(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
並列接続した複数の電源それぞれの出力側にスイッチ部を備え、該スイッチ部それぞれを介して各前記電源から負荷に対して並列に電力を供給する電源装置において、前記スイッチ部それぞれは、並列接続した複数のスイッチ素子から構成されていて、複数の前記電源のいずれかに異常電圧を出力する故障が発生した場合、各電源に備えている前記スイッチ部内の全てのスイッチ素子を非導通状態に設定した後、複数の前記電源のうち故障した電源以外の各電源による前記負荷側への電力供給を再開する際に、故障した電源以外の各前記電源それぞれに関し、前記スイッチ部を構成する複数の前記スイッチ素子それぞれを導通状態に切り替える切り替えタイミングを段階的にあらかじめ定めた時間ずらして、非導通状態から導通状態に復帰させることを特徴とする電源装置。
前記切り替えタイミングは、複数の前記スイッチ素子のうち、導通状態への切り替え対象の或るスイッチ素子に対する切り替え指示を出力してから当該スイッチ素子が導通状態に切り替わるまでに要する所要時間以上の時間を経過した後に次の順番の切り替え対象になるスイッチ素子に対する切り替え指示を出力するように設定されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
前記スイッチ素子は、MOSFET、ヘテロ接合FET、バイポーラトランジスタのいずれかからなり、前記スイッチ素子がMOSFETまたはヘテロ接合FETの場合、前記スイッチ素子の制御端子となるゲート端子にゲート電圧を印加することにより、前記スイッチ素子の導通状態、非導通状態を制御し、前記スイッチ素子がバイポーラトランジスタの場合、前記スイッチ素子の制御端子となるベース端子にベース電圧を印加することにより、前記スイッチ素子の導通状態、非導通状態を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
複数の前記スイッチ素子のうち、前記切り替えタイミングを段階的に遅くする対象のスイッチ素子それぞれには、ツェナーダイオードとツェナー電圧生成用の抵抗とを前記スイッチ素子の制御端子に接続し、該ツェナー電圧の電圧値を、前記制御端子を駆動する駆動源の能力を勘案して設定することにより、各前記スイッチ素子における前記切り替えタイミングがあらかじめ定めた時間遅くなるように設定することを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
並列接続した複数の電源それぞれの出力側にスイッチ部を備え、該スイッチ部それぞれを介して各前記電源から負荷に対して並列に電力を供給する電源装置における電源制御方法であって、前記スイッチ部それぞれは、並列接続した複数のスイッチ素子から構成されていて、複数の前記電源のいずれかに異常電圧を出力する故障が発生した場合、各電源に備えている前記スイッチ部内の全てのスイッチ素子を非導通状態に設定した後、複数の前記電源のうち故障した電源以外の各電源による前記負荷側への電力供給を再開する際に、故障した電源以外の各前記電源それぞれに関し、前記スイッチ部を構成する複数の前記スイッチ素子それぞれを導通状態に切り替える切り替えタイミングを段階的にあらかじめ定めた時間ずらして、非導通状態から導通状態に復帰させることを特徴とする電源制御方法。
前記切り替えタイミングは、複数の前記スイッチ素子のうち、導通状態への切り替え対象の或るスイッチ素子に対する切り替え指示を出力してから当該スイッチ素子が導通状態に切り替わるまでに要する所要時間以上の時間を経過した後に次の順番の切り替え対象になるスイッチ素子に対する切り替え指示を出力するように設定されることを特徴とする請求項5に記載の電源制御方法。
前記スイッチ素子は、MOSFET、ヘテロ接合FET、バイポーラトランジスタのいずれかからなり、前記スイッチ素子がMOSFETまたはヘテロ接合FETの場合、前記スイッチ素子の制御端子となるゲート端子にゲート電圧を印加することにより、前記スイッチ素子の導通状態、非導通状態を制御し、前記スイッチ素子がバイポーラトランジスタの場合、前記スイッチ素子の制御端子となるベース端子にベース電圧を印加することにより、前記スイッチ素子の導通状態、非導通状態を制御することを特徴とする請求項5または6に記載の電源制御方法。
複数の前記スイッチ素子のうち、前記切り替えタイミングを段階的に遅くする対象のスイッチ素子それぞれには、ツェナーダイオードとツェナー電圧生成用の抵抗とを前記スイッチ素子の制御端子に接続し、該ツェナー電圧の電圧値を、前記制御端子を駆動する駆動源の能力を勘案して設定することにより、各前記スイッチ素子における前記切り替えタイミングがあらかじめ定めた時間遅くなるように設定することを特徴とする請求項7に記載の電源制御方法。
