特許第6090913号(P6090913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6090913ひび割れ封止方法、及びコンクリート構造体の補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090913
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】ひび割れ封止方法、及びコンクリート構造体の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20170227BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   E01D22/00 B
   E01D1/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-21182(P2013-21182)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-152464(P2014-152464A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】藤原 保久
(72)【発明者】
【氏名】安藤 直文
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 裕司
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−119391(JP,A)
【文献】 特開2009−102892(JP,A)
【文献】 特開2007−262737(JP,A)
【文献】 特開2007−187970(JP,A)
【文献】 特開2002−038724(JP,A)
【文献】 米国特許第05753340(US,A)
【文献】 特開2007−315030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪穴の内壁面に生じたひび割れを粘性流体で封止するひび割れ封止方法において、
長尺部材により吊り下げ支持された状態のカメラと、該カメラよりも下方の位置に吊り下げ支持されてなる流体噴射ノズルと、を前記竪穴に挿入し、漸次降ろしていく工程と、
前記カメラにより前記竪穴の内壁面を観察することによりひび割れを発見する工程と、
ひび割れを発見した場合に前記長尺部材を所定量だけ引き上げて前記流体噴射ノズルを該ひび割れに対向するように配置させる工程と、
該流体噴射ノズルから前記ひび割れに向けて粘性流体を噴射させて該ひび割れを封止する工程と、
を備えたことを特徴とするひび割れ封止方法。
【請求項2】
既設のコンクリート構造体を補強する、コンクリート構造体の補強方法において、
該既設のコンクリート構造体に竪穴を穿設する工程と、
該竪穴の内壁面に生じたひび割れを、請求項に記載のひび割れ封止方法によって封止する工程と、
前記コンクリート構造体を補強するための補強材を前記竪穴に挿入する工程と、
硬化型の充填剤を前記竪穴に注入して前記補強材を埋設する工程と、
を備えたことを特徴とする、コンクリート構造体の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 竪穴内のひび割れを粘性流体により封止するひび割れ封止方法、及び、該ひび割れ封止方法を使って既設のコンクリート構造体を補強するコンクリート構造体の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
阪神・淡路大震災以降、既設のコンクリート構造体(例えば、橋脚)の耐震性を強化するために種々の装置や補強方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図3(a) 〜(e) は、既設コンクリート構造体の補強方法の一例を示す断面図である。同図(a) は、コンクリート構造体10に竪穴を穿設する様子を示しており、符号20は、該竪穴を穿設するための穿孔装置を示す。また、同図(b)
は、コンクリート構造体10を補強するための補強材21を竪穴11に挿入する様子を示しており、符号22は、該補強材21の下端部を固定するために竪穴11の底部にモルタルを注入するモルタル注入装置を示す。さらに、同図(c)
は、補強材21を緊張する様子を示しており、符号23は、補強材21を緊張するための緊張装置を示す。またさらに、同図(d) は、硬化型の充填剤24を前記竪穴11に注入して前記補強材21を埋設する様子を示しており、符号25は、該充填剤24を注入する充填剤注入装置を示す。また、同図(e)
は、補強材21の埋設が完了した状態を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−80239号公報
