(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る樹木粉砕機は、樹木等の被粉砕物を粉砕する樹木粉砕機であって、動力源と、被粉砕物を投入する投入口と、投入口から投入された被粉砕物を粉砕する、動力源の動力により回転駆動される粉砕ローターを備えた粉砕室と、粉砕ローターの下側に設けられ、該粉砕ローターで粉砕されたチップのうち規定の大きさ以下のチップを通過させる複数の孔部を備えたスクリーンと、粉砕室の下部に設けられ、スクリーンを通過したチップが流入するブロアケーシングと、ブロアケーシングから上方に向かって延出し、スクリーンの位置よりも高い位置に排出口を備える排出筒部と、ブロアケーシング内に設けられ、スクリーンを通過したチップを排出筒部を介して排出させる気流を発生する、動力源の動力で回転駆動するブロア羽と、を有し、スクリーンは、ブロアケーシング内で、粉砕室の下部に着脱自在に取り付けられている。
以下、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機を図面を参照しながら説明する。
【0011】
<全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100の一例を示す図であり、詳細には、
図1(a)は樹木粉砕機100の上面図、
図1(b)は樹木粉砕機100の側面図である。
図2は樹木粉砕機100の粉砕処理時の動作の一例を示す図である。
【0012】
本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100は、動力源となるエンジンを搭載し、このエンジンの動力を利用して、例えば樹木、詳細には、伐採された樹木や剪定された木の枝などの被粉砕物を粉砕する粉砕処理、粉砕したチップの投射、高い位置からチップをチップ収納用袋に詰める処理、自走による移動、などを行う。
この樹木粉砕機100は、例えば、外部装置からの動力入力、集塵装置など別体の補助機器の装着などを原則として必要とせずに、上記処理を行うことができる構成となっている。
【0013】
本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100は、動力源110と、操作部120と、走行部130と、作業部140と、などを有する。
【0014】
<動力源110>
動力源110としては内燃機関や電気モータなどを採用することができる。本実施形態では、樹木粉砕機100は、動力源110として、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関であるエンジンを搭載している。
【0015】
<操作部120>
操作部120は、走行時に用いられる走行レバー類、粉砕処理時に用いられる粉砕レバー類、エンジン始動スイッチなどの操作スイッチ類、把持部、などを有する。
【0016】
<走行部130>
走行部130は、樹木粉砕機100の本体部17の下部に設けられ、動力源110としてのエンジンの動力により走行可能に構成されている。つまり、本実施形態では樹木粉砕機100は自走式となっている。走行部130は、詳細には、コンベアや車輪などを有する。走行部130は、操作部120の操作に応じて、動力源としてのエンジンからの動力により変速機(不図示)などを介してコンベアや車輪などを所定方向に回転駆動することで、樹木粉砕機100の本体部17を移動させる。
【0017】
<作業部140>
作業部140は、樹木や木材などの被粉砕物9の粉砕処理や、粉砕されたチップの投射処理、高い位置からチップの袋詰め処理、などを行う。
以下、作業部140の各構成要素について説明する。
【0018】
樹木粉砕機100の本体部17には、エンジンにより駆動されて高速回転するローター軸22に、所要間隔で取り付けられた所要枚数のディスク(粉砕歯)からなる粉砕部としての粉砕ローター1が収容され、その外周には、刃線が回転軸に本質的に平行になる位置関係で固定された所要枚数の回転刃3、または、個別に回転する軸を持ち粉砕材料を叩き砕くハンマー(不図示)が所要個数取り付けられている。
粉砕ローター1が回転すると、回転刃3またはハンマー(不図示)の刃先の回転軌跡は回転軸に対して平行な円筒形状となる。
