特許第6090902号(P6090902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090902
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20170227BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20170227BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20170227BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F15/02 L
   H01F27/24 E
   H01F37/00 A
   H01F37/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-229759(P2012-229759)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-82358(P2014-82358A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】NECトーキン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】山家 孝志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 有希
【審査官】 佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−260405(JP,A)
【文献】 特開2010−129986(JP,A)
【文献】 特開2012−146753(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0102591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−21/12、27/00、27/02、27/06、
27/08、27/23−27/26、27/29、27/36、
27/42、30/00−38/12、38/16、38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる巻軸の周りに巻線を巻回してなるコイルと、前記コイルに囲まれるコイル内空間において前記コイルの内周側面に配置される高磁気抵抗部材と、前記コイル及び前記高磁気抵抗部材を包囲する磁芯とを備えるコイル部品であって、
前記高磁気抵抗部材は、前記内周側面の上縁から前記コイル内空間において前記巻軸に向かって延びる第1面と、前記内周側面の下縁から前記コイル内空間において前記巻軸に向かって延びる第2面とを有しており、
前記第1面及び前記第2面は、前記コイル内空間の上端よりも下方且つ前記コイル内空間の下端よりも上方に延びている
コイル部品。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル部品であって、
前記コイル内空間は、当該コイル内空間を前記上下方向に2等分してなる上側コイル内空間と下側コイル内空間とを有しており、
前記高磁気抵抗部材は、前記上側コイル内空間において前記内周側面から前記巻軸に向かって突出する上側高磁気抵抗部材と、前記上側高磁気抵抗部材と前記上下方向と直交する水平方向に凹状の谷間を形成するようにして前記下側コイル内空間において前記内周側面から前記巻軸に向かって突出する下側高磁気抵抗部材とを有しており、
前記第1面は、前記上側高磁気抵抗部材の一部に形成されており、
前記第2面は、前記下側高磁気抵抗部材の一部に形成されている
コイル部品。
【請求項3】
請求項2に記載のコイル部品であって、
前記第1面上に形成され且つ前記第1面から前記巻軸に向かって突出する上側補助高磁気抵抗部材と、前記第2面上に形成され且つ前記第2面から前記巻軸に向かって突出する下側補助高磁気抵抗部材とを更に備える
コイル部品。
【請求項4】
請求項3に記載のコイル部品であって、
前記上側補助高磁気抵抗部材は、前記内周側面の前記上縁を含むように配置されており、
前記下側補助高磁気抵抗部材は、前記内周側面の前記下縁を含むように配置されている、
コイル部品。
【請求項5】
請求項2に記載のコイル部品であって、
前記上側高磁気抵抗部材の前記水平方向における頂点に形成され且つ前記上側高磁気抵抗部材の前記頂点から前記巻軸に向かって突出する上側補助高磁気抵抗部材と、前記下側高磁気抵抗部材の前記水平方向における頂点に形成され且つ前記下側高磁気抵抗部材の前記頂点から前記巻軸に向かって突出する下側補助高磁気抵抗部材とを更に備える
コイル部品。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のコイル部品であって、
