特許第6090885号(P6090885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6090885
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】スライサー
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/46 20060101AFI20170227BHJP
   B26D 3/28 20060101ALI20170227BHJP
   B26D 1/54 20060101ALI20170227BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B26D1/46 502F
   B26D3/28 610T
   B26D1/46 502K
   B26D1/54
   B26D1/46 502G
   B26D7/06 D
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-152333(P2016-152333)
(22)【出願日】2016年8月2日
【審査請求日】2016年9月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316010780
【氏名又は名称】株式会社信の恵スライス研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】北島 正信
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−059197(JP,U)
【文献】 特開2005−319521(JP,A)
【文献】 実開平01−121693(JP,U)
【文献】 特開2001−071294(JP,A)
【文献】 特開2014−198361(JP,A)
【文献】 特開2014−226775(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3198988(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0261196(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、回転する第一、第二プーリーと、前記第一、第二プーリーに掛けられ回転する、輪状で全周縁が刃である環状刃と、前記環状刃の環内側に位置し、被処理材が載置される第一ベルトコンベアとからなり、
前記第一ベルトコンベアのベルトの上面と前記環状刃との間隙が被処理材のスライス厚であって、
前記被処理材とともに前記第一ベルトコンベアのベルトが連動して前後動し、前記被処理材を前記環状刃に当てて、前記被処理材をスライスすることを特徴とするスライサー。
【請求項2】
前記第一ベルトコンベアのベルトに固定され、底部が開口し、内部に被処理材を収納し、前記環状刃に前記被処理材を当てるよう、前後動可能なケースを備え、前記被処理材とともに前記第一ベルトコンベアのベルトと前記ケースが連動して前後動することを特徴とする請求項1に記載のスライサー。
【請求項3】
前記環状刃の上方に配置され、前記環状刃を上方より押さえる上プレートと、前記環状刃の下方に配置され、前記環状刃を下方より押さえる下プレートとからなる押さえユニットを備え、前記環状刃を前記押さえユニットの上下プレートでサンドして前記環状刃の上下動を抑制することを特徴とする請求項2に記載のスライサー。
【請求項4】
前記押さえユニットを挟み、前記第一ベルトコンベアと同じ高さで、前記第一ベルトコンベアの回転に連動し、前記第一ベルトコンベアと同一方向に回転する、第二ベルトコンベアを備えることを特徴とする請求項3に記載のスライサー。
【請求項5】
前記第一、第二ベルトコンベアの回転軸を、ベルトで連結する、前記第一、第二ベルトコンベアを同一方向に回転させる連動機構を備えることを特徴とする請求項4に記載のスライサー。
【請求項6】
前記第一、第二ベルトコンベアの上方側面に固定した二本の棒と、前記ケースの側面に固定され、前記棒を通す左右の筒とからなるスライド機構を備え、前記ケースを前後動可能とすることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のスライサー。