複数の電源を並列接続して負荷に電力を供給する電源回路を備えた電子装置において、該電源回路が請求項1ないし4のいずれかに記載の電源装置を用いて構成されていることを特徴とする電子装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電源装置のORing回路内のスイッチ素子としてMOSFETを用いる場合、電源の大電流化に伴い、並列接続するMOSFETの数量が増加することになり、各MOSFETの駆動に関してより長い時間を要するため、電源の異常が発生した際に、ORing回路により異常な電源から切り離した後に、正常な電源動作に復帰するまでの時間が長くなるのみならず、正常な電圧値よりも低い電圧状態が継続してしまって、結局、電子装置としての継続稼動が損なわれる場合が生じている。
【0005】
すなわち、従来技術においては、電子装置内に並列動作する複数の電源を備えている場合、並列動作する複数の電源を制御するための電源装置内には、故障した電源の隔離および他の電源の保護を目的として、前述したように、故障電源の出力端を他の電源から切り離すためのORing回路(オアリング回路、逆流防止回路)が備えられている。また、該ORing回路内のスイッチ部を構成するスイッチ素子としては、ダイオードよりも電力損失が少ないMOSFETが通常用いられ、電源の起動時、定常時、故障した際の異常時等の各状態に応じて駆動される。
【0006】
電源装置は、並列接続されている電源のいずれかにおいて過電圧が出力される異常状態が発生した場合、該異常状態の出力電圧を検知し、当該電源の出力端を切り離すために当該電源のORing回路のスイッチ部をOFF状態(非導通状態)に制御するのみならず、他の電源についても、故障電源からの逆流を防止するために、他の電源それぞれのORing回路のスイッチ部を一時的にOFF状態(非導通状態)に制御する。
【0007】
しかる後、故障電源が隔離されて、異常状態が解消され、並列接続されている出力端に異常電圧が生じない状態になっていることを検知すると、正常な電源は、電力供給動作を再開するために、一時的に停止していた状態から脱して、正常な電源それぞれのORing回路のスイッチ部をON状態(導通状態)に復帰させるように制御する。ここで、ORing回路のスイッチ部をON状態(導通状態)に再駆動する際に、正常状態への復帰時間は、スイッチ部に対する駆動能力によって左右される。
【0008】
一方、ORing回路のスイッチ部は、定常状態において負荷側が必要とする電流容量に応じて、単一のスイッチ素子ではなく、複数のスイッチ素子を並列接続して構成される場合が多い。かくのごとく、ORing回路のスイッチ部が並列接続した複数のスイッチ素子から構成される場合、従来技術においては、複数のスイッチ素子全てを同時に駆動しようとするために、各スイッチ素子がON状態(導通状態)に切り替わって、正常な状態に復帰するまでに多くの時間を要してしまって、正常状態へ復帰するまでに出力電圧が変動して負荷側の動作が不安定になるという問題が生じてしまう可能性があった。
【0009】
(本発明の目的)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、複数の電源のうち、いずれかの電源に故障が発生した時に正常な電源供給状態に高速に復帰することが可能な電源装置、電源制御方法および電子装置を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明による電源装置、電源制御方法および電子装置は、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0011】
(1)本発明による電源装置は、並列接続した複数の電源それぞれの出力側にスイッチ部を備え、該スイッチ部それぞれを介して各前記電源から負荷に対して並列に電力を供給する電源装置において、前記スイッチ部それぞれは、並列接続した複数のスイッチ素子から構成されていて、複数の前記電源のいずれかに異常電圧を出力する故障が発生した場合、各電源に備えている前記スイッチ部内の全てのスイッチ素子を非導通状態に設定した後、複数の前記電源のうち故障した電源以外の各電源による前記負荷側への電力供給を再開する際に、故障した電源以外の各前記電源それぞれに関し、前記スイッチ部を構成する複数の前記スイッチ素子それぞれを導通状態に切り替える切り替えタイミングを段階的にあらかじめ定めた時間ずらして、非導通状態から導通状態に復帰させることを特徴とする。
【0012】
(2)本発明による電源制御方法は、並列接続した複数の電源それぞれの出力側にスイッチ部を備え、該スイッチ部それぞれを介して各前記電源から負荷に対して並列に電力を供給する電源装置における電源制御方法であって、前記スイッチ部それぞれは、並列接続した複数のスイッチ素子から構成されていて、複数の前記電源のいずれかに異常電圧を出力する故障が発生した場合、各電源に備えている前記スイッチ部内の全てのスイッチ素子を非導通状態に設定した後、複数の前記電源のうち故障した電源以外の各電源による前記負荷側への電力供給を再開する際に、故障した電源以外の各前記電源それぞれに関し、前記スイッチ部を構成する複数の前記スイッチ素子それぞれを導通状態に切り替える切り替えタイミングを段階的にあらかじめ定めた時間ずらして、非導通状態から導通状態に復帰させることを特徴とする。
【0013】