前記上側補助高磁気抵抗部材は、前記上側高磁気抵抗部材から斜め上方に突出しており、
前記下側補助高磁気抵抗部材は、前記下側高磁気抵抗部材から斜め下方に突出している
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載のコイル部品であって、
前記内周側面から前記高磁気抵抗部材の先端までの距離は、前記内周側面から前記補助高磁気抵抗部材の先端までの距離の1/5以上、1/2以下である
コイル部品。
【請求項8】
請求項乃至請求項7のいずれかに記載のコイル部品であって、
前記上側補助高磁気抵抗部材及び前記下側補助高磁気抵抗部材は、テーパ状に形成されている
コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関し、特に磁芯内部に高磁気抵抗部材を備えるコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
高磁気抵抗部材を磁路の一部に挿入し、高磁界中におけるコイル部品のインダクタンスの飽和を低減する技術としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−4957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている技術は、磁束が高磁気抵抗部材を避けるようにして進む性質を利用し、コイル近傍に磁束が集中してしまうことを防ぐことによって、磁束を均一化し、インダクタンスの飽和を防ぐこととしている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている構成では、磁束の均一化を図ることはできても、交流銅損が著しく悪化するという問題がある。
【0006】
本発明は、磁束の均一化と、交流銅損の悪化の防止とを両立可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、交流銅損の悪化の原因として、磁束が高磁気抵抗部材を避けるようにして進むために、その磁束の一部がコイル側に入り込み、コイルを構成する導線内に渦電流を発生させて交流銅損が悪化していることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、第1のコイル部品として、
上下方向に延びる巻軸の周りに巻線を巻回してなるコイルと、前記コイルに囲まれるコイル内空間において前記コイルの内周側面に配置される高磁気抵抗部材と、前記コイル及び前記高磁気抵抗部材を包囲する磁芯とを備えるコイル部品であって、
前記高磁気抵抗部材は、前記内周側面の上縁から前記コイル内空間において前記巻軸に向かって延びる第1面と、前記内周側面の下縁から前記コイル内空間において前記巻軸に向かって延びる第2面とを有しており、
前記第1面及び前記第2面は、前記コイル内空間の上端よりも下方且つ前記コイル内空間の下端よりも上方に延びている
コイル部品が得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第2のコイル部品として、第1のコイル部品であって、
前記コイル内空間は、当該コイル内空間を前記上下方向に2等分してなる上側コイル内空間と下側コイル内空間とを有しており、
前記高磁気抵抗部材は、前記上側コイル内空間において前記内周側面から前記巻軸に向かって突出する上側高磁気抵抗部材と、前記上側高磁気抵抗部材と前記上下方向と直交する水平方向に凹状の谷間を形成するようにして前記下側コイル内空間において前記内周側面から前記巻軸に向かって突出する下側高磁気抵抗部材とを有しており、
前記第1面は、前記上側高磁気抵抗部材の一部に形成されており、
前記第2面は、前記下側高磁気抵抗部材の一部に形成されている
コイル部品が得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第3のコイル部品として、第2のコイル部品であって、
前記第1面上に形成され且つ前記第1面から前記巻軸に向かって突出する上側補助高磁気抵抗部材と、前記第2面上に形成され且つ前記第2面から前記巻軸に向かって突出する下側補助高磁気抵抗部材とを更に備える
コイル部品が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第4のコイル部品として、第3のコイル部品であって、
前記上側補助高磁気抵抗部材は、前記内周側面の前記上縁を含むように配置されており、
前記下側補助高磁気抵抗部材は、前記内周側面の前記下縁を含むように配置されている、
コイル部品が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第5のコイル部品として、第2のコイル部品であって、