【請求項7】
前記第一ベルトコンベアの高さを可変とし、前記第一ベルトコンベアと前記環状刃の間隙を変更することで、被処理物のスライス厚を変更可能としたことを特徴とする請求項1に記載のスライサー。
【請求項8】
前記環状刃に水を噴射するノズルを備えることを特徴とする請求項1に記載のスライサー。
【請求項9】
前記環状刃の両面に接触し、切断残渣を擦り取るスクレーパーを備えることを特徴とする請求項1に記載のスライサー。
【請求項10】
前記ケースに収納される落とし蓋を、前記被処理材に載せて、前記ケースを前後動させて、被処理材をスライスすることを特徴とする請求項2に記載のスライサー。
【請求項11】
前記ケースの前後動が、モータで駆動され、前記モータを、前記ケース位置を感知するセンサで逆回転させ、前記ケースを自動で前後動させることを特徴とする請求項2に記載のスライサー。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか1項のスライサーで、蒸しサツマイモをスライスし、乾燥してなること特徴とする干し芋の製造方法。
【請求項13】
前記蒸しサツマイモが、皮付きでスライスされ、皮付きのまま乾燥されて皮付き干し芋となることを特徴とする請求項12に記載の干し芋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、肉など、薄片化を必要とする食材、その他材料である被処理材をスライスするスライサーに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、例えば、ポテトチップス用であったり、各種野菜用であったり(特許文献1)、肉などの被処理材の薄片装置として、種々の構造のスライサーが開発、流通している。しかしながら、これらは、特許文献1では、硬めの野菜に向くが、軟状物のスライスには向かない。
【0003】
軟状物の被処理材として、例えば、干し芋の原料である蒸しサツマイモがある。干し芋の原料である蒸しサツマイモのスライスは、従来から複数本張られたワイヤに、人が手で押し当ててスライスしていた。そのため、切断面は粗い仕上がりであった。
【0004】
また、干し芋の原料である蒸しサツマイモでは、軟状で、皮付きではスライスできないため、サツマイモを蒸し処理後、皮むき作業が必要である。さらに、ワイヤでスライスした場合には、スライス片に分離する作業も必要である。加えて、はぎ取られた皮の処理、発酵処理、加熱処理にも時間と費用が掛かる。その結果、従来のワイヤを用いた蒸しサツマイモのスライスは、多工程で、人件費が掛かり、最終製品である干し芋も高いものになっているのが現状である。
【0005】
また、干し芋製造作業は、多工程で、人件費が嵩んでいる一方で、季節労働であり、農業人口の減少から、その時期だけの作業員の確保も困難になってきている。干し芋の原料である蒸しサツマイモの機械式スライサーは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−86970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、野菜、肉など、薄片化を必要とする食材、その他材料である被処理材をスライスするスライサーであって、特に軟状物、例えば蒸しサツマイモのスライスに好適で、スライス面がキレイに仕上がるスライサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、
(1)
少なくとも、回転する第一、第二プーリーと、前記第一、第二プーリーに掛けられ回転する、輪状で全周縁が刃である環状刃と、前記環状刃の環内側に位置し、被処理材が載置される第一ベルトコンベアとからなり、
前記第一ベルトコンベアのベルトの上面と前記環状刃との間隙が被処理材のスライス厚であって、
前記被処理材とともに前記第一ベルトコンベアのベルトが連動して前後動し、前記被処理材を前記環状刃に当てて、前記被処理材をスライスすることを特徴とするスライサー。
(2)
前記第一ベルトコンベアのベルトに固定され、底部が開口し、内部に被処理材を収納し、前記環状刃に前記被処理材を当てるよう、前後動可能なケースを備え、前記被処理材とともに前記第一ベルトコンベアのベルトと前記ケースが連動して前後動することを特徴とする(1)に記載のスライサー。
