特許第6091091号(P6091091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091091
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 17/00 20060101AFI20170227BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20170227BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F02D17/00 G
   F02D9/02 325Z
   F02D11/10 J
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-131749(P2012-131749)
(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-256873(P2013-256873A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】太古 無限
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/001940(WO,A1)
【文献】 特開2005−163661(JP,A)
【文献】 特開2010−151096(JP,A)
【文献】 特開2002−266670(JP,A)
【文献】 特開2006−112358(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/097918(WO,A1)
【文献】 特開2004−143939(JP,A)
【文献】 特開2006−242085(JP,A)
【文献】 特開2011−144686(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/086704(WO,A1)
【文献】 特開2005−273630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00─28/00
F02D 9/00─11/10
F02D 43/00─45/00
F02D 41/00─41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の停止時に吸気通路から燃焼室に至るまでのバルブを閉じ、しかる後にある気筒内のピストンを吸気下死点付近で停止させることにより、内燃機関の停止中は前記気筒における燃焼室を負圧状態に維持する内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の始動を好適に行うための制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の始動時に起こる吹き上がりと呼ばれる回転数のオーバーシュート抑制の為に、始動時に点火時期を遅角とする等の制御を行っていた。
【0003】
そして点火時期の遅角による燃費の悪化を回避しつつ前記吹き上がりを抑制するために、吸気マニホルド内を停止中に負圧に保っておくことにより、再始動時には前記負圧に応じた少なめの燃料を噴射することで再始動時の回転数が吹き上がることなく目標値に速やかに収めることを目的とした技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。具体的に説明すると上記特許文献のものは、吸気通路の吸気マニホルド上流側に機密遮蔽可能なバルブを設け、内燃機関の停止時に吸気マニホルド上流側のバルブ及び下流側にある吸気バルブを閉じることで、次回の再始動まで両バルブ間の吸気通路内を負圧状態に維持するという態様をなす。
【0004】
しかしながら前記特許文献のものでは、通常の内燃機関の構成に加え、機密密閉可能なバルブを複数設ける必要がある。そのため、コストの増加や内燃機関の大型化を招来してしまう。また吸気マニホルド内を負圧状態に維持した場合、始動時において吸気に慣性が無い場合や停止時の燃料カット後のピストンが惰性により停止する位置によっては再始動時の最初の点火時に燃焼に必要な空気量が気筒内に流入されず、正常な燃焼が行えなくなり、当該燃料が無駄になってしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−143939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような点に着目したものであり、燃料の無駄を回避し且つ回転数の吹き上がりを抑えた始動を実現し得る内燃機関の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち本発明に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関の停止時に吸気通路から燃焼室に至るまでのバルブを閉じ、しかる後にある気筒内のピストンを吸気下死点付近で停止させることにより、内燃機関の停止中は前記気筒における燃焼室を負圧状態に維持することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、始動時の燃料が燃焼されず無駄になることも、当該燃焼により発生するトルクが大きすぎる回転数の吹き上がりによる不要な音や振動も回避し、燃費の向上及び快適な始動を両立し得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃費の向上及び快適な始動を有効に両立し得る内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の全体構成を示す図。
