(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091207
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】アクチュエータ、アクチュエータシステム及び航空機の着陸装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/16 20060101AFI20170227BHJP
B64C 25/24 20060101ALI20170227BHJP
F16H 21/10 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
F16H25/16 A
B64C25/24
F16H21/10 G
F16H21/10 H
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-283888(P2012-283888)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-142473(P2013-142473A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】1200181.4
(32)【優先日】2012年1月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514266563
【氏名又は名称】トライアンフ アクチュエーション システムズ − ユーケー、エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロイストン・アラン・エヴァンス
(72)【発明者】
【氏名】マルコム・オリバー・ティアニー
【審査官】
瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−196112(JP,A)
【文献】
特開2011−106613(JP,A)
【文献】
米国特許第5022609(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/16
B64C 25/24
F16H 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的および電気機械的な入力信号のうちの一方に応答して動作可能なアクチュエータであって、
中心軸周りに画定される外部ケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、ストローク長さにわたって軸方向に移動可能な出力シャフトと、
前記出力シャフトと協働し、前記出力シャフトを前記ストローク長さの一部に沿って駆動するように構成された駆動機構と
を備え、
前記駆動機構によって制約されることなく、外部負荷によって前記ストローク長さの残りのすべてまたは一部に沿って前記出力シャフトが駆動可能であるように、前記アクチュエータが動作可能である、アクチュエータ。
【請求項2】
前記駆動機構が、1つまたは複数のカム部材を備える、請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記外部ケーシングの外側の周りに配置され、前記駆動機構に動力を供給するように動作可能な、1つまたは複数の電動機をさらに備える、請求項1又は2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記駆動機構によって誘導される方向に、前記ストローク長さに沿って前記出力シャフトの変位に対抗するように配置された付勢部材をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記アクチュエータが、ロック機構および少なくとも1つの他のアクチュエータと協働するように構成されており、それにより、前記出力シャフトが前記ストローク長さの前記少なくとも一部に沿って駆動されると、前記ロック機構がロック状態からアンロック状態に変換され、当該ロック機構の変換によって、前記駆動機構によって制約されることなく、前記少なくとも1つの他のアクチュエータの作動により、前記出力シャフトが前記ストローク長さの前記残りのすべてまたは一部に沿って駆動されるものである、請求項1乃至4のいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のアクチュエータを備えるアクチュエータシステムであって、少なくとも1つの他のアクチュエータと、構成要素をロック位置に保持するためのロック状態を有するロック機構とをさらに備え、前記出力シャフトが記ストローク長さの前記少なくとも一部に沿って駆動されると、前記ロック機構が前記ロック状態からアンロック状態に変換され、当該ロック機構の変換によって、前記少なくとも1つの他のアクチュエータが前記構成要素を前記ロック位置から変位させるとともに、前記駆動機構によって制約されることなく、前記ストローク長さの前記残りのすべてまたは一部に沿って前記出力シャフトを駆動することを可能にする、アクチュエータシステム。
