(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内側にポンプ室が区画されているポンプケースと、前記ポンプ室に配置された羽根車本体および当該ポンプ室の天井に設けられた天井穴を貫通して前記ポンプケースの外側に突出する軸部を有する羽根車と、ポンプケースの上方に配置されているモータ本体および当該モータ本体から下方に突出して前記軸部に同軸に連結されている出力軸を有するモータ部とを備えるドレンポンプにおいて、
前記ポンプケースは、前記天井穴を備える上ケースと、軸線方向の下側から前記上ケースに重ねられて当該上ケースとともに前記ポンプ室を区画している下ケースとを備え、
前記上ケースは、前記ポンプ室よりも外周側で前記天井穴を包囲して上方に突出する環状壁と、前記ポンプ室よりも外周側で当該上ケースを上下に貫通する排水穴とを備え、
前記下ケースおよび前記上ケースは、バヨネット機構によって着脱可能に締結されており、
前記バヨネット機構は、締結部として、前記下ケースの側面から半径方向外側に突出する係合突部と、前記上ケースに設けられた係合片とを備え、
前記係合片は、前記係合突部の半径方向の外側で下方に延びる延設部および当該延設部の下端から半径方向を内側に延びて前記係合突部の下側に当接する係合爪部を備え、
前記上ケースは、樹脂成形品であり、軸線方向から見たときに前記係合爪部と重なる部位を含み当該部位よりも周方向に長く形成された長穴を備え、
前記長穴の周方向の端部分が前記排水穴となっており、
前記排水穴の上端開口は、前記環状壁の内側に位置しており、
前記排水穴の下端開口は、前記下ケースによって塞がれていないことを特徴とするドレンポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなドレンポンプでは、モータ部が停止して羽根車の回転が止まると、ドレン管の側から吐出管を介してポンプ室に向ってドレンが逆流することがある。また、ドレンが逆流すると、ポンプ室から天井穴を介してドレンが上方に溢れ出すことがある。ここで、特許文献1のドレンポンプは、天井穴の周囲に環状壁を備えているので、上ケースの剛性を確保することができるとともに、環状壁によってポンプ室の側で発生して外部に漏れるポンプ音を抑制することができる。しかし、天井穴を介して溢れ出したドレンが環状壁の内側に溜まり、環状壁内のドレンの水面が上昇してモータ本体に接近してモータ本体を濡らしてしまう危険性がある。モータ本体が濡れると、漏電やモータ部の動作不良を発生させる原因となる。
【0006】
このような問題点に鑑みて、本発明の課題は、天井穴を介して溢れ出したドレンが当該天井穴を囲む環状壁の内側に溜まってモータ本体へ接近してしまうことを抑制することができるドレンポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、内側にポンプ室が区画されているポンプケースと、前記ポンプ室に配置された羽根車本体および当該ポンプ室の天井に設けられた天井穴を貫通して前記ポンプケースの外側に突出する軸部を有する羽根車と、ポンプケースの上方に配置されているモータ本体および当該モータ本体から下方に突出して前記軸部に同軸に連結されている出力軸を有するモータ部とを備えるドレンポンプにおいて、前記ポンプケースは、前記天井穴を備える上ケースと、軸線方向の下側から前記上ケースに重ねられて当該上ケースとともに前記ポンプ室を区画している下ケースとを備え、前記上ケースは、前記ポンプ室よりも外周側で前記天井穴を包囲して上方に突出する環状壁と、前記ポンプ室よりも外周側で当該上ケースを上下に貫通する排水穴とを備え、
前記下ケースおよび前記上ケースは、バヨネット機構によって着脱可能に締結されており、前記バヨネット機構は、締結部として、前記下ケースの側面から半径方向外側に突出する係合突部と、前記上ケースに設けられた係合片とを備え、前記係合片は、前記係合突部の半径方向の外側で下方に延びる延設部および当該延設部の下端から半径方向を内側に延びて前記係合突部の下側に当接する係合爪部を備え、前記上ケースは、樹脂成形品であり、軸線方向から見たときに前記係合爪部と重なる部位を含み当該部位よりも周方向に長く形成された長穴を備え、前記長穴の周方向の端部分が前記排水穴となっており、前記排水穴の上端開口は、前記環状壁の内側に位置しており、前記排水穴の下端開口は、前記下ケースによって塞がれていないことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、天井穴から上方に溢れ出して環状壁の内側に溜まるドレンを、排水穴を介して下ケースの外側に排出することができる。この結果、環状壁の内側に溜まるドレンの水面が環状壁の上端位置に接近することを抑制できるので、ドレンがポンプケースの上方に位置するモータ本体に接近することを抑制できる。従って、モータ本体が濡れてしまうことを抑制できる。
