特許第6090984号(P6090984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6090984-軟質磁性体シート 図000004
  • 特許6090984-軟質磁性体シート 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090984
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】軟質磁性体シート
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20170227BHJP
   B32B 15/14 20060101ALI20170227BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   E04F13/08 G
   B32B15/14
   E04F13/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-287749(P2012-287749)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129681(P2014-129681A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201191
【氏名又は名称】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−033177(JP,U)
【文献】 特開2001−166719(JP,A)
【文献】 特開2009−019293(JP,A)
【文献】 特開平07−311549(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175339(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3170964(JP,U)
【文献】 特開平07−132697(JP,A)
【文献】 実開昭58−131076(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/07
E04F 13/08
G09F 7/04
G09F 7/18
G09F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質磁性金属箔層の上に表面層を設け、軟質磁性金属箔層の下に基布層を設け、軟質磁性金属箔層は鋼箔層であり、基布層は編み物地から成り、基布層の下に粘着層を設け、表面層は塗工紙、樹脂フィルムまたは壁用装飾紙のいずれかから成り、鋼箔層の厚みは50〜300μmであり、基布層の厚みは0.2〜0.7mmであり、基布層は両面メリヤス編み物地であり、10cm当たりのループ数は90〜100であることを特徴とする軟質磁性体シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁着効果のない壁等の平滑面に貼着することによって,マグネット部材を該壁等に磁着できるようにする軟質磁性体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟質磁性体である鉄箔層を有し表面に筆記面を有する書板の筆記面交換用表面材が提案されている(特許文献1)。該筆記面交換用表面材は,筆記面と,該筆記面の下側に設けた厚さ50〜100μmの鉄箔層と,該鉄箔層の下側に設けた施工時に接着剤による接着が可能な材質の可撓性基材層とから成る構造を持つことを特徴とする磁気性能を持った軽量かつシート状の書板の筆記面交換用表面材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−132697号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の筆記面交換用表面材の可撓性基材層は,該文献の明細書段落0015に記載のように難燃紙等の可撓性に優れた基材で構成されているため,該筆記面交換用表面材の鉄箔層に局部的な変形応力が加わると,この応力を分散させることが難しく,容易に鉄箔層が局部的に折り曲げられて跡が残る場合があるという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、軟質磁性金属箔層である鉄箔層や鋼箔層に局部的な変形応力が加わっても,該応力を分散させて,軟質磁性金属箔層である鉄箔層や鋼箔層に局部的な折り曲げ跡が残ることがない軟質磁性体シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、軟質磁性金属箔層の上に表面層を設け、軟質磁性金属箔層の下に基布層を設け、軟質磁性金属箔層は鋼箔層であり、基布層は編み物地から成り、基布層の下に粘着層を設け、表面層は塗工紙、樹脂フィルムまたは壁用装飾紙のいずれかから成り、鋼箔層の厚みは50〜300μmであり、基布層の厚みは0.2〜0.7mmであり、基布層は両面メリヤス編み物地であり、10cm当たりのループ数は90〜100であることを特徴とする軟質磁性体シートを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る軟質磁性体シートは,軟質磁性金属箔層である鋼箔層に局部的な変形応力が加わっても,基布層に弾力性があるため該応力が効果的に分散されて鋼箔層が局部的に折り曲げられることが無く,このため鋼箔層に折り曲げ跡が残ることがないという効果がある。また鋼箔層は軟質磁性体であるため,マグネット部材を磁着させることができる効果がある。
【0012】
また本発明に係る軟質磁性体シートは、基布層が編み物地から成るため、基布層の柔軟性が高く、鋼箔層に局部的な変形応力が加わっても、より柔軟に該応力を分散させることができ、このため軟質磁性金属箔層である鋼箔層が局部的に折り曲げられることがなく、折り曲げ跡が残ることがないという効果がある。
