(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(2)で示される化合物が、フェノール、フェニルフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン及びジヒドロキシアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1記載の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する(以下、本実施の形態と称する)。なお、本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施の形態のみに限定されない。
<ナフタレンホルムアルデヒド樹脂>
ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、式(1)で示される化合物とホルムアルデヒドを、酸性触媒の存在下で縮合反応させることにより得られる。
前記反応によって得られるナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、酸素含有率および耐熱性のバランスの観点から、ナフタレン環の少なくとも一部が式(i)で示される結合及び/又は式(ii)で示される結合で架橋されている構造を有することが好ましい。
―(CH
2)
p― (i)
―CH
2―A― (ii)
(前記式(i)中のpは1〜10の整数を表し、式(ii)中のAは(OCH
2)
mを表し、mは1〜10の整数を表す。)
前記好適な態様において、ナフタレン環の少なくとも一部は、―(CH
2)
p―で示される結合と―(OCH
2)
m−で示される結合がランダムに配列されている結合、例えば、―CH
2―OCH
2―CH
2−、―(CH
2)
2―OCH
2−、―CH
2―OCH
2―OCH
2―CH
2−などで架橋されていてもよい。
【0012】
本実施の形態における式(1)で示される化合物はナフタレンであり、ナフタレンは、特に限定されず、工業的に入手できるものを利用することができる。
本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、ナフタレン環を有するため、炭素数7〜9の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂に比べて耐熱分解性に優れる。また、無置換であるため、置換されたナフタレン環を有する芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂に比べて耐熱分解性に優れる。さらに、フェナントレンのような3環の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂に比べて溶剤への溶解性に優れる。
【0013】
本実施の形態におけるホルムアルデヒドとしては、特に限定されず、通常工業的に入手可能な、ホルムアルデヒドの水溶液が挙げられる。
本実施の形態におけるホルムアルデヒドは、パラホルムアルデヒド及びトリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物等の使用により発生するホルムアルデヒドを包含する。ゲル化抑制の観点から、好ましくは、ホルムアルデヒド水溶液である。
【0014】
本実施の形態における縮合反応において、式(1)で示される化合物とホルムアルデヒドのモル比は、1:1〜1:20である。本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、前記のような割合で、式(1)で示される化合物とホルムアルデヒドとを縮合反応させるため、架橋構造が多く、また、前記範囲とすることで、未反応で残るナフタレンの量を少なくし、得られるナフタレンホルムアルデヒド樹脂の収率を比較的高く維持することができる。
従来、ホルムアルデヒドの量が多い場合には、ゲル化する等の問題があることが知られているが(特開2003−192755号公報)、本発明者らが検討した結果、ホルムアルデヒド原料として、パラホルムアルデヒドではなく、ホルムアルデヒド水溶液を使用するなど、ゲル化を抑制する手段を講じつつ、ホルムアルデヒド量を増加することにより、意外にも、ゲル化せずに、耐熱分解性や溶解性を向上できることが判明した。
式(1)で示される化合物とホルムアルデヒドのモル比は、好ましくは1:1.5〜1:17.5、より好ましくは1:2〜1:15、さらに好ましくは1:2〜1:12.5、よりさらに好ましくは1:2.5〜1:10、特に好ましくは1:3〜1:10、最も好ましくは1:3〜1:5である。
【0015】
本実施の形態における酸性触媒としては、特に限定されず、公知の無機酸、有機酸を使用することができ、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸;ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げられる。
これらの中でも、製造上の観点から、硫酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、リンタングステン酸が好ましい。
【0016】
酸性触媒の使用量は、特に限定されないが、式(1)で示される化合物及びホルムアルデヒドの合計量100質量部に対して、0.0001〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜85質量部、さらに好ましくは0.001〜70質量部となるよう調整する。このような範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、かつ反応速度が大きいことに基づく樹脂粘度の増加を防ぐことができる。
酸性触媒の添加方法は、特に限定されず、一括して添加してもよいし、分割して添加してもよい。
【0017】
本実施の形態における縮合反応の圧力は、特に限定されず、常圧でも加圧でもよい。
本実施の形態における縮合反応は、特に限定されず、例えば常圧下で、使用する原料が相溶する温度以上(通常80〜300℃)で加熱還流させながら、又は生成水を留去させながら行う方法がある。
本実施の形態における縮合反応は、必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
【0018】
本実施の形態における縮合反応は、必要に応じて、縮合反応に不活性な溶媒を使用することもできる。前記溶媒としては、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル;2−プロパノール等のアルコール;メチルイソブチルケトン等のケトン;エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル;酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
本実施の形態における縮合反応は、特に限定されないが、アルコールが共存する場合、樹脂の末端がアルコールで封止され、低分子量で低分散(分子量分布の狭い)ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られ、変性後も溶剤溶解性が良好で低溶融粘度の樹脂となる観点から、アルコール共存下で行うことが好ましい。前記アルコールは、特に限定されず、例えば、炭素数1〜12のモノオールや炭素数1〜12のジオールが挙げられる。前記アルコールは単独で添加してもよいし、複数を併用してもよい。ナフタレンホルムアルデヒド樹脂の生産性の観点から、これらのうち、プロパノール、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノールが好ましい。
アルコールが共存する場合、アルコールの量は、特に限定されないが、例えば、式(1)で示される化合物1モルに対して、ヒドロキシル基が1〜10当量となる量が好ましい。
【0020】
