【実施例】
【0028】
一般的な開示を提供したが、下記実施例は該一般的な開示を説明しやすいものとする。これらの具体的な実施例は、本開示の或る特定の態様及び実施形態を説明するに過ぎず、いかなる点においても限定を意図するものではない。しかしながら、実施例において記載される或る特定の一般的な原理は、本開示の他の態様又は実施形態に通常適用可能であってもよい。
【0029】
実施例1:材料及び方法
化学物質及び試薬
ジメチルスルホキシド(99.9%、分光法グレード)をAcros Organics(ベルギー)から調達した;ジエチルエーテル(99.9%、分光法グレード)をAldrich Chemicalから調達した;及びアセトニトリル(100%、HPLCグレード)をFisher Scientific(イギリス)から調達した。再蒸留水(ddH
2O)をMilli−Q精製システムから得た。
【0030】
ターメリック由来のクルクミノイド混合物(クルクミン98%、デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミン)及びフェニトインをAcros Organicsから調達した。PTZをSigma-Aldrich(ドイツ)から入手し、ジアゼパムをRocheから入手した。
【0031】
植物材料
インドを原産とするウコンの乾燥根茎粉末(ターメリック)をベルギーの地元供給業者から調達した。リサーチフェローであるR.Ansalloni(クエンカ大学、クエンカ、エクアドル)が顕微鏡的な立証を完了した(26)。
【0032】
実験動物
動物実験に関する全ての手続きは、欧州及び国内の規則に従って行われ、ルーヴェンカトリック大学の動物実験委員会により承認された。
【0033】
ゼブラフィッシュ(ゼブラ・ダニオ)
Tg(fli 1a:EGFP)y1株のゼブラフィッシュ成魚を28.5℃にて14/10時間の明/暗サイクルで飼育した。卵を自然繁殖から採取し、胚培養液(NaCl 17mM、KCl 2mM、Ca(NO
3)
2 1.8mM、MgSO
4 0.12mM、HEPES緩衝溶液pH7.1〜7.3 1.5mM及びメチレンブルー0.6μM)中で28.5℃のインキュベーターにおいて育てた。ゼブラフィッシュ胚及び幼魚の選別及び培養液交換を受精後7日まで毎日行った。全ての幼魚を過量の麻酔薬(トリカイン)の投与により犠牲した。
【0034】
マウス(ハツカネズミ)
8週齢からの雄性C57Bl/6マウス(20g〜30g)を、28℃の静かな部屋において12/12時間の明/暗サイクル下で適切なケージで飼育した。動物を10週齢〜12週齢になるまでペレット食及び水による不断給餌とした。
【0035】
実施例2:ウコン精油の蒸留
欧州薬局方に従い、クレベンジャー型装置を使用する水蒸気蒸留により、ターメリックから揮発油を得た。ターメリック試料(100g)を2LのddH
2Oで3時間抽出した。4回の水蒸気蒸留(400g)を完了し、淡黄色の芳香性の油(収率2.14%)を得た。ウコン油を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、使用するまで4℃で保管した。
【0036】
実施例3:ウコン油のRP−HPLC解析及びその成分の単離
ウコン油試料(334mg)をアセトニトリル10mlに溶解した。注入容量は300μlであった。ウコン油のRP−HPLC解析及び後のその成分の単離は、He及び同僚の原著から適合させた(27)。RP−HPLC解析を、ダイオードアレイ検出(DAD)システムを装備した高速液体クロマトグラファー(LaChrom Elite HPLC System、VWR Hitachi)上で行った。分取スケールでのウコン油成分のRP−HPLC分離を、Econosphere 10μm C18(33mm×7mm)ガードカラム(Grace Davison Discovery Sciences、ベルギー)に取り付けたEconosphere 10μm C18(250mm×10mm)逆相カラム(Grace Davison Discovery Sciences、ベルギー)を使用して達成した。室温にて5ml/分の流速でカラムが作動した。グラジエント溶離のプロファイルは、再蒸留水(ddH
