特許第6090781号(P6090781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090781
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】エンジンアシスト装置および作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/14 20060101AFI20170227BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F15B21/14 B
   E02F9/22 M
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-13125(P2013-13125)
(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-145387(P2014-145387A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】梶田 重夫
(72)【発明者】
【氏名】岸田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】多田 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】芳野 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】金縄 裕也
(72)【発明者】
【氏名】的場 信明
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−253649(JP,A)
【文献】 特開昭63−212699(JP,A)
【文献】 実開昭51−000392(JP,U)
【文献】 特開2012−102881(JP,A)
【文献】 特開2011−220390(JP,A)
【文献】 特開平07−071409(JP,A)
【文献】 特開2011−179457(JP,A)
【文献】 特開2010−203036(JP,A)
【文献】 特表2002−519597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00 − 11/22、21/14
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより可変容量型のメインポンプを駆動し、このメインポンプから吐出された加圧流体により作動する流体圧アクチュエータを制動する際に発生する余剰エネルギをアキュムレータに蓄えてエンジンに再生するエンジンアシスト装置において、
上記エンジンもしくはメインポンプに直結され、エンジンアシスト用モータ機能とアキュムレータ蓄圧用ポンプ機能とを有する可変容量型のアシストポンプと、
このアシストポンプから吐出された加圧流体を蓄えるメインアキュムレータと、
流体圧アクチュエータから流出した戻り圧流体を一時的に蓄圧してアシストポンプおよびメインアキュムレータに供給するサブアキュムレータと、
エンジン設定回転数を指示するためのエンジン回転数設定手段と、
エンジン実回転数を検出するエンジン回転数センサと、
メインポンプから吐出されたメインポンプ圧を検出するメインポンプ圧センサと、
メインポンプの可変された容量を検出するメインポンプ容量センサと、
メインアキュムレータのメインアキュムレータ圧を検出するメインアキュムレータ圧センサと、
サブアキュムレータのサブアキュムレータ圧を検出するサブアキュムレータ圧センサと、
アシストポンプから吐出されたアシストポンプ吐出圧を検出するアシストポンプ圧センサと、
メインポンプ圧とメインポンプの容量からエンジン負荷トルクを求め、このエンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたアシスト開始トルクを超えた場合は、エンジン負荷トルクとアシスト開始トルクとのトルク差と、メインアキュムレータ圧とアシストポンプ吐出圧との差圧に基づきアシストポンプの容量を演算して制御するとともに、メインアキュムレータから吐出する蓄圧流体をアシストポンプに導き、エンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたチャージ開始トルクより低下した場合は、エンジン負荷トルクとチャージ開始トルクとのトルク差と、アシストポンプ吐出圧とサブアキュムレータ圧との差圧に基づきアシストポンプの容量を演算して制御するとともに、アシストポンプから吐出する加圧流体をメインアキュムレータに導くコントローラと
を具備したことを特徴とするエンジンアシスト装置。
【請求項2】
メインアキュムレータからアシストポンプへの途中に設けられて開き動作によりメインアキュムレータの蓄圧流体をアシストポンプに加圧供給するメインアキュムレータ再生弁と、
アシストポンプの流体流出側に接続されて開き動作によりアシストポンプの流体流出側を作動流体タンクに開放することが可能なアンロード弁とを備え、
コントローラは、
メインポンプ圧とメインポンプの容量からエンジン負荷トルクを求める負荷トルク演算手段と、
エンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたアシスト開始トルクを超えた場合は、メインアキュムレータ再生弁とアンロード弁とを開いてメインアキュムレータ圧によりアシストポンプを駆動するとともに、エンジン負荷トルクとアシスト開始トルクとのトルク差と、メインアキュムレータ圧とアシストポンプ吐出圧との差圧に基づき、アシストポンプの容量を演算し制御することで、エンジンをアシストするアシスト制御手段と、
メインアキュムレータ圧で出力可能なアシストトルクを求め、このアシストトルクが不足する場合は、メインポンプのトルクを補正するメインポンプ補正手段と、
エンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたチャージ開始トルクより低下した場合は、メインアキュムレータ再生弁とアンロード弁とを閉じてアシストポンプを駆動するとともに、エンジン負荷トルクとチャージ開始トルクとのトルク差と、アシストポンプ吐出圧とサブアキュムレータ圧との差圧に基づき、アシストポンプの容量を演算し制御することで、メインアキュムレータに作動流体を蓄圧させるチャージ制御手段と
を具備したことを特徴とする請求項1記載のエンジンアシスト装置。
【請求項3】
エンジンは、直結されたスタータモータを備え、
メインアキュムレータ再生弁およびアンロード弁は、スタータモータ始動時に連動して開き動作する機能を備えた
ことを特徴とする請求項2記載のエンジンアシスト装置。
【請求項4】
機体と、
この機体に搭載された作業装置と、
機体および作業装置に設けられた請求項1乃至3のいずれか記載のエンジンアシスト装置とを具備し、
