特許第6091194号(P6091194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091194宇宙用ループ形ヒートパイプおよび宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091194
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】宇宙用ループ形ヒートパイプおよび宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20170227BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20170227BHJP
   B64G 1/50 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F28D15/04 J
   F28D15/02 E
   F28D15/04 H
   F28D15/02 L
   B64G1/50 B
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-266895(P2012-266895)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-114963(P2014-114963A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100099461
【弁理士】
【氏名又は名称】溝井 章司
(72)【発明者】
【氏名】野村 武秀
(72)【発明者】
【氏名】北尾 知之
(72)【発明者】
【氏名】石川 博章
(72)【発明者】
【氏名】金森 康郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 篤
(72)【発明者】
【氏名】杉田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】川崎 春夫
(72)【発明者】
【氏名】畠中 龍太
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−146471(JP,A)
【文献】 特開2012−037098(JP,A)
【文献】 特開昭48−084337(JP,A)
【文献】 実開昭64−001342(JP,U)
【文献】 実開昭60−056507(JP,U)
【文献】 実開昭59−124875(JP,U)
【文献】 特開2009−041825(JP,A)
【文献】 特開2005−315086(JP,A)
【文献】 特開平04−039448(JP,A)
【文献】 特開昭50−145358(JP,A)
【文献】 特開平02−166391(JP,A)
【文献】 特開平02−157596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
B64G 1/50
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器と前記蒸発器に挿入されて前記蒸発器の内部に液体を流入させる挿入管と前記蒸発器に連結される蒸気管とを備える宇宙用ループ形ヒートパイプにおいて、
前記蒸発器は、
前記挿入管の周囲に周状に並べて設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する複数の第二のウイックと、
前記複数の第二のウイックの周囲に設けられて前記複数の第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記複数の第二のウイックとの間に設けられ、前記複数の第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる押し当て部品と
を備えることを特徴とする宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項2】
前記押し当て部品は、
前記挿入管を挿入する挿入穴を有して前記挿入管に取り付けられる胴部と、
前記複数の第二のウイックに接して前記複数の第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる脚部とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項3】
前記押し当て部品は前記胴部に周状に並べて配置した複数の前記脚部を備えることを特徴とする請求項2記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項4】
前記宇宙用ループ形ヒートパイプは前記挿入管に間隔を空けて取り付ける複数の前記押し当て部品を備えることを特徴とする請求項1から請求項3いずれかに記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項5】
前記押し当て部品がぜんまいばね又はコイルバネであることを特徴とする請求項1記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項6】
前記押し当て部品が筒状の部品であることを特徴とする請求項1記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項7】
前記宇宙用ループ形ヒートパイプは、
前記挿入管と前記押し当て部品との間に設けられ、前記押し当て部品を前記複数の第二のウイックに押し当てる補助部品を備える
ことを特徴とする請求項6記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項8】
前記補助部品は、
前記挿入管が挿入される挿入孔を有して前記挿入管に取り付けられる胴部と、
前記押し当て部品に接して前記押し当て部品を前記複数の第二のウイックに押し当てる脚部とを備える
ことを特徴とする請求項7記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項9】
前記補助部品がコイルバネ又はぜんまいばねであることを特徴とする請求項7記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項10】
液体を流入させる挿入管が挿入され、蒸気管が接続され、宇宙用ループ形ヒートパイプに用いられる宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器であって、
