(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091212
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】くさび着脱機構、くさび着脱工具及びこれを用いたくさび着脱方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20170227BHJP
E04G 7/32 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G7/32 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-289492(P2012-289492)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-129710(P2014-129710A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義宣
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−013608(JP,A)
【文献】
実開平07−019495(JP,U)
【文献】
実開平06−001610(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/00 − 7/34
E04G 21/14 − 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設足場を構築する支柱に設けられた略板状のフランジと、
一端部が前記フランジに連結される長尺状でかつ円筒状の水平材と、
前記水平材の一端部を上方から貫通しつつ前記フランジのフランジ孔に挿入して緊結するくさびと、
長尺状の本体を有するくさび着脱工具とを備え、
前記くさび着脱工具は、
前記本体の一端部に設けられ、かつ前記くさびに形成された突起に掛止され、作用点として機能する掛止部と、
前記本体の中央寄りに設けられ、かつ前記水平材の円表面に当接され、支点として機能する側面視凸状部と、
前記本体の他端部に設けられ、力点として機能する力点部とを有し、
前記凸状部は、前記水平材の円表面に沿うように内側に向かうほど狭まるようなテーパが形成されており、
前記力点部を押圧することにより、前記水平材の円表面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、
これにより前記くさびを前記フランジ孔に緊結させて前記水平材を前記支柱に固定する、又は前記くさびを前記フランジ孔から弛緩させて前記水平材を前記支柱から取り外すことを特徴とする、くさび着脱機構。
【請求項2】
前記掛止部は、前記くさびの下端部に形成された第1突起に掛止され、
前記凸状部は、前記水平材の下面に当接され、
前記力点部を前記水平材側に押圧することにより、前記水平材の下面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、
これにより前記くさびを前記フランジ孔に緊結させて前記水平材を前記支柱に固定する、請求項1に記載のくさび着脱機構。
【請求項3】
前記掛止部は、前記くさびの上端部に形成された第2突起に掛止され、
前記凸状部は、前記水平材の上面に当接され、
前記力点部を前記水平材側に押圧することにより、前記水平材の上面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、
これにより前記くさびを前記フランジ孔から弛緩させて前記水平材を前記支柱から取り外す、請求項1に記載のくさび着脱機構。
【請求項4】
支柱に設けられた略板状のフランジと、
一端部が前記フランジに連結される長尺状でかつ円筒状の水平材と、
前記水平材の一端部を上方から貫通しつつ前記フランジのフランジ孔に挿入して緊結するくさびと、を備える仮設足場に用いられるくさび着脱工具であって、
長尺状の本体と、
前記本体の一端部に設けられ、かつ前記くさびの下端部に形成された第1突起に掛止され、作用点として機能する掛止部と、
前記本体の中央寄りに設けられ、かつ前記水平材の下面に当接され、支点として機能する側面視凸状部と、
前記本体の他端部に設けられ、力点として機能する力点部と、を備え、
前記凸状部は、前記水平材の円表面に沿うように内側に向かうほど狭まるようなテーパが形成されており、
前記力点部を押圧することにより、前記水平材の下面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、
これにより前記くさびを前記フランジ孔に緊結させて前記水平材を前記支柱に固定することを特徴とする、くさび着脱工具。
【請求項5】
前記掛止部は、前記くさびの上端部に形成された第2突起に掛止され、
