(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多角形状の基板上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層を備えた積層体を備え、基板を平面視したときに、点灯時に発光する発光領域と、発光しない非発光領域を有する有機EL装置において、
第2電極層は、第1電極層よりも導電率が高いものであり、
前記非発光領域は、前記発光領域の周りを囲むように設けられており、
前記非発光領域内であって、基板の少なくとも1つの角部の近傍には、第1電極層が連続的に除去されて周囲と孤立した孤立部が存在しており、
前記積層体上に、封止層と、導電部材を有し、
前記発光領域内の積層体は、封止層によって封止されており、
前記非発光領域内の第2電極層の一部は、当該封止層から露出した露出部を形成しており、
当該露出部は、前記孤立部に固着しており、
前記導電部材は、積層体を基準として、封止層の外側に位置し、かつ、発光領域全体に設けられるものであり、
前記導電部材は、孤立部の厚み方向投影面上において、前記露出部と接続されており、
前記非発光領域内であって、前記角部と隣接する少なくとも一方の角部の近傍にも、第1電極層が連続的に除去されて孤立した孤立部が存在しており、
前記孤立部は、角部を形成する2辺に対して平行な第1絶縁溝及び第2絶縁溝と、前記第1絶縁溝と第2絶縁溝を接続する第3絶縁溝から形成されており、
それぞれの孤立部を形成する第3絶縁溝間を結ぶように延びた封止用絶縁溝を有し、
第1電極層と導電部材は、防湿接着材を介して接着されており、
当該接着材は、封止用絶縁溝の内部に充填されていることを特徴とする有機EL装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、有機EL装置に係るものである。
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置1を示している。以下、上下左右の位置関係は、特に断りのない限り、
図1の姿勢を基準に説明する。すなわち、有機EL装置1の点灯時における光取り出し側が下である。なお、下記に記載する物性は、特に断りの無い限り、標準状態での物性を表す。
【0027】
本実施形態の有機EL装置1は、
図4のように透光性を有した基板2上に有機EL素子20(積層体)が積層されており、その上に無機封止層7(封止層)で封止されている。さらに、無機封止層7上に軟質接着層8と硬質接着層10と第1接着材16を介して給電シート11が接着されている。
有機EL素子20は、第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6から形成されている。
給電シート11は、
図4,
図7のように、基板2側(
図7では上方側)から順に第1導電部材12と、絶縁シート13と、第2導電部材14から形成されており、絶縁シート13と第2導電部材14は、第2接着材17によって接着されている。
【0028】
第1導電部材12は、導電性及び封止性を有した箔状又はシート状の部材である。第1導電部材12の素材については、導電性及び封止性を有したものであればよく、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銀、金、白金などが採用できる。本実施形態では、封止性、導電性、並びに均熱性が良好である観点から、アルミニウムを採用している。
【0029】
絶縁シート13は、絶縁性を有したシート状の部材である。絶縁シート13の素材については、絶縁性を有したものであればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが採用できる。本実施形態では、絶縁性に加えて封止性が良好である観点から、PETを採用している。
【0030】
絶縁シート13は、
図7のように幅方向w及び長さ方向l(部材厚方向に直交し、かつ、幅方向wに直交する方向)の中央に部材厚方向に貫通した貫通孔37を有している。この貫通孔37の開口形状は四角形状又は円形をしている。なお、本実施形態では、開口形状は、正方形状をしている。
【0031】
第2導電部材14は、導電性及び封止性を有した箔状又はシート状の部材である。第2導電部材14の素材については、導電性及び封止性を有したものであればよく、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銀、金、白金などが採用できる。本実施形態では、封止性、導電性、並びに均熱性が良好である観点から、アルミニウムを採用している。
