特許第6090985号(P6090985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6090985
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】核酸鎖の分離方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20170227BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20170227BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170227BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170227BHJP
【FI】
   G01N30/26 A
   G01N30/88 D
   C12Q1/68 Z
   !C12N15/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-552751(P2012-552751)
(86)(22)【出願日】2012年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2012050426
(87)【国際公開番号】WO2012096327
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-4216(P2011-4216)
(32)【優先日】2011年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】與谷 卓也
(72)【発明者】
【氏名】牛澤 幸司
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−504738(JP,A)
【文献】 特表2004−514874(JP,A)
【文献】 J. Chromatogr.,1989年,Vol.478, No.1,p.264-268
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸に含まれる核酸鎖を鎖長別に分離する核酸鎖の分離方法であって、
標的核酸をカチオン性充填剤が充填されたアニオン交換カラムに導入する工程と、
グアニジン塩酸塩又はグアニジン硫酸塩を含有するイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いて標的核酸をアニオン交換カラムから溶出することにより、核酸鎖を鎖長別に分離する工程とを有する
ことを特徴とする核酸鎖の分離方法。
【請求項2】
核酸鎖のサイズが1bp以上1000bp以下であることを特徴とする請求項記載の核酸鎖の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸のPCR増幅産物、該PCR増幅産物の制限酵素断片、又は核酸の制限酵素断片等の標的核酸の分離検出に用いるイオン交換クロマトグラフィー用溶離液に関する。また本発明は、該溶離液を用いたイオン交換クロマトグラフィーによる核酸鎖の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換クロマトグラフィーは、カラム充填剤のイオン交換基と測定対象物質中のイオンとの間に働く静電的相互作用を利用して測定対象物質を分離する方法である。
特に、核酸、タンパク質、多糖類といった生体高分子の分離に優れているため、生化学や医学等の分野で利用されている。
イオン交換クロマトグラフィーには、アニオン交換によるものとカチオン交換によるものとがある。アニオン交換は、カチオン性のカラム充填剤を用いて、アニオン性の物質を分離することができる。逆に、カチオン交換は、アニオン性のカラム充填剤を用いて、カチオン性の物質を分離することができる。
【0003】
アニオン交換カラム充填剤のカチオン性の官能基としては、ジエチルアミノエチル基のような弱カチオン性基、4級アンモニウム基のような強カチオン性基があり、これらのカチオン性の官能基を有するアニオン交換カラム充填剤は既に市販され、各種研究分野で使用されている。
【0004】
核酸とは、塩基、糖、リン酸からなるヌクレオチドがリン酸エステル結合で連なった生体高分子であり、糖構造の違いによってデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)とに分類される。
核酸のPCR増幅産物や、該PCR増幅産物の制限酵素断片や、核酸の制限酵素断片等の標的核酸を、イオン交換クロマトグラフィーを用いて分離する場合には、該標的核酸分子中に含まれるリン酸のマイナス電荷を利用したアニオン交換液体クロマトグラフィーが用いられ、該PCR増幅産物や核酸断片等の標的核酸を鎖長別に分離検出することができる。
【0005】
核酸鎖を鎖長別に分離する方法としては、ゲル電気泳動法が汎用されているが、作業が煩雑であったり、測定に時間がかかったりするなど、改善の余地が多くみられる。非特許文献1には、核酸関連化合物を高速液体クロマトグラフィーで分離する方法が開示されており、この方法を用いれば、煩雑な作業を必要とせずに短時間で核酸鎖を鎖長別に分離検出することができる。しかしながら、接近する鎖長差を充分に分離することが難しいという問題があるため、更なる分離性能の向上が要求されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ライフサイエンスのための高速液体クロマトグラフィー 基礎と実験」、廣川書店、p.323