【請求項7】
前記ロック機構がオーバーセンターリンケージを備える、請求項6記載のアクチュエータシステム。
【請求項8】
航空機の着陸装置であって、
車輪組立体と、請求項1乃至5のいずれか1項記載のアクチュエータと、少なくとも1つの他のアクチュエータと、前記車輪組立体を格納位置および伸張位置の少なくとも一方にロックするためのロック機構とを備え、前記アクチュエータが、前記ロック機構をアンロックするように動作可能なアンロックアクチュエータであり、前記少なくとも1つの他のアクチュエータが、前記車輪組立体をその格納位置または伸張位置から変位させるように動作可能であり、前記アンロックアクチュエータが、前記出力シャフトを前記ストローク長さの少なくとも一部に沿って駆動し、それにより前記ロック機構をロック状態からアンロック状態に変換するように動作可能であり、当該ロック機構の変換によって、前記少なくとも1つの他のアクチュエータが、前記駆動機構によって制約されることなく前記出力シャフトを前記ストローク長さの前記残りに沿って駆動し、それにより前記航空機の着陸装置をその格納位置または伸張位置から変位させることを可能にする、航空機の着陸装置。
【請求項9】
前記ロック機構がオーバーセンターリンケージを備える、請求項8記載の航空機の着陸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータシステムの一部として1つまたは複数の他のアクチュエータと連動して使用されるときの「力の競合」の可能性を低減するように動作することができるアクチュエータに関する。本発明は、航空機の着陸装置の格納および伸張(extension)など、航空用途における使用に特に適する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは、入力信号を運動に変換するために、多くの技術分野で使用される。航空の分野では、アクチュエータは、着陸装置の格納および伸張、ならびに空力制御面(aerodynamic control surface)を所望の向きに変位させることなど、種々の構成要素を所望の向き/位置に変位させるために使用される。これらの役割のために、油圧駆動のアクチュエータシステムを使用して、油圧流体が入力信号を運動に変換する媒体を供給することは、十分に確立されている。しかし、油圧アクチュエータシステムは、油圧流体を収容し、移送するために、複雑な基幹的配管設備を必要とする。そのような複雑な基幹設備は、漏出および流出を起こしやすく、それにより、アクチュエータシステムの動作効率を低下させ、環境への危険を生じさせる。基幹的配管設備からの油圧流体の漏出および流出は、最終的に、作動の喪失につながる可能性がある。そのような作動の喪失の帰結は、航空機にとって深刻であり、空力制御面を調節することができなくなり、また、着陸装置を配備することまたは着陸装置を所定の位置にロックすることができなくなるため、航空機の制御の喪失につながる可能性がある。最悪の場合は、航空機における油圧作動システムの故障は、航空機の損失を招き、結果的に人命の損失を招く結果となる可能性がある。当然のことながら、航空機の油圧アクチュエータシステムのための基幹設備の漏出および破局的故障を防ぐために使用される保守整備体制(maintenance regime)は、必然的に、厳格であり、油圧流体を再チャージし、使用済みの油圧流体を廃棄するために発生するコストを含めて高価である。
【0003】
これらの懸案事項に対処するために、アクチュエータの入力信号に対して電動機が動力源を供給し、入力信号が次いで、運動に変換される、電気駆動アクチュエータが導入されている。電気駆動アクチュエータは、油圧システムと比較すると、油圧作動システムに関連する複雑な基幹設備の必要性を回避し、効率が改善され保守整備の必要性が低減されるという利点を有する。
【発明の概要】
【0004】
所望の結果を達成するために共に協働する必要のある2つ以上のアクチュエータを使用することが必要なシステムを有することは、多くの分野、とりわけ航空の分野においては普通のことである。関連する例は、着陸装置の伸張および格納を制御する際に使用するための、航空機の着陸装置に対して存在する。例えば、米国特許第5,022,609号は、着陸装置を伸張(「ダウンロック(downlock)」)または格納(「アップロック(uplock)」)の位置のいずれかにロックするために、オーバーセンターリンケージ(over centre linkage)の形態の機構を有し、それにより、航空機の着陸時の着陸装置の倒壊、または航行中の望ましくない着陸装置の配備を防止する、着陸装置を開示する。