特許第6091097号(P6091097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091097
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】嵌合量調整具
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/68 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   B65D5/68 G
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-148066(P2012-148066)
(22)【出願日】2012年6月30日
(65)【公開番号】特開2014-9023(P2014-9023A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】512173737
【氏名又は名称】近江製函株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】菅野彰広
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭38−016384(JP,Y1)
【文献】 特開2006−290378(JP,A)
【文献】 米国特許第02939854(US,A)
【文献】 実開昭62−105122(JP,U)
【文献】 特開2002−096826(JP,A)
【文献】 米国特許第01930031(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00−5/76
B65D 77/26
B65D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容物が載置される載置面の周囲が壁部で囲まれて同被収容物を出し入れ自在に収容可能な方形の収容本体と、
前記収容本体の開口部を覆うための天板の周囲に壁部が形成された方形の蓋体とを有して構成されており、
前記蓋体が前記収容本体に嵌合することによって前記開口部が前記天板で覆われる蓋身式の方形の物品収容箱に用いられる嵌合量調整具であって、
前記蓋体の内側における互いに対向する内壁面間の距離以上の長さに形成されて前記壁部に隣接した位置に前記天板に接触した状態で前記内壁面間に架設される板状の架設体と、
前記架設体に支持された状態で形成されて前記内壁面間に架設された前記架設体から前記収容本体における前記壁部側に張り出す板状の張出体とを備え
前記架設体は、
前記内壁面間方向の両端部における前記蓋体の入り隅部に対向する側の部分を折り曲げまたは円弧状に形成して前記入り隅部に接触しないように形成されていることを特徴とする嵌合量調整具。
【請求項2】
請求項1に記載した嵌合量調整具において、さらに、
前記架設体の長手方向に沿って同架設体から前記収容本体側に起立する起立体を備え、
前記張出体は、
前記起立体の両端部に形成されていることを特徴とする嵌合量調整具。
【請求項3】
請求項2に記載した嵌合量調整具において、
前記起立体は、前記架設体の長さ以上の長さで形成されており、
前記張出体は、前記起立体における両端部が折り曲げられることにより形成されることを特徴とする嵌合量調整具。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載した嵌合量調整具において、
前記架設体は、
前記内壁面間方向の両端部の一部が折り曲げて形成されており、この折り曲げられた部分が前記張出体と同じ方向に同じ張り出し量で張り出すサブ張出体であることを特徴とする嵌合量調整具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載にした嵌合量調整具において、
前記架設体は、
前記内壁面間方向の両端部の一部が折り曲げて形成されており、
前記張出体は、
前記架設体における前記折り曲げられた部分であることを特徴とする嵌合量調整具。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載にした嵌合量調整具において、
前記架設体および前記張出体は、折り曲げ可能な材料で構成されたベース体を屈曲させることにより一体的に形成されることを特徴とする嵌合量調整具。
【請求項7】
請求項6に記載にした嵌合量調整具において、
前記ベース体は、前記架設体と前記張出体との間の少なくとも一部に切込みまたは切欠きが形成されていることを特徴とする嵌合量調整具。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載にした嵌合量調整具において、
