特許第6090920号(P6090920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090920
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】帯電還元水を用いるPCB無害化方法
(51)【国際特許分類】
   A62D 3/115 20070101AFI20170227BHJP
   C02F 1/46 20060101ALI20170227BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20170227BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20170227BHJP
   B01J 23/34 20060101ALI20170227BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20170227BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20170227BHJP
   A62D 101/22 20070101ALN20170227BHJP
【FI】
   A62D3/115
   C02F1/46 Z
   B01D61/14
   B01D61/02
   B01J23/34 M
   B01J35/02 A
   B01J35/10 301G
   A62D101:22
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-88951(P2013-88951)
(22)【出願日】2013年4月20日
(65)【公開番号】特開2014-210120(P2014-210120A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】508171859
【氏名又は名称】株式会社バイオシールドサイエンス
(73)【特許権者】
【識別番号】501101327
【氏名又は名称】澤村 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112173
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 修身
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 進一
(72)【発明者】
【氏名】澤村 聡
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−000781(JP,A)
【文献】 特開平09−140328(JP,A)
【文献】 特開2002−035584(JP,A)
【文献】 特開2002−267135(JP,A)
【文献】 特開2009−079149(JP,A)
【文献】 特開2004−305290(JP,A)
【文献】 特開2002−273431(JP,A)
【文献】 特開平06−228587(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/092448(WO,A1)
【文献】 特開2003−268583(JP,A)
【文献】 特許第5930544(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62D 3/11− 3/115
A62D 3/34
A62D 101/22
B01D 61/02
B01D 61/14
C02F 1/46− 1/461
B01J 23/34
B01J 35/10
B09B 3/00
B01J 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料水を逆浸透膜または限外濾過膜に通して得られた濾過水中に一対の電極を配置し、両電極間に1.2V以上の交流電圧を印加し、濾過水を改質して帯電水を製造するに際し、電極は、多孔質体の表面に取り付けられた金属質良導体であり、前記多孔質体は90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる多孔質体表面に取り付けられた電極によることを特徴とする帯電水製造方法により得られた帯電水をさらに1.2V以上の直流で電解して得られる帯電還元水を用いて、PCBを含む油を乳化し、さらに、90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる多孔質体よりなる触媒の存在下に、一対の電極を配置し、乳化したPCBを含む油に20V以上の交流による電気分解を適用することを特徴とするPCB無害化方法。
【請求項2】