図2】同実施形態に係る要部の説明図。
図3】同実施形態に係る他の要部の説明図。
図4】同実施形態に係る作用説明図。
図5】同実施形態の変形例に係る作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。
【0014】
本実施形態における内燃機関は、例えば三気筒の火花点火式のものであり、燃料としてガソリンを用いている。三つの気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。第一の気筒1の行程と第二の気筒1の行程との間、第2の気筒1と第三の気筒1の工程との間には、それぞれ240°CA(クランク角度)の位相差が存在する。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、気筒1上部に形成される燃焼室10の天井部(シリンダヘッド)には、インジェクタ11、点火プラグ12、吸気バルブ21及び排気バルブ22を設ける。各気筒1の燃焼室10にはピストン13が嵌挿され、このピストン13はコンロッド14を介してクランクシャフト15に連結されている。
【0015】
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。前記電子スロットルバルブ32は、スロットルセンサから出力されるスロットル開度信号c及びアクセルセンサから出力されるアクセル開度信号dに基づいて、その時の運転状態に応じてその開度を電気的に制御される型式のもので、アクセルペダルが操作されることにより、その操作に対応して必ずしも開度が変更されるものではない。また電子スロットルバルブ32は、本実施形態では吸気通路3を完全に遮断・密閉できるように構成されている。
【0016】
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0017】
図2に示すように、本実施形態における内燃機関では、クランクスプロケット71、吸気側スプロケット72及び排気側スプロケット73にタイミングチェーン74を巻き掛け、このタイミングチェーン74により、クランクシャフト15からもたらされる回転駆動力を吸気側スプロケット72を介して吸気カムシャフトに、排気側スプロケット73を介して排気カムシャフトに、それぞれ伝達している。
【0018】
その上で、吸気側スプロケット72と吸気カムシャフトとの間に、可変バルブタイミング機構6を介設している。本実施形態における可変バルブタイミング機構6は、クランクシャフト15に対する吸気カムシャフトの回転位相を変化させることにより吸気バルブ21の開閉タイミングを変化させるものである。
【0019】
可変バルブタイミング機構6のハウジング61は、吸気側スプロケット72に固着しており、吸気側スプロケット72とハウジング61とは一体となってクランクシャフト15に同期して回転する。これに対し、吸気カムシャフトの一端部に固着したロータ62は、ハウジング61内に収納され、吸気側スプロケット72及びハウジング61に対して相対的に回動することが可能である。ハウジング61の内部には、作動液が流出入する複数の流体室が形成され、各流体室は、ロータ62の外周部に成形されたベーン621によって進角室611と遅角室612とに区画されている。
【0020】
可変バルブタイミング機構6の液圧(特に、油圧)回路には、オイルパン81内に蓄えられた作動液が液圧ポンプ82より供給される。液圧ポンプ82は、内燃機関からの動力で駆動される。液圧ポンプ82と可変バルブタイミング機構6との間には、切換制御弁たるOCV9を設けている。作動液の流量及び方向をこのOCV9を介して操作することで、オイルパン81から汲み上げた作動液を進角室611または遅角室612に選択的に供給することができる。さすれば、ハウジング61がロータ62に対して相対回動し、吸気バルブ21の開閉タイミングを進角または遅角させることができる。
【0021】
OCV9は、いわゆる電磁式の四方向スプール弁である。図2に示すように、OCV9は、液圧ポンプ82の吐出口と接続する供給ポート91、ハウジング61の進角室611と接続するAポート92、ハウジング61の遅角室612と接続するBポート93、並びにオイルパン81と接続するドレインポート94、95を有している。OCV9のスプール96は、ソレノイド97によって駆動される進退動作により内部流体経路を切り換えて、Aポート92及びBポート93をそれぞれ供給ポート91、ドレインポート94、95の何れかに連通させる。また、スプール96が中立位置をとるときには内部流体経路が断絶し、Aポート92及びBポート93を供給ポート91にもドレインポート94、95にも連通させない。図2では、スプール96が中立位置にある状態を示している。
