特許第6090894号(P6090894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6090894
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】多重ガーゼ織物
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/00 20060101AFI20170227BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   D03D15/00 Z
   D03D11/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-572350(P2016-572350)
(86)(22)【出願日】2016年9月6日
(86)【国際出願番号】JP2016076212
【審査請求日】2016年12月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399095232
【氏名又は名称】内野株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】穂積 秀一
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/092652(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/097784(WO,A1)
【文献】 特開2005−330613(JP,A)
【文献】 特許第5971743(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に相当する第1ガーゼ組織、裏面に相当する第2ガーゼ組織および中間層に相当する第3ガーゼ組織を含む複数のガーゼ組織から構成される多重ガーゼ織物であって、
前記第1ガーゼ組織と前記第2ガーゼ組織とは、直接的及び/又は間接的に、結ばれてなり、
前記第1ガーゼ組織は、
経糸または緯糸の一方に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、
経糸または緯糸の他方に、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて
形成され、
前記第2ガーゼ組織は、
経糸または緯糸の一方に、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、
経糸または緯糸の他方に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて
形成され、
前記第3ガーゼ組織は、
経糸に、撚り係数が3.3以上の第5撚糸を用い、
緯糸に、撚り係数が3.3以上の第6撚糸を用いて
形成される
ことを特徴とする多重ガーゼ織物。
【請求項2】
前記第1ガーゼ組織にて、
前記第1撚糸は、20番手〜60番手であって、インチ当たり25本以上60本以下の密度であり、
前記第2撚糸は、20番手〜60番手であって、インチ当たり25本以上60本以下の密度であり、
前記第2ガーゼ組織にて、
前記第3撚糸は、20番手〜60番手であって、インチ当たり25本以上60本以下の密度であり、
前記第4撚糸は、20番手〜60番手であって、インチ当たり25本以上60本以下の密度である
ことを特徴とする請求項1記載の多重ガーゼ織物。
【請求項3】
前記第1ガーゼ組織にて、
前記第2撚糸は、前記第1撚糸より、太番手であり、
前記第2ガーゼ組織にて、
前記第4撚糸は、前記第3撚糸より、太番手である
ことを特徴とする請求項1記載の多重ガーゼ織物。
【請求項4】
前記第1ガーゼ組織にて、
前記第2撚糸はN(Nは2以上の整数)本の第1撚糸の一方側を通過したのち、1本の第1撚糸の他方側を通過するように配置され、
前記第2撚糸の露出頻度が多い側が表面に配置され、
前記第2ガーゼ組織にて、
前記第4撚糸はN(Nは2以上の整数)本の第3撚糸の一方側を通過したのち、1本の第3撚糸の他方側を通過するように配置され、
前記第4撚糸の露出頻度が多い側が裏面に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の多重ガーゼ織物。
【請求項5】
表面に相当する第1ガーゼ組織、裏面に相当する第2ガーゼ組織および中間層に相当する第3ガーゼ組織を含む複数のガーゼ組織から構成される多重ガーゼ織物であって、
前記第1ガーゼ組織と前記第2ガーゼ組織とは、直接的及び/又は間接的に、結ばれてなり、
前記第1ガーゼ組織は、
経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、
緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて
形成され、
前記第2ガーゼ組織は、
緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、
経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて
形成され、
前記第3ガーゼ組織は、