また、本体部17には、運転中の回転刃3により形成される円筒形状の軌跡に対して適切な位置関係(回転刃3と固定刃12との協働により被粉砕物9が高効率でチップとなる位置関係)となるように固定刃12が取付けられている。
【0019】
本体部17の後部には、伐採した木材や剪定した枝葉などの被粉砕物9を投入する漏斗状の供給口である投入口8aとしてのホッパー、または、供給シュート8が設けてあり、その奥には扇運動するアームとバネで下方向に付勢され、被粉砕物9を所要の力で下方向に押さえ保持しながら粉砕ローター1に押し付ける方向、または、その逆方向に任意に切り替えて回転駆動される送りローラー2が設けられている。
【0020】
供給シュート8の投入口8aから投入された被粉砕物9は、送りローラー2と本体部17に設けられた平面部23とに挟まれて保持され、送りローラー2の回転により所要の速度で粉砕ローター1に押し付けられる。
【0021】
被粉砕物9は、高速回転する粉砕ローター1に取り付けられた回転刃3(粉砕歯)、または、ハンマー(不図示)により所要量ずつ削られ、または、砕かれ、砕片化したチップとなって本体部17の粉砕ローター1を収容する空間である粉砕室(ローター室30と呼ぶ)に入る。
この際、軟質または繊維質の強い被粉砕物等に対しては、回転刃3と固定刃12がハサミのように作用して、効率的に被粉砕物9を切断または細分化する。
【0022】
粉砕室(ローター室30)の下前方には、所要の形状・大きさ・個数の孔部4aが設けられた網目状の部品であるスクリーン4が、工具等を必要としない簡便な操作により、作業現場などで容易に交換可能な構造で取付けられている。詳細には、スクリーン4は、粉砕ローター1の下側に設けられ、その粉砕ローター1で粉砕されたチップのうち規定の大きさ以下のチップを通過させる複数の孔部4aを備えており、後述するブロアケーシング10内で、粉砕室(ローター室30)の下部に着脱自在に取り付けられている。
スクリーン4は、具体的には、粉砕ローター1の回転下面から回転方向に沿って回転側面まで、粉砕ローター1と略同心状に円弧状の湾曲面を備え、その湾曲面に複数の孔部4aが形成されている。
【0023】
ローター室30に入ったチップのうち、スクリーン4の網目を通り抜けられない大きさのものは、ローター室30のなかで高速回転する回転刃3、または、ハンマーによる再度の細分化、または、平面で構成されたローター室30の内壁に高速で叩きつけられることで細分化を繰り返し、スクリーン4の網目を通過できる大きさまで揃えられ、本体部17内の前下部へ落下する。
【0024】
また、所望するチップ粒度が得られる形状・大きさ・個数の孔部4aを設けたスクリーン4に交換することで、チップの利用目的に合せた任意の粒度の粉砕チップが得られる。
【0025】
本体部17前下部へ落下したチップは、連続して設けられたブロアケーシング10内に落下する、または、高速回転するブロア羽5により作られる負圧によってブロアケーシング10内に引きこまれる。
【0026】
ブロアケーシング10に入ったチップは、高速回転するブロア羽に接触し叩かれることで繊維化した部分がほぐされる等して、さらに細分化がなされる。
【0027】
その後、チップは、高速回転するブロア羽5により直接跳ね上げられ、または、ブロア羽5が作り出すエアフローにのって、ブロアケーシング10に連続して上方向に延びる排出筒部6内を上方向に移動する。
【0028】
直上に向いている排出筒部6の先端部は、適切な円弧形状を描いて横方向に屈曲している。
排出筒部6を通過したチップは、高速回転するブロア羽5の作り出したエアフローにのって排出口7から勢いよく排出される。
排出筒部6の屈曲部は、水平方向に360°回転自在に構成されており、任意の方向に回転させたのち、取手付きのネジなどで固定することで排出方向を自由に決めることができる。
排出口7の上部には、上下に扇動し任意の位置で固定できるヒサシ状のガイドカバー11が設けられている。ガイドカバー11を上下に操作することで、チップ排出方向の上下角度を調整しチップを落下させる位置を設定できる。
【0029】