乳化したPCBを含む油にIPA(イソプロパノール)を添加することを特徴とする請求項1に記載のPCB無害化方法。
【請求項3】
帯電水をさらに1.2V以上の直流で電解して得られる帯電還元水に水酸化ナトリウム加えて、直流で電解を行った帯電還元水を用いてPCBを含む油を乳化する請求項1又は請求項2に記載のPCB無害化方法。
【請求項4】
帯電水を製造する1.2V以上の交流電圧を印加する際、及び帯電還元水を用いて乳化したPCBを含む油を20V以上の交流による電気分解の際、電極を構成する複合酸化物における微細突起がウィスカー(γ型アルミナセラミックス)であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載したPCB無害化方法。
【請求項5】
多孔質体は90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とし、酸化Mn3.8〜4.0体積%、酸化Si3.2〜3.4体積%を有し、その他Fe、Ca、の酸化物を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のPCB無害化方法。
【請求項6】
原料水を濾過する逆浸透膜または限外濾過膜(イ)、逆浸透膜または限外濾過膜(イ)で濾過された濾過水をためる貯水容器(ロ)、貯水容器(ロ)に浸漬する90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の多孔質体複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる多孔質体の表面に取り付けられた金属質良導体である一対の電極(ハ)及び一対の電極(ハ)に交流電圧を付加する交流電源(ニ)を備えてなる帯電水製造装置で得られた帯電水を、直流電解する直流電解装置(ホ)を備えてなる帯電還元水製造装置で得られた帯電還元水を用いてPCBを含む油を乳化する容器(ヘ)、容器(ヘ)中の乳化物に浸漬される電極体が90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる触媒(ト)、容器(ヘ)中の乳化物に浸漬され、一対の電極が配置され、触媒(ト)との相互作用により乳化物の電気分解を行う20V以上の交流による電気分解装置(チ)から成ることを特徴とするPCB無害化装置。
【請求項7】
濾過膜が限外濾過膜であり、交流電圧(ニ)及び交流による電気分解装置(チ)が100Vである請求項6に記載したPCB無害化装置。
【請求項8】
電極(ハ)及び電極体の触媒(ト)が微細突起がウィスカー(γ型アルミナセラミックス)であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のPCB無害化装置。
【請求項9】
金属質良導体が銅、銀、アルミニウム、ニッケル、銅合金、銀合金、アルミニウム合金、ニッケル合金から選ばれる1種又は2種である請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のPCB無害化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料水を濾過して得られる濾過水を特殊な電極を用いて濾過水に交流電圧を印加して得られる帯電水をさらに直流電解して得られる帯電還元水を用いてPCBを無害化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PCBの処理法として、紫外線を照射することを含む、有機塩素化合物の電気分解方法により、PCBを無害化する方法すなわち、有機塩素化合物を電気分解することに加え、紫外線を照射することにより当該課題を解決することが開示されている(特許文献1)。
ここでは、電気分解は、有機塩素化合物含有溶液を収容する反応槽、及び電極(陰極及び陽極)から構成され、慣用の電気分解装置に使用される全ての電極を使用することができる。また、電気分解に使用するための溶媒は特に限定されず、水及び有機溶媒、並びにこれらの混合物を使用することができる。さらに電気分解に際して、溶媒の電気伝導度を上昇させるためにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩などを加えることもできる。また、電気分解により陰極で有機塩素化合物の脱塩素化反応が起こる。しかし、脱塩素化された有機塩素化合物は陽極において再度塩素化され、再生する可能性がある。そのため、陰極で生じた脱塩素化物を陽極に接触させないことが好ましいく、陰極と陽極との間を隔離するものとしては当業者に周知の様々なものを使用することができるが、半透膜を使用することが好ましいことが開示されている。
【0003】
