【文献】
Milk & Honey Enema,Enema-Health.Com,2009年12月26日,URL:http:web.archive.org/web/20091226215115/http://www.enema-health.com/milk-honey-enema.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
賦形剤、植物抽出物、植物油、希釈剤、固化剤、湿潤剤、保存剤、粘着剤、多糖剤から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物。
前記1つ又は複数の成分が、ラベンダー精油、アロエ抽出物、ゼニアオイ粘液抽出物、カレンジュラ抽出物、カモミール抽出物、ゼニアオイ抽出物、アルテア抽出物、プロポリス、レモン果汁、脱ミネラル水及び蜂蜜水から選択される、請求項5に記載の組成物。
前記組成物が、花粉を除去され、及び/又は細菌負荷の部分的若しくは完全な(total)低減に供されるものである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の組成物。
請求項1から9までのいずれか一項に記載の組成物を含む1つ又は複数の容器と、前記組成物を分配するための手段、前記組成物の直腸投与のための使い捨て又は再使用可能なデバイスから選択される1つ又は複数のさらなる要素を含む、キット。
【背景技術】
【0002】
便秘の問題は、散発的にも慢性的にも、非常に多くの小児及び成人に影響を与え、不充分な腸管運動の結果又は種々の病変の結果であることがある。
【0003】
便秘は結腸を通る消化物の過度に遅い動きによって起こり、腸における過剰な水分の吸収をもたらす。
【0004】
この事象は、幼児期、小児期及び成人期に共通して起こる。
【0005】
この現象は妊娠中及び手術後の時期にも一般的である。
【0006】
多くの便秘薬が存在するが、多くの場合、できるだけ穏やかに介入することが望まれ、過度に強力な効果を有したり、便秘に悩む患者が用いる可能性のある他の薬剤と相互作用するかもしれない経口薬の使用は避けられる。
【0007】
好適には、薬理学的に活性でない、即ち直接の分子的相互作用によって生体の代謝的、生理学的及び生物学的プロセスを改変させることができない物質を用いることができる。実際、グリセリン等のような、「機械的」作用を有し、レセプター若しくは免疫経路又は代謝プロセスを直接には活性化しない物質が好ましく用いられる。
【0008】
乳児、小児、妊娠した女性並びに手術前及び手術後の患者においては、経直腸的に投与される機械的刺激剤、即ち、「浣腸剤」を使用することが好ましい。この用語は、通常、直腸内に導入される物質の体積がたとえば約50、100、200ml及びそれ以上である場合に用いられ、体積が数mlで通常小児又は新生児用にも調製される場合には「小児用浣腸剤」(フリート型)とも称される。
【0009】
この場合には、物質は経直腸的に導入され、ここで物質は排便刺激剤の機械的作用を直接に発揮する。
【0010】
最も広く普及している治療法においては、腸に対する機械的効果を発揮する活性成分がグリセリン等である浣腸剤又は小児用浣腸剤(フリート型)が用いられる。
【0011】
しかし、グリセリン単独(又は主としてグリセリンを含む組成物)は腸の蠕動運動を効果的に誘導し、それにより排便を促進することができるが、腹部疝痛、及び、既にそれ自体刺激され、脱水されている粘膜の便秘患者におけるさらなる刺激及び/又は脱水などの望ましくない影響を引き起こす。換言すれば、グリセリンは腸粘膜に対して有益な、及び/又は保護的な効果を有さず、排便作用を有する主剤としてグリセリンを用いることは、しばしば便秘に悩む患者による低い耐容性を伴うという結果をもたらす。
【0012】
蜂蜜が便秘薬として経口的に用いられ得ること、及び伝統医学において極めて高い希釈倍率の場合のみであるが浣腸剤の調製に蜂蜜が用いられ得ることが文献で知られている。さらに、蜂蜜には粘膜及び皮膚に対して発揮される保護活性、抗微生物活性、瘢痕治癒活性、咽頭粘膜の保護のための鎮咳活性、過敏性腸症候群における鎮痙活性等のさらなる有益な活性が認められている。
【0013】
しかし、蜂蜜の使用は望ましくない影響がないと証明されてはいない。実際、たとえば蜂蜜の経口使用の後では、この物質が腸粘膜と接触する前に唾液及び胃液等の自然の防御機構と出会うが、乳児ボツリヌス症の症例が報告されており、米国では既に1970年代に記述され、イタリアでは1980年代に最初の例として正式に記録されている。したがって、現在のところ小児科医は、乳児及び1歳未満の小児には蜂蜜を経口投与しないことを強く勧めている。