(3)本発明による電子装置は、複数の電源を並列接続して負荷に電力を供給する電源回路を備えた電子装置において、該電源回路が少なくとも前記(1)に記載の電源装置を用いて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電源装置、電源制御方法および電子装置によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、並列に動作する複数の電源で構成された電源装置において、各電源ごとに逆流防止用および保護用として配置されるスイッチ部内に並列接続した複数のスイッチ素子を備え、いずれかの電源に故障が発生した際に、該複数のスイッチ素子全てをOFF状態(非導通状態)に設定することによって、故障した電源を隔離して切り離した後に、故障した電源以外の正常な電源を正常状態に復帰させる際に、スイッチ部内の複数のスイッチ素子を時間的にずらして段階的に駆動することが可能な回路構成を採用することによって、最初に復帰指示をしたいずれかのスイッチ素子を他のスイッチ素子よりも優先させてON状態(導通状態)に高速復帰させることができるので、出力電圧が正常化するまでの電圧変動値並びに時間を小さくすることができる。したがって、電圧変動抑制用の大容量コンデンサの設置数量を減らすことができ、電源装置の小型化、集積化、原価低減を実現することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による電源装置、電源制御方法および電子装置の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による電源装置および電源制御方法について説明するが、かかる電源装置を、複数の電源が必要な電子装置における電源装置として該電子装置に内蔵したり外付けしたりするようにしても良いことは言うまでもない。
【0018】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、並列接続した複数の電源からの電力を負荷側に供給する電源装置内に隔離および逆流防止用としてそれぞれの電源ごとに出力側に設置されるORing回路(オアリング回路、逆流防止回路)のスイッチ部として複数のスイッチ素子が並列接続されている場合に、故障した電源以外の正常な電源を正常状態に復帰させるために、各スイッチ素子をOFF状態(非導通状態)からON状態(導通状態)に切り替える際に、全てのスイッチ素子を同時動作させるのではなく、段階的に時間をずらせて動作させ、いずれかのスイッチ素子が他のスイッチ素子よりも先行して動作させることを主要な特徴としている。
【0019】
而して、正常な電源からの電源供給を再開する際に、各スイッチ素子の駆動用のドライブ回路は、まず、先行して動作する特定のスイッチ素子に対してのみ駆動電流を供給することによって、当該特定のスイッチ素子を高速にOFF状態(非導通状態)からON状態(導通状態)に復帰させることが可能になり、電源異常時に一旦切り離された正常電源を高速に定常状態に復帰させることができるので、負荷に供給する出力電圧の変動を抑えることが可能になる。
【0020】
(本発明の実施形態)
次に、本発明の電源装置の実施形態の構成例について、まず、
図1のブロック構成図を用いて説明する。
図1は、本発明の電源装置のブロック構成の一例を示すブロック構成図であり、複数の電源からなる電源装置の一例として、第1電源、第2電源、第3電源の3つの電源が並列接続されている場合を例に採って示している。
【0021】
図1に示す電源装置は、並列に動作する3つの電源それぞれを構成するDC/DCコンバータ部11、12、13それぞれの出力側に、故障電源の隔離と正常電源の保護を図るための逆流防止用のORing回路21、22、23が接続されている。そして、3つのORing回路21、22、23の出力端は並列接続されて、負荷30に接続されている。つまり、負荷30に対して、3つのORing回路21、22、23それぞれを介して3つのDC/DCコンバータ部11、12、13が並列に接続された構成になっている。
【0022】
次に、
図2の回路図を用いて、
図1に示した電源装置内のORing回路の回路構成についてその一例を説明する。
図2は、
図1に示した電源装置内のORing回路21の回路構成の一例を示す回路図であるが、
図1における他のORing回路22,23についても、
図2と同様の回路構成からなっている。
【0023】
一般に、
図1のORing回路21、22、23内のスイッチ部は、負荷30側が必要とする電流容量に応じて、複数個のスイッチ素子が並列接続された構成となっているが、
図2に示すORing回路21のスイッチ部においては、スイッチ素子として、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いて、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2、第3トランジスタQ3の3つのトランジスタ(MOSFET)が並列接続された構成となっている場合を示している。
【0024】
