特許第6090837号(P6090837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090837
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   H01L21/304 641
   H01L21/304 643
   H01L21/304 647Z
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-10461(P2013-10461)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-17466(P2014-17466A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-134083(P2012-134083)
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170324
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 昌秀
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝佳
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−181426(JP,A)
【文献】 特開2008−021672(JP,A)
【文献】 特表平03−503975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持手段と、
発泡エネルギーが与えられることにより発泡する発泡剤と、発泡エネルギーが与えられることにより蒸発する溶媒と、溶媒が蒸発することにより固化する溶質と、を含む洗浄液を前記基板保持手段に保持されている基板に供給する洗浄液供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板に接している洗浄液に発泡エネルギーを与える発泡エネルギー供給手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記発泡エネルギー供給手段は、前記基板保持手段に保持されている基板に発泡エネルギーを与えることにより、発泡エネルギーを基板から洗浄液に伝達させる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記発泡エネルギー供給手段を制御することにより、洗浄液に与えられる発泡エネルギーの量を制御するエネルギー供給量制御手段をさらに含む、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
洗浄液の溶質を溶解させる溶解液を前記基板保持手段に保持されている基板に供給する溶解液供給手段と、
前記洗浄液供給手段、発泡エネルギー供給手段、および溶解液供給手段を制御する制御手段とをさらに含み、
前記制御手段は、
前記洗浄液供給手段によって洗浄液を基板に供給させる洗浄液供給工程と、
前記発泡エネルギー供給手段からの発泡エネルギーを前記基板に接している洗浄液に与える発泡エネルギー供給工程と、
前記洗浄液供給工程および発泡エネルギー供給工程の後に、前記溶解液供給手段によって溶解液を前記基板に供給させる溶解液供給工程とを実行する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記発泡エネルギー供給手段は、洗浄液が前記基板保持手段に保持されている基板に供給された後、または洗浄液が前記基板保持手段に保持されている基板に供給される前に、発泡エネルギーの発生を開始する、請求項1〜のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記発泡エネルギー供給手段は、洗浄液に伝達される熱を発する発熱手段と、洗浄液に伝達される振動を発する振動手段と、前記基板保持手段に保持されている基板が配置されている空間の気圧を変更する気圧変更手段と、前記基板保持手段に保持されている基板に向けて光を照射する光照射手段とのうちの少なくとも一つを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
発泡エネルギーが与えられることにより発泡する発泡剤と、発泡エネルギーが与えられることにより蒸発する溶媒と、溶媒が蒸発することにより固化する溶質と、を含む洗浄液を基板に供給する洗浄液供給工程と、
基板に接している洗浄液に発泡エネルギーを与える発泡エネルギー供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項8】
前記発泡エネルギー供給工程は、基板に発泡エネルギーを与えることにより、発泡エネルギーを基板から洗浄液に伝達させる工程を含む、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記発泡エネルギー供給工程は、洗浄液に与えられる発泡エネルギーの量を制御するエネルギー供給量制御工程を含む、請求項7または8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記洗浄液供給工程および発泡エネルギー供給工程の後に、洗浄液の溶質を溶解させる溶解液を前記基板に供給する溶解液供給工程さらに含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記発泡エネルギー供給工程は、洗浄液に伝達される熱を発する発熱手段と、洗浄液に伝達される振動を発する振動手段と、前記基板保持手段に保持されている基板が配置されている空間の気圧を変更する気圧変更手段と、前記基板保持手段に保持されている基板に向けて光を照射する光照射手段とのうちの少なくとも一つの手段により、発泡エネルギーを洗浄液に供給する工程である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板からパーティクルなどの異物を除去する洗浄工程が行われる。洗浄工程は、たとえば、多数の液滴を基板に衝突させるスプレー洗浄や、基板上の処理液に超音波を与える超音波洗浄によって行われる。特許文献1には、基板の表面を覆う水膜を凍結によって膨張させることにより、基板に対するパーティクルの付着力を低下させる洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−332396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗浄工程では、基板に形成されたパターンの倒壊を防止しつつ、パーティクルを基板から除去することが求められる。しかしながら、パターンの微細化が進むにつれて、パターンの強度が低下してきているので、前述のスプレー洗浄や超音波洗浄では、パターンが倒壊してしまう可能性がある。パターンの倒壊を防止するために、基板に衝突する液滴の勢いや、超音波を弱める方法が考えられるが、この方法では、十分な洗浄効果が得られない。また、特許文献1の洗浄方法では、基板の表面を覆う水膜を凍結させる必要がある上に、凍結した水膜を解凍して基板から除去する必要があるので、処理時間が増加してしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、パターンの倒壊を抑制または防止しつつ、パーティクルを基板から除去できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
