特許第6090749号(P6090749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090749
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】薄型スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/04 20060101AFI20170227BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20170227BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H04R9/04 105Z
   H04R9/02 103Z
   H04R7/04
   H04R9/04 104A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-144080(P2013-144080)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-19181(P2015-19181A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311007785
【氏名又は名称】株式会社Ring
(74)【代理人】
【識別番号】100115934
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 雅也
(72)【発明者】
【氏名】大西 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】肥田 一功
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4906971(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0279720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/00 − 9/10
H04R 7/00 − 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム内に収容され、ヨークとマグネットとの間に形成される磁気ギャップを有する磁気回路と、前記フレームに支持された振動板と、ボイスコイル固定具を介して前記振動板に接続されて前記磁気キャップ内に配置されるボイスコイルとを備えたスピーカにおいて、
前記ボイスコイル固定具は、振動板の内面側に積層状態に設けられる板状本体と、前記板状本体に固着され外周面に前記ボイスコイルが巻き回されるトラック形状のコイルボビンと、前記コイルボビンの長手方向側に前記コイルボビンを挟んで対向するように前記板状本体に固着され前記フレームの底面方向に伸びるサポートピンとを備え、
前記ヨークは、前記コイルボビンと略同形に構成され、
前記フレームには、前記サポートピンと連結してボイスコイル固定具を支持する前記振動板の振動方向に変形可能な支持部材が設けられていることを特徴とするスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関し、特に、例えば薄型テレビなどの電子機器に用いられる薄型のスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
音声を再生するスピーカを取り付ける薄型ディスプレイ等の機器においては、表示部分以外の面積を小さくすることが望まれており、スピーカを取り付けるのに要する空間についても小型化,薄型化が要望されている。特に、細長形(矩形、長円形(楕円形、トラック形を含む))のスピーカは、その形状からこれらの機器に好適に用いることができる。しかし、細長形スピーカは、短手方向に振動板面積が限られ、細長形のスピーカ振動板に特有な分割振動の影響が大きくて平坦な再生音圧周波数特性を得ることが難しい等の様々な理由から音声再生能力において不利な点がある。したがって、従来にはこれらの問題を解決するために、次に示すような様々なスピーカが提案されている。
【0003】
例えば、スピーカ形状の縦、横の寸法が長手側と短手側とからなるトラック型スピーカにおいて、磁気回路を構成するマグネットをほぼスピーカ外形に収まる範囲内で大きな形状とし、かつ前記磁気回路を構成するボイスコイルの形状は前記長手側の方向に沿って延びる細長い形状としたトラック型スピーカが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、下部プレートに設けた棒状のセンターポール部をはさんで平行に配置された少なくとも2個の棒状マグネットを上部プレートと下部プレートとで前記挟持した磁気回路と、この磁気回路に結合されたフレームと、このフレームの外周部に結合された振動板と、この振動板に結合されるとともに、その一部が前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置されたボイスコイルとからなるスピーカがある(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、長手方向に比べて短手方向が短い細長形のスピーカでは、磁気回路の磁気空隙およびボイスコイルを長手方向の二辺を含む形状にすることで、磁束と交差するボイスコイル長を長くし、ボイスコイルに発生する駆動力を増大させて効率が高いスピーカを実現できる。一方で、磁束と交差するボイスコイル長を長くすると、細長形状のコイルが巻き回されるボビンが大型化するため、スピーカ、特にボイスコイルを支える振動板及びエッジの強度不足が生じやすい。このため、ボイスコイルを支持する振動板の材料に強度が求められることとなり、再生動作中に音の歪みが発生しやすく、また、再生音圧レベルが低下し、効率が悪くなるという問題がある。