【0014】
排便刺激の目的での蜂蜜の直腸投与も、問題ないと証明されてはいない。
【0015】
特に、上で示したように、経直腸的に投与される蜂蜜は常に、高度に希釈された形態、即ち腸粘膜、特に直腸粘膜のレベルにおいて蜂蜜に対する低い耐容性を生じさせる低い粘度によって特徴付けられる処方で用いられる。実際、殆ど粘度のない組成物は、それが接触する粘膜とより迅速な相互作用動態を有し、それが接触する粘膜に対する組成物の攻撃性をより高くすることが知られている。
【0016】
上記に加えて、直腸用途のために蜂蜜を希釈することは、組成物中のその濃度を低下させ、したがって排便反射刺激及び粘膜の保護の両方においてその効果を低下させることが付言される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、便秘の治療のための直腸用組成物の使用に関する従来技術に存在する問題点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明においては、便秘の治療を必要とする対象における便秘の治療のための直腸用組成物であって、
− 重量百分率で95%w/wまでの蜂蜜と、
− 重量百分率で2〜40%w/wのグリセリンと
を含む組成物が記載される。
【0019】
本発明においては、上記の濃度の蜂蜜とグリセリンの組み合わせが開示される。この組み合わせは、排便作用を有する物質、及び/又はこれらを含む溶液の直腸投与のための使用に関する従来技術に存在する問題の解決策を提供する。
【0020】
特に、上記の「背景技術」の項で強調したように、活性物質として高度に希釈された形態で蜂蜜を含む、排便作用を有する直腸用組成物には、排便剤としての、またそれに付随して腸粘膜、特に直腸粘膜の保護剤としての蜂蜜の効果の低減を伴う、低い粘度という特徴がある。
【0021】
組成物を構成する活性物質の化学的性質、並びにその物質の粘膜との相互作用の動態の両方が、粘膜刺激を引き起こす組成物の態様に含まれることが文献から知られている。特に、既に上で強調したように、相互作用の動態は組成物の粘度に強く影響される。それは、組成物の粘度が低いと粘膜との相互作用の動態が迅速になり、したがって、組成物が接触する粘膜に対する組成物の刺激的影響が大きくなるからである。
【0022】
本発明者は、蜂蜜を重量百分率で95%w/wまで含む組成物に重量百分率で2〜40%w/wの量のグリセリンを希釈剤として添加することにより、組成物の粘度が顕著に増大することを見出した。
【0023】
そのような粘度の増大は、本明細書に述べるように、蜂蜜及びグリセリンを含む便秘の治療のための直腸用組成物の有益且つ保護的な効果に関連する顕著な結果をもたらす。実際、既に述べたように、蜂蜜を含むがグリセリンを含まない同じ組成物と比べて、粘度が高いことによって前記組成物の直腸粘膜との相互作用がより穏やかになり、前記組成物の直腸粘膜との粘膜付着がより大きくなる。特に、本発明の対象である組成物の粘度及び粘膜付着の増大によって、組成物の潤滑作用の増大、有益な排便に関して証明される利点がもたらされ、しかも本明細書に記載する組成物の刺激作用がない。
【0024】
したがって、バリア効果、即ち本明細書に記載する組成物が腸粘膜、特に直腸粘膜に及ぼす保護効果は、上記の態様と密接に関連している。
【0025】
本明細書においては、重量百分率で95%w/wまでの蜂蜜と、重量百分率で2〜40%w/wのグリセリンとを含む、便秘の治療のための組成物が開示される。この組成物は便秘の治療のために特に有利である。それは、機械的な種類の排便効果(したがって薬理学的、免疫学的、代謝的でない効果)に、腸粘膜に対する保護的及び水和的作用が伴うからである。
【0026】
アレルゲン及び細菌に対する防御なしに経肛門的に腸粘膜に到達するので、排便作用を有する組成物の中に、又はその中に含まれるたとえば蜂蜜等の物質の中にも、腸粘膜を刺激することが証明され得るアレルゲンとなる可能性がある花粉及び/又は細菌が存在するかも知れないことを更に考慮する必要がある。
【0027】
このさらなる課題は、本明細書の記載による組成物又は蜂蜜の使用によって克服することができる。ここでは花粉等のアレルゲン性物質は(たとえば蜂蜜濾過法によって)除去され、及び/又は細菌による負荷は組成物若しくは蜂蜜それ自体を(たとえばガンマ線照射によって)滅菌することによって部分的に又は完全に低減される。
【0028】
