特許第6090983号(P6090983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6090983電力消費が低減されたパイプライン式アナログ−デジタル変換器及び変換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090983
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】電力消費が低減されたパイプライン式アナログ−デジタル変換器及び変換方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/44 20060101AFI20170227BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H03M1/44
   H03M1/12 C
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-277272(P2012-277272)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-150316(P2013-150316A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年12月16日
(31)【優先権主張番号】13/355,657
(32)【優先日】2012年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504199127
【氏名又は名称】エヌエックスピー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NXP USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス エイ.ギャリティ
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−074433(JP,A)
【文献】 特開2007−201897(JP,A)
【文献】 特開2008−205704(JP,A)
【文献】 特開2000−013232(JP,A)
【文献】 特開平05−063571(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/003978(WO,A2)
【文献】 米国特許第06362770(US,B1)
【文献】 米国特許第06366230(US,B1)
【文献】 米国特許第06801151(US,B1)
【文献】 米国特許第07652611(US,B2)
【文献】 Kwang Young Kim,A 10-b, 100-MS/s CMOS A/D Converter,IEEE Journal of Solid-State Circuits,1997年 3月,Volume 32, Issue 3,p. 302-311
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/44
H03M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプライン式アナログ−デジタル変換器としてのパイプライン式ADコンバータであって、前記パイプライン式ADコンバータは第1パイプラインADコンバータ段と第2パイプラインADコンバータ段とを有し、
前記第1パイプラインADコンバータ段は、
アナログ入力信号を受信し、
前記アナログ入力信号を第1周波数においてサンプリングし、
前記第1周波数において第1残差信号を生成するように構成され、前記残差信号は前記サンプリングされたアナログ入力信号に応答し、
前記第2パイプラインADコンバータ段は、前記第1残差信号を前記第1パイプラインADコンバータ段から受信するように結合され、
前記第2パイプラインADコンバータ段はさらに、それぞれが前記第1残差信号を第2周波数においてサンプリングするように構成される複数の第1サンプル回路を備え、
前記複数の第1サンプル回路はN個のサンプル回路を有し、Nは2以上であり、
前記第2周波数は前記第1周波数の1/N倍であり、
前記複数の第1サンプル回路のそれぞれは、前記第1残差信号の、前記複数の第1サンプル回路の互いから固有の部分をサンプリングし、
前記第2パイプラインADコンバータ段は、前記第1周波数において第2残差信号を生成するように構成される、
パイプライン式ADコンバータ。
【請求項2】
前記パイプライン式ADコンバータはさらに、前記第2パイプラインADコンバータ段から前記第2残差信号を受信するように結合される第3パイプラインADコンバータ段を備え、
前記第3パイプラインADコンバータ段は、それぞれが前記第2残差信号を第3周波数においてサンプリングするように構成される複数の第2サンプル回路を備え、
前記複数の第2サンプル回路はM個のサンプル回路を有し、Mは2以上であり、
前記第3周波数は前記第1周波数の1/M倍であり、
前記複数の第2サンプル回路のそれぞれは、前記第2残差信号の、前記複数の第2サンプル回路の互いから固有の部分をサンプリングし、
前記第3パイプラインADコンバータ段は、前記第1周波数において第3残差信号を生成するように構成される、
請求項1記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項3】
MはNに等しくない、
請求項2記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項4】
MはNに等しい、
請求項2記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項5】
MおよびNは、2の累乗である、
請求項2記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項6】
Nは2の累乗である、
請求項1記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項7】
前記第1パイプラインADコンバータ段はさらに、前記アナログ入力信号の各サンプルに対応する第1デジタル出力を生成するように構成され、
前記第2パイプラインADコンバータ段はさらに、前記第1残差信号の各サンプルに対応する第2デジタル出力を生成するように構成される比較器ロジックを備える、
請求項1記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項8】
前記第2パイプラインADコンバータ段の比較器は、
前記複数の第1サンプル回路のそれぞれに対応する論理回路をさらに備え、
前記論理回路は、対応する前記サンプル回路を制御するように構成される1つまたは複数の制御信号を生成するように構成される、