【0006】
この問題を解消するために、特許文献3や特許文献4には、図7に示すような、個々のボイスコイル102を小さくして軽量化する一方、振動板101に複数設けることによって、再生音圧レベルを高めたスピーカも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−197190号公報
【特許文献2】特開2004−266337号公報
【特許文献3】特開2006−311174号公報
【特許文献4】特開2011−10167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、振動板の複数箇所にボイスコイルを設置したスピーカでは、複数のボイスコイルを配線するための手間が大きく、製造コストが増大するという問題がある。また、複数のボイスコイル102がそれぞれ独立して動くため、図8の矢印90に示すように、ボイスコイル102が設けられている部分に大きい駆動力が加わり、その中間部分では振動の節103が発生する等、振動板全体としては共振が発生するなど振動板の分割共振モードが生じやすくなる、という問題がある。このため、振動板の長さには実質的に制限があり、長手側と短手側の比率が大きい細長いスピーカを実現することは困難であった。
【0009】
また、この分割共振モードの発生の問題を低減するために、振動板を強度に構成するため、特許文献4に開示されているように、振動板に補強部材を設けるなどの手段が取られているが、これらの構成はいずれも振動板の重量を大きくするものであるため、再生音圧レベルの低下を引き起こすという問題があった。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、製造の手間を軽減し再生音圧レベルの高い高効率を実現することができるスピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のスピーカを提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、フレーム内に収容され、ヨークとマグネットとの間に形成される磁気ギャップを有する磁気回路と、前記フレームに支持された振動板と、ボイスコイル固定具を介して前記振動板に接続されて前記磁気キャップ内に配置されるボイスコイルとを備えたスピーカにおいて、
前記ボイスコイル固定具は、振動板の内面側に積層状態に設けられる板状本体と、前記板状本体に固着され外周面に前記ボイスコイルが巻き回されるトラック形状のコイルボビンと、前記コイルボビンの長手方向側に前記コイルボビンを挟んで対向するように前記板状本体に固着され前記フレームの底面方向に伸びるサポートピンとを備え、
前記ヨークは、前記コイルボビンと略同形に構成され、
前記フレームには、前記サポートピンと連結してボイスコイル固定具を支持する前記振動板の振動方向に変形可能な支持部材が設けられていることを特徴とするスピーカを低供する。

【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、振動板に積層状態に配置される板状本体にサポートピンを設け、当該サポートピンがフレームに設けられた支持部材に接続されているため、振動板が周囲の他に裏面でフレームに支持されることとなる。したがって、音圧レベルを大きくするためにボイスコイルの巻数や距離を多く構成したとしても、振動板の振動動作を阻害することがない。また、振動板には、板状本体が設けられているため振動板の歪みなどの発生を抑止することができ、分割共振モードの発生を抑制することができる。
【0015】
本発明の第2態様によれば、トラック形状の振動板を支持するに当たり、中央部分にコイルボビンを配置しこれを挟むようにサポートピンを設けることで、組みたて構成及び構成の対称性を確保することができ、再生性能に優れたスピーカとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態にかかるスピーカの外観構成を示す斜視図である。
図2図1のスピーカを別角度から見た斜視図である。
図3図1のスピーカの組立て分解図である。
図4図1のスピーカのA−A線における断面図である。
図5図1のスピーカに用いられる支持部材の構成を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態にかかるスピーカの構成を示す組立て分解斜視図である。
図7】従来のスピーカに用いられる振動板の構成を模式的に示す図である。
図8】従来のスピーカにおける振動板の分割振動の発生を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態に係るスピーカについて、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかるスピーカの外観構成を示す斜視図である。図2は、図1のスピーカを別角度から見た斜視図である。図3は、図1のスピーカの組立分解図である。本発明のスピーカ1は、取り付け空間の小型化が要望されている薄型のテレビなどの電子機器に搭載されるスピーカである。
