(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記印刷用色変換部は、前記第2のカラープロファイルとして、レッドを含む第2の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値のうち、前記第3のカラープロファイルにおける前記第2の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値と比較して、前記第2の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から高濃度側までの範囲で必要色の値を増加させ、前記第2の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度まで補色の値を増加及び減少させず、前記中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定したカラープロファイルを参照することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
前記印刷用色変換部は、前記第2のカラープロファイルとして、低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度を超えるとC,M,Y値の一部をK値に置換したカラープロファイルを参照することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷システム。
前記CMYKデータ生成工程にて、前記第2のカラープロファイルとして、レッドを含む第2の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値のうち、前記第3のカラープロファイルにおける前記第2の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値と比較して、前記第2の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から高濃度側までの範囲で必要色の値を増加させ、前記第2の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度まで補色の値を増加及び減少させず、前記中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定したカラープロファイルを参照することにより、前記印刷工程にて前記第1のCMYKデータに基づく画像を前記第1のインキセットを用いて前記用紙に印刷したときに前記用紙上で表現される印刷濃度を前記目標濃度に近付けることを特徴とする請求項5に記載の印刷方法。
前記CMYKデータ生成工程にて、前記第2のカラープロファイルとして、低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度を超えるとC,M,Y値の一部をK値に置換したカラープロファイルを参照することを特徴とする請求項5または6に記載の印刷方法。
前記CMYKデータ生成工程にて、前記第2のカラープロファイルとして、レッドを含む第2の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値のうち、前記第3のカラープロファイルにおける前記第2の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値と比較して、前記第2の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から高濃度側までの範囲で必要色の値を増加させ、前記第2の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度まで補色の値を増加及び減少させず、前記中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定したカラープロファイルを参照することにより、前記印刷物製造工程にて前記第1のCMYKデータに基づく画像を前記第1のインキセットを用いて前記用紙に印刷したときに前記用紙上で表現される印刷濃度を前記目標濃度に近付けた印刷物を製造することを特徴とする請求項8に記載の印刷物の製造方法。
前記CMYKデータ生成工程にて、前記第2のカラープロファイルとして、低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度を超えるとC,M,Y値の一部をK値に置換したカラープロファイルを参照することを特徴とする請求項8または9に記載の印刷物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インキセットにおけるそれぞれのインキの顔料濃度は種々存在する。インキの標準的な顔料濃度よりも顔料濃度を高くした高顔料濃度インキを用いて画像を印刷すれば、標準的な顔料濃度を有する標準顔料濃度インキを用いて画像を印刷した場合と比較して、用紙上で表現される印刷濃度が高くなるだけでなく、鮮やかで質感が高く、人肌再現性もよくなり高画質となる。
【0005】
しかしながら、次のような理由で高顔料濃度インキを用いることが好ましくないことがある。高顔料濃度インキは用紙に転写するインキ量がわずかに増えるだけで印刷濃度が高くなるため、所望の印刷濃度とするのが難しい。従って、熟練のオペレータでなければ高顔料濃度インキを用いることが難しい。
【0006】
オフセット印刷機は、版の非画像部を湿し水によって湿らせ、版の画像部にインキを転移させる。オフセット印刷機は、版を用紙に接触させて、画像部のインキを用紙に転写する。オフセット印刷機で高顔料濃度インキを用いると所定の印刷濃度を得るために必要なインキの量が少なくなるので、湿し水も少なくしなければならない。オペレータにとって、インキの量をある程度多くし、それに合わせて湿し水も多くする方が印刷機の制御が容易である。
【0007】
このように、標準顔料濃度インキを用いる方が好ましい場合があるが、標準顔料濃度インキを用いると、高顔料濃度インキを用いた場合ほど印刷濃度を高くすることはできず、高画質にすることが難しい。顔料濃度を必要以上に高くしなくても高画質を実現することが望まれている。
【0008】
本発明は、顔料濃度を必要以上に高くしなくても高画質な印刷物を得ることができる印刷システム、印刷方法、
及び印刷物の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加法混色のレッド,グリーン,ブルーの各色信号よりなるRGB実データと、前記RGB実データの各色信号のレベルを示すR,G,B値とL
*a
*b
*表色系のL
*,a
*,b
*値との対応関係を示す第1のカラープロファイルとを含むRGBデータが入力され、L
*a
*b
*表色系のL
*,a
*,b
*値と減法混色のシアン,マゼンタ,イエロ,ブラックの各色信号のレベルを示すC,M,Y,K値との対応関係を示す第2のカラープロファイルを参照して、前記第1のカラープロファイルでR,G,B値に対応付けられているL
*,a
*,b
*値に最も近似するL
*,a
*,b
*値を前記第2のカラープロファイルより選択し、選択されたL
*,a
*,b
*値に対応するC,M,Y,K値を出力することによって、前記RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第1のCMYKデータを生成する印刷用色変換部と、第1の顔料濃度を有するシアン,マゼンタ,イエロと所定の顔料濃度を有するブラックのインキとを含む第1のインキセットと、前記第1のCMYKデータに基づく画像を前記第1のインキセットを用いて用紙に印刷する印刷機とを備え、前記印刷機による印刷によって前記用紙に印刷される画像の目標濃度を、L
*,a
*,b
*値とC,M,Y,K値との対応関係を示す第3のカラープロファイルを参照して、前記第1のカラープロファイルでR,G,B値に対応付けられているL
*,a
*,b
*値に最も近似するL
*,a
*,b
*値を前記第3のカラープロファイルより選択し、選択されたL
*,a
*,b
*値に対応するC,M,Y,K値を出力することによって、前記RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第2のCMYKデータを、前記第1の顔料濃度よりも濃度が高い第2の顔料濃度を有するシアン,マゼンタ,イエロと所定の顔料濃度を有するブラックのインキとを含む第2のインキセットを用いて前記用紙に印刷したときに前記用紙上で表現される印刷濃度とし、前記印刷用色変換部は、前記第2のカラープロファイルとして、グリーン及びブルーを含む第1の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値のうち、前記第3のカラープロファイルにおける前記第1の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値と比較して、前記第1の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から高濃度側までの範囲で必要色の値を増加させ、前記第1の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度まで補色を増加させ、前記中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定したカラープロファイルを参照することを特徴とする印刷システムを提供する。
