(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料表面に電子線を照射する電子線光学系、前記電子線の照射により発生した電子を検出する検出系からなる電子線光学要素を有し、大径部と小径部とが設けられた筒状の外装体を更に有する複数の電子線カラムと、
前記電子線カラム内に配置された前記電子線光学要素にそれぞれ接続する前記電子線カラムの伝達機構が前記小径部に配置され、
前記複数の電子線カラムによって電子線カラム群が構成され、
前記電子線カラム群においては、前記電子線カラム同士の前記大径部が相互に最小限の間隔を保って隣り合うように前記電子線カラムを一列に配列させたカラム列を複数備えるとともに、前記カラム列同士が並列に配置され、かつ少なくとも一部の隣接するカラム列同士が相互にずれた稠密状に配置され、
前記カラム列において前記電子線カラムの小径部によって形成された空隙部に、前記伝達機構が電子線カラム群の外側から挿入され、
前記伝達機構は、高周波の電気信号を前記電子線カラムに導入するものであって、前記電子線カラム群の外周側から前記空隙部を直線状に貫通するように配置された第1伝達機構と、前記電子線カラム群の外周側にある前記電子線カラムに接続される第2伝達機構とから構成され、
前記第1伝達機構及び前記第2伝達機構をそれぞれ流れる高周波信号を補正する補正機構が備えられていることを特徴とする電子線装置。
【背景技術】
【0002】
ウェハ(半導体基板)に回路パターンを形成して得られる半導体は、多数のパターン形成工程を繰り返している。パターン形成工程は、例えば、成膜、感光レジスト塗布、感光、現像、エッチング、レジスト除去、洗浄などの工程より構成されている。この各工程において製造条件が最適化されていないと、ウェハ上に形成する回路パターンが正常に形成されない。例えば、成膜工程で異常が発生するとパーティクルが発生し、パーティクルがウェハ表面に付着し、孤立欠陥などが生じる。また、レジスト感光時に焦点や露光時間などの条件が最適でないと、レジストに照射する光の量や強さが多すぎる箇所、足りない箇所が発生し、ショートや断線、パターン細りなどが発生する。
【0003】
また、露光時のマスク、レチクル上に欠陥があると、回路パターンの形状異常が発生しやすい。また、エッチング量が最適化されていない場合やエッチング途中に生成された薄膜やパーティクルにより、ショートや突起、孤立欠陥を始め、開口不良等も発生する。更に、洗浄時には、乾燥時の水切れ条件によりパターン角部等に異常酸化を発生しやすい。従って、ウェハ製造プロセスにおいては、これらの各種要因による回路パターンの形成不良を早期に検出し、当該工程に迅速にフィードバックする必要がある。そのため近年では、これらの欠陥検査装置が重要となっている。
【0004】
従来、こうした超LSIなどに代表される半導体の製造工程においては、1枚のウェハに同一の回路パターンを有するチップを複数形成している。それぞれの回路パターンの異常を検出する際には、複数のチップどうしの間で、回路パターンの画像を比較する手法がとられている。微細な回路パターンの画像を得る際には、電子線が用いられる。例えば、一般的なウェハの回路パターンを検査する検査装置は、回路パターンに電子線を照射する電子線光学系や、照射した電子線を検出する電子線検出系などを備えた、筒状の電子線カラムと称される部材を備え、この電子線カラムから回路パターンに向けて電子線を照射し、回路パターンから得られる二次電子信号を検出することにより、回路パターンの画像を得る。
【0005】
電子線カラムを利用して回路パターンを比較検査する場合、ウェハ全面に多数形成されたチップ全体を電子線で走査するには、ばく大な時間を要する。このため、従来の回路パターンの検査装置では、電子線カラムを複数配置することにより、ウェハ全面に多数形成されたチップ全体を短時間で検査可能な構成とされている(特許文献1、2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る電子線装置の一実施形態として、電子線を用いた半導体回路パターンの検査装置について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態における電子線装置の全体構成を示した概要図である。
電子線装置(検査装置)10は、チャンバーユニット11と、このチャンバーユニット11内に収容される複数の電子線カラム21,21…と、それぞれの電子線カラム21に接続される制御電源31,31…と、これら制御電源31に接続されるコンピュータ41とを備えている。
【0019】
