(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6090960
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】調理食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/10 20160101AFI20170227BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20170227BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20170227BHJP
【FI】
A23L5/10 Z
A23L5/00 J
A23L35/00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-130273(P2016-130273)
(22)【出願日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516197377
【氏名又は名称】株式会社辰馬コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辰馬 雅子
【審査官】
西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2003/032747(WO,A1)
【文献】
特開2010−273670(JP,A)
【文献】
特開2001−327266(JP,A)
【文献】
特開2010−239935(JP,A)
【文献】
特開2008−011794(JP,A)
【文献】
特開2011−019510(JP,A)
【文献】
特開2007−252323(JP,A)
【文献】
特開2013−034467(JP,A)
【文献】
特開2013−220043(JP,A)
【文献】
あいーと 海老芋の柚香蒸し[online],2016年 3月24日,Internet Archive Wayback Machine,[2016年9月20日検索],http://www.ieat.jp/menu/ebiimo/を検索,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20160324160937/http://www.ieat.jp/menu/ebiimo/>
【文献】
あいーと 五目ひじき[online],2015年 8月22日,Internet Archive Wayback Machine,[2016年9月20日検索],http://www.ieat.jp/menu/gomokuhijiki/を検索,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20150822195801/http://www.ieat.jp/menu/gomokuhijiki/>
【文献】
サラダに、お肉に、お魚に★レモンバジルジュレ レシピ・作り方,楽天レシピ[online],2012年 7月24日,[2016年9月20日検索]インターネット<URL:http://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1830003172/>
【文献】
トマトの寒天ジュレ風 レシピ・作り方,楽天レシピ[online],2013年 9月30日,[2016年9月20日検索]インターネット<URL:http://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1320005454/>
【文献】
のっけてジュレ「レモン&バジル」で爽やかそうめん レシピ・作り方,楽天レシピ[online],2012年 3月25日,[2016年9月20日検索]インターネット<URL:http://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1800003102/>
【文献】