このため、作業者は、被粉砕物9を投入する作業と同時進行で、樹木粉砕機周囲全方位のブロア出力の可能な限りの遠距離や任意の距離に粉砕後のチップを投射集積させる、トラック荷台等へ直接積み込む、などの作業を行うことができる。つまり、作業者は、本体部直前方に堆積した処理後のチップを改めて手作業で移動させる、袋詰め等する、本体部を移動させる、などの労力を必要としない。
【0030】
また、本実施形態に係る樹木粉砕機100は、ガイドカバー11の排出口7に集塵袋を着脱可能に備えてもよい。
詳細には、作業者は、ガイドカバー11の取付けネジ部を利用するなどして、排出口7に集塵袋等を取付け、被粉砕物9を投入する作業のみを行いながら同時に、排出されたチップの袋詰めを行うなど、効率的かつ負担の少ない作業を行うことができる。
【0031】
つまり、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100は、排出されるチップ粒度を調整する網目(スクリーン)4を備えるとともに、チップを任意の方向と距離に投射集積、または、高い位置から集塵袋などに直接排出する機構(ブロア)を一体化した構造を有する。
【0032】
図3は本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100のメンテナンス時の動作の一例を示す図であり、詳細には、上部カバー14を開状態とした樹木粉砕機100の側面図である。
図4は樹木粉砕機100のメンテナンス時の動作の一例を示す図であり、詳細には、ブロアユニットを開状態とした樹木粉砕機100の側面図である。詳細には、ブロアユニット16をブロア支持軸Aを中心に上方向に移動させた状態を示す図である。尚、
図3、
図4では安全カバー等を図示していない。
【0033】
ノブ付固定ネジ13を手などでゆるめ、本体部17とヒンジを介して合致し、ローター室30を形成している上部カバー14を上方に開く。
この状態で粉砕ローター1およびローター室30内壁が大きく露出するので、作業後の清掃、回転刃3やハンマーの点検、交換作業などを容易に行うことができる。
【0034】
また、送りローラー2付近などに被粉砕物9が詰まるなどして停滞した場合、それらの除去作業を容易に行うことができる。
【0035】
機体前方のブロアユニット16は、ブロア支持軸Aを回転中心として扇状に持ち上げることができるように構成されている。
ブロア羽5への駆動力は、動力源110としてのエンジンから粉砕ローター1のローター軸22、ローター軸22に設けられたプーリー20(第1のプーリー)、ブロア羽5の回転軸に設けられたプーリー21(第2のプーリー)にVベルト18により伝達される。
Vベルト18の安全カバー取付けブラケットBは、ブロアユニット16の運転位置としてこの状態では、Vベルト18に接触していない。このVベルト18はアイドルローラ19によって適切な張力に保たれている。
【0036】
ブロアユニット16は、機体反対側に設けられたロックプレート(不図示)により、
図4に示したように、この位置でロックされる。
【0037】
また、樹木粉砕機100は、
図4に示したように、ブロアユニット16が上方にスイングした場合、プーリー20とプーリー21の軸間距離が近くなるが、脱落規制部としての安全カバー取付けブラケットBがスイングと連動して適切な位置に移動してVベルト18と接触してVベルト18に張りを与えることで、Vベルト18がプーリー20、21から外れるのを防止する構造となっている。
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100のスクリーン4の交換などのメンテナンスに関する動作の一例を示す図である。
図6は
図5に示した樹木粉砕機100の要部の拡大図である。
図7は
図5に示した樹木粉砕機100の斜視図である。
図8は本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100のスクリーン4の一例を示す図であり、詳細には
図8(a)はスクリーン4の斜視図、
図8(b)はスクリーン4のピン4C(4D)と樹木粉砕機100の本体部17の孔部17bの嵌合状態の一例を示す図であり、
図8(c)はスクリーン4のピン4C(4D)と樹木粉砕機100の本体部17の孔部17bの非嵌合状態の一例を示す図である。
【0039】