したがって、上述に鑑み、本明細書に記載した組成物の直腸粘膜に対する有益且つ保護的な効果は、組成物及び/又はその中に含まれる蜂蜜等の要素をミクロ濾過及び/又は限外濾過及び/又は滅菌プロセスにかけるアレルゲン除去及び/又は細菌負荷低減によって、さらに改善することができる。本発明の対象は:
− その治療を必要とする対象における便秘の治療のための直腸用組成物であって、重量百分率で95%w/wまでの蜂蜜と、重量百分率で2〜40%w/wのグリセリンとを含む組成物;
− 少なくとも2つの上述の直腸用組成物を含むパッケージ;
− 花粉が除去され、及び/又は細菌負荷が部分的に又は完全に低減された本明細書に記載の組成物の調製方法であって、
a.前記組成物及び/又は前記蜂蜜を1つ又は複数のミクロ濾過及び/又は限外濾過ステップにかけるステップ
を含む方法;
− 本明細書に記載の組成物を含む1つ又は複数の容器と、前記組成物を分配するための手段、前記組成物の直腸投与のための使い捨て又は再使用可能なデバイスから選択される1つ又は複数のさらなる要素とを含むキット
である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
したがって、本発明はその治療を必要とする対象における便秘の治療のための直腸用組成物であって、重量百分率で95%w/wまでの蜂蜜と、重量百分率で2〜40%w/wのグリセリンとを含む組成物に関する。
【0030】
「便秘」という用語は、本明細書においてはその普通の医学的意味において、即ち腸の最終部分における糞便の滞在時間の増大を実質的に意味するために用いられる。この状態においては、液体の過度の再吸収のために乾燥して硬い糞便が蓄積し、そのために糞便の量が少なく、排便の頻度が低下し(排便3回/週未満にまで)、困難さ及び/又は苦痛を伴う。ある場合には、便秘は頻度が通常であるにも関わらず排便が不完全であると感じる兆候をもたらしたり、又は対象による特別の努力を必要とすることもある。
【0031】
既に強調したように、本発明の対象である組成物に基づく革新は、上記の百分率における蜂蜜とグリセリンの組み合わせであり、この組み合わせがこれに接触する粘膜に与えるバリア効果のために、腸粘膜を刺激することなしに直腸において排便を刺激することが可能になる。
【0032】
蜂蜜は最低濃度で存在してもよいが、重量百分率が40%超、50%超、又は60%超、95%(重量)までの組成が好ましい。
【0033】
したがって、いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は排便の刺激のための、したがって便秘の治療における成分として、それを40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%又は95%含み得る。
【0034】
本発明の1つの実施形態においては、グリセリンは、本明細書に記載した組成物に、重量百分率で10〜25%w/w存在する。特に、グリセリンは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25%w/wの重量百分率を有し得る。
【0035】
本発明の目的に使用されるグリセリンは、合成でもよく、天然グリセリンでもよい。
【0036】
さらなる実施形態によれば、組成物中のグリセリンの重量百分率は14〜20%w/wであってよい。
【0037】
特に、蜂蜜75%w/wと水9%w/wを含む組成物に18%w/wのグリセリンを希釈剤として添加すると、当初の組成物の粘度が約73センチポイズ(cP)の値から約570cPの値に、即ち約7.8倍増大することが認められた。
【0038】
本明細書に記載した発明によってグリセリンと組み合わせて用いることができる蜂蜜は、ネクター蜂蜜若しくはハネデュー蜂蜜又はこの2種の混合物であってよい。
【0039】
1つの実施形態においては、本明細書に記載した組成物は重量百分率で60〜85%w/wのネクター蜂蜜を含む。
【0040】
本発明のさらなる実施形態においては、組成物は当該組成物中重量百分率で5〜70%w/wのハネデュー蜂蜜を含む。本明細書に記載した組成物のさらなる実施形態によれば、ネクター蜂蜜とハネデュー蜂蜜が、それぞれ上述の重量百分率で同時に存在するものも提供される。ネクター蜂蜜とハネデュー蜂蜜の混合物が存在する場合には、組成物の蜂蜜の百分率は、両方の要素を合計することによって計算される。
【0041】
本明細書による組成物は、賦形剤、植物抽出物(たとえば凍結乾燥、乾燥等)、植物油、希釈剤、固化剤、湿潤剤、保存剤、粘着剤、多糖剤等の1つ又は複数の成分をさらに含んでもよい。
【0042】
