(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6090963
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】二丁掛け安全帯
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20170227BHJP
F16B 45/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
A62B35/00 J
F16B45/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-223780(P2016-223780)
(22)【出願日】2016年11月17日
【審査請求日】2016年11月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511246027
【氏名又は名称】株式会社ユウケイ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】梅田 賢一
【審査官】
今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−90695(JP,A)
【文献】
特開2009−142425(JP,A)
【文献】
特開2014−151029(JP,A)
【文献】
実開昭50−150974(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00
F16B 45/02
A63B 29/02
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業等において使用される安全帯であって、
前記安全帯は、ストッパーを備える二丁の安全フックが夫々所要長さの命綱を介して胴巻ベルトに連結されて成り、
前記二丁の安全フックを重ね合わせた際の対向する内側面の所定箇所に夫々連結機構が設けられ、該連結機構を介して二丁の安全フックを重ね合わせた状態で連結可能であることを特徴とする二丁掛け安全帯。
【請求項2】
前記連結機構が、マグネット、面ファスナー、ボタンフックの何れかにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の二丁掛け安全帯。
【請求項3】
前記連結機構が、一方の安全フックのストッパーを開放することで、二丁の安全フックの連結状態が解除される構造から成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二丁掛け安全帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全帯に関し、詳しくは、高所作業等において使用される二丁掛けの安全帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における建築現場、橋梁工事、鉄塔工事等の高所作業では、安全帯を身体に着用し、ロープの先端部に備えられたフックを建築物の親綱や誘導パイプ等に引っ掛けて、作業者の墜落を防止する安全対策が講じられている。その際、作業行動範囲は、安全帯のロープの長さによって限定されることになるため、広範囲の移動ならびに鉄骨柱を跨ぐ状態で移動しながら作業する場合においては、フックを一度外し、さらにその外したフックを掛け替える必要があるため、フックを外して掛け替えるまでの間の作業者は、一時的に落下の危険性に晒されることになる状態になる。したがって、危険性の高い高所作業現場にあっては、2本の安全フックが具備される安全帯を装用して、フックの掛け替えを繰り返しながら順次作業を進めなければならない、といった面倒な作業をする必要があった。
【0003】
上記のような具体的な安全帯の提案としては、例えば、支持体の径が大きい場合でも支持体の破損するおそれがないように胴綱回し掛けをスムーズにする「柱上安全帯」(特許文献1)や、フック付きロープを簡単な作業によって嵩低く折り畳むことができる「高所作業用安全帯」(特許文献2)などが提案され、公知技術となっている。
【0004】
しかしながら、かかる「柱上安全帯」ならびに「高所作業用安全帯」の何れの提案も、作業者が広範囲に移動する場合や、鉄骨柱を跨ぐ状態で移動しながら作業する場合は、フックを一旦外して再びフックを掛け替える必要があることによって、作業者が一時的に落下の危険性に晒される、といった安全上の問題を解決するものではなかった。
【0005】
また、落下の危険性についての問題点を解決しようと、二本の安全帯のロープを蛇腹構造とすることで使いやすく安全性が高いものとした二丁掛けの「安全帯」(特許文献3)が提案され、公知技術となっている。
【0006】
しかしながら、かかる二丁掛けの「安全帯」の提案は、ロープの伸縮によって広範囲に移動する場合や、鉄骨柱を跨ぐ状態で移動しながら作業する場合においては、安全フックを一旦外して再び安全フックを掛け替える必要があることによって、作業者が一時的に落下の危険性に晒されるといった安全上の問題は解決することができるが、親綱へ最初に安全フックを掛ける際に二丁別々に掛ける手間がかかると共に、外す際も同様に二丁別々に外す手間がかかり、さらには、移動時ならびに作業時において二丁の安全フックが互いにぶつかり合って衝突音が発生したり、安全フックの破損が生じ易い、といった問題点があった。
【0007】
本出願人は、上記のような二丁掛けの安全フックの掛け外しの際の手間や作業時に互いにぶつかり合って衝突音や破損が生ずるといった問題点に着目し、安全上問題ない上に簡易且つ軽量な構造によって上記の問題を解決することができないものかという着想の下、二丁の安全フックを互いに連結可能にして必要に応じて着脱することで上記問題を解決する安全帯を開発し、本発明における「二丁掛け安全帯」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−195633号公報