請求項7記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項9】
前記第2パイプラインADコンバータ段の比較器ロジックは、
前記複数の第1サンプル回路のそれぞれに結合される論理回路をさらに備え、
前記論理回路は、各サンプル回路を制御するように構成される1つまたは複数の制御信号を生成するように構成される、
請求項7記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項10】
前記第2パイプラインADコンバータ段はさらに、
前記複数の第1サンプル回路のそれぞれの出力に結合される入力と、および前記第2残差信号を提供するように構成される出力とを有する1つの増幅器を備える、
請求項1記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項11】
アナログ信号をデジタル信号に変換するための方法であって、前記方法は、
第1周波数において前記アナログ信号をサンプリングすることと;
前記サンプリングされたアナログ信号に応答する第1デジタル出力信号を生成することと;
前記第1周波数において第1残差信号を生成することであって、前記第1残差信号は、前記サンプリングされたアナログ信号に応答することと
を有し、
前記アナログ信号を前記サンプリングすること、前記第1デジタル出力信号を前記生成すること、および前記第1残差信号を前記生成することは、第1パイプラインアナログ−デジタル変換器段としての第1パイプラインADコンバータ段によって実行され、
前記方法はさらに、
第2周波数において前記第1残差信号をサンプリングすることを有し、
前記第1残差信号を前記サンプリングすることは、それぞれが前記第2周波数において前記第1残差信号をサンプリングするように構成される複数のサンプル回路のうちの1つによって実行され、
前記複数のサンプル回路はN個のサンプル回路を有し、Nは2の累乗であり、かつ2以上であり、
前記第2周波数は前記第1周波数の1/N倍であり、
前記方法はさらに、
前記複数のサンプル回路のそれぞれが、前記第1残差信号の、前記複数のサンプル回路の互いから固有の部分をサンプリングすることと;
前記サンプリングされた第1残差信号に応答する第2デジタル出力信号を生成することと;
前記第1周波数において第2残差信号を生成することと
を有し、
前記第2残差信号は、前記サンプリングされた第1残差信号に応答し、
前記第2デジタル出力信号を前記生成すること、および前記第2残差信号を前記生成することは、第2パイプラインADコンバータ段によって実行され、
前記第2パイプラインADコンバータ段は、前記複数のサンプル回路を備える、
方法。
【請求項12】
前記方法はさらに、
第3周波数において前記第2残差信号をサンプリングすることを有し、
前記第2残差信号を前記サンプリングすることは、それぞれが前記第3周波数において前記第1残差信号をサンプリングするように構成される複数の第2サンプル回路のうちの1つによって実行され、
前記複数の第2サンプル回路はM個のサンプル回路を有し、Mは2の累乗であり、かつ2以上であり、
前記第3周波数は、前記第1周波数の1/M倍であり、
前記方法はさらに、
前記複数の第2サンプル回路のそれぞれが、前記第2残差信号の、前記複数の第2サンプル回路の互いから固有の部分をサンプリングすることと;
前記サンプリングされた第2残差信号に応答する第3デジタル出力信号を生成することと;
前記第1周波数において第3残差信号を生成することであって、前記第3残差信号は前記サンプリングされた第2残差信号に応答することと
を有し、
前記第3デジタル出力信号を前記生成すること、および前記第3残差信号を前記生成することは、第3パイプラインADコンバータ段によって実行され、
前記第3パイプラインADコンバータ段は、前記複数の第2サンプル回路を備える、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
MはNに等しくない、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
MはNに等しい、
請求項12記載の方法。
【請求項15】
パイプライン式アナログ−デジタル変換器としてのパイプライン式ADコンバータであって、前記パイプライン式ADコンバータは、
アナログ信号をサンプリングするための手段と、第1デジタル出力信号を生成するための手段と、および第1残差信号を生成するための手段とを有する、第1パイプラインアナログ−デジタル変換器段としての第1パイプラインADコンバータ段と;
第2デジタル出力信号を生成するための手段と、第2残差信号を生成するための手段と、および第1残差信号をサンプリングするためのN個の手段とを有する、第2パイプラインアナログ−デジタル変換器段としての第2パイプラインADコンバータ段と
を備え、
アナログ信号をサンプリングするための前記手段は、アナログ信号を第1周波数においてサンプリングするための手段であり、
前記第1デジタル出力信号を生成するための前記手段は、前記サンプリングされたアナログ信号に応答し、
前記第1周波数において第1残差信号を生成するための前記手段は、前記サンプリングされたアナログ信号に応答し、
前記第1残差信号をサンプリングするための前記N個の手段のそれぞれは、第2周波数において前記第1残差信号をサンプリングするように構成され、
Nは2の累乗であり、かつ2以上であり、
前記第2周波数は、前記第1周波数の1/N倍であり、
前記第1残差信号をサンプリングするための前記N個の手段のそれぞれは、前記第1残差信号の、前記第1残差信号をサンプリングするための前記N個の手段の互いから、固有の部分をサンプリングし、
前記第2デジタル出力信号を生成するための前記手段は、前記サンプリングされた第1残差信号に応答し、
第2残差信号を生成するための前記手段は、前記第1周波数において第2残差信号を生成するための手段であり、
前記第2残差信号を生成するための前記手段は、前記サンプリングされた第1残差信号に応答する、
パイプライン式ADコンバータ。
【請求項16】
前記パイプライン式ADコンバータはさらに、第2残差信号をサンプリングするためのM個の手段と、第3デジタル出力信号を生成するための手段と、および第3残差信号を生成するための手段とを備える第3パイプラインADコンバータ段を有し、
前記第2残差信号をサンプリングするための前記M個の手段のそれぞれは、第3周波数において前記第2残差信号をサンプリングするように構成され、
Mは2の累乗であり、かつ2以上であり、
前記第3周波数は前記第1周波数の1/M倍であり、
前記第2残差信号をサンプリングするための前記M個の手段のそれぞれは、前記第2残差信号の、前記第2残差信号をサンプリングするための前記M個の手段の互いから固有の部分をサンプリングし、