前記挿入管の周囲に周状に並べて設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する複数の第二のウイックと、
前記複数の第二のウイックの周囲に設けられて前記複数の第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記複数の第二のウイックとの間に設けられ、前記複数の第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる押し当て部品とを備える
ことを特徴とする宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器。
【請求項11】
蒸発器と前記蒸発器に挿入されて前記蒸発器の内部に液体を流入させる挿入管と前記蒸発器に連結される蒸気管とを備える宇宙用ループ形ヒートパイプにおいて、
前記蒸発器は、
前記挿入管の周囲に設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する第二のウイックと、
前記第二のウイックの周囲に設けられて前記第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記第二のウイックとの間に設けられ、前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる押し当て部品とを備え、
前記第二のウイックが金属製のフェルトまたは金属繊維シートであり、
前記押し当て部品が筒状の金網である
ことを特徴とする宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項12】
前記宇宙用ループ形ヒートパイプは前記挿入管に間隔を空けて取り付ける複数の前記押し当て部品を備えることを特徴とする請求項11記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項13】
前記宇宙用ループ形ヒートパイプは、
前記挿入管と前記押し当て部品との間に設けられ、前記押し当て部品を前記第二のウイックに押し当てる補助部品を備える
ことを特徴とする請求項11記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項14】
前記補助部品は、
前記挿入管が挿入される挿入孔を有して前記挿入管に取り付けられる胴部と、
前記押し当て部品に接して前記押し当て部品を前記第二のウイックに押し当てる脚部とを備える
ことを特徴とする請求項13記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項15】
前記補助部品がコイルバネ又はぜんまいばねであることを特徴とする請求項13記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項16】
液体を流入させる挿入管が挿入され、蒸気管が接続され、宇宙用ループ形ヒートパイプに用いられる宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器であって、
前記挿入管の周囲に設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する第二のウイックと、
前記第二のウイックの周囲に設けられて前記第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記第二のウイックとの間に設けられ、前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる押し当て部品とを備え
前記第二のウイックが金属製のフェルトまたは金属繊維シートであり、
前記押し当て部品が筒状の金網である
ことを特徴とする宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器。
【請求項17】
蒸発器と前記蒸発器に挿入されて前記蒸発器の内部に液体を流入させる挿入管と前記蒸発器に連結される蒸気管とを備える宇宙用ループ形ヒートパイプにおいて、
前記蒸発器は、
前記挿入管の周囲に設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する第二のウイックと、
前記第二のウイックの周囲に設けられて前記第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記第二のウイックとの間に設けられ、前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる押し当て部品とを備え、
前記押し当て部品は、
前記挿入管を挿入する挿入穴を有して前記挿入管に取り付けられる胴部と、
前記第二のウイックに接して前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる脚部とを備える
ことを特徴とする宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項18】
前記押し当て部品は前記胴部に周状に並べて配置した複数の前記脚部を備えることを特徴とする請求項17記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項19】
前記宇宙用ループ形ヒートパイプは前記挿入管に間隔を空けて取り付ける複数の前記押し当て部品を備えることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項20】
蒸発器と前記蒸発器に挿入されて前記蒸発器の内部に液体を流入させる挿入管と前記蒸発器に連結される蒸気管とを備える宇宙用ループ形ヒートパイプにおいて、
前記蒸発器は、
前記挿入管の周囲に設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する第二のウイックと、
前記第二のウイックの周囲に設けられて前記第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記第二のウイックとの間に設けられ、前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる部品であって筒状の部品である押し当て部品と
記挿入管と前記押し当て部品との間に設けられ、前記押し当て部品を前記第二のウイックに押し当てる補助部品とを備え、
前記補助部品は、