【0010】
本発明は、加法混色のレッド,グリーン,ブルーの各色信号よりなるRGB実データと、前記RGB実データの各色信号のレベルを示すR,G,B値とL
*a
*b
*表色系のL
*,a
*,b
*値との対応関係を示す第1のカラープロファイルとを含むRGBデータを入力するRGBデータ入力工程と、L
*a
*b
*表色系のL
*,a
*,b
*値と減法混色のシアン,マゼンタ,イエロ,ブラックの各色信号のレベルを示すC,M,Y,K値との対応関係を示す第2のカラープロファイルを参照して、前記第1のカラープロファイルでR,G,B値に対応付けられているL
*,a
*,b
*値に最も近似するL
*,a
*,b
*値を前記第2のカラープロファイルより選択し、選択されたL
*,a
*,b
*値に対応するC,M,Y,K値を出力することによって、前記RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第1のCMYKデータを生成するCMYKデータ生成工程と、前記第1のCMYKデータに基づく画像を第1の顔料濃度を有するシアン,マゼンタ,イエロと所定の顔料濃度を有するブラックのインキとを含む第1のインキセットを用いて用紙に印刷する印刷工程とを含み、前記印刷工程にて前記用紙に印刷される画像の目標濃度を、L
*,a
*,b
*値とC,M,Y,K値との対応関係を示す第3のカラープロファイルを参照して、前記第1のカラープロファイルでR,G,B値に対応付けられているL
*,a
*,b
*値に最も近似するL
*,a
*,b
*値を前記第3のカラープロファイルより選択し、選択されたL
*,a
*,b
*値に対応するC,M,Y,K値を出力することによって、前記RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第2のCMYKデータを、前記第1の顔料濃度よりも濃度が高い第2の顔料濃度を有するシアン,マゼンタ,イエロと所定の顔料濃度を有するブラックのインキとを含む第2のインキセットを用いて前記用紙に印刷したときに前記用紙上で表現される印刷濃度とし、前記CMYKデータ生成工程にて、前記第2のカラープロファイルとして、グリーン及びブルーを含む第1の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値のうち、前記第3のカラープロファイルにおける前記第1の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値と比較して、前記第1の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から高濃度側までの範囲で必要色の値を増加させ、前記第1の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度まで補色を増加させ、前記中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定したカラープロファイルを参照することにより、前記印刷工程にて前記第1のCMYKデータに基づく画像を前記第1のインキセットを用いて前記用紙に印刷したときに前記用紙上で表現される印刷濃度を前記目標濃度に近付けることを特徴とする印刷方法を提供する。
【0011】
本発明は、加法混色のレッド,グリーン,ブルーの各色信号よりなるRGB実データと、前記RGB実データの各色信号のレベルを示すR,G,B値とL
*a
*b
*表色系のL
*,a
*,b
*値との対応関係を示す第1のカラープロファイルとを含むRGBデータを入力するRGBデータ入力工程と、L
*a
*b
*表色系のL
*,a
*,b
*値と減法混色のシアン,マゼンタ,イエロ,ブラックの各色信号のレベルを示すC,M,Y,K値との対応関係を示す第2のカラープロファイルを参照して、前記第1のカラープロファイルでR,G,B値に対応付けられているL
*,a
*,b
*値に最も近似するL
*,a
*,b
*値を前記第2のカラープロファイルより選択し、選択されたL
*,a
*,b
*値に対応するC,M,Y,K値を出力することによって、前記RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第1のCMYKデータを生成するCMYKデータ生成工程と、前記第1のCMYKデータに基づく画像を第1の顔料濃度を有するシアン,マゼンタ,イエロと所定の顔料濃度を有するブラックのインキとを含む第1のインキセットを用いて用紙に印刷して印刷物を製造する印刷物製造工程とを含み、前記印刷物製造工程にて前記用紙に印刷される画像の目標濃度を、L
*,a
*,b
*値とC,M,Y,K値との対応関係を示す第3のカラープロファイルを参照して、前記第1のカラープロファイルでR,G,B値に対応付けられているL
*,a
*,b
*値に最も近似するL
*,a
*,b
*値を前記第3のカラープロファイルより選択し、選択されたL
*,a
*,b
*値に対応するC,M,Y,K値を出力することによって、前記RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第2のCMYKデータを、前記第1の顔料濃度よりも濃度が高い第2の顔料濃度を有するシアン,マゼンタ,イエロと所定の顔料濃度を有するブラックのインキとを含む第2のインキセットを用いて前記用紙に印刷したときに前記用紙上で表現される印刷濃度とし、前記CMYKデータ生成工程にて、前記第2のカラープロファイルとして、グリーン及びブルーを含む第1の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値のうち、前記第3のカラープロファイルにおける前記第1の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値と比較して、前記第1の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から高濃度側までの範囲で必要色の値を増加させ、前記第1の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度まで補色を増加させ、前記中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定したカラープロファイルを参照することにより、前記印刷物製造工程にて前記第1のCMYKデータに基づく画像を前記第1のインキセットを用いて前記用紙に印刷したときに前記用紙上で表現される印刷濃度を前記目標濃度に近付けた印刷物を製造することを特徴とする印刷物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、
加法混色のレッド,グリーン,ブルーの各色信号よりなるRGB実データと、前記RGB実データの各色信号のレベルを示すR,G,B値とL*a*b*表色系のL*,a*,b*値との対応関係を示す第1のカラープロファイルとを含むRGBデータが入力され、L*a*b*表色系のL*,a*,b*値と減法混色のシアン,マゼンタ,イエロ,ブラックの各色信号のレベルを示すC,M,Y,K値との対応関係を示す第2のカラープロファイルを参照して、前記第1のカラープロファイルでR,G,B値に対応付けられているL*,a*,b*値に最も近似するL*,a*,b*値を前記第2のカラープロファイルより選択し、選択されたL*,a*,b*値に対応するC,M,Y,K値を出力することによって、前記RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第1のCMYKデータを生成する印刷用色変換部と、前記第1のCMYKデータに基づく画像を第1の顔料濃度を有するシアン,マゼンタ,イエロと所定の顔料濃度を有するブラックのインキとを含む第1のインキセットを用いて用紙に印刷する印刷機とを備え、前記印刷機による印刷によって前記用紙に印刷される画像の目標濃度を、L*,a*,b*値とC,M,Y,K値との対応関係を示す第3のカラープロファイルを参照して、前記第1のカラープロファイルでR,G,B値に対応付けられているL*,a*,b*値に最も近似するL*,a*,b*値を前記第3のカラープロファイルより選択し、選択されたL*,a*,b*値に対応するC,M,Y,K値を出力することによって、前記RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第2のCMYKデータを、前記第1の顔料濃度よりも濃度が高い第2の顔料濃度を有するシアン,マゼンタ,イエロと所定の顔料濃度を有するブラックのインキとを含む第2のインキセットを用いて前記用紙に印刷したときに前記用紙上で表現される印刷濃度とし、前記印刷用色変換部は、前記第2のカラープロファイルとして、グリーン及びブルーを含む第1の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値のうち、前記第3のカラープロファイルにおける前記第1の色相範囲のそれぞれの色のC,M,Y,K値と比較して、前記第1の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から高濃度側までの範囲で必要色の値を増加させ、前記第1の色相範囲におけるそれぞれの色の低濃度側から低濃度側と高濃度側との間の所定の中間濃度まで補色の値を増加させ、前記中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定したカラープロファイルを参照することを特徴とする印刷システムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷システム、印刷方法、