チャンバーユニット11は、第一チャンバー(ウェハチャンバー)12、第二チャンバー(中間室チャンバー)13、および第三チャンバー(電子銃室チャンバー)14とから構成されている。第一チャンバー12、第二チャンバー13,第三チャンバー14は、互いに異なる真空度に設定可能な独立した空間を成し、かつ、互いに隣接して配されている。第一チャンバー12、第二チャンバー13、および第三チャンバー14は、それぞれ内部を所定の真空度にするための真空ポンプ15、16、17が接続されている。電子線カラム21,21…は、これら第一〜第三チャンバー12、13,14を貫通するように配置される。電子線カラム21の構成は後ほど詳述する。
【0020】
第一チャンバー(ウェハチャンバー)12には、ウェハ(試料)Wを載置するためのステージ18が配されている。このステージ18の一面に、被検査物であるウェハ(試料)Wが載置される。ステージ18は、ウェハWの主面に沿って任意の方向に移動可能に形成され、検査時には、ウェハWを所定の方向に沿って所定の移動速度で移動させる。
【0021】
制御電源31,31…は、それぞれの電子線カラム21に対して入力されるスキャン電圧を入力する。こうした制御電源31,31…は、例えば、1つの電子線カラム21に対して1つの制御電源31が一対で割り当てられるように配置されていればよい。制御電源31,31…から出力される信号は、例えば、高電圧電流、高周波電流などが挙げられる。また、それぞれの制御電源31には、補正機構が更に備えられていることが好ましい。この補正機構は、例えば、制御電源31,31…から出力される信号、例えば高周波電圧の位相ずれの補正、走査信号の待機時間の補正、フィルターなど制御電流回路の切り替えなどを行う。
【0022】
コンピュータ41は、それぞれの電子線カラム21に対する制御命令を入力し、また、ウェハWに電子線を照射して得られる、配線パターンの形状を反映した二次電子線の出力信号(二次電子線)に基づいて、配線パターンの画像を形成する。そして、複数の配線パターンどうしの画像を比較し、画像どうしで差異があるか否かを検出する。そして、画像どうしの比較で差異がある場合は、回路パターンの形成異常として出力する。
【0023】
図2は、電子線カラムの長手方向に沿った断面を示す概略構成図である。
電子線カラム21は、外形形状が細長い略筒状の外装体22を備える。外装体22は、例えば金属の筒で構成されており、機械的に中心軸が確保された構造である。金属の材質としては、例えば、ステンレス、鉄、リン青銅、アルミ、チタン等で構成される。さらにパーマロイ、ミューメタル等の高透磁率を有する合金製の磁気シールドが追加で施されていることも好ましい。こうした外装体22には、外装体22の内部を真空排気するためのガス抜き穴(図示略)が複数設けられている。ガス抜き穴によって、電子線が通過する領域の真空度を高めることができる。
【0024】
外装体22は、大径部23と、この大径部23よりも直径が小さい小径部24とから構成されている。本実施形態では、外装体22の長手方向に沿って、3か所の大径部23a,23b,23cと、2か所の小径部24a,24bとが相互に接続されて1つの外装体22を構成している。
【0025】
このような外装体22の外形形状によって、小径部24の周囲には、空隙部25が形成される。例えば、大径部23aと大径部23bとの間に形成された小径部24aの周囲には、空隙部25aが形成される。また、大径部23bと大径部23cとの間に形成された小径部24bの周囲には、空隙部25bが形成される。こうした空隙部25a,25bは、例えば、大径部23a,23b,23cと同じ直径で一様に延びる円筒形部材に対して、それよりも小さい直径を持つ小径部24a,24bの周囲に広がるリング状(ドーナツ状)の空間である。
【0026】
外装体22を構成する大径部23a,23b,23cは、直径が例えば30mm〜80mm程度に形成されている。また、外装体22を構成する小径部24a,24bは、直径が例えば20mm〜60mm程度に形成されている。こうした大径部23a,23b,23cと小径部24a,24bとの直径差は、後述する第一伝達機構の直径と同じか、それよりも大きくなるように設定される。
【0027】
電子線カラム21の外装体22内部には、複数の電子線光学要素が収容されている。即ち、外装体の上から順に、電子銃51、コンデンサレンズ52、電子線絞り機構53、光軸調整機構54、ブランキング電極55、二次電子線検出器56、スキャン電極57、および対物レンズ69などが、外装体22の内部に備えられている。このうち、二次電子線検出器56が検出系を構成し、この検出系を除く電子線光学要素が電子線光学系を構成している。また、スキャン電極57に向けて、伝達機構58の一端側が接続される。なお、コンデンサレンズ52に向けて、電気伝達機構59が更に接続されていてもよい。さらに、図示されていないが、二次電子線検出器56に向けて、伝達機構58が更に接続されていてもよい。