前記挿入管が挿入される挿入孔を有して前記挿入管に取り付けられる胴部と、
前記押し当て部品に接して前記押し当て部品を前記第二のウイックに押し当てる脚部とを備える
ことを特徴とする宇宙用ループ形ヒートパイプ。
【請求項21】
液体を流入させる挿入管が挿入され、蒸気管が接続され、宇宙用ループ形ヒートパイプに用いられる宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器であって、
前記挿入管の周囲に設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する第二のウイックと、
前記第二のウイックの周囲に設けられて前記第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記第二のウイックとの間に設けられ、前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる押し当て部品とを備え
前記押し当て部品は、
前記挿入管を挿入する挿入穴を有して前記挿入管に取り付けられる胴部と、
前記第二のウイックに接して前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる脚部とを備える
ことを特徴とする宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器。
【請求項22】
液体を流入させる挿入管が挿入され、蒸気管が接続され、宇宙用ループ形ヒートパイプに用いられる宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器であって、
前記挿入管の周囲に設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する第二のウイックと、
前記第二のウイックの周囲に設けられて前記第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記第二のウイックとの間に設けられ、前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる部品であって筒状の部品である押し当て部品と
前記挿入管と前記押し当て部品との間に設けられ、前記押し当て部品を前記第二のウイックに押し当てる補助部品とを備え、
前記補助部品は、
前記挿入管が挿入される挿入孔を有して前記挿入管に取り付けられる胴部と、
前記押し当て部品に接して前記押し当て部品を前記第二のウイックに押し当てる脚部とを備える
ことを特徴とする宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱機器の冷却等に用いる宇宙用ループ形ヒートパイプおよび宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
宇宙用のループ形ヒートパイプは、内部に封入した作動液の潜熱を利用して熱輸送を行うシステム(装置)である。
ループ形ヒートパイプの蒸発器は、発熱源に設置される蒸発器本体と、この蒸発器本体に内蔵され高い毛細管力により作動液を蒸発器内部から外周方向へ輸送する第一のウイックと、凝縮器で凝縮した作動液を蒸発器内部に還流させるためのベイオネット管と、余分な作動液を貯蔵して安定した動作を実現するためのリザーバとからなる。
【0003】
通常、ループ形ヒートパイプの熱輸送能力には限界があり、限界を超える熱入力が行われた場合に蒸発器内のウイックから作動液が全て蒸発して「ドライアウト」と呼ばれる動作停止状態に陥る。
このドライアウトの原因の一因として、第一のウイックには高い毛細管力を有する反面、圧力損失が大きいという特徴があるため第一のウイックの軸方向に液を輸送することが難しく、作動液を第一のウイックに十分に供給できない、という点が挙げられる。
そこで、液浸透率の高い第二のウイックを用いて軸方向への液輸送を行うことにより、第一のウイックに作動液を十分に行き渡らせるようにする場合がある。
【0004】
特許文献1は、第二のウイックとして二枚の厚手の網状体による板形状体を有した金網を用いて作動液を第一のウイックに供給するループ形ヒートパイプ用蒸発器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−106313号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ループ形ヒートパイプにおいて安定した動作を実現するためには、ウイックのドライアウトを防ぎ、作動液を第一のウイックに十分に供給する必要がある。
ゆえに、ドライアウトを防ぐために用いられる第二のウイックを第一のウイックに対して適切な面圧で接触させて第一のウイックに作動液を十分に供給できるようにすることが好ましい。
【0007】
本発明は、例えば、第二のウイックを第一のウイックに押し当てることによって第一のウイックに作動液を十分に供給できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器は、液体を流入させる挿入管が挿入され、蒸気管が接続され、宇宙用ループ形ヒートパイプに用いられる。
前記宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器は、
前記挿入管の周囲に設けられて前記挿入管から流入した液体が浸透する第二のウイックと、
前記第二のウイックの周囲に設けられて前記第二のウイックに浸透した液体が浸透し、浸透した液体を周囲の熱によって蒸発させて前記蒸気管へ流入させる第一のウイックと、
前記挿入管と前記第二のウイックとの間に設けられ、前記第二のウイックを前記第一のウイックに押し当てる押し当て部品とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、第二のウイックを第一のウイックに押し当てることによって第一のウイックに作動液を十分に供給できるようにすることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1におけるループ形ヒートパイプ20の構成図。
図2】実施の形態1における蒸発器1のA−A断面図。
図3】実施の形態1における蒸発器1の別例を示すA−A断面図。
図4】実施の形態1における蒸発器1の別例を示すA−A断面図。
図5】実施の形態1における蒸発器1の別例を示すA−A断面図。
図6】実施の形態2における蒸発器1の構成図。
図7】実施の形態2における蒸発器1のB−B断面図。
