EL表示パネルの部分的な斜視断面図を見ると分かりやすい。凹下部6aは、非凹下部6bに対して凹下していることが分かる。
【0047】
図5(a)は、
図3のA−A断面図の一部であり、
図5(b)は、
図3のB−B断面図である。層間絶縁膜4に凹下部4aと非凹下部4bが形成されており、それに伴い、補助配線6に凹下部6aと非凹下部6bとが形成されている。そして、正孔注入層7、電子輸送層11および共通電極12が補助配線6の凹下部6aの形状に沿って凹下している。通常、層間絶縁膜4の厚みは数μm程度なので、非凹下部4bに対する凹下部4aの深さも数μm程度に設定することができる。これに対して、補助配線6の厚みは数100nm程度なので、層間絶縁膜4の凹下部4aの形状が補助配線6の凹下部6aの形状に反映される。また、正孔注入層7の厚みは数10nm程度、電子輸送層11の厚みは数10nm程度と非常に薄いのでこれらの厚みはほとんど無視することができる。そのため、補助配線6の凹下部6aに沿って共通電極12が凹下することとなり、共通電極12における補助配線6に電気的に接続される領域の面積(コンタクト面積)を広げることができる。なお、電気的に接続される面積が広がる量は、概ね、凹下部6aと非凹下部6bとで形成される段差の側面の面積に相当する。以上より、共通電極12と補助配線6とのコンタクト抵抗を低減することができ、これにより、パネル中央部の電圧降下のさらなる低減を図ることができる。
【0048】
なお、層間絶縁膜4の凹下部4aの深さは、平坦化膜42を貫通しない程度に設定されている。そのため、凹下部4aの上面の全域に平坦化膜42を構成する絶縁性材料が露出していることになる。即ち、層間絶縁膜4の凹下部4aは、層間絶縁膜4の上面から下面まで貫通する貫通孔ではない。従って、補助配線6と電源配線2は、いずれも列方向に延在し、且つ、平面視で互いに重なる位置に存在しているが、これらの電気的な絶縁性を確保することができる。
【0049】
また、
図3に示すように、補助配線6の凹下部6aは、平面視で走査線14に重なる領域には形成されておらず、平面視で走査線14に重ならない領域に形成されている。即ち、補助配線6の平面視で走査線14に重なる領域の上面が平坦である。これにより、
図5(b)に示すように、補助配線6と走査線14との距離をある程度確保することができる。したがって、走査線14の寄生容量を小さくすることができ、その結果、走査線14に伝達される走査信号の遅延を少なくすることができる。
【0050】
<製造方法>
図6乃至
図8は、
図1の有機EL表示パネルの製造工程を説明するための断面図である。
【0051】
まず、基板1の上方に電源配線2およびTFT3を形成する。さらに、基板1の上方に電源配線2およびTFT3を被覆するパッシベーション膜41を形成する(
図6(a))。
【0052】
次に、平坦化膜42を形成するための平坦化材料層42cを積層する(
図6(b))。
【0053】
次に、フォトマスクを介して平坦化材料層42cを露光し、その後、現像することにより、凹下部4aと非凹下部4bとを有する平坦化膜42を形成する(
図6(c))。なお、この工程は、平坦化膜42に画素電極5とTFT3とを電気的に接続するためのコンタクトホールを形成する工程と同じ工程で行うことができる。ここで、非凹下部4bに対する凹下部4aの深さは、フォトマスクの光透過率を変えることで調整可能である。例えば、露光領域が現像により除去され非露光領域が残留する材料の場合、凹下部4aを形成しようとする領域を露光することになる。このとき、ハーフトーンマスクを採用することにより、凹下部4aを形成しようとする領域の露光量を調整することができる。これにより、凹下部4aの深さを調整することができる。
【0054】
次に、平坦化膜42の上方に画素電極5および補助配線6を形成するための導電層5cを積層し(
図6(d))、導電層5cをエッチングすることにより、画素電極5と補助配線6を形成する(
図7(a))。補助配線6の厚みは、層間絶縁膜4の凹下部4aの深さに対して薄いので、凹下部4aの形状が補助配線6の凹下部6aの形状に反映される。
【0055】
次に、画素電極5と補助配線6が形成された層間絶縁膜4の上方に正孔注入層7を積層し(
図7(b))、正孔注入層7の上方に隔壁層8を形成するための隔壁材料層8cを積層する(
図7(c))。
【0056】
次に、フォトマスクを介して隔壁材料層8cを露光し、その後、現像することにより、画素電極5上方に開口部8aを有し補助配線6上方に開口部8bを有する隔壁層8を形成する(
図7(d))。
【0057】
次に、隔壁層8の開口部8a内に、正孔輸送層9および有機発光層10を積層し(
図8(a))、隔壁層8の上方の全域を覆うように電子輸送層11を積層し(
図8(b))、さらに、電子輸送層11の上方に共通電極12を積層する(