【0019】
スピーカ1は、本体部分の長手方向長L1が約100mm、短手方向長L2が約20mmの細長い形状であり、磁気回路などを収容するフレーム5の上面に振動板2が設けられている。振動板2は、短手方向の辺が互いに平行に構成され、長手方向両端部が略半円状に構成されているトラック形状を有している。フレーム5内には、図3に示すように、磁気回路10などの各種部材が収納される。
【0020】
振動板2は、フレーム5内に内蔵される磁気回路にリード線7a、7b(図3参照)から電気信号が送られることにより振動して発声する。振動板2は、フレーム5に取りつけた磁気回路10に配置されたボイスコイル9にリード線7a、7b(図3参照)を通じて流れた電気信号により振動して、音波に変換する。
【0021】
振動板2は比較的剛性の高い平板状の部材で作成されており、合成樹脂やハニカム金属素材などを用いることができる。本実施形態では、振動板2は、ハニカム金属素材の表面にアルミニウム及び紙のシートを貼り合わせた素材が用いられている。
【0022】
振動板2の周縁にはエッジ3が貼付されており、振動板2がエッジ3を介してフレーム5に連結される。エッジ3の外周端には、図5に示すようにエッジ部4が設けられており、フレーム5の開口部分に接着することによって振動板2とフレーム5が位置決めされる。
【0023】
エッジ3は、柔軟性を有する素材で形成されており、本実施例では、例えば発泡ゴムなどが好適に用いられる。柔軟なエッジ3により振動板2の全周を支持することで、振動板2は、エッジ部4に対し垂直振動可能に支持されている。振動板2の振動時にエッジ3の変形応力が集中するエッジ3のコーナー部分には、図3に示すように、凹凸3aが設けられており、エッジ3の変形に伴う応力集中を緩和する。
【0024】
また、振動板2の裏面には、図3に示すように、ボイスコイル固定具6が設けられる。ボイスコイル固定具6は振動板2の内面側に積層状態に設けられる板状本体7を有する。板状本体7は、振動板2とほぼ同じ程度の大きさを有し、強度及び重量の観点から厚み0.1から1mm程度のジュラルミンやアルミニウムが好適に用いられる。
【0025】
板状本体7の中央部分には、断面楕円形のコイルボビン8が一体的に設けられ、トラック形のコイルボビン8の側壁8aの外周面には、全周にわたってボイスコイル9が巻き回される。また、板状本体7には、コイルボビン8を挟んで両端側には、それぞれサポートピン16が垂設されている。
【0026】
板状本体7及びコイルボビン8は、ジュラルミンやアルミニウムなどの軽金属、耐熱樹脂フィルムなどをプレス成形して製造することができる。本実施形態では、放熱効果が大きい薄肉の1枚のアルミニウム材をプレス加工した薄肉一体成型品が用いられている。
【0027】
フレーム5は、底壁5aと側壁5bを有する有底容器形状の部材であり、非磁性体材料で構成されている。本実施形態では、合成樹脂を射出成型することによって形成されている。フレーム5は、エッジ部4の形状に対応して上方が開口した細長形の箱形状であり、当該開口部分でエッジ部4と係合する。振動板2を係合する振動板固定部11と、磁気回路10のヨーク10aを固定するヨーク固定部12と、支持部材15が配置される支持部材配置部13が設けられている。
【0028】
フレーム5の長手方向両端部分には、電子機器固定用の取り付け部14が設けられている。取り付け部14は、一部分を切り欠いて構成された固定壁14aに、断面H字状に構成されたクッション部材18を嵌め込んで脱着可能に保持できるように構成されており、クッション部材18の固定穴18aに図示しないビス等を用いて電子機器にスピーカ1を固定する。クッション部材は、ゴムなどの弾性体で構成されており、振動するスピーカ1の振動を吸収して電子機器に伝えないように構成されている。
【0029】
振動板固定部11は、フレーム5の側壁内側面に設けられた段差であり、エッジ部4を係止することによって振動板を特定の位置に配置する。したがって、振動板2に設けられているコイルボビン8は、通常時において、フレーム5内での基準位置が画一的に決定されることとなる。
【0030】
磁気回路10を特定の位置に固定するヨーク固定部12は、フレーム5の底壁5aに平行に設けられた貫通孔であり、ヨーク10aを挿入して固定する。
【0031】
ヨーク10aは、マグネット10bとポールピース10cで磁気回路10を構成する。
【0032】
磁気回路10に用いられるマグネット10bは、ヨークの底面とほぼ同形状の永久磁石であり、本実施形態では一例として長さ寸法50mm、厚み3mm程度のものが用いられている。マグネットの種類は、残留磁化および保磁力が大きく、小さい体積でも保磁力の強いNd−Fe−B系の希土類磁石を用いるが、特に限定されるものではなく、フェライト系磁石であってもよい。なお、希土類磁石とは、Nd−Fe−B系のネオジウム磁石、もしくは、Sm−Co系のサマリウムコバルト磁石であって、磁石の最大エネルギー積(BH)maxが大きな値をとる磁石である。なお、マグネット10bの種類は、特に限定されるものではなく、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石なども用いられる。