2O)(A)及びアセトニトリル(B);0分〜15分、40%〜60%B;15分〜20分、60%〜100%B;20分〜25分、100%B;25分〜30分、100%〜40%Bであった。検体をDADにより260nmでモニターした。8つの画分を個別に採取した(
図4)。採取された画分からの溶媒をジエチルエーテル及びddH
2O間の分離により除去した。
【0037】
エーテル相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、室温にて試料上に窒素緩流を通すことにより溶媒を除去した。濃縮された試料を解析まで4℃にて保管した。
【0038】
実施例4:ビサボレンセスキテルペンの化学構造の解明
核磁気共鳴(NMR)解析
画分4、5及び6の
1H及び
13C NMRスペクトルを、溶媒として重水素化クロロホルム、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を使用して、Bruker 300 Avance及びBruker 600 Avance II
+設備より得た。
【0039】
質量分析(MS)の解析
脱ガス装置、クォータナリーポンプ、オートサンプラ、UV−DAD検出器及びAgilent 6110シングル四重極MSに連結されたサーモスタット付(thermostatised)カラムモジュールが装備されたAgilent 1100システム上でLC−MS解析を行った。データの取得及び定量化は、Agilent LC/MSD Chemstationソフトウェアより行った。画分4、5及び6を、Grace Prevail RP−C18カラム3μm(150mm×2.1mm)上で流速0.2ml/分にて解析した。LC勾配に2種の溶媒を含めた:再蒸留水(ddH
2O)+0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル(B);0分〜17分、40%〜60%B;17分〜32分、60%〜100%B;32分〜55分、100%B。
【0040】
Xcaliburデータ解析ソフトウェアに連結されたAgilent 1100ポンプ及び注入システムを有するThermo Electron LCQ Advantage機器においてESI−MS解析を完了した。
【0041】
実施例5:ゼブラフィッシュモデルにおける毒性評価
このアッセイの目的は、抗痙攣活性評価のためゼブラフィッシュにおいて試験される適切な濃度範囲を決定することであった。受精後7日のゼブラフィッシュを24ウェルプレート(組織培養プレート、平底、FALCON
(商標)、USA)に置き、1ウェル当たり幼魚6匹とした。1mlの胚培養液(1%DMSO)に溶解した種々の濃度の試験化合物と共にそれらをインキュベートした。6時間に亘って毎時間、幼魚を検査し、コントロール群と比較して以下の毒性兆候を検出した:プレートを軽く叩いた際の驚愕反応の欠如、心拍数及び血液循環の変化、浮腫の存在、麻痺及び死亡。このようにして、6時間以内の試験化合物への暴露でゼブラフィッシュ幼魚6匹中6匹において何らの毒性兆候も観察されなかった最も高い濃度により、最大許容濃度(MTC)を規定した。
【0042】
さらに、試料中で24時間に亘って幼魚を検査し、コントロール群と比較して毒性を検出した。したがって、ここでも24時間以内の試料への暴露でゼブラフィッシュ6匹中6匹において何らの毒性の兆候も観察されなかった最も高い濃度により最大許容濃度(MTC)を規定した。
【0043】
実施例6:ゼブラフィッシュPTZモデルにおける抗痙攣活性評価