図8(c))。
【0058】
最後に、共通電極12の上方に封止層13を積層して、有機EL表示パネルが完成する(
図8(d))。
【0059】
[実施の形態2]
実施の形態2では、補助配線6の凹下部6aの形状が実施の形態1と異なる。これ以外の事項については実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0060】
図9は、本発明の実施の形態2に係る有機EL表示パネルにおける、画素電極、補助配線、隔壁層および走査線のレイアウトを示す平面図である。本実施の形態では、補助配線6の凹下部6aが補助配線に沿う第1の溝部6a1とこれに直交する第2の溝部6a2とからなる。第2の溝部6a2の幅W2は、第1の溝部6a1の幅W1よりも広い。また、第2の溝部6a2の幅W3は、第1の溝部6a1の幅W1よりも長い。
図10(a)は、
図9のA1−A1断面図であり、
図10(b)は、
図9のA2−A2断面図である。第1の溝部6a1の深さと第2の溝部6a2の深さは同じである。
【0061】
本実施の形態では補助配線6の凹下部6aの形状の工夫により、隔壁層8を形成する工程において、凹下部6aに残留する隔壁材料層8cの残渣量を低減することができる。以下、この効果について説明する。
【0062】
図11は、隔壁材料層8cが現像により除去されていく様子を示す模式図である。A1が第1の溝部6a1(
図9のA1−A1)の断面図であり、A2が第2の溝部6a2(
図9のA2−A2)の断面図である。
【0063】
隔壁材料層8cは、凹下部6aの形状に沿って凹下した部分8dを有する(
図11(a))。ただし、第1の溝部6a1の幅が狭いため、隔壁材料層8cの凹下した部分8dの幅も狭い。これに対し、第2の溝部6a2の幅は広いため、隔壁材料層8cの凹下した部分8dの幅が広い。
【0064】
隔壁材料層8cが現像液8eに曝されると、隔壁材料層8cの補助配線6上方の部分8fが次第に溶解していく(
図11(b)、(c))。このとき、第2の溝部6a2では第1の溝部6a1に比べて隔壁材料層8cの凹下した部分が広いので、現像液8eが入り込みやすく、溶解が適度に進む(
図11(d))。第2の溝部6a2内の隔壁材料層8cが除去されると、今度は、現像液8eは、第2の溝部6a2を通じて第1の溝部6a1の側面に接しやすくなる。そうすると、第1の溝部6a1内の隔壁材料層8cの溶解が側面からも進むことになり、その結果、第1の溝部6a1内の隔壁材料層8cが除去される(
図11(e))。
【0065】
このように、補助配線6の凹下部6aを、補助配線に沿う第1の溝部とそれに直交する第2の溝部とで構成し、第2の溝部の幅を第1の溝部の幅よりも広くすることで、隔壁材料層8cを現像する際に第1の溝部に現像液を入り込ませやすくし、その結果、凹下部6aに残留する隔壁材料層8cの残渣量を低減することができる。
【0066】
なお、電子輸送層11を蒸着法で形成し、共通電極12をスパッタ法で形成する場合には、以下の理由によっても、補助配線6と共通電極12とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0067】
一般に、蒸着法は幅の狭い溝部の側面には成膜しにくい特性を有する(即ち、カバレッジが悪い)。一方、スパッタ法は幅の狭い溝部の側面にも成膜しやすい特性を有する(即ち、カバレッジが良い)。したがって、補助配線6上に電子輸送層11を形成した場合に、溝幅の狭い部分の側面には電子輸送層11が成膜されにくく、そのため、電子輸送層11の厚みが極めて薄い部分や電子輸送層11の厚みがない部分が存在することになる。この電子輸送層11の上に共通電極12を形成した場合、これらの部分で補助配線6と共通電極12とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0068】
そして、第1の溝部6a1の幅が狭く第2の溝部6a2の幅が広い場合、第1の溝部6a1の幅が広く第2の溝部6a2の幅が狭い場合に比べて、第1の溝部6a1における第2の溝部6a2の交差する部分を除く部分を長くすることができる。即ち、溝幅の狭い部分を長くすることができる。したがって、補助配線6と共通電極12とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0069】
一方、上述のように、溝幅の狭い部分の側面には、電子輸送層11の厚みが極めて薄い部分や電子輸送層11の厚みがない部分が存在することになる。これらの部分では、電界集中が起きてしまう恐れがある。このような場合、第1の溝部6a1の幅を広く第2の溝部6a2の幅を狭くしてもよい。そうすると、第1の溝部6a1の幅が狭く第2の溝部6a2の幅が広い場合に比べて、第1の溝部6a1における第2の溝部6a2の交差する部分を除く部分を短くすることができる。即ち、溝幅の狭い部分を短くすることができる。したがって、電界集中の起きやすい部分を少なくすることができる。