本実施形態に係る樹木粉砕機100は、ローター室(粉砕室)の下前方に装着される網目状の部品(スクリーン4)を交換することで、樹木粉砕機100から排出されるチップの粒度(平均粒径)を変えることができる。スクリーン4は工具不要の簡単な操作で脱着することができる。
この作業は、ブロア機構を上方向にスイングさせてロックし、排出経路の途中が大きく開口した状態で行うことができる。
【0040】
図5〜
図8に示したように、スクリーン4は、バネなどの付勢部材41により固定方向(
図8(a)に示した付勢方向80A)に付勢された抜き差し可能なピン4C、ピン4Dにより本体部17に着脱自在に固定されている。
【0041】
図5に示したように、ブロアユニット16を上方向にスイング(移動)することで開口部40が形成される。この開口部40から手をいれて、バネなどの付勢部材41により固定方向に付勢されたピン4Cのバネを圧縮しながら抜き、ピン4Dを支点としてスクリーン4を下方向にスイングさせる。
【0042】
図5に示した状態で、スクリーン4の内面と粉砕ローター1の下部が大きく露出し、作業後の清掃、または、作業中にスクリーン4の網目がつまった場合の清掃や異物除去作業などを、簡単に行うことができる。
【0043】
スクリーン4を任意のチップ粒度用のものに交換する場合、バネにより固定方向に付勢されたピン4Dのバネを圧縮しながら抜き、これにより全ての固定が解除されたスクリーン4を本体部17下部の開口部から取り出す。
その後、所望の形状・大きさ・個数の穴を持ったスクリーン4を、上記スクリーンの取り外し手順と逆の手順で本体部17に取付け、ブロアユニット16と上部カバー14を運転位置(初期位置)にもどし、ノブ付固定ネジ13を締めて、ブロアユニット16と上部カバー14を本体部17に固定する。こうすることで、樹木粉砕機100が運転開始可能な状態となる。
【0044】
上述したように、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100は、チップ粒度を規制するスクリーン4を、機体の分解等をすることなく、容易に交換することができるとともに、ブロア投射が可能な気密性をもった粉砕部を備える。
【0045】
スクリーン4は、詳細には、
図8に示したように、湾曲形状の板部4bと、複数のリブ4e、4f、4g、4h、4k、4mと、複数のピン4C、4Dと、バネなどの付勢部材41と、などを有する。
【0046】
湾曲形状の板部4bには複数の孔部4aが形成されている。詳細には、板部4bには、被粉砕物9の性質や所望するチップ粒度に合わせた形状・大きさ・個数の孔部4aが設けられている。粉砕ローター1により粉砕されたチップは、スクリーン4の孔部4aを通過できる大きさになるまで、ローター室内で粉砕ローター1により細分化され、粒度を規制して、スクリーン4から排出される。
【0047】
湾曲形状の板部4bは、
図8に示したように、上端にリブ4eが設けられ、下端にリブ4fが設けられ、左右端部付近にリブ4g、4kが設けられ、中央部にリブ4hが設けられている。リブ4g、4h、4kは互いに平行となるように配置されている。また、リブ4g、4h、4kはそれぞれ上端がリブ4eに固定され、下端が4fに固定されている。
図8(a)、
図8(b)、
図8(c)に示したように、スクリーン4の上端の左端部付近、右端部付近にそれぞれピン4Cが配置され、スクリーン4の下端の左端部付近、右端部付近にそれぞれピン4Dが配置されている。このピン4C、4Dは、スクリーン4を樹木粉砕機100の本体部17に固定する。
【0048】
ピン4C(4D)は、L字形状に形成されている。
図8(a)、
図8(b)、
図8(c)に示したように、リブ4g、4mの間には、バネなどの付勢部材41が配置され、ピン4C(4D)が、リブ4mに形成された孔部4t、リブ4gに形成された孔部4sを貫通し、先端部4pがスクリーン4の外側に向くように配置され、Eリングなどのバネ受け部材42が、リブ4g、4mの間のピン4C(4D)の中央部付近に固定されている。
バネなどの付勢部材41の一端部はバネ受け部材42に当接し、他端部はリブ4mに当接するように配置されている。
【0049】
ピン4C、4Dは、バネなどの付勢部材41により方向80A(