前記凸状部は、前記水平材の上面に当接され、
前記力点部を押圧することにより、前記水平材の上面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、
これにより前記くさびを前記フランジ孔から弛緩させて前記水平材を前記支柱から取り外す、請求項4に記載のくさび着脱工具。
【請求項6】
支柱に設けられた略板状のフランジと、
一端部が前記フランジに連結される長尺状でかつ円筒状の水平材と、
前記水平材の一端部を上方から貫通しつつ前記フランジのフランジ孔に挿入して緊結するくさびと、を備える仮設足場に用いられるくさび着脱方法であって、
長尺状の本体を有するくさび着脱工具を準備し、
前記本体の一端部を前記くさびの下端部に形成された第1突起に掛止させて作用点とし、
前記本体の中央寄りに形成され、前記水平材の円表面に沿うように内側に向かうほど狭まるようなテーパが形成された側面視凸状部を前記水平材の下面に当接させて支点とし、
前記本体の他端部を力点とし、
前記本体の他端部を押圧することにより、前記水平材の下面に当接された前記凸状部を支点にして前記本体の一端部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、
これにより前記くさびを前記フランジ孔に緊結させて前記水平材を前記支柱に固定することを特徴とする、くさび着脱方法。
【請求項7】
前記本体の一端部を前記くさびの上端部に形成された第2突起に掛止させて作用点とし、
前記凸状部を前記水平材の上面に当接させて支点とし、
前記本体の他端部を力点とし、
前記本体の他端部を押圧することにより、前記水平材の上面に当接された前記凸状部を支点にして前記本体の一端部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、
これにより前記くさびを前記フランジ孔から弛緩させて前記水平材を前記支柱から取り外す、請求項6に記載のくさび着脱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築現場等で組み立てられ、支柱と水平材との固定にくさびが用いられるくさび緊結式足場において、くさびを着脱する際のくさび着脱機構、くさび着脱工具、及びくさび着脱工具を用いたくさび着脱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マンション等の増改築や改修工事(塗装、タイル貼り、防水補修又はひび補修等)が実施される建築現場においては、建築物の周囲に作業者が高所作業を行うための仮設足場が組み立てられる。仮設足場としては、例えば各部材を連結する際、くさびが用いられるくさび緊結式足場が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図8は、従来のくさび緊結式足場において支柱21に水平材22が取付けられる状態を示す部分斜視図である。同図によれば、支柱21には所定間隔を隔てて複数のフランジ23が設けられ、フランジ23には複数のフランジ孔24が形成されている。複数のフランジ孔24のうちいずれかのフランジ孔24には、水平材22の一端部が嵌合されて取付けられる。
【0004】
水平材22は、円筒状のパイプ部材25と、その両端に設けられた連結部材26と、連結部材26とフランジ23とを連結するためのくさび27とを備えている。連結部材26は、側面視で略ワニ口状に形成されている。すなわち、連結部材26は、支柱21側の側面に側面開口28が形成され、その上面にくさび27を挿入するための上面開口29が形成され、その下面に、挿入されたくさび27が突出される下面開口30(
図9参照)がそれぞれ形成されている。側面開口28、上面開口29及び下面開口30は、それぞれ連結部材26の内部で連通されている。
【0005】
くさび27は長尺状に形成され、その上端部には、ハンマー32(後述)等で衝打される幅広の衝打部27aが形成されている。また、くさび27の下端部には、幅方向に突出した突出部31が形成されている。
【0006】
上記構成において、くさび緊結式足場の組立時に水平材22を支柱21に固定する際、
図8に示すように、連結部材26の側面開口28をフランジ23にあてがう。次いで、
図9に示すように、くさび27を上面開口29と、フランジ23のフランジ孔24とに挿入し、先端を連結部材26の下面開口30から突出させる。その後、衝打部27aを例えばハンマー32で衝打することにより、くさび27は、フランジ孔24に強固に緊結され、これにより水平材22は支柱21に固定される。また、水平材22を支柱21から取外す際には、フランジ孔24に緊結されたくさび27の下端をハンマー32で衝打することにより行う。
【0007】