及び印刷物の製造方
法によれば、顔料濃度を必要以上に高くしなくても高画質な印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、各実施形態の印刷システム、印刷方法、印刷物の製造方法、及びインキセットについて、添付図面を参照して説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態の印刷システムは、印刷用色変換部10と、印刷機20と、インキセット30とを備える。印刷用色変換部10には、加法混色のR,G,Bの各色信号よりなるRGB実データと、RGB・L
*a
*b
*対応カラープロファイルCP1とを含むRGBデータが入力される(RGBデータ入力工程)。以下、RGB・L
*a
*b
*対応カラープロファイルCP1をカラープロファイルCP1と略記する。カラープロファイルCP1は第1のカラープロファイルである。
【0017】
RGBデータは、例えば、デジタルカメラによって生成された画像データである。カラープロファイルCP1は、R,G,Bの各色信号のレベルを示すR,G,B値と、L
*a
*b
*表色系(CIE L
*a
*b
*)のL
*,a
*,b
*値との対応関係を示す。例えば、Exif(Exchangeable image file format)情報に、カラープロファイルCP1として用いられるカラープロファイルの名称を記述することによって、RGB実データとカラープロファイルCP1とが組み合わされていてもよい。
【0018】
カラープロファイルCP1は、国際カラーコンソーシアム(ICC)のフォーマットに準拠したICCプロファイルであってもよい。RGBデータは、国際電気標準会議(IEC)によって定められたsRGBと称される色空間の規格で表現されていてもよく、カラープロファイルCP1はsRGBに対応していてもよい。
【0019】
印刷用色変換部10は、L
*,a
*,b
*・CMYKカラープロファイルCP2を有する。以下、L
*,a
*,b
*・CMYKカラープロファイルCP2をカラープロファイルCP2と略記する。カラープロファイルCP2は第2のカラープロファイルである。カラープロファイルCP2は、L
*a
*b
*表色系のL
*,a
*,b
*値と減法混色のC,M,Y,Kの各色信号のレベルを示すC,M,Y,K値との対応関係を示す。
【0020】
印刷用色変換部10は、カラープロファイルCP2を参照して、カラープロファイルCP1でR,G,B値に対応付けられているL
*,a
*,b
*値に最も近似するL
*,a
*,b
*値をカラープロファイルCP2より選択し、選択されたL
*,a
*,b
*値に対応するC,M,Y,K値を出力する。これによって、印刷用色変換部10は、RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換したCMYKデータを生成する(CMYKデータ生成工程)。印刷用色変換部10より出力されるCMYKデータは、第1のCMYKデータである。
【0021】
印刷用色変換部10は、集積回路等のハードウェアによって構成されていてもよいし、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより構成されていてもよい。
【0022】
印刷機20は、インクジェットプリンタ等の家庭用またはオフィス用のプリンタであってもよいし、業務用の印刷機であってもよい。後者の場合、印刷機20は、オフセット輪転印刷機であってもよいし、オフセット枚葉印刷機であってもよいし、新聞輪転機でもよい。
【0023】
インキセット30は、第1の顔料濃度を有するC,M,Yの各インキと、所定の顔料濃度を有するKのインキとを含む。インキセット30は、第1のインキセットである。第1の顔料濃度を有するC,M,Yインキとは、C,M,Yインキの顔料濃度が全て同一ということを意味する必要はなく、それぞれ所定の濃度に調整されていればよい。第1の顔料濃度は標準濃度であり、後述する第2の顔料濃度と比較すれば低濃度である。インキセット30におけるC,M,Yインキは標準濃度インキである。
【0024】
印刷機20は、印刷用色変換部10より出力されたCMYKデータに基づくカラー画像を、インキセット30を用いて用紙40に印刷する(印刷工程)。用紙40は、コート紙、更紙(低級紙)等の任意の用紙でよい。印刷機20が用紙40にカラー画像を印刷することによって、用紙40上にインキ30iが塗布された印刷物41が製造される(印刷物製造工程)。
【0025】
ここで、印刷機20が、CMYKデータに基づくカラー画像を、第1の顔料濃度よりも濃度が高い第2の顔料濃度を有するC,M,Yの各インキと、所定の顔料濃度を有するKインキとを含むインキセットを用いて用紙40に印刷した場合を想定する。このときのインキセットを第2のインキセットとする。
【0026】
同様に、第2の顔料濃度を有するC,M,Yインキとは、C,M,Yインキの顔料濃度が全て同一ということを意味する必要はなく、それぞれ所定の濃度に調整されていればよい。第2のインキセットのC,M,Yインキはインキセット30におけるそれらと比較して濃度が高く、高顔料濃度インキである。
【0027】
つまり、第2のインキセットとインキセット30(第1のインキセット)の同色のインキどうしを比べた場合に、第2のインキセットにおけるC,M,Yインキの顔料濃度とインキセット30におけるC,M,Yインキの顔料濃度とは次のような関係にある。第2のインキセットのCインキの顔料濃度は、インキセット30のCインキの顔料濃度よりも高い。第2のインキセットのMインキの顔料濃度は、インキセット30のMインキの顔料濃度よりも高い。第2のインキセットのYインキの顔料濃度は、インキセット30のYインキの顔料濃度よりも高い。換言すると、第2のインキセットとインキセット30における異色のインキどうしの比較ではない。
【0028】
なお、インキセット30におけるKインキと第2のインキセットにおけるKインキの顔料濃度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
第1のインキセット及び第2のインキセットは、例えば、後述するインキセットSA〜SDより選択される。C,M,Yインキの顔料濃度は、インキセットSAが最も高く、インキセットSBはインキセットSAよりも低く、インキセットSCはインキセットSBよりも低く、インキセットSDが最も低い(顔料濃度:SA>SB>SC>SD)。
【0030】
インキセットSBを第1のインキセットとして選択すれば、インキセットSAが第2のインキセットとなる。インキセットSCを第1のインキセットとして選択すれば、インキセットSB(またはSA)が第2のインキセットとなる。インキセットSDを第1のインキセットとして選択すれば、インキセットSC(または、SBもしくはSA)が第2のインキセットとなる。
【0031】
インキセットSAを第1のインキセットとして選択してもよい。インキセットSAを第1のインキセットとして選択すれば、インキセットSAよりも顔料濃度が高いインキセットが第2のインキセットとなる。
【0032】
このように選択した第1のインキセットを「標準濃度インキセット」と称し、標準濃度インキセットのC,M,Yインキの顔料濃度よりも高濃度のC,M,Yインキを有する第2のインキセットを「高濃度インキセット」と称することとする。
【0033】
印刷機20が高濃度インキセットを用いて印刷する場合、印刷用色変換部10が参照するカラープロファイルを高濃度インキセットが用いられることを前提として設定されたカラープロファイルとすれば、印刷物41のカラー画像は高画質となる。高濃度インキセットに対応するカラープロファイルを第3のカラープロファイルとする。第3のカラープロファイルは、L
*,a
*,b
*値とC,M,Y,K値との対応関係を示す。第3のカラープロファイルを高濃度用カラープロファイルと称する場合がある。
【0034】
印刷用色変換部10が第3のカラープロファイルを参照して、カラープロファイルCP1でR,G,B値に対応付けられているL
*,a
*,b
*値に最も近似するL
*,a
*,b
*値を第3のカラープロファイルより選択し、選択されたL
*,a
*,b
*値に対応するC,M,Y,K値を出力したと想定する。このとき印刷用色変換部10が生成するCMYKデータを第2のCMYKデータとする。
【0035】
印刷機20が、第1のCMYKデータに基づくカラー画像を標準濃度インキセットを用いて用紙40に印刷したときの目標濃度を、印刷機20が、第2のCMYKデータに基づくカラー画像を高濃度インキセットを用いて用紙40に印刷したときに用紙40上で表現される印刷濃度とする。