本発明の1つの実施形態においては、前記1つ又は複数の成分は、ラベンダー精油、アロエ抽出物、ゼニアオイ粘液抽出物、カレンジュラ抽出物、カモミール抽出物、ゼニアオイ抽出物、アルテア抽出物、プロポリス、レモン果汁、脱ミネラル水及び蜂蜜水から選択される。
【0043】
当分野の技術者であれば、上記の薬用植物又はその他の薬用植物の抽出物の選択において植物の薬用特性に関する従来の知識を参照することができ、本発明に従ってどの抽出物を用いるかを少しの努力もなく選び出すことができる。
【0044】
非限定的な例として上述した成分など、本発明による組成物中に含まれるさらなる成分のそれぞれの重量は変動し得るが、上で定義した重量百分率の中の蜂蜜とグリセリンの濃度が遵守できるように量を決めることになる。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、抽出物を用いる場合には、常に単なる例にすぎないが、アロエ抽出物(葉)は0.05〜1重量%、たとえば0.1〜0.5重量%、ゼニアオイ抽出物は葉の抽出物であってよく、0.05〜5重量%、たとえば0.1〜2重量%、カレンジュラ抽出物並びにカモミール(花)抽出物はそれぞれ0.05〜5重量%、たとえば0.1〜2重量%、アルテア抽出物及びプロポリスはそれぞれ約0.05〜3%の百分率で用いることができる。1つの実施形態においては、植物由来の油はラベンダー精油であってよく、0.05〜2重量%、たとえば0.1〜1重量%に相当し得る。
【0046】
さらなる実施形態においては、レモン果汁は0.1〜2重量%に相当し得る。
【0047】
このような重量百分率は単なる指標にすぎず、組成物中に存在する追加的要素(したがって改質された蜂蜜のほかに)について上述の百分率と異なる重量百分率を用いる実施形態に本発明を限定するものでは決してない。
【0048】
単に非限定的な例として、本発明による便秘の治療のための直腸用組成物は:
組成物1(「組成物AF」とも称する):ネクター蜂蜜65.7%w/w;ハネデュー蜂蜜7.3%w/w;アロエベラ乾燥抽出物0.1%w/w;凍結乾燥ゼニアオイ粘液抽出物0.1%w/w;ラベンダー精油0.2%w/w;植物グリセリン18%w/w;レモン果汁0.5%w/w;脱ミネラル水8.1%w/w;
組成物2(「組成物AE」とも称する):ネクター蜂蜜73%w/w;アロエベラ乾燥抽出物0.1%w/w;凍結乾燥ゼニアオイ粘液抽出物0.1%w/w;ラベンダー精油0.2%w/w;植物グリセリン15%w/w;天然抽出物3%w/w;レモン果汁0.5%w/w;脱ミネラル水8.1%w/w;
組成物3(「組成物AD」とも称する):溶融ハネデュー蜂蜜70%w/w;アロエベラ乾燥抽出物0.1%w/w;凍結乾燥ゼニアオイ粘液抽出物0.1%w/w;ラベンダー精油0.2%w/w;植物グリセリン18%w/w;脱ミネラル水11.6%w/w;
組成物4(「組成物AC」とも称する):ハネデュー蜂蜜70%w/w;アロエベラ乾燥抽出物0.1%w/w;凍結乾燥ゼニアオイ粘液抽出物0.1%w/w;ラベンダー精油0.2%w/w;植物グリセリン18%w/w;蜂蜜水5%w/w;レモン果汁0.5%w/w;脱ミネラル水6.1%w/w;
であってよい。
【0049】
有利には、上述の組成物は、便秘の治療の基礎である排便効果と相まって、保護バリア効果、間接的水和効果並びに潤滑及び軟化効果から選択される直腸粘膜に対する少なくとも1つの効果も発揮する。上述の成分の1つ又は複数を添加することによって、バリア(保護)効果、水和効果、潤滑効果、軟化効果の1つ又は複数をさらに強化することができる。
【0050】
さらに、上記の追加的成分によって、間接的抗刺激効果及び抗炎症効果がさらにもたらされる。
【0051】
本発明の対象である組成物において用いられるいかなる種類の蜂蜜も、さらに花粉の除去、及び/又は細菌負荷の部分的若しくは全体的な低減に供することができる。
【0052】
本発明の目的のため、前記組成物及び/又は前記蜂蜜、並びに組成物それ自体の中に存在するいかなる成分も、濾過によって、或いは花粉を除去し、及び/又はその細菌負荷を低減する、この分野における技術者に知られているその他の任意の手段によって、改質することができる。さらに、このようにして処理された生成物を、細菌及びそれらの胞子をも除去するカットオフによって濾過し、又は細菌負荷の完全な低減を行なうために滅菌し、得られた改質された蜂蜜を1歳未満の小児にも使用することができる。
【0053】
たとえば蜂蜜の濾過は、当業者には知られた手法、たとえば単に例としてであるが、Subramanianら、International Journal of food properties、10:127−143、2007の