経糸に、撚り係数が3.3以上の第5撚糸を用い、
緯糸に、撚り係数が3.3以上の第6撚糸を用いて
形成される
ことを特徴とする多重ガーゼ織物。
【請求項6】
表面に相当する第1ガーゼ組織および裏面に相当する第2ガーゼ組織から構成される二重ガーゼ織物であって、
前記第1ガーゼ組織と前記第2ガーゼ組織とは、結ばれてなり、
前記第1ガーゼ組織は、
経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、
緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて
形成され、
前記第2ガーゼ組織は、
緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、
経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて
形成される
ことを特徴とする二重ガーゼ織物。
【請求項7】
表面に相当する第1ガーゼ組織、裏面に相当する第2ガーゼ組織および中間層に相当する第3ガーゼ組織を含む複数のガーゼ組織から構成される多重ガーゼ織物であって、
前記第1ガーゼ組織と前記第2ガーゼ組織とは、直接的及び/又は間接的に、結ばれてなり、
前記第1ガーゼ組織は、
経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、
緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて
形成され、
前記第2ガーゼ組織は、
経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、
緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて
形成され、
前記第3ガーゼ組織は、
経糸に、撚り係数が3.3以上の第5撚糸を用い、
緯糸に、撚り係数が3.3以上の第6撚糸を用いて
形成される
ことを特徴とする多重ガーゼ織物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7いずれかの多重ガーゼ織物により縫製されてなる
ことを特徴とする衣類。
【請求項9】
請求項1〜請求項7いずれかの多重ガーゼ織物により縫製されてなる
ことを特徴とする寝具類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多重ガーゼ織物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガーゼ織物は、比較的細い糸により粗く織られた平織物である。
【0003】
一般に、密実(中空でない)な綿撚糸を用いる。綿ガーゼ織物には、1重織物、2重織物、3重織物などがある。1重ガーゼ織物は、例えば医療用途や布巾に用いられている。2重ガーゼ織物は、例えば被服やハンカチ等に用いられている。綿糸(主に40英式番手の単糸)が用いられている。3重ガーゼ織物は、例えばタオルや寝装品に用いられている。綿糸が用いられている。1重の組織において、インチ当たりのタテヨコの糸本数の合計が50本〜120本の密度であることが一般的である。50本未満の密度だとガーゼを構成しない。120本超の高密度のものは、一般にガーゼと呼ばない。
【0004】
図14は、一般的な2重ガーゼ織物の断面図である。2重ガーゼ織物は、表面ガーゼ組織と裏面ガーゼ組織とを備える。ガーゼ組織は経糸(縦糸)と緯糸(横糸)とから構成される。経糸供給に合わせて、緯糸を打ち込むことにより、平織構造のガーゼ組織が形成される。表面ガーゼ組織形成および裏面ガーゼ組織形成とともに、適宜、表面ガーゼ組織と裏面ガーゼ組織とを接結する。図示のように経糸により接結部を形成しても良いし、緯糸により接結部を形成しても良い。
【0005】
ガーゼは、粗い(糸と糸との間の隙間が大きい)織物である。ガーゼは粗い平織物の為、抜群の通気性と、抜群の軽量性を有する。
【0006】
一方で、ガーゼ織物は保温性に乏しい。多重ガーゼとしても厚みが薄く、保温性を期待できない。充分な保温性を確保しようと重ねる枚数を増やすと、軽量性が著しく損なわれる。
【0007】
ガーゼは、粗い織物であるため、弾力性や柔らかさが乏しい。
【0008】
ガーゼは、粗い織物である結果、例えば衣服として用いると肌が透けてしまう。なお、糸の太さを太くしたり、高密度にすると、防透性は向上するが、ガーゼの特徴である通気性や軽量性が著しく損なわれる。
【0009】
以上の理由から、従来のガーゼ織物の諸性能では、衣類や寝具類の生地に適用するには不十分であり改善の余地があると考えられた。
【0010】
ところで、パイルタオルでは、無撚糸パイルや弱撚糸パイルが用いられることもある。
【0011】
一般的に用いられる撚糸は、綿花の繊維を撚って形成される。これに対し、無撚糸は、撚糸を撚り戻し、撚りのない状態になるように形成される。
【0012】
無撚糸は、ふんわりとふくらみ、繊維間に空気をたくさん含んでいる。したがって、無撚糸パイルは、保温性や柔らかな肌触りを実現する。
【0013】
弱撚糸は、無撚糸同様に撚糸を撚り戻すが、撚りが残るように形成される。弱撚糸も無撚糸に近似する性質を有する。
【0014】