パターンの倒壊は、パターンに作用する倒壊方向(基板の表面と平行な方向)の力(パターンの両側に力が作用する場合には、2つの力の差)がパターンの強度を上回ったときに発生する。また、パターンの先端部に力が加わると、パターンの根元に作用する力が梃子の原理によって増幅されるので、その力が小さくてもパターンが倒壊してしまうことがある。
【0007】
したがって、パターンの倒壊を抑制または防止しつつ、パーティクルを除去する方法としては、「1」倒壊方向の力をパターンに作用させない、「2」倒壊方向の力が作用する部分をパターンの根元付近だけに止める、「3」倒壊方向の力がパターンの先端部に作用する場合には、方向が反対で大きさが等しい2つの力をパターンの両側に作用させる、ことが考えられる。
【0008】
そこで、本発明の一実施形態は、基板(W)を保持する基板保持手段(6)と、発泡エネルギーが与えられることにより発泡する発泡剤と、発泡エネルギーが与えられることにより蒸発する溶媒と、溶媒が蒸発することにより固化する溶質と、を含む洗浄液を前記基板保持手段に保持されている基板に供給する洗浄液供給手段(9、9A、9B)と、前記基板保持手段に保持されている基板に接している洗浄液に発泡エネルギーを与える発泡エネルギー供給手段(13、14、20、21)とを含む、基板処理装置(1)を提供する。
【0009】
この構成によれば、洗浄液が基板に接している状態で、発泡エネルギーが洗浄液に与えられる。これにより、発泡剤が発泡して、洗浄液中に気泡が発生する。基板に付着しているパーティクルは、基板とパーティクルとの間に介在する気泡によって基板から離れる方向に押される。そのため、基板に対するパーティクルの付着力が弱まったり、パーティクルが基板から剥がれたりする。さらに、パターンが基板に形成されている場合には、パターンの両側で気泡が発生するので、方向が反対で大きさが等しい2つの力がパターンに加わる。したがって、パターンに加わる力が相殺される。そのため、パターンの倒壊を抑制または防止しつつ、パーティクルを除去できる。
さらに、この構成によれば、発泡エネルギーが洗浄液に与えられると、発泡剤が発泡すると共に、洗浄液の溶媒が蒸発する。洗浄液の溶質は、溶媒の蒸発に伴って固化する。したがって、溶質は、発泡剤の発泡によって発生した気泡を含んだ状態で固化する。そのため、パーティクルと基板との間に気泡が介在している状態が維持される。言い換えると、基板から離れる方向への力がパーティクルに加わっている状態が維持される。これにより、基板から剥がれたパーティクルが基板に再付着することを抑制または防止できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記発泡エネルギー供給手段は、前記基板保持手段に保持されている基板に発泡エネルギーを与えることにより、発泡エネルギーを基板から洗浄液に伝達させる、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、発泡エネルギー供給手段が発する発泡エネルギーが、基板から洗浄液に伝達される。したがって、発泡剤の発泡は、基板と洗浄液との接触位置(たとえば、パターンの根元付近)で始まる。そのため、倒壊方向の力が、パターンの先端部に加わることを抑制または防止できる。これにより、パターンの倒壊を抑制または防止できる。さらに、多数の気泡を含む気泡層が、基板と洗浄液との接触位置からパターンの先端部まで広がったとしても、方向が反対で大きさが等しい2つの力が気泡からパターンに加わるので、パターンの倒壊を抑制または防止できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記発泡エネルギー供給手段を制御することにより、洗浄液に与えられる発泡エネルギーの量を制御するエネルギー供給量制御手段(4)をさらに含む、請求項2に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、洗浄液に対する発泡エネルギーの供給時間や、発泡エネルギー供給手段が発する発泡エネルギーの強さ(温度や周波数など)が、エネルギー供給量制御手段によって変更される。これにより、洗浄液に与える発泡エネルギーの量が制御される。洗浄液中に発生する気泡の量は、発泡エネルギーの供給量の増加に伴って増加する。したがって、エネルギー供給量制御手段は、気泡層が形成される領域を基板の表面近傍の領域(たとえば、基板の表面から数nm〜100nmまでの領域)だけに止めて、物理力(パターンに加わる物理的な力)が発生する領域を基板の表面近傍だけに止めることができる。すなわち、エネルギー供給量制御手段は、パターンの先端部が気泡によって押されることを抑制または防止できる。これに対して、従来のスプレー洗浄では、直径が数μm〜数十μmの液滴が基板に衝突するため、物理力が作用する領域を基板の表面近傍だけに止めることができない。また、超音波洗浄では、キャビテーションが発生する位置を制御できないため、洗浄液中のあらゆる場所で物理力が発生してしまう。したがって、エネルギー供給量制御手段は、洗浄液に与えられる発泡エネルギーの量を制御することにより、パターンの倒壊を抑制または防止できる。
【0013】
請求項に記載の基板処理装置は、洗浄液の溶質を溶解させる溶解液を前記基板保持手段に保持されている基板に供給する溶解液供給手段(5)と、前記洗浄液供給手段、発泡エネルギー供給手段、および溶解液供給手段を制御する制御手段(4)とをさらに含む。
前記制御手段は、前記洗浄液供給手段によって洗浄液を基板に供給させる洗浄液供給工程と、前記発泡エネルギー供給手段からの発泡エネルギーを前記基板に接している洗浄液に与える発泡エネルギー供給工程と、前記洗浄液供給工程および発泡エネルギー供給工程の後に、前記溶解液供給手段によって溶解液を前記基板に供給させる溶解液供給工程とを実行する。
【0014】
この構成によれば、発泡剤と溶媒と溶質とを含む洗浄液が、基板に供給され、発泡エネルギーが、この洗浄液に供給される。その後、洗浄液の溶質を溶解させる溶解液が、基板に供給される。前述のように、発泡エネルギーが洗浄液に与えられると、発泡剤が発泡すると共に、洗浄液の溶媒が蒸発する。洗浄液の溶質は、溶媒の蒸発に伴って固化する。したがって、溶質は、発泡剤の発泡によって発生した気泡を含んだ状態で固化する。そして、固化した溶質は、基板に供給された溶解液に溶解する。これにより、溶質が基板から除去される。
【0015】
前記発泡エネルギー供給手段は、請求項に記載の発明のように、洗浄液が前記基板保持手段に保持されている基板に供給された後、または洗浄液が前記基板保持手段に保持されている基板に供給される前に、発泡エネルギーの発生を開始してもよい。
また、前記発泡エネルギー供給手段は、請求項に記載の発明のように、洗浄液に伝達される熱を発する発熱手段(20)と、洗浄液に伝達される振動を発する振動手段(21)と、前記基板保持手段に保持されている基板が配置されている空間の気圧を変更する気圧変更手段(13、14)と、前記基板保持手段に保持されている基板に向けて光を照射する光照射手段とのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0016】