【特許文献2】特開2009−17942号公報
【特許文献3】実用新案登録第3170262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、二丁の安全フックの掛け外しが一度にできると共に、作業時における二丁の安全フックが互いに衝突するのを防止することが可能な二丁掛け安全帯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、高所作業等において使用される安全帯であって、ストッパーを備える二丁の安全フックが夫々所要長さの命綱を介して胴巻ベルトに連結されて成り、該二丁の安全フックを重ね合わせた際の対向する内側面の所定箇所に夫々連結機構が設けられ、該連結機構を介して二丁の安全フックを重ね合わせた状態で連結可能である手段を採用する。
【0011】
また、本発明は、前記連結機構が、マグネット、面ファスナー、ボタンフックの何れかにより形成された手段を採用し得る。
【0012】
さらに、本発明は、前記連結機構が、一方の安全フックのストッパーを開放することで、二丁の安全フックの連結状態が解除される構造から成る手段を採用し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる二丁掛け安全帯によれば、安全フックを二丁掛けにすることによって、広範囲に移動する場合や、鉄骨柱を跨ぐ状態で移動しながら作業する場合において、作業者が一時的に落下の危険性に晒されるといった安全上の問題を解決することができると共に、既存の安全帯のフックにも後付けで本発明を採用し得る、といった優れた効果を奏する。
【0014】
また、本発明にかかる二丁掛け安全帯によれば、二丁の安全フックが連結機構によって互いに連結可能であるため、該二丁の安全フックを連結して一体化することで、二丁のフックの掛け外しを同時に行うことができる、といった優れた効果を奏する。
【0015】
さらに、本発明にかかる二丁掛け安全帯によれば、二丁の安全フックが連結機構によって互いに連結可能であるため、移動時ならびに作業時において二丁のフックが互いにぶつかり合って発生する衝突音を防止することができると共に、安全フックの破損防止にも資する、といった優れた効果を奏する。
【0016】
またさらに、本発明にかかる二丁掛け安全帯によれば、前記連結機構がマグネットで形成されることによって、鉄骨柱を跨ぐ状態で移動しながら作業する場合において、一時的にフックを鉄骨柱に磁着させることによって、安全性の確保ならびに作業上の移動効率を上げることができる、といった優れた効果を奏する。
【0017】
さらにまた、本発明にかかる二丁掛け安全帯によれば、前記連結機構について、一方の安全フックのストッパーを開放することで、二丁の安全フックの連結状態が解除される構造を採用することにより、連結状態にある二丁の安全フックの一方を掛け替える際の作業が容易にできる、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明にかかる二丁掛け安全帯の実施形態を示す説明図である。
【
図2】本発明にかかる二丁掛け安全帯の連結機構の取り付け状態を示す説明図である。
【
図3】本発明にかかる二丁掛け安全帯の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる二丁掛け安全帯10は、連結機構12を介して二丁の安全フック11を重ね合わせた状態で連結可能であることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる二丁掛け安全帯10の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
尚、本発明は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法等の範囲内で、適宜変更することができる。
【0021】
図1は、本発明にかかる二丁掛け安全帯10の実施形態を示す説明図である。
本発明にかかる二丁掛け安全帯10は、高所作業等において使用されるものであって、ストッパー13を備える二丁の安全フック11が、夫々所要長さの命綱16を介して胴巻ベルト15に連結されて構成されている。
【0022】
二丁掛け安全帯10の全体構成は、作業者Sの胴部に巻かれる胴巻ベルト15の両端に連結バックル19を設けると共に、その胴巻ベルト15には所要長さを有する二本の命綱16が夫々連結され、該命綱16の先端には夫々安全フック11が備え付けられている。尚、二本の命綱16のうち一本は、図面に示すように、胴巻ベルト15に備えられる命綱巻き取り装置17に連結される態様であってもよい。また、二本の命綱16が一本に束ねられる態様、即ち、胴巻ベルト15には一本に束ねられた命綱16が一箇所にて連結され、所定中間箇所から該命綱16が二本に分岐する態様であってもよい。さらに、胴巻ベルト15には、二丁の安全フック11を収納する収納袋18と、胴巻ベルト15の長さを調整する長さ調整バックル20と、胴巻ベルト15との位置調整と命綱16を連結するスライド連結バックル21と、が必要に応じて装備されている。
【0023】
安全フック11は、建築物の親綱Rや誘導パイプ等に引っ掛けた際に外れないように、フック全体が環状を為すようにバネ等で付勢され内側へ押圧することで開放可能なストッパー13が備えられている。また、かかる安全フック11について、二丁の安全フック11を重ね合わせた際の対向する内側面の所定箇所には、夫々連結機構12が設けられており、該連結機構12を介して二丁の安全フック11を重ね合わせた状態で連結することが可能になっている。
【0024】
連結機構12の具体的構造については、特に限定は無いが、二丁の安全フック11を重ね合わせた際に嵩張らず且つ簡易な構造であることが好ましく、その様な構造による連結機構12の例として、マグネットや面ファスナー、ボタンフックなどが望ましい。尚、連結するという機能面にのみ着目した場合には、上記以外に例えば狭持クリップや吸盤等を採用することも可能である。
【0025】
