(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のような削氷機を用いて、いちごけずり商品等の果実けずり商品を作ろうとすると、以下の問題があった。
【0010】
(1)商品価値の高い果実けずり商品を作ることができない問題
いちご、マンゴー、メロン等の果実には、糖が含まれており、その糖度は、果実の種類によって異なるばかりか、同じ果実であっても、品種の違いや、果実一つひとつによっても、糖度の大きさに幅がある。このような果実が冷凍されると、冷凍果実の硬度は、糖度の大きさに応じて異なり、一般的に糖度が高くなると、冷凍果実の硬度は小さくなる一方、糖度が低くなると、冷凍果実の硬度は大きくなる傾向にある。
【0011】
いちごの糖度は、概ね10%程度等と比較的低いため、冷凍いちごの硬度は比較的大きくなり、冷凍いちごは硬くなり易い。そのため、口の中で舌触りの良い食感を出せるよう、厚みを薄くしたいちごけずり商品を提供する場合には、ロータの回転速度をより速くして冷凍いちごを削り、冷凍された状態のいちごを溶け難くしないと、いちごけずり商品の商品価値は低下してしまう。
【0012】
一方、マンゴーやメロンでは、糖度が、概ね15%超等と比較的高いため、冷凍マンゴー等の硬度は、冷凍いちごの硬度まで高くならず、冷凍マンゴー等は、冷凍いちごに比べより柔らかな状態で硬化される。そのため、冷凍いちごの場合に比して、ロータの回転を遅くして冷凍マンゴー等を削らないと、削られた冷凍マンゴー等が、より短い時間で溶け易い状態になってしまい、果実けずり商品の商品価値が低下してしまう。
【0013】
従って、刃で削る対象を氷とした削氷機では、ロータの回転速度が一定であるため、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等の果実けずり商品を、この削氷機を用いて作ろうとすると、種々の冷凍果実の硬度に対応した適正なロータの回転速度が選択できず、商品価値の高い果実けずり商品を作ることができない。
【0014】
(2)複数種の冷凍果実を削るのにあたり、効率良く対応できない問題
削氷機では、駆動部と氷削加工部とが分割できず、氷削加工部を構成する各種部品も分解できない。そのため、例えば、いちごけずり商品を作った後、マンゴーけずり商品を作る場合等のように、異種の冷凍果実を同一の削氷機で削ると、先に削った一種の冷凍果実の削り残余が、氷削加工部に残ってしまい、他種の冷凍果実を用いた次の果実けずり商品に混入してしまう。従って、果実けずり商品を販売する店頭は、いちごけずり商品向け、マンゴーけずり商品向け、メロンけずり商品向け等のように、商品毎に分けて複数の削氷機を配備しなければならず、スペース上の制約が生じるほか、設備コストも高額になる。
【0015】
また、特に夏季になると、1つの店頭で販売される果実けずり商品は、日量一千数百食を超えることもあり、例えば、いちごけずり商品の販売数量が多く、マンゴーけずり商品向け削氷機を補助的に使用していちごけずり商品を作りたい場合等もある。しかしながら、このような場合、削氷機において、駆動部と氷削加工部とが分割できず、氷削加工部も個々の部品に分解できないため、氷削加工部に残留する冷凍果実の削り残余をきれいに洗い落す作業に困難を伴い、速やかに削氷機を洗浄することができない。
【0016】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、冷凍された果実を細かく削った果実けずり商品を作るのにあたり、商品価値の高い果実けずり商品を効率良く作ることができる冷凍果実用切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様における冷凍果実用切削装置は、果実が冷凍された状態にある冷凍果実を切削可能とする刃具と、前記冷凍果実を収容可能な内部空間が包囲部に囲まれて形成された冷凍果実収容手段と、前記冷凍果実収容手段内に回転可能に取付けられ、収容された前記冷凍果実を前記内部空間内で撹拌する撹拌手段と、前記撹拌手段の回転に必要な動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段の動きを制御する制御手段と、を備え、少なくとも前記刃具と、前記冷凍果実収容手段と、前記撹拌手段とからなる切削加工部は、着脱自在に分割可能な構造で構成され、1組以上の前記切削加工部が何れも選択的に、前記駆動手段と前記制御手段とからなる切削駆動部と、連結部で接続または接続解除されること、
前記駆動手段は電動モータであり、前記撹拌手段は、前記制御手段により、
前記電動モータにインバータ制御を行い、前記冷凍果実の糖度に応じて
、前記電動モータの出力軸を、設定された回転数に基づいて回転させることにより、制御された状態で回転し、前記冷凍果実は、前記撹拌手段により回転運動を伴いながら、前記刃具によって削られること、
前記刃具の表面には、当該刃具の母材より硬度が高い硬質被膜処理が施されていること、前記硬質被膜処理として、TiNに少なくともCr、AlあるいはSiのいずれかを含むTiN化合物による被膜層が、前記刃具に形成されていること、を特徴とする。