(3)
前記環状刃の上方に配置され、前記環状刃を上方より押さえる上プレートと、前記環状刃の下方に配置され、前記環状刃を下方より押さえる下プレートとからなる押さえユニットを備え、前記環状刃を前記押さえユニットの上下プレートでサンドして前記環状刃の上下動を抑制することを特徴とする(2)に記載のスライサー。
(4)
前記押さえユニットを挟み、前記第一ベルトコンベアと同じ高さで、前記第一ベルトコンベアの回転に連動し、前記第一ベルトコンベアと同一方向に回転する、第二ベルトコンベアを備えることを特徴とする(3)に記載のスライサー。
(5)
前記第一、第二ベルトコンベアの回転軸を、ベルトで連結する、前記第一、第二ベルトコンベアを同一方向に回転させる連動機構を備えることを特徴とする(4)に記載のスライサー。
(6)
前記第一、第二ベルトコンベアの上方側面に固定した二本の棒と、前記ケースの側面に固定され、前記棒を通す左右の筒とからなるスライド機構を備え、前記ケースを前後動可能とすることを特徴とする(4)又は(5)に記載のスライサー。
(7)
前記第一ベルトコンベアの高さを可変とし、前記第一ベルトコンベアと前記環状刃の間隙を変更することで、被処理物のスライス厚を変更可能としたことを特徴とする(1)に記載のスライサー。
(8)
前記環状刃に水を噴射するノズルを備えることを特徴とする(1)に記載のスライサー。
(9)
前記環状刃の両面に接触し、切断残渣を擦り取るスクレーパーを備えることを特徴とする(1)に記載のスライサー。
(10)
前記ケースに収納される落とし蓋を、前記被処理材に載せて、前記ケースを前後動させて、被処理材をスライスすることを特徴とする(2)に記載のスライサー。
(11)
前記ケースの前後動が、モータで駆動され、前記モータを、前記ケース位置を感知するセンサで逆回転させ、前記ケースを自動で前後動させることを特徴とする(2)に記載のスライサー。
(12)
(1)〜(11)の何れか一のスライサーで、蒸しサツマイモをスライスし、乾燥してなること特徴とする干し芋の製造方法。
(13)
前記蒸しサツマイモが、皮付きでスライスされ、皮付きのまま乾燥されて皮付き干し芋となることを特徴とする(12)に記載の干し芋の製造方法。
とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、環状刃による引き切りによるスライスであるので、スライス面の仕上がりが滑らかでキレイである。また、軟状物のスライス、例えば、皮付き蒸しサツマイモのスライムも可能である。
【0010】
本発明では、皮付き蒸しサツマイモのスライスが可能であるので、蒸しサツマイモから皮を剥ぎ取る、皮むき作業が必要でなく、さらに皮残渣の処理、それらの費用が必要ないことから、工程数を減らし、作業員数、人件費を抑えられ、低コストで低環境負荷の干し芋の製造、販売が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明であるスライサーの(A)正面模式図及び(B)背面写真である。
図2】本発明であるスライサーの平面模式図である。
図3】本発明であるスライサーの左側面模式図である。
図4】本発明であるスライサーを構成する(A)ケース及びベルトコンベアの拡大模式図、(B)刃部の拡大模式図である。
図5】ケース内部の被処理物の環状刃との接触による回転を防止する、落とし蓋(第一形態))の写真である。
図6】ケースの内部構造を示す写真である。
図7】第一ベルトコンベアと第二ベルトコンベアの回転を連動させる連動機構の説明写真である。
図8】スクレーパーの写真である。
図9】被処理物のスライス厚を可変とするためのコンベア高さを調節する高さ調節機構の説明写真である。
図10】本発明であるスライサーの使用状態(正面側斜視)を示す写真である。
図11】本発明であるスライサーで蒸しサツマイモをスライスしているときの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はそれら実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