前記上側高磁気抵抗部材の前記水平方向における頂点に形成され且つ前記上側高磁気抵抗部材の前記頂点から前記巻軸に向かって突出する上側補助高磁気抵抗部材と、前記下側高磁気抵抗部材の前記水平方向における頂点に形成され且つ前記下側高磁気抵抗部材の前記頂点から前記巻軸に向かって突出する下側補助高磁気抵抗部材とを更に備える
コイル部品が得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第6のコイル部品として、第3乃至第5のいずれかのコイル部品であって、
前記上側補助高磁気抵抗部材は、前記上側高磁気抵抗部材から斜め上方に突出しており、
前記下側補助高磁気抵抗部材は、前記下側高磁気抵抗部材から斜め下方に突出している
コイル部品が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第7のコイル部品として、第3乃至第6のいずれかのコイル部品であって、
前記内周側面から前記高磁気抵抗部材の先端までの距離は、前記内周側面から前記補助高磁気抵抗部材の先端までの距離の1/5以上、1/2以下である
コイル部品が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第8のコイル部品として、第乃至第7のいずれかのコイル部品であって
前記上側補助高磁気抵抗部材及び前記下側補助高磁気抵抗部材は、テーパ状に形成されている
コイル部品が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第9のコイル部品として、
上下方向に延びる巻軸の周りに巻線を巻回してなるコイルと、前記コイルの上端から前記巻軸に向かって斜め上方に突出する上側高磁気抵抗部材と、前記コイルの下端から前記巻軸に向かって斜め下方に突出する下側高磁気抵抗部材と、前記コイル、前記上側高磁気抵抗部材及び前記下側高磁気抵抗部材を包囲する磁芯とを備える
コイル部品が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、第10のコイル部品として、第9のコイル部品であって、
前記上側高磁気抵抗部材は、前記コイルの前記上端と、前記コイルの内周側面との境界部分を含むように配置されており、
前記下側高磁気抵抗部材は、前記コイルの前記下端と、前記内周側面との境界部分を含むように配置されている
コイル部品が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、第11のコイル部品として、第9又は第10のコイル部品であって、
前記上側高磁気抵抗部材及び前記下側高磁気抵抗部材は、テーパ状に形成されている
コイル部品が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高磁気抵抗部材の有する第1面及び第2面によって、コイルへの磁束の入り込みを防ぐことができることから、コイル部品における交流銅損を低減させることができる。更に、補助磁気抵抗部材を更に備えることにより、コイル周辺の磁束の密集を防ぐことによって磁束の均一化を図ることができる。即ち、本発明によるコイル部品によれば、交流銅損と鉄損の両方を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態によるコイル部品に用いられるコイルと、コイルカバーとを示す斜視図である。
図2図1のコイルカバーのII−II線に沿った断面図である。
図3図1のコイル及びコイルカバーの複合体と、ケースとを示す斜視図である。
図4図3の複合体をケースに収容し、磁性体を充填した状態を示す上面図である。
図5図4のコイル部品のV−V線に沿った断面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態によるコイル部品の断面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態によるコイル部品の断面図である。
図8】本発明の第4の実施の形態によるコイル部品の断面図である。
図9】本発明の第5の実施の形態によるコイル部品の断面図である。
図10図5のコイル部品の変形例を表す断面図である。
図11図5のコイル部品の他の変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
図1図3図4及び図5に示されるように、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品1(図4及び図5参照)は、コイル10と、コイルカバー30と、磁芯40と、これらを収容するケース60とを備えている。
【0022】
図1に示されるように、コイル10は、上下方向に延びる巻軸Tの周りに巻線(平角導線)102を縦巻に巻回してなるものである。巻軸Tの周りに巻回された巻線102の引出し部104(104a)は、他方の引出し部104(104b)と並ぶように、コイル10の外側面に沿って引き回されている。
【0023】