【0018】
この態様によれば、例えば、冷凍いちご、冷凍マンゴー、冷凍メロン等、果実の糖度が異なる種々の冷凍果実を用いて、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等、種々の果実けずり商品を、同じ本発明の冷凍果実用切削装置を使用して作る場合でも、各果実けずり商品に応じて、冷凍果実を削った冷凍果実削りが何れも、最適な状態で、効率良く生成できる。ひいては、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等の果実けずり商品の付加価値が高くなり、店は、商品価値の高い果実けずり商品を客に提供することができる。また、一の切削加工部と他の切削加工部とが、同じ切削駆動部と互換性を有して着脱できるため、作業者は、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等のように、異なる複数種の果実けずり商品を、1つの本発明の冷凍果実用切削装置を共用して、効率良くかつ簡単に作ることができる。また、本発明の冷凍果実用切削装置を設置する数が抑制できるため、設備コストが低減できる。さらに、切削加工部と切削駆動部とが、完全に分離するため、削った後に行う切削加工部の洗浄が、簡単にできる。
【0019】
上記の態様においては、前記包囲部は、下方に向けて窄む逆さ円錐筒状に形成されたテーパ周壁部を含み、前記刃具は、前記テーパ周壁部の内周面に沿った位置に当該刃具の刃先を配置して設けられていること、が好ましい。
【0020】
この態様によれば、冷凍果実の種類に依らず、冷凍果実が、適正なすくい角で滑らかに削られるため、口の中で舌触りの良い食感を出せるよう、冷凍果実を最適な厚みで薄く削った冷凍果実削りが容易に生成できる。また、刃具の刃先によって削られた冷凍果実削りが、撹拌手段の回転により、冷凍果実収容手段から外部に排出され易くなる。そのため、果実けずり商品を作るにあたり、冷凍果実収容手段の内部空間に投入した冷凍果実に基づいて、生成される冷凍果実削りの歩留まりが、より高くできる。
【0021】
上記の態様においては、前記刃具は、平板状に形成されており、前記テーパ周壁部の外周面と接する仮想平面を基準に、取付け角40〜60°の範囲内に傾けた姿勢で、配置されていること、が好ましい。
【0022】
この態様によれば、冷凍果実を削るとき、例えば、刃先角度20〜30°程度に形成された刃先が、冷凍果実収容手段内で回転運動する冷凍果実に対し、適切なすくい角で接触して、冷凍果実を滑らかに削ることができる。そのため、口の中で舌触りの良い食感を出せるよう、厚みを薄くして削られた冷凍果実削りが容易に生成され、商品価値の高い果実けずり商品を提供することができる。
【0023】
上記の態様においては、前記刃具を配置する取付け面と、前記取付け面に配置した前記刃具の位置を規制する位置規制部とを有する刃具支持体を備え、前記刃具支持体は、前記冷凍果実収容手段の前記包囲部に配設されており、前記位置規制部により、前記刃具は、前記冷凍果実収容手段の前記内部空間内に近接または離間する第1の方向のうち、離間する側への移動と、前記第1の方向と同一平面内で直交する第2の方向への移動にそれぞれ制限を加えた状態で、前記第1の方向にスライドして調整することにより、前記刃具
の刃先が位置決めされること、が好ましい。
【0024】
この態様によれば、作業者が、刃具の付け替え作業に、たとえ不慣れであっても、作業者は、取り付ける刃具を、所望の位置に容易にセットすることができる。特に、冷凍果実収容手段の内部空間内で、刃具の刃先をセットする位置が、例えば、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等、果実けずり商品の種類に応じて異なる場合でも、作業者は、作る果実けずり商品に合わせた最適な取付け位置に、刃具を簡単に位置決めしてセットすることができる。
【0025】
前記刃具の表面には、当該刃具の母材より硬度が高い硬質被膜処理が施されていること、が好ましい。
【0026】
この態様によれば、冷凍果実を細かく削った冷凍果実削りを生成するにあたり、刃先に硬質被膜処理を施した刃具を用いると、硬質被膜処理を施していない刃具に比べ、刃先の摩耗の進行が抑制できる。そのため、硬質被膜処理を施した刃具において、刃先を研ぎ直すまでの工具寿命が、硬質被膜処理を施していない刃具において、刃先を研ぎ直すまでの工具寿命に比べて、例えば、数〜十数倍等と大幅に伸び、刃先を研ぎ直す頻度が低減できる。また、新しい刃具に交換する頻度も、大幅に減少するため、ひいては、刃具に掛かるランニングコストが安価になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る冷凍果実用切削装置によれば、冷凍された果実(冷凍果実)を細かく削った果実けずり商品を作るのにあたり、商品価値の高い果実けずり商品を効率良く作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の冷凍果実用切削装置について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る冷凍果実用切削装置は、例えば、いちご、マンゴー、メロン等の果実を主な対象とし、このような果実が冷凍された状態にある冷凍果実を、刃具で細かく削る装置である。この冷凍果実用切削装置は、本実施形態では、前述したように、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、及びメロンけずり商品等の果実けずり商品を店頭で販売するのにあたり、客から注文を受けてから果実けずり商品を店内で作るときに用いられる。