本実施の形態における縮合反応は、ナフタレン、ホルムアルデヒド及び酸性触媒を反応系に同時に添加してもよいし、ナフタレンをホルムアルデヒド及び酸性触媒が存在する系に逐次添加する縮合反応としてもよい。前記の逐次添加する方法は、得られる樹脂中の酸素濃度を高くし、後の変性工程において(2)式で示される化合物とより多く反応させることができる観点から好ましい。
【0021】
反応時間は、特に限定されないが、0.5〜30時間が好ましく、0.5〜20時間がより好ましく、0.5〜10時間がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性及び溶剤への溶解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に有利に得られる。
【0022】
反応温度は、特に限定されないが、80〜300℃が好ましく、85〜270℃がより好ましく、90〜240℃がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性及び溶剤への溶解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に有利に得られる。
【0023】
反応終了後、必要に応じて前記溶媒をさらに添加して希釈した後、静置することにより二相分離させ、油相である樹脂相と水相を分離した後、さらに水洗を行うことで酸性触媒を完全に除去し、添加した溶媒及び未反応の原料を蒸留等の一般的な方法で除去することにより、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られる。
【0024】
本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が275〜1000であることが好ましく、より好ましくは300〜900であり、さらに好ましくは325〜800である。
本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、GPC分析により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が300〜2000であることが好ましく、より好ましくは350〜1750であり、さらに好ましくは400〜1500である。
本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、分散度(Mw/Mn)が1.2〜2.5であることが好ましく、より好ましくは1.25〜2.25であり、さらに好ましくは1.3〜2.0である。
【0025】
本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、有機元素分析による樹脂中の炭素濃度が75〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは76.5〜87.5質量%であり、さらに好ましくは78〜85質量%である。
【0026】
本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性、溶剤への溶解性、後述する脱アセタール処理工程の負荷、および後述する変性工程での(2)式で示される化合物との反応性の観点から、有機元素分析による樹脂中の酸素濃度が4〜17質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜16質量%であり、さらに好ましくは6〜15質量%である。
【0027】
本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性、ハンドリングの観点から、常温(25℃)で液体のものが好ましく、軟化点が120℃以下であることが好ましく、より好ましくは110℃であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0028】
本実施の形態のナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、水酸基価が10〜50であることが好ましく、より好ましくは12.5〜45であり、さらに好ましくは15〜40である。
【0029】
<脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂>
本実施形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を水及び酸性触媒存在下で脱アセタール処理することにより得られる。
前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に、ナフタレン環が−(CH
2)
p−及び/又は−CH
2−A−で架橋されている。Aは(OCH
2)
mを、pは1〜10の整数を、mは1〜10の整数をそれぞれ表す。
本実施形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とは、前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を脱アセタール処理することによって、ナフタレン環を介さないオキシメチレン等同士の結合が減り、p及び/又はmが少なくなったものを指す。
本実施形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、脱アセタール処理に供するナフタレンホルムアルデヒド樹脂が、ナフタレンとホルムアルデヒドとを、1:1〜1:20のモル比で縮合させて得られるナフタレンホルムアルデヒド樹脂であるため、保存安定性に優れ、耐熱分解性にも優れるという効果を奏する。
本実施形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、ナフタレン骨格を有するため、炭素数7〜9の芳香族炭化水素を骨格とする場合に比べて、保存安定性に優れるという効果を奏する。
このようにして得られた脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂に比較して、変性後に得られる樹脂の耐熱分解性や保存安定性が向上する。
【0030】
前記酸性触媒は、公知の無機酸、有機酸より適宜選択することができ、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、あるいはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げられる。なかでも、製造上の観点から、硫酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、リンタングステン酸が好ましい。
【0031】
前記水及び酸性触媒存在下における処理は、酸性触媒存在下、通常常圧で行われ、使用する原料が相溶する温度以上(通常80〜300℃)において、使用する水を系内に滴下あるいは水蒸気として噴霧しながら行う。系内の水は留去しても還流させてもよいが、アセタール結合を効率良く除去できるため、反応で発生するホルムアルデヒド等の低沸点成分と共に留去した方が好ましい。圧力は常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
【0032】
また必要に応じて、反応に不活性な溶媒を使用することもできる。前記溶媒としては、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル;2−プロパノール等のアルコール;メチルイソブチルケトン等のケトン;エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル;酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
酸性触媒の使用量は、特に限定されないが、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、0.0001〜100質量部、好ましくは0.001〜85質量部、さらに好ましくは0.001〜70質量部となるよう調整する。このような範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、かつ反応速度が大きいことに基づく樹脂粘度の増加を防ぐことができる。酸性触媒は一括で仕込んでも分割で仕込んでもよい。