【0032】
第2導電部材14は、
図7のように幅方向w及び長さ方向lの中央に部材厚方向に貫通した貫通孔38を有している。
この貫通孔38の開口形状は絶縁シート13と相似形状をしている。なお、本実施形態では、開口形状は、正方形状をしている。
【0033】
また、第2導電部材14の貫通孔38の開口面積は、
図2のように、絶縁シート13の貫通孔37の開口面積よりも大きい。具体的には、貫通孔38の開口面積は、貫通孔37の開口面積の1.2倍以上3倍以下であることが好ましい。本実施形態では、貫通孔38の開口面積は、貫通孔37の開口面積の1.5倍程度となっている。
【0034】
第1接着材16は、防水性及び接着性を有した接着材であり、溶液又はゲル状の流動体を固化して使用されるものである。
第1接着材16の具体的な材質としては、熱硬化性樹脂が採用できる。なお、本実施形態では、熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂を採用している。
なお、第1接着材16は、樹脂内に導電性粒子(金属粒子など)を添加して、導電性を持たせてもよい。
【0035】
第2接着材17は、防水性及び接着性を有した接着材であり、溶液又はゲル状の流動体を固化して使用されるものである。
第2接着材17の具体的な材質としては、熱硬化性樹脂が採用できる。なお、本実施形態では、熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂を採用している。
なお、第2接着材17は、樹脂内に導電性粒子(金属粒子など)を添加して、導電性を持たせてもよい。
【0036】
有機EL装置1は、後述する発光領域30内の有機EL素子20の厚み方向(積層方向)の投影面上に上記した給電シート11が被覆されることによって、高い封止性及び均熱性を保っている。
【0037】
このことを踏まえて、以下、有機EL装置1の詳細な構造について説明する。
【0038】
有機EL装置1は、基板2を平面視した際に、
図3のように点灯時において実際に発光する発光領域30と、発光しない非発光領域31から形成されている。
発光領域30は、
図3,
図4のように第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6が重畳した部位であり、四角形の4角が切り取られた形状をしている。すなわち、発光領域30は、8角形状をしている。
なお、発光領域30に位置する有機EL素子20を非発光領域31の有機EL素子20と区別するために、発光素子18ともいう。すなわち、発光素子18は、第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6の重畳したものである。
【0039】
非発光領域31は、
図3のように発光領域30を囲むように形成された環状の領域である。
非発光領域31の面積(非発光面積)は、発光領域30の面積(発光面積)の1/500以上1/100以下であることが好ましい。
この範囲であれば、使用者にとって非点灯部位が気にならない、挟額縁の有機EL装置が実現できる。
【0040】
非発光領域31は、外部電源と電気的に接続することによって、発光領域30内の有機EL素子20(発光素子18)に給電可能な第1給電領域32及び第2給電領域33を有している。
【0041】
具体的には、非発光領域31は、4つの第1給電領域32a,32b,32c,32dと、その大外を囲む環状の第2給電領域33から形成されている。
第1給電領域32(32a,32b,32c,32d)は、それぞれ発光領域30に隣接して設けられた領域であり、負極を担う領域である。
各第1給電領域32a,32b,32c,32dは、基板2の各角部に対応して設けられている。また、これらの第1給電領域32a,32b,32c,32dは、発光領域30と合わさって四角形の領域を形成している。すなわち、これら4つの第1給電領域32a,32b,32c,32dは、発光領域30の欠落した部位を補う位置にあり、具体的には、それぞれ斜辺が発光領域30側を向いた二等辺三角形状をしている。
なお、本実施形態では、第1給電領域32a,32b,32c,32dは、発光領域30と合わさって正方形の領域を形成している。
【0042】