米国特許第5,022,609号は、この機構をアンロックするための第1のアクチュエータ130の使用と、引き続いて、着陸装置を格納するための第2のより大きなアクチュエータ116の使用とを開示する。米国特許第5,022,609号の2つのアクチュエータなど、協働するアクチュエータ間の同期の欠落が、アクチュエータが互いに反対に作動する結果を招く可能性がある。この望ましくない現象は、「力の競合」として知られている。着陸装置システムで従来から使用されているような、知られている油圧アクチュエータシステムは、共通の弁によって動作する協働するアクチュエータを介して、力の競合の影響を、ある程度緩和する。共通の弁の使用、および協働するアクチュエータで使用される油圧流体のいくぶんかの圧縮性が、協働するアクチュエータ間のいかなる力の競合の影響をも最小化するのに役立つ。しかし、電気アクチュエータシステムは、力の競合の結果として、協働するアクチュエータに印加される不要な応力に対して脆弱であることが判明している。この脆弱性は、油圧流体の圧縮性による力の競合の応力の緩和がない状態で、電気アクチュエータの使用によって増加したアクチュエータの剛性を含め、種々の要因によって引き起こされる。点検されないまま放置されると、これらの応力は、1つまたは複数の協働するアクチュエータの故障を招く結果となる。1つの解法は、協働するアクチュエータ間の正確な同期動作を確実にし、それにより、力の競合の発生を回避するために、複雑な制御回路を使用することである。しかし、そのような制御回路は、アクチュエータシステムの重量および大きさを増すばかりでなく、システム設計に対する複雑さを増す。あるいは、「力の競合」の結果として印加される付加的な応力に耐えることができる電気アクチュエータシステムのためのアクチュエータを設計することは、同様に、アクチュエータの重量および大きさの増加を招く結果となり、それにより、知られている油圧アクチュエータシステムに対する、電気駆動アクチュエータを使用する有益性を相殺するであろう。それゆえ、アクチュエータの重量および大きさを最小化しながら、「力の競合」によって引き起こされる望ましくない応力を低減または排除する、改善されたアクチュエータが必要性である。
【0005】
したがって、電気的および電気機械的な入力信号のうちの一方に応答して動作可能なアクチュエータが提供され、アクチュエータは、中心軸周りに画定される外部ケーシングと、ケーシング内に配置され、ストローク長さにわたって軸方向に移動可能な出力シャフトと、出力シャフトをストローク長さの一部に沿って駆動するための、出力シャフトと協働可能な駆動機構と、を備え、駆動機構によって制約されることなく、外部負荷によってストローク長さの残りのすべてまたは一部に沿って出力シャフトが駆動可能であるように、アクチュエータが動作可能である。
【0006】
ストローク長さの残りのすべてまたは一部に対して、出力シャフトが駆動機構によって制約されないように、アクチュエータを適合させることで、「遊動」タイプの機構が導入され、その機構は、アクチュエータの駆動機構の動作と外部負荷との間の軋轢によって引き起こされる力の競合に起因する、アクチュエータ内の望ましくない応力を排除または低減するのに役立つ。航空機の着陸装置に適用される場合に、有益性がとりわけ明白であり、伸張位置(「ダウンロック」)と格納位置(「アップロック」)のいずれかまたは両方において、着陸装置をロックするために存在する機構をアンロックするために、本発明のアクチュエータが使用されてよく、それにより、さらなるアクチュエータが、次いで、アンロックされている着陸装置を格納または伸張することが可能になる。
【0007】
好ましくは、アクチュエータが、ロック機構および少なくとも1つの他のアクチュエータと協働可能であり、それにより、ストローク長さの少なくとも一部に沿った出力シャフトの駆動が、ロック状態からアンロック状態にロック機構を変換し、それにより、駆動機構によって制約されない状態で、少なくとも1つの他のアクチュエータの作動のもとに、出力シャフトがストローク長さの残りのすべてまたは一部に沿って駆動されることを可能にする。この場合、少なくとも1つの他のアクチュエータは、請求項1に記載される外部負荷のすべてまたは一部をもたらしている。この段落で示されるようなアクチュエータの構成は、航空機の着陸装置に対する用途、ならびにそれに関連した、着陸装置を伸張位置または格納位置にロックするための関連する「ダウンロック」リンケージおよび「アップロック」リンケージに対する用途に特に適する。そのようなロック機構の1つの非限定的な例は、オーバーセンターリンケージである。航空の分野では、オーバーセンターリンケージは、普通、航空機の着陸装置を伸張位置および格納位置に「ダウンロック」および「アップロック」するために使用される。
【0008】