図8】実施の形態2において1つのぜんまいばね10を用いた蒸発器1を示す図。
図9】実施の形態2においてぜんまいばね10の代わりにコイルバネ12を用いた蒸発器1を示す図。
図10】実施の形態2においてぜんまいばね10の代わりにコイルバネ12を用いた蒸発器1を示す図。
図11】実施の形態3における蒸発器1の構成図。
図12】実施の形態3における蒸発器1のC−C断面図。
図13】実施の形態3における蒸発器1の別例を示すC−C断面図。
図14】実施の形態4(実施例1)における蒸発器1の構成図。
図15】実施の形態4(実施例1)における蒸発器1のD−D断面図。
図16】実施の形態4(実施例2)における蒸発器1の構成図。
図17】実施の形態4(実施例2)における蒸発器1のE−E断面図。
図18】実施の形態4(実施例2)における蒸発器1の構成の別例を示す図。
図19】実施の形態4(実施例2)においてコイルバネ12の代わりにぜんまいばね10を用いた蒸発器1を示す図。
図20】実施の形態4(実施例2)においてコイルバネ12の代わりにぜんまいばね10を用いた蒸発器1を示す図。
図21】実施の形態4(実施例2)においてコイルバネ12の代わりにぜんまいばね10を用いた蒸発器1を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
第二のウイックを第一のウイックに押し当てるステイを設けたループ形ヒートパイプおよび蒸発器の形態について説明する。
【0012】
図1は、実施の形態1におけるループ形ヒートパイプ20の構成図である。
図2は、実施の形態1における蒸発器1のA−A断面図であり、図1のA−A断面を表している。
実施の形態1におけるループ形ヒートパイプ20(宇宙用ループ形ヒートパイプの一例)および蒸発器1(宇宙用ループ形ヒートパイプ用蒸発器の一例)の構成について、図1、2に基づいて説明する。
【0013】
ループ形ヒートパイプ20は、内部に封入した作動液(液状の作動流体)の潜熱を利用する熱輸送システムである。作動液はループ形ヒートパイプ20内で蒸発と凝縮とを繰り返す。
つまり、ループ形ヒートパイプ20は、流体を媒体にして熱を輸送して放熱を行う装置であり、高密度発熱機器等に適用される。
【0014】
図1において、ループ形ヒートパイプ20内の一点鎖線の矢印は作動液の流れを表し、蒸発器1の外部から蒸発器1に向けられた太い矢印は蒸発器1に与えられる熱を表している。
【0015】
ループ形ヒートパイプ20は、蒸発器1とリザーバ9と凝縮器6とを備える。さらに、ループ形ヒートパイプ20は、蒸気管5と液管7とベイオネット管8(挿入管の一例)とを備える。例えば、蒸発器1は発熱源の電子機器に取り付け、凝縮器6は周囲環境に放熱するために機器表面に配置する。
【0016】
蒸発器1には余った作動液を溜めるリザーバ9を連結する。また、蒸発器1に空けた孔に蒸気管5を取り付ける。
蒸気管5は凝縮器6内の配管の入り口側に連結し、凝縮器6内の配管の出口側には液管7を連結する。さらに、液管7にベイオネット管8を連結する。
そして、ベイオネット管8はリザーバ9と蒸発器1とに挿入する。
【0017】
このように、蒸発器1とリザーバ9と各管は、作動液を流動させるためにループを形成している。
【0018】
蒸発器1は吸熱部分であり、蒸発器1の筐体は冷却対象である発熱体に取り付けられる。
蒸発器1の筐体は円筒状を成し、蒸発器1は筐体内に第一のウイック2と第二のウイック3との二層のウイックと、第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる複数のステイ4(押し当て部品の一例)とを備える。
【0019】
第一のウイック2は、蒸発器1の筐体の内径と同程度の外径を有する管状(筒状)の多孔質体である。
第一のウイック2は蒸発器1の筐体内に取り付け、第一のウイック2の外面は蒸発器1の筐体の内面に接する。
第一のウイック2の内側(第一のウイック2の中心を通る軸穴17)には第二のウイック3を設ける。
【0020】
第一のウイック2は気孔径が非常に小さい多孔質体であり、第一のウイック2の気孔径は第二のウイック3の気孔径に比べて小さい。例えば、第一のウイック2は、ニッケル、ステンレス、チタンなどの金属繊維または金属粉を焼結して製造される。
気孔径が非常に小さい第一のウイック2は高い毛細管力を有するため、作動液を内側から外側(第二のウイック3側から蒸発器1の筐体の内面側)へ流動させる。つまり、第一のウイック2は作動液を外周方向へ輸送する。
【0021】
第一のウイック2は、内周側と外周側とのそれぞれに周状に均等な間隔で配置した複数の溝を有する。第一のウイック2の各溝は第一のウイック2内で作動液が蒸発して発生した蒸気を流す蒸気の通り道であり、蒸気が局所的に溜まることを防ぐ。
以下、内周側の溝を「内溝15」といい、外周側の溝を「外溝16」という。内溝15は第二のウイック3と第一のウイック2との界面で発生した蒸気を逃がすための溝であり、外溝16は第一のウイック2と蒸発器1の筐体との界面で発生した蒸気を逃がすための溝である。第一のウイック2に内溝15を設ける代わりに第二のウイック3の外周側に溝を設けても構わない。
【0022】
第二のウイック3は、第一のウイック2の内径と同程度の外径を有する管状(筒状)の多孔質体である。
第二のウイック3は第一のウイック2の軸穴17に取り付け、第二のウイック3の外面は第一のウイック2の内面に接する。
第二のウイック3の内側(第二のウイック3の中心を通る軸穴17)にはベイオネット管8を挿入し、ベイオネット管8には第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てるための複数のステイ4を取り付ける。
【0023】
第二のウイック3は気孔径が比較的大きい多孔質体であり、第二のウイック3の気孔径は第一のウイック2の気孔径に比べて大きい。例えば、第二のウイック3として金属製のフェルト、金属繊維シート、金網などを用いる。
気孔径が比較的大きい第二のウイック3は高い浸透率を有するため、作動液を軸穴17に沿った方向へ流動させる。つまり、第二のウイック3は作動液を軸方向へ輸送する。
【0024】
複数のステイ4は、第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる押し当て部品である。
ステイ4は、ベイオネット管8に取り付けられる胴部13と第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる複数の脚部14とを有する。ステイ4は丸椅子や三脚のような形状を成している。胴部13は丸椅子の座部や三脚の台部に相当し、脚部14は丸椅子や三脚の脚に相当する。