【0036】
次に、標準濃度インキセットのインキセット30を用いながら、第1のCMYKデータに基づくカラー画像を用紙40に印刷したときの濃度を、高濃度インキセットを用いた場合と遜色ない程度に改善するためのカラープロファイルCP2を具体的に説明する。
【0037】
図2Aは、カラープロファイルCP1と第3のカラープロファイルのうち、Gの1つの色相におけるプロファイルを抜粋して示している。カラープロファイルCP1のGの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP1g、第3のカラープロファイルのGの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP3gとする。
【0038】
図2Bは、カラープロファイルCP1とカラープロファイルCP2(第2のカラープロファイル)のうち、
図2Aと同じ色相におけるプロファイルを抜粋して示している。カラープロファイルCP2のGの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP2gとする。
図2A及び
図2Bに示すプロファイルにおいて、上側がライト(低濃度)側、下側がシャドウ(高濃度)側である。
【0039】
図2A及び
図2Bに示す色相は、L
*a
*b
*色空間のa
*,b
*平面で見れば
図3の(a)に示す位置の色相であり、L
*a
*b
*色空間で立体的に見れば
図3の(b)に示す位置の色相である。
図3の(a)及び(b)において、矢印の方向に向かうほど濃度が高くなる。
【0040】
Gの必要色はC及びYであり、補色はMである。
図2Bに示すように、プロファイルCP2gにおいては、プロファイルCP3gと比較して、ライトからシャドウまでの全体で必要色C及びYを増加させている。必要色C及びYはほぼ一様に増加されているのがよい。
【0041】
また、プロファイルCP2gにおいては、プロファイルCP3gと比較して、ライトからライトとシャドウとの間の所定の中間濃度まで補色Mを増加させている。プロファイルCP2gにおいては、中間濃度を超えると補色Mを減少させている。補色Mが増加から減少に転じた直後の補色Mの値は、プロファイルCP3gにおける補色Mの値と比較して大きいが、段階的に小さくなっていく。補色Mは線形的に増加し、線形的に減少するのがよい。
【0042】
さらに、プロファイルCP2gにおいては、ライトとシャドウとの間の所定の中間濃度以降、UCR(Under Color Removal)と称される技法を用いて、C,M,Y値の一部をK値に置換している。UCRを用いることは必須ではないが、UCRを用いるとC,M,Yインキの使用量を減らすことができる。
【0043】
図4Aは、カラープロファイルCP1と第3のカラープロファイルのうち、Bの1つの色相におけるプロファイルを抜粋して示している。カラープロファイルCP1のBの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP1b、第3のカラープロファイルのBの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP3bとする。
【0044】
図4Bは、カラープロファイルCP1とカラープロファイルCP2(第2のカラープロファイル)のうち、
図4Aと同じ色相におけるプロファイルを抜粋して示している。カラープロファイルCP2のBの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP2bとする。
図4A及び
図4Bに示すプロファイルにおいて、上側がライト側、下側がシャドウ側である。
【0045】
図4A及び
図4Bに示す色相は、L
*a
*b
*色空間のa
*,b
*平面で見れば
図5の(a)に示す位置の色相であり、L
*a
*b
*色空間で立体的に見れば
図5の(b)に示す位置の色相である。
図5の(a)及び(b)において、矢印の方向に向かうほど濃度が高くなる。
【0046】
Bの必要色はC及びMであり、補色はYである。
図4Bに示すように、プロファイルCP2bにおいては、プロファイルCP3bと比較して、ライトからシャドウまでの全体で必要色C及びMを増加させている。必要色C及びMはほぼ一様に増加されているのがよい。
【0047】
また、プロファイルCP2bにおいては、プロファイルCP3bと比較して、ライトからライトとシャドウとの間の所定の中間濃度まで補色Yを増加させている。ここでの中間濃度はライト側に偏った位置の濃度となっている。プロファイルCP2bにおいては、中間濃度を超えると補色Yを減少させている。補色Yが増加から減少に転じた直後の補色Yの値は、プロファイルCP3bにおける補色Yの値と同じであるが、段階的に小さくなっていく。補色Yは線形的に減少するのがよい。補色Yを複数段階で増加させる場合には線形的に増加するのがよい。
【0048】
さらに、プロファイルCP2bにおいては、ライトとシャドウとの間の所定の中間濃度以降、UCRを用いてC,M,Y値の一部をK値に置換している。プロファイルCP2gの場合と同様に、UCRを用いることは必須ではない。
【0049】
ここでは、Gの1つの色相とBの1つの色相のみを抜粋して説明したが、G及びBを含む色相範囲において、カラープロファイルCP2は同様の特性を有する。即ち、カラープロファイルCP2は、ライトからシャドウまでの範囲で必要色の値を増加させ、ライトからライトとシャドウとの間の所定の中間濃度まで補色を増加させ、中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定されている。
【0050】
G及びBを含む色相範囲において、補色が減少し始めるライトとシャドウとの間の中間濃度の位置は、それぞれの色相に応じて適宜設定されていればよい。
【0051】
図6Aは、カラープロファイルCP1と第3のカラープロファイルのうち、Rの1つの色相におけるプロファイルを抜粋して示している。カラープロファイルCP1のRの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP1r、第3のカラープロファイルのRの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP3rとする。
【0052】
図6Bは、カラープロファイルCP1とカラープロファイルCP2(第2のカラープロファイル)のうち、
図6Aと同じ色相におけるプロファイルを抜粋して示している。カラープロファイルCP2のRの1つの色相におけるプロファイルをプロファイルCP2rとする。
図6A及び
図6Bに示すプロファイルにおいて、上側がライト側、下側がシャドウ側である。
【0053】
図6A及び
図6Bに示す色相は、L
*a
*b
*色空間のa
*,b
*平面で見れば
図7の(a)に示す位置の色相であり、L
*a
*b
*色空間で立体的に見れば
図7の(b)に示す位置の色相である。
図7の(a)及び(b)において、矢印の方向に向かうほど濃度が高くなる。
【0054】
Rの必要色はM及びYであり、補色はCである。
図6Bに示すように、プロファイルCP2rにおいては、プロファイルCP3rと比較して、ライトからシャドウまでの全体で必要色M及びYを増加させている。必要色M及びYはほぼ一様に増加されているのがよい。
【0055】
また、プロファイルCP2rにおいては、プロファイルCP3rと比較して、ライトからライトとシャドウとの間の所定の中間濃度まで補色Cを増加及び減少させず同じ値としている。プロファイルCP2rにおいては、中間濃度を超えると補色Cを減少させている。補色Cは線形的に減少するのがよい。
【0056】
さらに、プロファイルCP2rにおいては、ライトとシャドウとの間の所定の中間濃度以降、UCRを用いてC,M,Y値の一部をK値に置換している。プロファイルCP2g及びCP2bの場合と同様に、UCRを用いることは必須ではない。
【0057】
ここでは、Rの1つの色相のみを抜粋して説明したが、Rを含む色相範囲において、カラープロファイルCP2は同様の特性を有する。即ち、カラープロファイルCP2は、ライトからシャドウまでの範囲で必要色の値を増加させ、ライトからライトとシャドウとの間の所定の中間濃度まで補色を増減せず、中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定されている。
【0058】
Rを含む色相範囲において、補色が減少し始めるライトとシャドウとの間の中間濃度の位置は、それぞれの色相に応じて適宜設定されていればよい。
【0059】
ところで、Yはそもそも鮮やかな色であるため、Yを含む色相範囲のプロファイルは、G及びBを含む色相範囲またはRを含む色相範囲のプロファイルのような特徴を有してなくてもよい。Yを含む色相範囲においては、カラープロファイルCP2のC,M,Y,K値は第3のカラープロファイルのC,M,Y,K値と比較してわずかに増減させる程度でよい。
【0060】
図2A,
図4A,
図6Aに抜粋して例示した第3のカラープロファイルは、高濃度インキセットとしてインキセットSBが用いられたときに好適なカラープロファイルである。
図2B,
図4B,
図6Bに抜粋して例示したカラープロファイルCP2は、標準濃度インキセットとしてインキセットSCが用いられたときに好適なカラープロファイルである。