しかしながら、このようなくさび緊結式足場においては、水平材22を支柱21に固定する際、あるいは水平材22を支柱21から取外す際、ハンマー32等でくさび27を衝打するため、騒音が大きく、仮設足場が例えば住宅地の中にある場合には近隣の住民から苦情がでる等の問題点がある。また、くさび27を強固に打ち込むことから、部材が損傷しやすいといった問題点も生じる。
【0008】
さらに、水平材22を支柱21に強固に固定するためには、フランジ孔24に強固にくさび27を打ち込まなければならず、ある程度の衝打力が必要である。そのため、取付けるくさび27の量が多くなると、作業者は多大な労力を要するといった問題点も生じていた。
【0009】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−280404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、くさびのフランジへの緊結及び取外しをハンマー等を用いずに容易に行うことができるくさび着脱機構及びくさび着脱工具を提供することをその課題とする。また、このくさび着脱工具を用いたくさび着脱方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面によって提供されるくさび着脱機構は、仮設足場を構築する支柱に設けられた略板状のフランジと、一端部が前記フランジに連結される長尺状
でかつ円筒状の水平材と、前記水平材の一端部を上方から貫通しつつ前記フランジのフランジ孔に挿入して緊結するくさびと、長尺状の本体を有するくさび着脱工具とを備え、前記くさび着脱工具は、前記本体の一端部に設けられ、かつ前記くさびに形成された突起に掛止され、作用点として機能する掛止部と、前記本体の中央寄りに設けられ、かつ前記
水平材の円表面に当接され、支点として機能する側面視凸状部と、前記本体の他端部に設けられ、力点として機能する力点部とを有し、
前記凸状部は、前記水平材の円表面に沿うように内側に向かうほど狭まるようなテーパが形成されており、前記力点部を押圧することにより、
前記水平材の円表面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、これにより前記くさびを前記フランジ孔に緊結させて前記水平材を前記支柱に固定する、又は前記くさびを前記フランジ孔から弛緩させて前記水平材を前記支柱から取り外すことを特徴としている。
【0013】
本発明のくさび着脱機構において、前記掛止部は、前記くさびの下端部に形成された第1突起に掛止され、前記凸状部は、前記水平材の下面に当接され、前記力点部を前記水平材側に押圧することにより、
前記水平材の下面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、これにより前記くさびを前記フランジ孔に緊結させて前記水平材を前記支柱に固定するとよい。
【0014】
本発明のくさび着脱機構において、前記掛止部は、前記くさびの上端部に形成された第2突起に掛止され、前記凸状部は、前記水平材の上面に当接され、前記力点部を前記水平材側に押圧することにより、
前記水平材の上面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、これにより前記くさびを前記フランジ孔から弛緩させて前記水平材を前記支柱から取り外すとよい。
【0015】
本発明の第2の側面によって提供されるくさび着脱工具は、支柱に設けられた略板状のフランジと、一端部が前記フランジに連結される長尺状
でかつ円筒状の水平材と、前記水平材の一端部を上方から貫通しつつ前記フランジのフランジ孔に挿入して緊結するくさびと、を備える仮設足場に用いられるくさび着脱工具であって、長尺状の本体と、前記本体の一端部に設けられ、かつ前記くさびの下端部に形成された第1突起に掛止され、作用点として機能する掛止部と、前記本体の中央寄りに設けられ、かつ前記水平材の下面に当接され、支点として機能する側面視凸状部と、前記本体の他端部に設けられ、力点として機能する力点部と、を備え、
前記凸状部は、前記水平材の円表面に沿うように内側に向かうほど狭まるようなテーパが形成されており、前記力点部を押圧することにより、
前記水平材の下面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、これにより前記くさびを前記フランジ孔に緊結させて前記水平材を前記支柱に固定することを特徴としている。
【0016】
本発明のくさび着脱工具において、前記掛止部は、前記くさびの上端部に形成された第2突起に掛止され、前記凸状部は、前記水平材の上面に当接され、前記力点部を押圧することにより、
前記水平材の上面に当接された前記凸状部を支点にして前記掛止部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、これにより前記くさびを前記フランジ孔から弛緩させて前記水平材を前記支柱から取り外すとよい。