イーエヌ大塚製薬、介護食「あいーと」から新メニュー5商品を発売,日刊工業新聞,2013年10月 8日,p.17,日経テレコン[online][2016年9月20日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/WPIDS/FSTA/FROSTI(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 第1食品素材に、該食品素材に含まれる成分の少なくとも一部を基質とする分解酵素が含まれる調理液を浸透させることにより、該第1食品素材の外形状を保持したまま前記分解酵素により基質を分解して該第1食品素材を軟化する工程と、軟化された前記第1食品素材をその外形状を保持したまま加熱する工程とを備える、第1軟化食品の製造工程と、
b) 第2食品素材を、分解酵素を用いずに軟化調理する工程を備える、第2軟化食品の製造工程と、
c) 前記第2軟化食品を、前記第1軟化食品が有する穴に対応する形状又は該第1軟化食品の表面の一部又は全部を覆う形状に成形し該第1軟化食品の該当箇所に配置して、前記第1軟化食品と前記第2軟化食品を組み合わせる工程と
を備える、調理食品の製造方法。
【請求項2】
前記第1食品素材を軟化する工程において、前記第1食品素材を凍結させた後、該第1食品素材に前記分解酵素が含まれる調理液を浸透させることを特徴とする、請求項1に記載の調理食品の製造方法。
【請求項3】
前記第1食品素材を加熱する工程が、前記第1食品素材を軟化する工程の前に行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の調理食品の製造方法。
【請求項4】
前記第1食品素材を加熱する工程が、前記第1食品素材を軟化する工程の後に行われる、前記分解酵素を失活させる工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の調理食品の製造方法。
【請求項5】
前記第2軟化食品の製造工程において、前記軟化調理が、前記第2食品素材を摺りおろす、すり潰す、刻む、叩きつぶす、から選ばれる1又は複数の処理を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の調理食品の製造方法。
【請求項6】
食品素材の成分の一部が分解酵素によって分解された、該食品素材の外形状が保持されている第1軟化食品と、
摺りおろす、すり潰す、刻む、叩きつぶす、から選ばれる1又は複数の、酵素を用いない軟化調理により軟化された第2軟化食品とを組み合わせて成り、
前記第2軟化食品が、前記第1軟化食品が有する穴に対応する形状又は前記第1軟化食品の表面の一部又は全部を覆う形状に成形されたものであり、
前記第1軟化食品の該当箇所に成形後の前記第2軟化食品が配置されていることを特徴とする調理食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理食品及びその製造方法に関し、特には、咀嚼や嚥下が困難な高齢者や乳児用の調理食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼や嚥下が難しい高齢者や離乳期の乳児のために、柔らかい食材で構成された調理食品がある。従来、食材を柔らかく(軟化)する方法として、加熱した食材を細かく刻んだり、すり潰したりして食材を細分化する方法や細分化した食材を加熱する方法、あるいは、食材を高圧下で加熱する方法が採られてきた。食材を細分化する方法では短時間で食材を軟化することができる反面、食材そのものの形状が失われてしまうため、食材を視覚的に楽しむことができない。一方、高圧下で加熱する方法では食材の形状を維持することができるが、食材が軟化するまでに時間がかかり、また、食材の種類によっては十分に軟化できない場合がある。そこで、近年、分解酵素を利用して食材を軟化する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-11794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分解酵素を用いる方法では、食材に含まれる成分(基質)に対応した分解酵素を1種又は複数種、食材の内部に浸透させ、該分解酵素で基質を分解することにより食材を軟化している。この方法では、食材をそのままの状態で歯茎や舌でつぶせる程度まで柔らかくすることができるが、分解酵素特有の味や臭いが食材に加わるため、食材の味や風味を損なうおそれがある。また、この方法では全ての食品が同程度に軟化されるため、食材特有の食感を楽しむことができない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、食品素材を軟化して食べやすくした調理食品及びその製造方法において、食品素材の味や風味の低下を抑えつつ、該食品素材特有の食感や食品素材の形状を楽しむことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る調理食品の製造方法は、