前記第3デジタル出力信号を生成するための前記手段は、前記サンプリングされた第2残差信号に応答し、
前記第1周波数において第3残差信号を生成するための前記手段は、前記サンプリングされた第2残差信号に応答する、
請求項15記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項17】
MはNに等しくない、
請求項16記載のパイプライン式ADコンバータ。
【請求項18】
MはNに等しい、
請求項16記載のパイプライン式ADコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的にはアナログ−デジタル変換器の分野に関する。より具体的には、他のタイプのパイプライン式アナログ−デジタル変換器よりも低減された電力使用量をも有しながら、高いサンプルレートを提供するパイプライン式アナログ−デジタル変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルビデオ、無線通信、およびセンサ信号解釈のような用途は、低電力かつ高速のアナログ−デジタル信号変換を必要とすることが多い。パイプライン式アナログ−デジタル変換器(ADC。ADコンバータ)は、高いスループットと小さい面積の組み合わせを提供する。パイプライン式ADコンバータは一般的に、信号が各パイプライン段を通じて処理されるときの、パイプラインに関連付けられる待ち時間を許容することができる、中程度から高い分解能の用途に使用される。
【0003】
システムクロックおよびデータレートの増大に追随するために、高いスループットを達成するための、並列ADコンバータのアレイを時間インタリーブする技法が、デジタルストレージオシロスコープを含むさまざまな用途に適用されている。従来、このような並列ADコンバータパイプラインにおいて入力電圧は、所望のサンプルレートにおいてデジタル符号に変換され、一方で各ADコンバータ段の内部回路は、入力ストリームのサンプルをより低い内部周波数(たとえば2つの並列パイプラインについてはサンプル周波数の二分の一)で処理する。これによって、ADコンバータパイプライン段の内部回路に対する制約が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,574,457号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような並列信号処理の欠点は、並列パイプラインチャネルが、並列パイプの数に等しい多数のクロックエッジ上で入力信号をサンプリングすることである。加えて、チャネル間に不整合(利得誤差)、オフセット、およびタイミングの不正確さが存在する虞もある。これによって、ADコンバータシステム全体の周波数応答に重大なスパーが生成されるという影響がある虞がある。これらの出力問題を修正するために使用されている技法(たとえば回路の較正および自動ゼロ化、またはクロック回路の設計)は、入力周波数が高くなると欠陥を示しており、または変換プロセスに寄与することなく電力およびスペースを消費する回路を使用することを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それゆえ、同時に従来の時間インタリーブパイプライン式ADコンバータ方法によって示される周波数応答問題を回避しながら、並列パイプラインADコンバータの高速かつ低電力の利益を提供するADコンバータを有することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明は、添付の図面を参照することによってよりよく理解されることができ、その多数の目的、特徴、および利点が当業者に明らかとなる。
図1】汎用パイプライン式ADコンバータを示す簡略ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に従って実装されるパイプライン式ADコンバータの最初の2つの段を示す簡略回路図である。
図3図2に示される回路の最初の2つの段の動作に影響を与える例示的なクロック信号の相対的なタイミングを示す図である。
図4図4(a)と図4(b)はそれぞれ、図2に示される回路による、ADコンバータ変換サイクルの第1クロック期間中のADコンバータパイプラインの第1段の効率的な回路構成を示す簡略回路図である。
図5図5(a)と図5(b)と図5(c)と図5(d)はそれぞれ、図2に示される回路による、種々のクロック期間中のADコンバータパイプラインの第2段の効率的な回路構成を示す簡略回路図である。
図6】本発明の実施形態に従って実装されるパイプライン式ADコンバータのm番目の段を示す簡略回路図である。
【0008】
異なる図面において同じ参照符号が使用されている場合、これは、別途記載しない限り、同一の項目であることを示す。図面は必ずしも原寸に比例して描かれてはいない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1パイプライン段を除くすべてのパイプライン段が、入力サンプルレートの或る分数である周波数において動作するようにすることによって、高入力サンプルレートおよび低電力消費の両方の利点を有するパイプライン式アナログ−デジタル変換器(ADコンバータ)が提供される。パイプライン式ADコンバータの第1段は、全ADコンバータサンプルレートである内部動作周波数を有し、各サンプルにおいて同じクロックエッジ上で入力信号をサンプリングする。後続のパイプライン段は並列入力サンプリング回路を有し、それゆえ低減されたレートで、先行する段によって提供される入力信号をサンプリングすることができる。この結果として、入力サンプリング回路の動作周波数が低減され、それによって、それらの段による電力消費の低減が提供される。入力信号を各サンプルについて同じクロックエッジ上でサンプリングすることによって、2つ以上のクロックエッジ上で入力信号をサンプリングするADコンバータアーキテクチャに関連付けられる周波数応答画像生成問題(frequency response image generation)が回避される。
【0010】
簡潔にするために、スイッチドキャパシタベースの利得段、ADコンバータアーキテクチャ、電圧比較回路、デジタル論理回路、およびシステムの他の機能態様(および個々のシステム動作構成要素)に関連する従来の技法は本明細書においては詳細には説明されない場合がある。さらに、本明細書に含まれるさまざまな図面において示されている接続線は、さまざまな要素間の例示的な機能的関係および/または物理結合を表すように意図されている。なお、多くの代替形態または追加の機能的関係もしくは物理接続が実際の実施形態において存在してもよい。加えて、説明を容易にするために、図面は例示的なシングルエンドの実施態様を示しているが、当業者は、示されている技法を、本開示の範囲から逸脱することなく、提供されているガイドラインを使用して異なるシグナリング用途において使用するために適合させることができる。