前記ベース体における折り曲げ部分には、折り曲げを容易にするための折目、切れ目およびミシン目のうちの少なくとも1つが形成されていることを特徴とする嵌合量調整具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被収容物を出し入れ自在に収容する収容本体とこの収容本体の開口部に被せる蓋体とからなる所謂蓋身式の物品収容箱における蓋体の嵌合量を調整するための嵌合量調整具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、贈答品などの物品を包装する容器として所謂蓋身式の物品収容箱が用いられている。蓋身式の物品収容箱は、被収容物となる物品を載置する載置面の周囲が壁部で囲まれることによって上面が開放された箱状の収容本体と、この収容本体の開口部を覆うための天板の周囲に壁部が設けられた蓋体とで構成されており、この蓋体が収容本体の開口部側に被せられることによって同開口部が塞がれるように構成されている。
【0003】
このような蓋身式の物品収容箱においては、互いに高さが異なる複数種類の被収容物を1つの収容本体内に同時に収容したい場合や互いに高さが異なる複数種類の被収容物間で1つの大きさの物品収容箱を互いに流用したい場合がある。このような場合、従来、例えば、下記特許文献1および下記特許文献2に示すように、収容本体内に底部を上げ底とするための中仕切りを設けることによって相対的に高さの低い側の被収容物を上方に位置させた状態で支持することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−262348号公報
【特許文献2】特開平06−156475号公報
【0005】
しかしながら、このような中仕切りを用いた被収容物の収容方法においては、物品収容箱における高さ方向の大きさ、すなわち、収容本体の深さを互いに高さが異なる複数種類の被収容物のうちで高さが最も高い被収容物に設定する必要があるため、相対的に高さの低い被収容物ほど物品収容箱内の収容空間における空空間が多くなり収容効率が低いという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、収容本体と蓋体とで構成される蓋身式の物品収容箱において、互いに高さが異なる複数種類の被収容物を効率的に収容することができる蓋体の嵌合量調整具を提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、被収容物が載置される載置面の周囲が壁部で囲まれて同被収容物を出し入れ自在に収容可能な方形の収容本体と、収容本体の開口部を覆うための天板の周囲に壁部が形成された方形の蓋体とを有して構成されており、蓋体が収容本体に嵌合することによって開口部が天板で覆われる蓋身式の方形の物品収容箱に用いられる嵌合量調整具であって、蓋体の内側における互いに対向する内壁面間の距離以上の長さに形成されて壁部に隣接した位置に天板に接触した状態で内壁面間に架設される板状の架設体と、架設体に支持された状態で形成されて内壁面間に架設された架設体から収容本体における壁部側に張り出す板状の張出体とを備え、架設体は、内壁面間方向の両端部における蓋体の入り隅部に対向する側の部分を折り曲げまたは円弧状に形成して前記入り隅部に接触しないように形成されていることにある。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、嵌合量調整具は、所謂蓋身式の物品収容箱における蓋体の内側において互いに対向する内壁面間の距離に相当する長さに形成された架設体と、この架設体に支持された状態で同架設体における長手方向の端部側に同長手方向に直交する方向に張り出す張出体とで構成されている。これにより、この嵌合量調整具の使用者は、嵌合量調整具における架設体を物品収容箱における蓋体の内壁間に張出体を収容本体側に張り出させた向きで挿し込むことによって容易に嵌合量調整具を蓋体の内側に取り付けることができる。そして、物品収容箱は、蓋体が収容本体上に被せられた場合には、嵌合量調整具における張出体が収容本体における壁部の上端部に接触することにより蓋体の内側の天井面が収容本体の壁部の上端部上から浮いた状態で位置決めされる。これにより、物品収容箱は、収容本体の壁部の上部よりも突出する被収容物であっても被収容物を圧迫することなく収容することができる。すなわち、本発明に係る嵌合量調整具によれば、収容本体の深さを互いに高さが異なる複数種類の被収容物のうちで高さが相対的に低い被収容物に設定することができるため、物品収容箱の収容効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記嵌合量調整具において、さらに、架設体の長手方向に沿って同架設体から収容本体側に起立する起立体を備え、張出体は、起立体の両端部に形成されていることにある。