a) 第1食品素材に、該食品素材に含まれる成分の少なくとも一部を基質とする分解酵素が含まれる調理液を浸透させることにより、
該第1食品素材の外形状を保持したまま前記分解酵素により基質を分解して該第1食品素材を軟化する工程と、軟化された前記第1食品素材を
その外形状を保持したまま加熱する工程とを備える、第1軟化食品の製造工程と、
b) 第2食品素材を、分解酵素を用いずに軟化調理する工程を備える、第2軟化食品の製造工程と、
c)
前記第2軟化食品を、前記第1軟化食品が有する穴に対応する形状又は該第1軟化食品の表面の一部又は全部を覆う形状に成形し該第1軟化食品の該当箇所に配置して、前記第1軟化食品と前記第2軟化食品を組み合わせる工程と
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明において「分解酵素を用いずに軟化調理する」とは、第2食品素材を摺りおろす、すり潰す、細かく刻む、叩きつぶす等、食品素材を細分化して調理する、あるいは第2食品素材を高圧状態で加熱調理することをいう。
また、「第1軟化食品と第2軟化食品を組み合わせる」とは、第1軟化食品と第2軟化食品を区別できる状態で両者を混合又は結合することをいう。組み合わせの形態としては、例えば第2軟化食品及び第1軟化食品のうちの一方で他方を包む、第1軟化食品又は第2軟化食品が空洞を有する場合に該空洞に第2軟化食品又は第1軟化食品と第2軟化食品を挿入する、第1軟化食品及び第2軟化食品の一方で他方を挟む、第1軟化食品と第2軟化食品を積層する、第1軟化食品及び第2軟化食品をそれぞれ小片状にして混ぜ合わせる、等が挙げられる。第1軟化食品と第2軟化食品を組み合わせる工程では、組み合わせた第1軟化食品と第2軟化食品の結合を強めるために、加熱する工程を追加しても良い。
【0008】
本発明に係る調理食品の製造方法では、第1食品素材及び第2食品素材をそれぞれ軟化した後、これらを組み合わせることにより調理食品を得る。第1食品素材と第2食品素材は異なる食品素材に限らず、同じ食品素材であっても良い。また、第1食品素材及び第2食品素材はそれぞれ1種類に限らず、第1食品素材と第2食品素材のいずれか、又は両方が複数種の食品素材から構成されていても良い。
【0009】
第1軟化食品は、第1食品素材に分解酵素を含む調理液を浸透させ、該第1食品素材に含まれる基質を分解酵素で分解することにより軟化されたものであるため、第1食品素材の味や風味、食感が低下するものの、第1食品素材の形状をほぼ維持したものとなる。第1食品素材としては、分解酵素の基質となる成分を含むものであればどのようなものでも良く、植物性食品素材、動物性食品素材のいずれでも良い。
一方、第2軟化食品は、第2食品素材を、分解酵素を用いずに軟化調理したものであるため、該第2食品素材の形状は必ずしも維持されないものの、味や風味、食感をほぼ維持したものとなる。第1食品素材と同様、第2食品素材も植物性食品素材、動物性食品素材のいずれを用いることができるが、第2食品素材として筍や蕗等の繊維質を多く含む食品素材を用いると繊維質特有の舌触り感を、茸類やこんにゃく等の弾力がある食品素材を用いるとその弾力に起因する歯触り感を、それぞれ第2軟化食品に残すことができる。
本発明の調理食品は、このような第1軟化食品と第2軟化食品を組み合わせることにより得られる。
【0010】
第1食品素材を軟化する工程においては、該第1食品素材を凍結させた後で該第1食品素材に調理液を浸透させることが好ましい。凍結させることにより第1食品素材の組織が壊れるため、調理液が浸透しやすくなる。
【0011】