図8(a)参照)に付勢され、初期状態では、ピン4C、4Dの先端部4pは、スクリーン4の幅方向の端部よりも外側に突出している。
樹木粉砕機100の本体部17にスクリーン4を装着した状態では、
図8(b)に示したように、スクリーン4の上下の左右端部それぞれに設けられたピン4C、4Dの先端部4pが、本体部17のフレーム17aなどに設けられた、ピン4C、4Dの先端部4pに対応する位置に設けられた孔部17b(被取付部)に嵌合することで、スクリーン4を固定している。これは、
図6で示した“固定”状態である。
【0050】
本体部17に固定されたスクリーン4において、上部に設けられたピン4Cの把手部4Lを使用者の手などにより、バネなどの付勢部材41を圧縮しながら反付勢方向80B(
図8(a)参照)に外力を加えて、ピン4Cの先端部4pと孔部17b(被取付部)を非嵌合状態とする。スクリーン4は下部のピン4Dを支点として、扇状に下方向にスイングして開状態となる。この状態は、
図6に示した“清掃”状態に相当する。
この状態では、スクリーン4の内面と、粉砕ローター1の下面が大きく露出する。また、日常的な手入れ洗浄や、被粉砕物9等によりスクリーン4の孔部4aが詰まった場合、ローター室(粉砕室)に異物が入りこんだ場合など、上述した状態で、それらを容易に取り除くことができる。
【0051】
図6に示した“清掃”の姿勢からスクリーン4を僅かに持ち上げた状態で、
図8(a)、
図8(c)に示したように、スクリーン4の下端に設けられたピン4Dの把手部4Lを、ユーザの手などにより、バネなどの付勢部材41を圧縮しながら80B方向に移動させて、ピン4Dの先端部4pと樹木粉砕機100の本体部17の孔部17bとを非嵌合状態とする。こうすることで、スクリーン4を本体部17から取り外すことができる。
【0052】
尚、使用したいスクリーン4に交換、装着する場合、上述した手順を逆に行う。
【0053】
図9は本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100の複数の細孔を有するスクリーン4の一例を示す斜視図である。
図9に示したように、比較的微細なチップを得るために複数の細孔の孔部4aが形成されたスクリーン4を採用してもよい。また、スクリーン4に設ける孔部4aの形状・大きさ・個数・配置などは、使用者(ユーザー)が望む粒度や被粉砕物の性質などに合わせて様々に変更し設定していく拡張性のあるものであり、ここに示す形態に限られるものではない。
【0054】
<ナイフローター>
図10は本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100の粉砕ローター1としてのナイフローターの一例を示す斜視図である。
図11は
図10に示した樹木粉砕機100の粉砕ローター1の断面の一例を示す図である。
図10、
図11に示したように、運転時、粉砕ローター1としてのナイフローターは、回転軸としてのローター軸22を中心に矢印A(
図11の時計回り)の方向に高速回転するように構成されている。
ナイフローターに所定の個数のボルトなどの固定部材3dによって、所定の枚数だけ取付けられたナイフである回転刃3(粉砕刃)の粉砕ローター1の最外縁に位置する刃先3aは、粉砕ローター1が回転すると仮想円1sで示す刃先円筒を描く。
【0055】
粉砕ローター1は、複数の円板状のプレート1bと、半月状板部材1pと、を有する。
図11に示したように、送りローラー2により、所要の速度で送りこまれる被粉砕物9が、矢印Aの方向に高速回転しているナイフローターに近づき仮想円1sの円内に移動した場合、ナイフである回転刃3(粉砕刃)の刃先3aが被粉砕物9を薄く削りとって砕片化する。
その際、被粉砕物9は、ナイフローターである粉砕ローター1を構成している所要枚数の円板状のプレート1bの外周部、および、ナイフである回転刃3(粉砕刃)と共にボルトなどの固定部材3dで固定されている半月状板部材1pの外周部に押し当てられた状態となり、被粉砕物9の前進が抑制される。
つまり、粉砕ローター1は、被粉砕物9が必要以上に厚く削られること、回転刃3の刃先が被粉砕物9に過剰に食い込むことにより刃先にダメージを与ること、粉砕ローター1への過負荷による粉砕ローター1の回転停止、などの不具合を防止するように構成されている。