【0028】
伝達機構58、電気伝達機構59は、電気的な動作を伴う部材に対して外部から電気信号を伝達し、また、電気的な動作を伴う部材から発せられた電気信号を外部に伝達する伝達機構である。電気信号としては、例えば、高周波の電気信号、高電圧の電気信号が挙げられる。更に、伝達機構58は、光を外部から伝達し、また、光を外部に伝達する導入機構として、例えば、ライトガイドなどから構成されていてもよい。なお、伝達機構として、機械的な動作を伴う伝達機構であってもよい。
【0029】
電子銃51は、例えば、ショットキー型、熱電界放出型電子銃が用いられる。こうした電子銃51に加速電圧を印加することにより、電子線(電子ビーム)Eが放出される。コンデンサレンズ52、電子線絞り機構53、電子銃51から放出された電子線Eを集光し、所望の電流となるように調節する。
光軸調整機構54は、ビームの非点補正、光軸上のビーム位置、試料上でのビーム照射位置を調整する。
【0030】
検出系を成す二次電子線検出器56は、電子線EがウェハWに照射され、回路パターンに応じて放出された二次電子線Rを検出し、高電圧、高周波の検出信号(二次電子信号)として出力する。こうした検出信号は、伝達機構58を介して電子線カラム21の外部に取り出される。取り出された二次電子線検出器56の出力信号は、例えば、プリアンプで増幅されAD変換器により回路パターンの画像デジタルデータとなる。こうした画像デジタルデータはコンピュータ41(
図1参照)に入力される。
【0031】
スキャン電極57(電子線光学要素)は、外部から高周波の制御信号(電気信号)、例えば0〜400Vの高周波電流を導入(印加)することにより、電子線Eを偏向させる。スキャン電極57に任意の制御信号を印加することで電子線Eが偏向し、ウェハWの主面上で任意の方向に沿って電子線Eを走査させることができる。こうした高周波の制御信号は、伝達機構58を介して電子線カラム21の外部からスキャン電極57に導入される。対物レンズ69は、スキャン電極57によって偏向された電子線EをウェハWの主面上で集束させる。
【0032】
このような構成により、電子銃51から放出された電子線EはウェハWの主面上を走査され、回路パターンの形状、組成、帯電状況等を反映した二次電子や反射電子である二次電子線Rが二次電子線検出器56(検出系)によって検出される。検出された二次電子線Rの検出信号を、例えばプリアンプやAD変換器を介してコンピュータ41で処理することにより、ウェハWの主面上に形成された回路パターンの画像を得る。
【0033】
これら電子線光学要素のうち、比較的直径の大きい電子銃51や、対物レンズ69は、外装体22のうち直径の大きい大径部23a,23cにそれぞれ配置される。また、電子線光学要素のうち、比較的直径の小さいコンデンサレンズ52、電子線絞り機構53、光軸調整機構54、ブランキング電極55は、大径部23a,23b,23cよりも直径の小さい小径部24aに配置される。同様に直径の小さい二次電子線検出器(検出系)56、スキャン電極57も、小径部24bに配置される。
【0034】
これら電子線光学要素や、ステージ18は、チャンバーユニット11を構成する各チャンバーのうち、それぞれ必要とされる真空度に応じたチャンバーに収容される。即ち、電子線Eを放出するために最も高い真空度を必要とする電子銃51やコンデンサレンズ52は、内部が最も高い真空度に設定される第三チャンバー(電子銃室チャンバー)14に配置される。また、電子線絞り機構53、光軸調整機構54、ブランキング電極55は、第三チャンバー14に次いで真空度の高い第二チャンバー(中間室チャンバー)13に配置される。そして、二次電子線検出器(検出系)56、スキャン電極57、対物レンズ69、およびウェハWを載置するステージ18は、比較的真空度の低い第一チャンバー(ウェハチャンバー)12に配置される。これによって、全ての電子線光学要素やステージ18、ウェハWを電子線Eを放出するため必要なレベルの高真空環境にする必要がない。
【0035】
次に、複数の電子線カラムどうしの配列構造に関して説明する。
図3は、複数の電子線カラムの配列状態を上から見た時の断面図である。なお、この
図3は、
図2における電子線カラムの伝達機構58の形成位置付近での断面を示している。また、
図4は、複数の電子線カラムの配列状態を側面から見た時の断面図である。
電子線装置10は、複数個の電子線カラム21、例えばこの実施形態においては合計18個の電子線カラム21,21…を備え、これら18個の電子線カラム21から電子線カラム群61が構成される。
【0036】