第2軟化食品の製造工程における、分解酵素を用いずに軟化調理する方法が、第2食品素材を細分化する方法である場合は、細分化された第2食品素材を所定の形状に成形する成形工程をさらに備えると良い。所定の形状は、第1軟化食品と第2軟化食品の組み合わせ方によって決めることができる。例えば、第2軟化食品で第1軟化食品を包む場合は第2軟化食品がシート状になるように成形にする。第1軟化食品が有する空洞に第2軟化食品を挿入する場合には該空洞の形状に成形する。第1軟化食品と第2軟化食品を積層する場合には第1軟化食品と同じような形状になるように成形する。所定の形状に成形する工程は、例えば、ゼラチン、片栗粉、くず粉、溶き玉子等を含む成形剤を細分化された第2食品素材に加えることにより実行することができる。所定の形状に成形する工程は、細分化された第2食品素材を第1軟化食品と組み合わせてから行っても良い。この方法では、成形する工程と同時に、第1軟化食品と第2軟化食品を組み合わせる工程が行われる。
【0012】
また、本発明の別の側面である調理食品は、
食品素材の成分の一部が分解酵素によって分解された
、該食品素材の外形状が保持されている第1軟化食品と、
摺りおろす、すり潰す、刻む、叩きつぶす、から選ばれる1又は複数の、酵素を用いない軟化調理により軟化された第2軟化食品とを組み合わせて成
り、
前記第2軟化食品が、前記第1軟化食品が有する穴に対応する形状又は前記第1軟化食品の表面の一部又は全部を覆う形状に成形されたものであり、
前記第1軟化食品の該当箇所に成形後の前記第2軟化食品が配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る調理食品では、第1軟化食品は分解酵素によって軟化されたものであるため、もとの食品素材の形状をほぼ維持したものとなり、第2軟化食品は分解酵素を用いず軟化されたものであるため、もとの食品素材の食感や味、風味をほぼ維持したものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、食品素材の味や風味の低下を抑えつつ、該食品素材特有の食感や形状を楽しむことができる、軟化された調理食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】第1軟化食品と第2軟化食品の組み合わせ形態の例を示す図。
【
図3】実施例
2に係る調理食品の製造工程の様子を示す図。
【
図4】実施例
3に係る調理食品の製造工程の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る調理食品及びその製造方法の実施形態について
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る調理食品の製造工程を示している。
図1に示すように、調理食品の製造工程は、第1軟化食品の製造工程、第2軟化食品の製造工程、調理食品の製造工程から構成されている。
【0017】
(1)第1軟化食品の製造工程
第1軟化食品の製造工程は、第1食品素材を加熱する工程(S1)と、第1食品素材に、該食品素材に含まれる成分の少なくとも一部を基質とする分解酵素が含まれる調理液を浸透させる工程(S2)と、前記分解酵素により該第1食品素材に含まれる基質を分解して該第1食品素材を軟化する工程(S3)と、前記第1食品素材を加熱して分解酵素を失活させる工程(S4)とを備える。
【0018】
分解酵素を失活させる工程(S4)では、通常、第1食品素材を80℃〜120℃に加熱する。このため、この工程は、分解酵素を失活させるだけでなく、第1食品素材を加熱する工程としても機能する。従って、失活させる工程(S4)で第1食品素材を十分に加熱することができる場合は、加熱する工程(S1)を省略しても良い。
【0019】
第1食品素材は、野菜、果物、茸、海藻などの植物性食品素材、及び牛肉、豚肉、鶏肉等の肉類、鶏卵や魚卵等の卵類、魚や貝等の魚介類といった動物性食品素材のいずれでも良い。また、コンニャク、寒天、湯葉、ハム、ソーセージ、蒲鉾等の加工食品を第1食品素材として用いることも可能である。
【0020】
分解酵素は第1食品素材の種類に応じたものが選択される。第1食品素材が植物性食品素材の場合は多糖類分解酵素活性を有する分解酵素であるセルラーゼやヘミセルラーゼやペクチンを分解するペクチナーゼ等が用いられ、動物性食品素材の場合はタンパク質分解酵素活性を有するプロテアーゼ、脂肪分解酵素活性を有するリパーゼ等が用いられる。分解酵素は1種類に限らず、複数種類の分解酵素を組み合わせて用いても良い。
【0021】
調理液には、塩、砂糖、醤油、味醂、酒、ソース、ケチャップ等の調味料、香辛料、ハーブ、昆布や鰹節、鯖節等を用いた出汁、ブイヨン等を含めることができる。
【0022】