受精後7日からのゼブラフィッシュ幼魚を、ViewPoint VideoTrack System for Zebrafish(商標)(Version 2.3.1.0、ViewPoint、フランス)を使用して追跡した。このシステムは、赤外光源、規定される時間(我々の実験設定においては30分間)のうちに幼魚の運動を捕捉するための高解像度デジタルビデオカメラ、及び幼魚の自発運動を解析するためのソフトウェアで構成される(
図1)。
【0044】
試験された最も高い濃度は、予め決定されたMTCに相当する。ゼブラフィッシュ幼魚を96ウェルプレート(組織培養プレート、平底、FALCON
(商標)、USA)に置いた;1ウェル当たり幼魚1匹。このプレートの各列(12ウェル)に異なる処理群を含めた。2つの隣接する列に同じ化合物を含めたが、2つの異なる処理を受けた:a)第1列、胚培養液(DMSO1%)、及びb)第2列、PTZ20mM。プレートの最初の2列(ビヒクルコントロール群であり、ビヒクルは胚培養液であった)は、1ウェル当たり容量100μlの胚培養液(1%DMSO)を含有した。以下3つの試験群(各々2列)は、異なる濃度の試験化合物を含む胚培養液100μlを含有した。そのように処理された幼魚を、1時間に亘って暗く静かな条件下で室温にてインキュベートした。4群中の各群の第1列に胚培養液(100μl)を添加した。同様に、100μlのPTZ 40mMを各処理群の第2列に添加した(PTZの最終濃度:20mM)。そのようにして、暴露されたゼブラフィッシュ幼魚の運動パターンを胚培養液(1%DMSO)及びPTZ20mMの存在下でビデオにより追跡し、評価した。幼魚運動のビデオトラッキングは、ウェルへの胚培養液又はPTZの添加5分後に開始し、30分間記録した。各プレートにおいて合計8ウェルをネガティブコントロールとして幼魚無し(培養液のみ)のままとし、各実験のパラメーターが幼魚10匹〜12匹の平均で構成されるようにした。追跡ソフトウェアにより、10分間の幼魚運動を3回測定した。結果は、30分間の幼魚運動の合計時間の平均値として登録された。示される図は、2つの類似する一連の実験の代表例である。
【0045】
クルクミノイドの抗痙攣特性を、ゼブラフィッシュ幼魚の発作様運動のビデオトラッキング解析により評価した。より高い試験濃度がMTCに相当し、したがって、いずれの場合も幼魚がこれらの用量において何らの毒性兆候も表すことはなかった。クルクミノイドに対するMTCは10μg/mLに相当する。クルクミノイドは、2.5μg/mL(p<0.05)並びに5μg/mL及び10μg/mL(p<0.001)において有意な抗痙攣活性を示した(
図2)。この知見は、齧歯類モデルにおいて明らかにされているクルクミンの抗痙攣特性と合致する(11)(12)(13)(14)。一方、更なる解析により、ウコン油の抗痙攣活性が見出された。幼魚は、ウコン油(10μg/ml)に暴露された後のPTZ誘発性発作の有意な減少(p<0.001)を示した(
図2)。
【0046】
クルクミノイド及びウコン油の抗痙攣活性を、てんかんの治療に広く使用されている2種の薬物、フェニトイン及びジアゼパムと比較した。より高い試験濃度がMTCに相当した。フェニトインは、75μg/ml(p<0.05)及び252.26μg/ml(p<0.001)で有意な活性を示した。ジアゼパムは、1.42μg/ml及び14.23μg/ml(p<0.001)の濃度において幼魚におけるPTZ誘発性運動を減少した(
図3)。クルクミン及びウコン油は、フェニトインよりも顕著に低い濃度において、またジアゼパムと同等の濃度において発作の発生を遅延する興味深い活性を表した。
【0047】
ウコン油のRP−HPLC解析により、8つのピークが明らかとなった(
図4)。ピークを個別に採取して抗痙攣活性を評価し、活性成分を見出した。画分2及び7は、採取量がアッセイの実施に不十分であったためゼブラフィッシュモデルにおいて試験しなかった。PTZにより引き起こされる発作の有意な減少が、10μg/mlの画分4(p<0.05)、5μg/mlの画分5(p<0.001)、並びに5μg/ml(p<0.001)及び10μg/ml(p<0.05)の濃度の画分6で観察された(
図5、
図6、