本発明であるスライサー1は、図1図11に示すように、枠体2と、第一プーリー3と、第二プーリー4と、第一、第二プーリー間の距離を調節する位置調節機構5と、モータ6と、環状刃7と、環状刃7の押さえユニット8と、第一ベルトコンベア9と、第二ベルトコンベア10と、第一、第二ベルトコンベアのベルトの回転を同期させる連動機構11と、ケース13と、ケースを前後スライスさせるスライド機構12と、落とし蓋14と、第一ベルトコンベアの高さを調節する高さ調節機構15と、ノズル17,17aと、スクレーパーユニット18と、第三ベルトコンベア19と、からなり、第一ベルトコンベア9のベルト9a面と環状刃7との間隙が被処理材のスライス厚であって、被処理材とともに第一ベルトコンベア9のベルト9aが連動して前後動し、被処理材を環状刃7に垂直方向から押し当てるとともに、環状刃7が引き切りして、被処理材をスライスする。その結果、スライス面がキレイに仕上がる。軟状物の被処理材であっても、スライスすることができる。
【0014】
枠体2は、四隅の四本の脚2aと、脚2aで支えられた枠2bと、枠2bの上部に載置、固定されたテーブル2cとからなる。脚2aは、図1に示すように、ネジ軸2dに上下動可能に螺合するボルト2eを備え、ネジ軸2dにおけるボルト2eの位置で、枠2bの高さを調節することができる。枠2bは、内部に駆動体を位置させる、骨組みである。テーブル2cには、第一ベルトコンベア9を載置、固定する。また、被処理物のスライス物を落とす開口2fを、環状刃7の下方に備える。
【0015】
第一プーリー3と第二プーリー4とは、枠2bに固定されたモータ6で同一方向に回転駆動し、環状刃7を回転させる。位置調節機構5により第二プーリー4が左右方向に位置移動可能で、それにより、環状刃7のテンションを調節する。位置調節機構5のハンドル5aを回転させると、ネジ軸5bが回転し、その回転で、第二プーリー4が移動する。
【0016】
図1(B)に示すように、モータ6の回転は、モータ6の回転で回転するプーリー6aと第一プーリー3に連結する受けプーリー4aとに掛けられたベルト6bを介して、第一プーリー3に伝達され、第一プーリー3が、環状刃7を介して第二プーリーを回転させる。その結果、第一、第二プーリー3、4は同一方向に回転し、その回転で、環状刃7を回転させる。どのような駆動、駆動伝達機構であっても、環状刃7を回転させるべく、第一、第2プーリー3、4が回転すればよい。
【0017】
環状刃7は、輪状で全周縁が先端に向けテーパーな刃であり、第一プーリー3及び第二プーリー4に掛けられ、それらプーリーの回転で回転し、被処理物を引き切りする。環状刃7は、耐水性、加工性、強度から、素材としてステンレスなどが好適である。環状刃7に被処理物の切断残渣が付着する場合には、それを流し落とすため、環状刃7に水を噴射するノズル17、17aを備えるとよい。ノズル17は、スクレーパーユニット18の前方に位置し、スクレーパーユニットに到達する前の環状刃7に水を噴射すると、切断残渣を水及びスクレーパーで効率的に除去できる。
【0018】
環状刃7の上下動を抑える、押さえユニット8は、図4、6、7に詳しく示したように、テーブル2cに立設する左右の支柱8dと、支柱8dに渡された台8eと、台8eに固定され、環状刃7の内側に位置する下プレート8bと、環状刃7の上に位置し、下プレート8bにボルト8cで固定される上プレート8aとからなる。上下プレート8a、8bが、環状刃7をサンドして、環状刃7の上下方向の揺れ(上下動)を防止する。なお、図6に見えるように、環状刃7の刃先は上下プレート8a、8bのサンド部から突出している。
【0019】
第一ベルトコンベア9は、回転するベルト9aを備え、テーブル2cの上に載置、高さ可変に固定されるとともに、環状刃7の環の内側に位置し、被処理材が載置される。ベルト9aは後述のケース13の箱部13aに連結され、ケース13の前後動に同期して、回転する。第一ベルトコンベア9のベルト9aの上面と環状刃7との間隙が被処理材のスライス厚となる。
【0020】
第一ベルトコンベア9は、高さ調節機構15によって、高さ位置を変更することができる。すなわち、第一ベルトコンベア9の高さ変更することで、被処理物のスライス厚を変更することができる。
【0021】
高さ調節機構15は、図5、9、10に詳しく開示されているように、テーブル2cに固定され、第一ベルトコンベア9の側面に固定されたL字プレート15aと、ボルト15c、15eからなる。L字プレート15aには長孔15b、15dが穿設され、ボルト15c、15eによる固定位置で、第一ベルトコンベア9の高さ位置、前後位置が調節できる。高さ調節機構15は、第一ベルトコンベアの左右に前後二つ、合計四ユニット設けられている。