【0010】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、嵌合量調整具は、架設体の長手方向に沿って同架設体から起立する起立体を備えているため、架設体の剛性を高めることができるとともに蓋体の内側に装着した架設体の位置決め操作が行い易くなる。また、嵌合量調整具は、張出体を起立体に設けているため、蓋体の内壁面に対する架設体の両端部の接触面積の減少を考慮することなく張出体を自由な大きさおよび形状に形成することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記嵌合量調整具において、起立体は、架設体の長さ以上の長さで形成されており、張出体は、起立体における両端部が折り曲げられることにより形成されることにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、嵌合量調整具は、起立体が架設体の長さ以上の長さで形成されているとともに、張出体が起立体における両端部が折り曲げられて形成されているため、蓋体内部において折り曲げられた張出体が元の直線状の形状に復元することなく屈曲した状態を維持する。このため、嵌合量調整具は、収容本体の壁部の上端部に対する張出体の接触状態を維持することができるとともに、折り曲げられた張出体の復元力が蓋体の内壁面に作用することによって蓋体の内側に装着された嵌合量調整具の安定性が向上する。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記嵌合量調整具において、架設体は、内壁面間方向の両端部の一部が折り曲げて形成されており、この折り曲げられた部分が張出体と同じ方向に同じ張り出し量で張り出すサブ張出体であることにある。
【0014】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、嵌合量調整具は、架設体が張出体と同じ方向に同じ張り出し量で張り出すサブ張出体を備えているため、蓋体を収容体本体に被せた際における収容本体から作用する力を張出体とサブ張出体とで受けることができ、嵌合量調整具の剛性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記嵌合量調整具において、架設体は、内壁面間方向の両端部の一部が折り曲げて形成されており、張出体は、架設体における折り曲げられた部分であることにある。
【0016】
また、前記嵌合量調整具において、架設体は、長手方向に直交する幅が同幅に対応する蓋体の幅の半分よりも短い長さで形成することができる。これによれば、嵌合量調整具は、架設体における長手方向に直交する幅が同幅に対応する蓋体の幅の半分よりも短い長さで形成されているため、蓋体の内側に対して両端に1つずつの合計2つ装着することができる。すなわち、嵌合量調整具は、2つの嵌合量調整具を用いることによって蓋体の幅の長さに依らず複数種類の幅の蓋体に対して共通に使用することができる。また、嵌合量調整具は、架設体の大きさを蓋体の天板の略全面に対応する大きさおよび形状に形成する場合に比べて使用材料を少なくして軽量化することができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記嵌合量調整具において、架設体および張出体は、折り曲げ可能な材料で構成されたベース体を屈曲させることにより一体的に形成されることにある。
【0018】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、嵌合量調整具は、架設体および張出体が折り曲げ可能な材料で構成されたベース体を屈曲させることにより一体的に形成されている。したがって、嵌合量調整具は、嵌合量調整具として使用しない場合においては、1枚の板状体として保管および廃棄することができるため取扱いが容易となる。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、前記嵌合量調整具において、ベース体は、架設体と張出体との間の少なくとも一部に切込みまたは切欠きが形成されていることにある。
【0020】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、嵌合量調整具は、ベース体における架設体と張出体との間の一部に切込みが形成されているため、ベース体を折り曲げて架設体および張出体を成形する作業が行い易くなる。
【0021】
また、本発明の他の特徴は、前記嵌合量調整具において、ベース体における折り曲げ部分には、折り曲げを容易にするための折目、切れ目およびミシン目のうちの少なくとも1つが形成されていることにある。この場合、折目とは、折り曲げる部分を予め折り曲げてくなどにより同部分の他の部分よりも軟化させた部分であり、切れ目とは、折り曲げる部分に沿って形成した切断部であり、ミシン目とは、折り曲げる部分に沿って連続する貫通孔または貫通孔に至らない有底の穴で構成した部分である。