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、核酸のPCR増幅産物や、該PCR増幅産物の制限酵素断片や、核酸の制限酵素断片等の標的核酸の分離検出を、短時間かつ高い分離性能で行うことができるイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を提供することを目的とする。また、本発明は、該溶離液を用いたイオン交換クロマトグラフィーによる核酸鎖の分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、標的核酸に含まれる核酸鎖を鎖長別に分離する核酸鎖の分離方法であって、標的核酸をカチオン性充填剤が充填されたアニオン交換カラムに導入する工程と、グアニジン塩酸塩又はグアニジン硫酸塩を含有するイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いて標的核酸をアニオン交換カラムから溶出することにより、核酸鎖を鎖長別に分離する工程とを有する核酸鎖の分離方法である。以下に本発明を詳述する。
【0009】
【化1】
【0010】
本発明者らは、イオン交換クロマトグラフィーに用いる溶離液に、グアニジン塩を添加することにより、核酸鎖が異なる試料の分離性能を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液は、上記式(1)で示されるグアニジンから誘導されるグアニジン塩を含有する。
上記グアニジン塩としては、例えば、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジン炭酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジンスルファミン酸塩、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン重炭酸塩等が挙げられる。なかでも、グアニジン塩酸塩、グアニジン硫酸塩が好適に用いられる。
【0012】
本発明のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液におけるグアニジン塩の分析時の濃度は、分析対象物に合わせて、適宜調整すればよいが、2000mmol/L以下であることが望ましい。
具体的には、グアニジン塩の濃度を0〜2000mmol/Lの範囲でグラジエント溶出させる方法を挙げることができる。従って、分析開始時のグアニジン塩の濃度は0mmol/Lである必要はなく、また、分析終了時のグアニジン塩の塩濃度も2000mmol/Lである必要はない。
上記グラジエント溶出の方法は、低圧グラジエント法であっても高圧グラジエント法であっても良いが、高圧グラジエント法による精密な濃度調整を行いながら溶出させる方法が好ましい。
【0013】
上記グアニジン塩は、溶離液に単独で添加してもよいし、他の塩と組み合わせて添加してもよい。上記グアニジン塩に組み合わせて用いることができる塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のハロゲン化物とアルカリ金属とからなる塩や、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のハロゲン化物とアルカリ土類金属とからなる塩や、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の無機酸塩等が挙げられる。また、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム等の有機酸塩を用いてもよい。
【0014】
本発明のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液に用いる緩衝液としては、公知の緩衝液類や有機溶媒類を用いることができ、具体的には例えば、トリス塩酸緩衝液、トリスとEDTAからなるTE緩衝液、トリスと酢酸とEDTAからなるTAE緩衝液、トリスとホウ酸とEDTAからなるTBA緩衝液等が挙げられる。
【0015】
上記溶離液のpHは特に制限されず、アニオン交換によって核酸鎖を分離できる範囲であればよい。
【0016】
本発明のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いる核酸鎖の分析方法もまた、本発明の一つである。
【0017】
本発明の核酸鎖の分析方法に用いるカラムは、カチオン性充填剤が充填されたアニオン交換カラムであればよく、市販されているものや、基材微粒子の表面に強カチオン性基と弱アニオン性基とを有する充填剤を用いたアニオン交換カラム等を用いることができる。
【0018】
本発明の核酸鎖の分析方法が適用可能な標的核酸(検出対象)としては、核酸のPCR増幅産物、該PCR増幅産物の制限酵素断片、又は核酸の制限酵素断片が挙げられ、ウイルス由来又は遺伝子多型の疑われるヒト由来のもの、即ち、ウイルスの存在や型を判別するためのウイルス由来の核酸(DNAやRNA)や遺伝子多型(一塩基多型)を判別するためのヒト由来のDNAを例示することができる。
【0019】
上記DNA又は上記RNAは、公知の方法により抽出、精製した後、必要によりPCR(Polymerase Chain Reaction)法等により増幅し、該増幅産物を本発明のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いたイオン交換クロマトグラフィーに供する。
【0020】
ウイルスがRNAウイルスである等の場合は、抽出、精製したRNAに対してRT−PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)反応を行い、PCR増幅産物を得ることができる。
【0021】