発明者は、無撚糸または弱撚糸をガーゼ織物に適用することを検討した。無撚糸または弱撚糸によるガーゼ組織は、通気性や軽量性を維持しながら、撚糸によるガーゼ組織に比べてボリューム感を有する。その結果、保温性、柔らかな肌触り、防透性が向上する。
【0015】
しかしながら、一般に、無撚糸や弱撚糸は撚糸に比べ強度が劣る。したがって、無撚糸のみで構成されたガーゼ組織は、強度が劣る。弱撚糸のみで構成されたガーゼ組織も同様である。多重ガーゼとしても著しい強度向上にならない。
【0016】
そこで、撚糸により構成されたガーゼ組織と無撚糸(または弱撚糸)により構成されたガーゼ組織とを接結する多重ガーゼ織物に適用することを検討した。
【0017】
撚糸により構成されたガーゼ組織が強度を維持するともに、無撚糸(または弱撚糸)により構成されたガーゼ組織は、保温性、柔らかな肌触り、防透性を有する。すなわち、組み合わせにより相互の長所を併せ持つ。
【0018】
発明者は、関連発明として、例えば特許文献1および特許文献2に係る多重ガーゼ織物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許5435607号公報
【特許文献2】特許5534383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特許文献1および特許文献2に係る多重ガーゼ織物(関連発明)は、表面(裏面)に無撚糸(または弱撚糸)が露出することから、特に、柔らかな肌触りの点で優れている。また、無撚糸(または弱撚糸)と撚糸との収縮差に起因して皺が発生する。皺の嵩高性の点でも、柔らかな肌触りが向上する。
【0021】
一方、表面(裏面)に無撚糸(または弱撚糸)が露出することから、一般的な多重ガーゼに比べて摩擦強度の点で劣る。なお、撚糸により構成されたガーゼ組織は生地強度維持に寄与するが、中間層に用いられるため摩擦強度向上に寄与しない。
【0022】
また、一般に、無撚糸(または弱撚糸)により構成されたガーゼ組織の製造は、撚糸により構成されたガーゼ組織に比べて、数工程多く経ている。その結果、関連発明に係る多重ガーゼ織物は、一般的な多重ガーゼに比べて、コストが増加する。
【0023】
従って、本発明が解決しようとする課題は、関連発明に係る多重ガーゼ織物に準ずる肌触り感(柔らかさ)を維持しながら、摩擦強度に優れたガーゼ織物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決する発明の一態様は、表面に相当する第1ガーゼ組織、裏面に相当する第2ガーゼ組織および中間層に相当する第3ガーゼ組織を含む複数のガーゼ組織から構成される多重ガーゼ織物である。前記第1ガーゼ組織と前記第2ガーゼ組織とは、直接的及び/又は間接的に、結ばれてなる。前記第1ガーゼ組織は、経糸または緯糸の一方に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、経糸または緯糸の他方に、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて形成される。前記第2ガーゼ組織は、経糸または緯糸の一方に、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、経糸または緯糸の他方に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて形成される。前記第3ガーゼ組織は、経糸に、撚り係数が3.3以上の第5撚糸を用い、緯糸に、撚り係数が3.3以上の第6撚糸を用いて形成される。
【0025】
上記発明の態様において、好ましくは、前記第1ガーゼ組織にて、前記第1撚糸は、20番手〜60番手であって、インチ当たり25本以上60本以下の密度であり、前記第2撚糸は、20番手〜60番手であって、インチ当たり25本以上60本以下の密度である。前記第2ガーゼ組織にて、前記第3撚糸は、20番手〜60番手であって、インチ当たり25本以上60本以下の密度であり、前記第4撚糸は、20番手〜60番手であって、インチ当たり25本以上60本以下の密度である。
【0026】
上記発明の態様において、好ましくは、前記第1ガーゼ組織にて、前記第2撚糸は、前記第1撚糸より、太番手である。前記第2ガーゼ組織にて、前記第4撚糸は、前記第3撚糸より、太番手である。
【0027】
上記発明の態様において、さらに好ましくは、前記第1ガーゼ組織にて、前記第2撚糸はN(Nは2以上の整数)本の第1撚糸の一方側を通過したのち、1本の第1撚糸の他方側を通過するように配置され、前記第2撚糸の露出頻度が多い側が表面に配置される。前記第2ガーゼ組織にて、前記第4撚糸はN(Nは2以上の整数)本の第3撚糸の一方側を通過したのち、1本の第3撚糸の他方側を通過するように配置され、前記第4撚糸の露出頻度が多い側が裏面に配置される。
【0028】
上記課題を解決する発明の一態様は、表面に相当する第1ガーゼ組織、裏面に相当する第2ガーゼ組織および中間層に相当する第3ガーゼ組織を含む複数のガーゼ組織から構成される多重ガーゼ織物である。前記第1ガーゼ組織と前記第2ガーゼ組織とは、直接的及び/又は間接的に、結ばれてなる。前記第1ガーゼ組織は、経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて形成される。前記第2ガーゼ組織は、緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて形成される。前記第3ガーゼ組織は、経糸に、撚り係数が3.3以上の第5撚糸を用い、緯糸に、撚り係数が3.3以上の第6撚糸を用いて形成される。