【0034】
上記処理に使用し得る水は、特に限定されず、工業的に使用し得るもの、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水又は超純水などが挙げられる。
【0035】
水の使用量は、特に限定されないが、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、0.1〜10000質量部が好ましく、1〜5000質量部がより好ましく、10〜3000質量部がさらに好ましい。
【0036】
処理時間は、特に限定されないが、0.5〜20時間が好ましく、1〜15時間がより好ましく、2〜10時間がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性や溶剤溶解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に得られる。
【0037】
本実施の形態において、処理温度は、特に限定されないが、80〜300℃が好ましく、85〜270℃がより好ましく、90〜240℃がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性や溶剤溶解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に得られる。
【0038】
脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂と比較して酸素濃度が低くなり、軟化点が上昇する。例えば、前記記載の酸性触媒使用量0.05質量部、水の使用量2000質量部、処理時間5時間、処理温度150℃で処理すると、酸素濃度は0.1〜8.0質量%程度低くなり、軟化点は3〜100℃程度上昇する。
【0039】
本実施の形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が250〜1500であることが好ましく、より好ましくは275〜1400であり、さらに好ましくは300〜1300である。
本実施の形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、GPC分析により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が300〜5000であることが好ましく、より好ましくは400〜4000であり、さらに好ましくは500〜3000である。
本実施の形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、分散度(Mw/Mn)が1.2〜7.0であることが好ましく、より好ましくは1.25〜6.75であり、さらに好ましくは1.3〜6.5である。
【0040】
本実施の形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、有機元素分析による樹脂中の炭素濃度が75〜92質量%であることが好ましく、より好ましくは77.5〜91質量%であり、さらに好ましくは80〜90質量%である。
【0041】
本実施の形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性、溶剤への溶解性、後述する変性工程での(2)式で示される化合物との反応性の観点から、有機元素分析による樹脂中の酸素濃度が2.5〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜13質量%あり、さらに好ましくは3.5〜11質量%である。
【0042】
本実施の形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性、ハンドリングの観点から、軟化点が50〜120℃であることが好ましく、より好ましくは60〜110℃であり、さらに好ましくは70〜100℃である。
【0043】
本実施の形態の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、水酸基価が5〜50であることが好ましく、より好ましくは7.5〜45であり、さらに好ましくは10〜40である。
【0044】
<変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂>
本実施形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、前記ナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂と、式(2)で示される化合物を酸性触媒の存在下で加熱し、反応させることにより得られる。
本実施形態においては、前記反応を変性反応と称する。
【0045】
【化5】
(式(2)中、X及びYはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はシクロヘキシル基を表し、a及びbはそれぞれ1〜3の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。)
式(2)においては、製造上の観点から、X及びYが炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はシクロヘキシル基であることが好ましく、a及びbが1〜2、nが1〜2であることが好ましい。
式(2)で示される具体的な化合物としては、例えば、フェノール、メトキシフェノール、ベンゾキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、クレゾール、フェニルフェノール、ナフトール、メトキシナフトール、ベンゾキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン、メトキシアントラセン、ベンゾキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセン等を例示することができる。
これらのうち、少なくとも2個のベンゼン環の非共有電子対が関与する共役構造を含むフェノール誘導体は、耐熱分解性に優れるため好ましく、フェノール、フェニルフェノール、ナフトール、メトキシナフトール、ベンゾキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン、メトキシアントラセン、ベンゾキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセンがより好ましい。
また、これらのうち、ヒドロキシ基を有するものは、酸架橋剤との架橋性に優れるため、更に好ましく、フェノール、フェニルフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセンが特に好ましい。
【0046】
式(2)で示される化合物の使用量は、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂中の含有酸素モル数1モルに対して、0.1〜5モルが好ましく、0.2〜4モルがより好ましく、0.3〜3モルがさらに好ましい。このような範囲とすることで、得られる変性ナフタレン樹脂の収率を比較的高く維持でき、かつ未反応で残る(2)で示される化合物の量を少なくすることができる。
ここで、含有酸素モル数は、有機元素分析によりナフタレンホルムアルデヒド樹脂中の酸素濃度(質量%)を測定し、下記計算式に従って算出することができる。
含有酸素モル数(mol)=使用樹脂量(g)×酸素濃度(質量%)/16
【0047】
本実施の形態における前記変性反応に使用し得る酸性触媒は、特に限定されず、公知の無機酸、有機酸より適宜選択することができ、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸;あるいはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げられる。なかでも、環境問題や製造上の観点から、硫酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、リンタングステン酸が好ましい。