【0030】
はじめに、冷凍果実の概念について、説明する。本実施形態では、果実がいちごである場合、一粒のいちごが冷凍された状態を、一つの冷凍いちごとする。また、果実がマンゴー、メロンである場合、一つのマンゴーを1辺2〜3cm程度に小さく分割した後に冷凍された状態を、一つの冷凍マンゴーとし、一玉のメロンを1辺2〜3cm程度に小さく分割した後に冷凍された状態を、一つの冷凍メロンとする。そして、冷凍いちご、冷凍マンゴー、及び冷凍メロンを含め、一つの果実全体の大きさ、または一つの果実を分割された状態の大きさが1辺2〜3cm程度とする果実が冷凍された状態を、総称して冷凍果実と定義する。この冷凍果実が、
図21及び
図22に示されている冷凍果実90である。
【0031】
図1は、本実施形態に係る冷凍果実用切削装置を示す斜視図であり、
図1に示す冷凍果実用切削装置を上方から示す平面図を、
図2に示す。
図1に示すように、冷凍果実用切削装置1は、切削加工部2と、切削駆動部3とに大別される。この冷凍果実用切削装置1では使用時に、連結部4で切削加工部2と切削駆動部3とが接続して一体化される。一方、切削加工部2を洗浄するときや、切削駆動部3と接続している一の切削加工部2を、選択的に他の切削加工部2Aに交換するときには、切削加工部2と切削駆動部3とが、連結部4で接続解除して分割される。
【0032】
図3は、
図1に示す冷凍果実用切削装置の分解斜視図である。切削加工部2は、
図3に示すように、締結ナット35と、ホッパ40(本発明の冷凍果実収容手段に対応)と、刃具ブラケット50(本発明の刃具支持体に対応)と、刃具60と、撹拌ロータ70(本発明の撹拌手段に対応)と、中間装着部材81と、外筒部材83と、吐出口カバー86等とからなる。切削加工部2では、このような部品が何れも、着脱自在に分割可能な構造で構成されている。
【0033】
図4は、
図1に示す冷凍果実用切削装置に装着した切削加工部とは別で、選択的に用いる切削加工部を示す分解斜視図である。冷凍果実用切削装置1は、1組以上の切削加工部2を具備している。具体的には、他の切削加工部2Aは、寸法や角度等に一部で異なる場合があるものの、一の切削加工部2と実質的に同じ部品で構成されており、一の切削加工部2と、他の切削加工部2Aとが、一つの切削駆動部3に選択的に取付けられる。例えば、冷凍いちごを削っていちごけずり商品を作るときに、一の切削加工部2が使用され、次いで、冷凍マンゴーを削ってマンゴーけずり商品を作るときに、冷凍いちごの削り残余がマンゴーけずり商品等に混入するのを防ぐため、他の切削加工部2Aが使用される。
【0034】
図5は、
図1に示す冷凍果実用切削装置の切削駆動部を、本体カバーを取外した状態で後方から示す背面図である。切削駆動部3は、
図3及び
図5に示すように、制御ユニット10(本発明の制御手段に対応)と、スイッチ11と、モータ12(本発明の駆動手段に対応)と、出力軸13と、伝達軸14と、カプラ16と、回り止め部材17と、支持部材21と、架台31と、固定具32と、軸受33と、Oリング34等とからなる。
【0035】
まず、切削加工部2について、具体的に説明する。
図6は、
図3に示す冷凍果実用切削装置から、刃具が取付けられた状態のホッパだけを拡大して示す斜視図であり、
図6の分解斜視図を、
図7に示す。ホッパ40は、酸性物質やアルカリ性物質、水に対して耐腐食性を有するステンレス鋼や樹脂材料等からなり、
図6及び
図7に示すように、冷凍果実90(
図21及び
図22参照)を収容可能な内部空間41を有している。この内部空間41は、包囲部42に囲まれて形成されている。包囲部42は、下方に向けて窄む逆さ円錐筒状に形成されたテーパ周壁部43と、このテーパ周壁部43の上端側で繋がる円筒形状のストレート周壁部44と、テーパ周壁部43の下端位置で接続する円環状のホッパ側連結部48とからなる。
【0036】
テーパ周壁部43には、刃具ブラケット50を取付けるブラケット取付け面46と、開口部45とが形成されている。開口部45は、刃具ブラケット50に取付けられた刃具60の刃先62を内部空間41に挿通する共に、冷凍果実90が刃具60で細かく削られた冷凍果実削り91(
図1参照)を、内部空間41から吐出口カバー86を通じて外部に排出するために設けられている。
【0037】
また、ホッパ40は、ホッパ側連結部48に、このホッパ側連結部48より径小な円筒状の凸部49を有し、固定具32の一部をなすフック32Bが、このホッパ側連結部48の外周上に2箇所設けられている。切削加工部2と切削駆動部3とが連結部4で接続した状態では、凸部49は、後述する支持部材21の嵌合溝24に嵌合する。