第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれのソース端子S1、S2、S3は、電源を構成するDC/DCコンバータ部11の出力側に接続され、また、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれのドレイン端子D1、D2、D3は、相互に接続されるとともに、負荷30に接続されている。
【0025】
また、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれのソース端子S1、S2、S3とそれぞれのドレイン端子D1、D2、D3との間には第1、第2、第3ボディダイオードDq1、Dq2、Dq3として、寄生ダイオードすなわち内蔵ダイオードが形成されており、ソース端子S1、S2、S3それぞれには第1、第2、第3ボディダイオードDq1、Dq2、Dq3それぞれのアノード側が形成され、また、ドレイン端子D1、D2、D3それぞれには第1、第2、第3ボディダイオードDq1、Dq2、Dq3それぞれのカノード側が形成された状態になっている。
【0026】
また、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3の各スイッチ素子それぞれをOFF状態(非導通状態)からON状態(導通状態)に切り替える切り替えタイミングを、ドライブIC211の能力に応じて段階的にあらかじめ定めた時間ずらして、OFF状態(非導通状態)からON状態(導通状態)に復帰させることを可能にするために、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれの制御端子つまりゲート端子G1、G2、G3の接続状態を異なる状態に設定している。
【0027】
すなわち、第1トランジスタQ1のゲート端子G1は、該第1トランジスタQ1を最も早いタイミングでON状態(導通状態)に復帰させるために、駆動電流供給元のドライブIC(Integrated Circuit)211と直接接続されている。これに対して、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのゲート端子G2、G3は、該第2、第3トランジスタQ2、Q3を第1トランジスタQ1よりもあらかじめ定めた時間だけ遅れたタイミングでON状態(導通状態)に復帰させるために、第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれを介して駆動電流供給元のドライブIC211と接続される。ここで、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのゲート端子G2、G3は、第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれのアノード側に接続され、第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれのカソード側がドライブIC211と接続される。
【0028】
そして、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのゲート端子G2、G3とそれぞれのソース端子S2、S3との間には、第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれのツェナー電圧値すなわち第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3を生成するために、第2、第3抵抗Rz2、Rz3が接続されている。したがって、ドライブIC211から駆動電流が供給された際に、ツェナーダイオードが接続されていない第1トランジスタQ1のゲート端子G1には直ちにゲート電流Ig1が入力されて、ゲート端子G1とソース端子S1との間に駆動電圧が直ちに印加される。
【0029】
しかし、第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれが接続されている第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれについては、第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3を超えて第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれがON状態(導通状態)に達するまで、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのゲート端子G2、G3にはゲート電流Ig2、Ig3が流れ込むことはなく、ゲート端子G2、G3とソース端子S2、S3との間に駆動電圧が印加されない。
【0030】