【0056】
本実施形態では、ナイフとしての回転刃3(粉砕刃)は、一方の端部に刃先3aが形成され、他端(対辺)にも刃先3bが形成されている。つまり、回転刃3は、長時間の使用により刃先3aが磨滅して切れ味の低下した場合など、回転刃3を反転してローター本体部1aに取付けて、刃先3bで被粉砕物9を粉砕できるように構成されている。回転刃3の刃先3a、3bが両方とも摩耗した場合、回転刃3に研削加工を施すにより、刃先3a、3bを再生することもできる。
上述したように、本実施形態に係る樹木粉砕機100の粉砕ローター1は、簡単な構成で、エネルギー効率が良く、処理速度が速く、細かいチップを短時間に生成することができる。
【0057】
<フリーハンマー>
図12は本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100のフリーハンマーを採用した粉砕ローター1の一例を示す斜視図である。
図13は
図12に示した樹木粉砕機100の粉砕ローター1の断面の一例を示す図である。
図12、
図13に示したように、運転時、粉砕ローター1としてのハンマーローターは、回転軸としてのローター軸22を中心に矢印A(
図13の時計回り)の方向に高速回転するように構成されている。
ハンマーローターに所定の個数だけ取付けられたフリーハンマー201はそれぞれローターの本体部1aに、回転軸としてのローター軸22に所定距離だけ離れた位置で、周方向に規定間隔に配置された複数の回転軸202を中心に360°回転可能に軸支されている。
【0058】
粉砕ローター1が回転した場合、フリーハンマー201の先端角部201a、201bに径方向外側に向かって遠心力が作用して、フリーハンマー201が一定の姿勢を保つようになる。フリーハンマー201の先端角部201a、201bの軌跡は、
図13に示したように、仮想円1sで示す刃先円筒を描く。
送りローラー2により、所要の速度で送りこまれる被粉砕物9が、
図13に示したように、矢印Aの方向に高速回転しているハンマーローターとしての粉砕ローター1に近づくように移動して、仮想円1sの円内に入った場合、フリーハンマー201の先端角部201aが被粉砕物9と衝突して被粉砕物9の衝突部分が打ち砕かれ、あるいは削られて砕片化される。
【0059】
フリーハンマー201は最初の衝突の後、その反動で
図13に示したように矢印Bの方向に高速で跳ね返り回転軸202を中心として回転し、先端角部201bが下方向から被粉砕物9に衝突し、ここでもある程度の砕片化が行われる。
被粉砕物9は、回転する送りローラー2により適切な量ずつ粉砕ローター1としてのハンマーローターに近づいた場合、高速回転するフリーハンマー201と次々に接触することで砕片化されていく。
【0060】
なお、フリーハンマー201の先端角部201bには、先端角部201aと比べて作用時の衝突エネルギーが小さいので、先端角部201bの摩耗が遅い。本実施形態では、粉砕ローター1は、先端角部201aの磨滅により粉砕能力が落ちた場合など、フリーハンマー201を反転して粉砕ローター1の本体部1aに取付けることにより、先端角部201bを使用することができるように構成されている。
【0061】
また、小石や木廃材のクギなどが粉砕部に侵入しても、自由に回転するフリーハンマー201で破砕できない物体に衝突した場合、フリーハンマー201が回転して逃げるため、刃先への致命的なダメージを回避することができる。
フリーハンマー201を採用した粉砕ローター1は、ナイフローターと比較して、ある程度の異物混入を許容でき、刃先の寿命が比較的長い。
【0062】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100は、樹木等の被粉砕物9を粉砕する樹木粉砕機100であって、エンジンなどの動力源110と、被粉砕物9を投入する投入口8aと、投入口8aから投入された被粉砕物9を粉砕する、動力源110の動力により回転駆動される粉砕ローター1を備えた粉砕室(ローター室30)と、粉砕ローター1の下側に設けられ、該粉砕ローター1で粉砕されたチップのうち規定の大きさ以下のチップを通過させる複数の孔部を備えたスクリーン4と、粉砕室(ローター室30の下部に設けられ、スクリーン4を通過したチップが流入するブロアケーシング10と、ブロアケーシング10から上方に向かって延出し、スクリーン4の位置よりも高い位置に排出口7を備える排出筒部6と、ブロアケーシング10内に設けられ、スクリーン4を通過したチップを排出筒部6を介して排出させる気流を発生する、動力源110の動力で回転駆動するブロア羽5と、を有する。このスクリーン4は、ブロアケーシング10内で、粉砕室(ローター室30)の下部の粉砕機本体部17に着脱自在に取り付けられている。