図7A)。ビサボレンセスキテルペノイドは、フェニトインに比べてより低い濃度で抗痙攣特性を呈した。画分4及び6は、ジアゼパムと同様の濃度で陽性反応を表した。画分5は、ジアゼパム及びフェニトインよりも低い濃度で有効であった。
【0048】
化学構造の解明のため、ゼブラフィッシュPTZモデルにおいて陽性活性を示した画分4、5及び6を更に解析した。画分4の保持時間、分子量及びUVmaxは、
図4に提示される生成物と一致する。この画分の
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルは、ar−ターメロンに関して報告されている値と一致しており(29)、おそらくエナンチオマーの混合物である。NMR解析は、画分5が2つの異性体構造物の1:1の混合物、おそらくエナンチオマーの混合物であることを示す。この画分の化合物は、1D−NMR解析及び2D−NMR解析によりα−ターメロン及びβ−ターメロン(クルロン)と同定された(30)。芳香族アナログar−ターメロンへの異性化は、1週間後のNMRで観察されなかった。画分6の構造を、分子量、1D−NMRスペクトル及び2D−NMRスペクトルに基づいて(29)(31)、α−アトラントン(おそらくE異性体)と同定した(
図4;表1)。
【0049】
表1 ウコン油由来のビサボレンセスキテルペノイドのUV及びMSデータ。解析より得られたデータを括弧[]の間に引用されるX.He及び同僚の解析(24)からの値と比較する。
【表1】
画分4:ar−ターメロン;画分5:α、β−ターメロン(クルロン);画分6:α−アトラントン
【0050】
ターメリック(ウコン根茎粉末)のメタノール抽出物の解析により、ゼブラフィッシュ幼魚PTZアッセイにおける抗痙攣活性が明らかとなった。ターメリックのメタノール抽出物中に存在する活性成分を同定するため、クルクミノイド及びウコン油の抗痙攣特性もビデオトラッキング解析により評価した。クルクミノイドは、我々の幼魚PTZアッセイにおいて、2.5μg/ml(p<0.05)並びに5μg/ml及び10μg/ml(p<0.01)で抗痙攣活性を示した。追加の解析より、ウコン油について更なる抗痙攣活性を見出した。幼魚は、ウコン油(10μg/ml)に暴露後のPTZ誘発性痙攣の減少(p<0.01)を示した(
図2C〜
図2E)。すなわち、クルクミノイド又はウコン油単独(すなわち、痙攣誘発薬の不存在)に対するゼブラフィッシュ幼魚の暴露もまた、ビヒクル処理されたコントロールに比べて、自発運動の僅かな増加を生じた。しかしながら、明白な毒性兆候(心拍数、姿勢の喪失、触覚刺激に対する応答の欠損及び遅延、又は死亡により測定される)は、これらの幼魚では観察されなかった。
【0051】
また、ビサボレンセスキテルペノイドの抗痙攣特性も、ゼブラフィッシュ幼魚の発作様運動のビデオトラッキング解析により評価した。より高い試験濃度がMTCに相当し、したがって、いずれの場合も幼魚がこれらの用量において何らの毒性兆候も表すことはなかった。ar−ターメロン、α、β−ターメロン及びα−アトラントンの画分について、PTZにより引き起こされる痙攣において有意な減少が観察された。ar−ターメロンは46μM(p<0.05)、α、β−ターメロンは23μM(p<0.01)、及びαアトラントンは23μM(p<0.05)及び46μM(p<0.01)の濃度で抗痙攣活性を示した(
図7B〜
図7D)。
【0052】
実施例7:マウスにおけるPTZ誘発性発作の発生
マウスを無作為に5匹の動物群に分けた(ビヒクル(ここで、ビヒクルはポリエチレングリコール200(PEG200):水 1:1であった)及び試料)。動物を10分間赤外線ランプのもとで予め温め尾静脈を拡張させた。その後、それらを保定器に置いて、1cm長、29ゲージの針を用いて外側尾静脈にカテーテル挿入を行った。正しい配置を確認した後に針をサージカルテープで尾に固定した。針を、a)試料(コントロールビヒクル又は試験化合物)及びb)PTZ(7.5mg/ml ddH