つまり、第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3は、第1トランジスタQ1よりもあらかじめ定めた時間だけ遅れたタイミングで第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれをON状態(導通状態)に復帰させるための切り替えタイミングを与えるような電圧値に設定されている。言い換えると、複数のスイッチ素子の第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3のうち、ON状態(導通状態)に切り替える切り替えタイミングを段階的に遅くする対象のスイッチ素子例えば第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれには、第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3とツェナー電圧生成用の抵抗すなわち第2、第3抵抗Rz2、Rz3とをそれぞれのスイッチ素子の制御端子であるゲート端子G2、G3に接続し、該ツェナー電圧の電圧値すなわち第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3それぞれを、制御端子のゲート端子G2、G3それぞれを駆動する駆動源すなわちドライブIC211の能力を勘案して設定することにより、各スイッチ素子すなわち第2、第3トランジスタQ2、Q3における切り替えタイミングがあらかじめ定めた時間遅くなるように設定している。
【0031】
ここで、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれに対する切り替えタイミングは、第1〜第3トランジスタQ1〜Q3のような複数のスイッチ素子のうち、導通状態への切り替え対象の或るスイッチ素子例えば第1トランジスタQ1に対する切り替え指示としてゲート端子G1に対してドライブIC211からのゲート電流Ig1が入力されてから当該スイッチ素子例えば第1トランジスタQ1がON状態(導通状態)に切り替わるまでに要する所要時間以上の時間を経過した後に、次の順番の切り替え対象になるスイッチ素子例えば第2、第3トランジスタQ2、Q3に対する切り替え指示として、それぞれのゲート端子G2、G3に対してドライブIC211からゲート電流Ig2、Ig3が入力されるように設定している。
【0032】
なお、本実施形態においては、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれに対する駆動を開始するタイミングを、第1トランジスタQ1がON状態(導通状態)に切り替わるまでに要する所要時間と同程度に設定するために、第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3それぞれの電圧値としては、第1トランジスタQ1がONすることができるソース端子S1−ゲート端子G1間電圧値すなわち第1オン電圧値V1onと同程度に設定されていて、第1トランジスタQ1がON状態(導通状態)に達した時点から、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのゲート端子G2、G3に対するゲート電流Ig2、Ig3の供給動作が開始される場合を示している。
【0033】
また、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3に関して、第1トランジスタQ1については、ドレイン電流Id1として通常流すことができる第1定常電流値Id1nが、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれにドレイン電流Id2、Id3として通常流すことができる第2、第3定常電流値Id2n、Id3nよりも小さくなるように設定され、かつ、第1トランジスタQ1のゲート電流Ig1として第1トランジスタQ1をONする(導通させる)ことができる第1オン電流値I1onも、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのゲート電流Ig2、Ig3として第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれをONする(導通させる)ことができる第2、第3オン電流値I2on、I3onよりも小さくなるように設定される。
【0034】
言い換えると、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3の全てがON状態になる定常状態においては、第1トランジスタQ1のソース端子S1−ゲート端子G1間電圧すなわち第1駆動電圧Vgs1の電圧値(第1定常電圧値V1n)は、第1トランジスタQ1をONする(導通させる)ことができる第1オン電圧値V1onも高い値に設定される。一方、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれについては、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのソース端子S2、S3−ゲート端子G2、G3間電圧すなわち第2、第3駆動電圧Vgs2、Vgs3それぞれの電圧値(第2、第3定常電圧値V2n、V3n)が、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれをONする(導通させる)ことができる第2、第3オン電圧値V2on、V3onと同程度の値に設定される。