請求項1乃至3のいずれか記載の流体圧アクチュエータ、メインポンプ、アシストポンプ、メインアキュムレータおよびサブアキュムレータは、油圧機器である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
機体は、
下部走行体と、
下部走行体に対して油圧式の旋回モータにより旋回可能な上部旋回体とを備え、
作業装置は、この作業装置を上下動する油圧式のブームシリンダを備え、
エンジンアシスト装置におけるサブアキュムレータは、ブーム下げ時のブームシリンダのヘッド室から放出された圧油および旋回ブレーキ時の旋回モータから放出された圧油を一時的に蓄圧する機能を備え、
ブーム下げ時のブームシリンダのヘッド室の圧油をサブアキュムレータ側に回収する方向の流れのみを可能とするブームヘッド圧蓄圧用チェック弁と、
このブームヘッド圧蓄圧用チェック弁を経てサブアキュムレータに圧油を回収するために閉状態から開状態に切り換えられるブーム再生切換弁と、
旋回モータの左旋回ブレーキ時および右旋回ブレーキ時の高圧を選択する高圧選択弁と、
この高圧選択弁の下流側に設けられたリリーフ機能を兼ねたシーケンス弁と、
このシーケンス弁を経た圧油をサブアキュムレータ側に供給する旋回圧蓄圧用チェック弁と、
サブアキュムレータからアシストポンプの流体流入側への流れを可能とするアシストポンプ流入側チェック弁と、
サブアキュムレータからメインアキュムレータへの流れを可能とするアキュムレータ間チェック弁と、
アシストポンプから吐出された圧油をメインアキュムレータに蓄圧できる方向の流れを可能とするアシストポンプ流出側チェック弁と
を具備したことを特徴とする請求項4記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータを用いたエンジンアシスト装置およびこのエンジンアシスト装置を搭載した油圧ショベル等の作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの油圧駆動の作業機械に適用されたエネルギ再生回路の一例として、コントロール弁とタンクとの間に設けた戻り流体通路中に、可変容量型油圧モータなどの流体圧モータをインラインで設置し、流体圧モータの出力軸に減速器を介して、可変容量型油圧ポンプなどの流体圧ポンプの入力軸を接続し、流体圧ポンプの吐出ポートに逆止弁を介して方向制御弁の供給ポートを連通させ、方向制御弁の一方の出力ポートは蓄圧用のアキュムレータに接続し、他方の出力ポートは、メインポンプから流体圧アクチュエータに作動流体を供給するメイン回路に接続するシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のシステムでは、戻り圧流体を可変容量型油圧モータに供給し、可変容量型油圧ポンプを駆動してアキュムレータに圧油を蓄圧し、アクチュエータ作動時にアキュムレータの圧油をメインポンプに供給して、エネルギを再生する。
【0004】
この他に、近年、油圧ショベルのような作業機械においても、油圧システムと電気システムを組み合わせたハイブリッドシステムが試みられている。例えば、エンジン駆動部に発電電動機を設け、かつ旋回駆動に発電電動機を採用し、発電電動機で上部旋回体を駆動するとともに旋回ブレーキ時にブレーキエネルギを電気に変換してキャパシタやバッテリに充電し、旋回駆動に蓄えた電力を用いる。また、エンジンが軽負荷時にエンジンに直結した発電電動機で充電し、重負荷時に充電した電力を用いて発電電動機でパワーアシストを行っている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−322578号公報
【特許文献2】特開2006−349092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のアキュムレータを用いたエネルギ再生システムは、アキュムレータに蓄圧した圧油を油圧アクチュエータに供給する場合に、アキュムレータの蓄圧状態やメイン回路の状態によって、アキュムレータから供給する圧油量が変動するため、安定したエネルギ再生ができない。
【0007】
一方、特許文献2の油圧システムと電気システムを組み合わせたハイブリッドシステムでは、大容量の発電電動機や、キャパシタまたはバッテリなどの蓄電装置、それらを制御する電気制御装置が必要であり、コストが高くなる。また、従来機に簡単な改造で装着できない課題がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、アキュムレータから安定したエネルギ再生を行なえる安価なエンジンアシスト装置およびこのエンジンアシスト装置を搭載した作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、エンジンにより可変容量型のメインポンプを駆動し、このメインポンプから吐出された加圧流体により作動する流体圧アクチュエータを制動する際に発生する余剰エネルギをアキュムレータに蓄えてエンジンに再生するエンジンアシスト装置において、上記エンジンもしくはメインポンプに直結され、エンジンアシスト用モータ機能とアキュムレータ蓄圧用ポンプ機能とを有する可変容量型のアシストポンプと、このアシストポンプから吐出された加圧流体を蓄えるメインアキュムレータと、流体圧アクチュエータから流出した戻り圧流体を一時的に蓄圧してアシストポンプおよびメインアキュムレータに供給するサブアキュムレータと、エンジン設定回転数を指示するためのエンジン回転数設定手段と、エンジン実回転数を検出するエンジン回転数センサと、メインポンプから吐出されたメインポンプ圧を検出するメインポンプ圧センサと、メインポンプの可変された容量を検出するメインポンプ容量センサと、メインアキュムレータのメインアキュムレータ圧を検出するメインアキュムレータ圧センサと、サブアキュムレータのサブアキュムレータ圧を検出するサブアキュムレータ圧センサと、アシストポンプから吐出されたアシストポンプ吐出圧を検出するアシストポンプ圧センサと、メインポンプ圧とメインポンプの容量からエンジン負荷トルクを求め、このエンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたアシスト開始トルクを超えた場合は、エンジン負荷トルクとアシスト開始トルクとのトルク差と、メインアキュムレータ圧とアシストポンプ吐出圧との差圧(アシスト時のアシストポンプ吐出圧は0としてもよい)に基づきアシストポンプの容量を演算して制御するとともに、メインアキュムレータから吐出する蓄圧流体をアシストポンプに導き、エンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたチャージ開始トルクより低下した場合は、エンジン負荷トルクとチャージ開始トルクとのトルク差と、アシストポンプ吐出圧とサブアキュムレータ圧との差圧に基づきアシストポンプの容量を演算して制御するとともに、アシストポンプから吐出する加圧流体をメインアキュムレータに導くコントローラとを具備したエンジンアシスト装置である