請求項に記載の発明は、発泡エネルギーが与えられることにより発泡する発泡剤と、発泡エネルギーが与えられることにより蒸発する溶媒と、溶媒が蒸発することにより固化する溶質と、を含む洗浄液を基板に供給する洗浄液供給工程と、基板に接している洗浄液に発泡エネルギーを与える発泡エネルギー供給工程とを含む、基板処理方法である。この方法によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項に記載の発明は、前記発泡エネルギー供給工程は、基板に発泡エネルギーを与えることにより、発泡エネルギーを基板から洗浄液に伝達させる工程を含む、請求項に記載の基板処理方法である。この方法によれば、請求項2の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、前記発泡エネルギー供給工程は、洗浄液に与えられる発泡エネルギーの量を制御するエネルギー供給量制御工程を含む、請求項7または8に記載の基板処理方法である。この方法によれば、請求項3の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記洗浄液供給工程および発泡エネルギー供給工程の後に、洗浄液の溶質を溶解させる溶解液を前記基板に供給する溶解液供給工程さらに含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の基板処理方法である。この方法によれば、請求項の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項11に記載の発明は、前記発泡エネルギー供給工程は、洗浄液に伝達される熱を発する発熱手段と、洗浄液に伝達される振動を発する振動手段と、前記基板保持手段に保持されている基板が配置されている空間の気圧を変更する気圧変更手段と、前記基板保持手段に保持されている基板に向けて光を照射する光照射手段とのうちの少なくとも一つの手段により、発泡エネルギーを洗浄液に供給する工程である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の基板処理方法である。この方法によれば、請求項の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0019】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図2】処理ユニットの内部を上から見た模式図である。
図3】スキャンノズル(洗浄液ノズル)の模式的な断面図である。
図4】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例について説明するための工程図である。
図5A】洗浄液中でのパーティクルの状態について説明するための模式図である。
図5B】洗浄液中でのパーティクルの状態について説明するための模式図である。
図5C】洗浄液中でのパーティクルの状態について説明するための模式図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る洗浄液ノズルの模式図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る洗浄液ノズルの模式図である。
図8】基板上で固化した溶質を基板から剥がす剥離装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。図2は、処理ユニット2の内部を上から見た模式図である。図3は、スキャンノズル9の模式的な断面図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、洗浄液や溶解液などの処理液を用いて基板Wを処理する処理ユニット2と、洗浄液および溶解液を処理ユニット2に供給する洗浄液ユニット3と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置4とを含む。
【0022】
図1に示すように、処理ユニット2は、箱形のチャンバー5と、チャンバー5内で基板Wを水平に保持して基板Wの中央部を通る鉛直な基板回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック6と、スピンチャック6に保持されている基板Wに向けて処理液を吐出する複数のノズル(固定ノズル7、中心軸ノズル8、およびスキャンノズル9)と、スピンチャック6の周囲を取り囲む筒状のカップ10とを含む。さらに、処理ユニット2は、スピンチャック6の上方で水平に保持された円板状の遮断板11と、遮断板11を基板Wの上方で昇降させる遮断板昇降ユニット(図示せず)とを含む。遮断板昇降ユニットは、複数のノズルが基板Wと遮断板11との間に進入できない高さまで遮断板11の下面が基板Wの上面に近接する近接位置と、近接位置よりも上方の退避位置(図1に示す位置)との間で遮断板11を昇降させる。
【0023】
図1に示すように、チャンバー5は、箱形の隔壁12と、隔壁12の上部から隔壁12内(チャンバー5内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU13(ファン・フィルタ・ユニット13)と、隔壁12の下部からチャンバー5内の気体を排出する排気装置14とを含む。スピンチャック6、複数のノズル、カップ10、および遮断板11は、隔壁12内に配置されている。FFU13は、隔壁12の上方に配置されており、隔壁12の天井に取り付けられている。FFU13は、隔壁12の天井からチャンバー5内に清浄空気を送る。排気装置14は、カップ10の底部に接続されており、カップ10の底部からチャンバー5内の気体を吸引する。FFU13および排気装置14は、チャンバー5内にダウンフロー(下降流)を形成する。基板Wの処理は、チャンバー5内にダウンフローが形成されている状態で行われる。さらに、チャンバー5内の気圧は、FFU13の送風流量と排気装置14の排気流量とが制御装置4によって制御されることにより、負圧(大気圧よりも低い圧力)から正圧(大気圧よりも高い圧力)までの範囲内の一定の圧力に維持される。
【0024】
図1に示すように、スピンチャック6は、基板Wを水平に保持する円盤状のスピンベース15と、スピンベース15から下方に延びる回転軸16と、回転軸16を回転させることにより、基板Wおよびスピンベース15を基板回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ17とを含む。制御装置4は、スピンモータ17を制御することにより、スピンベース15に保持されている基板Wを一定の回転方向Dr(図2では、右まわり)に回転させる。スピンベース15は、水平な姿勢で保持されている。スピンベース15は、基板Wよりも若干小さい直径(基板Wの直径よりもたとえば3mmほど小さい直径)を有している。基板Wは、基板Wの中心がスピンベース15の中心軸線上に位置するように、スピンベース15上で保持される。カップ10は、スピンベース15を取り囲んでいる。カップ10は、スピンベース15の外径よりも大きな内径を有している。上向きに開いたカップ10の開口部は、スピンベース15よりも上方に配置されている。したがって、基板Wの周囲に排出された処理液は、カップ10によって受け止められる。そして、カップ10の底部に導かれた処理液は、カップ10の底部に接続された排液配管18を通じてカップ10から排出され、回収または廃棄される。
【0025】
スピンチャック6は、基板Wを水平方向に挟むことにより基板Wを水平に保持する挟持式のチャックであってもよいし、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)を吸着することにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。図1および図2では、スピンチャック6がバキューム式のチャックである場合が示されている。図2に示すように、スピンベース15は、スピンベース15の上面で開口する複数の吸引孔19を含む。複数の吸引孔19は、基板Wの中央部と、中央部を取り囲む基板Wの中間部と、中間部を取り囲む基板Wの周縁部とに対向する位置に配置されている。図2では、複数の吸引孔19は、たとえば、スピンベース15の中心で直交する十字線上に配置されている。複数の吸引孔19は、図示しない吸引装置に接続されている。基板Wがスピンベース15上に配置されている状態で複数の吸引孔19が吸引されると、基板Wの複数の部分が複数の吸引孔19に吸い寄せられる。これにより、基板Wの下面とスピンベース15の上面とが接触した状態で、基板Wがスピンベース15上で水平に保持される。