また、PCB廃棄物の無害化処理において、仕分け作業や解体作業等の前処理を一部省略し、吸着材等の副資材を不要とし、比較的低温で処理可能な方法及びそのシステムが知られている(特許文献2)。ここには、PCB廃棄物を常温から250〜349℃の範囲に属する第一の温度まで昇温する第一の温度帯と、前記第一の温度から350〜450℃の範囲に属する第二の温度まで昇温する第二の温度帯と、前記第二の温度から前記PCB廃棄物が分解する所定の分解温度まで昇温する第三の温度帯との、温度条件によって分けられた各温度帯が入口から出口までの間に設けられており、前記各温度帯に応じた加熱を行う加熱手段と、前記入口から前記出口まで耐熱トレイに載置された前記PCB廃棄物を搬送する搬送手段とを有する分解処理室と、前記分解処理室の前記各温度帯で前記PCB廃棄物の温度を測定する温度測定手段と、前記分解処理室の前記出口の近傍に接続された排気ダクトと、前記排気ダクトを通じて前記分解処理室を強制排気することにより前記分解処理室を減圧雰囲気とする減圧手段とを、備えていることを特徴とするPCB無害化処理システムが開示されている。
【0004】
さらに、脱ハロゲン油をより効率的に中性にすることが可能なハロゲン化合物含有油の無害化処理方法及び無害化処理装置も知られている(特許文献3)。ここには、PCB混入絶縁油無害化処理装置は、被処理油を貯留する貯留タンクと、被処理油に含まれる水を除去する減圧蒸留槽と、PCBを金属ナトリウムと反応させ脱塩素化する反応槽15と、PCBの脱塩素化を確認するための分解確認槽17と、処理済油に含まれる固体状の不純物を分離するろ過装置19と、固体状の不純物が分離された処理済油に直接、炭酸ガスを溶解させ処理済油を中和する中和装置21とを備えるPCB混入絶縁油無害化処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−36338号公報
【特許文献2】特開2011−110450号公報
【特許文献3】特開2013−56066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PCBは安定な化合物であり、PCBを分解して無害化することが極めて困難である事実に鑑みて、本発明者は、原料水を濾過して得られる濾過水を特殊な電極を用いて濾過水に交流電圧を印加し、濾過水を改質して帯電水を得て、帯電水をさらに直流電解して得られる帯電還元水を用いて、PCBを含む油を乳化して、特殊な触媒と交流電圧を印加してPCB化合物中の塩素を水素に置き換えることが出来ることを見出し、PCBを無害化することが出来ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、従来困難であるとされてきたPCBを分解して無害化する方法を、帯電水を用いてPCBを含む油を乳化し、さらに、特殊な触媒と交流による電気分解を併用することによりPCB無害化方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記を解決すべく、本発明者は鋭意研究した結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、原料水を逆浸透膜または限外濾過膜に通して得られた濾過水中に一対の電極を配置し、両電極間に1.2V以上の交流電圧を印加し、濾過水を改質して帯電水を製造するに際し、電極は、多孔質体の表面に取り付けられた金属質良導体であり、前記多孔質体は90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる多孔質体表面に取り付けられた電極によることを特徴とする帯電水製造方法により得られた帯電水をさらに1.2V以上の直流で電解して得られる帯電還元水を用いて、PCBを含む油を乳化し、さらに、90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる多孔質体よりなる触媒の存在下に、一対の電極を配置し、乳化したPCBを含む油に20V以上の交流による電気分解を適用することを特徴とするPCB無害化方法である。
また、本発明のPCB無害化方法においては、乳化したPCBを含む油にIPA(イソプロパノール)を添加することができる。
さらに、本発明のPCB無害化方法においては、帯電水をさらに1.2V以上の直流で電解して得られる帯電還元水に水酸化ナトリウム加えて、直流で電解を行った帯電還元水を用いてPCBを含む油を乳化することができる。
また、本発明のPCB無害化方法においては、帯電水を製造する1.2V以上の交流電圧を印加する際、及び帯電還元水を用いて乳化したPCBを含む油を20V以上の交流による電気分解の際、電極を構成する複合酸化物における微細突起がウィスカー(γ型アルミナセラミックス)であることができる。