第2給電領域33は、上記した各第1給電領域32及び発光領域30からなる領域の周りを囲むように設けられた領域であり、正極を担う領域である。すなわち、第1給電領域32及び発光領域30からなる領域を中心として、周方向に連続している。
【0043】
各領域の位置関係について説明すると、発光領域30は、
図3のように長さ方向l及び幅方向wの中央に位置しており、4つの第1給電領域32a,32b,32c,32dのうち、2つの第1給電領域32a,32dは、発光領域30を挟んで対角線上に対向する位置にあり、残りの第1給電領域32b,32cは、残りの対角線上に対向する位置にある。第2給電領域33は、上記したように発光領域30及び各第1給電領域32のさらに外側に位置している。
【0044】
有機EL装置1の断面構造について注目すると、有機EL装置1は、
図4,
図5,
図6のように深さの異なる複数の溝によって、複数に区切られている。
具体的には、有機EL装置1は、
図3,
図5のように部分的に第1電極層3を除去した第3絶縁溝21と、第1絶縁溝22と、第2絶縁溝23と、
図2,
図4のように部分的に機能層5と第2電極層6と無機封止層7を除去した封止用絶縁溝24とを有しており、これらの溝によって複数の区画に分離されている。
【0045】
各溝について詳説すると、第3絶縁溝21は、
図6,
図8(a)のように基板2上に積層された第1電極層3を分離する溝であり、発光領域30と第1給電領域32を分離する溝である。
第3絶縁溝21内には
図6のように機能層5の一部が進入しており、機能層5は第3絶縁溝21の底部で基板2と直接接触している。すなわち、発光領域30内の第1電極層3と第1給電領域32内の第1電極層3を、機能層5によって電気的に切り離している。
【0046】
第1絶縁溝22及び第2絶縁溝23は、
図6,
図8(a)のように基板2上に積層された第1電極層3を分離する溝であり、第1給電領域32と第2給電領域33、及び、発光領域30と第2給電領域33を、それぞれ分離する溝である。
第1絶縁溝22は、
図8(a)のように横方向(幅方向)に延びており、その中途で、第3絶縁溝21と接続して連続している。
第2絶縁溝23は、
図8(a)のように縦方向(長さ方向)に延びており、その中途で、第3絶縁溝21と接続して連続している。
すなわち、第3絶縁溝21と、第1絶縁溝22と、第2絶縁溝23は、第1給電領域32の外形を形成しており、その内部に第1電極層3からなる島状の孤立部35を形成している。
【0047】
第1絶縁溝22は、
図3のように第3絶縁溝21との接続部位を基準として、内側(横方向wの中央側)に位置する内側絶縁横溝25と、外側(横方向wの端部側)に位置する外側絶縁横溝26からなる。同様に、第2絶縁溝23は、第3絶縁溝21との接続部位を基準として、内側(縦方向lの中央側)に位置する内側絶縁縦溝27と、外側(縦方向lの端部側)に位置する外側絶縁縦溝28からなる。
すなわち、孤立部35は、第3絶縁溝21と外側絶縁横溝26と外側絶縁縦溝28によって連続線状に他の第1電極層3から分離されている。
【0048】
封止用絶縁溝24は、
図4,
図9(e)のように第1電極層3上に積層された機能層5と第2電極層6と無機封止層7の3層に亘って除去した溝であり、第1電極層3に対する給電シート11の接着性を高める溝である。封止用絶縁溝24の内部には、硬質接着層10が充填されており、硬質接着層10を介して第1電極層3と給電シート11の第1導電部材12を接着している。
すなわち、硬質接着層10は、有機物を含んだ機能層5を介さずに第1電極層3と給電シート11を直接接着しており、基板2に対して給電シート11が剥離しにくい。
【0049】
各溝を有機EL装置1全体でみると、
図3のように、横方向wにおいて、隣接する内側絶縁横溝25,25は、所定の間隔を空けて配されている。この横方向wに隣接する内側絶縁横溝25,25間の間隔は、基板2全体の横方向の長さの1/3以上5/6以下であることが好ましい。また、内側絶縁横溝25の長さは、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。
縦方向lにおいて、隣接する内側絶縁縦溝27,27は、所定の間隔を空けて配されている。この縦方向lに隣接する内側絶縁縦溝27,27間の間隔は、基板2全体の縦方向の長さの1/3以上5/6以下であることが好ましい。また、内側絶縁縦溝27の長さは、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0050】