図1及び128頁、138頁、139頁に報告された教示に従って効果的に行なうことができる。
【0054】
Subramanianらが記述したプロトコルと比較して、本発明の目的のためには、蜂蜜は濾過を行なう前に希釈しなくてもよく、又は引用文献に記載された1:1ファクターに比べて希釈度は低くてもよい。当業者であれば、花粉の除去及び細菌負荷の部分的低減のために適合した好適な濾過膜、又は文献(D’Ascenziら(2003)「蜂蜜の消費に関連する乳児ボツリヌス中毒症の危険性(Rischio da botulismo infantile conseguente a consumo di miele)」、Annali della Facolta di Medicina veterinaria, LVI/20.63−74頁)(Lagrange V 1991「蜂蜜の限外濾過(Ultrafiltration of Honey)」、American Bee Journal,131,453)に報告されたような細菌負荷の完全な低減を可能にする好適な限外濾過膜を容易に特定することができる。プロセスは標準的な限外濾過手法又はミクロ濾過手法によって行なうことができ、場合によりその後に、本明細書に記載した組成物及び/又は蜂蜜のみ、並びに、より一般的には前記組成物中に存在するいかなる成分の滅菌プロセスを行なってもよい。
限外濾過を行なう場合には、花粉を含まず、細菌負荷が完全に低減された生成物が得られ、1歳未満の小児にも使用可能である。これに代え花粉除去ミクロ濾過を行なう場合には、細菌負荷を少なくとも4対数単位低減させた生成物が得られ(Savas 2003,「リンゴ果汁製造中のアリサイクロバチルス・アシドテッレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)に対する種々の技術の効果(The effects of different technologies on Alicyclobacillus acidoterrestris during apple juice production)」,European Food Research and Technology 217,3,249−252;及びMukhopadhyay 2011,「市販の低温殺菌されていない液体卵白からの炭疽菌(Bacillus anthracis)Sterne株胞子の除去(Removal of Bacillus anthracis Sterne spore from commercial unpasteurized liquid egg white)」,Journal of Food Processing and Preservation,35巻,4,550−562)、1歳超の小児及び成人に使用可能である。
そのようなミクロ濾過された生成物は(それ自体、又はそれを含む組成物中で)さらに滅菌することができ、それにより細菌負荷の完全な低減が得られ、1歳未満の小児に生成物を使用することに適している。
【0055】
特定の実施形態においては、最初の段階で蜂蜜を加熱し、場合によりそれを希釈して、引き続いて0.45μm、0.2μm、0.1μmのカットオフを有する膜を用いる濾過システムによるステップが想定される濾過プロセスによって蜂蜜を改質することができる。
【0056】
膜はらせん巻き膜(spiral-wound membranes)、セラミック膜及びその他の当業者に既知の膜であってよい。
【0057】
そのようなプロセスは直接、蜂蜜、又は蜂蜜と本明細書に記載したさらなる成分の1つ又は複数を含む組成物に対して行なうことができる。
【0058】
組成物及び/又はその中に含まれる蜂蜜を含む成分の1つ又は複数から花粉を除去し、及び/又は細菌負荷を低減させることを可能にする他のいかなるプロセスも、本発明による組成物を調製するために適している。
【0059】
滅菌は、たとえばガンマ線処理、又は熱処理(熱滅菌)又は当業者に既知のその他の任意の適切な滅菌手法によって行なうことができる。
【0060】
単に非限定的な例として、本明細書に記載した組成物は、花粉を除去し、また細菌負荷を少なくとも対数単位(たとえば少なくとも4、5、6、その他の対数単位)に低減するためにミクロ濾過した蜂蜜を用い、当該蜂蜜を任意のさらなる物質と混合することによって、又は組成物全体をミクロ濾過することによって調製することができ、このようにして得られた組成物を任意にさらに滅菌プロセスにかけることができる。
【0061】