【0009】
また、本発明によれば、上ケースと下ケースはバヨネット機構によって締結されているので、これらの着脱が容易である。従って、例えば、ポンプ室内にゴミなどが堆積した場合でも、これらを除去することが容易となる。ここで、軸線方向で上下に2分割されている金型を用いて樹脂製の上ケースを成形する場合において、上ケースが下方に延びる延設部と延設部の下端から半径方向を内側に延びる係合爪部を備える係合片を有する場合には、上側に配置される金型には、係合片を形成するために下方に突出する突出部分が設けられ、当該突出部分の外周面および下面が、係合片の延設部の内周面と係合爪部の上面を形成する。そして、この金型の突出部分は、成形時に、上ケースにおいて軸線方向から見たときに係合爪部と重なる部位に長穴を形成する。従って、金型における突出部分を係合片に対応する形状よりも周方向に長くするだけで、締結部よりも周方向に長い長穴を形成することができ、この長穴の周方向の端部分を排水穴とすることができる。すなわち、排水穴を形成するための金型の構成を簡略化することができる。
【0010】
本発明において、前記バヨネット機構は、複数の前記締結部を備え、前記排水穴として、複数の排水穴を備えていることが望ましい。この場合には、複数の前記締結部は、等角度間隔で設けられていることが望ましい。このようにすれば、排水穴が全周に渡って離間して設けられるので、ドレンポンプが傾斜して設置されている場合でも、環状壁内に溜まるドレンを排水穴から排出することが容易である。
【0011】
本発明において、前記バヨネット機構は、前記係合片および前記係合
突部の一方に周方向から他方に当接して前記上ケースと前記下ケースの相対角度位置を規定する位置決め部を前記係合片および前記係合
突部の他方に備えており、前記位置決め部は、前記複数の締結部のうちの一つの締結部に設けられていることが望ましい。バヨネット機構が上ケースと下ケースの相対角度位置を規定する位置決め用突部を備える場合には、係合片または係合
突部に位置決め部を設けると、この位置決め部によって排水穴を形成することが困難となったり、排水穴の開口面積が狭くなったりすることがある。かかる問題に対して、位置決め部を複数の締結部のうちの一つの締結部に設ければ、位置決め部が設けられていない他の締結部の近傍では、排水穴の形成が困難とはならず、排水穴の開口面積として十分な面積を確保することができる。
【0012】
本発明において、前記排水穴は、等角度間隔で複数設けられていることが望ましい。このようにすれば、ドレンポンプが傾斜して設置されている場合でも、環状壁内に溜まるドレンを排水穴から排出することが容易である。
【0013】
本発明において、前記下ケースは、前記ポンプ室に吸い上げたドレンを排出するための吐出管を備えており、前記吐出管は、前記軸線と交差する方向に延びており、前記排水穴と、前記吐出管とは、軸線回りの異なる角度位置に配置されていることが望ましい。このようにすれば、排水穴から下ケースの外側に排出されたドレンが吐出管を伝ってドレンパンの外側に達してしまうことを防止できる。
【0014】
本発明において、前記軸部において前記ポンプケースの外側に位置している軸部分には、半径方向に広がる板部を備える水切り部材が取り付けられており、前記板部は、前記上端開口よりも上方に位置していることが望ましい。このようにすれば、天井穴から上方に溢れ出して環状壁の内側に溜まるドレンがモータ本体の側に飛散することを抑制しながら、ドレンを排水穴から排出できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、天井穴から上方に溢れ出して環状壁の内側に溜まるドレンを、上ケースに設けられた排水穴を介して下ケースの外側に排出することができる。この結果、環状壁の内側に溜まるドレンの水面が環状壁の上端位置に接近することを抑制できるので、ドレンがポンプケースの上方に位置するモータ本体に接近することを抑制できる。従って、モータ本体が濡れてしまうことを抑制でき、モータ本体が濡れることに起因する漏電やモータ部の動作不良を回避することができる。