【0011】
図1は、汎用パイプライン式ADコンバータを示す簡略ブロック図である。示されているように、ADコンバータ100は、複数の冗長符号桁(RSD)段110、120、および130、ならびにマルチビットフラッシュADコンバータ段140を有する。一般的に、パイプライン式ADコンバータ100は、アナログ信号(Vin)を指定されるクロックレートにおいてサンプリングし、各サンプリングされる信号の電圧振幅に対応するデジタル信号を生成する。パイプライン式ADコンバータの分解能または精度は、使用されるADコンバータ段の数の関数である。各ADコンバータ段は、第1段(110)の最上位ビット(MSB)(たとえばDOUT1)に始まって最後の段(140)からの最下位ビット(たとえばDOUTN)に終わる、少なくとも1ビットの分解能を提供する。
【0012】
ADコンバータ100の動作の速度全体は、パイプライン内の一連のADコンバータ段の速度に関連する。各ADコンバータ段は、デジタル信号を生成する前に、任意の先行するADコンバータ段の結果(たとえばRes1およびRes2)に依拠する。一般的なADコンバータ段は、たとえばスイッチドキャパシタ利得段および少なくとも1つの比較器を提供する回路を有する。ADコンバータ段のスイッチドキャパシタ利得段は、隣接して結合されているADコンバータ段から、そのADコンバータ段によって受信される電圧を増幅する。
【0013】
ADコンバータ段の比較器は、ADコンバータ段によって受信された入力電圧を、基準電圧と比較し、対応する論理レベルを生成する。ADコンバータ段の比較器の1つの例は、入力電圧を2つの基準電圧レベルVHおよびVLと比較する2つの比較器を有する。入力電圧がVLよりも低い場合、その段に関するデジタル出力(たとえばDOUT1、DOUT2など)は−1にセットされる。入力電圧がVHよりも高い場合、その段に関するデジタル出力は1にセットされる。そうでなく、入力信号がVLとVHとの間である場合、その段に関するデジタル出力は0にセットされる。この比較器構成は、上述のスイッチドキャパシタ利得段とともに、1.5ビットADコンバータ段と呼ばれる。異なるタイプの比較器を有するADコンバータでは、段は1以上のビットのデータを提供することができる。比較器の数およびタイプの選択は、用途に応じて決まる。
【0014】
次の段に渡されることになる残差電圧も生成される。上記の例において、入力電圧がVLよりも低い場合、入力は2倍にされ(すなわち入力電圧が2倍に増幅される)、基準電圧が加算されて残差が提供される。入力電圧がVHよりも大きい場合、入力は2倍にされ、基準電圧が減算されて残差が提供される。入力信号がVLとVHとの間である場合、入力信号が2倍にされる。残差の「利得」の量は、ADコンバータ段の用途および構成(たとえば回路の増幅器部分におけるコンデンサの選択)に応じて決まる。
【0015】
パイプライン式ADコンバータにおいて多くの場合、パイプラインの最後の段は、最下位ビットを分解するフラッシュADコンバータ(たとえば140)である。フラッシュADコンバータ段は、アナログ信号をデジタル出力に変換するために使用される異なる閾値電圧を有する一連の比較器である。
【0016】
各段からのビットは、サンプル残差がパイプラインを通過するときに異なる時点において求められるため、同じサンプルに対応するビットのすべてが、たとえば整合・同期ブロック150におけるシフトレジスタを使用して時間的に整合される。その後、アナログ入力のデジタル表現がデジタル誤差補正ロジック160に渡される。デジタル誤差補正ロジック160は、パイプライン式ADコンバータの最後の段を除く任意の段にある比較器によって生成される誤差を補正するように構成される。加えて、論理ブロック150および160は、デジタル出力170を生成する前の、デジタル出力の他のデジタル処理を実行することができる。パイプラインADコンバータからのデジタル出力は、パイプラインの各段による処理分の遅延をもって、ADコンバータのサンプルレートにおいて提供される。
【0017】
一般的なパイプライン式ADコンバータでは、各ADコンバータ段は全ADコンバータサンプルレートにおいてクロック制御される。これは、各段における増幅器が、全ADコンバータサンプルレートに対応する全周波数において動作することができることを必要とする。ADコンバータ動作周波数が高くなるほど、消費する電力が高くなる。速度における利点は並列ADコンバータを使用することによって実現することができるが、各追加のパイプラインADコンバータによって電力使用が増大する。単一のパイプラインと同じサンプルレートを達成するために並列ADコンバータパイプラインにおいてはより低い周波数が使用され得るが、各パイプラインが電力を消費するため、電力消費は高いままである。さらに、並列段回路を使用することは、非並列回路アーキテクチャよりも広い回路面積を必要とする。したがって、4または8チャネルパイプラインが使用され得るが、追加のチャネルによって消費されている追加の回路面積におけるトレードオフは、スペースを意識した用途では許容しがたい。
【0018】
マルチチャネルパイプラインによって使用されるサンプリングプロセスは、画像生成問題も提示する虞がある。パイプラインの各チャネルは異なるクロックエッジ上で入力信号をサンプリングするため、パイプライン式ADコンバータの出力には重大な周波数応答スパーが存在する虞がある。これは、各チャネルに対して厳密にマッチしていないサンプリングクロック制御、および並列回路内の構成要素の不整合などの結果である。この問題に対する1つの解決策は、パイプラインの前にサンプルホールド回路を提供することであり得、その場合、この回路は明確に定義されたクロック間隔においてサンプリングされる入力電圧をADコンバータパイプラインに提供することができる。しかし、このような解決策は、スペースを消費し、ADコンバータに何ら計算上の利点を提供しない追加の回路を利用する。
【0019】
本発明の実施形態は、周波数応答画像生成問題、およびマルチチャネルパイプラインが呈するスペースの効率的な利用の問題の両方を解決する。パイプライン式ADコンバータの第1段(たとえば第1冗長符号桁段110)は、所望の全サンプルレートにおいてアナログ入力をサンプリングする。その後、第1段からの残差が後続の段に提供され、後続の段は、並列サンプリング回路を利用することによってより低いレートにおいてサンプリングする回路を有して構成され、並列サンプリング回路の各部分は第1段の動作周波数の規定の分数において動作している。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に従って実装されるパイプライン式ADコンバータの最初の2つの段(たとえば第1冗長符号桁段110および第2冗長符号桁段120)を示す簡略回路図である。図3は、最初の2つの段の動作に影響を与える例示的なクロック信号の相対的なタイミングを示す図である。