【0022】
第二ベルトコンベア10は、押さえユニット8を挟み、第一ベルトコンベア9と同じ高さで、第一ベルトコンベア9の回転に連動し、連動機構11によって、第一ベルトコンベア9と同一方向に回転する。
【0023】
連動機構11は、図4、7に詳しく開示したように、第一、第二ベルトコンベア9、10の回転軸9b、10bをベルト11aで連結し、第一ベルトコンベア9のベルト9aの回転を、第二ベルトコンベアに伝達させ、それぞれ同一方向に回転させる。より詳しくは、軸9bには歯車11dが、軸10bにはプーリー11eが取り付けられ、それらにベルト11aが掛けられ、支柱8dに固定した回転する軸11b、11cでベルト11aにテンションを付与し、滑り留め機能を付加する。ベルトは、滑らないよう、歯車11dに嵌合する凹凸を備えたベルト11aとした。
【0024】
ケース13は、第一ベルトコンベア9のベルト9aに固定され、底部が開口し、内部に被処理材を収納し、環状刃7に被処理材を当てるよう、前後動する。図9に示すように、ケース13と第一ベルトコンベア9のベルト9aとの連結は、ベルト9aに固定され、箱部13aに固定される連結部材13cを介して行われている。
【0025】
ケース13は、より詳しくは、図6、9、に示すように、ベルト9aに固定される連結部材13cと、連結部材13cに固定される内部空洞で、底部に開口した箱部13aと、箱部13aの上方手前側に設けられた取っ手13b(図5のように、前後にそれぞれ設けてもよい)と、反環状刃7側の側壁から下向き斜めに取り付けた板状の返し13dとからなる。返しは、箱部13a内部に収納された被処理物の箱部13aとベルト9aとの隙間への嵌り込みを防ぐ。
【0026】
ケース13、第一ベルトコンベア、第二ベルトコンベア10が同一方向に、回転することで、被処理物のスムーズな移動を可能にする。
【0027】
ケース13は、スライド機構12で安定的に前後動することができる。スライド機構12は、テーブル2cの開口を跨ぎ、テーブル2cに立設する四本の支柱12cと、第一、第二ベルトコンベア9、10の上方側面で、左右の支柱12c間に渡された左右二本の棒12a、12bと、ケース13の箱部13aの左右側面に固定され、左右の棒12a、12bをそれぞれ通す左右二ずつの筒12d、12eとからなる。
【0028】
取っ手13bをもって、ケース13を前後動させることができ、この前後動に、第一、第二ベルトコンベア9、10のベルト9a、10aの回転が同期し、ケース13の前後動に伴い、被処理物が環状刃7に当たり、第一ベルトコンベア9のベルト9aと環状刃7の隙間の距離と同じ厚みでスライスされる。
【0029】
落とし蓋14は、被処理物の回転を防止する重りであり、図5図11に示すように、ケース13の箱部13a内に落とし込まれる。図11に示す落とし蓋14dは、単なる板の重りである。図5に示す落とし蓋14は、天板14aと、天板14aに取り付けた出し入れに使用する取っ手14bと、天板14aの前後、左右に取り付け、箱部13aの上端に係止される係止部14cと、天板14aに固定され、伸びる方向にバネ付勢を与える複数本のバネと、バネの先端に固定された重り板とからなる。なお、バネと重り板は、図5において、箱部13a内で目視できない。
【0030】
バネの先端に重り板を設けることで、被処理物が不定形であっても、重り板が任意に傾斜しつつ、被処理物に重り板の重りと、バネ付勢による圧を均一に与え、被処理物の回転を防止して、スムーズなスライスを可能にする。
【0031】
スクレーパーユニット18は、図8に詳細に示すように、環状刃7から切断残渣を擦り取るものであり、上下ユニット18c、18dからなり、それぞれ、環状刃7の表(外側)、裏(内側)面から、切断残渣を擦り取る。
【0032】
上ユニット18cは、枠2bから突出した軸18aと、軸18aに固定された板18bと、板18bから突出した軸18gと、軸18gに回動可能で取り付けられ、一端が環状刃7に当接するスクレーパー18hと、スクレーパー18hの他端と板18bから突出ブロックに固定された伸縮棒18eと、伸縮棒18eに嵌められ、スクレーパー18hを環状刃7に当接する方向にバネ付勢を与えるバネ18fとからなり、スクレーパー18hで切断残渣を掻き取る。下ユニット18dも同様である。