【0061】
どのインキセットが高濃度インキセットとして用いられ、どのインキセットが標準濃度インキセットとして用いられるかによって第3のカラープロファイル及びカラープロファイルCP2におけるC,M,Y,K値は異なる。しかしながら、いずれの場合であっても、第3のカラープロファイルのC,M,Y,K値と比較したときのカラープロファイルCP2のC,M,Y,K値は、上記と同様の特徴を有する。
【0062】
図8〜
図19を用いて、印刷用色変換部10がカラープロファイルCP2を用いてRGB実データをCMYKデータに変換することによる効果を説明する。
【0063】
図8〜
図19において、△を一点鎖線で結んだ曲線は、印刷用色変換部10が高濃度用カラープロファイル(第3のカラープロファイル)を用いて色変換し、印刷機20が高濃度インキセットを用いて印刷したときの特性を示している。
【0064】
□を破線で結んだ曲線は、印刷用色変換部10が高濃度用カラープロファイルを用いて色変換し、印刷機20が標準濃度インキセットを用いて印刷したときの特性を示している。○を実線で結んだ曲線は、印刷用色変換部10が高画質変換カラープロファイル(カラープロファイルCP2)を用いて色変換し、印刷機20が標準濃度インキセットを用いて印刷したときの特性を示している。
【0065】
図8及び
図9に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのRの印刷画像は、高濃度用カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのRの印刷画像よりも鮮やかになっている。高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのRの印刷画像は、a
*,b
*平面及びa
*,L
*平面で、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときのRの印刷画像と近似している。
【0066】
図10及び
図11に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのGの印刷画像は、高濃度用カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのGの印刷画像よりも鮮やかになっている。高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのGの印刷画像は、a
*,b
*平面及びa
*,L
*平面で、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときのGの印刷画像と近似している。
【0067】
図12及び
図13に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときBの印刷画像は、高濃度用カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのBの印刷画像よりも鮮やかになっている。
【0068】
図12に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときBの印刷画像は、a
*,b
*平面で、濃度が濃くなると若干の相違が生じるものの、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときのBの印刷画像と近似している。
図13に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときBの印刷画像は、a
*,L
*平面で、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときのBの印刷画像と近似している。
【0069】
図14及び
図15に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのCの印刷画像は、高濃度用カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのCの印刷画像よりも鮮やかになっている。高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのCの印刷画像は、a
*,b
*平面及びa
*,L
*平面で、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときのCの印刷画像と近似している。
【0070】
図16及び
図17に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときMの印刷画像は、高濃度用カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのMの印刷画像よりも鮮やかになっている。
【0071】
図16に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときMの印刷画像は、a
*,b
*平面で、濃度が濃くなると相違が生じるものの、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときのMの印刷画像と近似している。
図17に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときMの印刷画像は、a
*,L
*平面で、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときのMの印刷画像と近似している。
【0072】
図18及び
図19に示すように、高画質変換カラープロファイルと標準濃度インキセットとを組み合わせたときのYの印刷画像は、a
*,b
*平面及びa
*,L
*平面で、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときのYの印刷画像と近似している。
【0073】
このように、第1実施形態の印刷システム、印刷方法、及び印刷物の製造方法によれば、高濃度用カラープロファイルと高濃度インキセットとを組み合わせたときの印刷画像とほとんど遜色がなく、高画質な印刷物を得ることができる。即ち、第1実施形態の印刷システム、印刷方法、及び印刷物の製造方法によれば、顔料濃度を必要以上に高くしなくても高画質な印刷物を得ることができる。
【0074】
第1実施形態の印刷システム、印刷方法、及び印刷物の製造方法によれば、次のような効果も奏する。印刷機20は、高濃度インキセットを用いることを前提として、インキの出力量を調整するキー開度が調整されており、印刷物41のインキ30iの膜厚が調整されているとする。印刷機20が高濃度インキセットの代わりに標準濃度インキセットを用いる場合でも、高画質変換カラープロファイルを用いることによってキー開度を大きく変更することなく、インキ30iの膜厚を同程度とすることができる。標準濃度インキセットを用いても、乾燥性、網点再現性、光沢の程度にほとんど影響を与えない。
【0075】
次に、本実施形態において用いることのできる第1のインキセットについて具体的に説明する。なお、第2のインキセットは、上述のとおり、顔料濃度が異なる点を除き、第1のインキセットと同様の組成である。
【0076】
本実施形態の印刷システム、印刷方法、及び印刷物の製造方法は、様々な印刷方式に適用できるものであるため、使用されるインキも特に限定されることはなく、印刷方式に適した様々なタイプのインキを選択することができる。なかでも、平版方式を使ったオフセット印刷が好ましく、オフセット印刷インキを用いることが好ましい。
【0077】
オフセット印刷インキにも様々な種類があり、特に限定されることはない。例えば、ヒートセット型オフセットインキ、酸化重合型オフセットインキ、浸透乾燥型オフセットインキ及び活性エネルギー線硬化型オフセットインキが挙げられ、乾燥性に優れる等の観点からヒートセット型オフセットインキを用いることがより好ましい。
【0078】
ヒートセット型オフセットインキは、用紙に転写された後に熱を加えることでインキ中の溶剤分が蒸発して乾燥するインキである。このインキには、一般に、顔料、バインダ樹脂、及び溶剤が含まれる。顔料は特に限定されることはなく、一般にインキに使用される、任意の有機顔料または無機顔料が使用できる。顔料の含有量は、インキの全量に対して5〜30質量%であることが好ましい。
【0079】
有機顔料としては、例えば、アゾ系として、C系(βナフトール系)、2B系及び6B系(βオキシナフトエ系)等の溶性アゾ顔料、βナフトール系、βオキシナフトエ酸アニリド系、モノアゾイエロー系、ジスアゾイエロー系、ピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料、アセト酢酸アニリド系等の縮合アゾ顔料を挙げることができる。
【0080】
また、有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系として、銅フタロシアニン(αブルー、βブルー、εブルー)、塩素、臭素等のハロゲン化銅フタロシアン、及び金属フリーのフタロシアニン顔料を挙げることができる。さらに、有機顔料としては、例えば、多環顔料としてペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、及びキノフタロン系顔料を挙げることができる。