【0035】
また、ドライブIC211は、並列接続されている他の電源すなわち
図1のDC/DCコンバータ12、13後段のORing回路22、23の出力電圧の上昇による逆流電流が流れ込んできた場合に、スイッチ素子の第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3全てに対する駆動を停止して、逆流電流が、DC/DCコンバータ部11に流れ込まないように制御される。しかる後、異常な電圧値を出力している他の電源が隔離されるか、または、該他の電源が正常な出力電圧を出力する状態に復して、電圧上昇が解消された場合は、ドライブIC211は、スイッチ素子の第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれの駆動を再開させるように制御される。なお、ドライブIC211からの駆動電流は、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれに対して共通に供給されているので、ドライブIC211が該駆動電流の出力を停止した状態になると、ドライブIC211にゲート端子G1が直接接続されていた第1トランジスタQ1のソース端子S1−ゲート端子G1間電圧すなわち第1駆動電圧Vgs1の印加状態が停止されるのみならず、他の第2、第3トランジスタQ1のソース端子S2、S3−ゲート端子G2、G3間電圧すなわち第2、第3駆動電圧Vgs2、Vgs3の印加状態も停止されることになる。
【0036】
(実施形態の動作の説明)
次に、
図2の回路図に示したような回路からなるORing回路を含む電源装置の動作についてその一例を、
図3の波形図を用いて説明する。
図3は、
図2に示したORing回路21を含む電源装置の動作の一例を説明するために主要部の電圧波形を示す波形図であり、負荷30に印加される負荷電圧Voの電圧波形とともに、ORing回路21内の各スイッチ素子の駆動電圧として第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれのソース端子−ゲート端子間電圧すなわち第1、第2、第3駆動電圧Vgs1、Vgs2、Vgs3それぞれの電圧波形を示している。
【0037】
図3の負荷電圧Voの波形図に示すように、時刻T0の時点に達した際に、例えば並列に接続されている他の電源の出力電圧すなわち
図1のORing回路21以外のORing回路22またはORing回路23からの出力電圧の異常が発生して、負荷電圧Voが、正常な動作中の状態における正常電圧値Vonから、過電圧Vovの状態に上昇した場合、該過電圧Vovを検知したORing回路21内のドライブIC211は、スイッチ素子の第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3全てのゲート端子G1、G2、G3に共通の第1駆動電圧Vgs1の出力を直ちに停止して、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3をOFF状態(非導通状態)に移行させ、逆流電流が、DC/DCコンバータ部11に流れ込まないように制御する。他のORing回路22、23においても、同様に、それぞれのスイッチ部のスイッチ素子全てをOFF状態(非導通状態)に設定する。その結果、異常な出力電圧を発生させていた故障電源は隔離された状態になる。
【0038】
しかる後、
図3の負荷電圧Voの波形図に示すように、時刻T1の時点において、他のORing回路22またはORing回路23からの出力電圧の異常が解消されて、負荷電圧Voが過電圧Vovの状態から低下した場合には、ORing回路21内のスイッチ素子の第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれに寄生する第1、第2、第3ボディダイオードDq1、Dq2、Dq3を介して負荷30に対して電流供給が行われることになり、第1、第2、第3ボディダイオードDq1、Dq2、Dq3の導通時電圧VFに相当する電圧分だけ、正常電圧値Vonよりも降下してしまう。
【0039】
しかし、時刻T1の時点においては、同時に、過電圧Vovの状態から低下したことを検知したドライブIC211は、駆動電流を流し始めて、スイッチ素子の第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3それぞれの駆動を再開させるように制御することになり、ORing回路21は復帰動作を開始している。その結果、まず、ドライブIC211からの駆動電流がゲート電流Ig1として直接入力される第1トランジスタQ1の第1駆動電圧Vgs1が、
図3の第1駆動電圧Vgs1の波形図に示すように、第1トランジスタQ1がONする(導通させる)ことができる第1オン電圧値V1onに向かって上昇していく。つまり、ドライブIC211の駆動能力に応じた一定の勾配にしたがって、第1トランジスタQ1の第1駆動電圧Vgs1が'0'から第1オン電圧値V1onに向かって徐々に上昇していく。