電子線カラム群61においては、電子線カラム21同士の大径部23が相互に最小限の間隔を保って隣り合うように、電子線カラム21を一列に(直線状に)配列させたカラム列62を複数備えている。これらカラム列62は、互いに並列に配置されている。例えば、
図3に示す本実施形態では、5つの電子線カラム21からなるカラム列62aが2列、4つの電子線カラム21からなるカラム列62bが2列、それぞれ形成されている。なお、電子線カラム21同士の大径部23の最小限の間隔は、例えば、数ミリ程度に設定される。
【0037】
これらカラム列61のうち、電子線カラム群61の外周側に配置された2つのカラム列を第2カラム列62bと称する。また、この2つの第2カラム列62bどうしの間の中心側に配置された2つのカラム列を第1カラム列62aと称する。そして、隣接して並列している第1カラム列62aと第2カラム列62bとは、例えば電子線カラム21の大径部23の半径分だけ互いにずれた稠密状に配置(千鳥配列、ハニカム配列)されている。
図3に示す本実施形態では、こうした稠密状に配置された第1カラム列62aと第2カラム列62bとが、対称に1組づつ形成されている。
【0038】
電子線カラム群61の外周側にある第2カラム列62bには、電気信号を伝達する伝達機構58のうち、第2伝達機構58bの一端側が接続されている。第2伝達機構58bの一端側は、第2カラム列62bを構成する電子線カラム21の小径部24内に配されたスキャン電極57に接続され、このスキャン電極57に高周波信号を伝達する。また、第2伝達機構58bの他端側は、チャンバーユニット11に形成されたコネクタ65bに接続される。このコネクタ65bは、大気−真空間の気密シールを備え、ここに制御電源31(
図1参照)からの入力信号線66が接続される。これにより、制御電源31から出力された高周波信号は、入力信号線66から伝達機構58bを介して第2カラム列62bにある電子線カラム21のスキャン電極57入力され、電子線Eを任意の方向に偏向させる。
【0039】
一方、電子線カラム群61の中央側(内側)にある第1カラム列62aには、電気信号を伝達する伝達機構58のうち、第1伝達機構58aの一端側が接続されている。第1伝達機構58aは、電子線カラム群61の外周側から、空隙部25を直線状に貫通するように配置される。即ち、第2カラム列62bの隣接する電子線カラム21の間で、小径部24同士の間に形成される開口状の空隙部25を通って、中央側に配された第1カラム列62aに向けて、第1伝達機構58aが外周側から第2カラム列62bを貫通して第1カラム列62aに達している。
【0040】
また、第1伝達機構58aの他端側は、チャンバーユニット11に形成されたコネクタ(真空ポート)65aに接続される。このコネクタ65aは、大気−真空間の気密シールを備え、ここに制御電源31(
図1参照)からの入力信号線66が接続される。これにより、制御電源31から出力された高周波信号は、入力信号線66から伝達機構58aを介して第1カラム列62aにある電子線カラム21のスキャン電極57入力され、電子線Eを任意の方向に偏向させる。真空ポンプ15、16、17は、これら伝達機構58が形成されていない側に配置することが好ましい。
【0041】
以上のような構成の本実施形態の電子線装置における作用、効果を説明する。
本発明の電子線装置10を構成する電子線カラム21は、大径部23と、この大径部23よりも直径が小さい小径部24とを形成することによって、大径部23に挟まれた小径部24の周囲に、リング状(ドーナツ状)の空間である空隙部25を形成することができる。例えば、複数のカラム列、即ち第1カラム列62aと第2カラム列62bとを稠密状に配置(千鳥配列、ハニカム配列)した際に、外周側に配列された第2カラム列62bの隣接する電子線カラム21の間で、空隙部25が第2カラム列62bを貫通する開口として作用する。これにより、第2カラム列62bよりも中心側(内側)に配列された第1カラム列62aを構成する各電子線カラム21に対して、第2カラム列62bの外側から空隙部25を介して、伝達機構58を直線状に接続することが可能になる。
【0042】
電子線装置10では、回路パターンの検査スループットを向上させるため、電子線を高速で走査したり、水平帰還部でのブランキング(ビームのカット)を行う必要がある。これらは電極に電気信号を供給して実施するため、電気信号の伝達機構58(導入端子、真空室内信号線)を通じて行われる。高周波信号の場合、反射等により発生する発振や、信号伝達の遅れが信号線の長さに依存することが知られている。
【0043】
このため、上述した構成によって、例えば、第1カラム列62aを構成する各電子線カラム21に接続される第一伝達機構58aの長さL1(