【0029】
上記課題を解決する発明の一態様は、表面に相当する第1ガーゼ組織および裏面に相当する第2ガーゼ組織から構成される二重ガーゼ織物である。前記第1ガーゼ組織と前記第2ガーゼ組織とは、直接的及び/又は間接的に、結ばれてなる。前記第1ガーゼ組織は、経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて形成される。前記第2ガーゼ組織は、緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて形成される。
【0030】
上記課題を解決する発明の一態様は、表面に相当する第1ガーゼ組織、裏面に相当する第2ガーゼ組織および中間層に相当する第3ガーゼ組織を含む複数のガーゼ組織から構成される多重ガーゼ織物である。前記第1ガーゼ組織と前記第2ガーゼ組織とは、直接的及び/又は間接的に、結ばれてなる。前記第1ガーゼ組織は、経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて形成される。前記第2ガーゼ組織は、経糸(または緯糸)に、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、緯糸(または経糸)に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて形成される。前記第3ガーゼ組織は、経糸に、撚り係数が3.3以上の第5撚糸を用い、緯糸に、撚り係数が3.3以上の第6撚糸を用いて形成される。
【0031】
上記課題を解決する発明の一態様は、前記多重ガーゼ織物により縫製されてなる衣類である。
【0032】
上記課題を解決する発明の一態様は、前記多重ガーゼ織物により縫製されてなる寝具類である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の多重ガーゼ織物は、関連発明に係る多重ガーゼ織物に準ずる肌触り感(柔らかさ)を維持する。
【0034】
本発明の多重ガーゼ織物は、関連発明に係る多重ガーゼ織物に比べて、摩擦強度に優れている。
【0035】
本発明の多重ガーゼ織物は、関連発明に係る多重ガーゼ織物に比べて、製造コストが低い。
【0036】
その結果、衣類や寝具類の生地に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】第1実施形態に係る多重ガーゼ織物の概念図
図2】第1実施形態に係る多重ガーゼ織物の断面図
図3】比較例1に係る平織構造
図4】本実施形態に係る平織構造
図5】肌触り感維持の原理を補足する図
図6】摩擦強度向上の原理を補足する図
図7】摩擦強度向上の原理を別の方法で説明する図
図8】綾織構造の概略を示す図
図9】朱子織構造の概略を示す図
図10】第2実施形態に係る多重ガーゼ織物の概念図
図11】第2実施形態に係る多重ガーゼ織物の断面図
図12】第3実施形態に係る多重ガーゼ織物の概念図
図13】第3実施形態に係る多重ガーゼ織物の断面図
図14】一般的な2重ガーゼ織物の断面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
<第1実施形態>
〜構成〜
図1は、本発明の第1実施形態に係る多重ガーゼ織物の概念図である。ただし、簡略化のため、接結構造については図示省略している。図2は、第1実施形態に係る多重ガーゼ織物の断面図である。本発明はN(Nは2以上の整数)重ガーゼ織物であるが、発明を理解しやすいように、3重ガーゼ織物について説明する。
【0039】
ガーゼ織物は、表面層ガーゼG1と、裏面層ガーゼG2と、中間層ガーゼG3とを備える。
【0040】
表面層ガーゼG1と裏面層ガーゼG2とは中間層ガーゼG3を通過して直接的に接結されていてもよいし、表面層ガーゼG1および裏面層ガーゼG2が中間層ガーゼG3を介して間接的に接結されていてもよい。
【0041】
また、図示のように経糸により接結部を形成しても良いし、緯糸により接結部を形成しても良い。
【0042】
表面層ガーゼG1は、経糸(縦糸)1,2と緯糸(横糸)A,Bとから構成される。経糸1,2に緯糸A,Bを供給して交差させる平織構造が形成される。
【0043】
経糸1,2には、撚り係数が3.3以上の撚糸(第1撚糸)を用いる。緯糸A,Bには、撚り係数が3.0以下の撚糸(第2撚糸)を用いる。
【0044】
なお、撚り係数が3.3以上の撚糸は一般的に用いられる撚糸である。撚り係数が3.0以下の撚糸は弱撚糸と呼ばれる。さらに、撚り係数が1.0以下の撚糸は無撚糸に含まれる。
【0045】
一般的な撚糸として撚り係数が3.5以上の撚糸を用い、弱撚糸として撚り係数が2.5以下の撚糸を用いると、後述する効果はより顕著になる。
【0046】
撚り係数とは、糸の太さを考慮した撚りの強弱の指標である。数字の大きい方ほど強い撚りを示す。糸番手の平方根に撚り係数を掛けた値が、1インチ当たりの撚り数となる。