対数単位の低減とは、生存細菌の数の減少を対数的に定義するための数学的用語である。これは処理の後で試料から除去された生存細菌の相対的な数を意味する。
【0062】
1対数単位の細菌負荷の低減は、問題の試料中の細菌の数が処理の後で10分の1になっていることを意味し、2単位の低減は低減が100分の1、3単位は1000分の1、等を意味する。或いは、組成物は、花粉を除去し、また細菌負荷を完全に低減するために蜂蜜を限外濾過し、当該蜂蜜を、任意に滅菌された、可能なさらなる物質と混合することによって、又は組成物全体を限外濾過することによって調製することができる。
【0063】
このようにして得られた組成物をさらに任意に滅菌プロセスにかけることができる。
【0064】
本発明はまた、請求項8に記載の組成物の調製方法であって:
a.前記組成物及び/又はその中に含まれる蜂蜜を含む成分の1つ又は複数を1つ又は複数のミクロ濾過及び/又は限外濾過ステップにかけるステップ
を含む方法に関する。前記ミクロ濾過は約0.45μm、0.2μm、0.1μmのカットオフを有する膜によって行なうことができる。
【0065】
ステップa.の前に、前記蜂蜜は好適には水若しくは生理学的溶液によって、又はさらなる適切な成分によって希釈し、及び/又は約30〜70℃の温度に加熱してもよい。
【0066】
前記限外濾過は、約10,000−20,000−50,000−80,000−100,000ダルトンのカットオフを有する膜によって行なうことができる。
【0067】
さらに、上述の方法は:
b.組成物及び/又はその中に含まれる蜂蜜を含む成分の1つ又は複数を滅菌処置にかけるステップ
を含んでもよい。
【0068】
滅菌は、たとえばガンマ線処理、又は熱処理(熱滅菌)又は当業者に既知のその他の任意の適切な滅菌手法によって行なうことができる。
【0069】
1つの実施形態においては、滅菌はガンマ線照射によって行なわれる。
【0070】
本明細書に記載した直腸用組成物は、浣腸剤又は小児用浣腸剤(フリート型)を製造するために用いることができ、これらは1つの実施形態においては、調製された組成物を、これを直腸に注入するために適した好適な使い捨てデバイスに導入することによって、使い捨てにすることができる。
【0071】
そのようなデバイスは、肛門内に導入される中空で延長された実質的に円筒形の部分及びこの部分に連結され、その中に含まれた組成物を患者の直腸内に噴出することを可能にする外部容器を有するように製造される。
【0072】
中空で延長された部分と外部容器とは、成人、小児又は乳児への使用が想定されるかどうかに応じて異なった寸法であってよい。
【0073】
さらに、獣医用の場合には、使い捨てデバイスの前記要素は、意図された患畜に対応することになる。
【0074】
小児用浣腸剤(フリート型)の容器は通常、約1〜20ml、たとえば5〜15mlの量の組成物を含むことになる。浣腸剤用容器は20ml〜500mlの体積、必要な場合にはさらに大きな体積を含み得る。したがって、本明細書に記載した浣腸剤又は小児用浣腸剤は小児への使用(乳児、子供)に適しており、又は成人患者への使用にも適し得る。
【0075】
単に例として、小児用浣腸剤を成人に使用することを意図する場合には、これは本発明による組成物10gを含み得る。或いは、小児用浣腸剤を小児に使用することを意図する場合には、これは本明細書の対象である組成物5gを含むことができる。
【0076】
本発明の浣腸剤又は小児用浣腸剤は、本明細書に記載した2つ以上の使い捨て部品(disposable pieces)を含むパッケージで送達することもできる。
【0077】
本発明はまた、本発明の組成物を含む1つ又は複数の容器と、前記組成物を分配するための手段、前記組成物の直腸投与のための使い捨て又は再使用可能な手段から選択される1つ又は複数のさらなる要素とを含むキットに関する。
【0078】
したがって組成物は、キットにおいて、フラスコ又はボトル等の1つ又は複数の容器中に存在してもよく、またキットは、小児用浣腸剤(フリート型)又は浣腸剤の形態で組成物を投与するためのデバイス中に組成物を分配するためのシリンジ又はピペット等の目盛付きの手段を含んでもよい。
【0079】
そのようなデバイスは使い捨て又は再使用可能であってよく、従来技術において既知の古典的な浣腸剤又は上述のデバイスであってよい。
【0080】
特定の実施形態においては、組成物の投与のためのデバイス又は少なくとも肛門への導入のための実質的に円筒形の部分は、家庭用の滅菌製品又は処置の使用によってそれを滅菌することが可能な材料から作られ得る。そのような材料は、たとえばプラスチック若しくは天然ゴム又は小児医療及び非小児医療において一般的に用いられる他の材料であってよい。