【0038】
図8は、
図7に示す刃具を拡大して示す斜視図であり、
図8に示す刃具の平面図を、
図9に示す。
図8及び
図9に示すように、刃具60は、本実施形態では、刃先角度20〜30°の刃先62と、2つの長孔61とを有し、平面視の外形を長方形状に形成した平板状の刃物である。この長孔61は、当該刃具60を刃具ブラケット50にネジ締結で固定するにあたり、ボルトを挿通するための貫通孔である。なお、刃具60において、ボルト65を挿通する部位は、長孔61に代えて、刃先62と平行な対辺(
図9中、上側の左右方向の辺)から、刃先62と垂直な辺(
図9中、上下方向の辺)に向けて延びる切り欠きであっても良い。
【0039】
次に、刃具60,60Aについて、
図8〜
図10を用いて説明する。
(実施例1)
刃具60は、刃先62の摩耗を抑制する処理を表面60aに施していないステンレス鋼製の刃物である。この刃先62は、冷凍果実90を切削可能な耐強度で形成されている。
【0040】
(実施例2)
図10は、表面に硬質被膜層を施した刃具を、
図9中、B−B矢視に相当する位置から見た断面で示す図である。
図10に示すように、刃具60Aは、母材であるステンレス鋼製の刃具60の表面60aに、この母材より硬度が高い硬質被膜層68を積層した刃物である。この硬質被膜層68は、例えば、表面60aに密着して積層する表面層だけの単層構造や、表面60aとの界面で密着を高めるバインダとして機能する中間層と、この中間層に表面層を積層する2層(複層)構造等で構成される。
【0041】
硬質被膜層68が単層構造の場合、表面層として、例えば、厚さ4〜6μm程度のTiN蒸着層等が挙げられる。また、硬質被膜層68が2層構造の場合には、中間層として、例えば、膜厚1.5〜3.0μm程度のTiN蒸着層等が挙げられる。硬質被膜層68が単層構造または2層構造に関係なく、TiN蒸着層は、一例として、表面硬度がビッカース硬さHV1700〜2200、酸化温度600℃等の特性を有する。
【0042】
2層構造の硬質被膜層68の表面層には、例えば、TiAlN蒸着層、TiCrAlN蒸着層、TiCrAlSi蒸着層、表面硬度がビッカース硬さHV1500〜7000程度のダイヤモンドライクカーボン(DLC:diamond‐like carbon)膜等、TiN蒸着層等の中間層よりも硬度が硬い蒸着層が挙げられる。この表面層がTiCrAlN蒸着層である場合、TiCrAlN蒸着層は、一例として、表面硬度がビッカース硬さHV2300〜2900、酸化温度800℃等の特性を有する。また、TiCrAlSi蒸着層は、一例として、表面硬度がビッカース硬さHV2800〜3600、酸化温度1100℃等の特性を有する。中間層に積層する表面層は、膜厚3.5〜5.0μm程度に形成され、中間層と表面層とを合わせた硬質被膜層68全体の厚みは、概ね4〜6μmである。
【0043】
硬質被膜層68の被膜処理法について、TiN蒸着層とTiCrAlN蒸着層との2層構造で形成された硬質被膜層68を例示して、簡単に説明する。硬質被膜層68の形成には、アークイオンプレーティング(AIP:Arc Ion Plating)法により、被膜層の素材として用いる合金(ターゲット:Target)を、刃具60に真空下で蒸着させるバッチ式真空蒸着炉が用いられる。バッチ式真空蒸着炉は、ターゲットを、炉内の複数箇所に配置できる構造になっており、TiN蒸着層の素材となるTiN合金製のターゲットと、TiCrAlSi蒸着層の素材となるTiCrAlSi合金製のターゲットとを、それぞれ所定位置に配置しておく。
【0044】
他方、蒸着前に、刃具60を高精度に洗浄し、蒸着不要部分を必要に応じてマスキングしておき、刃具60を真空下の炉内に配置して、まずTiN合金製のターゲットを、アーク放電で加熱蒸発、イオン化し、気体化して、TiN蒸着層を刃具60の表面60aに蒸着する。TiN蒸着層の蒸着後、引き続き、TiCrAlSi蒸着層の素材となるTiCrAlSi合金製のターゲットを、アーク放電で加熱蒸発、イオン化し、気体化して、TiCrAlSi蒸着層をTiN蒸着層に蒸着し積層させる。
【0045】
次に、刃具ブラケット50について、説明する。
図11は、
図7に示す刃具ブラケットを拡大して示す斜視図であり、
図11中、C−C矢視断面図を、
図12に示す。
図13は、
図12中、D矢視から見た取付け面を示す平面図である。
【0046】
刃具ブラケット50は、
図11及び
図12に示すように、略三角柱と略四角柱とを繋ぎ合わせた形状に形成された基部51を有し、この基部51に、ホッパ取付け面52と刃具取付け面53(本発明の取付け面に対応)とが形成されている。ホッパ取付け面52と平行な第1仮想線L1と、刃具取付け面53と平行な第2仮想線L2とが、取付け角θで交差するよう、刃具取付け面53は、ホッパ取付け面52と相対的に傾いている。
【0047】
具体的に説明する。
図14は、ホッパと刃具との取付け位置関係を模式的に示す説明図である。