【0047】
裏面層ガーゼG2は、経糸3,4と緯糸C,Dとから構成される。経糸3,4に緯糸C,Dを供給して交差させる平織構造が形成される。
【0048】
緯糸C,Dには、撚り係数が3.3以上の撚糸(第3撚糸)を用いる。経糸3,4には、撚り係数が3.0以下の撚糸(第4撚糸)を用いる。
【0049】
すなわち、表面層ガーゼG1と裏面層ガーゼG2とが積層された時、経糸1,2(第1撚糸)と緯糸C,D(第3撚糸)とが直交する関係にある。
【0050】
また、第1撚糸と第3撚糸は同じ撚り係数(一般的な撚糸)でもよいし、一般的な撚糸となる範囲で異なっていてもよい。第2撚糸と第4撚糸は同じ撚り係数(弱撚糸または無撚糸)でもよいし、弱撚糸または無撚糸となる範囲で異なっていてもよい。
【0051】
中間層ガーゼG3は、経糸5,6と緯糸E,Fとから構成される。経糸5,6に緯糸E,Fを供給して交差させる平織構造が形成される。
【0052】
経糸5,6には、撚り係数が3.3以上の撚糸(第5撚糸)を用いる。緯糸E,Fには、撚り係数が3.3以上の撚糸(第6撚糸)を用いる。すなわち、中間層ガーゼG3は、従来より一般に用いられているガーゼ組織である。
【0053】
また、第5撚糸と第6撚糸は同じ撚り係数(一般的な撚糸)でもよいし、一般的な撚糸となる範囲で異なっていてもよい。さらに、第5撚糸および第6撚糸は第1撚糸および第3撚糸と同じ撚り係数(一般的な撚糸)でもよいし、一般的な撚糸となる範囲で異なっていてもよい。
【0054】
すなわち、表面層ガーゼG1は緯糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用い、裏面層ガーゼG2は経糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用いることを特徴とする。中間層ガーゼG3は、経糸および緯糸とも一般的な撚糸からなる。
【0055】
また、第1撚糸〜第6撚糸は、中空糸であってもよいが、密実糸であることがより好ましい。
【0056】
第1撚糸〜第6撚糸は、綿糸であることが好ましいが、レーヨン等植物由来の再生繊維を適用してもよい。
【0057】
次に、表面層ガーゼG1および裏面層ガーゼG2の組織密度について説明する。
【0058】
60番手相当(55〜64番手)(単糸換算)の糸を使用する場合、経糸47本/inch、緯糸40本/inchを基本密度とする。
【0059】
下限としては、経糸30本/inch、緯糸30本/inchとする。下限未満となると、弱撚糸(または無撚糸)が少なすぎて、充分な肌触り感が得られない。組織が粗くなりすぎて弱撚糸(または無撚糸)を拘束する間隔(詳細後述)が長くなる。その結果、大きな弛みが発生し、摩擦強度が大きく低下する。
【0060】
上限としては、経糸60本/inch、緯糸本数60本/inchとする。上限超となると、隣り合った糸との隙間が狭く、弱撚糸(または無撚糸)の膨らみが拘束され、ふんわり感が得られない。さらに、組織が密になりすぎて弱撚糸(または無撚糸)を拘束する間隔が短くなる。その結果、糸の収縮差に起因する嵩高性が発生しにくい。これらにより、充分な肌触り感が得られない。
【0061】
実用的には、経糸40〜50本/inch、緯糸40〜50本/inchであることが好ましい。
【0062】
50番手相当(45〜54番手)(単糸換算)の糸を使用する場合、経糸43本/inch、緯糸40本/inchを基本密度とする。
【0063】
下限としては、経糸27本/inch、緯糸27本/inchとする。上限としては、経糸55本/inch、緯糸本数55本/inchとする。
【0064】
実用的には、経糸35〜50本/inch、緯糸35〜50本/inchであることが好ましい。
【0065】
40番手相当(35〜44番手)(単糸換算)の糸を使用する場合、経糸40本/inch、緯糸40本/inchを基本密度とする。
【0066】
下限としては、経糸25本/inch、緯糸25本/inchとする。上限としては、経糸50本/inch、緯糸本数50本/inchとする。
【0067】
実用的には、経糸30〜45本/inch、緯糸30〜45本/inchであることが好ましい。
【0068】
中間層ガーゼG3の組織密度について説明する。
【0069】
60番手相当(55〜64番手)(単糸換算)の糸を使用する場合、経糸本数:47本/inch、緯糸本数40本/inchを基本とする。
【0070】
下限としては、経糸30本/inch、緯糸30本/inchとする。下限未満となると、組織が粗くなりすぎて生地強度が不足する。
【0071】
上限としては、経糸60本/inch、緯糸本数60本/inchとする。上限超となると、隣り合った糸との隙間が狭く、生地が硬くなる。なお、中間層ガーゼG3の生地が硬くなっても直接的に表面的な肌触り感(柔らかさ)に影響を与えるものではないが、中間層ガーゼG3の生地が硬くなると間接的に全体的な感覚に悪影響を与える。
【0072】
実用的には、経糸40〜50本/inch、緯糸40〜50本/inchであることが好ましい。
【0073】
50番手相当(45〜54番手)(単糸換算)の糸を使用する場合、経糸43本/inch、緯糸40本/inchを基本密度とする。
【0074】