それゆえ、好都合なことに、本発明のアクチュエータは、アクチュエータシステムの一部を形成することができる。好ましくは、アクチュエータシステムは、少なくとも1つの他のアクチュエータと、構成要素をロック位置に保持するためのロック状態を有するロック機構とを備え、ストローク長さの少なくとも一部に沿った出力シャフトの駆動が、ロック機構をロック状態からアンロック状態に変換し、それにより、少なくとも1つの他のアクチュエータが構成要素を変位させ、駆動機構によって制約されることなく、ストローク長さの残りのすべてまたは一部に沿って出力シャフトを駆動することを可能にする。上で示したように、そのようなロック機構の非限定的な一例が、オーバーセンターリンケージである。さらに、好都合なことに、構成要素は、航空機の着陸装置またはその一部であってよい。
【0009】
上の段落から理解できるように、本発明のアクチュエータは、航空機の着陸装置に適用される場合に、特に有益である。それゆえ、好ましくは、航空機の着陸装置は、車輪組立体(wheel assembly)と、本発明によるアクチュエータと、少なくとも1つの他のアクチュエータと、車輪組立体を格納位置および伸張位置の少なくとも一方にロックするためのロック機構とを備え、アクチュエータが、ロック機構をアンロックするように動作可能なアンロックアクチュエータであり、少なくとも1つの他のアクチュエータが、車輪組立体をその格納位置または伸張位置から変位させるように動作可能であり、アンロックアクチュエータが、出力シャフトをストローク長さの少なくとも一部に沿って駆動し、それによりロック機構をロック状態からアンロック状態に変換するように動作可能であり、それにより少なくとも1つの他のアクチュエータが、駆動機構によって制約されることなく出力シャフトをストローク長さの残りに沿って駆動し、それにより車輪組立体をその格納位置または伸張位置から変位させることができる。
【0010】
上で示したように、そのようなロック機構の非限定的な一例が、オーバーセンターリンケージである。本発明のアクチュエータの駆動機構は、航空機の着陸装置に適用される場合、車輪組立体を格納位置または伸張位置のいずれかに保持するロック機構をアンロックするために、最初のキック(kick)または衝撃を与え、それにより少なくとも1つの他のアクチュエータが、車輪組立体をその格納位置または伸張位置から変位することを可能にする。少なくとも1つの他のアクチュエータの働きにより、ロック機構を逆駆動する(back-drive)し、それにより本発明のアクチュエータを、そのストローク長さの残りのすべてまたは一部にわたって逆駆動する。本発明のアクチュエータによってもたらされる遊動すなわち制約の欠落(lack of constraint)により、本発明のアクチュエータに著しい応力を印加することなく、本発明のアクチュエータおよび少なくとも1つの他のアクチュエータが互いに非同期で動作することが可能になる。この遊動すなわち制約の欠落により、本発明のアクチュエータの大きさと重量を最小に保持することが可能になる。また、遊動すなわち制約の欠落により、少なくとも1つのアクチュエータに対して極めて簡素な制御ループ機構の使用が可能となり、本発明のアクチュエータの正確な位置制御の必要性を排除することが可能になる。さらに、本発明のアクチュエータはまた、着陸装置のアクチュエータを交換する間、着陸装置のアクチュエータの時間のかかる組み立て調整(rigging)を必要とせず、保守整備の容易性が改善されるという有益性を提供する。
【0011】
好ましくは、駆動機構は、1つまたは複数のカム部材を備える。これらのカム部材は、偏心した外形であってよい。好都合なことに、出力シャフトがピストン部材に接続され、1つまたは複数のカム部材の使用中の回転がピストン部材に対して作用し、ピストン部材および出力シャフトをストローク長さの一部に沿って動かす。
【0012】
好都合なことに、アクチュエータの外部ケーシングの外側の周りに配置された1つまたは複数の電動機によって、動力が駆動機構に供給される。
【0013】
好ましくは、アクチュエータは、駆動機構によって誘導される方向に、ストローク長さに沿って出力シャフトの変位に対抗するように配置された付勢(bias)部材をさらに備える。そのような付勢部材の機能は、アクチュエータの外部ケーシング内の出力シャフトの、制御されない往復変位(displacement to and fro)を防止することであり、付勢部材の剛性は、駆動機構または外部負荷の作動に起因する、ストローク長さに沿った出力シャフトの運動を妨げないように選択される。付勢部材は、ばねを含む、これに限定されない、任意の従来の形態であってよい。
【0014】
本発明の実施形態を、以下の添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるアクチュエータを含む航空機の着陸装置を示す図である。
【
図2】着陸装置のオーバーセンターリンケージに焦点を当てた、
図1の一部の詳細を示す図である。
【