第1食品素材に分解酵素が含まれる調理液を浸透させる工程(S2)において分解酵素が第1食品素材の内部に導入されることにより、次の工程(S3)では、第1食品素材に含まれる成分のうち該分解酵素の基質となる成分が分解酵素によって分解され、第1食品素材が軟化される。第1食品素材に導入する分解酵素の量、軟化させる工程の実行時間、軟化する工程の実行温度は、第1食品素材を軟化する程度によって設定する。また、第1食品素材への調理液の浸透を促進するために、浸透させる工程(S2)の前に第1食品素材を凍結する工程を設けたり、浸透させる工程(S2)及び/又は軟化する工程(S3)を減圧下で実行したりすることが好ましい。
【0023】
(2)第2軟化食品の製造工程
第2軟化食品は、第2食品素材を分解酵素を用いずに軟化調理することにより製造される(
図1のS6)。軟化調理する工程の前に第2食品素材を加熱する工程(S5)を設けたり、軟化調理工程の後に軟化調理された第2食品素材を加熱する工程(S7)を設けたりして良い。
第2食品素材も上記第1食品素材と同様に、植物性食品素材、動物性食品素材のいずれでも良く、また、加工食品を用いても良い。
【0024】
軟化調理には、例えば加熱された第2食品素材を摺りおろす、すり潰す、細かく刻む、叩きつぶす等、食品素材を細分化する処理(S61)、圧力鍋等を用いた高圧調理(S62)が含まれる。また、軟化調理が細分化する処理である場合は、細分化された第2食品素材に、ゼラチンや片栗粉、くず粉、溶き玉子等を含む成形材料を加えて所定の形状に成形する処理を更に含んでも良い。第2軟化食品の味付けは第2食品素材の加熱時に行っても良く、成形処理の際に行っても良い。成形処理の際に味付けを行う場合は成形材料に調味料、香辛料、ハーブ、出汁、ブイヨン等を含めると良い。
【0025】
(3)調理食品の製造
調理食品の製造工程は、前記第1軟化食品と前記第2軟化食品を組み合わせる工程(S8)を備える。また、調理食品の製造工程は、組み合わせる工程(S8)の後に、組み合わせた第1軟化食品と第2軟化食品を加熱する工程を備えるようにしても良い。
【0026】
図2に、第1軟化食品と第2軟化食品を組み合わせる形態の例を示す。
図2(a)は、第1軟化食品11が空洞部11aを有する場合に第2軟化食品12を前記空洞部11aに対応する形状に成形して該空洞部に挿入する形態、
図2(b)は、第2軟化食品12Aが、第1軟化食品11Aの表面の一部又は全部を覆う形態、
図2(c)は、第1軟化食品11Bと第2軟化食品12Bを積層する形態を示す。また、図示しないが、第1軟化食品と第2軟化食品をともに小片状にし、これらを混ぜ合わせるようにしても良い。
【0027】
(4)調理食品の具体例
以下に本発明に係る調理食品の具体的な実施例について説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
[
参考例1:和え物]
(1-1)第1軟化食品の製造(その1)
京人参40gを短冊切りにし、0.1%の塩水に漬けた後、塩水から取り出して一度、軽く火を通し −20℃で凍結した。その後、凍結された京人参をセルラーゼ(商品名:ベジとろん、有限会社クリスターコーポレーション製)を5%の割合で含む調理液100mLに漬けたものを真空包装し、3℃で12時間保存した。調理液には、セルラーゼの他に出汁 薄口醤油 砂糖を含む。その後、85℃で10分間加熱して酵素を失活させて、第1軟化食品である京人参の柔らかに煮を製造した。
【0029】
(1-2)第1軟化食品の製造(その2)
長いも40gを短冊切りにし、酢水(0.2〜0.3%)に晒した後、酢水から取り出して軽く火を通し−20℃で凍結した。その後、凍結された長いもをセルラーゼ(商品名:ベジとろん、有限会社クリスターコーポレーション製)を5%の割合で含む調理液100mLに漬け、真空包装し、3℃で12時間保存した。調理液には、セルラーゼの他に出汁、薄口醤油、味醂を含む。その後、85℃で10分間加熱して酵素を失活させ、第1軟化食品である長いもの柔らか煮を製造した。
【0030】
(1-3)第2軟化食品の製造
表面をこそげ落とした柚子を半分に切り、中身を取り出して皮だけにする。これを、米のとぎ汁で茹でた後、筋を取り除き、10〜20分程度蒸す。続いて、蒸し上がった柚子の皮を、砂糖と水で作った蜜で煮詰め、第2軟化食品である編み笠柚子を製造した。
【0031】
(1-4)調理食品の製造