すなわち、簡単な構造で、被粉砕物9を容易に粉砕することができ、粉砕されたチップを遠方へ吹き飛すことやチップの回収を容易に行うことができる、高い作業効率の樹木粉砕機100を提供することができる。
また、スクリーン4のメンテナンスや交換などが容易な樹木粉砕機100を提供することができる。
【0063】
また、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100において、ブロアケーシング10は筒内部がチップの流路となる筒形状に形成されている。スクリーン4を配置した側に対して反対側に開口部を備える固定ケーシング10aと、ブロア羽を収容するとともに、排出筒部6に連通接続された可動ケーシング10bと、を有し、可動ケーシング10bは、固定ケーシングに10aに支持軸(ブロア支持軸A)を支点として、固定ケーシング10aの開口部10pに対して開閉自在に設けられている。
スクリーン4は、固定ケーシング10aの開口部10p内に配置されている。操作者(ユーザ)は、この固定ケーシング10aの開口部10pから、樹木粉砕機100の本体部17に、スクリーン4を容易に着脱することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100は、粉砕室(ローター室30)には、エンジンなどの動力源110の動力により回転駆動される、回転刃3(粉砕刃)付きの粉砕ローター1と固定刃12を有する。このため、回転刃3(粉砕刃)付きの粉砕ローター1と固定刃12により樹木などの被粉砕物9を容易に粉砕することができる。
樹木粉砕機100は、動力源110の動力により回転駆動される複数のハンマー付きの粉砕ローター1(不図示)を備えてもよい。こうすることで、複数のハンマーにより樹木などの被粉砕物9を容易に粉砕することができる。
【0065】
また、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100は、上述したように、スクリーン4が粉砕ローターの回転下面から回転方向に沿って回転側面まで延びた形状であり円弧状の湾曲面を有し、円弧状の湾曲面が、粉砕ローター1に対して略同心状に配置されている。
スクリーン4と粉砕ローター1との間の間隔は、回転下面から回転方向に沿って回転側面に近づくほど、短くなるように構成されている。このため、簡単な構造で、被粉砕物9を細かいチップに容易に粉砕することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る樹木粉砕機100は、排出筒部6に排出口7にチップの排出方向を調整自在な排出方向調整部を備えている。この排出方向調整部は、詳細には、排出筒部6の固定筒部上に可動筒部が水平方向に回転自在に設けられ、排出筒部6の可動筒部の上部に垂線に対して略90°程度屈曲した屈曲部を有している。
このように、高速回転するブロア羽により生成されたエアブローにより、排出筒部内を移動するチップを、排出筒部6の可動筒部に形成された排出方向調整部により規定された方向に容易に排出することができる。
【0067】
また、本発明の実施形態に係る樹木粉砕機100は、樹木粉砕機100の本体部17の粉砕室の下部に設けられた被取付部としての孔部17pを有し、スクリーン4は、被取付部としての孔部17bに、バネなどの付勢部材41により付勢されたピン状の固定部材(ピン4C、4D)により着脱自在に取り付けられた構造を有する。
このため、簡単な構造で、スクリーン4を樹木粉砕機100の本体部17(被取付部である孔部17b)に、容易に着脱自在に取り付けることができる樹木粉砕機100を提供することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【0069】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