2O)を含有する2つの2.5mlグラスシリンジに接続された0.7m長のポリエチレンチューブにつないだ。これらのシリンジを注入ポンプ(ALADOIN−1000 11VDC、0.75Å、World Precision Instruments)に取り付けた。このようにして、100μLのコントロールビヒクル(PEG200:ddH
2O 1:1)又は試験化合物(ウコン油及びar−ターメロン)を、50μl/分の速度で2分間、静脈内注入した。10分後、マウスを保定器から解放し、観察用の透明なプラスチックケージに置いた。
【0053】
PTZを150μl/分の速度で絶えず注入した。マウスにおける発作発現段階は、PTZ注入の開始から以下の行動事象までの時間により採点した:耳単攣縮、尾単攣縮及び筋間代性単攣縮、前肢間代性痙攣、転落、強直性後肢伸展並びに死亡(28)。行動をPTZ注入の5分以内に観察した。生存マウスがいた場合には、それらを犠牲した。
【0054】
PTZ用量を下記式に従って算出した:PTZ容量(mg/kg)=(PTZ濃度(mg/ml)×注入速度(ml/秒)×注入期間(秒)×1000)/マウス体重(g))。全ての試験溶液はヘパリン(20μl/ml)を含有した。
【0055】
ウコン油がマウスにおけるPTZ誘発性発作の発生を制御することについての更なる評価により、マウスPTZアッセイにおける発作パラメーターの開始に対する遅延が示された。ウコン油(50mg/kg)で処理されたマウスは、コントロール群に比べて、全ての行動エンドポイント、すなわち、尾単攣縮(p<0.001)、耳単攣縮、筋間代性単攣縮、前肢間代性痙攣、転落、強直性後肢伸展及び死亡(p<0.05)を引き起こすために必要なPTZ用量の有意な増加を示した(
図8A)。興味深いことに、200mg/kgの用量でのar−ターメロンもまた、コントロールに比べて、マウスにおける耳単攣縮、尾単攣縮及び筋間代性単攣縮、強直性後肢伸展並びに死亡(p<0.05)を発生させるPTZ用量の有意な増加を示した(
図8B)。
【0056】
ビヒクルPEB200:DMSO 1:1を使用した場合、ウコン油(50mg/kg)で処理されたマウスは、コントロール群に比べて、全ての行動エンドポイント、すなわち、前肢間代性痙攣、転落及び強直性後肢伸展(p<0.05)、並びに耳単攣縮、筋間代性単攣縮、尾単攣縮及び死亡(p<0.01)を引き起こすために必要なPTZ用量の有意な増加を示した(
図9A)。
【0057】
さらに、マウスPTZアッセイにおいて100mg/kgの用量のウコン油は、コントロールに比べて全ての発作パラメーター及び死亡に関し、発作発生の遅延に有意な活性を呈した(p<0.01)(
図9B)。活性型ビサボレンセスキテルペノイドに関し、ar−ターメロン及びα、β−ターメロンを、マウスPTZ発作モデルを使用して評価した(
図10)。50mg/kgの用量のar−ターメロンが注入されたマウスは、発作の発生に対して有意な抵抗性を呈し、全ての評価事象、すなわち、強直性後肢伸展(p<0.05)、並びに耳単攣縮、筋間代性単攣縮及び尾単攣縮、前肢間代性痙攣、転落並びに死亡(p<0.01)を引き起こすために必要なPTZの用量の増加をもたらした。同様に、α、β−ターメロンの抗痙攣活性を評価し、ここでも100mg/kgの用量で、全ての発作パラメーター、すなわち、前肢間代性痙攣、転落、耳単攣縮及び尾単攣縮(p<0.05)、並びに筋間代性単攣縮、強直性後肢伸展並びに死亡(p<0.01)について陽性の結果が見られた。α−アトラントンについては、採取量がこのアッセイを実施するために十分ではなかったため、このマウスモデルにおいては試験しなかった。
【0058】
バルプロ酸ナトリウムを、我々のマウスにおけるAEDスクリーニング用PTZ尾部注入法におけるポジティブコントロールとして含めた(
図11)。このアッセイを使用することにより、バルプロ酸ナトリウム(50mg/kg)は、強直性後肢伸展(p<0.01)及び死亡(p<0.05)の遅延が可能であった。また、バルプロ酸ナトリウムは、同様にポジティブコントロールとして使用され、ゼブラフィッシュ幼魚における発作の発生を制御することができた(