【0040】
一方、ドライブIC211からの駆動電流がそれぞれ第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3を介してゲート端子G2、G3それぞれに入力される第2、第3トランジスタQ2、Q3においては、ドライブIC211が出力する第1駆動電圧Vgs1が第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれにおける第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3に達するまで、ドライブIC211からの駆動電流がカットされて、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのゲート端子G2、G3それぞれにゲート電流Ig2、Ig3が入力されることはなく、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれに対する第2、第3駆動電圧Vgs2、Vgs3が出力されず、'0'の状態が継続する。
【0041】
ここで、本実施形態においては、第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3それぞれの電圧値は、第1トランジスタQ1がONすることができるソース端子S1−ゲート端子G1間電圧値すなわち第1オン電圧値V1onと同程度に設定されている。したがって、第1駆動電圧Vgs1が第1オン電圧値V1onと同程度の第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3に達するまでは、ドライブIC211は、第1トランジスタQ1を駆動するためにだけ、その能力が使用されることになり、第1トランジスタQ1がONすることができる第1オン電圧値V1onに達するまでの速度を向上させることができる。
【0042】
しかる後、
図3の第1駆動電圧Vgs1の波形図に示すように、第1トランジスタQ1を駆動する第1駆動電圧Vgs1が上昇して、ドライブIC211の能力に応じてあらかじめ定めた時間が経過した時刻T2の時点において、該第1トランジスタQ1がONすることができる第1オン電圧値V1onにまで達すると、第1トランジスタQ1がON状態に切り替わるので、
図3の負荷電圧Voの波形図に示すように、負荷30における負荷電圧Voは、導通時電圧VFに相当する電圧分だけ降下していた状態から脱して、正常電圧値Vonに復帰する。
【0043】
さらに、時刻T2の時点においては、第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれに印加される第1駆動電圧Vgs1が、第1オン電圧値V1onと同程度に設定されている第2、第3ツェナー電圧値Vz2、Vz3それぞれに達しているので、ドライブIC211からの駆動電流が、第2、第3ツェナーダイオードZD2、ZD3それぞれを介して、ゲート電流Ig2、Ig3として第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれのゲート端子G2、G3に入力される状態に移行する。
【0044】
したがって、
図3の第2、第3駆動電圧Vgs2、Vgs3の波形図に示すように、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれに対する第2、第3駆動電圧Vgs2、Vgs3が、ドライブIC211の供給能力に応じた一定の勾配にしたがって、上昇を開始する。かくのごとく、ドライブIC211は、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3の全てに対して駆動電流を供給する状態になるので、
図3の第1駆動電圧Vgs1の波形図に示すように、第1トランジスタQ1に対する第1駆動電圧Vgs1は、ドライブIC211の供給能力に応じて、第1オン電圧値V1onに達するまでの勾配よりも緩やかな勾配に変化して、定常状態における第1定常電圧値V1nに向かって上昇を継続するとともに、負荷30に対しては第1トランジスタQ1から負荷電流Ioを供給する動作を継続する。
【0045】
しかる後、
図3の第2、第3駆動電圧Vgs2、Vgs3の波形図に示すように、ドライブIC211の能力に応じてあらかじめ定めた時間が経過した時刻T3の時点において、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれに対する第2、第3駆動電圧Vgs2、Vgs3が、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれをONすることができる第2、第3オン電圧値V2on、V3onに達すると、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれがON状態に切り替わり、第2、第3トランジスタQ2、Q3においても、負荷30に対する負荷電流Ioの供給動作を開始し、第1トランジスタQ1とともに、負荷30に対して負荷電流Ioを供給する通常の状態に移行する。