ステイ4の胴部13はベイオネット管8を挿入する挿入穴を有する。図2に示す胴部13の外形は四角柱であるが、胴部13の外形は三角柱や五角柱などの他の多角柱または円柱であっても構わない。
ステイ4の複数の脚部14は周状に均等な間隔で設ける。例えば、図2に示すように四角柱の胴部13が有する6面のうち挿入穴が無い4面それぞれに脚部14を設ける。脚部14は弾性体であり、外側に開く弾性力を有する。通常時のステイ4の脚部14間の幅(第二のウイック3の軸穴17に挿入する前の脚部14間の幅)は第二のウイック3の軸穴17の直径と同程度またはやや大きい。例えば、板ばねを脚部14として用いる。
【0025】
複数のステイ4は、胴部13の挿入穴にベイオネット管8を挿入してベイオネット管8に均等な間隔を空けて取り付けられる。複数のステイ4はベイオネット管8と共に第二のウイック3の軸穴17に挿入され、脚部14の外側に開く弾性力によって第二のウイック3を固定し、保持し、または押し広げ、第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる。
これにより、第二のウイック3の複数部分を均等な力で第一のウイック2に押し当て、第一のウイック2と第二のウイック3との間に適切な面圧を確保することができる。
但し、ステイ4の数は1つであっても構わない。例えば、脚部14が長い1つのステイ4を用いて第二のウイック3の全体を第一のウイック2に押し当てても構わない。
【0026】
蒸気管5は蒸発器1で作動液が蒸発して発生する蒸気(気体の作動流体)を輸送する管である。
凝縮器6は蒸気管5から流入する作動液の蒸気を冷却して液体(冷却された作動液、冷却液)へ凝縮させる装置である。例えば、凝縮器6は蒸気が持つ熱を外部(周囲環境等)に放熱して蒸気を冷却する。
液管7は凝縮器6によって凝縮された作動液が流れる管である。
ベイオネット管8は液管7から流入する作動液を蒸発器1内に流し入れる管である。
【0027】
リザーバ9は、第一のウイック2および第二のウイック3に許容量の作動液が浸透していて第一のウイック2または第二のウイック3に浸透できずに余ってしまった作動液を貯蔵する容器である。
リザーバ9に貯蔵された作動液は第一のウイック2または第二のウイック3に作動液を浸透する余裕ができたときに蒸発器1内へ流れ込む。例えば、第二のウイック3の一部がリザーバ9内に配置され、第二のウイック3の毛細管力によって作動液を蒸発器1内へ流し込む。または、リザーバ9の内面に蒸発器1に繋がる溝を備え、溝の毛細管力によって作動液を蒸発器1内へ流し込む。
つまり、蒸発器1には常に作動液が供給される。これにより、第一のウイック2および第二のウイック3のドライアウトを防いでループ形ヒートパイプ20の安定動作を実現することができる。
【0028】
次に、図1に基づいてループ形ヒートパイプ20の動作(作動液の流れ)について説明する。
作動液は、ベイオネット管8またはリザーバ9から蒸発器1内に流入する。
蒸発器1内に流入した作動液は、第二のウイック3に浸透し、第二のウイック3内を軸方向へ流動する。
第二のウイック3に浸透した作動液は、ステイ4によって適切な面圧で第二のウイック3に接する第一のウイック2へ浸透し、第一のウイック2内を内側から外側(半径方向、外周方向)へ流動する。
第一のウイック2に浸透した作動液は蒸発器1の外部からの加熱によって蒸発し、発生した作動液の蒸気は第一のウイック2の内溝15や外溝16(図2参照)から蒸気管5へ流入し、蒸気管5を通って凝縮器6内の配管に流入する。
凝縮器6内の配管に流入した蒸気は凝縮器6内で放熱して凝縮し、作動液に相変化する。
作動液は凝縮器6の配管から液管7へ流入し、液管7からベイオネット管8へ流入し、ベイオネット管8の先端から蒸発器1内に流入する。蒸発器1内で第二のウイック3および第一のウイック2に浸透できず余ってしまった作動液はリザーバ9に流れてリザーバ9内に溜められる。
作動液は以上のような流れによってループ形ヒートパイプ20内を循環する。
【0029】
次に、蒸発器1の別例、特に、蒸発器1が備える第二のウイック3およびステイ4の別例について説明する。
【0030】
図3図4および図5は、実施の形態1における蒸発器1の別例を示すA−A断面図であり、図1のA−A断面の別例を表している。
【0031】
図3から図5に示すように、弧状に曲げた複数枚のウイック(多孔質体)を第二のウイック3として蒸発器1内に設けてもよい。つまり、第一のウイック2の内面の一部と接する複数の第二のウイック3を用いてもよい。
ステイ4は、複数の第二のウイック3それぞれを第一のウイック2に押し当てる複数の脚部14を有する。
【0032】
例えば、第二のウイック3およびステイ4を以下のように構成するとよい。
(1)図3に示すように、2つに分割した第二のウイック3を対向する位置に設ける。ステイ4の胴部13の形状は四角柱であり、胴部13の対向する2つの面に脚部14を設けて2つの第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる。
(2)図4に示すように、3つに分割した第二のウイック3を周状に均等な間隔に並べて三方に配置する。ステイ4の胴部13の形状は三角柱であり、胴部13が有する5つの面のうち三角形を形成する3つの面に脚部14を設けて3つの第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる。(3)図5に示すように、4つに分割した第二のウイック3を周状に均等な間隔に並べて四方に配置する。ステイ4の胴部13の形状は四角柱であり、胴部13が有する6つの面のうち軸穴17が無い4つの面に脚部14を設けて4つの第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる。
(4)第二のウイック3を5つ以上に分割して設けても構わない。ステイ4の胴部13の形状は第二のウイック3の数に等しい多角柱(例えば、5つの第二のウイック3に対して五角柱)にするとよい。胴部13が有する複数の面のうち軸穴17が無い各面に脚部14を設ける。但し、胴部13の形状は円柱であってもよい。脚部14は円柱の胴部13に周状に均等な間隔に並べて第二のウイック3と同じ数だけ設ける。
【0033】
第二のウイック3を分割して複数設けることにより、複数の第二のウイック3の間に隙間ができる。これにより、第一のウイック2に内溝15(図2参照)を設けなくても、第一のウイック2で発生した蒸気を第二のウイック3間の隙間に流すことができる。