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のエンジンアシスト装置において、メインアキュムレータからアシストポンプへの途中に設けられて開き動作によりメインアキュムレータの蓄圧流体をアシストポンプに加圧供給するメインアキュムレータ再生弁と、アシストポンプの流体流出側に接続されて開き動作によりアシストポンプの流体流出側を作動流体タンクに開放することが可能なアンロード弁とを備え、コントローラは、メインポンプ圧とメインポンプの容量からエンジン負荷トルクを求める負荷トルク演算手段と、エンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたアシスト開始トルクを超えた場合は、メインアキュムレータ再生弁とアンロード弁とを開いてメインアキュムレータ圧によりアシストポンプを駆動するとともに、エンジン負荷トルクとアシスト開始トルクとのトルク差と、メインアキュムレータ圧とアシストポンプ吐出圧との差圧(アシストポンプ吐出圧は0としてもよい)に基づき、アシストポンプの容量を演算し制御することで、エンジンをアシストするアシスト制御手段と、メインアキュムレータ圧で出力可能なアシストトルクを求め、このアシストトルクが不足する場合は、メインポンプのトルクを補正するメインポンプ補正手段と、エンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたチャージ開始トルクより低下した場合は、メインアキュムレータ再生弁とアンロード弁とを閉じてアシストポンプを駆動するとともに、エンジン負荷トルクとチャージ開始トルクとのトルク差と、アシストポンプ吐出圧とサブアキュムレータ圧との差圧に基づき、アシストポンプの容量を演算し制御することで、メインアキュムレータに作動流体を蓄圧させるチャージ制御手段とを具備したエンジンアシスト装置である。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項2記載のエンジンアシスト装置におけるエンジンが、直結されたスタータモータを備え、メインアキュムレータ再生弁およびアンロード弁は、スタータモータ始動時に連動して開き動作する機能を備えたものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、機体と、この機体に搭載された作業装置と、機体および作業装置に設けられた請求項1乃至3のいずれか記載のエンジンアシスト装置とを具備し、請求項1乃至3のいずれか記載の流体圧アクチュエータ、メインポンプ、アシストポンプ、メインアキュムレータおよびサブアキュムレータを、油圧機器とした作業機械である。
【0013】
請求項5に記載された発明は、請求項4記載の作業機械における機体が、下部走行体と、下部走行体に対して油圧式の旋回モータにより旋回可能な上部旋回体とを備え、作業装置は、この作業装置を上下動する油圧式のブームシリンダを備え、エンジンアシスト装置におけるサブアキュムレータは、ブーム下げ時のブームシリンダのヘッド室から放出された圧油および旋回ブレーキ時の旋回モータから放出された圧油を一時的に蓄圧する機能を備え、ブーム下げ時のブームシリンダのヘッド室の圧油をサブアキュムレータ側に回収する方向の流れのみを可能とするブームヘッド圧蓄圧用チェック弁と、このブームヘッド圧蓄圧用チェック弁を経てサブアキュムレータに圧油を回収するために閉状態から開状態に切り換えられるブーム再生切換弁と、旋回モータの左旋回ブレーキ時および右旋回ブレーキ時の高圧を選択する高圧選択弁と、この高圧選択弁の下流側に設けられたリリーフ機能を兼ねたシーケンス弁と、このシーケンス弁を経た圧油をサブアキュムレータ側に供給する旋回圧蓄圧用チェック弁と、サブアキュムレータからアシストポンプの流体流入側への流れを可能とするアシストポンプ流入側チェック弁と、サブアキュムレータからメインアキュムレータへの流れを可能とするアキュムレータ間チェック弁と、アシストポンプから吐出された圧油をメインアキュムレータに蓄圧できる方向の流れを可能とするアシストポンプ流出側チェック弁とを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、エンジンもしくはメインポンプに、エンジンアシスト用モータ機能とアキュムレータ蓄圧用ポンプ機能とを有する可変容量型のアシストポンプを直結し、流体圧アクチュエータから流出した戻り圧流体を一時的に蓄圧するサブアキュムレータより、アシストポンプに供給された加圧流体を、さらにアシストポンプで加圧してメインアキュムレータに高圧の流体圧エネルギとして蓄えるようにし、コントローラにより、メインポンプ圧とメインポンプの可変された容量から求めたエンジン負荷トルクが、アシスト開始トルクを超えた場合は、エンジン負荷トルクとアシスト開始トルクとのトルク差と、メインアキュムレータ圧とアシストポンプ吐出圧との差圧(アシスト時のアシストポンプ吐出圧は0としてもよい)に基づきアシストポンプの容量を演算し、このアシストポンプの容量を制御するとともに、メインアキュムレータからアシストポンプに蓄圧流体を加圧供給して、アシストポンプをモータとして駆動することでエンジンをアシストし、また、エンジン負荷トルクがチャージ開始トルクより低下した場合は、エンジン負荷トルクとチャージ開始トルクとのトルク差と、アシストポンプ吐出圧とサブアキュムレータ圧との差圧に基づきアシストポンプの容量を演算して制御しつつ、アシストポンプから供給される加圧流体をメインアキュムレータに蓄圧させるので、メインアキュムレータの蓄圧状態やエンジン負荷トルクの状態などに応じて、メインアキュムレータまたはサブアキュムレータから安定したエネルギ再生を行なえるエンジンアシスト装置を、大容量の発電電動機、蓄電装置などを用いることなく安価に提供できる。さらに、エンジンの高負荷時にメインアキュムレータ圧で駆動されるアシストポンプによってエンジンをアシストし、エンジンの低負荷時に流体圧アクチュエータからサブアキュムレータを経て安定供給された加圧流体がアシストポンプによってメインアキュムレータに蓄圧されるので、エンジンの負荷を平準化でき、燃費を改善できるとともに、エンジンから生じる黒煙などの排ガスを低減できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、エンジン負荷トルクが、エンジン回転数に対応して予め定められたアシスト開始トルクを超えた場合はエンジンをアシストするアシスト制御手段と、アシストトルクが不足する場合はメインポンプのトルクを補正するメインポンプ補正手段と、エンジン負荷トルクが低下した場合はメインアキュムレータに作動流体を蓄圧させるチャージ制御手段とを備えたコントローラが、エンジン負荷トルクに応じて、メインアキュムレータ再生弁とアンロード弁を開閉制御しつつ、アシストポンプおよびメインポンプを制御するので、メインアキュムレータの蓄圧状態やエンジン負荷トルクの状態などに応じて、サブアキュムレータで圧力変動を平滑化した加圧流体をメインアキュムレータに適切なタイミングでチャージできるとともに、メインアキュムレータまたはサブアキュムレータからアシストポンプを駆動するためのエネルギを適切なタイミングで取り出すことができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、エンジンのスタータモータ始動時にメインアキュムレータ再生弁およびアンロード弁が連動して開き動作することで、エンジン始動時や、アイドリングストップからのエンジン再始動時の際に、メインアキュムレータに蓄圧された加圧流体により、アシストポンプをエンジン回転方向にアシストモータとして機能させることができるので、スタータモータの負荷を軽減することが可能であり、これにより、スタータモータの小型化、バッテリ消費の低減、スタータモータ使用時の不快なギヤ音の低減を図れる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、流体圧アクチュエータ、メインポンプ、アシストポンプ、メインアキュムレータおよびサブアキュムレータを油圧機器として、油圧システムを用いたハイブリッドシステムの作業機械を構成したので、発電電動機や蓄電装置により構成された電気システムを用いたハイブリッドシステムに比較して大幅なコスト低減ができ、かつメンテナンスが少なく、ランニングコストを低減できる。また、既存の油圧式の作業機械に容易に装着できる。さらに、油圧アクチュエータから放出される戻り圧油をサブアキュムレータを介し効率よく回収できるので、今まで熱として放出していた油圧装置のエネルギ損失を下げることができ、油圧冷却装置を小型化できる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、ブームヘッド圧蓄圧用チェック弁およびブーム再生切換弁により、ブーム下げ時のみブームシリンダのヘッド室の圧油をサブアキュムレータ側に回収してメインアキュムレータ内に蓄圧できるとともに、高圧選択弁、シーケンス弁および旋回圧蓄圧用チェック弁により、旋回モータの左旋回ブレーキ時および右旋回ブレーキ時に発生する旋回ブレーキ圧を保持しつつ、旋回ブレーキ圧を超える圧の戻り油をサブアキュムレータでいったん回収してメインアキュムレータ内に蓄圧でき、そして、アシストポンプ流入側チェック弁、アキュムレータ間チェック弁およびアシストポンプ流出側チェック弁により、メインアキュムレータ内の高圧の圧油をアシストポンプに供給する方向のみに導くことができるので、ブーム下げ時にブームシリンダのヘッド室から放出された圧油と、旋回ブレーキ時の旋回モータから放出された圧油の油圧変動を、サブアキュムレータにより平滑化しつつ、アシストポンプで加圧した圧油をメインアキュムレータに高圧状態で蓄圧でき、エンジンの負荷が低いときに余剰エネルギを効率よく回収できるとともに、エンジンの負荷が高いときにその余剰エネルギを有効利用でき、油圧装置のエネルギ損失を下げることができ、したがって、エンジンを小型化することができ、かつエンジン小型化に伴いエンジンの冷却装置、エアクリーナ等の関連装置を小型化できる。さらに、高圧用のメインアキュムレータと、中圧用のサブアキュムレータを用いることにより、小型のアシストポンプでも効率的なエネルギ再生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るエンジンアシスト装置の一実施の形態を示す回路図である。
図2】同上アシスト装置を搭載した作業機械の代表事例としての油圧ショベルを示す概略図である。
図3】同上アシスト装置の制御装置の入出力を示すブロック図である。
図4】同上アシスト装置の制御フローチャートである。
図5図4の制御フローチャート中のアシスト制御タスクを示す制御ブロック図である。
図6図4の制御フローチャート中のチャージ制御タスクを示す制御ブロック図である。
図7】同上アシスト装置におけるアキュムレータのチャージ動作を説明する回路図である。
図8】同上アシスト装置におけるエンジン・アシスト動作を説明する回路図である。
図9】同上アシスト装置におけるアシスト制御を説明するエンジン回転数・トルク特性図である。
図10】同上アシスト装置におけるチャージ制御を説明するエンジン回転数・トルク特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、図1乃至図10に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0021】
図2は、油圧ショベルをベースマシンとする作業機械Aを示し、この作業機械Aは、機体Bに作業装置Cを搭載している。機体Bは、走行用油圧モータを備えた下部走行体1に上部旋回体2が旋回用油圧モータにより旋回可能に設けられ、この上部旋回体2に作業装置Cが搭載されている。
【0022】
この作業装置Cは、上部旋回体2にブーム3の基端が上下方向回動自在に軸支され、このブーム3に対してブーム回動用油圧シリンダであるブームシリンダ3aが設けられ、ブーム3の先端にアーム4が前後方向回動自在に軸支され、このアーム4に対してアーム回動用油圧シリンダであるアームシリンダ4aが設けられ、アーム4の先端に本来のバケットに替えて電磁石などのアタッチメント5が回動自在に軸支され、このアタッチメント5に対してアタッチメント回動用油圧シリンダであるバケットシリンダ5aが設けられている。
【0023】
図1は、作業機械Aの流体圧回路としての油圧回路を示し、上部旋回体2に搭載されたエンジン6の出力軸に、作業機械Aの各流体圧アクチュエータ(油圧シリンダおよび油圧モータ)に加圧流体としての作動圧油を供給するための可変容量型のメインポンプ7,8すなわちフロントポンプ7およびリアポンプ8が順次直結され、エンジン6によって駆動される。エンジン6の出力軸には、図示しない車載バッテリから供給される電力で駆動されるスタータモータ6sが接続されている。
【0024】
フロントポンプ7およびリアポンプ8は、容量可変制御用のポンプ斜板をそれぞれ備えた可変容量型ポンプであり、これらのポンプ斜板の斜板角は、斜板制御装置7a,8aによりそれぞれ制御され、これらの斜板角と比例的にフロントポンプ7およびリアポンプ8の各ポンプ容量がそれぞれ制御される。
【0025】
この図1には、下部走行体1に対し上部旋回体2を旋回駆動する旋回用油圧モータ(旋回モータという)9と、2本のブームシリンダ3aすなわち第1ブームシリンダ3a1および第2ブームシリンダ3a2が示されている。
【0026】
フロントポンプ7およびリアポンプ8の吸込口は、図示されない配管を介してタンク内に連通され、また、フロントポンプ7およびリアポンプ8の吐出口は、第1ブームシリンダ3a1および第2ブームシリンダ3a2を作動するためのブーム第1流量制御弁10およびブーム第2流量制御弁11の各供給ポートに連通されている。
【0027】
第1ブームシリンダ3a1のヘッド側からロッド側にわたって設けられた再生通路中には、ブーム下げ操作用パイロット圧により切り替えられて第1ブームシリンダ3a1のヘッド室の圧油をロッド室に再生するブーム再生弁12と、逆流防止用のチェック弁13とが設けられている。