【0081】
無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、群青、カーボンブラック、グラファイト、及びアルミニウム粉を挙げることができる。
【0082】
バインダ樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、及び石油樹脂等が挙げられ、それらは任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。バインダ樹脂の含有量は、印刷適性の観点から、インキ中に20〜50質量%であることが好ましく、30〜45質量%であることがより好ましい。
【0083】
好ましくは、バインダ樹脂としてロジン変性フェノール樹脂を用いることができる。ロジン変性フェノール樹脂は、ロジンにフェノール−ホルムアルデヒド初期縮合物(レゾール樹脂)を反応させた後、多価アルコールでエステル化して得られる樹脂である。一般的なロジン変性フェノール樹脂のロジンとしては、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン、重合ロジン、不均斉化ロジン、及び水添ロジン等が挙げられる。
【0084】
なかでも、インキの粘弾性と流動性の双方を適性に保ち、溶解性等を確保する観点から、質量平均分子量が10000〜200000、より好ましくは20000〜100000、さらに好ましくは30000〜70000であるロジン変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0085】
なお、後述する実施例を含め本明細書において質量平均分子量は、東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィ)「HLC−8020」を用いて測定した値である。検量線は、標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムには「TSKgel SuperHM−M」(東ソー株式会社製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
【0086】
また、ロジン変性フェノール樹脂のノルマルパラフィン白濁温度は80〜180℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは100〜170℃の範囲である。この範囲であれば、溶解性が好適であり、裏付き耐性、ブロッキング耐性、光沢、着肉性等が良好である。ここで、ノルマルパラフィン白濁温度とは、樹脂10質量%と14〜16の炭素数を有するノルマルパラフィン90質量%を加熱混合した際に、白濁する下限の温度をいう。ノルマルパラフィン白濁温度を超える温度では白濁が観察されない。
【0087】
溶剤としては、熱風乾燥が容易であるような、1種または2種以上の揮発性石油系溶剤を用いることができるが、環境に配慮して1種または2種以上の植物油類を適宜組み合わせることも好ましい。石油系溶剤とは、一般的にアロマフリー溶剤と称される、芳香族炭化水素が1質量%未満である溶剤である。好ましくは沸点が230〜300℃、より好ましくは240〜280℃のものを用いることができ、具体的にはJXエネルギー株式会社製AFソルベント4号、AFソルベント7号等が挙げられる。石油系溶剤は、乾燥性、樹脂溶解性、あるいは環境配慮の観点からインキ全量の10〜45質量%以下であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。
【0088】
植物油類とは、植物油または植物油由来の化合物であり、再生植物油も使用可能である。代表的な植物油としては、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、及び脱水ヒマシ油が例示でき、それらの熱重合油及び酸素吹き込み重合油等も使用できる。植物油類の含有量は、溶解性、環境配慮の観点から、インキの全量に対して7〜40質量%の範囲であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0089】
インキには、必要に応じて、ゲル化剤、顔料分散剤、金属ドライヤ、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦向上剤、裏移り防止剤、非イオン系海面活性剤、多価アルコール等の添加剤を適宜使用することができる。
【0090】
酸化重合型オフセットインキは、用紙に印刷後、空気中の酸素によって植物油が酸化固化して乾燥するインキである。このインキには、一般に、顔料、バインダ樹脂、金属ドライヤ、及び溶剤が含まれる。顔料、バインダ樹脂、及び溶剤としては、上記ヒートセット型オフセットインキにおいて例示したのと同様の成分を使用できる。その他の任意成分についても同様である。
【0091】
上記ヒートセット型オフセットインキに対し、酸化重合型オフセットインキは、金属ドライヤを含むものである。金属ドライヤは、酸化重合を促進する酸化重合触媒であり、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチル酪酸、ナフテン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、セカノイック酸、トール油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ジメチルヘキサノイック酸、3,5,5,−トリメチルヘキサノイック酸、及びジメチルオクタノイック酸等の有機カルボン酸の金属塩、例えばカルシウム、コバルト、鉛、鉄、マンガン、亜鉛、及びジルコニウム塩等の公知公用の化合物を使用可能である。インキ表面及び内部硬化を促進するために、これらの複数を適宜併用して使用してもよい。
【0092】
インキは、ゲル化剤を含むことが好ましい。ゲル化剤は、バインダ樹脂をワニス化する際に使用することが好ましい。これによりインキの粘度が調整しやすくなる。ゲル化剤としては、例えば、トリメチロールプロパン−トリス−β−N−アジリジニルプロピオネート、ペンタエリスリトールプロパン−トリス−β−N−アジリジニルプロピオネート等のアジリン化合物を挙げることができる。また、ゲル化剤としては、例えば、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソポロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物を挙げることができる。
【0093】
さらに、ゲル化剤としては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド等のアルミニウムアルコラート類を挙げることができる。
【0094】
活性エネルギー線硬化型オフセットインキは、用紙に印刷後、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、重合性モノマーが重合して乾燥するインキである。このインキには、一般に、顔料、バインダ樹脂、ラジカル重合性モノマー、及びラジカル重合開始剤が含まれる。顔料は、上記ヒートセット型オフセットインキにおいて例示した顔料と同様のものを使用できる。その他の添加剤についても同様である。
【0095】
バインダ樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合等の反応性の官能基を有しない、活性エネルギー線に対し非反応性の熱硬化性または熱可塑性の樹脂を使用できる。これらの樹脂としては、ラジカル重合性モノマーに可溶であるものが選ばれ、その質量平均分子量は10000〜1000000程度であることが好ましい。
【0096】
具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、及び合成ゴム(例えば、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体)等が挙げられる。これらの樹脂は、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ジアリルフタレート樹脂を用いることが好ましい。
【0097】
ラジカル重合性モノマーとしては、1種または2種以上の、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを用いることができる。その質量平均分子量は、特に限定はされないが、100〜6000であることが好ましく、200〜5000であることがより好ましい。ラジカル重合性モノマーは、インキ中に5〜60質量%の範囲で用いられることが好ましい。
【0098】
より詳細には、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーは、単官能または多官能の(メタ)アクリレート類、又はエチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマー(反応性オリゴマー)であることが好ましく、これらを適宜組み合わせることでインキの粘度を調節することができる。なお、モノマーの質量平均分子量とは、単官能または多官能の(メタ)アクリレート類の場合は、その構造式から計算される分子量であり、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマー(反応性オリゴマー)の場合は、上述のGPCにより測定される質量平均分子量である。