図14に示すように、ホッパ取付け面52(第2仮想線L2)は、ホッパ40のテーパ周壁部43の外周面43aに接する仮想平面M(第1仮想線L1)を基準に、取付け角θに傾けた位置関係で配置されている。刃具60,60Aは、ホッパ取付け面52上に配置して刃具ブラケット50に取り付けられる。
【0048】
この取付け角θは、40〜60°の範囲内にあることが好ましく、本実施形態では、50°になっている。その理由として、刃具60,60Aの刃先角度が20〜30°であるため、後述するように、冷凍果実90を削るとき、内部空間41に配置される刃先62が、ホッパ40内で回転運動する冷凍果実90に対し、適正なすくい角で冷凍果実90に接触して削り込み、薄めの冷凍果実削り91を滑らかに削り易くできるからである。
【0049】
刃具ブラケット50は、ホッパ取付け面52をホッパ40のブラケット取付け面46に当接し、
図7に示すように、段付き貫通孔55に挿入したボルト57を、ブラケット取付け面46内にある雌ネジ47に螺合することにより、ホッパ40のテーパ周壁部43(包囲部42)に着脱可能に取付けられる。
【0050】
刃具取付け面53は、刃具60,60Aを当接して配置する平面であり、刃具60,60Aは、
図7に示すように、長孔61に挿通したボルト65を、刃具取付け面53内にある雌ネジ56に螺合することにより、刃具ブラケット50に着脱可能に取付けられる。刃具取付け面53には、位置規制部54が設けられ、この位置規制部54は、刃具取付け面53に配置した刃具60,60Aの位置を規制する。
【0051】
位置規制部54は、刃具取付け面53上より高く突出して形成されている。この位置規制部54は、
図11及び
図13に示すように、略長方形形状に形成された刃具取付け面53の長辺側の一辺(
図13中、左右方向にある上辺)に沿う第1位置規制部54Aと、短辺側の一辺(
図13中、上下方向にある右辺)に沿う第2位置規制部54Bと、からなる。
【0052】
図6に示すように、第1位置規制部54Aは、ホッパ40の内部空間41内に近接または離間する第1方向Sのうち、離間側S1への刃具60,60Aの移動に制限を加える。第2位置規制部54Bは、第1方向Sと同一平面内で直交する第2方向Wへの刃具60,60Aの移動に制限を加える。
【0053】
具体的に説明する。
図15は、
図6中、A−A矢視断面図である。
図16は、ホッパの内側から見た刃具の様子を示す図である。刃具60,60Aを刃具ブラケット50に取り付けるときには、作業者は、一側端面64を第2位置規制部54Bに当接させることにより、第2方向Wの規制側W1への移動を制限した状態で、後端面63を第1位置規制部54Aに当接させて刃具60,60Aを刃具取付け面53に配置する。これにより、刃具60,60Aは、第2方向Wに対し、位置決めされる。作業者は、刃具60,60Aをこの状態に保持したまま、長孔61にボルト65を挿通し、雌ネジ56に軽く締結して仮留めすると、
図15中、二点鎖線で示すように、刃具60,60Aの刃先62が、テーパ周壁部43の内周面43bよりやや径外側の位置にセットされる。
【0054】
そして、作業者は、
図6に示すように、反規制側W2に位置ずれしないよう、刃具60,60Aの一側端面64を第2位置規制部54Bに当接した状態を維持したまま、
図15に示すように、刃具60,60Aを第1方向Sの近接側S2にスライドさせる。このとき、刃具60,60Aは、長孔61内を挿通したボルト65と相対的に移動する距離分、スライドできるため、作業者は、内部空間41内の所望の位置(
図15中、実線で示す位置)に刃先62を配置できるよう、第1方向Sに対し、刃具60,60Aの移動を微調整する。
【0055】
かくして、
図15及び
図16に示すように、刃具60,60Aは、テーパ周壁部43の内周面43bに沿う位置に刃先62を配置し、ボルト65と雌ネジ56とを増し締めして固定することにより、最適な状態の冷凍果実削り91を得るのに適した位置にセットされる。
【0056】
次に、撹拌ロータ70について、説明する。
図17は、
図1に示す冷凍果実用切削装置の撹拌ロータを示す斜視図である。
図18は、
図17に示す撹拌ロータを、上方から示す平面図であり、
図17に示す撹拌ロータを、下方から示す平面図を、
図19に示す。
【0057】
撹拌ロータ70は、ホッパ40の内部空間41に回転可能に取付けられ、内部空間41に収容された冷凍果実90を撹拌する部材である。この撹拌ロータ70は、酸性物質やアルカリ性物質、水に対して耐腐食性を備えた金属材料、または樹脂材料からなる。撹拌ロータ70は、円環状に形成されたフランジ76と、フランジ76の軸線上に有するボス71とを、角度120°の等間隔で配置された3つの羽根75により繋いで形成されている。フランジ76には、位置決め孔77が穿孔され、中間装着部材81は、下側フランジ82(
図3参照)の凸部をフランジ76の位置決め孔77に挿入することにより、装着される。
【0058】