【0021】
第1冗長符号桁段110は、入力電圧信号(Vin)を受信するための入力ノード210と、入力電圧信号から導出される残差電圧を提供するための出力ノード215とを有する。第1冗長符号桁段110は、第1基準電圧Vrefpのための第1基準ノード220と、第2基準電圧Vrefmのための第2基準ノード225とをも有する。第1冗長符号桁段110は、スイッチ制御信号(h1、l1、m1)およびデジタル出力DOUT1を生成するデジタル論理構成要素232を有する比較器230を含む。
【0022】
ADコンバータの第1冗長符号桁段110の動作は当業者に既知であり、それゆえ、詳細には説明しない。簡潔には、第1冗長符号桁段110内のスイッチが、図3に示されるクロック信号、およびデジタル論理構成要素232によって生成されるスイッチ制御信号によって制御される。図2内のスイッチはそれらそれぞれが管理するクロック/制御信号をラベリングされている。この例において、クロック/制御信号がハイであるとき、関連付けられるスイッチが閉じ、クロック/制御信号がローであるとき、関連付けられるスイッチが開く。したがって、p1クロック信号がハイでありp2クロック信号がローであるとき、C1およびC2コンデンサが充電されて入力ノード210に印加される入力電圧がサンプリングされる。p1クロック信号がローでありp2クロック信号がハイであるとき、C1およびC2コンデンサが増幅器240に結合され、増幅器240は出力ノード215において出力電圧(Vresidue)を生成する。
【0023】
加えて、入力ノード210に存在する入力電圧の、高電圧基準(VH)および低電圧基準(VL)に対する比較に応じて、h1、l1、またはm1スイッチのうちの1つが閉じる。比較の結果は、上述のように、デジタル出力DOUT1のデータ値をも決定する。ゲイン位相中にh1スイッチが閉じる場合に、p1クロック信号がローでありp2クロック信号がハイであるとき、そうでないときに出力ノード215において生成される出力電圧からVrefpが減算される。ゲイン位相中にl1スイッチが閉じる場合、そうでないときに出力ノード215において生成される出力電圧からVrefmが減算される。ゲイン位相中にm1スイッチが閉じる場合、C1およびC2コンデンサのみが出力ノード215における出力電圧に寄与する。一般的なADコンバータ用途では、Vrefpは正基準電圧であり、VrefmはVrefpと同じまたは異なる絶対値を有する負基準電圧であり、C1およびC2コンデンサは等しいキャパシタンスを有する。これらの条件下では、m1スイッチが閉じるとき、出力ノード215における出力電圧は入力ノード210における入力電圧の2倍になり、l1またはh1スイッチが閉じるとき、出力電圧はVrefmまたはVrefpが加算または減算されることによって変更される。
【0024】
図4は、上述の回路による、異なるクロック位相中の第1冗長符号桁段110の効率的な回路構成を示す簡略回路図である。上述のように、p1がハイであるとき、コンデンサC1およびC2は入力ノード210において入力電圧Vinに結合され、充電されてその電圧がサンプリングされる(図4(a))。加えて、図2には示されていないが、コンデンサCf1が増幅器240と並列に配置されることができ、増幅器が出力電圧を生成するために使用されていないときにリセットすることが可能となる。コンデンサCf1は、信号p1によって制御されるスイッチによって回路内に含まれることができる。p2の間(図4(b))、コンデンサC1は増幅器240の反転入力と出力との間に結合され、一方でC2は基準電圧Vrefpと増幅器240の反転入力との間に結合される。加えて、コンデンサCf1は、p1によって制御される開スイッチによって増幅器回路から絶縁される。
【0025】
図2に戻って、第2冗長符号桁段120は一群の直列結合されるスイッチドキャパシタサンプリング段を提供する。2つ以上のスイッチドキャパシタサンプリング段を利用することによって、パイプライン式ADコンバータのサンプル周波数全体が維持されることができるが、各スイッチドキャパシタサンプリング段の回路は冗長符号桁段のサンプル周波数全体の或る分数において機能する。図2に示されているように、第2冗長符号桁段120は2つのスイッチドキャパシタサンプリング段を提供し、それゆえ、各スイッチドキャパシタサンプリング段は、ADコンバータのサンプル周波数全体の二分の一において動作する共有増幅器260を使用する。各スイッチドキャパシタサンプリング段は増幅器260に結合され、増幅器260は、下記でより明らかになるように、サンプル周波数の二分の一において動作しながら、サンプル周波数全体において必要とされる信号を処理する。
【0026】
第2冗長符号桁段120は、ノード215において提供される入力信号を有し、この入力は第1冗長符号桁段110から渡される残差電圧である。さらに、第1基準電圧Vrefpのために第1基準ノード242が提供され、第2基準電圧Vrefmのために第2基準ノード245が提供される。VrefpおよびVrefmは第1冗長符号桁段110において使用されるものと同じであることができ、または異なることができる。VrefpおよびVrefmが各後続の段においてより小さいとすると、増幅器はそれほどスイングしない(振れない)であろう。しかし、各段についてVrefpおよびVrefmの別個の基準生成器が必要とされることになり、これによって、追加の回路スペースが必要とされ、増幅器のスイング(振れ)が低減することによって増幅器がノイズの影響をより受けやすくなり、したがって増幅器に関してノイズフロアを低減するためにさらに電力が必要となる。したがって、各段について同じVrefpおよびVrefmを利用することがより実際的である。
【0027】
出力ノード250はノード215において受信される入力電圧信号から導出される残差電圧を提供する。第2冗長符号桁段120は、スイッチ制御信号ha、la、ma、ならびにhb、lb、およびmbとデジタル出力DOUT2とを生成する1つまたは複数のデジタル論理構成要素(図示せず)を有する比較器ロジック255をも有する。下記により詳細に説明するように、スイッチ制御信号(ha、la、ma)はスイッチドキャパシタサンプリング段のうちの1つにおけるスイッチを制御するのに使用され、一方でスイッチ制御信号(hb、lb、mb)はスイッチドキャパシタサンプリング段のうちの他方におけるスイッチを制御するのに使用される。スイッチ制御信号の追加のセットが冗長符号桁段の各スイッチドキャパシタサンプリング段に対して生成される。さらに、各スイッチドキャパシタサンプリング段は、追加の回路面積を費やすが各比較器はより低い周波数において動作する専用の比較器ロジックを有することができるか、またはさまざまなスイッチドキャパシタサンプリング段が同じ比較器ロジックを共有することができる(図示の通り)。