また、上ケースと下ケースはバヨネット機構によって締結されているので、これらの着脱が容易である。従って、例えば、ポンプ室内にゴミなどが堆積した場合でも、これらを除去することが容易となる。さらに、軸線方向で上下に2分割されている金型を用いて樹脂製の上ケースを成形する場合において、排水穴を形成するための金型の構成を簡略化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、本発明を適用したドレンポンプを説明する。
【0018】
(全体構成)
図1(a)はドレンポンプの平面図であり、
図1(b)はドレンポンプの概観斜視図である。
図2は
図1(a)のX−X断面図である。
図1に示すように、ドレンポンプ1は、エアコンの室内ユニット内において冷房時や除湿時に蒸発器よって室内ユニット内で発生するドレンDを受けるドレンパン100の上方に配置されている。
【0019】
ドレンポンプ1は、ポンプ部2と、その駆動源となるモータ部3を有している。モータ部3は、ポンプ部2の上方に配置されたモータ本体4と、モータ本体4の下端面から下方に突出する出力軸5を有している。モータ本体4からは、ドレンポンプ1を室内ユニットに固定するための3本の取り付け腕6が上方に突出している。モータ本体4には、電力を供給するために配線7が接続されている。
【0020】
ポンプ部2は下方に延びる吸引管8および側方に延びる吐出管9を備えている。吸引管8の下端は吸引口10となっており、ドレンパン100の内側に位置している。吐出管9にはドレン管101が接続されている。
【0021】
図2に示すように、ポンプ部2は、樹脂製のポンプケース11と、羽根車12と、水切り部材13を備えている。ポンプケース11は吸引管8および吐出管9を備えており、内側にポンプ室14が区画されている。羽根車12は、ポンプ室14に配置された羽根車本体15と、ポンプ室14の天井に設けられた天井穴16を貫通してポンプケース11の外側に突出する軸部17を備えている。水切り部材13は、軸線L方向と直交する方向に広がる環状板部18を備えており、軸部17の上端部分に取り付けられている。羽根車12の軸部17の上端面には軸線L方向に窪む凹部19が設けられており、モータ部3の出力軸5が凹部19内に圧入固定されることにより、出力軸5と羽根車12は同軸に連結されている。従って、モータ部3が駆動すると、羽根車12が回転駆動される。
【0022】
(モータ部)
モータ本体4は、
図2に示すように、樹脂製の下側モータケース21および上側モータケース22を備えている。下側モータケース21は、円環状の底板23と、底板23の内周縁部分から上方に延びる筒部24と、底板23の外周縁部分から上方に延びる円環状壁25と、円環状壁25の下端部分から半径方向を外側に延びている円環状のフランジ26を備えている。底板23上には環状の回路基板27が僅かな隙間を開けて支持されている。筒部24は、軸線L方向の中程の外周面部分に円環状段部28を備えており、この円環状段部28には、ステータ29が固定されている。ステータ29は、半径方向に突出する複数本の突極を備えるステータコアと、各突極に巻き回されている駆動コイルを備える。
【0023】
筒部24の内周側には、軸線L方向で離れた位置に2つの環状の焼結含油軸受30が取り付けられている。これらの焼結含油軸受30には、出力軸5が回転自在の状態で支持されている。出力軸5の下側部分は下側モータケース21から下方に突出しており、出力軸5の上端部分は筒部24よりも上側に突出している。出力軸5の上端部分にはカップ形状のヨーク31が開口部を下方に向けた状態で取り付けられており、内側を向いているヨーク31の内周面には、周方向にS極とN極が交互に着磁されている円環状の永久磁石32が取り付けられている。
【0024】