【0028】
ブーム第2流量制御弁11と第2ブームシリンダ3a2のヘッド室とを連通する通路中にも、逆流防止用のチェック弁14が設けられている。
【0029】
旋回モータ9を左旋回、右旋回または停止制御する旋回流量制御弁15に対して、リアポンプ8から作動圧油を供給する油圧回路が設けられているが、その図示は省略する。旋回流量制御弁15を左右の切換位置から図1に示される中立位置に戻すことで、左旋回ブレーキ時または右旋回ブレーキ時の旋回ブレーキ圧が発生する。
【0030】
エンジン6もしくはメインポンプ7,8の出力軸に、ポンプとモータの両機能を有する可変容量型のアシストポンプ16が直結されている。このアシストポンプ16は、容量可変制御用のポンプ斜板を備え、このポンプ斜板の斜板角は、斜板制御装置16aにより制御され、この斜板角と比例的にアシストポンプ16のポンプ容量が制御される。
【0031】
このアシストポンプ16の吐出通路上には、流体圧エネルギを蓄えるための単数もしくは複数のメインアキュムレータ17が接続され、一方、第2ブームシリンダ3a2のヘッド側と旋回モータ9の駆動回路との間の通路には、第2ブームシリンダ3a2および旋回モータ9から放出される圧油を一時的に蓄えるためのサブアキュムレータ18が設けられている。
【0032】
第1ブームシリンダ3a1のヘッド室と第2ブームシリンダ3a2のヘッド室との間には、ブーム下げ操作用パイロット圧によって切り替えられる切換弁19が設けられている。
【0033】
第2ブームシリンダ3a2のヘッド室からサブアキュムレータ18への通路中には、圧油の漏れを防ぐためのブームヘッド圧蓄圧用チェック弁20と、ブーム下げ操作用パイロット圧によって閉状態から開状態に切り替えられ第2ブームシリンダ3a2のヘッド室の圧油をサブアキュムレータ18側に導くためのブーム再生切換弁21とが設けられている。
【0034】
旋回モータ9の左回転用ポートと右回転用ポートとの間には高圧選択弁(シャトル弁)22が設けられ、この高圧選択弁22の出口からサブアキュムレータ18への通路中には、旋回ブレーキ圧を保持するためのシーケンス弁23と、逆流防止用の旋回圧蓄圧用チェック弁24とが設けられている。
【0035】
メインアキュムレータ17からアシストポンプ16の入口にわたって設けられた通路中には、メインアキュムレータ17に蓄圧された圧油を閉じ位置から開き位置に切り換わることでアシストポンプ16の入口側に加圧供給する電磁作動式のメインアキュムレータ再生弁25が設けられている。
【0036】
アシストポンプ16の出口から作動流体タンクとしての作動油タンク34にわたって設けられたドレン通路中には、開き位置でアシストポンプ16の出口側を作動油タンク34内に開放してアンロード状態に制御する電磁作動式のアンロード弁26が、開き位置と閉じ位置とで切換可能に設けられている。
【0037】
このアンロード弁26は、閉じることで、アシストポンプ16から吐出された圧油をメインアキュムレータ17に蓄圧し、また、このアンロード弁26を開くことで、アシストポンプ16によるメインアキュムレータ17の蓄圧を停止したり、メインアキュムレータ17に蓄圧された圧油によりアシストポンプ16をモータとして駆動する。
【0038】
メインアキュムレータ再生弁25およびアンロード弁26は、油圧装置の稼働中にメインアキュムレータ17の蓄圧放圧のために開閉作動するとともに、スタータモータ6sの始動時に連動して開き動作するように制御されるものであり、エンジン6の始動やアイドリングストップからの再始動の際に、メインアキュムレータ17に蓄圧された圧油によりアシストポンプ16をモータとして駆動することで、スタータモータ6sにかかる負荷を軽減する。
【0039】
メインアキュムレータ17から作動油タンク34にわたって設けられたドレン通路中には、メインアキュムレータ17の最高圧を設定するリリーフ弁27が設けられている。
【0040】
サブアキュムレータ18からアシストポンプ16の入口にわたって設けられた通路中には、サブアキュムレータ18からアシストポンプ16の入口に圧油を供給するとともに逆流を防止するためのアシストポンプ流入側チェック弁28が設けられている。
【0041】
サブアキュムレータ18からメインアキュムレータ17にわたって設けられた通路中には、サブアキュムレータ18からメインアキュムレータ17に圧油を供給するとともに逆流を防止するためのアキュムレータ間チェック弁29が設けられている。
【0042】
同様に、メインアキュムレータ17からの逆流を防止するためのアシストポンプ流出側チェック弁30と、チェック弁31が設けられている。
【0043】
アシストポンプ流出側チェック弁30は、アンロード弁26とリリーフ弁27との間の通路中にあって、アシストポンプ16から吐出された圧油をメインアキュムレータ17に蓄圧できる方向の流れを可能とするとともに、メインアキュムレータ17およびサブアキュムレータ18からアシストポンプ16の出口への逆流を防止する。
【0044】
フロントポンプ7およびリアポンプ8の容量可変用のフロントポンプ斜板およびリアポンプ斜板の各斜板角は、斜板制御装置7a,8aの斜板角調整ピストンの変位により制御するが、これらのピストン変位は、パワーシフト制御弁32により可変制御する。
【0045】
このパワーシフト制御弁32は、パワーシフト制御信号に応じたパワーシフト圧を斜板制御装置7a,8aの斜板角調整ピストンに出力して、フロントポンプ7およびリアポンプ8のトルクを調整する電磁比例減圧弁である。
【0046】
アシストポンプ16の入口側のチェック弁31には、リターン回路33および作動油タンク34が接続されている。
【0047】
次に、図3は、制御装置の入出力信号をまとめたものであり、コントローラ40の入力側には、エンジン設定回転数を指示するためのエンジン回転数設定手段としてのアクセルダイヤル41と、エンジン実回転数Neを検出するためのエンジン回転数センサ42と、フロントポンプ7およびリアポンプ8のメインポンプ圧としてのフロントポンプ圧Ppfおよびリアポンプ圧Pprをそれぞれ検出するためのメインポンプ圧センサとしてのフロントポンプ圧センサ43およびリアポンプ圧センサ44と、斜板式可変容量型ポンプであるフロントポンプ7のフロントポンプ斜板角φfおよびリアポンプ8のリアポンプ斜板角φrから各ポンプの容量をそれぞれ検出するためのメインポンプ容量センサとしてのフロントポンプ斜板角センサ45およびリアポンプ斜板角センサ46と、メインアキュムレータ17のメインアキュムレータ圧Pa1を検出するためのメインアキュムレータ圧センサ47と、サブアキュムレータ18のサブアキュムレータ圧Pa2を検出するためのサブアキュムレータ圧センサ48と、アシストポンプ16から吐出されたアシスト圧油のアシストポンプ吐出圧Pa3を検出するためのアシストポンプ圧センサ49とが、それぞれ接続されている。
【0048】