第一のウイック2に内溝15を設ける必要がなければ第一のウイック2の加工が容易になるため、加工コストを削減することができる。
但し、複数の第二のウイック3を設ける場合であっても、図2と同様に内溝15を設けても構わない。
【0034】
実施の形態1において、例えば、以下のようなループ形ヒートパイプ20について説明した。
【0035】
ループ形ヒートパイプ20は、蒸発器1と、蒸発器1に挿入されて蒸発器1の内部に液体を流入させるベイオネット管8(挿入管の一例)と、蒸発器1に連結される蒸気管5とを備える。
蒸発器1は、
ベイオネット管8の周囲に設けられてベイオネット管8から流入した液体が浸透する第二のウイック3と、
第二のウイック3の周囲に設けられて第二のウイック3に浸透した液体が浸透し、浸透した液体を蒸発器1の周囲の熱によって蒸発させて蒸気管5へ流入させる第一のウイック2と、
ベイオネット管8と第二のウイック3との間に設けられ、第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てるステイ4(押し当て部品の一例)とを備える。
【0036】
ステイ4は、
ベイオネット管8を挿入する挿入穴を有してベイオネット管8に取り付けられる胴部13と、
第二のウイック3に接して第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる脚部14とを備える。
【0037】
ステイ4は胴部13に周状に並べて配置した複数の脚部14を備える。
【0038】
ループ形ヒートパイプ20はベイオネット管8に間隔を空けて取り付ける複数のステイ4を備える。
【0039】
上記の構成により、例えば、第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てて第一のウイック2に作動液を十分に供給することができるという効果を奏する。
【0040】
また例えば、以下のようなループ形ヒートパイプ20について説明した。
ループ形ヒートパイプ20において、ドライアウトが起きて動作が停止することを防止するために第二のウイック3及びステイ4を用いる。
ステイ4は第一のウイック2と第二のウイック3との間の面圧を確保し、作動液の供給量を増やす効果がある。
また、ベイオネット管8から出た作動液がベイオネット管8を伝ってリザーバ9に直接貯蔵されてしまう恐れがあるが、ステイ4を用いることによってベイオネット管8を伝った作動液がベイオネット管8からステイ4へ伝って第二のウイック3に行き易くなる。
これらの効果によりドライアウトを防ぎ、ループ形ヒートパイプ20が安定して動作させることができる。
【0041】
実施の形態2.
ぜんまいばねを用いて第二のウイックを第一のウイックに押し当てるループ形ヒートパイプおよび蒸発器の形態について説明する。
以下、実施の形態1と異なる事項について主に説明する。説明を省略する事項については実施の形態1と同様である。
【0042】
図6は、実施の形態2における蒸発器1の構成図である。
図7は、実施の形態2における蒸発器1のB−B断面図であり、図6のB−B断面を表している。
実施の形態2における蒸発器1の構成について、図6、7に基づいて説明する。ループ形ヒートパイプの蒸発器1以外の構成およびループ形ヒートパイプの動作(作動液の流れ)は、実施の形態1(図1参照)と同じである。
【0043】
図6において、蒸発器1内の一点鎖線の矢印は作動液の流れを表し、蒸発器1の外部から蒸発器1に向けられた太い矢印は蒸発器1に与えられる熱を表している。
【0044】
蒸発器1は、実施の形態1で説明した複数のステイ4の代わりに複数のぜんまいばね10(押し当て部品の一例)を備える。
ぜんまいばね10は、弾性素材の板を渦巻き状に巻いたばねであり、「ぜんまい」または「渦巻きばね」ともいう。縮める前のぜんまいばね10の直径は第二のウイック3の軸穴17の直径と同じ程度または少し大きい。
【0045】
複数のぜんまいばね10は、中心の穴にベイオネット管8を挿入してベイオネット管8に均等な間隔を空けて取り付けられる。複数のぜんまいばね10はベイオネット管8と共に第二のウイック3の軸穴17に挿入され、外側に広がる弾性力によって第二のウイック3を固定し、保持し、または押し広げ、第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる。
これにより、第二のウイック3の複数部分を均等な力で第一のウイック2に押し当て、第一のウイック2と第二のウイック3との間に適切な面圧を確保することができる。
【0046】
ぜんまいばね10の全体にパンチングメタルのように複数の穴を設けてもよい。これにより、作動液や蒸気の通りが良くなり、ループ形ヒートパイプ20の能力の低下を防ぐことができる。
【0047】
図8は、実施の形態2において1つのぜんまいばね10を用いた蒸発器1を示す図である。
図8に示すように、ぜんまいばね10の数は1つであっても構わない。例えば、縦長の1つのぜんまいばね10を用いて第二のウイック3の全体を第一のウイック2に押し当てても構わない。
【0048】
図9図10は、実施の形態2においてぜんまいばね10の代わりにコイルバネ12を用いた蒸発器1を示す図である。
図9または図10に示すように、ぜんまいばね10の代わりに1つまたは複数のコイルバネ12を用いて第二のウイック3を第一のウイック2に押し当て、第二のウイック3と第一のウイック2との間に適切な面圧を確保しても構わない。
コイルバネ12はらせん状に巻かれたばねであり、「つる巻きばね」ともいう。コイルバネ12の直径は第二のウイック3の軸穴17の直径と同じ程度または少し大きい。
【0049】
ぜんまいばね10(またはコイルバネ12)は、実施の形態1で説明したステイ4(図2参照)よりも第二のウイック3との接触面積が大きく、かつ荷重が大きい。これにより、第二のウイック3を適切な面圧で第一のウイック2に押し当て第二のウイック3から第一のウイック2への液供給量を増加させることができる。
通常、液浸透率を大きくするために第二のウイック3として金属フェルト等が用いられる。そのため、第二のウイック3との接触面積が小さい場合、応力集中が起きてしまい第二のウイック3の液浸透率が変化してしまう可能性がある。
つまり、第二のウイック3との接触面積が大きいぜんまいばね10(またはコイルバネ12)を用いることにより、第二のウイック3に対する応力集中を防いで第二のウイック3の液浸透率を保つことができる。また、第一のウイック2と第二のウイック3との間に適切な面圧を確保することができる。
【0050】
実施の形態3.