図11)。
【0059】
実施例8:統計学的解析
全ての統計学的解析をGraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.)を使用して行った。値は、平均±標準偏差(SD)として表した。ゼブラフィッシュ幼魚の自発運動をone−way ANOVAの後のDunnettの多重比較検定を使用して解析した。処理群及び同等のコントロール群(ビヒクル又はPTZ)間の統計学的有意差(p<0.05)をゼブラフィッシュ幼魚の自発運動における減少又は増加の指標とみなした。マウス実験については、上記発作ステージ前に推定された時間間隔の間の有意差を対応のないStudentのt検定を使用して算出した。
【0060】
実施例9:部分てんかんの6Hz精神運動発作モデルにおけるar−ターメロンの抗痙攣活性評価
ar−ターメロンの抗痙攣活性を評価するため、部分てんかんの6Hz精神運動発作モデル(Barton M.E. et al., 2001)を使用し、それにより、以下の刺激パラメーターを適用した:6Hz、0.2ミリ秒矩形波パルス幅、3秒持続。
【0061】
各マウス(雄性NMRI ±30g)に化合物(ar−ターメロン50mg/kg、20mg/kg、1mg/kg及び100μg/kg)又はビヒクル(PEG200:DMSO 1:1)を腹腔内注射により投与した。30分間のインキュベーションの後、Ugo−Basil機器を使用して角膜刺激により発作を誘発した。角膜電極を置く前に、キシロカイン0.5%を一滴、動物の眼に適用した。動物を手で押さえ、刺激後すぐに透明なプラスチックケージに解放した。その後、動物を観察した。発作は、失神、前肢間代性痙攣、触毛の単攣縮、少なくとも45秒の挙尾を特徴とした。保護を、発作の不存在により定義した。各用量当たり最低6匹の動物を使用した。マウス6匹中6匹が、ar−ターメロン100μg/kg、及び1mg/kg、20mg/kg、50mg/kgの濃度で保護を示した(
図13)。ネガティブコントロール(ビヒクルのみ)及びポジティブコントロール(バルプロ酸300mg/kg)も同様に含んだ。予想されたように、ビヒクルのみにより処理されたマウス6匹中6匹は保護されず、バルプロ酸により処理されたマウス6匹中6匹が保護された。
【0062】
実施例10:高架橋上での運動協調性及び平衡
本実施例において、高架橋を使用するマウスの運動協調性及び平衡を(Brooks et al., 2012)に記載されるように観察した。
【0063】
高架橋は、マウス(雄性C57Bl/6 ±25g)がその平衡(フットスリップで測定)を失うことなく橋桁を横切る能力を測定する。橋桁を横切る間、中断することなく走ることに熟達するまで各マウスを訓練した。橋桁の2つの領域を「開始」領域及び「停止」領域と設計し、橋桁を走る際の動物のタイミングを操作者が開始及び停止できるようにした。訓練の後、各マウスに上記化合物又はビヒクルを静脈内投与した。10分後、橋桁の方に向いている状態(state)で橋桁の先端にマウスを置いた。操作者は、開始線からマウスが停止線に到達するまでの時間を計測した。橋桁上(「開始」領域から「停止」領域まで)のフットスリップ回数(
図12A)、転落回数(
図12B)及び合計時間(
図12C)を数えた。この試験において、ar−ターメロン50mg/kgで処理されたマウス5匹中5匹が、コントロール群(ビヒクルにより処理された)に匹敵する行動を見せた。よって、得られた結果より、ar−ターメロンはその抗痙攣活性の副作用として運動障害及び平衡障害を引き起こさないことが示唆され得る。ジアゼパムで処理されたマウスを、静脈内/腹腔内投与後のマウスにおける運動変化及び平衡変化を引き起こす、このAEDの既知の副作用のため含めた。
【0064】
考察