【0028】
第2冗長符号桁段120の動作は当業者に既知であり、それゆえ詳細には説明しない。このような冗長符号桁段の動作の詳細な例については、特許文献1「スイッチドキャパシタ利得段(Switched Capacitor Gain Stage)」を参照されたい。簡潔には、第2冗長符号桁段120内のスイッチが、図3に示されるクロック信号、および比較器ロジック255によって生成されるスイッチ制御信号によって制御される。スイッチはそれらそれぞれが管理するクロック/制御信号をラベリングされている。第1冗長符号桁段110と同様に、クロック/制御信号がハイであるとき、関連付けられるスイッチが閉じ、クロック/制御信号がローであるとき、関連付けられるスイッチが開く。
【0029】
上述のように、第2冗長符号桁段120内に示されているスイッチドキャパシタサンプリング段は、クロックサイクルの異なる点において動作する。たとえばクロック信号p1aがハイでありクロック信号p2aがローであるとき、コンデンサC1aおよびC2aが充電されて入力ノード215に印加される入力電圧がサンプリングされる。これは図5(a)に示されている。他方、クロック信号p1bがハイでありクロック信号p2bがローであるとき、コンデンサC1bおよびC2bが充電されて入力ノード215に印加される入力電圧がサンプリングされる。これは図5(b)に示されている。図3に示されているように、p1aがハイであり、p1bがローであるとき、およびその逆であるとき、両方のスイッチドキャパシタサンプリング段は決して入力電圧を同時にサンプリングしない。交互のサンプル期間において第1冗長符号桁段110が最近の残差電圧をノード215に(すなわちp2がハイであるとき)提供した後に、それぞれがノード215における入力電圧をサンプリングする。
【0030】
各スイッチドキャパシタサンプリング段の充電サイクルの後、スイッチドキャパシタサンプリング段は信号を増幅器260に提供する。たとえばクロック信号p2aがハイであり信号laがハイであるとき、C1aおよびC2aコンデンサは増幅器260に結合され、増幅器260は出力ノード250において電圧を生成する。これは図5(d)に示されている。第1冗長符号桁段110と同様に、制御信号ha、la、およびmaは、入力ノード215に存在する入力電圧の、高電圧基準および低電圧基準に対する比較に依存する。これらの基準電圧は第1冗長符号桁段110に対して使用されているものと同じであってもよいし、同じでなくてもよく、比較の結果によって、デジタル出力DOUT2のデータ値が決定する。別の例において、クロック信号p2bがハイであり信号hbがハイであるとき、コンデンサC1bおよびC2bは増幅器260に結合され、増幅器260は出力ノード250において対応する出力電圧を生成する。これは図5(c)に示されている。制御信号hb、lb、およびmbは、コンデンサC1bおよびC2bによってサンプリングされるものとしての入力電圧の、高電圧基準および低電圧基準に対する比較に依存する。
【0031】
図3のタイミング図から分かるように、第2冗長符号桁段120のスイッチドキャパシタサンプリング段のサンプルタイミングは、第1冗長符号桁段110の出力タイミングに関係する。p2がハイであるとき、第1冗長符号桁段110は信号をノード215に出力する。各スイッチドキャパシタサンプリング段のサンプリングを制御するクロック信号p1aおよびp1bは、p2の1つおきのハイクロックに対してそれぞれハイであるようにタイミングをとられ、それによって、p2の最初のハイクロックの間p1aがハイであり、p2の次のハイクロック信号にわたってp2aがハイであり、その後続くハイクロックにわたってp1aがハイであり、以下同様である。第2冗長符号桁段120の出力はクロック信号p2aおよびp2bによって制御される。図3から分かるように、p2aおよびp2bは、第1冗長符号桁段110の出力周波数と同じ周波数において出力残差信号がノード250において提供されるように構成される。その後、この出力残差信号は、後続の段によってサンプリングされる。
【0032】
図6は、本発明の実施形態に従って実装されるパイプライン式ADコンバータの第m段(段m)(たとえば第3冗長符号桁段130)を示す簡略ブロック図である。示されているように、図6は、2つのスイッチドキャパシタサンプリング段(たとえば640)を有する段600を提供する。スイッチドキャパシタサンプリング段は、図2に関連して上述した第2冗長符号桁段120のスイッチドキャパシタサンプリング段と同様に構成される。追加のスイッチドキャパシタサンプリング段がADコンバータ段600に組み込まれることによって、さらなる電力の利益が実現されることができる。ADコンバータ段600の効果的な実施態様は、2の累乗である並列数のサンプリング段を有し、これはまた、回路のクロック制御を単純化する。x個のスイッチドキャパシタサンプリング段を有することによって、各スイッチドキャパシタサンプリング段はADコンバータパイプライン内の最初の段(すなわち第1冗長符号桁段110)の1/xのサンプリング周波数を有する。動作周波数を低減し、それに関連して電力を節約する代償として、各追加のスイッチドキャパシタサンプリング段640に対して追加の回路スペースが必要となる。
【0033】
図3に示されている例示的なタイミング図は、クロック信号p2aおよびp2bを提供する。3つ以上のスイッチドキャパシタサンプリング段を有する冗長符号桁段について、各段についてスイッチを制御するために必要とされるクロック信号の数を拡大するために既知の技法が適用されることができる。段mによって受信される入力電圧信号は、段(m−1)によって生成される残差電圧信号(Res(m−1))であり、入力ノード610において受信される。基準電圧VrefpおよびVrefmがそれぞれノード620および625において受信され、第2冗長符号桁段120に関連して上述されたものと同様に使用されて、出力ノード630において出力電圧(Res(m))が生成され、これは後続の段に渡される。既に説明されたように、比較器ロジック650は制御信号ha、hb、la、lb、ma、およびmbを生成する。比較器ロジック650は、用途の性質に応じて制御信号を生成するために、スイッチドキャパシタサンプリング段の数に等しい数の比較器を有することができる。比較器論理ブロック650はデジタル出力DOUTmをも生成し、これは整合・同期ロジック(たとえば150)に提供される。
【0034】
上述のように、パイプライン式ADコンバータ100の最後の段は、当該技術分野において既知の技法に従って実装されるフラッシュADコンバータ段(たとえば3ビットフラッシュ)である。このようなADコンバータ段は最小限の回路から作成されることができ、パイプラインのための最下位ビットを適切に提供することができる。
【0035】