【0070】
以上より、コンタクト抵抗を低減することを重視する場合には、第1の溝部6a1の幅を狭く第2の溝部6a2の幅を広くすることとし、電界集中の抑制を重視する場合には、第1の溝部6a1の幅を広く第2の溝部6a2の幅を狭くすることとしてもよい。
【0071】
[変形例]
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態に限られるものではない。例えば、以下のような変形例が考えられる。
【0072】
(1)層間絶縁膜の凹下部の深さ
実施の形態1、2では、層間絶縁膜4の凹下部4aの深さは、平坦化膜42を貫通しない程度に設定されている。しかしながら、層間絶縁膜4の絶縁性さえ確保できれば、これに限られない。例えば、
図12に示すように、層間絶縁膜4の凹下部4aが平坦化膜42を貫通し、凹下部4aの上面にパッシベーション膜41が露出することとしてもよい。
【0073】
(2)画素電極と補助配線との厚み方向の位置関係
実施の形態1、2では、画素電極5と補助配線6の非凹下部6bとが厚み方向で同じレベルに形成されている(例えば、
図1参照)。これに対し、
図13に示すように、画素電極5と補助配線6の凹下部6aとが厚み方向で同じレベルに形成されていてもよい。
図13の構成においても、層間絶縁膜4の補助配線6が形成される領域に凹下部4aと非凹下部4bとを設けることにより、補助配線6に凹下部6aと非凹下部6bとを設け、その結果、凹下部6aと非凹下部6bとの段差の側面の面積分だけコンタクト面積を広げるという効果が得られる。
【0074】
図14は、
図13の有機EL表示パネルの製造工程を説明するための断面図である。基板1の上方に電源配線2、TFT3およびパッシベーション膜41を形成し(
図14(a))、パッシベーション膜41の上方に平坦化材料層42cを積層する(
図14(b))。そして、フォトマスクを介して平坦化材料層42cを露光し、その後、現像する(
図14(c))。このとき、補助配線6の凹下部6aおよび画素電極5を形成する領域を凹下部4aとし、補助配線6の非凹下部6bとなる領域を非凹下部4bとする。この点が、実施の形態1、2と異なる。そして、層間絶縁膜4上に画素電極5と補助配線6を形成する(
図14(d))。
【0075】
(3)凹下部の形状および数量
実施の形態1、2では、凹下部の形状および数量が具体的に示されているが、凹下部と非凹下部とが存在しさえすれば、これらに限られない。以下のいずれの例でも、凹下部6aと非凹下部6bとの段差の側面の面積分だけコンタクト面積を広げるという効果が得られる。
【0076】
図15乃至
図19は、それぞれ凹下部に関する変形例を示す図である。各々(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【0077】
図15の例では、凹下部6aの形状が平面視で矩形であり、凹下部6aの数量が、1行に対して2個である。また、これ以外に、凹下部6aの形状が平面視で円形や、楕円形でもよい。また、凹下部6aの数量も、1行に対して2個以上、例えば、数10個存在してもよい。
【0078】
図16の例では、凹下部6aが補助配線6の全体に亘り形成された溝部からなる。この例では、実施の形態1に比べて、走査線と補助配線との距離が近くなる一方、凹下部6aと非凹下部6bとの段差の側面の面積を広げることができる。実施の形態1と
図16の例とでどちらを採用するかは、走査線に入力される信号の遅延を少なくすることと、補助配線と共通電極とのコンタクト面積を広げることのどちらを重視するかで決めればよい。
【0079】
図17の例では、凹下部6aが補助配線6に沿う溝部からなり、1行に対して2個並設されている。これにより、凹下部6aと非凹下部6bとの段差の側面の面積をより一層広げることができる。
【0080】
図18の例では、凹下部6aが補助配線6に沿う第1の溝部6a1とこれに直交する2つの第2の溝部6a2とからなる。このような形状でも、隔壁層8を形成する工程において、凹下部6aに残留する隔壁材料層8cの残渣量を低減することができる。
【0081】
図19の例では、凹下部6aが補助配線に沿う第1の溝部6a1とこれに直交する第2の溝部6a2とからなる。実施の形態2と異なるのは、第1の溝部6a1の幅W1と第2の溝部6a2の幅W2とが同じであり、且つ、第1の溝部6a1の深さよりも第2の溝部6a2の深さが深いことである。このように、第2の溝部6a2の深さを第1の溝部6a1の深さよりも深くすることによっても、隔壁層8を形成する工程において、凹下部6aに残留する隔壁材料層8cの残渣量を低減することができる。なお、第1の溝部6a1の幅W1よりも第2の溝部6a2の幅W2を広くすると、より一層の効果が得られる。