撹拌ロータ70をホッパ40に取り付けたとき、ホッパ40のテーパ周壁部43の内周面43bに沿うよう、羽根75は、径外に膨らみながら、フランジ76とボス71との間に捩じりを有した形態で、形成されている。ボス71は、その中央に貫通孔74を有し、上方側には、貫通孔74の周囲を閉塞する支持部73を、下方側には、六角ナットである回り止め部材17と嵌合可能な嵌合部72を、それぞれ有している。
【0059】
次に、切削駆動部3について、
図3、
図5、及び
図20を用いて説明する。
図20は、
図1に示す冷凍果実用切削装置で切削駆動部と切削加工部とが連結した様子を示す図であり、図を見易くするため、一部の構成部品を省略し、主要部だけを図示している。モータ12は、撹拌ロータ70の回転に必要な動力を発生する。制御ユニット10は、スイッチ11と、モータ12と、電気的に接続されている。
【0060】
この制御ユニット10は、スイッチ11によりモータ12の作動をオン/オフする制御を行うほか、モータ12の出力軸13の回転を、任意の回転数に可変するインバータ制御を行う。制御ユニット10では、撹拌ロータ70の回転数Nが任意に設定可能であり、例えば、冷凍いちご、冷凍マンゴー、冷凍メロン等、冷凍果実90の種類毎に異なる最適な回転数Nがそれぞれ、自在に設定できて記憶される。なお、同じ果実であっても、品種の違いや、果実一つひとつによっても、糖度の大きさに幅があるため、設定する撹拌ロータ70の回転数Nは、基準となる回転数N
0を中心値として、例えば、±10%等の許容回転域の幅を有した回転数帯域に基づいて、設定されることが好ましい。
【0061】
制御ユニット10とスイッチ11とモータ12は、架台31に配設されている。架台31全体は、本体カバー84で覆われており、冷凍果実削り91の飛散を防止する前面カバー85が、吐出口カバー86の下方周辺に設けられている。モータ12の出力軸13は、架台31の天板を挿通して上向きに取り付けられ、カプラ16を介して伝達軸14と連結されている。これにより、モータ12の回転力が、先端に雄ネジ部15を有した伝達軸14に伝達する。雄ネジ部15には、六角ナットである回り止め部材17が、螺合により取付けられており、回り止め部材17を挿通した雄ネジ部15の上端側が、締結ナット35と螺合する。
【0062】
架台31の天板には、支持部材21が、底上げされて取り付けられている。支持部材21は、ホッパ40のホッパ側連結部48とほぼ同径の円筒状で形成された軸保持部22と、この軸保持部22より径大な円盤状の接続部23とを有している。伝達軸14は、2つの軸受33を介して支持部材21の軸保持部22に、図示しないシール部材により、液密に保持されている。接続部23には、前述したように、嵌合溝24が、ホッパ40の凸部49と嵌合可能に凹設され、Oリング溝25が、この嵌合溝24の底に凹設されている。
【0063】
また、フック32Bを除いた固定具32の残部(留め輪32A、レバー32C)が、この接続部23の外周上に2箇所設けられ、フック32Bと、ホッパ40のホッパ側連結部48に設けた留め輪32Aとが、レバー32Cの操作により、自在に係留または係留解除可能となっている。すなわち、ホッパ40のホッパ側連結部48と、支持部材21の接続部23とが、冷凍果実用切削装置1の連結部4になっている。
【0064】
切削駆動部3と切削加工部2,2Aとを連結部4で接続する場合には、
図20に示すように、Oリング34がOリング溝25に介装された後、ホッパ40の凸部49が支持部材21の嵌合溝24に嵌め込まれる。次に、固定具32の留め輪32Aが、フック32Bに係留されると、ホッパ40のホッパ側連結部48と、支持部材21の接続部23とが固定される。
【0065】
次に、作業者は、ホッパ40内で、撹拌ロータ70のボス71の貫通孔74を、伝達軸14の雄ネジ部15に挿通し、ボス71の嵌合部72を回り止め部材17に嵌め込み、ボス71の支持部73を回り止め部材17に支持させる。このとき、撹拌ロータ70が、ホッパ40と接触する虞があれば、回り止め部材17を回転させ、雄ネジ部15と螺合する回り止め部材17の位置を変えて、撹拌ロータ70の高さ調整を行う。
【0066】
次に、作業者は、ボス71の貫通孔74を貫通した雄ネジ部15の先端側に、締結ナット35を締結することにより、撹拌ロータ70が、回り止め部材17と締結ナット35に挟持されて固定される。次に、作業者は、下側フランジ82の凸部をフランジ76の位置決め孔77に挿入して、投入した冷凍果実90がホッパ40の底部中央に集まるよう、中間装着部材81を撹拌ロータ70上に載置して、外筒部材83をフランジ76の外周縁上に載置する。かくして、切削駆動部3と切削加工部2,2Aとの接続が完了する。
【0067】
次に、冷凍果実用切削装置1の動作について、説明する。冷凍果実用切削装置1では、撹拌ロータ70の羽根75における外周側の周速V(m/sec)は、冷凍果実90の種類(例えば、冷凍いちご、冷凍マンゴー、冷凍メロン等)によって異なるため、作業者は、削る冷凍果実90の種類に対応した最適な撹拌ロータ70の回転数N(rpm)を、予め選択して、制御ユニット10に設定する。
【0068】