図1及び図2に示されるように、コイルカバー30は、コイル10を収容するための収容部302と、収容部302内の中央に配置された円筒部304とを備えている。収容部302の外壁にはコイル10の引出し部104aを引き回すためのスペースを確保するための引出し部ガイド306が設けられている。コイルカバー30は、エポキシ樹脂等の絶縁体で形成される。
【0024】
円筒部304の内周には、高磁気抵抗部材20がコイルカバー30と一体に形成されている。図2に詳しく示されるように、高磁気抵抗部材20は、上側高磁気抵抗部材202と、下側高磁気抵抗部材204とを有している。上側高磁気抵抗部材202と、下側高磁気抵抗部材204とは、夫々、円筒部304の内周から巻軸Tに向けて山状に形成されており、これらの間には、水平方向(コイル10の径方向)に凹状の凹部(谷間)230が形成されている。本実施の形態による高磁気抵抗部材20は、円筒部304の内周全域に形成されているが、円筒部304における内周のうち20%以下の範囲内で高磁気抵抗部材20を形成しないこととしてもよい(この場合、高磁気抵抗部材20を上から見た場合に略C字状形状を呈することとなる)。
【0025】
本実施の形態による高磁気抵抗部材20について更に詳しく説明する。図5に示されるように、コイル10は、当該コイル10に囲まれるコイル内空間130を有しており、当該コイル内空間130は、上下に2等分してなる上側コイル内空間136と下側コイル内空間138とからなる。コイルカバー30にコイル10を収納した状態において(図5に示される状態において)、上側高磁気抵抗部材202は、上側コイル内空間136において、コイル10の内周側面110から巻軸Tに向かって水平方向に沿って突出するように配置される。同様に、下側高磁気抵抗部材204は、下側コイル内空間138において、コイル10の内周側面110から巻軸Tに向かって水平方向に沿って突出するように配置される。ここで、上側高磁気抵抗部材202は、コイル10の内周側面110の上側の縁部112から巻軸Tに向かって延びる第1面210を有しており、下側高磁気抵抗部材204は、コイル10の内周側面110の下側の縁部112から巻軸Tに向かって延びる第2面220を有している。本実施の形態による第1面210及び第2面220は、コイル内空間130の上端132よりも下方且つ下端134よりも上方に延びている。換言すると、第1面210及び第2面220は、上端132及び下端134と平行な方向(即ち、水平方向)には延びていない。この結果、図5の高磁気抵抗部材20断面形状からも明らかであるように、上側高磁気抵抗部材202及び下側高磁気抵抗部材204のコイル10の内周側面110からの厚さ(水平方向における厚さ)は、コイル10の縁部112より徐々に大きなものとなっていく。更に、上側高磁気抵抗部材202及び下側高磁気抵抗部材204の間に形成された凹部230によって、コイル10の上下方向における中点に近づくにつれて内周側面110からの厚さ(水平方向における厚さ)は小さくなっていく。
【0026】
本実施の形態による高磁気抵抗部材20には、低透磁率(μ≦10)の部材が使用される。具体的にはエポキシ樹脂、LCP、6ナイロン、PPS、PBT等の耐熱性のあるプラスチック等を用いることができ、フィラーによって熱伝導率が、0.6W/mK以上、望ましくは0.8W/mK以上のものが適している。本実施の形態においては、μ=1のエポキシ樹脂を用いている。なお、本実施の形態によるコイルカバー30と高磁気抵抗部材20は、一体に成型してなるものであったが、夫々を別体として成型し、後から接着等することとしてもよい。なお、本実施の形態による高磁気抵抗部材20(上側高磁気抵抗部材202及び下側高磁気抵抗部材204)は、水平方向に関して対称な形状である。
【0027】
第1の実施の形態によるコイル部品1は、次のようにして製造される。まず、図1に示されるように、コイル10をコイルカバー30内に収容させる。ここで、巻線102のズレや震動等を防ぐために、コイル10とコイルカバー30との間にはエポキシ樹脂等の絶縁体が充填される。エポキシ樹脂には液状で低粘度であるといった要求があるため、添加剤、硬化剤、触媒との相溶性、保存安定性も具体的なエポキシ樹脂選定において考慮されるべき重要な特性である。そういったことを考慮すると、絶縁体の主剤としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、多官能型等のエポキシ樹脂を用いることができ、硬化剤としては芳香族ポリアミン系、カルボン酸無水物系、潜在性硬化剤系のものを用いることができる。本実施例では、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂と無溶剤型低粘度液状芳香族アミンの硬化剤との組合せを使用した。これにより、引出し部104を除くコイル10の全体がコイルカバー30内に埋設される。なお、用いられる樹脂は、例えばシリコーン樹脂のような他の熱硬化性樹脂としても良いし、化学反応性硬化樹脂、紫外線硬化性樹脂、光硬化性樹脂などの熱を加えずとも硬化するような硬化性樹脂であっても良い。