【0033】
ポールピース10cは図3に示すように、マグネットの上面に積層するように配置される金属板である。
【0034】
上記のように構成される磁気回路10には、ヨーク10aとポールピース10cとの間に磁気ギャップGが形成される。本実施形態では、磁気ギャップGは、概ね1.5mm程度となるように構成される。
【0035】
磁気ギャップGにはコイルボビン8及びボイスコイル9が配置される。ボイスコイル9は、絶縁導線を何重にも巻回して円筒状に形成されており、上下端位置から引出し線9a,9bが引き出されて音声電流が供給される。本実施形態では、当該引き出し線9a,9bはボイスコイル固定具6の板状部7に接続されるリード線7a,7bに接続される。
【0036】
図3に示すように、リード線7a,7bは、フレームの底壁に設けられた貫通孔5cを通って外底壁に設けられた端子板17に接続され、外部の電力供給線と導通する。
【0037】
支持部材配置部13は、ヨーク固定部12を挟んでフレーム5底壁の長手方向両端部分に設けられた貫通孔であり、板状の支持部材15が固定される。
【0038】
支持部材15は、図5に示すように、小型化が容易な体振幅性に優れた特殊形状の金属フラットダンパーで構成されており、本実施形態では、直径28mm、厚み0.1mmのステンレスが用いられている。支持部材15は、ボイスコイル固定具6のサポートピン16とフレーム5とに連結され、振動板2を垂直振動可能に支持する。
【0039】
この支持部材15は、リング状の外周枠20と、その外周枠2の内側に設けられたリング状の内周枠21と、上記外周枠20と内周枠21との間に設けられたアーム部22とを備える。
【0040】
また、アーム部22は、外周枠20と内周枠21との間に一定間隔をもって回転対称的に3対備えられる。アーム部22は、外周枠20と内周枠21との間に円弧状に引き伸ばされ、外周枠20と内周枠21とを弾性的に連結するアーム部本体22aを備える。アーム部本体22aの中央部分は、外周枠20と内周枠21との間に略平行に近い角度を持って配置され、アーム部本体22aの両端22b,22cは、アーム部本体22aに較べて幅寸法が大きくなるように形成される。また、アーム部22の両端部である、外周枠20と内周枠21との連結部分近傍は、曲面形状に形成される。
【0041】
アーム部の外周枠20との連結端部22bは内側周縁22dが張り出すように構成されており、アーム部の内周枠21との連結端部22cは外側周縁22eが張り出すように構成されている。結果として、アーム部22は、外周枠20から内周枠21側に向かって伸びるにつれて細幅になり、内周枠21との連結端部22cに近づくにつれて幅広になるように形成されている。
【0042】
内周枠21に設けられている連結穴23には、ボイスコイル固定具6のサポートピン16の下端が連結される。一方外周枠20には、フレーム5の支持部材配置部13が連結される。これにより、ボイスコイル固定具6及び振動板2は、支持部材15により下支えされた状態に支持される。
【0043】
支持部材は、振動板2の振動に伴い、内周枠21に対するサポートピン16の連結部分が振動と供に移動するため、内周枠21全体が振動方向(図3において上下方向)に移動する。これに対して、外周枠20はその周縁がフレーム5に固定されている。このため、振動時にはアーム部20が振動方向に屈曲して、振動を許容することになる。このとき、アーム部20にはその厚み方向にねじれの力が働くため、アーム部本体22aの中央部分が捻れることで、アーム部20の両端22b,22cに応力が集中することなく、支持部材の破断を防止することができる。また、中央部分が細幅に構成されることによって、内周枠21の上下方向の振動の阻害となりにくいという効果がある。
【0044】
すなわち、振動板2に接続された内周枠21が、振動板2の振動によりアーム部20が屈曲して支持部材15の厚み方向に変位する。このとき、アーム部20の中間位置は、その厚み方向に対して斜めに撚れるため、その中間部がヨーク側へシフトする。本実施形態にかかるダンパーは、アーム部20の両端部分が幅広で曲率が大きく構成されているため、細幅に構成されているアーム部20が捻れを吸収して、アーム部20の両端に加わる屈曲疲労を軽減させ、支持部材15の破断を防止することができる。
【0045】
このようにボイスコイル固定具6を介して振動板2がフレームに下支えされることにより、ボイスコイル9の巻き数を多くしたりやコイルボビン8を大型化しても、振動板の動きを阻害することが少ない。また、コイルボビン8を支持部材15で直接支持するものではないため、スピーカを薄く構成することができ小型化が容易である。
【0046】
また、ボイスコイル固定具6は、振動板に積層した状態に配置される板状本体を有しているため、振動板の振動板の分割共振モードの発生を抑制することができ、ボイスコイル及び振動板の設計の自由度を高めることができる。また、ボイスコイルを中心として支持部材を対称に配置することにより、振動板エッジによる支持位置より遠く、さらにフレーム底面に並行して配置することで、ボイスコイルの振動直進性に優れた構造とすることができる。
【0047】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態にかかるスピーカの組立分解図である。本発明のスピーカ31は、取り付け空間の小型化が要望されている薄型のテレビなどの電子機器に用いられ、第1実施形態にかかるスピーカ1と比較して低音域の音声を再生するためのスピーカである。