筒状の部品を用いて第二のウイックを第一のウイックに押し当てるループ形ヒートパイプおよび蒸発器の形態について説明する。
以下、実施の形態1と異なる事項について主に説明する。説明を省略する事項については実施の形態1と同様である。
【0051】
図11は、実施の形態3における蒸発器1の構成図である。
図12は、実施の形態3における蒸発器1のC−C断面図であり、図11のC−C断面を表している。
実施の形態3における蒸発器1の構成について、図11、12に基づいて説明する。ループ形ヒートパイプの蒸発器1以外の構成およびループ形ヒートパイプの動作(作動液の流れ)は、実施の形態1(図1参照)と同じである。
【0052】
図11、12において蒸発器1内の一点鎖線の矢印は作動液の流れを表し、図11において蒸発器1の外部から蒸発器1に向けられた太い矢印は蒸発器1に与えられる熱を表している。
【0053】
ループ形ヒートパイプ20の蒸発器1は、実施の形態1で説明した複数のステイ4の代わりに弾性を有する筒状の金網11(押し当て部品の一例)を備える。金網11の代わりに金属製以外の筒状の部品を用いても構わない。筒状の部品は複数の穴が空いた網目状のものが好ましい。但し、筒状の部品に穴が空いていなくても構わない。
【0054】
金網11は第一のウイック2の軸穴17に挿入され、外側に広がる弾性力によって第二のウイック3を固定し、保持し、または押し広げ、第二のウイック3を第一のウイック2に押し当てる。
これにより、第二のウイック3の全体を均等な力で第一のウイック2に押し当て、第一のウイック2と第二のウイック3との間に適切な面圧を確保することができる。
但し、丈が短い複数の金網11を均等な間隔で第二のウイック3の軸穴17に並べて第二のウイック3の複数部分を固定し、保持し、または押し広げても構わない。
【0055】
金網11は、実施の形態1で説明したステイ4(図15参照)よりも第二のウイック3との接触面積が大きく第二のウイック3の全周にわたって接するため、加重を分散させることができる。そのため、第二のウイック3に対して応力集中が起きず、第二のウイック3の液浸透率を変化させずに保つことができる。
【0056】
開孔率が高い金網11を用いることにより、金網11が第二のウイック3の内面の全周を覆っても作動液や蒸気が金網11を通過し易いため、ループ形ヒートパイプの能力低下を防ぐことができる(図12参照)。
【0057】
図13は、実施の形態3における蒸発器1の別例を示すC−C断面図であり、図11のC−C断面の別例を表している。
実施の形態1(図3から5参照)で説明したように、第二のウイック3を分割することによって蒸気の通り道を確保し、第一のウイック2に内溝を設ける必要がないようにしてもよい。これにより、第一のウイック2の加工コストを削減することができる。
【0058】
実施の形態4.
第二のウイックの軸穴に挿入した金網を固定し、保持し、または押し広げる補助部品を設けたループ形ヒートパイプおよび蒸発器の形態について説明する。
以下、実施の形態1から3と異なる事項について主に説明する。説明を省略する事項については実施の形態1から3と同様である。
【0059】
<実施例1>
図14は、実施の形態4(実施例1)における蒸発器1の構成図である。
図15は、実施の形態4(実施例1)における蒸発器1のD−D断面図であり、図14のD−D断面を表している。
実施の形態4(実施例1)における蒸発器1の構成について、図14、15に基づいて説明する。ループ形ヒートパイプの蒸発器1以外の構成およびループ形ヒートパイプの動作(作動液の流れ)は、実施の形態1(図1参照)と同じである。
【0060】
図14において蒸発器1内の一点鎖線の矢印は作動液の流れを表し、蒸発器1の外部から蒸発器1に向けられた太い矢印は蒸発器1に与えられる熱を表している。
【0061】
ループ形ヒートパイプの蒸発器1は、実施の形態3(図11、12参照)の構成に加えて実施の形態1で説明した複数のステイ4(補助部品の一例)(図1から5参照)を備える。
【0062】
複数のステイ4は金網11の軸穴17に均等な間隔に並べて挿入され、金網11を固定し、保持し、または押し広げる。
但し、1つのステイ4(例えば、脚部14が長いステイ4)を金網11の軸穴17に挿入してもよい。
ステイ4の胴部13の形状は四角柱以外の多角柱または円柱であっても構わない。また、ステイ4の脚部14の数は4つではなく3つ以下または5つ以上であっても構わない。
【0063】
金網11とステイ4とを併用することにより、例えば、以下のような効果を奏する。
(1)ステイ4を挿入する際に第二のウイック3を引っ掻いて傷つけてしまうことが無くなる。つまり、第二のウイック3の内側に金網11を設けたため、ステイ4を第二のウイック3の軸穴17にスムーズに挿入し易くなる。
(2)第二のウイック3に対するステイ4の加重を金網11が分散することによって、第二のウイック3に対する応力集中を防いで第二のウイック3の液浸透率を保つことができる。