【0022】
スプール96はソレノイド97によって駆動する。本実施形態では制御信号mとしてソレノイド97に入力するパルス電流(または、電圧)のDUTY比が大きいほど吸気バルブ21のバルブタイミングが進角し、DUTY比が小さいほど吸気バルブ21のバルブタイミングが遅角する。
【0023】
制御信号mのDUTY比が比較的大きい場合には、液圧ポンプ82から吐出される作動液圧がAポート92を通じて進角室611に供給される一方、既に遅角室612に貯留していた作動液がBポート93を通じてオイルパン81に向けて流下することとなり、進角室611の容積が拡大、遅角室612の容積が縮小するようにベーン621及びロータ62が回動する。結果、吸気カムシャフトの回転位相、換言すれば吸気カムシャフトのクランクシャフト15に対する変位角が進角して、吸気バルブ21のバルブタイミングが進角化する。本実施形態では斯かる構成により、吸気下死点よりも前のタイミングで吸気バルブ21を閉じることができる。
【0024】
逆に、制御信号mのDUTY比が比較的小さい場合には、液圧ポンプ82から吐出される作動液圧がBポート93を通じて遅角室612に供給される一方、既に進角室611に貯留していた作動液がAポート92を通じてオイルパン81に向けて流下することとなり、遅角室612の容積が拡大、進角室611の容積が縮小するようにベーン621及びロータ62が回動する。結果、吸気カムシャフトのクランクシャフト15に対する変位角が遅角して、吸気バルブ21のバルブタイミングが遅角化する。
【0025】
次いで図3に、本実施形態における発電システムの等価回路を示す。オルタネータ110は、ベルト及びプーリを要素とする巻掛伝動機構等を介して内燃機関のクランクシャフト15に接続しており、クランクシャフト15の回転に従動して回転し発電する。オルタネータ110は、ステータに巻回されたステータコイル111と、ステータの内側に配置され回転するロータに巻回されたフィールドコイル112とを有する。ステータコイル111は三相コイルであり、三相交流の誘起電流を発電する。この誘起電流は、レクティファイヤ(整流器)113によって直流電流とした上でバッテリ120に蓄電する。
【0026】
オルタネータ110が発電し出力する電圧の大きさは、レギュレータ130を介して制御される。レギュレータ130は、オルタネータ110に付帯するIC式のもので、パワートランジスタ、パワーMOSFET等に代表されるパワーデバイス(電力用半導体素子)を用いた切替回路131を介してフィールドコイル112に通電する。そして、パワーデバイスのスイッチ動作により、フィールドコイル112への通電をON/OFFする。オルタネータ110の出力電圧、即ちステータコイル111に誘起される電圧は、フィールドコイル112を流れるフィールド電流のDUTY比(fDUTY)に比例して大きくなる。レギュレータ130の電圧制御回路132は、ECU0からオルタネータ110の出力電圧を指令する出力電圧指令信号lを受け付け、その指令された出力電圧を実現するようにfDUTYを調節するPWM制御を行う。そしてfDUTYの変動は検出回路133により検出され、出力電圧信号pとしてECU0へ出力される。このオルタネータ110の出力電圧を少なくとも二段階、例えば14.5Vまたは12.8Vに切り替えることができる。この場合のECU0は、レギュレータ130に対し、オルタネータ110の出力電圧をHI電位=14.5Vとするか、LO電位=12.8Vとするかを指令する前記出力電圧指令信号lを入力する。バッテリ120の電圧以下またはバッテリ120の電圧に近い低電圧である
オルタネータ110による発電量、つまりバッテリ120への充電量及び/または電気負荷への給電量は、fDUTYが高いほど増加し、fDUTYが低いほど減少する。また換言すればオルタネータ110は内燃機関から見れば機械負荷となる。すなわち、ECU0からレギュレータ130に高い出力電圧を指令すると、内燃機関の回転に対するオルタネータ110の機械負荷が増し、低い出力電圧を指令すると、内燃機関の回転に対するオルタネータ110の機械負荷が減る。
【0027】
本実施形態のECU0は、このような構成において自動停止始動装置として機能することにより、いわゆるアイドリングストップを行い得る。アイドリングストップを実施するにあたって、ECU0には、アイドリングストッププログラムが格納してあり、そのアイドリングストッププログラムにおいてアイドリングストップ条件と再始動条件とが設定してある。アイドリングストップ条件は、少なくとも、バッテリ120の充電量が所定充電量以上であること、外気温が所定温度以上であること、内燃機関の温度が所定温度以上であること、前回のアイドルストップ以降に車速が所定速度以上で走行した履歴があること、前回内燃機関を始動してから所定始動後時間が経過していること、車両が停止してから所定停止時間が経過していること、アイドル運転状態で所定アイドル時間経過していること、ブレーキペダルが踏まれていることである。アイドリングストップは、これらのアイドリングストップ条件が全て成立した場合に実施される。