連結機構12がマグネットの場合は、例えば一方の安全フック11にプラス側、他方の安全フック11にマイナス側のマグネットが装備されることで、二丁の安全フック11同士が向かい合う形で相互に磁着して連結される。また、連結機構12が面ファスナーの場合は、一方の安全フック11にフック状面、他方の安全フック11にループ状面を貼着して、二丁の安全フック11同士が向かい合う形で押し付けられることにより係着して連結される。さらに、連結機構12がボタンフックの場合は、一方の安全フック11に雄側、他方の安全フック11に雌側のボタンフックが貼着されることで、二丁の安全フック11同士が向かい合う形で雄側と雌側とが嵌着して連結される。
【0026】
このとき、連結機構12の構造について、一方の安全フック11のストッパー13を開放することで、二丁の安全フック11における連結機構12の連結状態が解除される構造とすることが可能である。かかる構造の具体例として、例えば連結機構12がマグネットの場合、ストッパー13を開放する際の該ストッパー13の動きに合わせてマグネットの位置を移動させることで、互いのマグネットの磁着状態を解除する態様が考え得る。また、連結機構12が面ファスナーやボタンフックの場合は、同様にストッパー13の動きに合わせて面ファスナーやボタンフックを内側へ窪ませる様に移動させることで、互いの係着状態・嵌着状態を解除する態様が考え得る。
【0027】
以上で構成される本発明にかかる二丁掛け安全帯10について、次に、安全フック11の連結機構12並びに連結態様を説明する。
図2は、本発明にかかる二丁掛け安全帯10の連結機構12の取り付け状態を示す説明図であり、(a)は一方の安全フック11に連結機構12(マグネット若しくは面ファスナー)が装着される状態を示す側面図、(b)は連結機構12(マグネット若しくは面ファスナー)が装着された二丁の安全フック11を重ね合わせて連結した状態を示す説明図である。
【0028】
図2(a)に示すように、二丁の安全フック11を重ね合わせた際の対向する内側面の所定箇所に連結機構12が装着されるもので、該連結機構12の安全フック11への装着方法については特に限定は無いが、例えばねじ止めによる螺着や接着剤による貼着によって装着されることとなる。したがって、既存の安全フック11に対しても、後付けで本発明を採用することが可能である。
【0029】
尚、図面では、連結機構12を安全フック11の外面に装備する態様について示しているが、連結機構12がマグネットの場合など、安全フック11の内部スペースに内蔵させる態様も可能である。
【0030】
連結機構12は、二丁の安全フック11を重ね合わせた際の対向する内側面に夫々装着されていることから、
図2(b)に示すように、二丁の安全フック11を重ね合わせた状態で連結し、一体化することとなる。したがって、二丁の安全フック11が互いにぶつかり合うことなく、衝突音を防止すると共に安全フック11の破損防止が図られる。
【0031】
以上で構成される本発明にかかる二丁掛け安全帯10について、次に、その使用態様を順を追って説明する。
図3は、本発明にかかる二丁掛け安全帯10の使用状態を示す説明図であり、(a)乃至(d)の順に沿って移動若しくは作業が移行する。
【0032】
(1)建築現場、橋梁工事、鉄塔工事等の高所作業場に設置された親綱Rに連結機構12を介して連結された二丁の安全フック11を同時に掛け、その状態で移動若しくは作業を行う(
図3(a)参照)。
(2)建物の鉄筋柱や境目に当面したら、先行する安全フック11を親綱Rから取り外し、次の親綱Rに掛ける(
図3(b)参照)。
(3)もう一方の後行する安全フック11を親綱Rから取り外し、次の親綱Rに掛ける(
図3(c)参照)。
(4)二丁の安全フック11を連結機構12を介して連結し、次への移動若しくは作業を行う(
図3(d)参照)。
(5)尚、図示してはいないが、移動若しくは作業が終了した場合は、連結機構12を介して連結された二丁の安全フック11を親綱Rから同時に外す。
【0033】
以上で構成される本発明にかかる二丁掛け安全帯10は、安全フック11を二丁掛けにすることによって、広範囲に移動する場合や、鉄骨柱Tを跨ぐ状態で移動しながら作業する場合において、作業者が一時的に落下の危険性に晒されるといった安全上の問題を解決することができると共に、既存の安全帯のフックに後付けで採用することができ、さらに、二丁の安全フック11が連結機構12によって一体化できることによって、二丁の安全フック11を親綱Rや誘導パイプ等に対し同時に掛け外し可能であると共に、移動時ならびに作業時において二丁の安全フック11が互いにぶつかり合って発生する衝突音を防止することができると共に、安全フック11の破損防止にも資するものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、二丁の安全フック11がぶつかり合うことで生ずる衝突音や破損のおそれを簡易且つ軽量な構造によって防止することができると同時に、作業現場における安全性の確保が容易にできることから、本発明にかかる「二丁掛け安全帯」の産業上の利用可能性は極めて大であるものと思料する。
【符号の説明】
【0035】
10 二丁掛け安全帯
11 安全フック
12 連結機構
13 ストッパー
15 胴巻ベルト
16 命綱
17 命綱巻き取り装置
18 収納袋
19 連結バックル
20 長さ調整バックル
21 スライド連結バックル
R 親綱
T 鉄骨柱
S 作業者
【要約】
【課題】 二丁の安全フックの掛け外しが一度にできると共に、作業時における二丁の安全フックが互いに衝突するのを防止することが可能な二丁掛け安全帯の提供を図る。
【解決手段】 高所作業等において使用される安全帯10であって、二丁の安全フック11が夫々所要長さの命綱16を介して胴巻ベルト15に連結されて成り、該二丁の安全フック11における対向する内側面の所定箇所に、夫々連結機構12が設けられた構成となっている。該連結機構12は、マグネット、面ファスナー、ボタンフックの何れかにより形成された手段を採り得る。
【選択図】
図1