さらに、本発明のPCB無害化方法においては、多孔質体は90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とし、酸化Mn3.8〜4.0体積%、酸化Si3.2〜3.4体積%を有し、その他Fe、Ca、の酸化物を有することが好ましい。
【0008】
また、本発明は、原料水を濾過する逆浸透膜または限外濾過膜(イ)、逆浸透膜または限外濾過膜(イ)で濾過された濾過水をためる貯水容器(ロ)、貯水容器(ロ)に浸漬する90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の多孔質体複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる多孔質体の表面に取り付けられた金属質良導体である一対の電極(ハ)及び一対の電極(ハ)に交流電圧を付加する交流電源(ニ)を備えてなる帯電水製造装置で得られた帯電水を、直流電解する直流電解装置(ホ)を備えてなる帯電還元水製造装置で得られた帯電還元水を用いてPCBを含む油を乳化する容器(ヘ)、容器(ヘ)中の乳化物に浸漬される電極体が90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる触媒(ト)、容器(ヘ)中の乳化物に浸漬され、一対の電極が配置され、触媒(ト)との相互作用により乳化物の電気分解を行う20V以上の交流による電気分解装置(チ)から成ることを特徴とするPCB無害化装置である。
さらに、本発明のPCB無害化装置では、濾過膜が限外濾過膜であり、交流電圧(ニ)及び交流による電気分解装置(チ)が100Vである請求項6に記載したPCB無害化装置。
また、本発明のPCB無害化装置では、電極(ハ)及び電極体の触媒(ト)が微細突起がウィスカー(γ型アルミナセラミックス)であることが望ましい。
さらに、本発明のPCB無害化装置では、金属質良導体が銅、銀、アルミニウム、ニッケル、銅合金、銀合金、アルミニウム合金、ニッケル合金から選ばれる1種又は2種とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のPCB無害化方法は、水素ガスを用いることなく、低電圧の交流を印加することにより、PCBを脱塩素化して無害化することができる。本発明ではAl−Mn−Si触媒を用いて、水分子集団の微細化技術による溶存水素豊富水を生成させ、帯電還元水とPCB油をエマルジョン化することができる。また、交流電圧を印加することで電極への不純物の付着を防止し、水素ガスを用いることなく、安全に迅速にPCBを処理することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の帯電還元水製造装置の一例の基本構成を示す側断面図である。
図2】実施例の帯電還元水及び水道水にそれぞれ添加された油滴の挙動を示す俯瞰写真である。
図3】実施例の帯電還元水及びアルカリ電解水にそれぞれ添加された油滴の挙動を示す俯瞰写真および図2も含めた俯瞰写真の挙動の説明図である。
図4】本発明に用いられる電極における多孔質複合体の電子顕微鏡写真である。
図5】本発明に用いられる電極における多孔質複合体の特徴を説明するための電子顕微鏡写真である。
図6】本発明の帯電還元水製造装置の別の一例の構成を示す側断面図である。
図7】本発明のPCB無害化装置の上流部の一例
図8】本発明の帯電還元水製造装置(PCB無害化装置の上流)の一例
図9】本発明のPCB無害化のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明でいう原料水は、例えば水道水、河川、湖沼、池等の地表水、地下水、井戸水、海水などが挙げられ、身近に存在する入手可能な水をいう。
本発明で用いる水の濾過装置に用いる濾過膜としては、逆浸透膜または限外濾過膜を用いることができる。とくに水中のイオン、微生物、微細有機物を除去できる限外濾過膜が望ましい。
さらに本発明の帯電水の製造に用いる電極及び乳化されたPCBを含む油の電気分解に用いられる電極は、多孔質体の表面に取り付けられた金属質良導体であり、多孔質体は90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなることを特徴とする。
とくに、本発明の帯電水の製造に用いる電極は図1のような形態が用いられ、乳化されたPCBを含む油の電気分解に用いられる電極は、図7のような形態が用いられるが、当業者であればバッチ式又は連続式など装置の相違により、適宜その形態を変えることが出来る。
【0012】
本発明のPCB無害化方法において用いる帯電還元水は、どのような帯電還元水であっても良い。帯電水を直流で電解して得られる帯電還元水を用いることができ、典型例としては、帯電水をさらに1.2V以上の直流で電解して得られる帯電還元水を用いて、PCBを含む油を乳化し、さらに、90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる触媒の存在下に、乳化したPCBを含む油に20V以上の交流による電気分解を適用することを特徴とする。