ゼブラフィッシュPTZ誘発性発作モデル(24)は、第一選択のAED、すなわちフェニトイン及びジアゼパムを使用することにより正当であることが立証された。このスクリーニングシステムの更なる正当化は、クルクミノイドの既知の抗痙攣特性の同定により達成された。クルクミンは、ターメリックの抗痙攣特性を担う主な活性物質としてしばしば引用されてきた(11)(12)(32)。その医薬特性が立証されているものの、第I相臨床試験では、クルクミンの重要な薬物動態上の制限が明らかとなった。経口投与された場合、消化管を通して吸収された少量のクルクミンは、ほとんどが水様性の代謝産物に転換されて排泄される。よって、循環系に到達するクルクミンの量は非常に少ない。したがって、とりわけバイオアベイラビリティーの問題がその治療適用を制限している。よって、幾つかの製剤研究がクルクミンのバイオアベイラビリティーを向上するために行われている(33)。
【0065】
一方、齧歯類モデルにおける神経保護研究により、ウコン油及びその主なビサボレンセスキテルペノイドが容易に血液脳関門を通過することが示され、これは細胞膜の通過を可能とする親油性に起因すると思われる(18)。ウコン油及びその成分がより良好なバイオアベイラビリティーを示し、クルクミンと比較した場合により困難なく生体膜を通過することから(15)(16)(33)、ウコン油も抗痙攣特性を表すという我々の知見は実に興味深いものである。さらに、ターメリックの安全性は、ターメリックが主にインドにおいて何世紀にもわたって食品の香辛料として広く使用されてきており、その使用がヒトの摂取について承認されてきたという事実により支持されている。さらに、ヒトの健康な患者において(34)及びin silico解析において(35)行われた毒性研究により、ar−ターメロンが更なる薬物開発の安全な有力候補として予測されている。
【0066】
ウコン油の揮発性成分に関する以前の研究は、それらの複雑な単離により制限されていた。我々の業績は、RP−HPLCによるウコン油の主成分を単離するための実用的な方法を提供する。単離された化合物を、ゼブラフィッシュPTZてんかんモデルにおいて個別に評価した(ピーク1、3、8についてデータは示していない)。このモデルは、ウコン油及び主要なビサボレンセスキテルペノイド:ar−ターメロン;α、β−ターメロン(クルロン)及びα−アトラントンの顕著な活性を明らかにした。さらに、ウコン油(50mg/kg及び100mg/kg)、ar−ターメロン(200mg/kg)、及びα、β−ターメロン(100mg/kg)の抗痙攣特性を、マウスPTZモデル及び部分てんかんの6Hz精神運動発作モデルにおいて裏付けることに成功した。ウコン油対ar−ターメロンの活性については、このモデルにおいて抗痙攣特性を観察するためにより高用量の単離されたビサボレンセスキテルペノイドが必要であることから、付加的な活性のように見える。それでも、これらの知見より、主要なビサボレンセスキテルペノイド、特にar−ターメロンが、更に調査される有力な抗痙攣薬物候補として明らかとなった。
【0067】
参照による援用
本明細書において言及される全ての刊行物及び特許は、各個別の刊行物又は特許が具体的にかつ個別に引用することにより本明細書の一部をなすことが示されているかのように、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。不一致の場合、本明細書中のあらゆる定義を含め、本出願が支配する。
【0068】
均等物
本発明の具体的実施形態を説明したが、上記明細書は例証であって制限ではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、本発明の多くの変形形態が当業者に明白となるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲と共にそれらの均等物の全範囲、及び明細書と共にそのような変形形態を参照して決定されるべきである。
【0069】
参考文献
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