【0048】
酸性触媒の使用量は、特に限定されないが、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、0.0001〜100質量部が好ましく、より好ましくは0.001〜85質量部、さらに好ましくは0.001〜70質量部となるよう調整する。このような範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、かつ反応速度が大きいことに基づく樹脂粘度の増加を防ぐことができる。また、酸性触媒は一括で仕込んでも分割で仕込んでもよい。
【0049】
本実施の形態における前記変性反応は、特に限定されず、例えば、酸性触媒存在下、通常常圧で行われ、使用する原料が相溶する温度以上(通常80〜300℃)で加熱還流、又は生成水を留去させながら行う。圧力は常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
【0050】
本実施の形態における前記変性反応は、必要に応じて、縮合反応に不活性な溶媒を使用することもできる。前記溶媒としては、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル;2−プロパノール等のアルコール;メチルイソブチルケトン等のケトン;エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル;酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0051】
本実施の形態における前記変性反応の反応時間は、0.5〜20時間が好ましく、1〜15時間がより好ましく、2〜10時間がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性や溶剤への溶解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に得られる。
【0052】
本実施の形態における前記変性反応の反応温度は80〜300℃が好ましく、85〜270℃がより好ましく、90〜240℃がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性や溶剤への溶解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に得られる。
【0053】
前記変性反応終了後、必要に応じて、前記溶媒をさらに添加して希釈した後、静置することにより二相分離させ、油相である樹脂相と水相を分離した後、さらに水洗を行うことで酸性触媒を完全に除去し、添加した溶媒及び未反応の原料を蒸留等の一般的な方法で除去することにより、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂が得られる。
【0054】
本実施の形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、変性前のナフタレンホルムアルデヒド樹脂又は脱アセタール結合ホルムアルデヒド樹脂と比較して耐熱分解性及び水酸基価が上昇する。例えば、前記記載の酸性触媒使用量0.05質量部、反応時間5時間、反応温度200℃で変性すると、耐熱分解性は1〜50%程度、水酸基価は1〜300程度上昇する。
【0055】
本実施の形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が250〜1200であることが好ましく、より好ましくは275〜1100であり、さらに好ましくは300〜1000である。
本実施の形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、GPC分析により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が300〜3500であることが好ましく、より好ましくは350〜3250であり、さらに好ましくは400〜3000である。
本実施の形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、分散度(Mw/Mn)が1.2〜3.0であることが好ましく、より好ましくは1.25〜2.75であり、さらに好ましくは1.3〜2.5である。
【0056】
本実施の形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶解への溶解性の観点から、有機元素分析による樹脂中の炭素濃度が75〜92質量%であることが好ましく、より好ましくは77.5〜91質量%であり、さらに好ましくは80〜90質量%である。
【0057】
本実施の形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、有機元素分析による樹脂中の酸素濃度が2.5〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜13質量%であり、さらに好ましくは3.5〜11質量%である。
【0058】
本実施の形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性、ハンドリングの観点から、軟化点が60〜240℃であることが好ましく、より好ましくは70〜230℃であり、さらに好ましくは80〜220℃である。
【0059】
本実施の形態の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、水酸基価が60〜260であることが好ましく、より好ましくは70〜250であり、さらに好ましくは80〜240である。
【実施例】
【0060】
以下、本実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0061】
<分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
装置:Shodex GPC−101型(昭和電工(株)製)
カラム:LF−804×3
溶離液:THF 1ml/min
温度:40℃
<樹脂中の炭素・酸素濃度>
有機元素分析により樹脂中の炭素・酸素濃度(質量%)を測定した。また、樹脂1g当たりの含有酸素モル数を下記計算式に従って算出した。
装置:CHNコーダーMT−6(ヤナコ分析工業(株)製)
計算式:樹脂1g当たりの含有酸素モル数(mol/g)=酸素濃度(質量%)/16
<軟化点>
JIS−K5601に準拠して樹脂の軟化点を測定した。
<耐熱分解性>
耐熱分解性は、熱分析による400℃到達時点における熱重量減少率(熱分解量(%))の測定値を用いて評価した。
装置:TG/DTA6200(エス・アイ・アイ・ナノテクノロジー社製)
測定温度:30〜550℃(昇温速度10℃/分)
測定雰囲気:Air流通下
<水酸基価>
JIS−K1557に準拠して樹脂の水酸基価を測定した。
【0062】
<実施例1(ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、ナフタレン64.1g(0.5mol、関東化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液150g(ホルムアルデヒドとして2mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)79.7gを仕込み、常圧下、100℃で撹拌、還流しながら6時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(関東化学(株)製)150gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応のナフタレンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンホルムアルデヒド樹脂69.7gを得た。
