【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態例を、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本発明のサイドエアバッグ装置を構成するエアバッグの説明図、
図2は
図1の要部拡大図である。
【0019】
本発明のサイドエアバッグ装置は、車両側面からの衝突時に、例えば運転席に着座し、シートバックに体を預けた運転者とドアの間に、シートバックのドア側の側部から前方に向けてエアバッグを展開させ、乗員を保護するものである。
【0020】
サイドエアバッグ装置のエアバッグ11は、例えば1枚の基布12を中央部分で二つ折りにして重ね合わせることで車内側と車外側の布パネル12a,12bとし、前記折り曲げ部12cを除く全外周
の、外周よりも内側の領域を縫製して袋状に形成している。
【0021】
その際、こ
の縫製13の終端部13a同士を離間させて、エアバッグ11が展開した後或いは乗員がエアバッグ部に当接した後にガスを排気することで、乗員への衝撃を緩和するベントホール14を形成している。
【0022】
また、基布12を重ね合わせた車内側と車外側の布パネル12a,12bの相対する内側に、補強布15a〜15dを配置して基布12と一緒に縫製することで、インフレータから送られてくるガスの熱および圧力によ
る縫製13への影響を小さくしている。
【0023】
なお、図示省略したインフレータは、前記エアバッグ11を上下方向に立てた状態で、エアバッグ11の後端部11aにて包み込まれるようにして内蔵されている。
【0024】
本発明は、基布12の外周
よりも内側の領域を縫製して袋状に形成する際
、縫製13の終端部13a同士を離間させてベントホール14を形成しているエアバッグ11の、前
記縫製13の終端部13aを、
図2に示すように折り返すことを特徴としている。なお、
図2中の13bは前記終端部13aを折り返した折り返し部を示す。
【0025】
その際、ベントホール14
の両側が布パネル12a,12bの外周より
はみ出すように、布パネル12a,12bの前記ベントホール14を形成する部分の
両側に、布パネル延長部12aa,12baを形成している。
【0026】
この布パネル延長部12aa,12baは、
図1では、ベントホール14を形成する部分近傍の布パネル12a,12bの外周上の1点から
はみ出してベントホール14方向に伸ばした直線(接線)または曲線を、ベントホール14直近から布パネル12a,12bの外周に戻した形状である。
【0027】
そして
、縫製13の終端部13aを、前記布パネル延長部12aa,12baとベントホール14の境界付近の布パネルコーナ部12ab,12bb近傍に位置させ、前記折り返し部13bを布パネル延長部12aa,12baに延伸させている。
【0028】
加えて、本発明では、前記折り返し部13bにも、補強布15a〜15dが位置するように、
図1(b)に示すように、補強布15a〜15dの外周形状を基布12の外周形状と同じ形状にしている。なお、
図1,2中の15aa〜15daは補強布延長部、15ab〜15dbは補強布コーナ部を示す。
【0029】
上記構成の本発明のエアバッグ11を採用した場合は、エアバッグ11の展開時にベントホール14の近傍の縫い目に作用する応力を
、縫製13の終端部13aのみならず折り返し部13bでも負担することになるので前記応力を分散することができる。
【0030】
加えて、本発明では、前記折り返し部13bにも補強布15a〜15dを位置させているので、前記応力の分散との相乗効果によってベントホール14の近傍でエアバッグ11を構成する基布12が破れる不具合を防止することができる。
【0031】
ちなみに、本発明の効果を確認するために、
図2に示した構成のエアバッグ11を展開させた際の展開後の基布の状態を
図6(c)に示す。本発明の構成を採用した場合、エアバッグの展開後も、ベントホールの近傍の基布(
図6(c)の矢印Cで示す箇所)にダメージは見られなかった。
【0032】
比較として、ただ単
に縫製の終端部同士を離間させてベントホールを形成したエアバッグ(
図4参照)と、ベントホールを形成す
る縫製の終端部同士を折り返しただけで折り返し部に補強布のないエアバッグ(
図5参照)について同様の実験を行った。
【0033】
その結果を
図6(a)(b)に示す。ただ単
に縫製の終端部同士を離間させてベントホールを形成したエアバッグの場合、エアバッグの展開後、ベントホールの近傍の基布に(
図6(a)の矢印Aで示す箇所)
、縫製の終端部に沿う破断が見られた。
【0034】
また
、縫製の終端部同士を折り返しただけで折り返し部に補強布の無いエアバッグの場合、エアバッグの展開後、ベントホールの近傍の基布に(
図6(b)の矢印Bで示す箇所)
、縫製の終端部に強いテンションが作用して基布が引っ張られた。
【0035】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇に含まれるものであれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0036】
すなわち以上で述べたサイドエアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0037】
例えば、上記の例では、1枚の基布12を折り曲げ、その外周
よりも内側の領域を縫製することで袋状のエアバッグ11を形成しているが、2枚の布パネルの外周
よりも内側の領域を縫製することで袋状のエアバッグを形成するものでも良い。
【0038】
また、
図2に示したものに替えて、
図3に示すよう
に縫製13の終端部13aを、布パネル延長部12aa,12baに位置するようにしてもよい。
【0039】
また、布パネル延長部12aa,12baの形状も、ベントホール14
の両側が布パネル12a,12bの外周より
はみ出すものであれば、
図1に示したものに限るものではない。
【0040】
また、上記の例では、補強布15a〜15dの外周形状を基布12の外周形状と同じ形状にしているが
、縫製13の終端部13aの折り返し部13bに補強布15a〜15dが位置すれば、同じ形状で無くても良い。
【0041】
また、上記の例ではエアバッグ11内は一つの空間であるが、乗員の腕部と対応する箇所に前記腕部の押圧を抑制する部分を形成したり、前記空間を適宜小さな空間に分割したものでも良い。
【0042】
上記本発明のサイドエアバッグ装置は、運転席だけでなく、助手席や後部座席にも適用できることは言うまでもない。