上記のエンジン回転数センサ42、フロントポンプ圧センサ43、リアポンプ圧センサ44、フロントポンプ斜板角センサ45、リアポンプ斜板角センサ46、メインアキュムレータ圧センサ47、サブアキュムレータ圧センサ48、アシストポンプ圧センサ49の各センサ設置位置は、図1に示されるとおりである。
【0049】
一方、コントローラ40の出力側には、コントローラ40によって制御されるアシストポンプ16の斜板制御装置16a、メインアキュムレータ再生弁25、アンロード弁26およびパワーシフト制御弁32が、それぞれ接続されている。
【0050】
次に、図1図7および図8に基づいて、動力再生回路の動作を説明する。
【0051】
I.油圧回路の動作説明
(1) アキュムレータ・チャージ動作
図1および図7に基づきアキュムレータ・チャージ動作を説明する。
【0052】
図1において、ブーム下げレバー操作を行うと、図示していない操作レバー連動型比例減圧弁を含むパイロット操作回路からブーム下げ操作用パイロット圧が出力され、このブーム下げ操作用パイロット圧によって、ブーム第1流量制御弁10が室aから室bに切り換り、同時にブーム再生弁12が室aから室bに切り換り、切換弁19が室aから室bに切り換り、ブーム再生切換弁21が室aから室bに切り換わる。
【0053】
したがって、フロントポンプ7からブーム第1流量制御弁10の室bを経て第1ブームシリンダ3a1および第2ブームシリンダ3a2のロッド室に圧油が供給され、一方、第1ブームシリンダ3a1のヘッド室と第2ブームシリンダ3a2のヘッド室との間は、切換弁19により遮断され、第1ブームシリンダ3a1のヘッド室の圧油の大半は、ブーム再生弁12を経て第1および第2ブームシリンダ3al,3a2のロッド室に再生され、上記ヘッド室の圧油の一部がブーム第1流量制御弁10の室bを経て作動油タンク34に開放される。
【0054】
このとき、図7に示されるように、第2ブームシリンダ3a2のヘッド室の圧油は、ブームヘッド圧蓄圧用チェック弁20、ブーム再生切換弁21を経てサブアキュムレータ18に導かれる。また、旋回ブレーキ時の圧油は、高圧選択弁22、シーケンス弁23および旋回圧蓄圧用チェック弁24を経てサブアキュムレータ18側に導かれる。
【0055】
サブアキュムレータ18側に導かれた圧油は、図7に示されるようにアシストポンプ16の入口に供給される。メインアキュムレータ17が蓄圧されていないときは、アンロード弁26を閉じて、アシストポンプ16により加圧した圧油をメインアキュムレータ17に導き蓄圧させる。メインアキュムレータ17が最高圧に達した場合は、アンロード弁26を開き、アシストポンプ16の吐出側を作動油タンク34に開放する。
【0056】
このとき、サブアキュムレータ18側に導かれた圧油の流量がアシストポンプ16の吸込み流量より多い場合は、サブアキュムレータ18に一時的に蓄圧される。また、メインアキュムレータ17の圧力が、サブアキュムレータ18の圧力より低い場合は、アキュムレータ間チェック弁29を介して直接メインアキュムレータ17に蓄圧される。
【0057】
なお、図1において、ブーム上げ操作を行うと、上記パイロット操作回路からブーム上げ操作用パイロット圧がブーム第1および第2流量制御弁10,11に出力され、このブーム上げ操作用パイロット圧によって、ブーム第1流量制御弁10が室aから室cに切り換り、同時にブーム第2流量制御弁11が室aから室bに切り換わり、フロントポンプ7およびリアポンプ8からブームシリンダ3a1,3a2のヘッド室に大流量の圧油が供給される。
【0058】
(2) エンジン・アシスト動作
図8に基づきエンジン・アシスト動作を説明すると、エンジン6の負荷トルクが高い場合は、メインアキュムレータ再生弁25を開き、アシストポンプ16の入口にメインアキュムレータ17に蓄圧された圧油を供給するとともに、アシストポンプ16の出口に接続されたアンロード弁26を開く。
【0059】
これによって、アシストポンプ16は、油圧モータとして作動し、エンジン6をアシストする。アシストのトルクは、メインアキュムレータ17の圧力をもとに、アシストポンプ16の斜板を斜板制御装置16aにより制御して調整する。詳細は、後述するアシスト制御で説明する。
【0060】
II.エンジンアシスト制御の説明
図4の制御フローチャート、図5のアシスト制御タスクの制御ブロック図、図6のチャージ制御タスクの制御ブロック図、図9のアシスト制御を説明する特性図、図10のチャージ制御を説明する特性図に基づき、エンジンアシスト制御について説明する。
【0061】
(1) 全体制御フロー
図4の制御フローチャートに基づき、全体制御フローを説明する。
【0062】
図4において、処理器Slで図3に示す入力信号を読み込む。次に、負荷トルク演算手段としての処理器S2で、フロントポンプ斜板角センサ45で検出されたフロントポンプ斜板角φf、フロントポンプ圧センサ43で検出されたフロントポンプ圧Ppf、リアポンプ斜板角センサ46で検出されたリアポンプ斜板角φr、リアポンプ圧センサ44で検出されたリアポンプ圧Pprをもとに、次式でエンジン負荷トルクT1を計算する。
【0063】
T1={Ppf・φf・Dp+Ppr・φr・Dp}/2π
Dp:メインポンプ7,8のポンプ最大容量
【0064】
判定器S3で、エンジン負荷トルクT1とアシスト開始トルクTasとを比較する。アシスト開始トルクTasは、図9に示すようにアクセルダイヤル41によって設定される。
【0065】
図9に示されるように、上記のエンジン負荷トルクT1がアシスト開始トルクTasより大の場合は、処理器S4に移り、図8に示されるようにメインアキュムレータ再生弁25を開くとともに、アンロード弁26を開く。次に、処理器S5のアシスト制御タスクに移り、後述するアシスト制御を行う。
【0066】
判定器S3でエンジン負荷トルクT1がアシスト開始トルクTasより大でない場合は、判定器S6に移り、メインアキュムレータ17の圧力(メインアキュムレータ圧Pa1)を確認する。このメインアキュムレータ圧Pa1がメインアキュムレータ最高圧に達していない場合(Yes)は、判定器S7でエンジン負荷トルクT1とチャージ開始トルクTcsを比較する。チャージ開始トルクTcsは、図10に示すようにアクセルダイヤル41によって設定される。
【0067】
図10に示されるように、エンジン負荷トルクT1がチャージ開始トルクTcsより小の場合は、処理器S8に移り、図7に示されるようにアンロード弁26を閉じるとともに、メインアキュムレータ再生弁25を閉じる。次に、処理器S9のチャージ制御タスクに移り、後述するチャージ制御を行う。
【0068】
判定器S6、判定器S7で条件を満たさない場合は、判定器S10でサブアキュムレータ18の圧力(サブアキュムレータ圧Pa2)を確認する。このサブアキュムレータ圧Pa2が規定圧を超えた場合は、処理器Sllでアンロード弁26を開き、メインアキュムレータ再生弁25を閉じ、サブアキュムレータ圧Pa2に応じてアシストポンプ16の斜板角を調整し、サブアキュムレ一夕18の圧油によってアシストポンプ16を駆動して、エンジン6をアシストしながらサブアキュムレータ18の圧油を開放する。