【0026】
図1に示すように、処理ユニット2は、熱を発することにより基板W上の処理液を加熱する発熱体としてのヒータ20と、振動(超音波)を発することにより基板W上の処理液に振動を与える超音波振動子21とを含む。ヒータ20は、スピンベース15に内蔵されており、超音波振動子21は、スピンベース15の下方でスピンベース15に保持されている。ヒータ20は、スピンベース15よりもやや小さい外径を有する円板状に形成されている。超音波振動子21は、スピンベース15と等しい外径を有する円板状に形成されている。スピンベース15および超音波振動子21は、同軸的に配置されており、平面視において互いに重なり合っている。ヒータ20および超音波振動子21は、スピンベース15と共に基板回転軸線A1まわりに回転する。ヒータ20および超音波振動子21は、スピンベース15に対して相対回転可能であってもよい。
【0027】
ヒータ20の温度は、制御装置4によって制御される。スピンベース15の上面全域は、ヒータ20によって下から均一に加熱される。したがって、基板Wの全域は、ヒータ20によって下から均一に加熱される。そのため、基板W上に処理液が保持されている状態で、基板Wが加熱されると、基板W上の処理液が、ヒータ20によって下から均一に加熱される。また、超音波振動子21が発生する振動の周波数や振幅は、制御装置4によって制御される。超音波振動子21からの振動は、スピンベース15を介して基板Wの全域に均一に伝達される。そのため、基板W上に処理液が保持されている状態で、超音波振動子21が振動を発すると、超音波振動子21からの振動が、基板W上の処理液に下から均一に伝達される。
【0028】
図1に示すように、複数の処理液ノズルは、固定された状態で基板Wの上面中央部に向けて処理液を吐出するリンス液ノズルとしての固定ノズル7を含む。処理ユニット2は、固定ノズル7に接続された第1溶解液配管22と、第1溶解液配管22に介装された第1溶解液バルブ23とを含む。さらに、処理ユニット2は、固定ノズル7に接続された第1リンス液配管24と、第1リンス液配管24に介装された第1リンス液バルブ25とを含む。第1溶解液配管22は、リンス液としての溶解液を供給する溶解液ユニット(図示せず)に接続されており、第1リンス液配管24は、リンス液供給源に接続されている。溶解液ユニット内の溶解液は、後述する洗浄液の溶媒と同種の液体であり、洗浄液の溶質を溶解させる液体である。また、洗浄液の溶質を溶解させる液体であれば、溶解液は、洗浄液の溶媒とは異なる種類の液体であってもよい。
【0029】
第1溶解液バルブ23が開かれると、溶解液ユニットからの溶解液が、第1溶解液配管22から固定ノズル7に供給され、基板Wの上面中央部に向けて固定ノズル7から吐出される。同様に、第1リンス液バルブ25が開かれると、リンス液供給源からのリンス液が、第1リンス液配管24から固定ノズル7に供給され、基板Wの上面中央部に向けて固定ノズル7から吐出される。固定ノズル7に供給されるリンス液は、純水(脱イオン水:Deionzied Water)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水などであってもよい。
【0030】
図1に示すように、複数のノズルは、遮断板11の中心軸線に沿って上下方向に延びるリンス液ノズルとしての中心軸ノズル8を含む。遮断板11は、遮断板11の中心軸線が基板回転軸線A1上に位置するようにスピンチャック6の上方で水平に保持されている。遮断板11は、基板Wよりも大きな外径を有している。したがって、遮断板11の下面は、基板Wの上面全域に対向している。中心軸ノズル8は、遮断板11の中央部を上下方向に貫通する貫通孔内に挿入されている。中心軸ノズル8の下端部は、遮断板11の下面よりも上方に配置されている。中心軸ノズル8は、遮断板11と共に昇降する。
【0031】
図1に示すように、中心軸ノズル8は、基板回転軸線A1に沿って上下方向に延びる複数のインナーチューブ(溶剤チューブ26およびリンス液チューブ27)と、複数のインナーチューブを取り囲む筒状のケーシング28とを含む。複数のインナーチューブは、基板Wの上面中央部に向けて溶剤を吐出する溶剤チューブ26と、基板Wの上面中央部に向けてリンス液を吐出するリンス液チューブ27とを含む。ケーシング28は、基板回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。ケーシング28は、遮断板11の中央部を上下方向に貫通する貫通孔内に非接触状態で挿入されている。したがって、遮断板11の内周面は、径方向に間隔を空けてケーシング28の外周面を取り囲んでいる。
【0032】
図1に示すように、処理ユニット2は、溶剤チューブ26に接続された第2溶解液配管29と、第2溶解液配管29に介装された第2溶解液バルブ30と、リンス液チューブ27に接続された第2リンス液配管31と、第2リンス液配管31に介装された第2リンス液バルブ32とを含む。第2溶解液バルブ30が開かれると、基板Wの上面中央部に向けて中心軸ノズル8(溶剤チューブ26の下端部)から溶剤が吐出される。同様に、第2リンス液バルブ32が開かれると、基板Wの上面中央部に向けて中心軸ノズル8(リンス液チューブ27の下端部)から溶剤が吐出される。中心軸ノズル8に供給される溶剤は、純水よりも揮発性が高く、純水よりも表面張力が小さい揮発性有機溶剤(液体)である。揮発性有機溶剤は、この実施形態ではIPA(イソプロピルアルコール)であるが、HFE(ハイドロフロロエーテル)などの他の揮発性有機溶剤であってもよいし、その混合液であってもよい。
【0033】
図1に示すように、処理ユニット2は、さらに、ケーシング28の外周面と遮断板11の内周面との間の筒状の空間に不活性性ガスを供給するガス配管33と、ガス配管33に介装されたガスバルブ34とを含む。ガスバルブ34が開かれると、ガス供給源からの不活性ガスが、ケーシング28の外周面と遮断板11の内周面との間を通って、遮断板11の下面中央部から下方に吐出される。したがって、遮断板11が近接位置に配置されている状態で、ガスバルブ34が開かれると、遮断板11の下面中央部から吐出された不活性ガスが基板Wと遮断板11との間を外方に(基板回転軸線A1から離れる方向に)広がり、基板Wと遮断板11との空気が、不活性ガスに置換される。ガス配管33内を流れる不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、窒素ガスに限らず、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの他の不活性ガスであってもよい。
【0034】