下限としては、経糸27本/inch、緯糸27本/inchとする。上限としては、経糸55本/inch、緯糸本数55本/inchとする。
【0075】
実用的には、経糸35〜50本/inch、緯糸35〜50本/inchであることが好ましい。
【0076】
40番手相当(35〜44番手)(単糸換算)の糸を使用する場合、経糸40本/inch、緯糸40本/inchを基本密度とする。
【0077】
下限としては、経糸25本/inch、緯糸25本/inchとする。上限としては、経糸50本/inch、緯糸本数50本/inchとする。
【0078】
実用的には、経糸30〜45本/inch、緯糸30〜45本/inchであることが好ましい。
【0079】
なお、第1撚糸〜第6撚糸は、同番手であってもよいが、異なっていてもよい。
【0080】
また、図1および図2における例示では、第1撚糸〜第6撚糸は同番手である前提である。弱撚糸(無撚糸)は同番手の撚糸に比べて膨らみ太くなったように見える。したがって、第2撚糸および第4撚糸は太く図示されている。
【0081】
〜肌触り感の検討〜
関連発明に係る三重ガーゼ織物(比較例1)の表面層ガーゼと比較することにより、本実施形態の係る三重ガーゼ織物の表面層ガーゼの肌触り感について検討する。なお、裏面層ガーゼにおいても同様である。
【0082】
図3は比較例1に係る平織構造を示し、図4は本実施形態に係る平織構造を示す。平織構造の拡大写真に撚糸外縁を追記したものである。両者を比較することにより、肌触り感維持の原理を説明する。図中に密度を示す矢印を追記する。
【0083】
比較例1では、経糸、緯糸ともに弱撚糸(または無撚糸)が用いられている。これに対し、本実施形態では、緯糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用いられている。
【0084】
ところで、ガーゼ組織は、経糸に緯糸を供給することにより形成される。ガーゼ組織が形成された後、洗浄や染色等の水分を含ませる工程を経て、乾燥させると、ガーゼ組織は収縮する。そのとき、撚糸と弱撚糸(または無撚糸)では収縮率が異なる。すなわち、撚糸は収縮しやすいのに対し、弱撚糸(または無撚糸)は収縮しにくい。
【0085】
従って、比較例1では、経糸、緯糸ともに収縮しにくいのに対し、本実施形態では、経糸は収縮しやすく緯糸は収縮しにくい。経糸が収縮する結果、緯糸の密度は若干設計より高密度となる。弱撚糸(または無撚糸)が高密度となることで、肌触り感を維持する。
【0086】
また、表面層ガーゼと中間層ガーゼとの間でも収縮差がある。表面層ガーゼの緯糸(弱撚糸または無撚糸)は、中間層ガーゼの緯糸(一般撚糸)の収縮に追従できずに、緯糸による皺が発生する。なお、表面層ガーゼの経糸(一般撚糸)は、中間層ガーゼの経糸(一般撚糸)と同様に収縮するため、経糸による皺は発生しない。
【0087】
図5は、肌触り感維持の原理を補足する図である。層間の収縮差に起因して、表面層ガーゼの緯糸(弱撚糸または無撚糸)は浮いた状態になる。一方で、収縮差がない表面層ガーゼの経糸(一般撚糸)は埋没する(沈む)。
【0088】
このように、柔らかな肌触りを有する弱撚糸(または無撚糸)のみが露出する。硬い肌触りを有する一般撚糸は露出せず肌に接触しない。これにより、比較例1に準ずる肌触り感(柔らかさ)を維持できる。
【0089】
なお、肌触り感は主観に拠るところが多く、客観的な評価が難しい。図3の画像解析に基づいて、弱撚糸(または無撚糸)の露出率を評価した。本実施形態は比較例1に準じて露出していることがわかる。これにより、本実施形態は比較例1に準ずる肌触り感(柔らかさ)を維持していることが裏付けられた。
【0090】
〜摩擦抵抗の検討〜
関連発明に係る三重ガーゼ織物(比較例1)の表面層ガーゼと比較することにより、本実施形態の係る三重ガーゼ織物の表面層ガーゼの摩擦抵抗について検討する。なお、裏面層ガーゼにおいても同様である。
【0091】
図3図4とを比較することにより、摩擦強度向上の原理を説明する。図中に交差点での拘束および弱撚糸(または無撚糸)の変動を示す矢印を追記する。
【0092】
比較例1では、経糸、緯糸ともに弱撚糸(または無撚糸)が用いられている。これに対し、本実施形態では、緯糸のみ弱撚糸(または無撚糸)が用いられている。
【0093】
上記の通り、比較例1に比べて本実施形態では、弱撚糸(または無撚糸)である経糸が高密度となる。すなわち、比較例1に比べて本実施形態では、弱撚糸(または無撚糸)である緯糸が高密度になる。すなわち、隣り合った糸との隙間が狭くなり、緯糸直交方向の変動幅を抑制し、変動を拘束する。
【0094】
図6は、摩擦強度向上の原理を補足する図である。比較例1では、緯糸も弱撚糸(または無撚糸)であるため、交差点での拘束が弱い。一方、本実施形態では上記の通り、経糸(一般撚糸)は露出している周囲の緯糸(弱撚糸または無撚糸)の中に沈み、交差点にて緯糸(弱撚糸または無撚糸)を拘束する。
【0095】
本実施形態では、緯糸(弱撚糸または無撚糸)を拘束する作用により、変動を抑制し、比較例1に比べ摩擦強度が向上する。
【0096】
図7は、摩擦強度向上の原理を別の方法で説明する図である。本実施形態では上記の通り、通常時(外力なし)では、経糸(一般撚糸)は露出している周囲の緯糸(弱撚糸または無撚糸)の中に沈み、露出しない。したがって、経糸(一般撚糸)は摩擦強度向上に寄与しないものとも思われていた。