【0069】
判定器S1Oでサブアキュムレータ圧Pa2が規定圧以下の場合は、処理器S12でアシストポンプ16の斜板角を最小に制御し、かつアンロード弁26を開き、メインアキュムレータ再生弁25を閉じる。
【0070】
(2) アシスト制御タスク
図5に示されるように、アシスト制御手段40aを備えたアシスト制御タスクの制御ブロック図において、50は、図4の制御フローチャートの処理器S2でエンジン負荷トルクT1を演算した負荷トルク演算手段としての演算器である。
【0071】
アクセルダイヤル41で設定された数値に基づき、関数テーブル51で最大アシストトルクTamを設定するとともに、関数テーブル52でアシスト開始トルクTasを設定する。
【0072】
減算器53でメインアキュムレータ圧センサ47で検出されたメインアキュムレータ圧Pa1と、アシストポンプ圧センサ49で検出されたアシストポンプ吐出圧Pa3との差圧ΔPを求め、この差圧ΔPからトルク演算器54によって、メインアキュムレータ圧Pa1で油圧モータとして機能するアシストポンプ16から出力可能なアシストトルクTa1を、次の計算式により求め、最小値選択器55で最大アシストトルクTamと比較して、小さいトルクを選択し出力する。
【0073】
なお、このアシスト時は、図8に示されるようにアシストポンプ16の吐出側が、アンロード弁26を経て作動油タンク34に開放されているので、アシストポンプ吐出圧Pa3はほぼ0とし、差圧ΔP=メインアキュムレータ圧Pa1としてもよい。
【0074】
Ta1=ΔP・Dpm・ηt/2π
Dpm:アシストポンプ16のポンプ最大容量
ηt:トルク効率
【0075】
一方、減算器56によって、図4の制御フローチャートの処理器S2で求めたエンジン負荷トルクT1と、アクセルダイヤル41で設定された数値に基づき関数テーブル52で設定したアシスト開始トルクTasとの差を求め、加算器57に入力する。
【0076】
また、アクセルダイヤル41で指示された数値に基づいて関数テーブル58で設定されたエンジン設定回転数Nsと、エンジン回転数センサ42で検出したエンジン実回転数Neとの偏差を、減算器59によって求め、PI制御演算器60で比例積分制御(PI制御)を行い、PI制御の出力を加算器57に入力し、この加算器57で減算器56からの出力に加算する。
【0077】
加算器57の出力と最小値選択器55から出力されるトルク制限値とを、最小値選択器61で比較して、小さい方の値を要求アシストトルクTaとしてアシストポンプ斜板角演算器62に入力し、下記の演算式により、要求されるアシストポンプ容量Dを演算し、アシストポンプ最大容量Dpmに対して要求されるアシストポンプ容量Dの比率から、アシストポンプ16の斜板角φaを求め、この斜板角φaが得られるようにアシストポンプ16の斜板制御装置16aを制御する。
【0078】
D=(2π・Ta)/(ΔP・ηt)
φa=D/Dpm
D:要求されるアシストポンプ容量
Dpm:アシストポンプ最大容量
ηt:トルク効率
【0079】
また、図5に示されるように、メインポンプ補正手段40bは、加算器63によって、最小値選択器61で求めた要求アシストトルクTaと、アシスト開始トルクTasとを加算し、減算器64によって、演算器50で演算されたエンジン負荷トルクT1から加算器63の出力を減算し、下限リミッタ65でプラス値を抽出し、さらに演算器66によりメインポンプ補正トルクを求める。
【0080】
このメインポンプ補正トルクは、図示していないメインポンプトルク制御器に入力し、さらにパワーシフト制御弁32によってメインポンプ(フロントポンプ7、リアポンプ8)の駆動トルクを補正する。
【0081】
上記の作用により、エンジン負荷トルクT1がアシスト開始トルクTasよりも大きくなったときは、メインアキュムレータ圧Pa1などに基づきアシストポンプ16の斜板角を調整してエンジン6をアシストし、また、アシストポンプ16のアシストトルクTa1が不足した場合は、メインポンプ(フロントポンプ7、リアポンプ8)の駆動トルクを補正する。
【0082】
(3) チャージ制御タスク
図6に示されるように、チャージ制御手段40cを備えたチャージ制御タスクの制御ブロック図において、アクセルダイヤル41に基づき関数テーブル67でチャージ開始トルクTcsを設定し、アクセルダイヤル41に基づき関数テーブル68で最大チャージトルクTcmを設定する。
【0083】
減算器69で、図4の制御フローチャートの処理器S2で求めたエンジン負荷トルクT1と、チャージ開始トルクTcsとの差を求め、最小値選択器70で、この差と最大チャージトルクTcmとを比較して、値の小さいトルクを要求チャージトルクTcとして出力する。
【0084】
一方、減算器71で、アシストポンプ圧センサ49で検出されたアシストポンプ吐出圧Pa3と、サブアキュムレータ圧センサ48により検出されたサブアキュムレータ圧Pa2との差圧ΔPを求め、アシストポンプ斜板角演算器72にこの差圧ΔPと要求チャージトルクTcを入力し、下記の演算式により要求されるアシストポンプ容量Dを演算し、アシストポンプ最大容量Dpmに対して要求されるアシストポンプ容量Dの比率から、アシストポンプ16の斜板角φaを求め、この斜板角φaが得られるようにアシストポンプ16の斜板制御装置16aを制御する。
【0085】
D=2π・Tc・ηt/ΔP
φa=D/Dpm
D:要求されるアシストポンプ容量
Dpm:アシストポンプ最大容量
ηt:トルク効率
【0086】
上記の作用によって、要求チャージトルクTcに基づきアシストポンプ16のトルクを制御しながら、メインアキュムレータ17をチャージするので、エンジン6の過負荷を防止できる。
【0087】
次に、図示された実施の形態の作用効果を総括的に説明する。
【0088】
エンジン6もしくはメインポンプ7,8の出力軸に、エンジンアシスト用モータ機能とアキュムレータ蓄圧用ポンプ機能とを有する可変容量型のアシストポンプ16を直結し、このアシストポンプ16から吐出された高圧の油圧エネルギを蓄えるメインアキュムレータ17とは別の、ブームシリンダ3aおよび旋回モータ9から流出した中圧の戻り圧油を一時的に蓄圧するサブアキュムレータ18により、アシストポンプ16の入口およびメインアキュムレータ17に供給するようにし、コントローラ40により、フロントポンプ圧Ppfおよびリアポンプ圧Pprとフロントポンプ斜板角φfおよびリアポンプ斜板角φrから求めたエンジン負荷トルクT1が、アシスト開始トルクTasを超えた場合は、エンジン負荷トルクT1とアシスト開始トルクTasとのトルク差と、メインアキュムレータ圧Pa1とアシストポンプ吐出圧Pa3との差圧(アシストポンプ吐出圧Pa3は0としてもよい)に基づきアシストポンプ16のアシストポンプ斜板角φaを演算し、このアシストポンプ斜板角φaを制御するとともに、メインアキュムレータ17からアシストポンプ16の入口に蓄圧油を加圧供給して、アシストポンプ16をモータとして駆動することでエンジン6をアシストし、また、エンジン負荷トルクT1がチャージ開始トルクTcsより低下した場合は、エンジン負荷トルクT1とチャージ開始トルクTcsとのトルク差と、アシストポンプ吐出圧Pa3とサブアキュムレータ圧Pa2との差圧に基づき、アシストポンプ斜板角φaを演算して制御しつつ、アシストポンプ16から供給される圧油をメインアキュムレータ17に蓄圧させるので、メインアキュムレータ17の蓄圧状態やエンジン負荷トルクT1の状態などに応じて、メインアキュムレータ17またはサブアキュムレータ18から安定したエネルギ再生を行なえるエンジンアシスト装置を、大容量の発電電動機、蓄電装置などを用いることなく安価に提供できる。