また、本発明の核酸鎖の分析方法を用いて遺伝子多型を判別する場合には、PCR−RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型)法として公知の技術を応用することができる。RFLP法は、PCR増幅産物中の遺伝子変異部を認識する制限酵素が存在する場合、共通配列部位にプライマーを設定し、その内側、即ち、PCR増幅産物内に多型性をもたせて増幅し、得られたPCR増幅産物を上記制限酵素で切断し、その断片の長さにより、多型の有無を判定する方法である。制限酵素による切断が起きた場合と起きなかった場合とでは、生じる断片の数もサイズも異なるので、それに基づいて切断が起きたか否か、ひいては目的の位置の塩基が何であったかを知ることができる。
【0022】
プライマーによる増幅領域は、制限酵素による切断が起きた場合に生じる2個の断片が、それぞれ本発明のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いたイオン交換クロマトグラフィーで明瞭に検出できるサイズ、好ましくは小さい方の断片が1bp以上、より好ましくは20bp以上となるように設定する。また、生じる2個の断片のサイズの差が、本発明の核酸鎖の分析方法で明瞭に検出できるように、好ましくは1bp以上、より好ましくは20bp以上になるように設定する。増幅領域のサイズの上限は特にないが、あまりに大きいとPCRの時間もコストもかかり、また、それによる利点もないので、好ましくは1000bp以下である。プライマーの塩基長は、それぞれの機能が発揮される長さであればよく、プライマーの塩基長の例としては15〜30bp、好ましくは20〜25bpである。
【0023】
上記PCR法による増幅は、1段階で行ってもよいが、感度をより高めるために、第1段階のPCRでより広い範囲の領域を増幅し、得られたPCR増幅産物を鋳型として、その中に含まれる領域を第2段階のPCRでさらに増幅してもよい(nested PCR)。この場合、第2段階のPCRに用いるプライマーは両方とも、第1段階のPCRに用いるプライマーと異なるものであってもよいし、一方のみ異なるプライマーを用い、他方は第1段階のPCRで用いたプライマーと同じものを用いてもよい(hemi−nested PCR)。
【0024】
上記PCR法自体は、公知であり、PCR法による分離検出のためのキットも市販されているので、容易に実施することができる。PCR法に用いるプライマーの設計やDNAの増幅の条件は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.),Volume 2,Chapter 8,pp.8.1−8.126,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Sping Harbor,2001を参照できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、核酸のPCR増幅産物や、該PCR増幅産物の制限酵素断片や、核酸の制限酵素断片等の標的核酸の分離検出を、短時間かつ高い分離性能で行うことができるイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を提供することができる。また、本発明によれば、上記イオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いたイオン交換クロマトグラフィーにより、標的核酸を短時間で精度よく分析できる核酸鎖の分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム1とを用いて得られたクロマトグラムである。
図2】実施例1のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムである。
図3】実施例2のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムである。
図4】比較例1のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム1とを用いて得られたクロマトグラムである。
図5】比較例1のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムである。
図6】比較例2のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム1とを用いて得られたクロマトグラムである。
図7】比較例2のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムである。
図8】比較例3のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0028】
(実施例1、2及び比較例1〜3)
25mmol/Lトリス塩酸緩衝液に表1に示す塩を濃度が1000mmol/Lとなるように添加し、実施例1、2及び比較例1〜3に係るイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を調製した。得られた溶離液のpHは全て7.5であった。
【0029】
<評価>
(分離性能の確認)
以下の方法を用いて、実施例及び比較例で調製したイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いて標的核酸を分離検出した場合の分離性能を比較した。
【0030】
(アニオン交換カラムの準備)
(アニオン交換カラム1)
市販されているカラムとして、以下のカラム(アニオン交換カラム1)を準備した。
品名:TSK−gel DNA−STAT(東ソー株式会社製)
カラムサイズ:内径4.6mm×長さ100mm
イオン交換基:4級アンモニウム基
【0031】
(アニオン交換カラム2)