(1-1)〜(1-3)のそれぞれで得られた2種類の第1軟化食品と1種類の第2軟化食品を合わせ、その上に、別に作成した甘酢のジュレをかけて、調理食品である和え物を完成させた。
【0032】
[実施例2:椎茸鋳込み]
(2-1)第1軟化食品の製造
プロテアーゼ(商品名:ミーとろん、有限会社クリスターコーポレーション製)10gを、鰹節及び昆布からとった出汁、砂糖、薄口醤油を含む炊き地100mLと混合して、調理液を調製した。
3個の椎茸を前記調理液に漬け、6分間、設定を98%までにして真空処理した(
図3(1)参照)。続いて、真空処理された椎茸を3℃で12時間保存し、酵素を活性化させた。その後、スチームコンベクション(株式会社マルゼン社製)を用いて85℃で10分間加熱し、酵素を失活させ、第1軟化食品である椎茸の柔らか煮を製造した。
得られたものを容器に並べ、ブラストチラー(株式会社マルゼン社製)で急速冷却した(
図3(2)参照)。
【0033】
(2-2)第2軟化食品の製造
5個の椎茸を沸騰水で3分間茹でた後、沸騰水から椎茸を取り出し、鰹節及び昆布からとった出汁、砂糖、薄口醤油を含む炊き地(調理液)100mLで煮た。調理液が椎茸に十分染みこんだ時点で加熱を停止し、冷めるまで放置した。
皮の部分をこそげ落としたつくね芋20gを、先に得られた椎茸及びその調理液と合わせ、ミキサーで細かく粉砕した。これに、ゲル化剤(製品名:N450、伊那食品工業株式会社)2gを添加し、混ぜ合わせて第2軟化食品を製造した。
【0034】
(2-3)調理食品の製造
(2-1)で得られた第1軟化食品(椎茸の笠部分)を、裏面(ひだの部分)を上にして容器に並べ、該裏面全体に片栗粉を振った後、その上に適宜量の(2-2)で得られた第2軟化食品を載せた。これを、80℃で15分間蒸した後、急冷して、調理食品である椎茸鋳込みを製造した(
図3(3)参照)。
【0035】
[実施例3:牛蒡の鋳込み]
(3-1)第1軟化食品の製
造
長さ3cmにカットされた牛蒡83gを、沸騰水で3分間茹でた後、縦方向に半分に切断し、芯をくり抜いた状態で冷凍した。これを、セルラーゼ(商品名:ベジとろん、有限会社クリスターコーポレーション製)を5%の割合で含む調理液100mLに漬け、真空包装し、3℃で24時間保存した。これにより、セルラーゼが活性化され、牛蒡に含まれるヘミセルロースが分解される。調理液には、セルラーゼの他に、昆布及び鰹節でとった出汁、薄口醤油、味醂を含む。その後、真空包装されたままの状態でスチームコンベクションオーブンに入れ、100℃で20分間加熱して酵素を失活させた。その後、真空包装を開封して牛蒡を取り出し、容器に並べ、ブラストチラー(株式会社マルゼン社製)に入れて急速冷凍して第1軟化食品である牛蒡の柔らか煮を製造した(
図4(1))。
【0036】
(3-2)第2軟化食品の製造
牛蒡80gを、昆布及び鰹節でとった出汁、薄口醤油、砂糖を含む調理液で60〜120分間煮る。続いて、調理液から牛蒡を取り出し、これをミキサーを用いて細かく粉砕する。細かく粉砕された牛蒡を前記調理液に戻し、さらにこれにカニのむき身を加えた後、ゲル化剤(製品名:N450、伊那食品工業株式会社)2gを添加し、混ぜ合わせた。その後、樹脂製フィルムで包んだ後、(1)の牛蒡のくり抜いた部分と同じ形状に成形し、85℃で10分間、蒸した後、急冷して第2軟化食品を製造した(
図4(2))。
【0037】
(3-3)調理食品の製造
(3-2)で得られた第2軟化食品の周りに片栗粉をまぶし、これを(1)の牛蒡で挟み、85℃で3分間蒸して、調理食品である牛蒡の鋳込みを製造した(
図4(3)、(4)参照)。
【符号の説明】
【0038】
11、11A、11B…第1軟化食品
12、12A、12B…第2軟化食品
【要約】
【課題】食品素材を軟化して食べやすくした調理食品及びその製造方法において、食品素材の味や風味の低下を抑えつつ、該食品素材特有の食感を楽しむことができるようにすることである。
【解決手段】本発明に係る調理食品の製造方法は、第1食品素材に、該食品素材に含まれる成分の少なくとも一部を基質とする分解酵素が含まれる調理液を浸透させることにより、前記分解酵素により基質を分解して該第1食品素材を軟化する工程と、前記第1食品素材を加熱する工程とを備える、第1軟化食品の製造工程と、第2食品素材を、分解酵素を用いずに軟化調理する工程を備える、第2軟化食品の製造工程と、前記第1軟化食品と前記第2軟化食品を組み合わせる工程とを備える。
【選択図】
図1