上述のように、本発明の実施形態におけるように、サイクルごとに同じクロックエッジ上でサンプリングするパイプライン式ADコンバータの最初の段を使用することによって、タイミングの不正確さ、およびマルチチャネルパイプライン式ADコンバータにおける複数のチャネル間の利得不整合を回避するという利点が提供される。これによって、ADコンバータパイプライン全体の周波数応答におけるスパーが低減するかまたはなくなる。ADコンバータの後続のパイプライン段においてマルチチャネル段を使用する利益は、パイプライン式ADコンバータの全サンプリング周波数の或る分数において動作する段の内部回路を有することができること、ならびに、それゆえ、これらの段による電力消費の低減および熱生成の低減が実現することを含む。
【0036】
ここまでで、パイプライン式アナログ−デジタル変換器であって、(1)アナログ入力信号を受信し、当該アナログ入力信号を第1周波数においてサンプリングし、次いで第1周波数において第1残差信号を生成する第1パイプラインADコンバータ段であって、第1残差信号はサンプリングされたアナログ入力信号に応答する、第1パイプラインADコンバータ段と、(2)第1残差信号を第1パイプラインADコンバータ段から受信し、第1周波数において第2残差信号を生成する第2パイプラインADコンバータ段を有する、パイプライン式アナログ−デジタル変換器が提供されたことが認識されるべきである。第2パイプラインADコンバータ段は、第1残差信号を第2周波数においてサンプリングする複数の第1サンプル回路を有する。複数の第1サンプル回路はN個のサンプル回路を有し、Nは2以上である。第2周波数は第1周波数の1/N倍である。複数の第1サンプル回路のそれぞれは、第1残差信号を、固有のサンプリング時間でサンプリングし、続いて第2残差信号の対応する部分を生成する。本発明の1つの態様では、Nは2の累乗である。
【0037】
上記の実施形態の1つの態様では、パイプライン式ADコンバータは、第2パイプラインADコンバータ段から第2残差信号を受信し、第1周波数において第3残差信号を生成するように構成される第3パイプラインADコンバータ段をさらに有する。第3パイプラインADコンバータ段は、そのそれぞれが第2残差信号を第3周波数においてサンプリングする複数の第2サンプル回路を有する。複数の第2サンプル回路はM個のサンプル回路を有し、Mは2以上である。したがって、第3周波数は第1周波数の1/M倍である。複数の第2サンプル回路のそれぞれは、第2残差信号を、固有のサンプリング時間でサンプリングし、続いて第3残差信号の一部分を生成する。さらなる態様では、MはNに等しいことができ、等しくないこともできる。別のさらなる態様では、MおよびNは2の累乗である。
【0038】
上記の実施形態の別の態様では、第1パイプラインADコンバータ段は、アナログ入力信号の各サンプルに対応する第1デジタル出力を生成するようにさらに構成され、第2パイプラインADコンバータ段は、第1残差信号の各サンプルに対応する第2デジタル出力を生成する比較器ロジックをさらに有する。さらなる態様では、第2パイプラインADコンバータ段の比較器ロジックは、複数の第1サンプル回路のそれぞれに対応する論理回路をさらに有し、論理回路は、複数の第1サンプル回路のうちの対応するサンプル回路を制御するように構成される1つまたは複数の制御信号を生成する。異なるさらなる態様では、第2パイプラインADコンバータ段の比較器ロジックは、複数の第1サンプル回路のそれぞれに結合される論理回路をさらに有し、論理回路は、各サンプル回路を制御するように構成される1つまたは複数の制御信号を生成する。
【0039】
上記の実施形態のさらに別の態様では、第2パイプラインADコンバータ段は、複数の第1サンプル回路のそれぞれの出力に結合される入力、および第2残差信号を提供する出力を有する1つの増幅器をさらに有する。
【0040】
別の実施形態では、アナログ信号をデジタル信号に変換するための方法が提供される。方法は、第1パイプラインADコンバータ段に、第1周波数においてアナログ信号をサンプリングすること、サンプリングされたアナログ信号に応答する第1デジタル出力信号を生成すること、第1周波数において第1残差信号を生成することであって、第1残差信号はサンプリングされたアナログ信号に応答し、生成することを実行させることを有する。方法は、複数のサンプル回路のうちの1つに、第2周波数において第1残差信号をサンプリングさせることをさらに有し、複数のサンプル回路はN個のサンプル回路を有し(Nは2の累乗であり、Nは2以上である)、第2周波数は第1周波数の1/N倍であり、複数のサンプル回路のそれぞれは第1残差信号の固有の部分をサンプリングする。方法は、第2パイプラインADコンバータ段に、第1残差信号に応答する第2デジタル出力信号を生成すること、および、第1周波数において第2残差信号を生成することを実行させることをさらに有し、第2残差信号はサンプリングされた第1残差信号に応答し、第2パイプラインADコンバータ段も複数のサンプル回路を有する。
【0041】
上記の実施形態の1つの態様は、第3周波数において第2残差信号をサンプリングすることと;第2残差信号に応答する第3デジタル出力信号を生成することと;第1周波数において第3残差信号を生成することとをさらに有し、第3残差信号はサンプリングされた第2残差信号に応答する。第2残差周波数をサンプリングすることは、複数の第2サンプル回路のうちの1つによって実行され、そのそれぞれが第1残差信号を第3周波数においてサンプリングする。複数の第2サンプル回路内にはM個のサンプル回路があり、Mは2の累乗であり、かつ2以上である。したがって、第3周波数は第1周波数の1/M倍である。複数の第2サンプル回路のそれぞれは、第2残差信号の固有の部分をサンプリングする。第3デジタル出力信号を生成すること、および、第3残差信号を生成することは第3パイプラインADコンバータ段によって実行され、第3パイプラインADコンバータ段は複数の第2サンプル回路を有する。さらなる態様では、MはNに等しいことができ、等しくないこともできる。
【0042】
本発明の別の実施形態は、パイプライン式ADコンバータであって、アナログ信号を第1周波数においてサンプリングするための手段と;サンプリングされたアナログ信号に応答する第1デジタル出力信号を生成するための手段と;第1周波数において、サンプリングされたアナログ信号に応答する第1残差信号を生成するための手段とを有する、パイプライン式ADコンバータを提供する。第1パイプラインADコンバータ段は、アナログ信号をサンプリングするための手段と;第1デジタル出力信号を生成するための手段と;第1残差信号を生成するための手段とを有する。実施形態は、第1残差信号をサンプリングするためのN個の手段であって、N個の手段は第2周波数において第1残差信号をサンプリングする、N個の手段と;サンプリングされた第1残差信号に応答する第2デジタル出力信号を生成するための手段と;第1周波数において第2残差信号を生成するための手段とをさらに有し、第2残差信号を生成するための手段はサンプリングされた第1残差信号に応答する。Nは2の累乗であり、Nは2以上である。第2周波数は第1周波数の1/N倍である。第1残差信号をサンプリングするためのN個の手段のそれぞれは、第1残差信号の、第1残差信号をサンプリングするためのN個の手段の互いから固有の部分をサンプリングする。第2パイプラインADコンバータ段は、第2デジタル出力信号を生成するための手段と;第2残差信号を生成するための手段と;第1残差信号をサンプリングするためのN個の手段とを有する。