上側モータケース22は平面形状が円形の天井板33と天井板33の外周縁部分から下方に延びている外周壁34と、外周壁34の下端部分の4箇所から半径方向を外側に延びるように形成された固定部35を備えている。固定部35は外周壁34の回りに等角度間隔で形成されており、上下方向に有頭の締結ネジ36が貫通するネジ貫通穴37を備えている。外周壁34の軸線L方向の途中には段部が設けられている。上側モータケース22は下側モータケース21に上方から被せられ、その外周壁34の内周面部分が下側モータケース21の円環状壁25の外周面に当接し、外周壁34および固定部35の下端面が下側モータケース21のフランジ26の上端面に当接した状態で、下側モータケース21に重ねられている。ここで、下側モータケース21のフランジ26には有頭の締結ネジ36の胴部を貫通させるネジ貫通穴38が等角度間隔で4箇所に設けられている。取り付け腕6は天井板33と外周壁34の角部から上方に向かうように形成されている。
【0025】
(ポンプケース)
図3(a)はポンプ部2を斜め上方から見た斜視図であり、
図3(b)はポンプ部2を斜め下方から見た斜視図である。
図3(a)は、羽根車12の軸部17から水切り部材13を取り外した状態を示している。
図4はポンプ部2を下方から見た底面図である。
図5(a)は上側ポンプケース41の平面図であり、
図5(b)は上側ポンプケース41を斜め下方から見た斜視図である。
図6(a)は下側ポンプケース42を斜め上方から見た斜視図であり、
図6(b)は下側ポンプケース42を斜め下方から見た斜視図である。ポンプケース11は、上側ポンプケース(上ケース)41と、上側ポンプケース41に対して軸線L方向の下側から重ねられて上側ポンプケース41とともにポンプ室14を区画している下側ポンプケース(下ケース)42と、上側ポンプケース41および下側ポンプケース42を着脱可能に締結するバヨネット機構43を備えている。上側ポンプケース41と下側ポンプケース42の間には、これらの間を液密状態にシールするシール部材としてOリング44(
図2参照)が配置されている。
【0026】
上側ポンプケース41は、
図5に示すように、中心部分に天井穴16を備える円形の端板45と、端板45の外周縁から上方に延びる内側環状壁46と、内側環状壁46の上端縁から半径方向を外側に延びる円環状板部47と、円環状板部47の外周縁から上方に延びる外側環状壁(環状壁)48を備えている。円環状板部47と外側環状壁48によって大径凹部49が区画されており、端板45の上面と内側環状壁46の内周面によって大径凹部49の内側に小径凹部50が区画されている、ここで、小径凹部50の底面、すなわち、端板45の上面は、天井穴16に向かって下側に傾斜するすり鉢状のテーパー面とされている。
【0027】
外側環状壁48には上方に延びる円柱形状のネジ締結部51が等角度間隔で一体に形成されている。ネジ締結部51は、4箇所に設けられており、その上端は外側環状壁48の上端よりも上方に延びている。ネジ締結部51には、モータ部3の固定部35のネジ貫通穴37およびフランジ26のネジ貫通穴38を介して上方から締結ネジ36が捻じ込まれ、これにより、モータ部3とポンプ部2が締結される。モータ部3とポンプ部2とが締結された状態では、モータ部3と外側環状壁48の間には隙間52が形成される(
図1、
図2参照)。
【0028】
上側ポンプケース41において、外側環状壁48の内側で当該外側環状壁48に隣接する部位、すなわち、円環状板部47の外周縁部分には、周方向に長い長穴53が等角度間隔で形成されている。長穴53は、周方向においてネジ締結部51の間に位置する4箇所に設けられている。
【0029】
下側ポンプケース42は、
図6に示すように、円環状の底板61および底板61の外周縁から上方に延びる外周壁62を備える大径部63と、底板61の内周縁から下方に延びている吸引管8と、外周壁62から側方に延びている吐出管9と、外周壁62の上端縁から半径方向に延びる円環状のフランジ64を備えている。大径部63の開口縁部分には、Oリング44が配置される円環状段部65が設けられている。吐出管9は、外周壁62の壁面部分に設けられた吐出口66と連通している。
【0030】
バヨネット機構43は、
図3乃至