攪拌機付き反応器中にて、3重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液に、テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)300g、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)100g及び過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gの混合物を添加した。攪拌しながら加熱し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間重合した。次に、強カチオン性のイオン交換基(4級アンモニウム基)を有する単量体として、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業社製)100gをイオン交換水に溶解し、得られた溶液を上記反応器中にさらに添加した。次いで、攪拌しながら窒素雰囲気下にて80℃で2時間重合した重合体組成物を得た。得られた重合体組成物を水及びアセトンで洗浄することにより、基材微粒子の表面にイオン交換基を有する親水性の被覆重合体粒子を得た。得られた被覆重合体粒子について、粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「Accusizer780」)を用いて測定したところ、平均粒子径は10μmであった。
得られた被覆重合体粒子10gを溶存オゾンガス濃度100ppmのオゾン水300mLに浸漬し、30分間攪拌した。攪拌終了後、遠心分離機(日立製作所社製、「Himac CR20G」)を用いて遠心分離し、上澄みを除去した。この操作を2回繰り返し、被覆重合体粒子にオゾン水処理を施し、4級アンモニウム基とカルボキシ基が共存するイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を得た。
なお、オゾン水は、内径15cm×長さ20cmの円柱形を有する外套内に、パーフルオロアルコキシ樹脂からなる内径0.5mm×厚さ0.04mm×長さ350cmの中空管状のオゾンガス透過膜400本収容されたオゾン溶解モジュールを含むオゾン水製造システム(積水化学工業社製)を用いて調製した。
得られたイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を用いて以下のカラム(アニオン交換カラム2)を準備した。
カラムサイズ:内径4.6mm×20mm
イオン交換基:4級アンモニウム基
【0032】
準備したアニオン交換カラムを用いて、以下の条件で標的核酸を分離検出した。
システム:LC−20Aシリーズ(島津製作所社製)
溶離液:A液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)、B液 実施例及び比較例で調製した溶離液
溶出法:表1に示すグラジエント条件により、0分から20分にかけて、B液の混合比率を直線的に増加させた。
検体:20bpDNALadderマーカー(タカラバイオ社製、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、300、400、500bpの断片が含まれる)
流速:0.5mL/min(アニオン交換カラム1)、1.0mL/min(アニオン交換カラム2)
検出波長:260nm
試料注入量:10μL
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム1とを用いて得られたクロマトグラムを図1、実施例1のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムを図2、実施例2のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムを図3、比較例1のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム1とを用いて得られたクロマトグラムを図4、比較例1のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムを図5、比較例2のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム1とを用いて得られたクロマトグラムを図6、比較例2のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムを図7、比較例3のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液とカラム2とを用いて得られたクロマトグラムを図8に示した。なお、図1〜8のグラフ中の数値は断片の塩基長(bp)の値である。
図1〜8より、実施例のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いた場合は、検体に含まれるすべての断片を分離することができた。従って、カラムの種類に依らず、分離性能が効果的に向上することがわかった。一方で、比較例のイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いた場合は、カラムの種類や添加した塩の種類によって多少の違いが見られるものの、140bp以降の断片の分離が不充分であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、核酸のPCR増幅産物や、該PCR増幅産物の制限酵素断片や、核酸の制限酵素断片等の標的核酸の分離検出を、短時間かつ高い分離性能で行うことができるイオン交換クロマトグラフィー用溶離液を提供することができる。また、本発明によれば、上記イオン交換クロマトグラフィー用溶離液を用いたイオン交換クロマトグラフィーにより、核酸鎖を短時間で精度よく分析できる分析方法を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8