【0043】
上記の実施形態の1つの態様では、パイプライン式ADコンバータは、第2残差信号をサンプリングするためのM個の手段と;サンプリングされた送信残差信号に応答する第3デジタル出力信号を生成するための手段と;サンプリングされた第2残差信号に応答する第1周波数において第3残差信号を生成するための手段とをさらに有する。第2残差信号をサンプリングするためのM個の手段は第3周波数において第2残差信号をサンプリングする。Mは2の累乗であり、Mは2以上である。第3周波数は第1周波数の1/M倍である。第2残差信号をサンプリングするためのM個の手段のそれぞれは、第2残差信号の、第2残差信号をサンプリングするためのM個の手段の互いから固有の部分をサンプリングする。第3パイプラインADコンバータ段は、第2残差信号をサンプリングするためのM個の手段と;第3デジタル出力信号を生成するための手段と;第3残差信号を生成するための手段とを有する。さらなる態様では、MはNに等しいか、または等しくない、のいずれかである。
【0044】
「アサート」または「セット」および「ネゲート」(または「アサート停止」もしくは「クリア」)という用語は、本明細書においては、信号、ステータスビット、または類似の装置をそれぞれ、その論理的に真または論理的に偽の状態にレンダリングすることを指す場合に使用される。論理的に真の状態が論理レベル1である場合、論理的に偽の状態は論理レベル0である。そして、論理的に真の状態が論理レベル0である場合、論理的に偽の状態は論理レベル1である。
【0045】
本発明を実装する装置は、大部分について、当業者に既知の電子コンポーネントおよび回路から成っているため、本発明の基礎となる概念の理解および評価のために、ならびに本発明の教示を分かりにくくせず当該教示から注意を逸らさせないために、回路の詳細は上記で例示されているように必要と考えられる範囲を超えては説明されない。
【0046】
したがって、本明細書において描写したアーキテクチャは例示にすぎないこと、および、事実、同じ機能を達成する多くの他のアーキテクチャを実装することができることは理解されたい。要約すると、ただし依然として明確な意味で、同じ機能を達成するための構成要素の任意の構成が、所望の機能が達成されるように効果的に「関連付けられる」。したがって、本明細書における、特定の機能を達成するために結合される任意の2つの構成要素は互いに「関連付けられる」とみなすことができ、それによって、中間の構成要素またはアーキテクチャにかかわりなく、所望の機能が達成される。同様に、そのように関連付けられる任意の2つの構成要素も、所望の機能を達成するために互いに「動作可能に接続されている」または「動作可能に結合されている」とみなすことができる。
【0047】
さらに例として、1つの実施形態では、ADコンバータ100の示されている要素は、単一の集積回路上または同じデバイス内に位置する回路である。代替的には、ADコンバータ100は、互いに相互接続される任意の数の別個の集積回路または別個のデバイスを含んでもよい。
【0048】
さらに、上述の動作の機能間の境界は例示にすぎないことを当業者は認識しよう。複数の動作の機能を単一の動作に組み合わせることができ、かつ/または単一の動作の機能を追加の動作に分散させることができる。その上、代替的な実施形態は、特定の動作の複数のインスタンスを含んでもよく、動作の順序はさまざまな他の実施形態においては変更してもよい。
【0049】
本明細書において、具体的な実施形態を参照して本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲に明記されているような本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな改変および変更を為すことができる。たとえばさまざまなADコンバータ段の比較器は、1.5ビット(図示されている通り)、2ビット、4ビットなどであることができ、これによって、種々の入力電圧振幅を引き起こすことが可能である。ADコンバータ段のスイッチドキャパシタサンプリング段は同様に、比較器によってそのように生成される制御信号を使用するように変更されることになる。上述のように、実施形態はデュアルチャネルADコンバータ段にも限定されず、スペースおよび電力消費の関連によって決まる任意の数のチャネルを利用することができる。したがって、本明細書および図面は限定的な意味ではなく例示とみなされるべきであり、すべてのこのような改変が本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本明細書において具体的な実施形態に関して記載されているいかなる利益、利点、または問題に対する解決策も、任意のまたはすべての請求項の重要な、必要とされる、または基本的な特徴または要素として解釈されるようには意図されていない。
【0050】
本明細書において使用される場合、「結合されている」という用語は、直接結合または機械的結合に限定されるようには意図されていない。
さらに、本明細書において使用される場合、「1つ(aまたはan)」という用語は、1つまたは2つ以上として定義される。さらに、特許請求の範囲における「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」のような前置きの語句の使用は、不定冠詞「1つの(aまたはan)」による別の請求項要素の導入が、このように導入された請求項要素を含む任意の特定の請求項を、たとえ同じ請求項が前置きの語句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「1つの(aまたはan)」のような不定冠詞を含む場合であっても、1つだけのこのような要素を含む発明に限定することを暗示するように解釈されるべきではない。同じことが、定冠詞の使用についても当てはまる。
【0051】
別途記載されない限り、「第1」および「第2」のような用語は、そのような用語が説明する要素間で適宜区別するように使用される。したがって、これらの用語は必ずしも、このような要素の時間的なまたは他の優先順位付けを示すようには意図されていない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6