【0028】
このようにして成型されたコイル10とコイルカバー30とからなる複合体は、図3に示されるように、ケース60に収容され、上記複合体と当該ケース60との間を満たすようにして、樹脂と磁性体粉末との混成物をケース60内に流し込み、樹脂を硬化させることで本実施の形態による磁芯40とする。
【0029】
ここで、本実施の形態による磁芯40を構成する磁性体粉末は軟磁性粉末、詳しくは、Fe系の軟磁性金属粉末である。更に具体的には、軟磁性金属粉末はFe−Si系粉末、Fe−Si−Al系粉末、Fe−Ni系粉末、及びFe系アモルファス粉末からなる群から選択された粉末である。ここで、Fe−Si系粉末における平均Si含有量は好ましくは0.0重量%以上11.0重量%以下である。また、Fe−Si−Al系粉末における平均Si含有量は好ましくは0.0重量%以上11.0重量%以下であり、平均Al含有量は好ましくは0.0重量%以上7.0重量%以下である。また、Fe−Ni系粉末における平均Ni含有量は好ましくは30.0重量%以上85.0重量%以下である。
【0030】
また、混合される樹脂としては、上述したように、コイル10とコイルカバー30との間に充填されることの可能な樹脂と同様のものを用いることとしてよい。
【0031】
以上のような構成によれば、高磁気抵抗部材20が、コイル10周囲の磁束に対してコイル10近傍から遠ざけるように作用し、これにより、磁束密度Bの均一化を図り鉄損を低下させることができる。更に、高磁気抵抗部材20に設けられた第1面210及び第2面220によって、磁束がコイル10の巻線102間に入り込むことが防止され、交流銅損を低下させることができる。即ち、本実施の形態によるコイル部品1によれば、鉄損と交流銅損の両方について特性を向上させることができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図6に示されるように、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品1aは、高磁気抵抗部材20aと、補助高磁気抵抗部材50を備えている点で、第1の実施の形態によるコイル部品1(図5参照)とは異なっており、他の部材については、第1の実施の形態によるコイル部品1と同様のものを用いることができる。以下の説明においては、特に、第1の実施の形態によるコイル部品1との差異について言及する。
【0033】
図6に示されるように、コイルカバー30に形成された高磁気抵抗部材20aは、上側高磁気抵抗部材202aと、下側高磁気抵抗部材204aと有している。上側高磁気抵抗部材202a及び下側高磁気抵抗部材204aは、第1の実施の形態によるコイル部品1(図5参照)とほぼ同じ形状を有しており、水平方向における頂点の夫々に、上側補助高磁気抵抗部材502及び下側補助高磁気抵抗部材504が形成されている点のみ異なっている。上側補助高磁気抵抗部材502は、上側高磁気抵抗部材202aの頂点から巻軸Tに向かって水平方向に突出している。一方、下側補助高磁気抵抗部材504は、下側高磁気抵抗部材204aの頂点から巻軸Tに向かって水平方向に突出している。本実施の形態において、コイル10の内周側面110から高磁気抵抗部材20の先端までの距離L1は、コイル10の内周側面110から補助高磁気抵抗部材50の先端までの距離L2の1/5以上、1/2以下である。特に、距離L1が距離L2の1/4であることが最も望ましい。
【0034】
(第3の実施の形態)
図7に示されるように、本発明の第3の実施の形態によるコイル部品1bは、第2の実施の形態によるコイル部品1a(図6参照)とは、補助高磁気抵抗部材50aの形状及び突出方向が異なっており、他の部材については、第2の実施の形態によるコイル部品1aと同様のものを用いることができる。以下、特に、第2の実施の形態によるコイル部品1aとの差異について言及する。
【0035】
本実施の形態による補助高磁気抵抗部材50aは、高磁気抵抗部材20bの水平方向における頂点から突出しているものである。より詳しくは、上側補助高磁気抵抗部材502aは、上側高磁気抵抗部材202bの頂点から巻軸Tに向かって斜め上方に突出している。一方、下側補助高磁気抵抗部材504aは、下側高磁気抵抗部材204bの頂点から巻軸Tに向かって斜め下方に突出している。なお、上側補助高磁気抵抗部材502a及び下側補助高磁気抵抗部材504aは、テーパ状に形成されている。テーパ状に形成するにあたっては、部材の強度を考慮すれば、先端厚みが0.3mm以上であることが好ましい。なお、本実施の形態においても、コイル10の内周側面110から高磁気抵抗部材20bの先端までの距離L3は、コイル10の内周側面110から補助高磁気抵抗部材50aの先端までの距離L4の1/5以上、1/2以下である。特に、距離L3が距離L4の1/4であることが最も望ましい。