【0099】
単官能(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであり、アルキルの炭素数は2〜18であることが好ましい。具体的には、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。他にも、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びトリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0100】
多官能(メタ)アクリレート類としてはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート(通称MANDA)、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネート、テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、及びトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0101】
エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマー(反応性オリゴマー)としては、アルキッドアクリレート、エポキシアクリレート、及びウレタン変性アクリレート等が使用される。
【0102】
ラジカル重合開始剤としては、一般的なものを用いることができ、特に限定されることはない。例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。これらの重合開始剤と併用して、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ペンチル4−ジメチルアミノベンゾエート等の増感剤を使用してもよい。
【0103】
本実施形態の印刷システム、印刷方法、及び印刷物の製造方法には、様々な用紙を用いることができる。例えば、上述したコート紙、更紙の他、上質紙、中質紙、クラフト紙等を用いることができ、特に限定されることはない。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により実施形態をさらに詳細に説明する。以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は、「質量部」を表し、「%」は、「質量%」を表す。また、表中の配合量は質量部である。
【0105】
(合成例1)レゾール型フェノール樹脂
撹拌機、冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、オクチルフェノール1000部、純度92%のパラホルムアルデヒド480部、純度98%の水酸化カルシウム10部、及びキシレン530部を加えて、撹拌しながら90℃で5時間反応させた。その後フラスコにキシレン430部、及び水250部を加え、撹拌しながら濃度98%の硫酸を10部滴下した。滴下終了後撹拌し、静置した。次いで、溶液の上層部(水)を除去し、下層部の溶液を取り出し、不揮発分60%のレゾール型フェノール樹脂溶液を得た。
【0106】
(合成例2)ロジン変性フェノール樹脂
撹拌機、水分分離器付き冷却器、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、ガムロジン440部を仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら200℃で溶解した。次いでフラスコに、上記レゾール型フェノール樹脂溶液を870部、内温200℃を維持したまま2時間かけて滴下した。その後、キシレンを除去しながら内温を250℃に昇温し、250℃を維持したままグリセリン40部、及びp−トルエンスルホン酸0.22部を仕込み14時間反応させた。反応終了後、冷却を行い質量平均分子量(Mw)60000、酸価26mgKOH/gのロジン変性フェノール樹脂を得た。
【0107】
(製造例1)ゲルワニス1
撹拌機、リービッヒ冷却管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、上記ロジン変性フェノール樹脂A 44部、再生大豆油(ヨウ素価117)35部、石油系溶剤としてAFソルベント7号(商品名、JXエネルギー株式会社製)20部、ゲル化剤としてALCH(商品名、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、川研ファインケミカル株式会社製)1部を仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら内温を190℃に昇温した。190℃で1時間反応を行った後、冷却し、ゲルワニス1を得た。得られたゲルワニス1を用いて、以下のとおり、各色のオフセット印刷インキを作製した。
【0108】
(Cインキの作製)
2.5LのフラッシャにC顔料としてリオノールブルーNo.7334P(商品名、トーヨーカラー株式会社製)のプレスケーキ571部(不揮発分49%)を仕込み、撹拌しながら上記ゲルワニス1の500部を配合してフラッシングを行い、プレスケーキ中の水分をワニスで置換した。その後、置換された水を除去し、さらにゲルワニス1の220部を追加し混合した上で、水分率が0.5%以下になるまで120℃で減圧脱水を行い、Cフラッシングベースインキを作製した。次いで、Cフラッシングベースインキ3本ロールで練肉して練肉ベース(Cベースインキ)を得た。得られたCベースインキとゲルワニス1、上記AFソルベント7号、及び上記再生大豆油を、
図20に記載した割合で混合し、それぞれ顔料濃度が6%、12%、18%、24%の各Cインキを得た。
【0109】
(Mインキの作製)
2.5LのフラッシャにM顔料としてリオノールレッド6B No.4214S−P(商品名、トーヨーカラー株式会社製)のプレスケーキ818部(不揮発分28%)を仕込み、撹拌しながら上記ゲルワニス1の500部配合してフラッシングを行い、プレスケーキ中の水分をワニスで置換した。その後、置換された水を除去し、さらにゲルワニス1の131部を追加し混合した上で、水分率が0.5%以下になるまで120℃で減圧脱水を行い、Mフラッシングベースインキを作製した。次いで、Mフラッシングベースインキを3本ロールで練肉して練肉ベース(Mベースインキ)を得た。得られたMベースインキとゲルワニス1、上記AFソルベント7号、及び上記再生大豆油を、
図20に記載した割合で混合し、それぞれ顔料濃度6%、12%、18%、24%の各Mインキを得た。
【0110】
(Yインキの作製)
2.5LのフラッシャにY顔料としてリオノールイエローNo.1213−P(商品名、トーヨーカラー株式会社製)のプレスケーキ818部(不揮発分22%)を仕込み、撹拌しながら上記ゲルワニス1の500部を配合して、フラッシングを行い、プレスケーキ中の水分をワニスで置換した。その後、置換された水を除去し、さらにゲルワニス1の320部を追加し混合した上で、水分率が0.5%以下になるまで120℃で減圧脱水を行い、Yフラッシングベースインキを作製した。次いで、Yフラッシングベースインキを3本ロールで練肉して、練肉ベース(Yベースインキ)を得た。得られたYベースインキとゲルワニス1、上記AFソルベント7号、及び上記再生大豆油を、
図20に記載した割合で混合し、それぞれ顔料濃度3%、7%、11%、及び15%の各Yインキを得た。
【0111】
(Kインキの作製)
カーボンブラック(DBP吸油量72ml/100g、BET比表面積99m
2/g、三菱化学株式会社製)20部、上記ゲルワニス1を74部、石油系溶剤(上記AFソルベント7号)6部を混合し、三本ロールを用いて練肉を行い、顔料濃度20%のKインキを得た。
【0112】
得られた各インキの顔料濃度を基準として、下記インキセットSA〜SDを作製した。
(1)インキセットSA
顔料濃度24%のCインキ
顔料濃度24%のMインキ
顔料濃度15%のYインキ
顔料濃度20%のKインキ
【0113】
(2)インキセットSB
顔料濃度18%のCインキ
顔料濃度18%のMインキ
顔料濃度11%のYインキ
顔料濃度20%のKインキ
【0114】
(3)インキセットSC
顔料濃度12%のCインキ
顔料濃度12%のMインキ
顔料濃度7%のYインキ
顔料濃度20%のKインキ
【0115】
(4)インキセットSD
顔料濃度6%のCインキ
顔料濃度6%のMインキ
顔料濃度3%のYインキ
顔料濃度20%のKインキ
【0116】
<実施例及び比較例>
印刷機20がインキセットSA〜SDを用い、RGBデータを、高画質変換カラープロファイルを用いてCMYKデータを用紙40に印刷した実施例の印刷物と、RGBデータを、高濃度用カラープロファイルを用いてCMYKデータを用紙40に印刷した比較例の印刷物を作製した。
【0117】