図6に示すように、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を締結する締結部71として、下側ポンプケース42に設けられた係合突部72と、上側ポンプケース41に設けられた係合片73を備えている。また、バヨネット機構43は、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42の相対角度位置を規定する位置決め用突部(位置決め部)74を備えている。締結部71(係合突部72および係合片73)は、等角度間隔で4箇所に設けられており、位置決め用突部74は、これら4箇所の締結部71のうちの一つの締結部71に設けられている。
【0031】
係合突部72は下側ポンプケース42のフランジ64の側面から半径方向の外側に突出している。係合突部72は一定厚さであり、その上面はフランジ64の上端面と同一の平面上に位置している。係合突部72と吐出管9は下側ポンプケース42において軸線L回りの異なる角度位置に設けられている。ここで、係合突部72の周方向の長さ寸法は、上側ポンプケース41に設けられた長穴53の周方向の長さ寸法よりも短い寸法とされている。周方向とは、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42の締結時における相対回転方向である。また、4つの係合突部72のうちの一つの係合突部72には、周方向の一方の端部分に下方に突出する位置決め用突部74が設けられている(
図3(b)、
図6(b)参照)。
【0032】
係合片73は、上側ポンプケース41の外周縁から下側に延びる延設部75と、延設部75の下端から当該延設部75と直交して半径方向を内側に延びる係合爪部76を備えている。延設部75は上側ポンプケース41に設けられた長穴53の外周側で外側環状壁48と対応する位置に設けられている。係合爪部76は、上側ポンプケース41を軸線L方向から見たときに、長穴53と重なる位置に突出している。また、係合片73の周方向の長さ寸法は、長穴53の周方向の長さ寸法よりも短い寸法とされており、係合爪部76は周方向において長穴53の中央部分に位置している。換言すれば、長穴53は、軸線L方向から見たときに係合爪部76と重なる部位を含み当該部位よりも周方向の両側に長く形成されている。従って、軸線L方向から見たときに、係合爪部76の周方向の両側には、開口(長穴53の周方向の端部分)53aが形成されている。
【0033】
バヨネット機構43によって上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を締結する際には、下側ポンプケース42の円環状段部65にOリング44を配置し、しかる後に、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を軸線L方向で重ねる。より詳細には、係合突部72と係合片73を軸線L回りの異なる角度位置に配置して、上側ポンプケース41の円環状端板45の下端面に下側ポンプケース42のフランジ64の上端面を当接させる。その後、係合突部72と係合片73が同一の角度位置となるように上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を軸線L回りに相対回転させて、係合突部72と係合片73を係合させる。そして、一つの係合突部72に設けられている位置決め用突部74と、当該係合突部72に係合させられた係合片73の係合爪部76の端面とを周方向で当接させ、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を周方向で位置決めする。これにより、軸線L方向から見たときに、係合突部72と係合片73の係合爪部76が重なり、係合片73の延設部75は係合突部72の半径方向外側に位置し、係合爪部76が係合突部72の下面に当接する状態となる。
【0034】
この結果、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42は、上側ポンプケース41の内側環状壁46の下側部分がOリング44を介して下側ポンプケース42のフランジ64の内側に挿入された状態で締結される。また、この締結により、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42によってポンプ室14が区画される。すなわち、上側ポンプケース41の端板45がポンプ室14の天井を規定し、下側ポンプケース42の内側の空間がポンプ室14となる。ポンプ室14は、下側ポンプケース42の大径部63の内側に位置する大径ポンプ室部分77と、吸引管8の内側に位置する小径ポンプ室部分78を備える。