【0018】
本発明の第3の側面によって提供されるくさび着脱方法は、支柱に設けられた略板状のフランジと、一端部が前記フランジに連結される長尺状
でかつ円筒状の水平材と、前記水平材の一端部を上方から貫通しつつ前記フランジのフランジ孔に挿入して緊結するくさびと、を備える仮設足場に用いられるくさび着脱方法であって、長尺状の本体を有するくさび着脱工具を準備し、前記本体の一端部を前記くさびの下端部に形成された第1突起に掛止させて作用点とし、前記本体の中央寄りに形成され
、前記水平材の円表面に沿うように内側に向かうほど狭まるようなテーパが形成された側面視凸状部を前記水平材の下面に当接させて支点とし、前記本体の他端部を力点とし、前記本体の他端部を押圧することにより、
前記水平材の下面に当接された前記凸状部を支点にして前記本体の一端部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、これにより前記くさびを前記フランジ孔に緊結させて前記水平材を前記支柱に固定することを特徴としている。
【0019】
本発明のくさび着脱方法は、前記本体の一端部を前記くさびの上端部に形成された第2突起に掛止させて作用点とし、前記凸状部を前記水平材の上面に当接させて支点とし、前記本体の他端部を力点とし、前記本体の他端部を押圧することにより、
前記水平材の上面に当接された前記凸状部を支点にして前記本体の一端部を前記押圧方向と反対方向に変位させるとともに前記くさびを前記反対方向に変位させ、これにより前記くさびを前記フランジ孔から弛緩させて前記水平材を前記支柱から取り外すとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、くさび着脱工具を用いていわゆるてこの原理によって水平材を支柱に固定する。すなわち、くさび着脱工具の力点部を押圧することにより、凸状部を支点にして、くさびの第1突起に掛止された掛止部が押圧方向と反対方向に変位されるとともにくさびが反対方向に変位する。これにより、くさびはフランジ孔に緊結し、水平材は支柱に固定される。そのため、従来の構成のように、くさびの緊結にハンマー等を用いる必要がなく、水平材を支柱に少ない力で容易に固定することができる。したがって、ハンマー等の衝打による騒音や部材の損傷の問題を解消することができ、またハンマー等を衝打することによる作業者の労力を低減することができる。
【0021】
また、本発明によれば、水平材を支柱から取り外す際においても、くさび着脱工具の力点部を押圧することにより、凸状部を支点にしてくさびの第1突起に掛止された掛止部が押圧方向と反対方向に変位されるとともにくさびが反対方向に変位する。これにより、くさびはフランジ孔から弛緩し、水平材は支柱から取り外される。したがって、水平材を支柱から取り外す場合も、従来の構成のようにハンマー等を用いる必要がなく、騒音や部材の損傷の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るくさび着脱機構が適用される仮設足場の部分斜視図である。
【
図3】くさび着脱工具の外形図であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示し、(c)は平面図を示す。
【
図4】支柱に水平材を取付けるときの状態を示す部分側面図である。
【
図5】支柱に水平材を取付けるときの状態を示す部分側面図である。
【
図6】くさびをフランジに緊結するときの状態を示す部分側面図であり、(a)は緊結する前の状態を示し、(b)は緊結した後の状態を示す。
【
図7】くさびをフランジから取り外すときの状態を示す部分側面図であり、(a)は取り外す前の状態を示し、(b)は取り外した後の状態を示す。
【
図8】従来のくさび緊結式足場において支柱に水平材が取付けられる状態を示す部分斜視図である。
【
図9】従来の支柱に水平材が取付けられる状態を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るくさび着脱機構が適用される仮設足場の部分斜視図である。
図2は、仮設足場の部分側面図である。
図3は、くさび着脱工具の外形図であり、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示し、(c)は平面図を示す。
【0025】
本実施形態における仮設足場は、建築工事現場等で用いられる、いわゆるくさび緊結式足場であり、
図1に示すような支柱1が複数立設される。支柱1は、通常、建築物(図略)の外面に沿って所定間隔を隔てて上下方向に延びて複数設けられる。複数の支柱1同士間には、各支柱1を支持するための水平材2が連結、固定される。
【0026】