【0033】
第三ベルトコンベア19は、図3図11に示すように、先端部がテーブル2cの開口の下付近に位置し、環状刃7でスライスされ、テーブル2cの開口から落下する被処理物のスライスを受け止め、容器などに移送する。
【0034】
図11は、干し芋の原料である軟状の蒸しサツマイモ20(皮なし)をスライスしているときの写真である。本発明の環状刃7でスライスしたスライスサツマイモ20aは、軟状物である蒸しサツマイモ20をスライスしたものであり、その表面は滑らかの切断面となっている。なお、データは示さないが、皮付きの蒸しサツマイモであっても、皮付きのままキレイにスライスされ、そのスライス面も滑らかで、皮付き干し芋の製造も可能である。
【実施例2】
【0035】
次に、ケース13を自動で、前後動させる、本発明の他の実施形態のスライサーについて説明する。
【0036】
ケース13の前後動を、モータで駆動するためには、モータ6或いは別添のモータと、第一ベルトコンベア9又は第二ベルトコンベア10の何れかの軸(9b、9c、10b、10c)とをベルトで連絡し、駆動を軸に伝達すればよい。例えば、軸9bを延長し、その先端にギアを設け、そのギアにモータの駆動をベルトを介して伝達することで、ベルトコンベアの回転を自動化することができる。
【0037】
第一ベルトコンベア9又は第二ベルトコンベア10の何れかの軸がモータで回転すれば、連動機構11で、第一ベルトコンベア9、第二ベルトコンベア10とは回転が同期し、ケース13は第一ベルトコンベア9のベルト9aとともに前後動する。
【0038】
ケース13を前後動させるモータ制御は、例えば、ケースの前後の先端位置に、ケース13の有無を感知するセンサを設け、センサの感知シグナルにより、モータの回転方向を逆転させることで実現する。それにより、自動で、ケース13を前後動させることができ、ケース13の前後道を自動化することで、一層の経費削減が可能になる。
【符号の説明】
【0039】
1 スライサー
2 枠体
2a 脚
2b 枠
2c テーブル
2d 軸
2e ボルト
2f 開口
3 第一プーリー
4 第二プーリー
4a プーリー
5 位置調節機構
5a ハンドル
5b ネジ軸
6 モータ
6a プーリー
6b ベルト
7 環状刃
8 押さえユニット
8a 上プレート
8b 下プレート
8c ボルト
8d 支柱
8e 台
9 第一ベルトコンベア
9a ベルト
9b 軸
9c 軸
10 第二ベルトコンベア
10a ベルト
10b 軸
10c 軸
11 連動機構
11a ベルト
11b 軸
11c 軸
11d 歯車
11e プーリー
12 スライド機構
12a 棒
12b 棒
12c 支柱
12d 筒
12e 筒
13 ケース
13a 箱部
13b 取っ手
13c 連結部材
14 落とし蓋
14a 天板
14b 取っ手
14c 係止部
14d 落とし蓋
15 高さ調節機構
15a L字プレート
15b 長孔
15c ボルト
15d 長孔
15e ボルト
17 ノズル
17a ノズル
18 スクレーパーユニット
18a 軸
18b 板
18c 上ユニット
18d 下ユニット
18e 伸縮棒
18f バネ
18g 軸
18h スクレーパー
19 第三ベルトコンベア
20 蒸しサツマイモ
20a スライスサツマイモ
【要約】
【課題】野菜、肉など、薄片化を必要とする食材、その他材料である被処理材をスライスするスライサーであって、特に軟状物、例えば蒸しサツマイモのスライスに好適で、スライス面がキレイに仕上がるスライサーを提供する。
【解決手段】少なくとも、回転する第一、第二プーリーと、前記第一、第二プーリーに掛けられ回転する、輪状で全周縁が刃である環状刃と、
前記環状刃の環内側に位置し、被処理材が載置される第一ベルトコンベアとからなり、前記第一ベルトコンベアのベルトの上面と前記環状刃との間隙が被処理材のスライス厚であって、前記被処理材とともに前記第一ベルトコンベアのベルトが連動して前後動し、前記被処理材を前記環状刃に当てて、前記被処理材をスライスすることを特徴とするスライサーの構成とした。
【選択図】図1
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