【0048】
スピーカ31は、本体部分の長手方向長が約150mm、短手方向長が約60mmの細長い形状であり、磁気回路などを収容するフレーム35の上面に振動板32が設けられている。振動板32は、短手方向の辺が互いに平行に構成され、長手方向両端部が略半円状に構成されているトラック形状を有している。フレーム35内には、図6に示すように、磁気回路40などの各種部材が収納される。
【0049】
振動板32は、フレーム35内に内蔵される磁気回路にリード線37a、37bから電気信号が送られることにより振動して発声する。振動板2は、フレーム35に取りつけた磁気回路40に配置されたボイスコイル39にリード線を通じて流れた電気信号により振動して、音波に変換する。
【0050】
振動板32は比較的剛性の高い平板状の部材で作成されている。振動板32の周縁にはエッジ33が貼付されており、振動板32がエッジ33及びエッジ部34を介してフレーム35に固定される。振動板32及びエッジ33は、第1実施形態において好適に用いられる素材を用いることができる。
【0051】
また、振動板32の裏面には、ボイスコイル固定具36が設けられる。ボイスコイル固定具36は振動板32の内面側に積層状態に設けられる板状本体37を有する。板状本体7は、振動板32に較べて小型に構成されており、厚み0.1から1mm程度のジュラルミンやアルミニウムが好適に用いられる。
【0052】
板状本体37の中央部分には、コイルボビン38を取り付ける円形のボビン取り付け部37aが中央部分に設けられている。また、ボビン取り付け部37aに対して両端側に、端子板取り付け部37bが設けられており、後述するボイスコイル39の引き出し線39a,39bとリード線37a、37bとを電気的に接続する端子板47が設けられる。また、板状本体37の両端には、それぞれサポートピン46が垂設されている。
【0053】
コイルボビン38の側壁38aの外周面には、全周にわたってボイスコイル39が巻き回される。板状本体37及びコイルボビン38は、ジュラルミンやアルミニウムなどの軽金属、耐熱樹脂フィルムなどをプレス成形して製造することができる。
【0054】
フレーム35は、底壁35aと側壁35bを有する有底容器形状の部材であり、開口部分でエッジ部34と係合する。フレーム35には、振動板32を係合する振動板固定部41と、磁気回路40のヨーク40aを固定するヨーク固定部42と、支持部材45が配置される支持部材配置部43が設けられている。
【0055】
フレーム35の長手方向両端部分には、電子機器固定用の取り付け部44が設けられており、クッション部材48を脱着可能に保持する。
【0056】
振動板固定部41、ヨーク固定部42、支持部材配置部43は、第1実施形態にかかるスピーカと同様に構成することができる。ただし、ヨーク固定部42については、本実施形態ではインサート成型ではなく、後述するように、フレーム35にヨーク40aを接着剤などを用いて固定する。
【0057】
ヨーク固定部42に配置される磁気回路40の磁気ギャップGにはコイルボビン38及びボイスコイル39が配置される。ボイスコイル39の引き出し線39a,39bは上記の通り、板状本体37に設けられる端子板を介してリード線37a,37bと電気的に接続し、サポートピン46の両側を通って、フレーム35に設けられた取り出し孔35cからフレーム35の外部に引き出される。
【0058】
支持部材45は、第1実施形態のスピーカと同様に金属フラットダンパーで構成されている。支持部材45は、ボイスコイル固定具36のサポートピン46とフレーム35とに連結され、振動板32を垂直振動可能に支持する。
【0059】
この支持部材45は、第1実施形態における支持部材15と同様に構成され、リング状の外周枠と、その外周枠の内側に設けられたリング状の内周枠と、上記外周枠と内周枠との間に設けられたアーム部とを備える。
【0060】
本実施形態においても、ボイスコイル固定具36を介して振動板32がフレームに下支えされることにより、ボイスコイル39の巻き数を多くしたりやコイルボビン38を大型化しても、振動板の動きを阻害することが少ない。また、コイルボビン38を支持部材45で直接支持するものではないため、スピーカを薄く構成することができ小型化が容易である。
【0061】
また、ボイスコイル固定具36は、第1実施形態と同様に、振動板の振動板の分割共振モードの発生を抑制することができ、ボイスコイルの振動直進性に優れた構造とすることができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,31 スピーカ
2,32 振動板
3,33 エッジ
4,34 エッジ部
5,35 フレーム
6,36 ボイスコイル固定具
7,37 板状本体
8,38 コイルボビン
9,39 ボイスコイル
10,40 磁気回路
10a,40a ヨーク
10b,40b マグネット
10c,40c ポールピース
11,41 振動板固定部
12,42 ヨーク固定部
13,43 支持部材配置部
14,44 取り付け部
15,45 支持部材
16,46 サポートピン
17,47 端子板
18,48 クッション部材
20 外周枠
21 内周枠
22 アーム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8