図1に示すように、複数のノズルは、処理液の着液位置が基板Wの上面内で移動するように、基板Wの上方を移動しながら処理液を吐出するスキャンノズル9を含む。洗浄液ノズルとしてのスキャンノズル9は、洗浄液ユニット3に接続されている。図3に示すように、スキャンノズル9は、基板Wの上面に対向する洗浄液吐出口35と、基板Wの上面に対向する溶解液吐出口36とを含む。洗浄液吐出口35および溶解液吐出口36は、スキャンノズル9の下面で開口している。洗浄液ユニット3内の洗浄液は、洗浄液吐出口35から基板Wの上面内の上流位置Puに向けて下方に吐出され、洗浄液ユニット3内の溶解液は、溶解液吐出口36から基板Wの上面内の下流位置Pdに向けて吐出される。図2に示すように、上流位置Puは、基板Wの回転方向Drに関して、下流位置Pdよりも上流側の位置である。上流位置Puおよび下流位置Pdは、基板Wの回転方向Drに並んでいる。したがって、洗浄液吐出口35および溶解液吐出口36からそれぞれ洗浄液および溶解液が吐出されている状態では、基板Wに供給された洗浄液は、溶解液吐出口36から吐出された溶解液によって直ぐに洗い流される。
【0035】
図2に示すように、処理ユニット2は、基板回転軸線A1に交差するノズル移動方向Dnにスキャンノズル9を移動させるノズル移動機構37を含む。ノズル移動機構37は、スキャンノズル9を保持するノズルアーム38と、スピンチャック6の周囲で鉛直に延びるノズル回転軸線まわりにノズルアーム38を回転させる駆動機構39とを含む。駆動機構39は、ノズルアーム38に連結された鉛直な支軸と、支軸と同軸のモータとを含む構成であってもよいし、ノズルアーム38に連結された鉛直な支軸と、支軸をその中心軸線まわりに回転させる動力を発生するモータと、支軸とモータとを連結する無端環状の伝動部材(たとえば、ベルト)と含む構成であってもよい。
【0036】
図2に示すように、ノズル移動機構37は、平面視において基板Wの上面中央部を通る軌跡X1に沿ってスキャンノズル9を水平に移動させる。軌跡X1は、平面視において基板Wの上面中央部を通る円弧状の曲線である。軌跡X1は、平面視において基板Wの上面中央部を通る直線であってもよい。ノズル移動方向Dnは、軌跡X1に沿う水平な方向である。ノズル移動機構37は、スキャンノズル9が基板Wの上方に位置する処理領域(図2に示す位置)と、スキャンノズル9が基板Wの上方から離れた退避位置との間で、軌跡X1に沿ってスキャンノズル9を水平に移動させる。
【0037】
基板Wが処理液によって処理されるときには、制御装置4は、スピンチャック6によって基板Wを基板回転軸線A1まわりに回転させる。この状態で、制御装置4は、基板Wの上面に向けてスキャンノズル9から処理液(洗浄液および溶解液の少なくとも一方)を吐出させる。さらに、制御装置4は、ノズル移動機構37を制御することにより、スキャンノズル9から吐出された処理液が基板Wの上面中央部に着液するセンター位置と、スキャンノズル9から吐出された処理液が基板Wの上面周縁部に着液するエッジ位置との間でスキャンノズル9を水平に移動させる。これにより、洗浄液吐出口35から吐出された洗浄液が着液する上流位置Puが、基板Wの上面全域をスキャン(走査)し、基板Wの上面全域に洗浄液が供給される。同様に、溶解液吐出口36から吐出された溶解液が着液する下流位置Pdが、基板Wの上面全域をスキャン(走査)し、基板Wの上面全域に溶解液が供給される。
【0038】
図1に示すように、洗浄液ユニット3は、箱形のハウジング40と、ハウジング40内に配置された洗浄液タンク41と、洗浄液タンク41とスキャンノズル9(洗浄液吐出口35)とを接続する洗浄液配管42と、洗浄液配管42に介装された洗浄液バルブ43とを含む。さらに、洗浄液ユニット3は、ハウジング40内に配置された溶解液タンク44と、溶解液タンク44とスキャンノズル9(溶解液吐出口36)とを接続する第3溶解液配管45と、第3溶解液配管45に介装された第3溶解液バルブ46と、洗浄液タンク41内の洗浄液と溶解液タンク44内の溶解液とをスキャンノズル9に送る送液装置47とを含む。
【0039】
送液装置47は、タンク内の気圧を上昇させることにより、タンク内の処理液を配管に送る気体供給装置であってもよいし、タンクからスキャンノズル9に処理液を導く配管に介装されたポンプであってもよい。図1では、送液装置47が、気体供給装置である場合が示されている。図1に示す送液装置47は、不活性ガス供給源からの不活性ガス(図1では、窒素ガス)を洗浄液タンク41内および溶解液タンク44内に供給することにより、洗浄液タンク41内の気圧と溶解液タンク44内の気圧とを上昇させる加圧配管48を含む。
【0040】
洗浄液バルブ43が開かれており、第3溶解液バルブ46が閉じられている状態では、洗浄液タンク41内の洗浄液が、洗浄液配管42を通じてスキャンノズル9に供給され、スキャンノズル9に設けられた洗浄液吐出口35から基板Wの上面内の上流位置Puに向けて下方に吐出される。これとは反対に、洗浄液バルブ43が閉じられており、第3溶解液バルブ46が開かれている状態では、溶解液タンク44内の溶解液が、第3溶解液配管45を通じてスキャンノズル9に供給され、スキャンノズル9に設けられた溶解液吐出口36から基板Wの上面内の下流位置Pdに向けて下方に吐出される。また、洗浄液バルブ43および第3溶解液バルブ46が開かれている状態では、洗浄液および溶解液が、スキャンノズル9から吐出される。
【0041】
洗浄液タンク41内の洗浄液は、溶質と発泡剤とが溶媒に溶解した溶液である。溶解液タンク44内の溶解液は、洗浄液の溶質を溶解させる液体である。溶解液タンク44内の溶解液は、洗浄液の溶媒と同種の液体である。溶解液タンク44内の溶解液は、洗浄液の溶媒と異なる種類の液体であってもよい。
洗浄液の溶媒は、溶質を溶解させる液体であり、洗浄液の溶質は、溶媒の濃度の低下に伴って液体から固体に変化する物質である。発泡剤は、熱や振動などの発泡エネルギーの付与によって発泡する物質である。たとえば洗浄液が加熱されると、熱エネルギーが発泡剤に加わり、洗浄液中に気泡が発生する。さらに、洗浄液の加熱によって洗浄液の溶媒が蒸発して、溶質が固化する。そのため、洗浄液を加熱すると、洗浄液中に発泡体(溶質によって構成された気泡を含む固体)が形成される。また、振動が洗浄液に与えられると、洗浄液が加熱された場合と同様に、洗浄液中に気泡が発生し、溶質が固化する。これにより、洗浄液中に発泡体が形成される。
【0042】
溶質、溶媒、および発泡剤の組み合わせの具体例は、溶質としてのポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)と、溶媒としてのアクリル酸と、発泡剤としての重曹(炭酸水素ナトリウム)である。
「発泡剤」の他の具体例は、発泡エネルギーの付与によって窒素ガスを発生するアゾジカルボンアミドである。「発泡剤」のさらに他の具体例は、クエン酸ブレンド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、水素化ホウ素ナトリウム、p-トルエンスルホニルヒドラジド、4-4’-オキソビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾジカルボンアミド(1,1’-アゾビスホルムアミド)、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、および5−フェニルテトラゾール、あるいは、これらの類似物である。
【0043】
溶質および溶媒の組み合わせの他の具体例は、溶質としての有機材料(有機化合物で形成された材料)と、溶媒としての有機溶剤とである。「溶質」としての有機材料の具体例は、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエーテルエーテルケトンなどのポリエーテル類である。「溶質」としての有機材料の他の具体例は、ポリスチレン、ポリエーテルイミド類、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリアミド系合成繊維、ポリスルホン、ポリカプロラクトン、セルロース樹脂、アクリル樹脂、およびアラミド(芳香族ポリアミド)である。「溶媒」としての有機溶剤の具体例は、トルエン、シクロペンタノン、およびシクロペンタンである。「溶媒」としての有機溶剤の他の具体例は、アルコール類の有機溶剤、およびケトン類の有機溶剤である。