図3】アクチュエータがその最大長さにある、本発明のアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、伸張位置にある航空機の着陸装置1を示す。着陸装置1は、長手方向の支柱(longitudinal strut)2を含み、車輪組立体3が、支柱の下端に取り付けられている。着陸装置1は、枢動接合部(pivotal joint)5によって、支柱2の上端と機体(airframe)4との間で、航空機の機体4に取り付けられている。枢動接合部5は、矢印ω
5で示されるように、支柱2が軸周りに回転するのを許容する。2部からなる側部ブレース(side brace)6は、支柱2の下端に枢動可能に接続され、機体4に向かって斜め上方に延び、支柱2に対して角度αだけ傾斜している。2部からなる側部ブレース6は、第1の部分7と第2の部分8とを含み、2つの部分は、ブレースの長さに沿った途中の9で、枢動可能に接続される。枢動接続部(pivotal connection)9は、矢印ω
9で示すように、軸周りの回転を許容する。
図1から理解できるように、着陸装置1が伸張位置にある状態で、ブレース6の第1の部分7と第2の部分8とは同一直線状にある。
【0017】
全体的に20で表示するオーバーセンターリンケージが、支柱2の上端の枢動接続部23とブレースの枢動接続部9との間に延在する。
図1および
図2は、ロック状態にあるオーバーセンターリンケージ20を示し、リンケージは、着陸装置1の車輪組立体3を伸張位置でロックする。このロック状態は、車輪組立体3が地面と衝突するときに着陸装置1が倒壊するのを阻止する。オーバーセンターリンケージ20は、それがロック状態にあるときは、2部からなるブレース6の両部分7、8が一直線状でロックされたままであり、それにより確実に着陸装置1を倒壊させるように作用するいかなる力にも抗することができる。
図2からより明確に理解できるように、オーバーセンターリンケージ20は、枢動接続部23から斜め下方に延びる第1の部分21と、枢動接続部9から斜め上方に延びる第2の部分22とを有する。両部分21、22は、
図2上の参照番号200で示すように枢動可能に接続される。枢動接続部200は、ω
200で示すように、軸周りの回転を許容する。オーバーセンターリンケージ20が着陸装置1を
図1に示す伸張位置にロックする能力は、
図2からより深く理解できる。
【0018】
図2に示すように、オーバーセンターリンケージ20の第1の部分21は、枢動接続部200の領域内で、リンケージ20の第1の部分21の長手方向の縁部から横方向外側に延びる停止突起部(stop lug)24を含む。突起部材24は、枢動接続部200が矢印Aの方向に変位するのを制限するように働く。
図2は、枢動接続部23と枢動接続部9との間に延在する線25を示す。オーバーセンター距離Xは、線25から、オーバーセンターリンケージ20の2つの部分21、22の間にある枢動接続部200までの垂直距離で表される。図面および上記から理解できるように、オーバーセンターリンケージ20は、側部ブレース6をロックし、それにより着陸装置1の車輪組立体3を伸張位置にロックするように働く。2部からなるブレース6を枢動接続部9周りに折り畳み、かつ支柱2を枢動接合部5周りに回転させて、車輪組立体3を格納することを可能にするためには、最初に、オーバーセンター距離Xを打ち消す(defeat)ことを必要とする。
【0019】
着陸装置1は、2つのリニアアクチュエータ30、40を含む。リニアアクチュエータ30は、2つのアクチュエータのうちの小さい方であり、オーバーセンター距離Xを打ち消す機能を実行する。アクチュエータ30は、本発明の一実施形態の通りである。アクチュエータ40は、2つのアクチュエータのうちの大きい方であり、2つの部分からなる側部ブレース6を折り畳み、それにより支柱2を枢動接合部5周りに回転させ、それにより車輪組立体3を格納する機能を実行する。本明細書では、アクチュエータ30がアンロックアクチュエータ、アクチュエータ40が主アクチュエータと、それぞれ呼ばれる。
【0020】
アンロックアクチュエータ30は、オーバーセンターリンケージ20の第1の部分21の枢動接続部31と支柱2の枢動接続部32との間に接続される。主アクチュエータ40は、支柱2の枢動接続部41と側部ブレース6の上端の枢動接続部との間に接続される。枢動接続部31、32、41、42は、ω
31、ω
32、ω
41およびω
42で示すように、それぞれの軸周りに回転ができるようにする。
【0021】
図3は、アンロックアクチュエータ30として使用するのに適する本発明の一実施形態に適用できる断面図を示す。アンロックアクチュエータ30は、長手方向軸302周りに同心の外部ケーシング301を有する。ピストン303は、外部ケーシング301内に配置され、出力シャフト304に接続される。ばねの形態の付勢部材305がケーシング内に設けられ、ピストン303の一方の端面とアンロックアクチュエータ30の一端部との間に配置される。回転可能な偏心カム部材を組み込む駆動機構306が、アンロックアクチュエータ30の他方の端部に存在する。カム部材306は、シャフト307に取り付けられ、ω