【0046】
以上のように、正常な電源に関しては、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれがON状態(導通状態)に切り替わる切り替えタイミングが、第1トランジスタQ1よりもあらかじめ定めた時間だけ遅れることになる。つまり、故障した電源以外の正常な電源に関しては、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3の全てのスイッチ素子を同時にOFF状態(非導通状態)からON状態(導通状態)に切り替えるのではなく、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3の各スイッチ素子それぞれをON状態(導通状態)に切り替える切り替えタイミングをあらかじめ定めた時間ずらすように制御している。
【0047】
時刻T3の時点を経過した以降においては、
図3の第1、第2、第3駆動電圧Vgs1、Vgs2、Vgs3それぞれの波形図に示すように、第1トランジスタQ1に対する第1駆動電圧Vgs1は、第1オン電圧値V1onよりも高い第1定常電圧値V1nに維持され、第2、第3トランジスタQ2、Q3それぞれに対する第2、第3駆動電圧Vgs2、Vgs3は、第2、第3オン電圧値V2on、V3onと同程度の電圧値の第2、第3定常電圧値V2n、V3nに維持されて、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3の全てのトランジスタ(MOSFET)が、負荷30に対して負荷電流Ioを供給する通常の状態に復帰している。
【0048】
なお、以上の説明においては、逆流防止用のORing回路21内のスイッチ部を、負荷30側において必要とする電流容量に応じて、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3の3個のスイッチ素子を並列接続した場合について説明したが、スイッチ部を構成するスイッチ素子の個数は、3個の場合のみに限るものではなく、2又は2以上の複数個であれば本発明を適用できることは言うまでもない。
【0049】
また、正常状態に復帰する際に、第1、第2、第3トランジスタQ1、Q2、Q3の3個のスイッチ素子のうち、あらかじめ定めた特定のスイッチ素子として第1トランジスタのみを他の第2、第3トランジスタQ2、Q3よりも早いタイミングでONする(導通させる)ように構成し、残りの第2、第3トランジスタQ2、Q3がONする(導通させる)タイミングは、第1トランジスタQ1よりも遅くなるものの、両者がほぼ同一タイミングでONする(導通させる)場合について説明した。しかし、本発明は、かかる場合のみに限るものではなく、ORing回路21内の複数のスイッチ素子それぞれを段階的に駆動することを可能にして、複数のスイッチ素子それぞれを別々のタイミングでONする(導通させる)ようにしても良いし、あるいは、電源の能力如何により、他のスイッチ素子よりも早いタイミングでONする(導通させる)特定のスイッチ素子を、1個のみならず複数同時にオンさせるようにしても良い。
【0050】
また、以上の説明においては、ORing回路21内のスイッチ部を構成するスイッチ素子として、MOSFETを用いる場合について説明したが、場合によっては、ヘテロ接合型FETやバイポーラトランジスタ(Bipolar Transistor)によって構成するようにしても良い。なお、ヘテロ接合型FETを用いる場合は、MOSFETの場合と同様、スイッチ素子としての制御端子はゲート端子であり、該ゲート端子にゲート電圧を印加することによって、導通状態、非導通状態を制御し、一方、バイポーラトランジスタを用いる場合は、スイッチ素子としての制御端子はベース端子であり、該ベース端子にベースを印加することによって、導通状態、非導通状態を制御することは言うまでもない。
【0051】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、次のような効果が得られる。すなわち、並列に動作する複数の電源で構成された電源装置において、各電源ごとに逆流防止用および保護用として配置されるORing回路21(スイッチ部)内に複数のスイッチ素子を備え、いずれかの電源に故障が発生した際に、該複数のスイッチ素子全てをOFF状態(非導通状態)に設定することによって、故障した電源を隔離して切り離した後に、故障した電源以外の正常な電源を正常状態に復帰させる際に、ORing回路21(スイッチ部)内の複数のスイッチ素子を時間的にずらして段階的に駆動することが可能な回路構成を採用することによって、最初に復帰指示をしたいずれかのスイッチ素子を他のスイッチ素子よりも優先させてON状態(導通状態)に高速復帰させることができるので、出力電圧が正常化するまでの電圧変動値並びに時間を小さくすることができる。したがって、電圧変動抑制用の大容量コンデンサの設置数量を減らすことができ、電源装置の小型化、集積化、原価低減を実現することが可能になる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。