【0044】
いずれの組み合わせにおいても、溶質が水溶性である場合には、純水などの水を主成分とする液体が溶媒として用いられてもよい。また、いずれの組み合わせにおいても、前述の揮発性有機溶剤が溶媒として用いられてもよい。
基板Wの表面が疎水面である場合、洗浄液が基板Wの表面に弾かれて、基板Wの表面が部分的に露出する場合がある。このような場合に、表面張力が小さい揮発性有機溶剤を溶媒として用いれば、基板Wの表面が部分的に露出することを抑制または防止できる。また、揮発性有機溶剤を溶媒として用いない場合でも、洗浄液の粘度が高ければ、基板Wの表面が疎水面であっても、基板Wの表面が部分的に露出することを抑制または防止できる。したがって、基板Wの表面が疎水面である場合には、洗浄液を構成する各成分の濃度を調整することにより、洗浄液の粘度を高粘度に調整してもよい。その一方で、基板Wの表面が親水性である場合には、溶媒は、揮発性有機溶剤であってもよいし、揮発性有機溶剤以外の液体であってもよい。
【0045】
図4は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。図5A図5Cは、洗浄液中でのパーティクルの状態について説明するための模式図である。以下では、チャンバー5内の気圧が大気圧に維持されている状態で、パターンが形成された基板Wが処理されるときの処理例について説明する。また、以下では、図1を参照する。図4図5A図5B、および図5Cについては適宜参照する。
【0046】
基板Wが処理されるときには、基板Wをスピンチャック6に搬送する搬入工程が行われる(図4のステップS1)。具体的には、制御装置4は、スキャンノズル9等のチャンバー5内の構成をスピンチャック6の上方から退避させ、遮断板11を退避位置に位置させている状態で、図示しない搬送ロボットを制御することにより、基板Wの表面が上に向けられた状態で、搬送ロボットによって基板Wをスピンチャック6(スピンベース15)上に載置させる。その後、制御装置4は、スピンチャック6を制御することにより、スピンベース15に基板Wを吸着させる。これにより、基板Wがスピンチャック6に保持される。その後、制御装置4は、スピンチャック6を制御することにより、スピンチャック6に基板Wを基板回転軸線A1まわりに回転させる。
【0047】
次に、基板Wを加熱する加熱工程と、基板Wに振動を付与する振動付与工程とが並行して行われる(図4のステップS2)。具体的には、制御装置4は、スピンベース15に内蔵されたヒータ20を制御することにより、ヒータ20からの発熱を開始させる。これにより、スピンチャック6に保持された基板Wの全域がヒータ20によって下から均一に加熱される。一方、制御装置4は、超音波振動子21を制御することにより、超音波振動子21に振動を発生させる。これにより、超音波振動子21からの振動が、基板Wの全域に均一に付与される。ヒータ20の発熱と、超音波振動子21の振動とは、同時に開始されてもよいし、異なる時期に開始されてもよい。また、ヒータ20の発熱は、基板Wがスピンベース15上に載置される前から開始されてもよいし、基板Wがスピンベース15に載置された後に開始されてもよい。超音波振動子21の振動の開始についても同様である。
【0048】
次に、洗浄液を基板Wに供給する洗浄液供給工程と、溶解液を基板Wに供給する溶解液供給工程とが並行して行われる(図4のステップS3)。具体的には、制御装置4は、ノズル移動機構37を制御することにより、スキャンノズル9を退避位置から基板Wの上方に移動させる。その後、制御装置4は、洗浄液バルブ43を開いて洗浄液吐出口35からの洗浄液の吐出を開始させると共に、第3溶解液バルブ46を開いて溶解液吐出口36からの溶解液の吐出を開始させる。これにより、洗浄液および溶解液が、回転状態の基板Wの上面に向けてスキャンノズル9から吐出される。溶解液吐出口36からの溶解液の吐出は、洗浄液吐出口35からの洗浄液の吐出と同時に開始されてもよいし、洗浄液吐出口35からの洗浄液の吐出が開始される前に開始されてもよい。
【0049】
制御装置4は、洗浄液および溶解液が回転状態の基板Wの上面に向けてスキャンノズル9から吐出されている状態で、ノズル移動機構37を制御することにより、洗浄液および溶解液が基板Wの上面中央部に着液するセンター位置と、洗浄液および溶解液が基板Wの上面周縁部に着液するエッジ位置との間で、スキャンノズル9を複数回往復させる(ハーフスキャン)。これにより、洗浄液および溶解液が、基板Wの上面全域に供給される。そのため、基板Wの上面全域を覆う洗浄液および溶解液の液膜が形成される。制御装置4は、スキャンノズル9からの洗浄液および溶解液の吐出を開始させてから所定時間が経過した後、洗浄液バルブ43および第3溶解液バルブ46を閉じて、スキャンノズル9からの洗浄液および溶解液の吐出を停止させる。その後、制御装置4は、ノズル移動機構37を制御することにより、スキャンノズル9を基板Wの上方から退避させる。さらに、制御装置4は、ヒータ20および超音波振動子21を制御することにより、発熱と振動を停止させる(図4のステップS4)。
【0050】
図5Aに示すように、洗浄液吐出口35から吐出された洗浄液は、熱および振動が基板Wの全域に均一に与えられている状態で基板Wの上面全域に供給される。そのため、熱および振動が基板Wから洗浄液に与えられる。洗浄液には、熱や振動などの発泡エネルギーの付与によって発泡する発泡剤が含まれている。したがって、洗浄液中の発泡剤が、基板Wと洗浄液とが接する基板Wの表面、すなわち、隣接するパターンによって形成された溝の底面や、パターン自体の表面で発泡し、洗浄液中に気泡が発生する。そのため、図5Bに示すように、気泡層(気泡を含んだ液体層)が、基板Wの表面に沿って形成される。さらに、洗浄液の溶媒は洗浄液の加熱によって蒸発するので、気泡を含んだ状態で溶質が固化する。そのため、気泡を含んだ気泡層が、気泡を含んだ固体層(発泡体によって構成された層)に変化する。
【0051】
パーティクルと基板Wとの間に介在している洗浄液は、発泡剤の発泡によって膨張する。そのため、パーティクルは、洗浄液の体積膨張によって基板Wから離れる方向に押される。これにより、図5Cに示すように、パーティクルが気泡層(気泡を含んだ液体層)によって持ち上げられ(リフトアップされ)、パーティクルが基板Wから剥がれる。さらに、気泡層が、気泡を含んだ固体層に変化するので、パーティクルと基板Wとの間に気泡が介在している状態が維持される。言い換えると、基板Wから離れる方向への力がパーティクルに加わっている状態が維持される。これにより、基板Wから剥がれたパーティクルが基板Wに再付着することを抑制または防止できる。
【0052】
また、洗浄液の加熱等によって生じる気泡は、洗浄液中で等方的に膨らむ。そのため、倒壊方向(基板Wの上面に平行な方向)の力が、気泡からパターンに加わる場合がある。しかし、熱や振動は、基板Wから洗浄液に伝達されるので、気泡層は、パターンの根元付近からパターンの先端部に向かって成長していく(気泡層の厚みが増加していく)。したがって、倒壊方向の力は、パターンの根元付近に加わる。そのため、倒壊方向の力がパターンに加わったとしても、パターンの倒壊が発生しにくい。さらに、気泡層が、パターンの先端部まで成長したとしても、熱や振動が基板Wの全域に均一に与えられているので、気泡は、パターンの両側で発生する。そのため、方向が反対で大きさが等しい2つの力が、パターンに加わり相殺される。そのため、気泡層がパターンの先端部まで成長したとしても、パターンの倒壊が発生しにくい。