(3)ステイ4の弾性力と金網11の弾性力とによって第一のウイック2と第二のウイック3との面圧を十分に確保することができる。これにより、第二のウイック3から第一のウイック2へ十分に作動液を供給し、第一のウイック2のドライアウトを防ぐ効果を奏する。
【0064】
<実施例2>
図16は、実施の形態4(実施例2)における蒸発器1の構成図である。
図17は、実施の形態4(実施例2)における蒸発器1のE−E断面図であり、図17のE−E断面を表している。
実施の形態4(実施例2)における蒸発器1の構成について、図16、17に基づいて説明する。ループ形ヒートパイプの蒸発器1以外の構成およびループ形ヒートパイプの動作(作動液の流れ)は、実施の形態1(図1参照)と同じである。
【0065】
図16において蒸発器1内の一点鎖線の矢印は作動液の流れを表し、蒸発器1の外部から蒸発器1に向けられた太い矢印は蒸発器1に与えられる熱を表している。
【0066】
ループ形ヒートパイプの蒸発器1は、実施の形態3(図11、12参照)の構成に加えてコイルバネ12(補助部品の一例)を備える。
コイルバネ12はらせん状に巻かれたばねであり、「つる巻きばね」ともいう。
コイルバネ12は金網11の軸穴17に挿入され、金網11を固定し、保持し、または押し広げる。
【0067】
図18は、実施の形態4(実施例2)における蒸発器1の構成の別例を示す図である。
図18に示すように、短い複数のコイルバネ12を金網11の軸穴17に均等な間隔で並べても構わない。
【0068】
図19図20および図21は、実施の形態4(実施例2)においてコイルバネ12の代わりにぜんまいばね10を用いた蒸発器1を示す図である。図21は、図19または図20のF−F断面を表している。
図19から図21に示すように、コイルバネ12の代わりに1つまたは複数のぜんまいばね10を用いても構わない。ぜんまいばね10は、弾性素材の板を渦巻き状に巻いたばねであり、「ぜんまい」または「渦巻きばね」ともいう。ぜんまいばね10の全体に複数の穴を設けるとよい。
【0069】
金網11とコイルバネ12(またはぜんまいばね10)とを併用することにより、実施例1のステイ4よりも金網11との接触面積が広くなるため金網11と第二のウイック3との面圧が分散し、第二のウイック3と第一のウイック2との面圧を十分に確保することができる。これにより、第二のウイック3から第一のウイック2へ十分に作動液を供給し、第一のウイック2のドライアウトを防ぐ効果を奏する。
【0070】
各実施の形態において、例えば、以下のようなループ形ヒートパイプ20および蒸発器1について説明した。
【0071】
ループ形ヒートパイプ20は、余分な作動液を貯蔵して円滑な動作を実現するためのリザーバ9と、高い毛細管力を有して外周方向へ液を輸送する第一のウイック2と、液浸透率が高くて軸方向の液輸送が容易な第二のウイック3とを備える。
【0072】
(1)第二のウイック3を固定し、また第一のウイック2と第二のウイック3との適切な面圧を確保するためにステイ4を用いる(実施の形態1)。ステイ4は第一のウイック2と第二のウイック3との間の面圧を確保し、第一のウイック2へ作動液の供給量を増やす効果がある。さらに、ベイオネット管8から出た作動液がステイ4を通じて第二のウイック3に行き易くなるため、作動液の供給量を増やす効果もある。かかる効果によりドライアウトを防ぐことができる。
(2)ステイ4の代わりにぜんまいばね10(実施の形態2)又は金網11(実施の形態3)を用いることもできる。ぜんまいばね10又は金網11を用いることにより、第二のウイック3への加重を分散させることができる。それゆえ、第二のウイック3に対する応力集中を防ぎ、第二のウイック3の液浸透率の悪化を防止する効果が期待できる。
(3)ステイ4、コイルバネ12又はぜんまいばね10に加えて金網11を用いる(実施の形態4)。予め、第二のウイック3の内側に金網11を設けた上で、ステイ4、コイルバネ12又はぜんまいばね10を挿入すればスムーズに挿入することができ、なおかつ金網11によりステイ4、コイルバネ12又はぜんまいばね10の加重を分散する効果も期待できる。さらに、金網11の開く力も加わり、第一のウイック2と第二のウイック3との面圧を十分に確保して効果的にドライアウトを抑制できる。
【符号の説明】
【0073】
1 蒸発器、2 第一のウイック、3 第二のウイック、4 ステイ、5 蒸気管、6 凝縮器、7 液管、8 ベイオネット管、9 リザーバ、10 ぜんまいばね、11 金網、12 コイルバネ、13 胴部、14 脚部、15 内溝、16 外溝、17 軸穴、20 ループ形ヒートパイプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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