【0022】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、嵌合量調整具は、ベース体における折り曲げ部分に折り曲げを容易にするための折目、切れ目およびミシン目のうちの少なくとも1つが形成されているため、ベース体を折り曲げて架設体、張出体および起立体を成形する作業が行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る嵌合量調整具の使用状態を示す斜視図である。
図2】嵌合量調整具を使用しない場合における物品収容箱の断面の状態を図1に示す矢印A方向から見た断面図である。
図3】嵌合量調整具を使用した場合における物品収容箱の断面の状態を図1に示す矢印A方向から見た断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る嵌合量調整具の使用状態における斜め下方から見た斜視図である。
図5図4に示す嵌合量調整具を展開した状態を表す平面図である。
図6図4に示す嵌合量調整具を蓋体に装着した状態を蓋体の天板側から見た底面図である。
図7】本発明の変形例に係る嵌合量調整具を展開した状態を表す平面図である。
図8】本発明の他の変形例に係る嵌合量調整具を展開した状態を表す平面図である。
図9】本発明の他の変形例に係る嵌合量調整具の使用状態を示す斜視図である。
図10】本発明の他の変形例に係る嵌合量調整具を展開した状態を表す平面図である。
図11図10に示した本発明の他の変形例に係る嵌合量調整具の使用状態における斜め下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る嵌合量調整具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る嵌合量調整具100の使用状態を示す斜視図である。また、図2は、嵌合量調整具100を使用しない場合における物品収容箱90の断面の状態を図1に示す矢印A方向から見た断面図である。また、図3は、嵌合量調整具100を使用した場合における物品収容箱90の断面の状態を図1に示す矢印A方向から見た断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表していることがあるため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この嵌合量調整具100は、所謂蓋身式の物品収容箱90において収容本体91に対して嵌合させて被せられる蓋体95の嵌合量を調整するためのものである。
【0025】
ここで、本発明に係る嵌合量調整具100の使用対象である物品収容箱90について説明しておく。この物品収容箱90は、菓子、飲料または日用品などの被収容物WKを出し入れ自在に収容することができる紙製の蓋付き容器であり、主として、収容本体91と蓋体95とで構成されている。この場合、物品収容箱90を構成する紙材としては、例えば、ボール紙、クラフト紙または段ボールなどの各種厚紙を用いることができる。
【0026】
収容本体91は、被収容物WKを出し入れ自在に収容することができる容器であり、単数または複数の被収容物WKが載置される長方形状の載置面92の周囲にそれぞれ起立した状態で4つの壁部93が形成されて構成されている。これにより、収容本体91は、載置面92の対向する側(図示上方)に開口部94が形成された箱状に形成されている。
【0027】
この収容本体91における各壁部93の高さ、すなわち、収容本体91の深さは、この物品収容箱90の収容対象である被収容物WKのうちで最も高さが低い被収容物WKを納めることができる深さであり、より具体的には、収容本体91内に収容した状態の被収容物WKの上端部と同一または同上端部より若干高い深さに形成されている。
【0028】
蓋体95は、収容本体91における開口部94を覆って収容本体91内を閉塞するための蓋であり、収容本体91の開口部94を覆うことができる形状に形成された天板96の周囲にそれぞれ起立した状態で4つの壁部97がそれぞれ形成されて構成されている。なお、図1においては、嵌合量調整具100の説明の都合上、蓋体95を二点鎖線で示している。
【0029】
嵌合量調整具100は、図4に示すように、架設体101を備えている。架設体101は、物品収容箱90における蓋体95の内壁面間に架設される部分であり、長尺の板状体で構成されている。具体的には、架設体101は、長手方向の長さが物品収容箱90の蓋体95における長手方向に互いに対向する壁部97間の長さと同一の長さに形成されるとともに、この長手方向に直交する幅方向の長さが蓋体95における長手方向に直交する幅方向に互いに対向する壁部97間の長さの略1/4の長さに形成されている。この架設体101には、長手方向に沿って起立体102が形成されている。