【0053】
気泡を含んだ固体層(発泡体によって構成された層)は、溶質によって構成されているので、洗浄液に含まれる溶媒に溶解する。同様に、固体層は、溶解液吐出口36から吐出された溶解液に溶解する。したがって、基板W上の固体層は、洗浄液および溶解液によって、パーティクルと共に基板Wから洗い流される。これにより、基板Wの上面全域からパーティクルが除去される。しかも、溶解液吐出口36から吐出された溶解液は、洗浄液が着液する上流位置Puよりも下流側で上流位置Puの近傍の下流位置Pdに着液するので、洗浄液が基板Wに着液すると、その着液した位置に溶解液が直ぐに供給される。したがって、基板W上の固体層は、発生直後にパーティクルと共に基板Wから洗い流される。そのため、固体層が、パターンの先端部まで成長することを抑制または防止できる。これにより、パターンの倒壊が抑制または防止される。
【0054】
次に、リンス液としての溶解液を基板Wに供給する溶解液供給工程(第1リンス液供給工程)が行われる(図4のステップS5)。具体的には、制御装置4は、第1溶解液バルブ23を開いて、回転状態の基板Wの上面中央部に向けて固定ノズル7から溶解液を吐出させる。固定ノズル7から吐出された溶解液は、基板Wの上面中央部に着液した後、遠心力によって基板W上を外方に流れる。そして、基板Wの上面周縁部に達した溶解液は、基板Wの周囲に振り切られる。これにより、基板Wの上面全域に溶解液が供給され、スキャンノズル9から基板Wに供給された洗浄液および溶解液や、基板W上に残留しているパーティクルが、基板Wから洗い流される。したがって、基板W上の洗浄液および溶解液が、固定ノズル7から吐出された溶解液に置換され、基板Wの上面全域を覆う溶解液の液膜が形成される。
【0055】
次に、リンス液(たとえば純水)を基板Wに供給するリンス液供給工程(第2リンス液供給工程)が行われる(図4のステップS6)。具体的には、制御装置4は、第1リンス液バルブ25を開いて、回転状態の基板Wの上面中央部に向けて固定ノズル7からリンス液を吐出させる。固定ノズル7から吐出されたリンス液は、基板Wの上面中央部に着液した後、遠心力によって基板W上を外方に流れる。そして、基板Wの上面周縁部に達したリンス液は、基板Wの周囲に振り切られる。これにより、基板Wの上面全域にリンス液が供給され、基板W上の溶解液や、基板W上に残留しているパーティクルが、基板Wから洗い流される。したがって、基板W上の溶解液がリンス液に置換され、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜が形成される。
【0056】
次に、基板Wへのリンス液の供給を停止させた状態でリンス液の液膜を基板W上に保持するパドル工程が行われる(図4のステップS7)。具体的には、制御装置4は、基板Wの上面全域がリンス液の液膜に覆われている状態で、スピンチャック6を制御することにより、基板Wの回転を停止させる、もしくは、リンス液供給工程での回転速度よりも低速の低回転速度(たとえば10〜30rpm)まで基板Wの回転速度を低下させる。そのため、基板W上のリンス液に作用する遠心力が弱まり、基板W上から排出されるリンス液の量が減少する。制御装置4は、基板Wが静止している状態もしくは基板Wが低回転速度で回転している状態で、第1リンス液バルブ25を閉じて、固定ノズル7からのリンス液の吐出を停止させる。これにより、基板Wへのリンス液の供給が停止された状態で、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜が基板W上に保持される。
【0057】
次に、純水よりも揮発性の高い親水性の有機溶剤(たとえば、IPA)を基板Wに供給する有機溶剤供給工程が行われる(図4のステップS8)。具体的には、制御装置4は、スピンチャック6を制御することにより、基板Wの回転速度をパドル工程での回転速度よりも上昇させる。さらに、制御装置4は、遮断板昇降ユニットを制御することにより、遮断板11を退避位置から近接位置に移動させる。さらに、制御装置4は、ガスバルブ34を開いて、遮断板11の下面中央部から窒素ガスを吐出させる。その後、制御装置4は、第2溶解液バルブ30を開いて、基板Wの上面中央部に向けて中心軸ノズル8から有機溶剤を吐出させる。これにより、基板W上のリンス液が有機溶剤に置換され、基板Wの上面全域を覆う有機溶剤の液膜が形成される。制御装置4は、中心軸ノズル8からの有機溶剤の吐出を開始させてから所定時間が経過した後、遮断板11の下面中央部からの窒素ガスの吐出が継続されている状態で、第2溶解液バルブ30を閉じて、中心軸ノズル8からの有機溶剤の吐出を停止させる。
【0058】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(スピンドライ)が行われる(図4のステップS9)。具体的には、制御装置4は、スピンチャック6を制御することにより、遮断板11が近接位置に配置されており、遮断板11の下面中央部からの窒素ガスの吐出が継続されている状態で、基板Wの回転速度を、搬入工程から有機溶剤供給工程までの回転速度よりも高速の高回転速度(たとえば数千rpm)まで上昇させる。これにより、基板W上の液体が基板Wの周囲に振り切られ、基板Wと遮断板11との間が窒素ガスで満たされている状態で、基板Wが乾燥する。制御装置4は、基板Wの高速回転が所定時間に亘って行われた後、スピンチャック6を制御することにより、基板Wの回転を停止させる。さらに、制御装置4は、ガスバルブ34を閉じて、遮断板11の下面中央部からの窒素ガスの吐出を停止させる。さらに、制御装置4は、遮断板昇降ユニットを制御することにより、遮断板11を退避位置まで上昇させる。その後、制御装置4は、搬送ロボットを制御することにより、搬送ロボットによって基板Wをスピンチャック6から搬出させる(搬出工程)。
【0059】
以上のように本実施形態では、洗浄液が基板Wに接している状態で、発泡エネルギーが洗浄液に与えられる。これにより、洗浄液に添加された発泡剤が発泡して、洗浄液中に気泡が発生する。基板Wに付着しているパーティクルは、基板Wとパーティクルとの間に介在する気泡によって基板Wから離れる方向に押される。そのため、基板Wに対するパーティクルの付着力が弱まったり、パーティクルが基板Wから剥がれたりする。しかも、発泡エネルギーが洗浄液に与えられると、洗浄液の溶媒が蒸発して、洗浄液の溶質が固化するので、気泡層(気泡を含んだ液体層)が、気泡を含んだ固体層に変化する。そのため、パーティクルと基板Wとの間に気泡が介在している状態が維持される。これにより、基板Wから剥がれたパーティクルが基板Wに再付着することを抑制または防止できる。さらに、気泡は、パターンの両側で発生するので、方向が反対で大きさが等しい2つの力がパターンに加わる。したがって、パターンに加わる力が相殺される。これにより、パターンの倒壊を抑制または防止しつつ、パーティクルを除去できる。
【0060】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の実施形態では、洗浄液および溶解液が、共通のノズル(スキャンノズル9)から吐出される場合について説明した。すなわち、洗浄液を吐出する洗浄液ノズルが、溶解液を吐出する溶解液ノズルと一体である場合について説明した。しかし、洗浄液ノズルは、溶解液ノズルとは別のノズルであってもよい。
【0061】
また、前述の実施形態では、洗浄液ノズルが、スキャンノズル9である場合について説明した。しかし、洗浄液ノズルは、固定ノズルであってもよいし、中心軸ノズルであってもよい。