高画質変換カラープロファイルを用いて、インキセットSAで印刷した印刷物が実施例1、インキセットSBで印刷した印刷物が実施例2、インキセットSCで印刷した印刷物が実施例3、インキセットSDで印刷した印刷物が実施例4である。高濃度用カラープロファイルを用いて、インキセットSAで印刷した印刷物が比較例1、インキセットSAで印刷した印刷物が比較例2(即ち、比較例1と比較例2は同じ)、インキセットSBで印刷した印刷物が比較例3、インキセットSCで印刷した印刷物が比較例4である。
【0118】
印刷機20として、ヒートセット型オフセット印刷機(LITHOPIABT2−800NEO、三菱重工株式会社製)を使用して、以下の印刷条件で重ね刷りを行った。
【0119】
<印刷条件>
用紙:パールコートN(コート紙 65.5g/m
2 三菱製紙株式会社製)
印刷速度:300rpm
チラー設定温度:25℃
ドライヤ通過後紙面温度:95℃
版:CTP版(富士フィルム株式会社製)
印刷部数:2万部通し
湿し水:アクワユニティWKK 20KG GN 2%(東洋インキ株式会社製)
印刷順:K→C→M→Y
【0120】
得られた印刷物について、次のように光沢、耐摩擦性、及び色彩を評価した。
<光沢>
光沢計(GM26D、株式会社村上色彩研究所製)を用い、得られた印刷物の網点重ね部の光沢を測定した。測定値の実用レベルは「60」以上である。測定値に5ポイント以上の差がつくと、目視で明確に違いが確認できる。なお、網点重ね部は、印刷物の作製に使用した全てのインキを重ねて印刷した部分である。
【0121】
<耐摩擦性>
耐摩擦性試験は、得られた印刷物の全色重ね部にパールコートN(65.5g/m
2)(三菱製紙株式会社製)の合い紙を合わせ、学振型耐摩擦試験機(東洋精機株式会社製)を使用して、荷重200g、10往復の条件で行った。評価は、白紙に対するインキの付着量を目視で判定した。付着の程度が不良なものを1、付着の程度が良好なものを5とし、以下の基準で5段階評価をした。なお、実施例1〜4の評価は、比較例1〜4の結果をそれぞれ「3」とした場合に「1」〜「5」のいずれに該当するのか、という基準で実施した。つまり、実施例1の評価基準は比較例1、実施例2の評価基準は比較例2、実施例3の評価基準は比較例3、実施例4の評価基準は比較例4である。
【0122】
(評価基準)
1:白紙に対してインキの付着が明らかに多い。
2:白紙に対してインキの付着が多い。
3:白紙に対して通常程度のインキの付着である。
4:白紙に対してインキの付着が少ない。
5:白紙に対してほとんどインキの付着がない。
【0123】
<色彩評価>
色彩評価は、10人の被験者に対し、個別に実施例1〜4の印刷物と比較例1〜4の印刷物を、どちらが実施例であるか比較例であるかを示さずに並べて見せて、被験者の官能評価により判断した。評価は、絵柄の鮮やかさ、印刷の質感、及び人肌の再現性の観点から、以下の総合評価基準に従って行った。
【0124】
(総合評価)
A:実施例の印刷物の方が高品質である。
B:比較例の印刷物の方が高品質である。
C:実施例と比較例との印刷物に品質の差がない。
【0125】
以上の性能評価結果を
図21に示す。
図21に示すように、実施例1〜4の印刷物は、色彩評価が比較例1〜4の印刷物と同等または優れている。このように、本実施形態においては、高濃度インキセットよりも顔料濃度が低い標準濃度インキセットを用いても、高画質な印刷物を得ることができることが確かめられた。実施例2〜4の印刷物は、耐摩擦性が比較例2〜4の印刷物より優れている。また、実施例2〜4の印刷物は、光沢が比較例2〜4の印刷物より優れている。このように、本実施形態においては、耐摩擦性及び光沢が向上するという予期せぬ効果も奏する。
【0126】
<第2実施形態>
図22に示す第2実施形態の印刷システムにおいて、
図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略することがある。第2実施形態の印刷システムにおいて、印刷用色変換部10は、L
*,a
*,b
*・CMYKカラープロファイルCP2及びCP3を有する。以下、L
*,a
*,b
*・CMYKカラープロファイルCP2及びCP3をカラープロファイルCP2及びCP3と略記する。
【0127】
カラープロファイルCP2は、
図1に示すカラープロファイルCP2と同じ第2のカラープロファイルである。カラープロファイルCP3は第3のカラープロファイルである。カラープロファイルCP3の一部の色相におけるプロファイルを抜粋したものが
図2A,
図4A,
図6Aに示すプロファイルCP3g,CP3b,CP3rである。
【0128】
第2実施形態の印刷システムは、インキセット30A及び30Bを備え、印刷機20は、インキセット30A及び30Bを選択的に用いて印刷用色変換部10より出力されたCMYKデータに基づくカラー画像を用紙40に印刷するように構成されている。インキセット30Aは高濃度インキセットであり、インキセット30Bは標準濃度インキセットである。
【0129】
例えば、インキセット30Aを上述したインキセットSAとすれば、インキセット30Bは上述したインキセットSBである。インキセット30AをインキセットSBとすれば、インキセット30Bは上述したインキセットSCである。インキセット30AをインキセットSCとすれば、インキセット30Bは上述したインキセットSDである。
【0130】
印刷機20がインキセット30Aを用いて印刷するときには、印刷用色変換部10は、カラープロファイルCP3を参照して、RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換したCMYKデータを生成して印刷機20に供給する。
【0131】
印刷機20がインキセット30Bを用いて印刷するときには、印刷用色変換部10は、カラープロファイルCP2を参照して、RGB実データの各色信号のR,G,B値をC,M,Y,K値に変換したCMYKデータを生成して印刷機20に供給する。
【0132】
第2実施形態の印刷システム、印刷方法、及び印刷物の製造方法によれば、インキセット30Aを用いることにより高画質な印刷物を得ることができる。また、第2実施形態の印刷システム、印刷方法、及び印刷物の製造方法によれば、インキセット30Bを用いても、インキセット30Aを用いた場合とほとんど遜色がなく、高画質な印刷物を得ることができる。
【0133】
<変形例>
以上説明した第1及び第2実施形態の印刷システムにおいて、印刷用色変換部10をコンピュータによって構成してもよい。
図23は、印刷用色変換部10をコンピュータによって構成した変形例を示している。
【0134】
図23において、コンピュータ50は、中央処理装置51(以下、CPU51)と記憶部52とを有する。CPU51には、RGB実データとカラープロファイルCP1とを含むRGBデータが入力される。記憶部52には、印刷用色変換プログラムが記憶されている。記憶部52は、ROMやハードディスク・ドライブ等である。印刷用色変換プログラムは、カラープロファイルCP2(またはCP3)に基づいてRGB実データをCMYKデータに変換する命令を記述したコンピュータプログラムである。
【0135】
CPU51は、印刷用色変換プログラムを実行させることによって、RGB実データをCMYKデータに変換して印刷機20に供給する。
図23では図示を省略しているが、印刷機20はインキセット30(またはインキセット30Aもしくは30B)を用いて用紙40に印刷する。
【0136】
以上のように、第1及び第2実施形態の印刷システム、印刷方法、印刷物の製造方法によれば、標準顔料濃度インキを用いても高画質な印刷物を得ることができる。即ち、第1及び第2実施形態の印刷システム、印刷方法、印刷物の製造方法によれば、顔料濃度を必要以上に高くしなくても高画質な印刷物を得ることができる。
【0137】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。印刷用色変換部10が高画質変換カラープロファイルを保持する代わりに高濃度用カラープロファイルを保持して、高濃度用カラープロファイルより読み出したC,M,Y,K値を高画質変換カラープロファイルに相当するC,M,Y,K値に変換するように構成することも可能である。
【0138】
この場合、高濃度用カラープロファイルより読み出したC,M,Y,K値を、インキセット30のC,M,Yインキの顔料濃度に応じて、必要色の増加の程度、補色の増加の程度または減少の程度、補色の減少を開始する中間濃度の位置を変更することも可能である。
【解決手段】印刷用色変換部10は、カラープロファイルCP2を参照して、R,G,B値をC,M,Y,K値に変換した第1のCMYKデータを生成する。印刷機20は、第1のCMYKデータに基づく画像を、第1の顔料濃度のインキセット30を用いて用紙40に印刷する。用紙40に印刷される画像の目標濃度を、R,G,B値を高濃度インキセット用のカラープロファイルを参照して変換した第2のCMYKデータを、第1の顔料濃度よりも濃度が高い第2の顔料濃度のインキセットを用いて用紙40に印刷したときの印刷濃度とする。カラープロファイルCP2は、G及びBを含む色相範囲で、高濃度インキセット用のカラープロファイルよりも必要色の値を増加させ、中間濃度まで補色を増加させ、中間濃度を超えると補色の値を減少させるように設定されている。