横方向wに隣接する第1絶縁溝22,22は、同一直線上に並んでおり、縦方向lに隣接する第1絶縁溝22,22は、互いに平行となっている。
横方向wに隣接する第2絶縁溝23,23は、互いに平行となっており、縦方向lに隣接する第2絶縁溝23,23は、同一直線上に並んでいる。
斜め方向s(本実施形態では、対角線方向)に発光領域30を挟んで対向する第3絶縁溝21,21は、互いに平行となっている。
【0051】
続いて、各部材の位置関係について説明する。
第1電極層3上に位置する機能層5は、
図4,
図5,
図6のように内側(基板2の中心側)から外側に向けて延びており、発光領域30と非発光領域31に跨がって設けられている。
具体的には、機能層5は、
図5,
図8(b)のように横方向において、発光領域30内から内側絶縁縦溝27を超えて外側に延びており、第2給電領域33の一部まで至っている。また、機能層5は、縦方向において、発光領域30内から内側絶縁横溝25を超えて外側に延びており、第2給電領域33の一部まで至っている。機能層5は、
図6のように斜め方向(基板2の対角線方向)において、発光領域30内から第3絶縁溝21を超えて外側に延びており、第1給電領域32内の孤立部35の一部まで至っている。
【0052】
機能層5上に位置する第2電極層6は、
図6,
図8(c)のように、内側(基板2の中心側)から外側に向けて延びており、発光領域30と第1給電領域32の一部に跨がって設けられている。しかし、第2電極層6は、第2給電領域33には至っていない。
具体的には、第2電極層6は、
図5のように横方向において、発光領域30内から内側絶縁縦溝27の近傍まで外側に向けて延びている。第2電極層6は、縦方向において、発光領域30内から内側絶縁横溝25近傍まで外側に向けて延びている。
すなわち、第2電極層6は、横方向及び縦方向において内側絶縁縦溝27及び内側絶縁横溝25まで至っていない。
第2電極層6は、
図3,
図6のように斜め方向(基板2の対角線方向)において、発光領域30内から第3絶縁溝21を超えて外側に延びており、外側絶縁横溝26と外側絶縁縦溝28との交点の近傍まで延びている。すなわち、第2電極層6は、第1給電領域32内において、外側絶縁横溝26と外側絶縁縦溝28まで至っていない。
【0053】
第2電極層6上に位置する無機封止層7は、内側(基板2の中心側)から外側に向けて延びており、発光領域30から非発光領域31の一部に跨がって設けられている。
具体的には、無機封止層7は、
図4,
図5,
図8(d)のように横方向において、発光領域30内から第2給電領域33に向けて、内側絶縁縦溝27を超えて延びており、さらに、機能層5の端部まで覆っている。無機封止層7は、縦方向において、発光領域30内から第2給電領域33に向けて、内側絶縁横溝25を超えて延びており、さらに、機能層5の端部まで覆っている。無機封止層7は、
図2,
図3,
図6のように斜め方向において、発光領域30内から第1給電領域32に向けて第3絶縁溝21の投影面上を超えて延びている。しかし、無機封止層7は、斜め方向において、第1給電領域32では、第2電極層6の一部を覆っているが、第2電極層6の大部分は、露出している。
【0054】
無機封止層7上に位置する軟質接着層8は、
図2,
図4,
図9(f)のように発光領域30に位置しており、第2給電領域33には至っていない。また、軟質接着層8は、無機封止層7上に留まっており、無機封止層7からはみ出していない。すなわち、軟質接着層8は、面状に広がりをもって、無機封止層7の大部分を覆っている。
【0055】
硬質接着層10は、
図4,
図9(g)のように発光領域30内の軟質接着層8の大部分の縁及び第1給電領域32内の第2電極層6の縁に沿って設けられている。すなわち、硬質接着層10は、軟質接着層8の周囲を囲んでいる。しかし、硬質接着層10は、軟質接着層8及び第2電極層6の大部分又は全部を被覆していない。
硬質接着層10は、第1導電部材12が有機EL素子20側に近接しないように第1導電部材12を支持している。すなわち、硬質接着層10は、発光領域30を囲むような壁を形成している。
【0056】
第1導電部材12は、
図3,
図9のように少なくとも軟質接着層8全体を覆っており、さらに、硬質接着層10の一部又は全部を覆っている。すなわち、給電シート11は、