【0089】
さらに、エンジン6の高負荷時にメインアキュムレータ圧Pa1により油圧モータとして駆動されるアシストポンプ16によってエンジン6をアシストし、エンジン6の低負荷時にブームシリンダ3aおよび旋回モータ9からサブアキュムレータ18の圧平滑作用を経て安定供給された圧油が、アシストポンプ16によってメインアキュムレータ17に蓄圧されるので、エンジン6の負荷を平準化でき、燃費を改善できるとともに、エンジン6から生じる黒煙などの排ガスを低減できる。
【0090】
エンジン負荷トルクT1が、アシスト開始トルクТasを超えた場合はエンジン6をアシストするアシスト制御手段40aと、アシストトルクTa1が不足する場合はフロントポンプ7およびリアポンプ8のトルクを補正するメインポンプ補正手段40bと、エンジン負荷トルクT1が低下した場合はメインアキュムレータ17に圧油を蓄圧させるチャージ制御手段40cとを備えたコントローラ40が、エンジン負荷トルクT1に応じて、メインアキュムレータ再生弁25とアンロード弁26を開閉制御しつつ、アシストポンプ16、フロントポンプ7およびリアポンプ8を制御するので、メインアキュムレータ17の蓄圧状態やエンジン負荷トルクT1の状態などに応じて、サブアキュムレータ18で圧力変動を平滑化した圧油をメインアキュムレータ17に適切なタイミングでチャージできるとともに、メインアキュムレータ17またはサブアキュムレータ18からアシストポンプ16を駆動するための圧油エネルギを適切なタイミングで取り出すことができる。
【0091】
エンジン6のスタータモータ始動時にメインアキュムレータ再生弁25およびアンロード弁26が連動して開き動作することで、エンジン始動時や、アイドリングストップからのエンジン再始動時の際に、メインアキュムレータ17に蓄圧された圧油により、アシストポンプ16をエンジン回転方向にアシストモータとして機能させることができるので、スタータモータ6sの負荷を軽減することが可能であり、これにより、スタータモータ6sの小型化、バッテリ消費の低減、スタータモータ使用時の不快なギヤ音の低減を図れる。
【0092】
ブームシリンダ3a、旋回モータ9、フロントポンプ7、リアポンプ8、アシストポンプ16、メインアキュムレータ17およびサブアキュムレータ18などを油圧機器として、油圧システムを用いたハイブリッドシステムの作業機械を構成したので、発電電動機や蓄電装置により構成された電気システムを用いたハイブリッドシステムに比較して大幅なコスト低減ができ、かつメンテナンスが少なく、ランニングコストを低減できる。また、既存の油圧式の作業機械に容易に装着できる。
【0093】
さらに、ブーム下げと旋回ブレーキの際にブームシリンダ3aおよび旋回モータ9から放出される中圧の戻り圧油をサブアキュムレータ18を介し効率よく回収できるので、今まで熱として放出していた油圧装置のエネルギ損失を下げることができ、作動油の温度上昇を抑制できるので、油圧冷却装置を小型化できる。
【0094】
ブームヘッド圧蓄圧用チェック弁20およびブーム再生切換弁21により、ブーム下げ時のみ第2ブームシリンダ3a2のヘッド室の圧油をサブアキュムレータ18側に回収してメインアキュムレータ17内に蓄圧できるとともに、高圧選択弁22、シーケンス弁23および旋回圧蓄圧用チェック弁24により、旋回モータ9の左旋回ブレーキ時または右旋回ブレーキ時に発生する旋回ブレーキ圧を保持しつつ、旋回ブレーキ圧を超える圧の戻り油をサブアキュムレータでいったん回収してメインアキュムレータ17内に蓄圧でき、そして、アシストポンプ流入側チェック弁28、アキュムレータ間チェック弁29およびアシストポンプ流出側チェック弁30により、メインアキュムレータ17内の高圧の圧油をアシストポンプ16の入口に供給する方向のみに導くことができるので、ブーム下げ時に第2ブームシリンダ3a2のヘッド室から放出された戻り圧油と、旋回ブレーキ時の旋回モータ9から放出された戻り圧油の油圧変動を、サブアキュムレータ18により平滑化しつつ、エンジン6の出力軸に直結されたアシストポンプ16で加圧した圧油をメインアキュムレータ17に高圧状態で蓄圧でき、エンジン6の負荷が低いときに余剰エネルギを効率よく回収できるとともに、エンジン6の負荷が高いときにその余剰エネルギを有効利用でき、油圧装置のエネルギ損失を下げることができ、したがって、エンジン6および油圧冷却装置を小型化することができ、かつエンジン小型化に伴いエンジン6の冷却装置、エアクリーナ等の関連装置を小型化できる。さらに、高圧用のメインアキュムレータ17と、中圧用のサブアキュムレータ18を用いることにより、小型のアシストポンプ16でも効率的なエネルギ再生が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、エンジンアシスト装置または作業機械の製造業、販売業などに携わる事業者にとって産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0096】
A 作業機械
B 機体
C 作業装置
1 下部走行体
2 上部旋回体
3a 流体圧アクチュエータとしてのブームシリンダ
6 エンジン
6s スタータモータ
7 メインポンプとしてのフロントポンプ
8 メインポンプとしてのリアポンプ
9 流体圧アクチュエータとしての旋回モータ
16 アシストポンプ
17 メインアキュムレータ
18 サブアキュムレータ
20 ブームヘッド圧蓄圧用チェック弁
21 ブーム再生切換弁
22 高圧選択弁
23 シーケンス弁
24 旋回圧蓄圧用チェック弁
25 メインアキュムレータ再生弁
26 アンロード弁
28 アシストポンプ流入側チェック弁
29 アキュムレータ間チェック弁
30 アシストポンプ流出側チェック弁
40 コントローラ
40a アシスト制御手段
40b メインポンプ補正手段
40c チャージ制御手段
41 エンジン回転数設定手段としてのアクセルダイヤル
42 エンジン回転数センサ
43 メインポンプ圧センサとしてのフロントポンプ圧センサ
44 メインポンプ圧センサとしてのリアポンプ圧センサ
45 メインポンプ容量センサとしてのフロントポンプ斜板角センサ
46 メインポンプ容量センサとしてのリアポンプ斜板角センサ
47 メインアキュムレータ圧センサ
48 サブアキュムレータ圧センサ
49 アシストポンプ圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10