306で示す方向に、シャフト307周りに回転可能である。アンロックアクチュエータ30がその最大長さにある状態で、カム部材は、ピストン303の他方の端面に対して作用する。アイエンド(eye end)308、309が、アンロックアクチュエータ30を適所に固定するために存在し、
図1および
図2に示す実施形態の場合では、アイエンド308、309は、アクチュエータ30を航空機の着陸装置1の枢動接続部31、32に固定する。アンロックアクチュエータ30は、ストローク長さLを有し、その長さは、軸302に沿ったピストン303および出力シャフト304の移動距離の最大範囲(maximum degree)を表す。ストローク長さLはまた、2つのアイエンド308、309の間の距離の最短縮(maximum shortening)を表し、それによりアンロックアクチュエータ30の出力シャフト304の移動距離の最大範囲を表す。
【0022】
図3に示すように、1つまたは複数の電動機50が、駆動機構306の偏心カム部材を回転させるための動力を供給するために、ケーシング301の外部に取り付けられている。1つまたは複数の電動機に給電するために、電気的接続部51によって電力が供給される。
【0023】
図1に示すように伸張位置にロックされた航空機の着陸装置1の車輪組立体3と共に、着陸装置が、以下の段落に示すように格納される。
【0024】
1つまたは複数の電動機50から動力が供給されて、駆動機構306の偏心カム部材をω
306の向きに回転させる。カム部材が、ピストン303に対して作用し、ピストンおよび出力シャフト304を軸302に沿って距離Pに対して駆動し、それによりアンロックアクチュエータ30の長さを短縮させる。距離Pを移動した後のピストン303、出力シャフト304および関連するアイエンド308の位置を、
図3に破線で示す。駆動機構306のカム部材によって供給される駆動力は、付勢部材305によって印加される付勢力を克服するのに十分である。
図3および
図4から理解できるように、距離Pは、アンロックアクチュエータ30の全ストローク長さLの一部に過ぎない。距離Pは、ピストン303および出力シャフト304をストローク長さLに沿って駆動するために駆動機構が動作可能な最大距離を表す。距離Pを通して出力シャフト304を駆動すると、アンロックアクチュエータ30が、オーバーセンターリンケージ20の第1の部分21を上方に変位させ、それにより、それに応じて枢動接続部200を線25の上方に変位させ、それによりオーバーセンター距離Xを無くして、オーバーセンターリンケージ20によってもたらされるダウンロックを打ち消す。この時点で、主アクチュエータ40が作動して、着陸装置1の車輪組立体3を格納する。こうして、主アクチュエータ40がピストン303を逆駆動し、それにより、ストローク長さLの残りの距離Rに沿って出力シャフト304を逆駆動する。
図3および
図4から理解できるように、ストローク長さLの一部分Pに沿って出力シャフト304を駆動するためだけに駆動機構306を配置することで、主アクチュエータ40の動作中に、アンロックアクチュエータ30においてある程度の遊動がもたらされる。この遊動(あるいは、制約の欠落と呼ばれる)によって、アンロックアクチュエータ30に不要な応力を印加することなく2つのアクチュエータ30、40が非同期で動作できる。
【0025】
アンロックアクチュエータ30は、航空機の着陸装置1の車輪組立体3を伸張位置からアンロックする際の使用において説明されているが、航空機の着陸装置1の車輪組立体3を格納位置からアンロックするために、そのようなアンロックアクチュエータ30を使用することが、同様に、適用可能である。
【0026】
本説明は、本発明を開示し、また、当業者が本発明を作成し、使用することを可能にするために、例を使用している。疑義を回避するために、特許請求の範囲に記載の本発明は、その範囲の中に、本文書の図面に示す例とは異なる、当業者が想到する他の例を含むことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 着陸装置
2 長手方向の支柱
3 車輪組立体
4 機体
5 枢動接合部
6 側部ブレース
7 側部ブレースの第1の部分
8 側部ブレースの第2の部分
9 枢動接続部
20 オーバーセンターリンケージ
21 オーバーセンターリンケージの第1の部分
22 オーバーセンターリンケージの第2の部分
23 枢動接続部
24 停止突起部
25 線
30 アンロックリニアアクチュエータ
31 枢動接続部
32 枢動接続部
40 主リニアアクチュエータ
41 枢動接続部
42 枢動接続部
50 電動機
51 電気的接続部
200 枢動接続部
301 外部ケーシング
302 長手方向軸
303 ピストン
304 出力シャフト
305 付勢部材
306 駆動機構
307 シャフト
308 アイエンド
309 アイエンド