図4のように、少なくとも発光領域30を覆っており、さらに発光領域30を跨がって第1給電領域32まで至っている。つまり、第1導電部材12は、第2電極層6の投影面上の大部分又は全部を覆っており、軟質接着層8及び硬質接着層10によって基板2と一体化されている。
そのため、第1導電部材12の均熱機能によって発光素子18全体の熱を均等にすることができ、発光領域30に位置する発光素子18の輝度むらを防止することができる。
【0057】
絶縁シート13は、
図4のように発光領域30から非発光領域31の一部に跨がって設けられている。
具体的には、絶縁シート13は、
図6,
図10(i)のように発光領域30及び第1給電領域32の全域に亘って設けられており、さらに第2給電領域33の一部まで延びている。また、絶縁シート13は、基板2の端部まで至っておらず、有機EL装置1は、基板2の端部近傍に第1電極層3が絶縁シート13から露出した給電部36が形成されている。
【0058】
第2導電部材14は、
図4,
図6,
図10(k)のように発光領域30の一部から非発光領域31全体に広がっている。すなわち、第2導電部材14は、第1給電領域32と、第2給電領域33の全域に位置している。言い換えると、いずれの方向においても、基板2の端部まで至っている。
【0059】
絶縁シート13の貫通孔37と第2導電部材14の貫通孔38は、
図2のように、互いに連通しており、一つの連通孔を形成している。
上記したように第2導電部材14の貫通孔38は、絶縁シート13の貫通孔37よりも開口面積が大きいため、給電シート11を平面視すると、
図2のように第2導電部材14の貫通孔38の開口内には、第1導電部材12が露出した第1端子部39と、絶縁シート13が露出した離間部40が形成されている。
また、第2導電部材14の貫通孔38の周囲は、第2導電部材14が露出しており、第2端子部41を形成している。また、絶縁シート13の貫通孔37の開口中心と第2導電部材14の貫通孔38の開口中心は、同一中心となっている。すなわち、給電シート11は、平面視したときに、第1端子部39の周りに離間部40が位置し、この離間部40の周りに第2端子部41が位置している。
【0060】
第1端子部39は、上記したように第1導電部材12の露出部分であって、外部電源に電気的に接続された外部端子と接続可能な部位である。
離間部40は、上記したように絶縁シート13の露出部分であって、第1端子部39と第2端子部41の間を離間する部位である。
第2端子部41は、上記したように第2導電部材14の露出部分であって、外部電源に電気的に接続された外部端子と接続可能な部位である。
第1端子部39は、外部端子を接続することによって、第1導電部材12を介して第1給電領域32内の第2電極層6に給電することができ、第2端子部41は、外部端子を接続することによって、第2導電部材14を介して第2給電領域33内の第1電極層3に給電することができる。
【0061】
第2導電部材14は、
図4,
図5,
図6のように、第2給電領域33内において、第1接着材16によって第1電極層3と接着されており、発光領域30内において、第2接着材17によって、絶縁シート13と接着されている。
【0062】
第2給電領域33内における第2導電部材14と第1電極層3の接着部位について注目すると、第1接着材16は、
図7のように第2導電部材14の下面(基板2側の面)であって、第2導電部材14の外側の縁に沿って環状に設けられている。
この第1接着材16の塗布部分は、
図4,
図6のように、第2給電領域33であって、第2導電部材14の外側端部から5mm以内の領域に塗布されている。
そして、第2給電領域33において、第1電極層3には、
図5,
図6のように、第1接着材16から露出した部位たる給電部36が存在している。
そして、この給電部36には、第2導電部材14の一部が直接接触している。つまり、第1電極層3からなる給電部36と第2導電部材14が接触することによって、第2給電領域33内の第1電極層3と第2導電部材14が電気的に接続されている。
【0063】
給電部36の面積は、第2給電領域33の大部分を占めている。給電部36の面積は、特に第2給電領域33の面積の50パーセント以上90パーセント以下であることが好ましく、70パーセント以上90パーセント以下であることがより好ましい。
給電部36の面積が50パーセント未満になると、第2導電部材14との接触面積が小さすぎて、十分な導通をとることができない場合がある。90パーセントを超えると、第1接着材16の接着面積が小さすぎて、十分な接着強度が得られない場合がある。