【0035】
ここで、係合片73および係合突部72の周方向の長さ寸法は、いずれも上側ポンプケース41に形成されている長穴53の周方向の長さ寸法よりも短いので、係合突部72と係合片73を同一の角度位置に配置して上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を締結した状態では、長穴53の周方向の両端部分の開口53aが締結部71(係合片73および係合突部72)によって塞がれることがない。従って、長穴53の両端部分の開口53aは、上側ポンプケース41にドレンDが溢れたときにこのドレンDを排出する排水穴79となる。排水穴79の上端開口は上側ポンプケース41の環状壁の内側に位置しており、
図2に示すように、水切り部材13の環状板部18よりも下方に位置している。排水穴79の下端開口は下側ポンプケース42の外周面(フランジ64の側面)に隣接する位置に露出している。すなわち、排水穴79の下端開口は下側ポンプケース42によって塞がれていない。
【0036】
(羽根車)
次に、
図7を参照して羽根車12を説明する。
図7(a)は羽根車12を上方から見た斜視図であり、
図7(b)は羽根車12を下方から見た斜視図である。羽根車12は、樹脂による一体成形品である。羽根車12の羽根車本体15は、大径ポンプ室部分77に配置されている大径羽根車81と、大径羽根車81から同軸上の下方に延びて小径ポンプ室部分78に配置されている小径羽根車82を備えている。軸部17は羽根車本体15から同軸に延びている。また、軸部17は、ポンプ室14の天井穴16を貫通してポンプケース11の外側に突出しており、その上端は上側ポンプケース41の小径凹部50よりも上方に達する(
図2参照)。
【0037】
図7に示すように、大径羽根車81は、軸部17から半径方向を外側に向って延びている4枚の第1羽根板83と、第1羽根板83の間にそれぞれ配置されている4枚の第2羽根板84と、軸部17と同軸に配置され、第1羽根板83および第2羽根板84の外周側の端を連結している一定高さの円環状板85と、軸部17と同軸で、軸部17と円環状板の間に配置されている円環状部86を備えている。第1および第2羽根板83、84は軸線L方向に沿って延びている。4枚の第1羽根板83は90°の角度間隔で配置されている。4枚の第2羽根板84は、90°の角度間隔で配置されており、隣接する第1羽根板83との角度間隔は45°となっている。また、4枚の第2羽根板84は、それぞれ円環状部86から半径方向を外側に向って延びている。小径羽根車82は、中心から半径方向を外側に向って延びている4枚の第3羽根板87を備えている。第3羽根板87は、軸線L方向で第1羽根車12と連続している。
【0038】
(ドレンポンプの動作)
図8はドレンポンプ1の動作を説明するための説明図である。なお、図中の矢印はドレンDの流れを示す。
【0039】
ドレンパン100のドレンDが、ドレンパン100の内側に配置されている吸引管8の吸引口10よりも上方まで溜まると、ドレンポンプ1のモータ本体4が駆動される。これにより羽根車12が回転すると、天井穴16を介して空気がポンプ室14内に導入されながら、ポンプ室14内でドレンDが攪拌され、これにより発生する遠心力によってドレンDがポンプ室14内に吸い上げられる。すなわち、ドレンDは、ドレンパン100から小径ポンプ室部分78を介して大径ポンプ室部分77に吸い上げられる(D1)。そして、大径ポンプ室部分77の吐出口66を介して、吐出管9から吐き出される(D2)。吐出管9から吐き出されたドレンDはドレン管101を介して室外に排出される。
【0040】
ここで、モータ部3が停止して羽根車12の回転が停止すると、ドレンDはドレン管101の側からポンプ室14に向って逆流する(D3)。この際に、逆流したドレンDの多くは吸引管8を介してドレンパン100に戻るが(D4)、その一部が天井穴16を介してポンプ室14の上方に溢れ出すことがある。例えば、吐出管9に接続されているドレン管101が長く、ドレン管101の排出口がドレンポンプ1よりも上方に配置されている場合や、ドレン管101において排出口に至る途中部分がドレンポンプ1よりも上方に配置されている場合には、ドレン管101内のドレンDが勢いよくポンプ室14に向って逆流することがあり、この場合には、逆流するドレンDの一部が天井穴16から上方に溢れ出す(D5)。