【0030】
起立体102は、主として、後述する張出体103を支持するための板状の部分であり、架設体101の長手方向に延びる2つの長辺のうちの一方の長辺から直交する方向に起立した状態で形成されている。この起立体102は、長手方向の長さが架設体101の長手方向の長さよりも長く形成されているとともに、同長手方向に直交する幅方向の長さが張出体103の幅と同じ長さに形成されている。そして、この起立体102における長手方向両端部には、同長手方向の内側に折り曲げられた状態で張出体103がそれぞれ形成されている。
【0031】
張出体103は、物品収容箱90の収容本体91における壁部93の上端部から蓋体95の天板96を浮かせることによって収容本体91に対する蓋体95の嵌合量を調整するための板状の部分であり、架設体101に対して起立体102を介して繋がって形成されるとともに架設体101から張り出した状態で形成されている。この張出体103における架設体101からの張り出し量は、収容本体91における壁部93の上端部上から蓋体95の天板96を浮かせる量、すなわち、収容本体91内に収容した被収容物WKの収容本体91の壁部93の上端部からのはみ出し量以上の長さに設定されている。また、張出体103の長手方向の長さは、張出体103を起立体102に対して略45°に折り曲げた状態において、物品収容箱90の収容本体91における互いに直交する2つの壁部93によって形成される入り隅部の上端部上に架設可能な長さにそれぞれ形成されている。
【0032】
これら2つの張出体103における各外側には、サブ張出体104がそれぞれ設けられている。サブ張出体104は、前記張出体103とともに収容本体91における壁部93の上端部から蓋体95の天板96を浮かせることによって収容本体91に対する蓋体95の嵌合量を調整するための板状の部分であり、架設体101に対して繋がって形成されるとともに架設体101から張り出した状態で形成されている。より具体的には、サブ張出体104は、架設体101における長手方向両端部の一部から同長手方向外側に張り出して形成されるとともに張出体103側に折り曲げられて形成されている。この場合、サブ張出体104は、架設体101から折り曲げられた状態において、上端面が張出体103の上端部と同じ高さでかつ平行に延びるように形成されている。
【0033】
これらの架設体101、起立体102、張出体103およびサブ張出体104は、図5に示すように、1枚のベース体110を折り曲げることによって成形されている。ベース体110は、架設体101、起立体102、張出体103およびサブ張出体104が一体的に繋がった状態でそれぞれ形成された部材であり、折り曲げ可能かつ蓋体95を収容本体91上に支持可能な剛性を有する紙材で構成されている。この場合、ベース体110を構成する紙材としては、例えば、ボール紙、クラフト紙または段ボールなどの各種厚紙を用いることができる。本実施形態においては、ベース体110は、厚さが約1.2mmのボール紙を用いている。
【0034】
そして、このベース体110には、架設体101と起立体102との境界部分、架設体101とサブ張出体104との境界部分および起立体102と張出体103との境界部分にそれぞれ折り曲げを容易にするためのミシン目111が形成されている。この場合、各ミシン目111は、ベース体110の折り目における山側の面に有底の穴状に形成されている。また、ベース体110には、張出体103と架設体101との境界部分および張出体103とサブ張出体104との境界部分に折り曲げを容易にするための切込み112が連続的に形成されている。
【0035】
(嵌合量調整具100の作動)
次に、このように構成された嵌合量調整具100の作動について説明する。この嵌合量調整具100は、物品収容箱90における収容本体91内に収容本体91の深さ以上の高さを有する部分を含む被収容物WKを収容する際に用いられるものである。したがって、収容本体91内に収容本体91の深さ以下の高さび被収容物WKを収容する際においては、図2に示すように、収容本体91上に蓋体95を直接被せればよいため、収容本体91における壁部93の上端部から蓋体95を浮かせる特段の理由がない限り嵌合量調整具100は不要である。
【0036】