【0028】
これに対して、再始動条件は、少なくとも、ブレーキペダルの操作(例えば踏み込み)をやめること、アクセルペダルが操作される(例えば踏み込まれる)こと、アイドリングストップの開始から所定再始動時間が経過したことなどである。そして、再始動は、再始動条件の少なくとも一つが成立する場合に実施される。なお、以上に説明したアイドリングストップ条件及び再始動条件は、列記した事項に限定されるものではなく、この分野で知られているものを採用するものであってよい。
【0029】
内燃機関の運転及び補機の制御を司るECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
【0030】
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフト15の回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号(N信号)b、スロットルバルブ32の開度を検出するセンサから出力されるスロットル開度信号c、アクセルペダルの踏込量をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号d、ブレーキペダルの踏込量を検出するセンサから出力されるブレーキ踏量信号e、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号f、機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号g、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号(G信号)h、バッテリ120の充電状態(バッテリ電圧、バッテリ電流、バッテリ温度)を検出するセンサから出力されるバッテリ信号n、オルタネータ110の出力電圧を検出するセンサから出力される出力電圧信号p、並びに、照明灯、エアコンディショナ、ヒータ、デフォッガ、オーディオ機器、カーナビゲーションシステム等を稼働させることを要望するユーザの手によって操作される操作入力デバイス(操作スイッチ、ボタン、タッチパネル等)から与えられる信号o等が入力される。エンジン回転センサは、例えば10°CA(クランク角度)毎にパルス信号を発する。カム角センサは、720°CAを気筒数で割った角度、三気筒エンジンであれば240°CA毎にパルス信号を発する。
【0031】
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、レギュレータ130に対して出力電圧指令信号l、並びに、OCV9に対して制御信号m等を出力する。
【0032】
本実施形態に係る内燃機関の制御装置たるECU0は、内燃機関の停止時に吸気通路3から燃焼室10に至るまでのバルブである電子スロットルバルブ32を閉じ、しかる後に気筒1内のピストン13を吸気下死点付近で停止させることにより、内燃機関の停止中は前記気筒1における燃焼室10を負圧状態に維持するようにしている。
【0033】
ECU0は、上記アイドリングストップ条件が成立した場合に、何れかの気筒1におけるピストン13の位置を吸気下死点近傍の位置で停止させるピストン停止手段としても作用している。具体的には、内燃機関を停止させるタイミングでの回転数と、燃料噴射及び点火を停止した後にクランクシャフト15が停止するまでに惰性で回転する量との間の相関を予め実験的に求めておく。そしてアイドルストップ条件の成立時にECU0は最も早いタイミングで吸気下死点で停止させることができる気筒1を判別し、当該気筒1内のピストン13が吸気下死点近傍の位置で停止できるタイミングで燃料カット及び点火の停止を実行する。その後ピストン13の停止位置を精密に制御すべくレギュレータ130に対して出力電圧指令信号lを出力する。換言すればオルタネータ130のfDUTYを調節することで、燃料カット及び点火の停止後惰性で回転するクランクシャフト15の回転量を制御すべく内燃機関への負荷を制御するようにしている。オルタネータ130を制御する際には勿論、バッテリ120の充電量やエアコンディショナ等の補機の使用状況も適宜勘案される。
【0034】
そして本実施形態では図4に示すように、アイドルストップ条件の成立時にECU0が定めた気筒1である最上に図示される気筒1に対し吸気下死点に至るまでにスロットルバブル32を遮断・密閉することにより、当該気筒1が吸気下死点近傍で停止した際には当該気筒1の燃焼室10からスロットルバルブ32に至るまでの間を負圧に維持するようにしている。なお可変バルブタイミング機構6により開閉タイミングを極端に進角側に設定していない通常時ではピストン13が吸気下死点付近にあるときは吸気バルブ21はまだ遮蔽されていない状態である。加えて、他の気筒1は240CA°ずつそれぞれ角度位相が異なるためにそれぞれ排気行程並びに膨張行程の途中にある。それ故勿論それら他の気筒1の吸気バルブ21は閉じられた状態にある。よって同図にハッチを入れることで示した通り、負圧となる領域は図示最上の気筒1の燃焼室10並びにスロットルバルブ32下流のサージタンク33及び3つの気筒1に至るそれぞれの吸気マニホルド34の領域となる。