【0082】
なお、第1の溝部6a1と第2の溝部6a2の幅および深さは適宜組み合わせることが出来ることは言うまでもない。例えば、第1の溝部6a1を、第2の溝部6a2よりも深さが深くかつ幅を広く設計しても良い。
【0083】
また、第1の溝部6a1と第2の溝部6a2が存在することにより、以下のような効果も得られる。有機EL表示パネルの製造過程において、補助配線6上にダストが付着することがある。補助配線6上にダストが付着すると、ダストの高さによっては上部の封止層13にピンホールが生じることがある。ピンホールが生じると、水分や空気が侵入してしまうので、電子輸送層11に部分的な劣化が生じる。そして、水分や空気はピンホールから常時供給されるため、電子輸送層11の劣化した部分がピンホールを中心として経時的に広がっていくことになる。
【0084】
一方、前述の通り、電子輸送層11を蒸着法で形成した場合、補助配線6の溝部の側面には、電子輸送層11の厚みが極めて薄い部分や、電子輸送層11の厚みがない部分が存在することになる。電子輸送層11の劣化が経時的に広がってきたとしても、そのような部分では電子輸送層11の厚みが極めて薄いか、あるいは、厚みがないので、劣化の進行を遅らせる、あるいは、停止させることができる。これにより、電子輸送層11の劣化に起因する寿命の低下を抑制することができる。
【0085】
(4)補助配線の凹下部内の積層構造
実施の形態1、2では、有機発光層10は画素電極5の上方の開口部8a内のみに形成されているが、これに限られない。例えば、
図20に示すように、有機発光層10と同一の材料の層15が補助配線6の上方の開口部8b内に形成されていてもよい。同図では、具体的には、有機発光層10と同一の材料の層15が補助配線6の凹下部6a内に形成されている。
【0086】
図21は、
図20の有機EL表示パネルの製造工程を説明するための断面図である。隔壁層8に、画素電極5の上方の開口部8aと補助配線6の上方の開口部8bとを形成する(
図21(a))。次に、有機発光層10を構成する有機発光材料と溶媒とを含むインク10aを開口部8a内に滴下する。このとき、インク10aを開口部8b内にも滴下する(
図21(b))。そして、インク10aから溶媒を蒸発させて、開口部8a内に有機発光層10を形成しつつ、開口部8b内に有機発光層と同一の材料の層15を形成する(
図21(c))。このように、インク10aを開口部8b内にも滴下しておくことにより、どの開口部8aにおいても両側にインク10aが存在する環境を形成することができる。これにより、どの開口部8aでも同じように溶媒を蒸発させることができ、その結果、有機発光層10の形状のばらつきを抑制することができる。
【0087】
(5)第1の溝部と第2の溝部との成す角度
実施の形態2では、第1の溝部6a1と第2の溝部6a2とが直交しているが、これらが交差していれば、本発明はこれに限られない。例えば、第1の溝部6a1と第2の溝部6a2との成す角度が45°や60°などのように、90°以外の角度としてもよい。
【0088】
(6)補助配線の平面形状
実施の形態1、2では、補助配線6は列方向に沿ってストライプ状に配置されているが、本発明は、これに限られない。例えば、補助配線は列方向のストライプと行方向のストライプとからなるメッシュ状であってもよい。
【0089】
(7)補助配線の数量
実施の形態1、2では、補助配線6は、3画素毎に1本設けられているが、これに限られない。例えば、1画素毎に1本設けられていてもよいし、3画素よりも大きな所定数の画素毎に1本設けられていてもよい。
【0090】
(8)走査線の数量
実施の形態1、2では、走査線が1行に対し1本設けられているが、これに限られない。画素毎の駆動回路の構成に応じて決定すればよい。
【0091】
(9)画素の積層構造
実施の形態1、2では、画素電極5と共通電極12との間に正孔注入層7、正孔輸送層9、有機発光層10および電子輸送層11が介挿されているが、有機発光層10さえ介挿されていれば、これに限られない。
【0092】
(10)層間絶縁層の構造
実施の形態1、2では、層間絶縁層4がパッシベーション膜41と平坦化膜42とからなるが、画素回路が位置する層と有機EL素子が位置する層とを絶縁することさえできれば、これに限られない。
【0093】
(11)表示装置への適用例
図22は、
図1の有機EL表示パネルを表示装置に適用した場合の機能ブロックを示す図である。
図23は、
図22の表示装置の外観を例示する図である。表示装置20は、有機EL表示パネル21と、これに電気的に接続された駆動制御部22とを備える。駆動制御部22は、駆動回路23と、駆動回路23の動作を制御する制御回路24とからなる。