【0097】
しかしながら、摩擦抵抗が問題になるときは、衣類が肌や椅子・机などと接触し、外力が作用する場合である。外力が作用すると埋没していた経糸(一般撚糸)が表面に露出して、摩擦抵抗として作用する。
【0098】
このように本実施形態では、拘束作用および外圧作用との相乗効果により、比較例1と比べて格段の摩擦強度が向上している。
【0099】
参考に、本願実施形態および比較例1に加えて、従来より一般に用いられている三重ガーゼ織物(比較例2)の摩擦強度を比較したところ、本願実施形態は、単純に比較例1と比較例2との平均的な摩擦抵抗を有するのではなく、比較例2に準ずる摩擦強度を有していることを確認した。
【0100】
〜効果〜
上記の通り、本実施形態は、比較例1に準ずる肌触り感を維持しながら、比較例1に比べて摩擦強度に優れている。
【0101】
本実施形態では、表面層ガーゼおよび裏面層ガーゼにおいて経糸または緯糸の一方のみに緯糸のみ弱撚糸(または無撚糸)が用いられていることにより、比較例1に比べて低コストで製造できる。
【0102】
本実施形態では、表面層ガーゼG1と裏面層ガーゼG2とが積層された時、経糸1,2(第1撚糸)と緯糸C,D(第3撚糸)とが直交する関係にある。一般撚糸同士が直交する位置関係は、従来より一般に用いられているガーゼ組織に相当する。つまり、中間層ガーゼG3に加えて、経糸1,2(第1撚糸)と緯糸C,D(第3撚糸)との組み合わせにより生地強度を確保する。その結果、本実施形態は、比較例1に比べて生地強度に優れている。
【0103】
〜変形例〜
本実施形態では、表面層ガーゼG1は緯糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用い、裏面層ガーゼG2は経糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用いることを特徴とする。
【0104】
これに対し、表面層ガーゼG1は経糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用い、裏面層ガーゼG2は緯糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用いる構成でもよい。
【0105】
本実施形態では、第1撚糸〜第6撚糸は同番手である前提である。これに対し、表面層ガーゼG1において、第2撚糸(弱撚糸または無撚糸)が第1撚糸(一般撚糸)より太番手であってもよい。また表面層ガーゼG2において、第4撚糸(弱撚糸または無撚糸)が第3撚糸(一般撚糸)より太番手であってもよい。
【0106】
弱撚糸(または無撚糸)をより太番手とすることで、肌触り感(柔らかさ)がより顕著になる。
【0107】
本実施形態では、表面層ガーゼおよび裏面層ガーゼにおいて、平織構造としている。これに対し、綾織構造または朱子織構造としてもよい。
【0108】
図8は、綾織構造の概略を示す図である。図示左側は綾織構造の構造図であり、図示右側は綾織構造の組織図である。
【0109】
綾織には、経糸が2本の緯糸を通過した後に、1本の緯糸の下を通過することを繰り返すのが三つ綾(図示)と、経糸が3本の緯糸を通過した後に、1本の緯糸の下を通過することを繰り返す四つ綾がある。交差点が規則的に浮き斜めに並ぶ。
【0110】
たとえば、表面層ガーゼG1において、第2撚糸は2本の第1撚糸の上側を通過したのち、1本の第1撚糸の下側を通過するように配置され、これが繰り返される。表面層ガーゼG1において、第2撚糸の露出頻度が多い側が表面に配置される。
【0111】
同様に、第4撚糸は2本の第3撚糸の下側を通過したのち、1本の第3撚糸の上側を通過するように配置され、これが繰り返される。裏面層ガーゼG2において、第4撚糸の露出頻度が多い側が表面に配置される。
【0112】
弱撚糸(または無撚糸)の露出頻度が増えることにより、肌触り感(柔らかさ)がより顕著になる。
【0113】
図9は、朱子織構造の概略を示す図である。図示左側は朱子織構造の構造図であり、図示右側は朱子織構造の組織図である。
【0114】
朱子織構造は、5本以上経糸と5本以上緯糸の組み合わせの繰り返しから構成される。経糸か緯糸のいずれかが多く浮いている。
【0115】
たとえば、表面層ガーゼG1において、第2撚糸は4本の第1撚糸の上側を通過したのち、1本の第1撚糸の下側を通過するように配置され、これが繰り返される。表面層ガーゼG1において、第2撚糸の露出頻度が多い側が表面に配置される。
【0116】
同様に、第4撚糸は4本の第3撚糸の下側を通過したのち、1本の第3撚糸の上側を通過するように配置され、これが繰り返される。裏面層ガーゼG2において、第4撚糸の露出頻度が多い側が表面に配置される。
【0117】
弱撚糸(または無撚糸)の露出頻度が増えることにより、肌触り感(柔らかさ)がより顕著になる。
【0118】
<第2実施形態>
第1実施形態に係る多重ガーゼ織物は3重であったが、2重ガーゼとすることもできる。
【0119】
図10は、第2実施形態に係る多重ガーゼ織物の概念図である。ただし、簡略化のため、接結構造については図示省略している。図11は、第2実施形態に係る多重ガーゼ織物の断面図である。