【特許文献2】特開2007−239440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、穿設した穴11の内壁面にひび割れがあると、注入した充填剤24が該ひび割れから漏れ出てしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる ひび割れ封止方法、及びコンクリート構造体の補強方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項に係る発明は、竪穴(11)の内壁面(11a)に生じたひび割れ(11b)を粘性流体(A)で封止するひび割れ封止方法において、
長尺部材(3)により吊り下げ支持された状態のカメラ(2)と、該カメラ(2)よりも下方の位置に吊り下げ支持されてなる流体噴射ノズル(4)と、を前記竪穴(11)に挿入し、漸次降ろしていく工程(矢印B参照)と、
前記カメラ(2)により前記竪穴(11)の内壁面(11a)を観察することによりひび割れ(11b)を発見する工程と、
ひび割れ(11b)を発見した場合に前記長尺部材(3)を所定量だけ引き上げて前記流体噴射ノズル(4)を該ひび割れ(11b)に対向するように配置させる工程と、
該流体噴射ノズル(4)から前記ひび割れ(11b)に向けて粘性流体(A)を噴射させて該ひび割れ(11b)を封止する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項に係る発明は、既設のコンクリート構造体(10)を補強する、コンクリート構造体(10)の補強方法において、
該既設のコンクリート構造体(10)に竪穴(11)を穿設する工程(図2のS1参照)と、
該竪穴(11)の内壁面(11a)に生じたひび割れ(11b)を、請求項1に記載のひび割れ封止方法によって封止する工程(図2のS2参照)と、
前記コンクリート構造体(10)を補強するための補強材(21)を前記竪穴(11)に挿入する工程(図2のS3参照)と、
硬化型の充填剤(24)を前記竪穴(11)に注入して前記補強材(21)を埋設する工程(図2のS4参照)と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び2に係る発明によれば、前記竪穴に注入した充填剤がひび割れから漏れ出てしまうことを回避できる。また、作業者が入ることが出来ないような小径の竪穴であっても、前記カメラによりひび割れの発生箇所を知ることができ、粘性流体によって適確に該ひび割れを封止することが出来る。さらに、前記流体噴射ノズルは前記カメラよりも下方の位置に配置されているので、該流体噴射ノズルから噴射された粘性流体が前記カメラに付着するおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係る流体噴射装置の構成の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明に係るコンクリート構造体の補強方法の一例を示すフローチャート図である。
図3図3は、既設のコンクリート構造体の補強方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1及び図2に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に係る流体噴射装置は、図1に符号1で例示するものであって、
・ カメラ2と、
・ 該カメラ2を吊り下げ支持できるように該カメラ2に連結された長尺部材3と、
・ 該カメラ2よりも下方の位置に吊り下げ支持されていて粘性流体(例えば、モルタルや樹脂やセメントペースト)Aを略水平方向に噴射するように構成された流体噴射ノズル4と、
を備えている。
【0016】
前記流体噴射装置1は、竪穴(既設のコンクリート構造体10に略上下方向に穿設された穴)11の内壁面11aに生じたひび割れ11bを粘性流体Aで封止するために使用することができる。次に、該ひび割れ11bを粘性流体Aで封止するひび割れ封止方法について説明する。本発明に係るひび割れ封止方法は、
・ 前記カメラ2及び前記流体噴射ノズル4(つまり、長尺部材3により吊り下げ支持された状態のカメラ2と、該カメラ2よりも下方の位置に吊り下げ支持されてなる流体噴射ノズル4)を前記竪穴11に挿入し、矢印Bで示すように漸次降ろしていく工程と、
・ 前記カメラ2により前記竪穴11の内壁面11aを観察することによりひび割れ11bを発見する工程と、
・ ひび割れ11bを発見した場合に前記長尺部材3を所定量だけ引き上げて(矢印B参照)前記流体噴射ノズル4の噴射口4aを該ひび割れ11bに対向するように配置させる工程と、
・ 該流体噴射ノズル4から前記ひび割れ11bに向けて粘性流体Aを噴射させて該ひび割れ11bを封止する工程と、