本発明において用いる典型的な帯電還元水は、原料水を逆浸透膜または限外濾過膜に通して得られた濾過水中に一対の電極を配置し、両電極間に1.2V以上の交流電圧を印加し、水を改質して帯電水を製造し、電極は、多孔質体の表面に取り付けられた金属質良導体であり、多孔質体は90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなることを特徴とする帯電水製造方法により得られた帯電水をさらに1.2V以上の直流で電解して得られる帯電還元水である。
この多孔質複合体は、上記微細突起部がアルミナ、とりわけウィスカー(γ型アルミナセラミックス)であることが好ましい。さらに、微細突起部は花弁状を呈するのが、表面積を高め、例えば平板の数十万倍といった驚くべき超高表面積をもたらしうるので特に好ましい。
【0013】
特にガンマアルミナは、すでに知られた物質であり、迅速に反応して水を保存および放出するという点で「反応性スポンジ」として作用します。この化学反応性は、長年解けなかった触媒系におけるアルミナの挙動の謎を解明するための基礎となるものです。すなわち、
この構造が稀有な表面化学を生み、それにより遷移アルミナの汎用性と有用性の一部を説明することができます。水分子がガンマアルミナに到達した時に、その分子は崩壊します。水素はその物質に入り込み、酸素はその表面上に留まります。アルミニウム原子はその物質の中心から移動して酸素と結合し、その結果結晶基盤を拡大します。原子価に関する要請によって、どの3 個の水分子についても、6 個の水素原子がその物質に入り込み、2 つのアルミニウム原子が外に移動して、その結晶は化学量論的Al2O3 単位を拡張することが確認されています。その逆の過程も可能です。この挙動は、ガンマアルミナにおける水素含有量がAl2O3・n(H2O)について[0<n<0.6]の範囲内のどこかに収まるという事実の結果とされている。
ガンマアルミナ表面でのHとOの可用性は、この物質の顕著な触媒作用の理解について重要な意味あいをもっている。γ型アルミナセラミックスは、遷移アルミナ(擬ベーマイト及びそれを焼成した製品)であり、例えばγアルミナC20(日本軽金属株式会社)やγアルミナC20Lとして市販されている。
【0014】
この多孔質複合酸化物は、平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、その空孔率は好ましくは45〜60%、より好ましくは45〜55%の範囲で選ばれる。ここで空孔率(Porosity)とは、孔のあいている面積を全面積で除した値である。
また、その平均空孔径が通常10〜20nm、好ましくは13〜18nmの範囲である。
【0015】
多孔質複合酸化物体の一例を図4に電子顕微鏡写真で示す。
図4のうち、上方のは5万倍率、下方のは100万倍率のものである。
この下方の高倍率のものについて、それに説明の便宜のため印を付した図5から明らかなように、○印の箇所には微細突起部があって、そこには電圧の負荷による電解が集中すると考えられ、また、△印の箇所には空隙があって、これには、本発明方法における水の改質時に上記濾過水が絶縁体として充填され、濾過水はあたかもコンデンサにおけるような誘電体の役割を担っていると考えられる。微細突起部に集中した電荷は、交流での振動運動を有するためエネルギーを持った電磁場が形成される。(交流電圧の印加により近傍の水分子に静電誘導が生じ電場を生じる。その電場により磁場が生じ、その磁場が電場を発生させ連鎖的に電磁場が形成される)このエネルギーにより水素の電子が励起し、水の分解が発生する。その結果プロトンと電子が高濃度で生成され水の酸化還元電位を大幅に低下させる。
【0016】
本発明の帯電水製造方法においては、電極は一対水中に配置し、これら電極に交流電圧を印加する。
交流電圧は、1.2V以上あれば有効であり、理論上その上限はないが、通常100Vを用いるのが安価で好ましい。また、商用周波を含む低周波から高周波のもの、通常50Hz〜100kHzを用いることができるが、好ましくは商用電源50Hz又は60Hzを用いるのが安価である。
また、本発明の乳化されたPCBを含む油の電気分解に用いられる電極は、図7に示すようにリング型とし、流路にはめ込む形態とすることが出来る。20V以上の交流であれば有効である。電気分解処理の時間は12〜48時間が好ましい。
また、商用周波を含む低周波から高周波のもの、通常50Hz〜100kHzを用いることができるが、好ましくは商用電源50Hz又は60Hzを用いるのが安価である。
【0017】
また、交流電圧は、その波形が零電位を中心として対称であるもの(例えば正弦波等)や、非対称であるもの(例えば鋸歯状波、三角波、複合波等)を使用することができる。