【0036】
(第4の実施の形態)
図8に示されるように、本発明の第4の実施の形態によるコイル部品1cは、補助高磁気抵抗部材50bを備えている点で、第1の実施の形態によるコイル部品1(図5参照)とは異なっており、他の部材については、第1の実施の形態によるコイル部品1と同様のものを用いることができる。以下、特に、第1の実施の形態によるコイル部品1との差異について言及する。
【0037】
本実施の形態による補助高磁気抵抗部材50bは、高磁気抵抗部材20cの第1面210c及び第2面220cの夫々に形成されている。より、詳しくは、上側補助高磁気抵抗部材502bは、第1面210cに形成されており、コイル10の内周側面110の上側の縁部112を含むように配置されている。また上側補助高磁気抵抗部材502bは、コイル内空間130の上端132に沿って(水平方向に)巻軸Tに向かって突出し、テーパ状に形成されている。一方、下側補助高磁気抵抗部材504bは、第2面220cに形成され、コイル10の内周側面110の下側の縁部112を含むように配置されている。また下側補助高磁気抵抗部材504bは、コイル内空間130の下端134に沿って(水平方向に)巻軸Tに向かって突出し、テーパ状に形成されている。
【0038】
(第5の実施の形態)
図9に示されるように、本発明の第5の実施の形態によるコイル部品1dは、コイル10の上端12及び下端14に高磁気抵抗部材20dを備えている。詳しくは、コイル部品1dは、コイル10の上端12から巻軸Tに向かって斜め上方に突出する上側高磁気抵抗部材202dと、コイル10の下端14から巻軸Tに向かって斜め下方に突出する下側高磁気抵抗部材204dとを備えている。換言すれば、上側高磁気抵抗部材202dはコイル内空間130の上端132よりも上方に向かって、一方、下側高磁気抵抗部材204dはコイル内空間130の下端134よりも下方に向かって突出している。このように、各高磁気抵抗部材20dが斜め上方(又は斜め下方)に突出した状態において、当該高磁気抵抗部材20dが埋設されるようにして磁芯40が成型されるため、ケース60aは、第1の実施の形態によるコイル部品1(図5参照)のケース60よりも特に上下方向に大きい。本実施の形態における高磁気抵抗部材20dは、コイル10の内周側面110の縁部112を含むように配置されている。また、高磁気抵抗部材20dは、共に、テーパ状に形成されているコイル部品が得られる。本実施の形態においては、上側高磁気抵抗部材202dは、コイルカバー30(図1等参照)ではなく、コイルキャップ32に形成されている。コイルキャップ32は、コイル10の上端12及び下端14にかぶせるようにしてコイル10に取付けられる。本実施の形態においては、コイルキャップ32を取り付けた状態でコイル10を絶縁体で包囲している。
【0039】
以下、上述した第1乃至第5の実施の形態によるコイル部品1、1a〜1dについて、高磁気抵抗部材を用いないコイル部品について特性の比較を行った。特性の評価にはAnsoft社の有限要素法解析ソフトであるMaxwellを用い、磁場解析から算出した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかであるように、高磁気抵抗部材を用いないコイル部品と比較した場合、第1乃至第5の実施の形態によるコイル部品1、1a〜1dのいずれにおいても、交流銅損及び鉄損の両方が低下していることがわかる。
【0042】
なお、上述した高磁気抵抗部材における第1面及び第2面を有する構造であれば、例えば、図10に示されるように、高磁気抵抗部材20eを、第1面210e及び第2面220eからなる1つの山状に形成することとしてもよい。また、第1の実施の形態による高磁気抵抗部材20(図5参照)の凹部230を埋めた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1、1a〜1d コイル部品
10 コイル
12 上端
14 下端
102 巻線
104 引出し部
110 内周側面
112 縁部
120 端部
130 コイル内空間
132 上端
134 下端
136 上側コイル内空間
138 下側コイル内空間
20、20a〜20f 高磁気抵抗部材
202、202a〜202d 上側高磁気抵抗部材
204、204a〜204d 下側高磁気抵抗部材
210 第1面
220 第2面
230 凹部
30 コイルカバー
32 コイルキャップ
302 収容部
304 円筒部
306 引出し部ガイド
40 磁芯
50、50a、50b 補助高磁気抵抗部材
502、502a、502b 上側補助高磁気抵抗部材
504、504a、504b 下側補助高磁気抵抗部材
60、60a ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11