まず、嵌合量調整具100を使用する使用者は、1つの物品収容箱90に対して2つのベース体110を用意する。次に、使用者は、ベース体110に形成されたミシン目111および切込み112に沿ってベース体110を折り曲げることによって嵌合量調整具100を形成する。具体的には、使用者は、架設体101に対して起立体102を折り曲げるとともに、この起立体102の両端部をそれぞれ対向するように内側に折り曲げて張出体103を形成した後、架設体101に対して架設体101の両端部の一部にそれぞれ形成された各サブ張出体104をそれぞれ折り曲げる。この場合、使用者は、ミシン目111および切込み112によって架設体101に対して起立体102およびサブ張出体104をそれぞれ容易かつ正確に折り曲げることができるとともに、張出体103を起立体102およびサブ張出体104に対してそれぞれ容易かつ正確に折り曲げることができる。これらの折り曲げ作業によって嵌合量調整具100が完成する(図4参照)。
【0037】
次に、使用者は、ベース体110を折り曲げることによって成形した嵌合量調整具100を蓋体95の内側に装着する。具体的には、使用者は、図6に示すように、蓋体95における天板96を上方に向けた状態(つまり、蓋体95を裏返した状態)で蓋体95の内側における長手方向に沿って嵌合量調整具100を架設体101を天板96に面する向きでそれぞれ嵌め込む。この場合、嵌合量調整具100における架設体101は、長手方向の長さが蓋体95の長手方向の内壁面間と同一の長さに形成されているため、蓋体95の長手方向に対向する2つの壁部97によって挟まれることにより支持される。
【0038】
次いで、使用者は、蓋体95の内側の天板96に架設体101を接触させた後、起立体102を蓋体95における長手方向に延びる壁部97に向かって押すことにより同起立体102を同壁部97に押し付ける。これにより、使用者は、蓋体95の内側において長手方向に延びる一方の壁部97に隣接した状態で嵌合量調整具100を装着することができる。なお、この場合においても、嵌合量調整具100における架設体101は、長手方向の長さが蓋体95の長手方向の内壁面間と同一の長さに形成されているため、蓋体95の長手方向に対向する2つの壁部97によって挟まれることにより支持される。
【0039】
そして、使用者は、蓋体95の内側において嵌合量調整具100を装着した一方の壁部97に対向する他方の壁部97に対して同様の手順によってもう一つの嵌合量調整具100を装着する。これにより、蓋体95の内側には、長手方向に沿って延びる2つの壁部97にそれぞれ嵌合量調整具100が装着された状態となる。この場合、蓋体95の内側にそれぞれ装着された各嵌合量調整具100は、張出体103およびサブ張出体104が蓋体95の天板96から垂直方向に張出した姿勢で装着されている。
【0040】
次に、使用者は、物品収容箱90における収容本体91内に被収容物WKを収容した後、この収容本体91の開口部94上に蓋体95を被せる。この場合、図1および図3に示すように、蓋体95の内側に装着された嵌合量調整具100の張出体103およびサブ張出体104が収容本体91の壁部93の上端部に載置されるため、蓋体95は収容本体91に対して天板96が収容本体91の壁部93の上端部から浮いた状態で嵌合する。これにより、物品収容箱90は、被収容物WKにおける収容本体91の上端部からはみ出た部分を押し潰すことなく収容本体91内に収容することができる。
【0041】
また、物品収容箱90は、物品収容箱90が持ち運ばれている状態においても蓋体95の天板96は嵌合量調整具100によって収容本体91の壁部93の上端部状から浮いた状態に維持されるため、被収容物WKを押し潰すことなく持ち運ぶことができる。そして、物品収容箱90内から被収容物WKを取り出す場合においては、使用者は、蓋体95を収容本体91に対して上方に変位させて抜き取る。これにより、収容本体91の開口部94が開放されるため、使用者は、収容本体91内から被収容物WKを取り出すことができる。
【0042】
また、蓋体95に装着されている嵌合量調整具100は、蓋体95とともに引き続き使用することができるとともに、嵌合量調整具100が不要な場合には、嵌合量調整具100を蓋体95から取り外すこともできる。具体的には、使用者は、蓋体95を前記装着時と同様に裏返した後、蓋体95の内側から嵌合量調整具100を抜き取ることによって嵌合量調整具100を蓋体95から取り外すことができる。そして、蓋体95から抜き取った嵌合量調整具100は、廃棄してもよいし、再度蓋体95に装着して使用することもできる。