GPC測定の結果、Mnは459、Mwは882、Mw/Mnは1.92であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は86.4質量%、酸素濃度は8.0質量%(樹脂1g当たりの含有酸素モル数は0.0050mol/g)であった。軟化点は84℃で、水酸基価は25mgKOH/gであった。
【0063】
<実施例2(脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管を設置したディーンスターク管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、実施例1で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂50.0g、エチルベンゼン(関東化学(株)製)50g及びメチルイソブチルケトン(関東化学(株)製)50gを仕込んで120℃で溶解後、撹拌しながら水蒸気流通下でパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)2.5mgを加えて反応を開始した。2時間後、さらにパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)1.3mgを加えてさらに3時間(計5時間)反応させた。
エチルベンゼン(関東化学(株)製)150gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下に除去して、淡赤色固体の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂40.9gを得た。
GPC測定の結果、Mnは290、Mwは764、Mw/Mnは2.63であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は87.9質量%、酸素濃度は5.9質量%(樹脂1g当たりの含有酸素モル数は0.0037mol/g)であった。軟化点は107℃で、水酸基価は32mgKOH/gであった。
【0064】
<比較例1(ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5−ジメチルナフタレン78.1g(0.5mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液150g(ホルムアルデヒドとして2mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)66.2gを仕込み、常圧下、100℃で撹拌・還流しながら6時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(関東化学(株)製)150gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5−ジメチルナフタレンを減圧下に留去して、淡黄色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂92.4gを得た。
GPC測定の結果、Mnは526、Mwは992、Mw/Mnは1.89であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は83.9質量%、酸素濃度は8.6質量%(樹脂1g当たりの含有酸素モル数は0.0054mol/g)であった。軟化点は81℃で、水酸基価は19mgKOH/gであった。
【0065】
<実施例3(変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で、実施例1で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂樹脂50.0g(含有酸素モル数0.25mol)、1−ナフトール72.2g(0.50mol、東京化成工業(株)製)を仕込み、120℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)3.8mgを加え、反応を開始した。直ちに190℃まで昇温して3時間攪拌保持した後、パラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)2.5mgを加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた(計5時間)。混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(関東化学(株)製)=1/1(重量比))300gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂80.0gを得た。
GPC分析の結果、Mnは465、Mwは669、Mw/Mnは1.44であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は89.5質量%、酸素濃度は5.2質量%であった。400℃到達時点における熱重量減少率(%)は、15%であった。水酸基価は、198mgKOH/gであった。また、得られた樹脂は、樹脂/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=1/9(重量比)で可溶であった。
【0066】
<実施例4(変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.3Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で、実施例2で得た脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂40.5g(含有酸素モル数0.15mol)、1−ナフトール43.3g(0.30mol、東京化成工業(株)製)を仕込み、120℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)2.3mgを加え、反応を開始した。直ちに190℃まで昇温して3時間攪拌保持した後、パラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)1.5mgを加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた(計5時間)。混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(関東化学(株)製)=1/1(重量比))180gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下に除去して、黒褐色固体の変性脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂48.1gを得た。
GPC分析の結果、Mnは493、Mwは750、Mw/Mnは1.52であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は89.9質量%、酸素濃度は4.9質量%であった。400℃到達時点における熱重量減少率(%)は、9%であった。水酸基価は、192mgKOH/gであった。また、得られた樹脂は、樹脂/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=1/9(重量比)で可溶であった。
【0067】