【0013】
また本発明に係る軟質磁性体シートは、基布層の下に粘着層が設けられているため、壁等に該粘着層を介して軟質磁性体シートを貼着させることができ、あらためて接着剤を塗布する必要がなく、迅速に軟質磁性体シートを壁等に貼着することができるという効果がある。
【0014】
また本発明に係る軟質磁性体シートは、表面層は塗工紙,樹脂フィルムまたは壁用装飾紙のいずれかから成るため、建造物の内装用として使用できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る軟質磁性体シート(粘着層を省略)の断面状態図である。
図2】本発明に係る軟質磁性体シートの断面状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明に係る軟質磁性体シートを実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係る軟質磁性体シート1の断面状態図であり,2は表面層である。該表面層2は塗工紙,樹脂フィルム,壁用装飾紙等いずれであってもよい。樹脂フィルムの場合は,水性マーカーで該表面層2に筆記をすることができる。
【0017】
表面層2の下には鋼箔層3が設けられ、鋼箔層3の下には編み物地である基布層4が形成され、鋼箔層3の厚みは50〜300μmが適している。50μm未満ではマグネット部材の磁着力が不十分であり、300μm超では鋼箔層3の可撓性が不足し、取り扱いが不便となる。本実施例では軟質磁性金属箔層には鉄箔を使用したが、マグネットが磁着するSUS430等の他の軟質磁性金属箔を使用してもよい。
【0018】
基布層4は編み物地であることが望ましい。編み物地であることにより,一般的な紙等より柔軟性が高く,ニット服地と同様に局部的に皴や折り曲げ跡が残ることがなく,結果として鋼箔層3に局部的な折り曲げ応力が加わっても,該鋼箔層3と隣接し一体化している基布層4が,該応力を分散させ,鋼箔層3に折り曲げ跡が残ることがない。
【0019】
また基布層4は0.2mm〜0.7mmが効果的な上記応力分散の点で好ましく,0.2mm未満では応力分散が不十分となり,鋼箔層3に折り曲げ跡が残る場合がある。0.7mm超では重量が重くなり,壁等に貼着する際の施工性が低下する。
【0020】
基布層4を両面メリヤス編み物地とした場合の10cm当たりのループ数としては,90〜100が好ましく,90未満では応力分散能力が低下する場合があるなど好ましくなく,100超では柔軟性が低下する場合があるなど好ましくない。またこの際の編み物に使用する糸の材質はレーヨン/ポリエステル(混紡)が好ましく,該糸の太さとしては,20〜40番手が好ましい。20番手未満では強度過多となり可撓性が低下する場合があるなど好ましくなく,40番手番手超では強度不足となり応力分散能力が低下する場合があるなど好ましくない。
【0021】
図2は本発明に係る軟質磁性体シート10の断面状態図である。12は表面層であり、表面層12の下には軟質磁性体金属箔層である鋼箔層13が設けられ、該鋼箔層13の下には編み物地である基布層14が形成されている。基布層14の下にはアクリル樹脂、ウレタン樹脂またはシリコーン樹脂から成る粘着層15が設けられている。通常は粘着層15を覆う剥離紙(図示せず)がさらに設けられ、壁等に粘着層15を介して軟質磁性体シート10を貼着させる直前に、該剥離紙を取り除く。
【0022】
以下,実施例及び比較例にて本出願に係る軟質磁性体シートについて具体的に説明する。
【実施例】
【0023】
表1に示す仕様にて実施例1乃至実施例5及び比較例1乃至比較例3の軟質磁性体シートを作製した。表面層に使用した塗工紙には市販アート紙 特菱アート片面(商品名,三菱製紙社製,厚さ0.11mm),鋼箔には亜鉛メッキ鋼板(商品名,東洋鋼鈑社製),基布には,太さ30番手のレーヨン/ポリエステル混紡の糸を両面メリヤス編みしたもので,10cm当たりのループ数が,縦方向90〜95,横方向95〜100の編み物地(厚さ0.5mm)を用い,各層は市販の水性ビニルウレタン系接着剤スミカフレックス801HQ(商品名,住友化学社製)にて接着させ,23℃7日間養生後,以下に示す評価を行なった。比較例3の基布には, 太さ90番手のレーヨン/ポリエステル混紡の糸を両面メリヤス編みしたもので,10cm当たりのループ数が,縦方向250〜260,横方向270〜280の編み物地(厚さ0.15mm)を用いた。
【0024】
【表1】
【0025】
〔評価項目及び評価方法〕
【0026】
〔馬蹄形跡の付き易さ〕
実施例1乃至実施例5及び比較例1乃至比較例3の軟質磁性体シートを,人差し指と中指の上に載せて,親指にて強く載荷するようにして曲げ応力を加える。その後,軟質磁性体シートに馬蹄形跡が残るものを×,馬蹄形跡が残らないものを○と評価した。
【0027】
〔柔軟性〕
実施例1乃至実施例5及び比較例1乃至比較例3の軟質磁性体シートを,ロール状に巻き,容易に巻けるものを○,反発力があって巻きにくいものを×と評価した。
【0028】
〔マグネット吸着性〕
実施例1乃至実施例5及び比較例1乃至比較例3の軟質磁性体シートを垂直状に保持し,多極着磁(極間3.0mm)を施した軟鉄との磁気吸着力96gf/cmの異方性マグネットシート(3cm×3cm)を非磁性体に積層してなる自重150gfのマグネット部品を試験体表面に磁着させる。該マグネット部品が落下しないものを○と評価し,落下するものを×評価した。
【0029】
〔総合評価〕
すべての評価項目が○評価のものを○とし,これ以外を×とした。
【0030】
〔評価結果〕
評価結果を表2に示す。
表2に示すように,実施例1乃至実施例5は総合評価が○であったが,比較例は×であった。
【0031】
【表2】

【符号の説明】
【0032】
1 軟質磁性体シート
2 表面層
3 鋼箔層
4 基布層
10 軟質磁性体シート
12 表面層
13 鋼箔層
14 基布層
15 粘着層
図1
図2