図3参照)を一定にすることができる。同様に、第2カラム列62bを構成する各電子線カラム21に接続される第二伝達機構58bの長さL2(
図3参照)も一定にすることができる。第一伝達機構58a,58a…どうしの長さ、および第二伝達機構58b,58b…どうしの長さを、それぞれ一定にすることによって、すべての電子線カラム21ごとに電気系パラメーターの調整が不要となり、電子線装置の調整時間を短縮することができる。なお、スキャンの手法は、高速応答といった観点から電極が望ましいが、限定されず、コイルを使用した磁場偏向でも実施可能である。
【0044】
また、電子線装置10には、電子銃51、スキャン電極57、および被測定物であるウェハWに対して高電圧が印加される。一般に、高電圧を使用する場合、空間では1kV当たり0.1mm程度、絶縁物には1kV当たり1mm程度の距離が必要とされる。このため、上述したような構成の伝達機構58を採用することによって、カラム列62に対しても十分な空間を確保することが可能になり、伝達機構58を介して安定的に高電圧を電子線カラム21に供給することが可能となる。
さらに、高電圧が印加される導入機構59や導入端子65は、長時間の使用により劣化し、放電等の不良が発生しやすい。本件のように直線状に構成することで、装置を解体することなく、外部から交換することが可能となり、保守性が向上した。
【0045】
更に、二次電子線検出器56(検出系)に対しても、次のような作用、効果がある。電子線装置10では、回路パターンの検査スループットを向上させるため、電子線を高速で走査すると同時に、試料によって放出された二次電子信号を高速に検出する必要がある。これらは二次電子線検出器56によって発生した電気信号を例えばプリアンプやAD変換器を含む制御ユニット31へ供給して実施するため、電気信号の伝達機構58(導入端子、真空室内信号線)を通じて行われる。高周波信号の場合、反射等により発生する発振や、信号伝達の遅れが信号線の長さに依存することが知られている。
【0046】
このため、上述した構成によって、例えば、第1カラム列62aを構成する各電子線カラム21に接続される第一伝達機構58aの長さL1(
図3参照)を一定にすることができる。同様に、第2カラム列62bを構成する各電子線カラム21に接続される第二伝達機構58bの長さL2(
図3参照)も一定にすることができる。第一伝達機構58a,58a…どうしの長さ、および第二伝達機構58b,58b…どうしの長さを、それぞれ一定にすることによって、すべての電子線カラム21ごとに電気系パラメーターの調整が不要となり、電子線装置の調整時間を短縮することができる。
【0047】
また、電子線カラム21の外装体22を金属の筒で構成し、更に磁気シールドを施すことによって、伝達機構58が電子線カラム21どうしの間の空隙部25を貫通しても、両隣りに配された電子線カラム21内の電子線に影響を与えることがない。また、高圧や高速の電気信号を導入した場合、誘導された電場や電磁場により電子線を予期せぬ方向に偏向させてしまう懸念もある。電子線カラム21を金属によって構成することで、これらの影響を低減し、高精度に回路パターンの検査を行うことが可能になる。
【0048】
(第二実施形態)
図5は、第二実施形態における複数の電子線カラムの配列状態を側面から見た時の断面図である。本実施形態の電子線装置70では、大径部71と小径部72とが接続されてなる外装体73を備えた電子線カラム74において、小径部72に伝達機構75が接続される。伝達機構75は、電子線カラム74内に備えられた電子線光学要素に対して、例えば、電気信号の入出力を行う。
【0049】
稠密状に配列された2つのカラム列76a,76bのうち、中心側に配されたカラム列76aに対して接続される第一伝達機構75aは、小径部72の周囲に形成される空隙部77を直線状に貫通するように配置されている。そして、この第一伝達機構75aと、外周側に配されたカラム列76bに対して接続される第二伝達機構75bとは、異なる高さに複数設置されている。即ち、電子線カラム74の長手方向に沿った高さが互いに異なる位置に、第一伝達機構75aと第二伝達機構75bとが、千鳥配列されている。
【0050】
この実施形態のように、複数の伝達機構75、例えば第一伝達機構75aと第二伝達機構75bと異なる高さに複数設置する構成の場合、チャンバーユニット79に形成されたコネクタ(真空ポート)近傍において、伝達機構75の半径が空隙部77の幅よりも大きく広がった拡径部75wが形成されていても、隣接する伝達機構75どうしで干渉することなく配置できる。そして、電子線装置70の調整作業等で電子線カラム74にアクセスする場合においても、伝達機構75どうしのスペースが広がり、より保守等作業性を向上させることができる。