また、洗浄液ノズルが固定ノズルである場合、図6に示すように、洗浄液ノズル9Aは、基板Wの半径よりも長いスリット状の洗浄液吐出口35Aを有していてもよいし、図7に示すように、洗浄液ノズル9Bは、遮断板11の下面で開口しており基板Wの上面全域に対向する複数の洗浄液吐出口35Bを有していてもよい。溶解液ノズルについても同様である。
【0062】
図6に示すように、洗浄液ノズル9Aがスリット状の洗浄液吐出口35Aを有している場合、洗浄液吐出口35Aは、基板Wの上面中央部と基板Wの上面周縁部とを通る直線状の領域に向けて洗浄液を吐出するので、制御装置4は、洗浄液ノズル9Aから洗浄液を吐出させながら、スピンチャック6に基板Wを回転させることにより、基板Wの上面全域に洗浄液を供給できる。
【0063】
また、図7に示すように、洗浄液ノズル9Bが遮断板11の下面で開口しており基板Wの上面全域に対向する複数の洗浄液吐出口35Bを有している場合、遮断板11と一体の洗浄液ノズル9Bは、基板Wの上面全域に向けて洗浄液を吐出するので、制御装置4は、洗浄液ノズル9Bから洗浄液を吐出させることにより、基板Wの上面全域に洗浄液を供給できる。この場合、制御装置4は、洗浄液ノズル9Bから洗浄液を吐出させながら、スピンチャック6に基板Wを回転させることにより、基板Wの上面全域に均一に洗浄液を供給できる。
【0064】
また、前述の実施形態では、溶媒の蒸発によって固化した溶質(発泡体)に溶解液を供給することにより、発泡体を溶かして基板Wから除去する場合について説明した。しかし、図8に示すように、処理ユニット2は、発泡体を基板Wから物理的に剥がす剥離装置49を備えていてもよい。
具体的には、図8に示すように、処理ユニット2は、軸方向に延びるスリット状の吸引孔50aが形成された筒状の剥離ローラ50と、剥離ローラ50をその中心軸線まわりに回転させる回転機構51とを備えていてもよい。この場合、制御装置4は、熱および振動が基板Wの全域に均一に与えられている状態で、洗浄液吐出口35(図3参照)から吐出された洗浄液を基板Wの上面全域に供給する。これにより、基板Wの上面全域を覆う発泡体の膜が形成される。その後、制御装置4は、剥離ローラ50に発泡体の膜を吸引させた状態で、回転機構51に剥離ローラ50を回転させる。これにより、発泡体の膜が、基板Wから剥がれ、剥離ローラ50に巻き取られる。
【0065】
また、前述の実施形態では、ヒータ20による基板Wの加熱と、基板Wへの振動の伝達とによって、発泡エネルギーが、基板Wから洗浄液に伝達される場合について説明した。しかし、基板W上の洗浄液が直接加熱されてもよいし、振動が基板W上の洗浄液に直接伝達されてもよい。また、発泡エネルギーが洗浄液に直接的に与えられる場合および間接的に与えられる場合のいずれの場合でも、ヒータ20による加熱だけ、または振動の伝達だけで、発泡エネルギーが洗浄液に与えられてもよい。また、基板Wに向けて光を発するランプからの光の照射によって、発泡エネルギーが洗浄液に与えられてもよい。この場合、光の照射は、単独で行われてもよいし、ヒータ20による加熱および振動の伝達の少なくとも一つと並行して行われてもよい。
【0066】
また、前述の実施形態における処理例では、チャンバー5内の気圧が大気圧に維持されている状態で、基板Wが処理される場合について説明した。しかし、洗浄液の発泡剤を発泡させるために、チャンバー5内の気圧が大気圧よりも低い圧力に維持されている状態で、基板Wが処理されてもよい。また、気泡層の厚みの増加を抑制するために、チャンバー5内の気圧が大気圧よりも高い圧力に維持されている状態で、基板Wが処理されてもよい。このような気圧の制御は、基板Wがチャンバー5内に配置されている全期間に亘って行われてもよいし、洗浄液が基板W上に存在している期間だけ行われてもよい。さらに、このような気圧の制御は、単独で行われてもよいし、ヒータ20による加熱、振動の伝達、および光の照射の少なくとも一つと並行して行われてもよい。
【0067】
また、前述の実施形態における処理例では、ヒータ20による基板Wの加熱と基板Wへの振動の伝達とが、基板Wへの洗浄液の供給(スキャンノズル9からの洗浄液の吐出)が開始される前に開始され、基板Wへの洗浄液の供給が終了した後に停止される場合について説明した。しかし、ヒータ20による加熱と振動の伝達とは、基板Wへの洗浄液の供給が開始された後に開始されてもよい。また、ヒータ20による加熱と振動の伝達とは、基板Wへの洗浄液の供給が終了する前に停止されてもよい。この場合、制御装置4は、洗浄液に対する発泡エネルギーの供給時間や、発泡エネルギーの強さ(温度や周波数など)を制御することにより、気泡層が形成される領域を基板Wの表面近傍の領域(たとえば、基板Wの表面から数nm〜100nmまでの領域)だけに止めてもよい。これにより、制御装置4は、気泡層がパターンの先端部まで成長することを抑制または防止できる。そのため、パターンの倒壊を抑制または防止できる。
【0068】
また、前述の実施形態における処理例では、スキャンノズル9からの洗浄液および溶解液の吐出と、固定ノズルからの溶解液の吐出と、固定ノズルからのリンス液(純水)の吐出とが、この順番で順次行われる場合について説明した。しかし、スキャンノズル9からの溶解液の吐出と、固定ノズルからの溶解液の吐出とのうちのいずれか一方が省略されてもよい。また、スキャンノズル9および固定ノズルから吐出される溶解液が純水である場合には、スキャンノズル9からの溶解液の吐出と、固定ノズルからの溶解液の吐出と、固定ノズルからのリンス液の吐出とのうちの1つまたは2つが省略されてもよい。
【0069】
また、前述の実施形態における処理例では、有機溶剤を基板Wに供給することにより、基板W上のリンス液を有機溶剤に置換する場合について説明した(有機溶剤供給工程)。さらに、前述の実施形態では、基板Wと遮断板11との間に窒素ガスを供給することにより、基板Wと遮断板11との間から空気をパージ(追放)する場合について説明した(雰囲気置換工程)。しかし、リンス液が基板Wに供給された後(リンス液供給工程またはパドル工程の後)に、乾燥工程が行われてもよい。具体的には、基板Wの表面が親水面である場合には、基板Wの表面が疎水面である場合よりもウォーターマークが発生し難いので、この場合には、リンス液が基板Wに供給された後に、乾燥工程が行われてもよい。
【0070】
また、前述の実施形態における処理例では、固定ノズル7から吐出されたリンス液が、基板Wに供給される場合について説明した。しかし、中心軸ノズル8から吐出されたリンス液が基板Wに供給されてもよい。
また、前述の実施形態では、洗浄液が、発泡剤および溶媒に加えて、溶媒が蒸発することにより固化する溶質を含む場合について説明した。しかし、溶質は、溶媒が蒸発することにより固化する物質でなくてもよい。
【0071】
また、前述の実施形態では、基板処理装置1が、円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 :基板処理装置
4 :制御装置(エネルギー供給量制御手段)
6 :スピンチャック(基板保持手段)
7 :固定ノズル(溶解液供給手段)
9 :スキャンノズル(洗浄液供給手段)
9A :洗浄液ノズル(洗浄液供給手段)
9B :洗浄液ノズル(洗浄液供給手段)
13 :FFU(発泡エネルギー供給手段、気圧変更手段)
14 :排気装置(発泡エネルギー供給手段、気圧変更手段)
20 :ヒータ(発泡エネルギー供給手段、発熱手段)
21 :超音波振動子(発泡エネルギー供給手段、振動手段)
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8