具体的には、例えば、糖度10%程度のいちごを冷凍した冷凍いちごの場合、撹拌ロータ70の羽根75の前記周速がV1(m/sec)(0<V1)となるよう、作業者は、撹拌ロータ70の回転数N1(rpm)(0<N1)を、制御ユニット10に設定する。他方、糖度15%超のマンゴーを冷凍した冷凍マンゴーの場合、撹拌ロータ70の羽根75の前記周速がV2(m/sec)(V2<V1)となるよう、作業者は、撹拌ロータ70の回転数N2(rpm)(0<N2<N1)を、制御ユニット10に設定する。すなわち、撹拌ロータ70は、制御ユニット10により、冷凍果実90の糖度に応じて制御された状態で回転する。
【0069】
図21は、
図1に示す冷凍果実用切削装置により冷凍果実を削る様子を示す模式図であり、
図21中、E−E矢視断面図を、
図22に示す。作業者が、ホッパ40の内部空間41に冷凍果実90を投入すると、冷凍果実90は、撹拌ロータ70のボス71近傍に集まり、撹拌ロータ70が回転すると、
図21及び
図22に示すように、この冷凍果実90に遠心力Fが作用する。遠心力Fは、テーパ周壁部43の内周面43bに沿う第1の力成分F1と、内周面43bと垂直な第2の力成分F2とを合成した力である。そのため、冷凍果実90は、第2の力成分F2による作用を受けて、内周面43bに沿いながら、第1の力成分F1による作用を受けて、ボス71近傍からテーパ周壁部43の上方に向けて移動する。
【0070】
これにより、内部空間41に投入された冷凍果実90は、テーパ周壁部43に配置された刃具60,60Aの刃先62に接近し易くなる。そして、刃先62が、内部空間41で回転運動する冷凍果実90を、適正なすくい角で滑らかに削り、口の中で舌触りの良い食感を出せるよう、厚みを薄くした冷凍果実削り91が生成される。冷凍果実削り91は、開口部45を通じて吐出口カバー86内に送られ、
図1に示すように、吐出口カバー86の下方位置に予め準備した容器内に排出される。かくして、冷凍果実90は、撹拌ロータ70により回転運動を伴いながら、刃具60によって削られる。
【0071】
実施形態に係る冷凍果実用切削装置1の作用・効果について、説明する。冷凍果実用切削装置1は、果実が冷凍された状態にある冷凍果実90を切削可能とする刃具60,60Aと、冷凍果実を収容可能な内部空間41が包囲部42に囲まれて形成されたホッパ40と、ホッパ40内に回転可能に取付けられ、収容された冷凍果実90を内部空間41内で撹拌する撹拌ロータ70と、撹拌ロータ70の回転に必要な動力を発生するモータ12と、モータ12の動きを制御する制御ユニット10と、を備える。
【0072】
少なくとも刃具60,60Aと、ホッパ40と、撹拌ロータ70等とからなる切削加工部2,2Aは、着脱自在に分割可能な構造で構成され、1組以上の切削加工部2,2Aが何れも選択的に、モータ12と制御ユニット10等とからなる切削駆動部3と、連結部4で接続または接続解除されること、撹拌ロータ70は、制御ユニット10により、冷凍果実90の糖度に応じて制御された状態で回転し、冷凍果実90は、撹拌ロータ70により回転運動を伴いながら、刃具60,60Aによって削られること、を特徴とする。
【0073】
この態様によれば、冷凍いちご、冷凍マンゴー、冷凍メロン等、果実の糖度が異なる種々の冷凍果実90を用いて、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等、種々の果実けずり商品を、同じ冷凍果実用切削装置1を使用して作る場合でも、各果実けずり商品に応じた冷凍果実削り91が何れも、最適な状態で、効率良く生成できる。ひいては、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等の果実けずり商品の付加価値が高くなり、店は、商品価値の高い果実けずり商品を客に提供することができる。また、一の切削加工部2と他の切削加工部2Aとが、同じ切削駆動部3と互換性を有して着脱できるため、作業者は、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等のように、異なる複数種の果実けずり商品を、1つの冷凍果実用切削装置1を共用して、効率良くかつ簡単に作ることができる。また、冷凍果実用切削装置1を設置する数が抑制できるため、設備コストが低減できる。さらに、切削加工部2,2Aと切削駆動部3とが、完全に分離するため、削った後に行う切削加工部2の洗浄が、簡単にできる。
【0074】
従って、本実施形態に係る冷凍果実用切削装置1によれば、冷凍された果実を細かく削った果実けずり商品を作るのにあたり、商品価値の高い果実けずり商品を効率良く作ることができる、という優れた効果を奏する。
【0075】
また、冷凍果実用切削装置1では、包囲部42は、下方に向けて窄む逆さ円錐筒状に形成されたテーパ周壁部43を含み、刃具60,60Aは、テーパ周壁部43の内周面43bに沿った位置に、当該刃具60,60Aの刃先62を配置して設けられていること、を特徴とする。
【0076】