【0120】
第1実施形態では、表面層ガーゼG1と裏面層ガーゼG2とが積層された時、経糸1,2(第1撚糸)と緯糸C,D(第3撚糸)とが直交する関係にある。一般撚糸同士が直交する位置関係は、従来より一般に用いられているガーゼ組織に相当する。つまり、中間層ガーゼG3に準ずる生地強度を期待できる。
【0121】
したがって、第1実施形態ほどの生地強度を求められない場合は、中間層ガーゼG3を省略できる。つまり2重ガーゼとすることができる。
【0122】
<第3実施形態>
〜概要〜
第1実施形態では、表面層ガーゼG1と裏面層ガーゼG2とが積層された時、経糸1,2(第1撚糸)と緯糸C,D(第3撚糸)とが直交する関係にあるが、同一方向としてもよい。
【0123】
第1実施形態では、中間層ガーゼG3に加えて、経糸1,2(第1撚糸)と緯糸C,D(第3撚糸)との組み合わせにより生地強度を確保している。一方、第1実施形態ほどの生地強度を求められない場合は、中間層ガーゼG3のみで生地強度を確保してもよい。
【0124】
〜構成〜
【0125】
図12は、第3実施形態に係る多重ガーゼ織物の概念図である。ただし、簡略化のため、接結構造については図示省略している。図13は、第3実施形態に係る多重ガーゼ織物の断面図である。
【0126】
ガーゼ織物は、表面層ガーゼG1と、裏面層ガーゼG2と、中間層ガーゼG3とを備える。
【0127】
表面層ガーゼG1は、経糸(縦糸)1,2と緯糸(横糸)A,Bとから構成される。経糸1,2に緯糸A,Bを供給して交差させる平織構造が形成される。
【0128】
経糸1,2には、撚り係数が3.3以上の撚糸(第1撚糸)を用いる。緯糸A,Bには、撚り係数が3.0以下の撚糸(第2撚糸)を用いる。
【0129】
裏面層ガーゼG2は、経糸3,4と緯糸C,Dとから構成される。経糸3,4に緯糸C,Dを供給して交差させる平織構造が形成される。
【0130】
経糸3,4には、撚り係数が3.3以上の撚糸(第3撚糸)を用いる。緯糸C,Dには、撚り係数が3.0以下の撚糸(第4撚糸)を用いる。
【0131】
すなわち、表面層ガーゼG1と裏面層ガーゼG2とが積層された時、経糸1,2(第1撚糸)と経糸3,4(第3撚糸)とが同一方向になる関係にある。
【0132】
中間層ガーゼG3は、経糸5,6と緯糸E,Fとから構成される。経糸5,6に緯糸E,Fを供給して交差させる平織構造が形成される。
【0133】
経糸5,6には、撚り係数が3.3以上の撚糸(第5撚糸)を用いる。緯糸E,Fには、撚り係数が3.3以上の撚糸(第6撚糸)を用いる。すなわち、中間層ガーゼG3は、従来より一般に用いられているガーゼ組織である。
【0134】
〜変形例〜
本実施形態では、表面層ガーゼG1は緯糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用い、裏面層ガーゼG2は緯糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用いることを特徴とする。
【0135】
これに対し、表面層ガーゼG1は経糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用い、裏面層ガーゼG2は経糸のみ弱撚糸(または無撚糸)を用いる構成でもよい。
【0136】
また、本実施形態に係る多重ガーゼ織物は3重であったが、2重ガーゼとすることもできる。特に、生地強度が要求されない箇所は、2重ガーゼでもよい。
【0137】
<多重ガーゼ織物の適用例>
本願発明の多重ガーゼ織物は、比較例1に係る多重ガーゼ織物の特徴、すなわち、通気性、軽量性、嵩高性、保温性、柔らかな肌触り、防透性を維持しながら、比較例1に比べて、優れた摩擦強度、生地強度を有する。また製造コストが低い。
【0138】
その結果、ガーゼタオルやハンカチはもちろん、被服(ガウン、パジャマ、シャツ、パンツ、マフラー、乳幼児用品等)や寝装具類(シーツ、ブランケット、枕カバーなど)の生地として好適である。
【符号の説明】
【0139】
G1 表面層ガーゼ
G2 裏面層ガーゼ
G3 中間層ガーゼ
1,2 表面層ガーゼ経糸
3,4 裏面層ガーゼ経糸
5,6 中間層ガーゼ経糸
A,B 表面層ガーゼ緯糸
C,D 裏面層ガーゼ緯糸
E,F 中間層ガーゼ緯糸
【要約】
無撚糸(または弱撚糸)多重ガーゼに準ずる肌触り感(柔らかさ)を維持しながら、摩擦強度に優れた多重ガーゼ織物を提供する。多重ガーゼ織物は、表面に相当する第1ガーゼ組織G1、裏面に相当する第2ガーゼ組織G2および中間層に相当する第3ガーゼ組織G3を含む複数のガーゼ組織から構成される。第1ガーゼ組織G1と第2ガーゼ組織G2とは、直接的及び/又は間接的に結ばれる。第1ガーゼ組織G1は、経糸1,2に、撚り係数が3.3以上の第1撚糸を用い、緯糸A,Bに、撚り係数が3.0以下の第2撚糸を用いて形成される。第2ガーゼ組織G2は、緯糸C,Dに、撚り係数が3.3以上の第3撚糸を用い、経糸3,4に、撚り係数が3.0以下の第4撚糸を用いて形成される。第3ガーゼ組織G3は、経糸5,6に、撚り係数が3.3以上の第5撚糸を用い、緯糸E,Fに、撚り係数が3.3以上の第6撚糸を用いて形成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14