【0081】
或いは、組成物の投与のためのデバイス又はそのパーツは、無菌で個別に包装されていてもよい。
【0082】
したがって、本発明はまた、適当な容器に分注された本発明による組成物を含む使い捨て浣腸剤又は小児用浣腸剤(フリート型)の調製方法に関する。
【0083】
以下の例は、本発明のいくつかの実施形態及び口腔粘膜への実験的粘膜付着性データを説明することを目的としており、もちろん本発明を限定する意図はない。
【実施例】
【0084】
(例1)
粘度の測定
蜂蜜−グリセリンの相互作用の研究は、以下の組成物の粘度変化を測定することによって行なった:
組成物AF(詳細な説明において「組成物1」とも称する):ネクター蜂蜜65.7%w/w;ハネデュー蜂蜜7.3%w/w;アロエベラ乾燥抽出物0.1%w/w;凍結乾燥ゼニアオイ粘液抽出物0.1%w/w;ラベンダー精油0.2%w/w;植物グリセリン18%w/w;レモン果汁0.5%w/w;脱ミネラル水8.1%w/w;
組成物AE(詳細な説明において「組成物2」とも称する):ネクター蜂蜜73%w/w;アロエベラ乾燥抽出物0.1%w/w;凍結乾燥ゼニアオイ粘液抽出物0.1%w/w;ラベンダー精油0.2%w/w;植物グリセリン15%w/w;天然抽出物3%w/w;レモン果汁0.5%w/w;脱ミネラル水8.1%w/w;
組成物AD(詳細な説明において「組成物3」とも称する):溶融ハネデュー蜂蜜70%w/w;アロエベラ乾燥抽出物0.1%w/w;凍結乾燥ゼニアオイ粘液抽出物0.1%w/w;ラベンダー精油0.2%w/w;植物グリセリン18%w/w;脱ミネラル水11.6%w/w;
組成物AC(詳細な説明において「組成物4」とも称する):ハネデュー蜂蜜70%w/w;アロエベラ乾燥抽出物0.1%w/w;凍結乾燥ゼニアオイ粘液抽出物0.1%w/w;ラベンダー精油0.2%w/w;植物グリセリン18%w/w;蜂蜜水5%w/;レモン果汁0.5%w/w;脱ミネラル水6.1%w/w。
【0085】
粘度測定は、当業者には既知のブルックフィールド粘度計を用いて行なった。実施した測定の結果を以下の表1に報告し、グリセリンの導入によって組成物の粘度がいかに顕著に増大するかを示す。
【表1】
上述の実験において、グリセリンを増加して水含量を低下させることによって粘度が増大することが観察され、粘度の増大とグリセリンの存在との間に関係が存在することが示された。このデータを以下の表2にまとめる。
【表2】
この結論は、以下の表3に報告する一連の実験によってさらに確認された。ここでは水含量を一定に保ち、グリセリン量を増加することによって、検討している組成物の粘度が増大することが強調される。
【表3】
【0086】
(例2)
改質蜂蜜又は本発明による組成物の調製方法
ネクター蜂蜜、ハネデュー蜂蜜又はそれらの混合物に、本明細書の記載に従ってある百分率の水を添加し、このようにして希釈した蜂蜜を40〜70℃の温度への加熱に供した。
【0087】
次いで、0.45μm、0.2μm、0.1μmのカットオフを有する膜を用いた濾過システムによって1つ又は複数のステップを行ない、透過液(製剤に使用すべき生成物である)を回収した。
生成物は少なくとも4対数単位の細菌負荷の低減を示した。
この時点で、このようにして得られた生成物は、本明細書に定義した重量百分率のグリセリンを含むさらなる成分の1つ又は複数と混合することができる。
任意に、蜂蜜中に天然に存在するかもしれない細菌(即ち微生物及び胞子)負荷を完全に低減させるべき場合には、ガンマ線照射又は熱(UHT)処理による滅菌処置を行なってもよい。
【0088】
(例3)
改質蜂蜜又は本発明による組成物の調製のためのプロセス
ネクター蜂蜜、ハネデュー蜂蜜又はそれらの混合物、及び必要な場合にはグリセリンを含む上述のさらなる成分の1つ又は複数を混合し、このようにして得られた混合物を、10,000−20,000−50,000−80,000−100,000ダルトンの膜を用いた限外濾過システムで1回又は複数のステップに供した。
【0089】
製剤に使用すべき生成物である透過液を回収した。
【0090】
生成物は細菌負荷の完全な低減を示した。任意に、組成物の調製のためのグリセリンを含むさらなる成分を限外濾過の前に添加しない場合に、蜂蜜中に天然に存在するかもしれない細菌(即ち微生物及び胞子)負荷を完全に低減させるべき場合には、ガンマ線照射又は熱(UHT)処理による滅菌処置を行なってもよい。
【0091】
(例4)
用いた粘膜付着分析