<比較例2(変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で、比較例1で得た樹脂46.3g(含有酸素モル数0.25mol)、1−ナフトール72.2g(0.50mol、東京化成工業(株)製)を仕込み、120℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)3.6mgを加え、反応を開始した。直ちに190℃まで昇温して3時間攪拌保持した後、パラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)2.4mgを加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた(計5時間)。混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(関東化学(株)製)=1/1(重量比))300gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂79.4gを得た。
GPC分析の結果、Mnは462、Mwは693、Mw/Mnは1.50であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は89.3質量%、酸素濃度は4.7質量%であった。400℃到達時点における熱重量減少率(%)は、32%であった。水酸基価は、195mgKOH/gであった。また、得られた樹脂は、樹脂/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=1/9(重量比)で可溶であった。
【0068】
<実施例5(ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積2Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、ナフタレン288g(2.25mol、和光純薬工業(株)製)、37質量%ホルマリン水溶液821g(ホルムアルデヒドとして10.1mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)407gを仕込み、常圧下、100℃前後で撹拌、還流しながら7時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)500gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応のナフタレンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンホルムアルデヒド樹脂379gを得た。
GPC測定の結果、Mnは455、Mwは888、Mw/Mnは1.95であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は84.6質量%、酸素濃度は9.2質量%であった。軟化点は72℃であった。
【0069】
<実施例6(ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積2Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、37質量%ホルマリン水溶液912g(ホルムアルデヒドとして11.2mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)485gを仕込み、常圧下、100℃前後で撹拌、還流しながらナフタレン288g(2.25mol、和光純薬工業(株)製)を6時間かけて滴下し、そのままさらに1時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)500gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応のナフタレンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンホルムアルデヒド樹脂371gを得た。
GPC測定の結果、Mnは530、Mwは1090、Mw/Mnは2.06であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は83.8質量%、酸素濃度は10.0質量%であった。軟化点は80℃であった。
【0070】
<実施例7(ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積2Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、86質量%パラホルムアルデヒド384g(ホルムアルデヒドとして11.0mol、三菱ガス化学(株)製)、イオン交換水437g(三菱ガス化学(株)製)、1−ブタノール297g(和光純薬工業(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)398gを仕込み、常圧下、100℃前後で撹拌、還流しながらナフタレン256g(2.0mol、和光純薬工業(株)製)を6時間かけて滴下し、そのままさらに2時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)500gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応のナフタレンを減圧下に留去し、淡黄色液体のナフタレンホルムアルデヒド樹脂319gを得た。
GPC測定の結果、Mnは318、Mwは399、Mw/Mnは1.25であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は78.4質量%、酸素濃度は14.1質量%であった。
【0071】
<実施例8(脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、実施例5で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂250.0gを仕込んで120℃で溶解後、撹拌しながら水蒸気流通下でパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)25mgを加えて190℃まで昇温した後、そのまま4時間反応を行い、淡赤色固体の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂230gを得た。
GPC測定の結果、Mnは664、Mwは2396、Mw/Mnは3.61であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は89.4質量%、酸素濃度は4.6質量%であった。
【0072】
<実施例9(脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、実施例5で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂204.0gを仕込んで120℃で溶解後、撹拌しながら水蒸気流通下でパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)40mgを加えて190℃まで昇温した後、そのまま4時間反応を行い、淡赤色固体の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂184gを得た。
GPC測定の結果、Mnは747、Mwは3804、Mw/Mnは5.09であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は90.5質量%、酸素濃度は3.6質量%であった。
【0073】
<実施例10(脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、実施例5で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂250.0gを仕込んで120℃で溶解後、撹拌しながら水蒸気流通下でパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)125mgを加えて190℃まで昇温した後、そのまま4時間反応を行い、淡赤色固体の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂220gを得た。
GPC測定の結果、Mnは809、Mwは5382、Mw/Mnは6.66であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は90.9質量%、酸素濃度は3.2質量%であった。