【0041】
このような場合に、天井穴16から上方に溢れたドレンDは、水切り部材13にぶつかって下方に戻され、ポンプ室14の上方に区画されている小径凹部50に溜められる。小径凹部50に溜まったドレンDは再び天井穴16からポンプ室14を経てドレンパン100に戻る。また、小径凹部50から大径凹部49の側(外側環状壁48の内側の空間)に溢れて溜まろうとするドレンDは、排水穴79を介して下側ポンプケース42の外側に流れ出し、下側ポンプケース42の外周面を伝わって、ドレンパン100に排出される(D6)。ここで、排水穴79を介して排出されるドレンDは、下側ポンプケース42の外周面を伝わるので、ドレンパン100よりも外側に飛散することがなく、ドレンDがドレンパン100に落下する際の音も小さくなる。
【0042】
なお、逆流するドレンDの量が更に多く、天井穴16から溢れたドレンDが外側環状壁48の内側の大径凹部49内に収まりきらない場合も想定されるが、このような場合には、収まりきらないドレンDは外側環状壁48の上端とモータ本体4の間の隙間52から外側に排出される(D7)。従って、ドレンDがモータ本体4を濡らすことが抑制される。
【0043】
(作用効果)
本例によれば、上側ポンプケース41には外側環状壁48が形成されているので、上側ポンプケース41の剛性を確保することができる。また、外側環状壁48は天井穴16を包囲するように形成されているので、ポンプ室14の側で発生して外部に漏れるポンプ音を抑制することができる。
【0044】
また、ドレン管101の側から逆流したドレンDが天井穴16から上方に溢れ出したときに外側環状壁48の内側に溜まるドレンDは、排水穴79を介して下側ポンプケース42の外側に排出される。この結果、外側環状壁48の内側に溜まるドレンDの水面が外側環状壁48の上端位置に接近することを抑制できるので、ドレンDがポンプケース11の上方に位置するモータ本体4に接近することを抑制できる。従って、モータ本体4が濡れてしまうことを抑制でき、モータ本体4が濡れることに起因する漏電やモータ部3の動作不良を回避できる。
【0045】
さらに、本例では、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42は、バヨネット機構43によって着脱可能に締結されているので、これらの着脱が容易である。従って、例えば、ポンプ室14内にゴミなどが
堆積した場合でも、これらを除去することが容易となる。
【0046】
また、バヨネット機構43によって上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を締結しているので、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を締結する際に、これらの相対角度位置を変更することにより、吐出管9の突出方向を適宜に変更することができる。さらに、バヨネット機構43は、1周(360°)を締結部71の数で割った角度の半分以下の角度だけ上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を相対移動させることにより両者を締結できる。本例では、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を45°だけ相対移動させることにより締結できる。従って、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42の締結時に、吐出管9の移動軌跡を小さく抑えることができる。この結果、エアコンの室内ユニット内のドレンポンプ1の設置箇所において、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42を着脱するための作業スペースを小さく抑えることができる。
【0047】
次に、本例によれば、上側ポンプケース41に排水穴79を形成するための金型の構成を簡略にすることができる。