各支柱1には、上下方向に所定間隔を隔てて複数のフランジ3が設けられている。各フランジ3には、例えば水平材2を四方において連結させるために4つの掛止孔4がそれぞれ形成されている。これらの掛止孔4には、水平材2の一端部を固定するために後述するくさび7が緊結される。
【0027】
水平材2は、円筒状のパイプ部材5と、パイプ部材5の両端に設けられた連結部材6と(
図1では片端のみ記載されている。)、連結部材6に支持され、その内部に貫入されたくさび7とによって構成されている。パイプ部材5は、中空状に形成されており、パイプ部材5の直径は例えば約42.7mmとされている。
【0028】
連結部材6は、水平材2を支柱1のフランジ3に掛止させるためのものである。連結部材6は、全体形状が略円筒状とされ、支柱1側が略ワニ口状に形成されるとともに、側面視で支柱1側に向かうほど上下方向に広がるように形成された側面開口8が形成されている。連結部材6は内部に空間部が形成されており、側面開口8はこの空間部に連通されている。
【0029】
側面開口8において一方の側面及び他方の側面の開口高さH1(
図2参照)は、支柱1のフランジ3の厚みよりやや大とされている。連結部材6は、この側面開口8によって、フランジ3を上下方向から挟むことができる。
【0030】
連結部材6は、
図1に示すように、その上面に支柱1側近傍からパイプ部材5側の周端に至って延びる上面開口9が形成されている。上面開口9の幅(奥行き方向の幅)は、くさび7の厚みよりやや大とされている。また、連結部材6は、その下面が支柱1側近傍からパイプ部材5側の周端に至って延びる下面開口10(
図2参照)が形成されている。下面開口10のパイプ部材5側の幅も、くさび7の厚みよりやや大とされている。
【0031】
くさび7は、縦長の略平板状に形成され、
図2における本体右側面が本体中央のやや上部が頂点となるように略山型に形成されている。くさび7は、その下端部が
図2における右方向にやや湾曲されて形成されている。くさび7の下端部近傍には、手前方向及び奥行き方向にともに突出した第1突起7aが形成されている。くさび7は、この第1突起7aにより、上面開口9を通じて上方側に抜脱しないようになっている。
【0032】
くさび7は、その上端部に本体中央部に比べ奥行き方向に幅広に形成された第2突起7bが形成されている。くさび7は、この第2突起7bにより上面開口9の周縁で掛止され、くさび7全体が上面開口9を通じて連結部材6の内部に入り込まないようにされている。
【0033】
本実施形態では、支柱1に水平材2を固定する際、及び支柱1から水平材2を取り外す際に、
図3に示すようなくさび着脱工具11が用いられる。くさび着脱工具11は、てこの原理を利用してくさび7を連結部材6に対して下方に引き込んでフランジ孔4に緊結させたり、くさび7を連結部材6に対して上方に移動させてフランジ孔4から弛緩させたりするものである。
【0034】
くさび着脱工具11は、長尺状に形成された本体12と、本体12の一端部近傍を両側から挟み込むように設けられた一対の挟設部13とによって構成されている。
【0035】
本体12は、
図3(b)に示すように、その他端側が若干折り曲げられて折曲部16が形成されており、この折曲部16は、後述するように作業者が押圧力を加える力点として機能する。なお、折曲部16は、特許請求の範囲に記載の「力点部」に相当する。
【0036】
挟設部13は、先端が本体12の一端より延出されて形成され、側面視で略鷹のくちばし状に形成されている。挟設部13の先端下部は、凹んだ略円弧状に形成された掛止部14とされ、この掛止部14には、後述するように、くさび7の第2突起7bまたは第1突起7aが掛止される。なお、この掛止部14は、作用点として機能する。
【0037】
挟設部13の上端は、側面視でなだらかな凸状に形成された凸状部15とされている。凸状部15には、後述するように、水平材2の円表面が当接される。凸状部15の上表面は、
図3(a)に示すように、水平材2の円表面に沿うように内側に向かうほど狭まるようなテーパが形成されている。なお、凸状部15は、支点として機能する。この場合、凸状部15は、テーパが形成されているため、くさび着脱工具11を水平材2に確実に支持することができる。また、挟設部13は、本体12に一体的に設けられるが、本体12と別体とされていてもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係るくさび着脱機構において、支柱1に水平材2を固定する手順を説明する。
【0039】
まず、作業者は、支柱1に水平材2を固定する際、
図4に示すように、くさび7を水平材2に対して斜め方向に連結部材6の上面開口9で支持させる。これにより、側面開口8が解放されるので、この状態で連結部材6を支柱1のフランジ3側に移動させ(
図4の矢印A参照)、連結部材6をフランジ3に掛止させる。このとき、くさび7の第1突起7aは、連結部材6の上面開口9の内側で保持されるので、くさび7が連結部材6から抜け出るようなことはない。