樹木等の被粉砕物を粉砕する樹木粉砕機であって、
動力源と、
前記被粉砕物を投入する投入口と、
前記投入口から投入された前記被粉砕物を粉砕する、前記動力源の動力により回転駆動される粉砕ローターを備えた粉砕室と、
前記粉砕ローターの下側に設けられ、該粉砕ローターで粉砕されたチップのうち規定の大きさ以下のチップを通過させる複数の孔部を備えたスクリーンと、
前記粉砕室の下部に設けられ、前記スクリーンを通過したチップが流入するブロアケーシングと、
前記ブロアケーシングから上方に向かって延出し、前記スクリーンの位置よりも高い位置に排出口を備える排出筒部と、
前記ブロアケーシング内に設けられ、前記スクリーンを通過したチップを前記排出筒部を介して排出させる気流を発生する、前記動力源の動力で回転駆動するブロア羽と、を有し、
前記スクリーンは、前記ブロアケーシング内で、前記粉砕室の下部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする樹木粉砕機。
(付記2)
前記ブロアケーシングは、粉砕機本体部に固定され、前記スクリーンから流入するチップの下流側に開口部を備える筒形状の固定ケーシングと、
前記固定ケーシングに設けられた支持軸を回転中心として、前記固定ケーシングの前記開口部に対して開閉自在に設けられた可動ケーシングと、を有し、
前記可動ケーシングは、前記チップの下流側に前記排出筒部を連通接続するとともに、内部にブロア羽を収容することを特徴とする付記1に記載の樹木粉砕機。
(付記3)
前記スクリーンは、前記粉砕ローターの回転下面から回転方向に沿って回転側面まで、該粉砕ローターと略同心状に円弧状の湾曲面を備え、該湾曲面に前記複数の孔部が形成されていることを特徴とする付記1または付記2に記載の樹木粉砕機。
(付記4)
前記粉砕室には、前記動力源の動力により回転駆動される粉砕刃付きの前記粉砕ローターと固定刃、または、前記動力源の動力により回転駆動される複数のハンマー付きの前記粉砕ローターが備えられていることを特徴とする付記1から付記3のいずれかに記載の樹木粉砕機。
(付記5)
前記排出筒部は、排出口にチップの排出方向を調整自在な排出方向調整部を備えていることを特徴とする付記1から付記4のいずれかに記載の樹木粉砕機。
(付記6)
前記粉砕室の下部に設けられた被取付部を有し、
前記スクリーンは、前記被取付部に、バネにより付勢されたピン状の固定部材により着脱自在に取り付けられることを特徴とする付記1から付記5のいずれかに記載の樹木粉砕機。
(付記7)
前記支持軸は、前記開口部の上部付近に設けられ、
前記可動ケーシングが、前記開口部の上部付近に設けられた前記支持軸を支点として、上方に移動した場合、前記開口部を開状態となるように構成されていることを特徴とする付記2から付記6のいずれかに記載の樹木粉砕機。
(付記8)
前記固定ケーシングの前記開口部が開状態の場合、前記スクリーンのピン状の固定部材が露出した状態で、該スクリーンを交換可能となるように構成されていることを特徴とする付記2から付記7のいずれかに記載の樹木粉砕機。
(付記9)
前記固定ケーシングを接続固定した、前記樹木粉砕機の本体部の粉砕室に、回転自在に支持された前記粉砕ローターの回転軸と、
前記可動ケーシングに、回転自在に支持された前記ブロア羽の回転軸と、を有し、
前記粉砕ローターの回転軸と、前記ブロア羽の回転軸とが、互いに平行となるように配置され、
前記粉砕ローターの回転軸に設けられた第1のプーリーと、
前記ブロア羽の回転軸に設けられた第2のプーリーと、
前記第1のプーリーと第2のプーリーとの間に巻き掛けられたベルトと、を有し、
前記固定ケーシングの開口部が開状態となる位置に、前記可動ケーシングが位置する場合、前記第1のプーリーと第2のプーリーとの間の前記ベルトを押圧して、前記ベルトの脱落を規制する、前記本体部に設けられた脱落規制部を有することを特徴とする付記2から付記8のいずれかに記載の樹木粉砕機。
(付記10)
本体部の下部に設けられ、前記動力源の動力により走行可能な走行部を有する付記1から付記9のいずれかに記載の樹木粉砕機。