【0018】
本発明の帯電水製造装置では、金属質良導体を銅、銀、アルミニウム、ニッケル、銅合金、銀合金、アルミニウム合金、ニッケル合金から選ばれる1種又は2種とすることが出来る。
【0019】
本発明の帯電還元水製造方法においては、本発明の帯電水製造装置で得られた帯電水を直流電解することにより、帯電還元水を作ることができる。
直流電解装置の電源としては、直流電源を用いる。直流電圧は1.2V以上である。
さらに直流電源としてパルス電流を用いることができる。パルス電流は水中の微生物の殺菌に好ましい。
一槽式直流電解生成装で電解することにより、pHを13程度まで上げ、酸化還元電位を-200mV程度のアルカリ電解水(油分のエマルジョン化に好適な水となる)を生成できる。
さらに、本発明においては、得られた帯電還元水に水酸化ナトリウム等を加えて直流電解を行い、PCBを含む油と帯電還元水をエマルジョン化することもできる。またさらに、PCBを含む油と帯電還元水にイソプロパノール(IPA)を加えてエマルジョン化することもできる。水酸化ナトリウムとIPA(イソプロパノール)は、エマルジョン化が不調の場合に、添加の必要性が生じる。
なお、エマルジョンは超音波を用いる撹拌には適していないので、撹拌棒等で撹拌する。
【0020】
本発明方法に用いられる濾過水は、原料水を逆浸透膜(RO膜)や限外濾過膜に通して浄化してなるものであり、逆浸透膜や限外濾過膜による浄化処理は、繰り返し行ってもよい。
本発明においては原料水の前処理は、適宜行うことができる。
例えば図6に示されるような製造ラインにより行うことができる。
図6では、水道水などの原料水は先ず交流変調電磁場生成装置で処理されたのち、第一の水槽に送給される。第一の水槽内には底部近くにセラミックスや天然鉱石が、また、その上方に水槽外のトランスに接続された電極が配設されている。送給された水は、電極に印加された電圧により活性化されたのち、第二の水槽に送給される。第二の水槽内には水槽外のトランスに接続された電極が配設されている。送給された水は、電極に印加された電圧によりさらに活性化されたのち、逆浸透膜や限外濾過膜に通され、濾過水となる。
【0021】
これらの濾過膜の素材としては、例えばアセチルセルロース、芳香族ポリアミド、ポリエーテル、脂肪族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、4フッ化エチレン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなどを使用することができ、その膜モジュールとしては、例えば平膜、スパイラル、中空糸、管形などの形状のものを使用することができる。
【0022】
本発明に係るPCB無害化装置は、原料水を濾過する逆浸透膜または限外濾過膜(イ)、逆浸透膜または限外濾過膜(イ)で濾過された濾過水をためる貯水容器(ロ)、貯水容器(ロ)に浸漬する90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の多孔質体複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる多孔質体の表面に取り付けられた金属質良導体である一対の電極(ハ)及び一対の電極(ハ)に交流電圧を付加する交流電源(ニ)を備えてなる帯電水製造装置で得られた帯電水を、直流電解する直流電解装置(ホ)を備えてなる帯電還元水製造装置で得られた帯電還元水を用いてPCBを含む油を乳化する容器(ヘ)、容器(ヘ)中の乳化物に浸漬される電極体が90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる触媒(ト)、容器(ヘ)中の乳化物に浸漬され、触媒(ト)との相互作用により乳化物の電気分解を行う20V以上の交流による電気分解装置(チ)から成ることを特徴とするものである。
また本発明のPCB無害化装置においては、電極(ハ)及び電極体の触媒(ト)の微細突起がウィスカー(γ型アルミナセラミックス)とすることが望ましい。
さらに本発明のPCB無害化装置においては、金属質良導体が銅、銀、アルミニウム、ニッケル、銅合金、銀合金、アルミニウム合金、ニッケル合金から選ばれる1種又は2種から選ばれる1種又は2種とすることができる。
【0023】
本発明装置の基本構成は、前述のとおりであるが、装置をバッジ式とするか連続装置とするかによって、形態は種々異なるが、当業者であれば、適宜各装置を組み合わせることが出来る。
【0024】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0025】
(帯電水及び帯電還元水の製造)