【0035】
そして、再始動条件の成立時には図示最上の気筒1に対し、最適点火時期のタイミングで燃料を噴射し、点火を行う。このとき当該気筒1の燃料室10内にはピストン13が吸気下死点にある状態で大気圧とした通常の場合の空気量よりも空気が少ない状態にある。よって、通常の場合の空気量との空気量の差異を勘案し、より少量の燃料を噴射する。通常、始動時における燃料の噴射量は冷却水温等に応じて予め定められている。そのため、通常の場合の空気量に対応した所定の燃料噴射量と空気量の差異とを基に燃料噴射量を決定する。また本実施形態ではサージタンク33及び吸気マニホルド34も負圧に設定されているため、始動後他の気筒1も初回の燃焼時には前記通常の場合の空気量よりも少量となる。これに応じてこれらの気筒1についての初回燃焼時の燃料噴射量も通常の場合の空気量と実際に燃焼室10に導入される空気量との差異とを基に燃料噴射量をより少量に決定して燃料を噴射し、最適点火時期にて点火する。
【0036】
また上記実施形態では内燃機関が吸気バルブ21の開閉タイミングを制御し得る可変バルブタイミング機構6を備えている。よって図5に変形例として示すように、当該可変バルブタイミング機構6を操作することにより同図にハッチで示すとおり、停止時にピストン13が吸気下死点付近で停止する気筒1の燃料室10のみを負圧に維持するようにしても良い。
【0037】
すなわち同図では、可変バルブタイミング機構6を操作することにより、何れかの気筒1内のピストン13が吸気下死点付近で停止する前に、吸気バルブ21の開閉タイミングを進角側に制御しておくことでピストン13が吸気下死点に至る前のタイミングで吸気バルブ21を閉じる。これによりピストン13が吸気下死点付近で停止したとき、図示例では最上の気筒1の燃料室10のみを負圧としている。ここで勿論、ピストン13を吸気下死点で停止させる気筒1を他の気筒1としても良い。図示の場合では、最上の気筒の初回燃焼時のみ、前記所定の噴射量と空気量の差異とを基に、前記所定の噴射量よりも少量に設定された燃料を噴射する。そして順次点火する他の気筒1に対しては通常と同じ量の燃料を噴射する。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置であるECU0は、燃焼により発生するトルクは勿論、気筒1内を大気圧とした従来の場合よりも抑えられている。すなわち燃料室10内の空気を少なくしたため、最適点火時期で点火したとしても過剰なトルクが抑えられるので、点火時期の遅角化による燃費の悪化も有効に回避している。これにより初回の燃焼により発生する過大なトルクに起因する始動時の回転数の吹き上がりによる不要な音や振動も回避している。加えて燃焼室10内の空気量に応じた少量の燃料の噴射による燃費の向上も実現している。すなわち本実施形態では、快適な始動と燃費の向上との両立を実現ししている。
【0039】
さらに本実施形態では上記特許文献1とは異なり、ピストン13が吸気下死点にある気筒1内には燃焼に必要な空気が保持されている上、始動時には燃焼室10が負圧となっている気筒1の燃焼に必要な燃料の量を、気筒1内を大気圧とした場合の量よりも少なく抑えても正常な燃焼が実現できる。すなわち始動時に噴射した燃料が燃焼されず無駄になることも有効に回避している。
【0040】
加えて本実施形態では吸気系3に格別の弁や動弁装置を追加せずとも停止中に気筒1内を負圧にすることを実現している。その結果、燃焼室10内を負圧とすることによる燃料の節約を部品点数の増加を回避しながら実現している。そして部品点数の増加の回避は内燃機関の大型化の回避にもつながる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態ではアイドルストップ条件成立時を経た再始動時の始動に本発明を適用した態様を開示したが勿論、冷間始動時において本発明を適用しても良い。また上記実施形態では油圧により吸気バルブの開閉タイミングを制御する可変バルブタイミング機構を搭載した態様を開示したが、勿論吸気バルブを電磁式吸気バルブとして本発明を適用してもよい。またピストンの停止位置の制御方法や燃焼噴射量の補正量といった具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0043】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、内燃機関の始動を好適に行うための制御装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
0…内燃機関の制御装置(ECU)
1…気筒
10…燃焼室
13…ピストン
21…バルブ(吸気バルブ)
32…バルブ(電子スロットルバルブ)
図1
図2
図3
図4
図5