この特徴により、冷凍果実90の種類に依らず、冷凍果実90が、適正なすくい角で滑らかに削られるため、口の中で舌触りの良い食感を出せるよう、冷凍果実90を最適な厚みで薄く削った冷凍果実削り91が容易に生成できる。また、刃具60,60Aの刃先62で削られた冷凍果実削り91が、撹拌ロータ70の回転により、ホッパ40の開口部45から吐出口カバー86へと排出され易くなる。そのため、果実けずり商品を作るにあたり、ホッパ40の内部空間41に投入した冷凍果実90に基づいて、生成される冷凍果実削り91の歩留まりが、より高くできる。
【0077】
また、冷凍果実用切削装置1では、刃具60,60Aは、平板状に形成されており、テーパ周壁部43の外周面43aと接する仮想平面Mを基準に、取付け角40〜60°の範囲内に傾けた姿勢で、配置されていること、を特徴とする。
【0078】
この特徴により、冷凍果実90を削るとき、刃先角度20〜30°の刃先62が、ホッパ40内で回転運動する冷凍果実90に対し、適正なすくい角で冷凍果実90に接触して削り込み、薄めの冷凍果実削り91を滑らかに削ることができる。そのため、口の中で舌触りの良い食感を出せるよう、厚みを薄くした冷凍果実削り91が容易に生成され、商品価値の高い果実けずり商品を提供することができる。
【0079】
また、冷凍果実用切削装置1では、刃具60,60Aを配置する刃具取付け面53と、この刃具取付け面53に配置した刃具60,60Aの位置を規制する位置規制部54とを有する刃具ブラケット50を備え、刃具ブラケット50は、ホッパ40のテーパ周壁部43に配設されており、位置規制部54により、刃具60,60Aは、ホッパ40の内部空間41内に近接または離間する第1方向Sのうち、離間側S1への移動と、第1方向Sと同一平面内で直交する第2方向Wへの移動にそれぞれ制限を加えた状態で、第1方向Sにスライドして調整することで、刃具60,60Aの刃先62が位置決めされること、を特徴とする。
【0080】
この特徴により、作業者が、刃具60,60Aの付け替え作業に、たとえ不慣れであっても、作業者は、刃具ブラケット50に取り付ける刃具60,60Aを、所望の位置に容易にセットすることができる。特に、ホッパ40の内部空間41内で、刃具60,60Aの刃先62をセットする位置が、例えば、いちごけずり商品、マンゴーけずり商品、メロンけずり商品等、果実けずり商品の種類に応じて異なる場合でも、作業者は、作る果実けずり商品に合わせた最適な取付け位置に、刃具60,60Aを簡単に位置決めしてセットすることができる。
【0081】
また、冷凍果実用切削装置1では、刃具60Aの表面60aには、当該刃具60Aの母材より硬度が高い硬質被膜層68が形成されていること、を特徴とする。
【0082】
この特徴により、冷凍果実90を細かく削った冷凍果実削り91を生成するにあたり、刃先62に硬質被膜層68を施した刃具60Aを用いると、硬質被膜層68を施していない刃具60に比べ、刃先62の摩耗が極端に抑制される。そのため、刃具60と刃具60Aとを同一条件下で使用して、冷凍果実90を切削した場合に、刃具60Aの刃先62を研ぎ直すまでの工具寿命が、例えば、刃具60の刃先62を研ぎ直すまでの工具寿命に比べ、数〜十数倍等と大幅に伸び、刃先62を研ぎ直す頻度が低減できる。また、新しい刃具60Aに交換する頻度も、大幅に減少するため、ひいては、刃具60Aに掛かるランニングコストは、安価になる。
【0083】
なお、上記した実施の形態は単なる例示に過ぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【0084】
(1)例えば、本実施形態では、冷凍果実90として、冷凍いちご、冷凍マンゴー、及び冷凍メロン等を挙げたが、冷凍いちご、冷凍マンゴー、及び冷凍メロン等以外に、一つの果実全体の大きさ、または一つの果実を分割された状態の大きさが1辺2〜3cm程度とする果実が冷凍された状態であれば、冷凍果実は、特に限定されるものではない。冷凍果実は、例えば、キュウイ、オレンジ、バナナ等の果物を冷凍した状態の冷凍果物や、野菜が冷凍された状態にある冷凍野菜でも良い。
【0085】
(2)また、本実施形態では、硬質被膜層68を表面60aに蒸着した刃具60Aを挙げたが、刃具の表面への硬質被膜処理は、実施形態で説明した被膜処理法に限定されるものではなく、刃具の母材より硬度が高い硬質層が、刃具の表面に施されていれば、何でも良い。
冷凍果実用切削装置は、果実が冷凍された状態にある冷凍果実を切削可能とする刃具と、前記冷凍果実を収容可能な内部空間が包囲部に囲まれて形成された冷凍果実収容手段と、前記冷凍果実収容手段内に回転可能に取付けられ、収容された前記冷凍果実を前記内部空間内で撹拌する撹拌手段と、前記撹拌手段の回転に必要な動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段の動きを制御する制御手段と、を備え、少なくとも前記刃具と、前記冷凍果実収容手段と、前記撹拌手段とからなる切削加工部は、着脱自在に分割可能な構造で構成され、1組以上の前記切削加工部が何れも選択的に、前記駆動手段と前記制御手段とからなる切削駆動部と、連結部で接続または接続解除されること、前記撹拌手段は、前記制御手段により、前記冷凍果実の糖度に応じて制御された状態で回転し、前記冷凍果実は、前記撹拌手段により回転運動を伴いながら、前記刃具によって削られる。