皮膚の構造と粘膜の構造との実質的な相違の1つは、粘膜においては角質層のような選択的バリアがないことによって表わされる。したがって、口腔粘膜と環境中に存在する有害な又は刺激的な物質(汚染物質、病原性微生物、その他)との接触によって、粘膜内及び関連する気道(気管、肺、その他)の内部への前記物質の浸透が高まり、炎症性及び/又はアレルギー性の病態を起こし得る。
【0092】
本実施例においては、本明細書に記載した蜂蜜及びグリセリンを含む組成物のインビトロにおける口腔粘膜への粘膜付着性(mucoadhesive ability)を評価した。
【0093】
モデルにおいて、レクチン/糖タンパク質結合阻害の百分率の評価によって粘膜付着性を測定した。このモデルにおいては、たとえば頬又は膣の粘膜細胞を用いることができる。膜の糖タンパク質中に存在するグルコシド残基及びマンノシド残基との親和性が高いビオチン化レクチン(Con−A)で細胞を処理した。これにより粘膜の糖タンパク質の部位はビオチン化レクチンによって占拠される。レクチン中のビオチン(ビタミンH)の存在は、次の段階のために不可欠である。ビオチン化レクチンで既に処理された細胞はストレプトアビジンペルオキシダーゼで満たされ、ビオチンとストレプトアビジンの高い親和性により、タンパク質/グルコース/レクチン/ビオチン/ストレプトアビジンペルオキシダーゼ複合体を形成することが可能になる。この時点で、細胞を洗浄し、オルトフェニレンジアミンの酸化反応を用いてペルオキシダーゼの存在によってタンパク質−タンパク質/グルコース/レクチン/ビオチン/ストレプトアビジンペルオキシダーゼ複合体を定量した。
【0094】
タンパク質/グルコース/レクチン/ビオチン/ストレプトアビジンペルオキシダーゼ複合体は、重合反応:
【化1】
を触媒する。
【0095】
溶液の黄色/橙色着色の強度(450nmで分光光度計を用いて測定される)は、糖タンパク質−レクチンの結合の量に比例し、したがって粘膜付着に利用できる部位(糖タンパク質)の量に比例する。このようにして決定される吸光度値は「対照」を構成する。
【0096】
以下に報告する粘膜付着分析においては、レクチンによる処理の前に粘膜細胞を30℃で約15分間、検討する生成物によって処理した。粘膜付着性生成物が存在すれば、これらはレクチン結合を阻害し、上述の対照に対して、その粘膜付着性に比例して試料の信号強度を低下させることになる。
【0097】
生成物の粘膜付着の百分率(%MA)は
%MA=(1−試料の吸光度/対照の吸光度)×100
として決定される。
【0098】
(例5)
蜂蜜74重量%及びグリセリン18重量%を含む組成物の粘膜付着性の評価
少なくとも60分間、食物を摂取していない8〜10名の男女ドナー(年齢:20〜35歳)の口腔を木製スパチュラで穏やかに擦過し、細胞をpH7.6の0.05MTBS(トリス緩衝生理食塩液)に浸漬した。0.5%のトリパンブルーで計数した後、細胞を0.9%のNaClで希釈して、評価に用いるそれぞれの試料について480,000個の最終細胞濃度を得た。細胞を4℃の温度に保った。次いで細胞懸濁液を2000rpmで5分間、遠心分離し、蜂蜜74重量%及びグリセリン18重量%を含む組成物5mlとインキュベートした。対照として、細胞懸濁液をその代わりに0.9%NaCl 5mlとインキュベートした。インキュベーションは穏やかに撹拌しながら温度30℃で15分行なった。TBSで3回洗浄した後、頬の細胞を10mg/LのCon−A 5mlと30℃で30分インキュベートし、TBSで3回洗浄し、次いで5mg/Lのストレプトアビジンペルオキシダーゼ5mlと30℃で60分インキュベートした。TBSで3回洗浄した後、試料あたり240,000個の細胞を0.05Mホスファートシトラート及びH
2O
2中のo−フェニレンジアミン(o−pd)2.5mlに加えた。反応は5分後に1M H
2SO
4によって停止させた。
【0099】
次いで、個別の測定のため吸光度値を分光光度計で読み取った。組成物は着色しており、これがプロトコルの最後に記録される吸光度値の正確な測定を妨害する可能性があるので、試料の読み取りのため(0.9%)NaCl溶液(対照のため)又は0.9%NaCl溶液で適切に希釈した生成物の溶液をブランクとして用いた。個別の試料を3回測定した。報告する結果は実施した全ての分析の平均値±SEMを表わす。
【表4】
【0100】
得られた結果は、分析した組成物が口腔粘膜に関して高い粘膜付着性を有していることを示す。得られた結果に鑑み、組成物は高く耐久性のある粘膜付着性を有していることを示し、直腸粘膜の細胞を含む腸粘膜の細胞に興味ある保護的役割を果たし得ることが確認できる。