【0074】
<実施例11(脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、実施例6で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂132.0gを仕込んで120℃で溶解後、撹拌しながら水蒸気流通下でパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)2.6mgを加えて190℃まで昇温した後、そのまま4時間反応を行い、淡赤色固体の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂111gを得た。
GPC測定の結果、Mnは648、Mwは1884、Mw/Mnは2.91であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は87.1質量%、酸素濃度は6.8質量%であった。
【0075】
<実施例12(脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、実施例7で得たナフタレンホルムアルデヒド樹脂135.0gを仕込んで120℃で撹拌しながら水蒸気流通下でパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)2.7mgを加えて190℃まで昇温した後、そのまま4時間反応を行い、淡赤色固体の脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂83gを得た。
GPC測定の結果、Mnは430、Mwは696、Mw/Mnは1.62であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は85.6質量%、酸素濃度は8.0質量%であった。
【0076】
<実施例13(変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、窒素気流下でフェノール(和光純薬工業(株)製)105gを仕込み、100℃に昇温した後、パラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)19.1mgを加えて常圧下、実施例11で得た脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂87.0gをエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)37gに溶かした溶液を190℃に昇温しながら1時間かけて滴下し、そのままさらに3時間反応させた。
混合溶剤(エチルベンゼン/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(重量比))400gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤及び未反応フェノールを減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂110.0gを得た。
GPC分析の結果、Mnは649、Mwは1019、Mw/Mnは1.57であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は87.4質量%、酸素濃度は6.7質量%であった。400℃到達時点における熱重量減少率(%)は、8%であった。水酸基価は、198mgKOH/gであった。また、得られた樹脂は、樹脂/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=1/9(重量比)で可溶であった。
【0077】
<実施例14(変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、窒素気流下でフェノール(和光純薬工業(株)製)156gを仕込み、100℃に昇温した後、パラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)23.9mgを加えて常圧下、実施例12で得た脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂83.4gをエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)36gに溶かした溶液を190℃に昇温しながら1時間かけて滴下し、そのままさらに3時間反応させた。
混合溶剤(エチルベンゼン/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(重量比))400gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤及び未反応フェノールを減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂99.0gを得た。
GPC分析の結果、Mnは480、Mwは630、Mw/Mnは1.31であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は86.3質量%、酸素濃度は7.8質量%であった。400℃到達時点における熱重量減少率(%)は、16%であった。水酸基価は、242mgKOH/gであった。また、得られた樹脂は、樹脂/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=1/9(重量比)で可溶であった。
【0078】
<実施例15(変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で1―ナフトール(スガイ化学工業(株)製)121gを仕込み、120℃に昇温した後、パラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)18.8mgを加えて常圧下、実施例12で得た脱アセタール結合ナフタレンホルムアルデヒド樹脂67.1gをエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)28.9gに溶かした溶液を190℃に昇温しながら1時間かけて滴下し、そのままさらに3時間反応させた。
混合溶剤(エチルベンゼン/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(重量比))400gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤及び未反応ナフトールを減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂108.0gを得た。
GPC分析の結果、Mnは481、Mwは619、Mw/Mnは1.29であった。有機元素分析の結果、炭素濃度は88.5質量%、酸素濃度は6.0質量%であった。400℃到達時点における熱重量減少率(%)は、11%であった。水酸基価は、186mgKOH/gであった。また、得られた樹脂は、樹脂/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=1/9(重量比)で可溶であった。
【0079】
【表1】
【0080】
表1より、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂は、変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂と比較して、耐熱分解性に優れ、かつプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する溶解性も優れていることが分かる。
【0081】
なお、本出願は、2012年1月31日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2012−018080号)に基づく優先権を主張しており、その内容はここに参照として取り込まれる。