により実施すると良い。なお、粘性流体Aの噴射量は、該流体Aが内壁面11aに薄い膜を張る程度の量にすると良い。また、前記カメラ2はいわゆるライブカメラとして使用し、前記竪穴11の内壁面11aの観察をリアルタイムで行うようにすると良い。さらに、前記カメラ2により観察を行う場合や前記流体噴射ノズル4により粘性流体Aの噴射を行う場合には前記長尺部材3の上方部分を図示の矢印Bのように捻ることによって該カメラ2や該流体噴射ノズル4の方向を変更するようにすると良い。
【0017】
上述の流体噴射装置1を前記ひび割れ封止方法に使用すれば、前記竪穴11に注入した充填剤(図3(d) の符号24参照)がひび割れから漏れ出てしまうことを回避できる。また、作業者が入ることが出来ないような小径の竪穴であっても、前記カメラ2によりひび割れ11bの発生箇所を知ることができ、粘性流体Aによって適確に該ひび割れ11bを封止することが出来る。さらに、前記流体噴射ノズル4は前記カメラ2よりも下方の位置に配置されているので、該流体噴射ノズル4から噴射された粘性流体Aが前記カメラ2に付着するおそれを低減することができる。
【0018】
ここで、前記カメラ2としては、ボアホールカメラに用いるカメラや全方位カメラやWEBカメラ等を挙げることができる。
【0019】
また、該カメラ2に連結される長尺部材3としては種々のものを挙げることができ、例えば、
・ 前記流体噴射ノズル4に接続されていて該流体噴射ノズル4に粘性流体Aを供給するように構成されてなる、可撓性又は非可撓性の管状の部材(つまり、ホースやパイプ)や、
・ 管状でない部材(つまり、ケーブルやワイヤやロープなどの可撓性に富む索条体や、可撓性に富まない棒状体)や、
・ 可撓性に富む部材(管状の部材や管状でない部材)と可撓性に富まない部材(管状の部材や管状でない部材)とを交互に連結したもの
などを挙げることができる。なお、前記長尺部材3に管状の部材を用いる場合は、該管状の長尺部材3を前記カメラ2だけでなく前記流体噴射ノズル4に連結して、該管状の長尺部材3を使って粘性流体を前記流体噴射ノズル4に供給するようにすると良い。また、前記長尺部材3に管状でない部材を用いる場合は、不図示のホースを前記流体噴射ノズル4に連結して粘性流体を供給するようにすると良い。
【0020】
一方、前記流体噴射ノズル4は、その噴射口4aが略水平の方向を向いているものであればどのような形状のものでも良い。また、図1に示す例では、カメラ2及び流体噴射ノズル4の両方が1本の共通の長尺部材3によって吊り下げ支持されているが、もちろんこれに限られるものではなく、前記カメラ2を吊り下げ支持する長尺部材と、前記流体噴射ノズル4を吊り下げ支持する長尺部材とを別の部材にして、該カメラ2及び該流体噴射ノズル4を一緒に上下させるのではなく別々に上下させるようにしても良い。
【0021】
また一方、前記内壁面11aと前記カメラ2との離間距離や、前記内壁面11aと前記流体噴射ノズル4との離間距離を規定するスペーサ部5を設けておいて、該カメラ2や該流体噴射ノズル4が前記竪穴11の中心軸線Cの近傍に位置するようにしておくと良い。なお、図1に示す例では、該スペーサ部5は前記長尺部材3に連結されているが、もちろんこれに限られるものではなく、前記カメラ2に連結しても良く、前記流体噴射ノズル4に連結しても良い。また、このスペーサ部5は、前記カメラ2や前記流体噴射ノズル4の水平位置を規定するように、前記竪穴11の内壁面11aと少なくとも3点で接触するようにすると良い。さらに、図1では、スペーサ部5は上下に(つまり、異なる高さに)2つ設けられているが、もちろんこれに限られるものではなく、3つ以上設けても良く、1つだけ設けても良い。またさらに、該スペーサ部5は、前記流体噴射ノズル4から噴射される粘性流体Aが付着しにくい位置であって、上下動されるカメラ2と干渉しない位置に配置されていると良い。
【0022】
次に、本発明に係るコンクリート構造体の補強方法について説明する。
【0023】
本発明に係るコンクリート構造体の補強方法は、既設のコンクリート構造体(例えば、橋脚)10を補強する方法であって、
・ 該既設のコンクリート構造体10に竪穴11を穿設する工程(図2のS1及び図3(a) 参照)と、
・ 該竪穴11の内壁面11aに生じたひび割れ11bを、上述したひび割れ封止方法によって封止する工程(図2のS2及び図1参照)と、
・ 前記コンクリート構造体10を補強するための補強材21を前記竪穴11に挿入する工程(図2のS3及び図3(b) 参照)と、
・ 硬化型の充填剤24を前記竪穴11に注入して前記補強材21を埋設する工程(図2のS5及び図3(d) 参照)と、
を備えている。なお、図3(b) では補強材21の下端部を固定し、図3(c) では該補強材21を緊張しているが、本発明に係る方法(つまり、既設のコンクリート構造体を補強する方法)において前記補強材21に緊張力を作用させるか否かは必須要件ではない。
【符号の説明】
【0024】
1 流体噴射装置
2 カメラ
3 長尺部材
4 流体噴射ノズル
10 コンクリート構造体
11 竪穴
11a 内壁面
11b ひび割れ
21 補強材
24 充填剤
A 粘性流体
図1
図2
図3