【0043】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、嵌合量調整具100は、所謂蓋身式の物品収容箱90における蓋体95の内側において互いに対向する壁部97間の距離に相当する長さに形成された架設体101と、この架設体101に支持された状態で同架設体101における長手方向の端部側に起立体102を介して同長手方向に直交する方向に張り出す張出体103とで構成されている。これにより、この嵌合量調整具100の使用者は、嵌合量調整具100における架設体101を物品収容箱90における蓋体95の壁部97間に張出体103を収容本体91側に張り出させた向きで挿し込むことによって容易に嵌合量調整具100を蓋体95の内側に取り付けることができる。そして、物品収容箱90は、蓋体95が収容本体91上に被せられた場合には、嵌合量調整具100における張出体103が収容本体91における壁部93の上端部に接触することにより蓋体95の内側の天井面が収容本体91の壁部93の上端部上から浮いた状態で位置決めされる。これにより、物品収容箱90は、収容本体91の壁部93の上部よりも突出する被収容物WKであっても被収容物WKを圧迫することなく収容することができる。すなわち、本発明に係る嵌合量調整具100によれば、収容本体91の深さを互いに高さが異なる複数種類の被収容物WKのうちで高さが相対的に低い被収容物WKに設定することができるため、物品収容箱90の収容効率を向上させることができる。
【0044】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態においては、嵌合量調整具100は、架設体101における長手方向の長さを蓋体95の長手方向に対向する2つ壁部97間の長さと同一とした。しかし、嵌合量調整具100における架設体101の長さは、架設体101を架設する蓋体95の内壁間の距離以上の長さに設定されていれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、架設体101の長さは、蓋体95の長手方向に対向する2つの壁部97間の長さよりも長く形成してもよいし、蓋体95における長手方向に直交する幅方向に対向する2つの壁部97間の距離と同一または同距離よりも長い長さに形成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、嵌合量調整具100は、張出体103を起立体102の両端部にそれぞれ形成した。しかし、張出体103は、架設体101に支持されていればよく、必ずしも起立体102に設ける必要なはい。例えば、張出体103は、図7に示すように、起立体102を省略して架設体101の両端部に直接設けるようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、嵌合量調整具100は、起立体102の長さを架設体101の長さ以上の長さに形成するとともに、両端部に張出体103を備えて構成されている。しかし、起立体102の長さは、両端部に形成される張出体103が収容本体91の隅部上端部に架設される長さが確保されれば、必ずしも、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、嵌合量調整具100は、起立体102の長さを架設体101の長さ未満の長さに形成することもできる。また、起立体102の両端部に形成される張出体103についても、起立体102の両端部のうちの少なくとも一方の端部に形成されていればよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、嵌合量調整具100は、張出体103に隣接してサブ張出体104を備えて構成されている。これにより、嵌合量調整具100は、収容本体91から受ける力を張出体103とサブ張出体104とで受けることができるため、剛性を向上させることができる。しかし、嵌合量調整具100は、図8および図10にそれぞれ示すように、少なくとも張出体103を備えていればよく、サブ張出体104を省略して構成することもできる。なお、この場合、嵌合量調整具100は、ベース体110の厚さを厚くすることにより張出体103の強度や剛性を向上させることができる。
【0049】
また、上記実施形態においては、嵌合量調整具100の幅を蓋体95の幅方向の長さの略1/4の長さに形成することにより、1つの蓋体95に対して2つの嵌合量調整具100を使用するようにした。これにより、嵌合量調整具100は、2つの嵌合量調整具100を用いることによって蓋体95の幅の長さに依らず複数種類の幅の蓋体95に対して共通に使用することができる。また、嵌合量調整具100は、図9に示した嵌合量調整具100のように、架設体101の大きさを蓋体95の天板96の略全面に対応する大きさおよび形状に形成する場合に比べて使用材料を少なくして軽量化することができる。なお、嵌合量調整具100は、図9に示すように、架設体101の大きさを蓋体95の天板96の略全面に対応する大きさおよび形状に形成して両端部に起立体102、張出体103およびサブ張出体104をそれぞれ形成することにより、1回の装着作業によって嵌合量調整具100を蓋体95の内側に装着することができる。また、嵌合量調整具100は、少なくとも蓋体95の幅方向の長さの半分未満の長さに形成すれば、蓋体95の内側に2つ装着することができるものである。
【0050】