【0040】
次に、作業者は、くさび7の第2突起7bを把持し、
図5に示すように、上下方向に延びるように支持する。このとき、くさび7の第1突起7aは、連結部材6の空間部に位置している。次いで、作業者は、くさび7の下端がフランジ3のフランジ孔4と、連結部材6の下面開口10とを貫通させ、くさび7の下端が連結部材6から若干突出する位置までくさび7を下方に移動させる(
図5の矢印B参照)。
【0041】
ここで、くさび着脱工具11を準備し、
図6(a)に示すように、くさび着脱工具11の狭設部13の掛止部14がくさび7の各第1突起7aに掛止するように、くさび着脱工具11を水平材2側に押し込み(矢印C参照)、一対の狭設部13がくさび7の本体を厚み方向に挟み込むようにする。そして、くさび着脱工具11の凸状部15を水平材2の下面に当接させ、
図6(b)に示すように、この当接部分を支点にして力点部16を下方から水平材2に向けて押圧する(矢印D参照)。
【0042】
これにより、くさび7の第1突起7aは、くさび着脱工具11の掛止部14によって下方(押圧方向と反対方向)に変位し、くさび7は下方に引き込まれる。そのため、くさび7は、フランジ3のフランジ孔4に強固に緊結され、これにより、水平材2は支柱1に固定される。
【0043】
このように、本実施形態によれば、くさび着脱工具11を用い、てこの原理によりくさび7を下方に容易に引き込むことができ、くさび7をフランジ孔4に緊結させることができる。そのため、従来のくさび着脱機構のようにハンマー32等でくさび7を衝打することがないので、騒音を生じさせることがなく、例えばくさび7が損傷することを抑制することができる。またハンマー等を衝打することによる作業者の労力を低減することができる。
【0044】
次に、支柱1から水平材2を取り外す手順を説明する。
【0045】
作業者は、
図7(a)に示すように、くさび7がフランジ孔4に強固に緊結された状態において、くさび着脱工具11の狭設部13の掛止部14がくさび7の各第2突起7bに掛止するように、くさび着脱工具11を水平材2側に押し込み(矢印E参照)、一対の狭設部13がくさび7の本体を厚み方向に挟み込むようにする。そして、くさび着脱工具11の凸状部15を水平材2の上面に当接させ、
図7(b)に示すように、この当接部分を支点にして力点部16を上方から水平材2に向けて押圧する(矢印F参照)。
【0046】
これにより、くさび7の第2突起7bは、くさび着脱工具11の掛止部14によって上方に変位し、くさび7は上方に移動される。そのため、くさび7は、フランジ3のフランジ孔4から弛緩され、水平材2は、支柱1から取り外すことができる。
【0047】
このように、くさび着脱工具11は、水平材2を支柱1から取り外す場合にも用いることができる。この場合も、従来のくさび着脱機構のようにハンマー32等でくさび7を衝打することがないので、騒音を生じさせることがなく、くさび7が損傷することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、支柱1に水平材2を固定する場合及び支柱1から水平材2を取り外す場合の両方について、一つのくさび着脱工具11によって行い得ることができる。そのため、製品コストを低減することができる。
【0049】
さらに、くさび着脱工具11は、てこの原理を用いて支柱1に水平材2を固定したり支柱1から水平材2を取り外したりすることができるので、作業者は比較的小さな力で行うことができる。そのため、従来のくさび着脱機構のようにハンマー32等でくさび7を衝打することによる労力を低減することができ、作業に負担をかけることがない。
【0050】
また、本実施形態によれば、くさび7に形成されている第2突起7b及び第1突起7aを利用して、支柱1に対する水平材2の固定及び取り外しを行うことができる。そのため、くさび7の形状がそのまま利用されるので、くさび7を加工する必要がなく、加工コスト等が不要である。
【0051】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態における支柱1、水平材2、フランジ3、連結部材6、くさび7及びくさび着脱工具11等の各部材の数、形態、大きさ及び構造等は、上記実施形態に限るものではなく適宜設計変更可能である。
【0052】
特に、くさび着脱工具11は、支柱1及び水平材2の固定及び取外しをてこの原理を用いて行い得るものであれば、上記した実施形態に限るものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 支柱
2 水平材
3 フランジ
4 掛止孔
5 パイプ部材
6 連結部材
7 くさび
7a 第1突起
7b 第2突起
11 くさび着脱工具
12 本体
13 狭設部
14 掛止部
15 凸状部
16 力点部