図1に示すように、貯水容器1内の60リットルの水道水中に、構成元素中、アルミニウム92.1質量%、マンガン3.9質量%、珪素3.3質量%(株式会社リガク製蛍光X線分析装置,ZSX PrimusIIによる測定値)であり、微細突起部で細孔部を含め全面が覆われてなる多孔質複合体{(有限会社テクノクエスト社製):空孔率48%、平均空孔径100μm、密度1.48g/cm、熱伝導率96kcal/m・h・K、熱放射率(ε)0.8、熱膨張係数28.5×10−6/K、引張り強さ100kgf/cm、酸不溶解残渣:アルミナ,Si]}2bの外面全面に導電端子2aを配設してなる電極2を一対セットした。一対の電極間に100V、60Hzの交流電圧を印加した。
【0026】
このようにして得られた帯電水は、それに油滴を添加すると、図2の左側に示されるように、油滴は水面上に丸まった状態で維持される。
一方、これとの比較のため、水道水に油滴を添加すると、図2の右側に示されるように、油は水面に平たく拡散される。
同様に上記帯電水とアルカリ電解水との間でも、油滴添加により、前者では図3の上部左側に示されるように、油滴は水面上に丸まった状態で維持されるのに対し、後者では、図3の上部右側に示されるように、油は水面に拡散される。
このような挙動を示すのは、図3の下部に示されるように、油と水の分子集団間の静電力による引く力が、分子集団が小さいほど小さくなるところ、水道水の方が帯電還元水に比し分子集団が大きいため、油滴を引く力が大きく、油は水面に平たく拡散されると考えられ、また、アルカリ電解水も帯電還元水と同様に分子集団が小さいものの、アルカリ性であるため、油すなわち油脂と反応して石鹸が生成され、この石鹸の界面活性作用により油脂は乳化され、水面に拡散されると考えられる。
【0027】
(比較例1)
実施例1の電極の代わりにチタン合金電極及び白金合金電極を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行った。結果を表1に示すと共に、通電時間による処理水の酸化還元電位の変化を表2に示す。検査検体は、RO経過水酸化還元電位261mVを実施例1では、交流電解を比較例では、直流電解を各々1時間印加した。その後電源をOFFとし酸化還元電位の変化を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
また、表1の実施例1で得られた帯電水を、そのまま12Vの直流にて電解して、帯電還元水を得た。電解質を添加せずに、還元水を得ることが出来た。
通電時間による処理水の酸化還元電位の変化を後出の表2に示す。
【0030】
【表2】
【実施例1】
【0031】
表1から、表1の実施例1では、比較例に比べて帯電水が順調に製造されていることが判明する。また比較例1では、電解質やミネラルを除去したRO経過水を直流電気分解した。(通説では、電解質なしであり、電極の幅も8cm程度あり、水の電気分解は、起こらないが、僅かなミネラルの含有が、進行させた。)
また、表2から、表2の実施例2では帯電還元水が作られていることが判明する。

この表2の実施例2の帯電還元水(185グラム)を用いて、PCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む油(65グラム)をエマルジョン化した。
このエマルジョンを、触媒(90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる触媒)の存在下交流で電気分解した。
【実施例2】
【0032】
表2の実施例2の帯電還元水45gにPCB(ポリ塩化ビフェニールを含む油5gを入れ撹拌エマルジョン化し、1ケ月間太陽光に自然光照射した。その検体を触媒(90体積%以上の酸化アルミニウムを有するAl−Mn−Siを主成分とする平均空孔率40〜70%の複合酸化物であって、細孔部を含めた全面が微細突起で覆われてなる触媒)の存在下90V交流で1時間電気分解した。PCBは、91.7%分解した。
【実施例3】
【0033】
表2の実施例2の帯電還元水50gとPCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む油50gを入れ撹拌エマルジョン化し90V交流で24時間電気分解した。PCBは、94.6%分解した。
【実施例4】
【0034】
表2の実施例2の帯電還元水90gとPCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む油10gを入れ撹拌エマルジョン化し30V交流で24時間電気分解した。PCBは、94.8%以上分解(検知外数値)した。
【符号の説明】
【0035】
1 貯水容器
2 電極
2a 導電端子
2b 多孔質複合酸化物
3 アース電極
4 交流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9