また、上記実施形態においては、嵌合量調整具100は、折り曲げ加工可能な紙材からなるベース体110で構成するとともに、このベース体110を折り曲げることによって成形した。しかし、嵌合量調整具100は、折り曲げ可能な紙材以外の材料、例えば、折り曲げ可能な樹脂材を用いて構成することもできる。また、嵌合量調整具100は、紙材、樹脂材、木材、または金属材を用いて直接嵌合量調整具100の形に成形しておくこともできる。この場合、嵌合量調整具100を構成する材料は、必ずしも折り曲げ可能な材料で構成する必要はない。例えば、嵌合量調整具100は、樹脂材の一体成形で構成することができる。これによれば、使用者は、嵌合量調整具100の使用に際してベース体110の折り曲げ作業を行うことなく直ちに使用することができる。なお、嵌合量調整具100を透明な樹脂材で構成することにより、蓋体95への装着時に目立たなくすることができる。また、嵌合量調整具100は、架設体101、起立体102、張出体103およびサブ張出体104を上記各種材料で構成して接着剤等を用いて接合することにより構成することもできる。
【0051】
また、上記実施形態においては、嵌合量調整具100は、架設体101に対して起立体102およびサブ張出体104との間および起立体102と張出体103との間にそれぞれミシン目111を設けて構成した。また、嵌合量調整具100は、張出体103に対して架設体101およびサブ張出体104との間に切込み112を設けて構成した。これらのミシン目111および切込み112は、ベース体110を折り曲げ易くするためのものであり、ベース体110自体が折り曲げ可能な材料で構成されていれば、必ずしも必要ではない。すなわち、嵌合量調整具100は、ミシン目111や切込み112を省略して構成することもできる。
【0052】
また、嵌合量調整具100は、図10および図11にそれぞれ示すように、架設体101と張出体103との間の切込み112に代えて同部分を所定の幅で切り欠いた切欠き113を備えて構成することができる。この場合、切欠き113の幅は、0.5〜5.0mmが適当である。これによれば、嵌合量調整具100は、ベース体110において架設体101に対して起立体102および張出体103を折り曲げる際に架設体101との摩擦を低減して折り曲げ易くすることができ、起立体102と張出体103との折り曲げ部分の強度低下を防止することができる。また、架設体101側に形成された切欠き113における端部を斜めに形成することにより、張出体103を架設体101上で折り曲げて配置した際に架設体101上に貫通孔が表れることを防止することができる。また、嵌合量調整具100は、架設体101にける起立体102側の角部を円弧上に形成することにより、嵌合量調整具100を蓋体95に装着する際の作業が行い易くなる。
【0053】
また、上記実施形態においては、嵌合量調整具100は、主として架設体101と蓋体95の内壁面との間の摩擦力によって装着されるように構成した。しかし、嵌合量調整具100は、これに代えてまたは加えて接着剤や粘着テープなどを用いて蓋体95の内部に装着するように構成してもよい。これによれば、嵌合量調整具100をより強固に蓋体95に装着することができる。
【0054】
また、上記実施形態においては、嵌合量調整具100は、被収容物WKとなる物品を載置する載置面92の周囲が壁部97で囲まれることによって上面が開放された箱状の収容本体91と、この収容本体91の開口部94を覆うための天板96の周囲に壁部97が設けられた蓋体95とで構成された所謂蓋身式の物品収容箱90に広く適用できるものである。すなわち、嵌合量調整具100は、物品収容箱90に収容される被収容物WKの内容や種類とは無関係である。例えば、物品収容箱90に収容される被収容物WKとしては、菓子、生鮮食料品、ジュースおよび調味料などの飲食物の他、石鹸、靴および毛布などの日用品、電化製品、美術工芸品、生花および各種工業部品などが考えられる。また、物品収容箱90としては、例えば、贈答用品用箱、保管箱、梱包箱、運搬箱の他弁当箱などが考えられる。これらの場合、物品収容箱90の材質は、紙材の他、樹脂材、木材、金属材など特に限定されるものでないことは当然である。また、これらの場合、物品収容箱90は、必ずしも方形の箱体である必要はなく、平面視において、三角形、五角形および六角形などの多角形状であってもよいし、円形や楕円形であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
WK…被収容物、
90…物品収容箱、91…収容本体、92…載置面、93…壁部、94…開口部、95…蓋体、96…天板、97…壁部、
100…嵌合量調整具、101…架設体、102…起立体、103…張出体、104…サブ張出体、
110…ベース体、111…ミシン目、112…切込み、113…切欠き。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11