図9は、上側ポンプケース41を成形する金型において、係合片73を形成するための突出部分のみを取り出して示した説明図である。
【0048】
より具体的には、本例の上側ポンプケース41は軸線L方向で上下に2分割された金型を用いて形成されるが、上側ポンプケース41が下方に延びる延設部75と延設部75の下端から半径方向内側に延びる係合爪部76を備える係合片73を有しているので、上側に配置される金型にはこの係合片73を形成するために下方に突出する突出部分103が設けられ、当該突出部分103の外周面103aおよび下面103bが、それぞれ係合片73の延設部75の内周面75aと係合爪部76の上面76aを形成する。そして、この金型の突出部分103は、上側ポンプケース41において軸線L方向から見たときに係合爪部76と重なる部位に貫通穴を形成する。従って、金型におけるこの突出部分103を係合片73に対応する形状よりも周方向に長い形状としておくだけで、上側ポンプケース41に、周方向において係合片73よりも長い寸法の貫通穴(長穴53)を形成することができる。そして、この貫通穴において、係合片73から外れている端部の開口(開口53a)を排水穴79とすることができる。
【0049】
また、本例では、バヨネット機構43が等角度間隔で複数の締結部71を備え、各締結部71に隣接する位置に排水穴79が設けられている。この結果、排水穴79が全周に渡って離間して設けられるので、ドレンポンプ1が傾斜して設置されている場合でも、外側環状壁48内に溜まるドレンDを排水穴79から排出することが容易である。
【0050】
さらに、上側ポンプケース41と下側ポンプケース42の相対角度位置を規定するための位置決め用突部74が係合突部72の相対回転方向の一方の端部分から下方に突出して、係合片73の係合爪部76と周方向で当接するように設けられているので、位置決め用突部74を設けることによって排水穴79が塞がれたり、排水穴79の形成が困難となったりすることがない。
【0051】
また、位置決め用突部74は、全ての係合突部72に設けられているのではなく、一つの係合突部72に設けられているだけなので、位置決め用突部74が設けられていない係合突部72では、係合突部72および係合片73の周方向の寸法を短くして排水穴79の開口53a面積を広くした場合でも、係合突部72と係合片73係合片73の係合幅を長く確保して、バヨネット機構43による締結を確実なものとすることができる。
【0052】
さらに、本例では、排水穴79と、吐出管9とは、軸線L回りの異なる角度位置に配置されているので、排水穴79から下側ポンプケース42の外側に排出されたドレンDが、吐出管9を伝ってドレンパン100の外側に達してしまうことを防止できる。
【0053】
また、本例では、排水穴79の上端開口は水切り部材13の環状板部18よりも下方に位置しているので、天井穴16から上方に溢れ出すドレンDがモータ本体4の側に飛散することを抑制しながら、ドレンDを排水穴79から排出できる。従って、モータ本体4が濡れてしまうことを抑制でき、モータ本体4が濡れることに起因する漏電やモータ部3の動作不良、出力軸5の錆びなどを防止できる。
【0054】
(その他の実施の形態)
上記の例では、バヨネット機構43の位置決め突部は係合突部72の側に設けられているが、係合突部72と周方向で当接可能な位置決め用突部を係合片73の側に設けてもよい。この場合には、係合片73に位置決め用突部74を設けることによって係合片73に隣接する一方の側に開口53aを設けることが困難となるので、上記の例と同様に、複数の係合片73のうちの一つの係合片73のみに位置決め用突部を設けることが望ましい。
【0055】
また、上記の例では、排水穴79は、上側ポンプケース41においてバヨネット機構43の締結部71に隣接する位置に設けられているが、排水穴は締結部71から離れた位置に設けられていてもよい。すなわち、ドレンを排出するための排水穴は、ポンプ室14の外側で上側ポンプケース41を上下方向に貫通しているものであり、上端開口が外側環状壁48の内側にあり、下端開口が下側ポンプケース42から外側に露出していればどのような部位に形成されていてもよい。なお、この場合に、排水穴を等角度間隔に設けておけば、ドレンポンプ1が傾斜して設置されていても、外側環状壁48内に溜まるドレンDを排水穴79から排出することが容易である。