【0064】
発光領域30内での第2導電部材14と絶縁シート13の接着部位について注目すると、第2接着材17は、
図7のように第2導電部材14の下面(基板2側の面)であって、第2導電部材14の内側の縁に沿って環状に設けられている。第2接着材17は、第2導電部材14の内側端部から5mm以内の領域に塗布されている。
【0065】
このように、第2導電部材14は、外側の縁及び内側の縁に沿って、第1接着材16及び第2接着材17が塗布されて接着されているため、比較的少ない量の接着材で第2導電部材14を接着することが可能であり、第2導電部材14が基板2に対して離反することを防止することができる。
【0066】
次に、本実施形態に係る有機EL装置1の製造方法について説明する。
有機EL装置1は、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置(本実施形態では、レーザースクライブ装置)を使用してパターニングを行い、製造される。
【0067】
まず、有機EL素子20を積層する有機EL素子形成工程を行う。
具体的には、スパッタ法やCVD法によって基板2の一部又は全部に第1電極層3を成膜し、その後、この第1電極層3が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって第3絶縁溝21と第1絶縁溝22と第2絶縁溝23を形成する(
図8(a))。
このとき、第1絶縁溝22は基板2の横辺に平行に設けられており、第2絶縁溝23は基板2の縦辺に平行に設けられている。第3絶縁溝21は、縦辺及び横辺の双方に交差する方向に設けられている。
また、第3絶縁溝21と第1絶縁溝22と第2絶縁溝23は、それぞれ基板2の角部の数と同数(本実施形態では4つ)ずつ設けられている。
【0068】
次に、真空蒸着装置によって、この基板に電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層などを順次積層し、機能層5を成膜する(
図8(b))。
このとき、機能層5は、発光領域30のほぼ全体に積層されており、さらに、内側絶縁横溝25、内側絶縁縦溝27、第3絶縁溝21をそれぞれ超えて積層されて、非発光領域31側に一部が至っている。すなわち、内側絶縁横溝25、内側絶縁縦溝27、第3絶縁溝21のそれぞれの内部に機能層5が積層され、内側絶縁横溝25、内側絶縁縦溝27、第3絶縁溝21のそれぞれの内部に機能層5が満たされている。
【0069】
次に、真空蒸着装置によって、この機能層5が成膜された基板に第2電極層6を成膜する(
図8(c))。
このとき、第2電極層6は、機能層5上に積層されており、第1給電領域32においては、上記したように第2電極層6の一部が、機能層5から張り出して露出部42を形成している。この露出部42は、第1電極層3からなる孤立部35上に積層されており、当該孤立部35と直接接触している。また、第2電極層6は、外側絶縁横溝26、外側絶縁縦溝28の内側に留まっており、第2給電領域33内には至っていない。
以上が、有機EL素子形成工程である。
【0070】
続いて、無機封止層7を形成する無機封止層積層工程を行う。
具体的には、まず、この基板の一部をマスクで覆い、CVD装置によって、第1無機封止層50(
図4参照)を成膜する。
このとき、第1無機封止層50は、少なくとも発光領域30内の第2電極層6上を覆っており、さらに、第1給電領域32及び第2給電領域33の一部まで至っている。
また、本実施形態の第1無機封止層50は、いずれの方向においても機能層5の端部を超えて覆っている。
このとき、第2電極層6からなる露出部42は、第1無機封止層50の外に位置しており、被覆されていない。
【0071】
その後、第1無機封止層50を成膜したCVD装置から取り出して、第1無機封止層50に第2無機封止層51の原料を塗布し、第2無機封止層51(
図4参照)を形成し、無機封止層7が形成される(
図8(d))。
このとき、第1無機封止層50上の全面を第2無機封止層51が覆っている。
このようにして、乾式法によって形成された第1無機封止層50上に湿式法によって形成された第2無機封止層51が積層されて無機封止層7が形成される。
またこのとき、第2電極層6からなる露出部42は、第2無機封止層51の外に位置しており、被覆されていない。
【0072】
続いて、上記した手順によって形成された無機封止層7に給電シート11を接着する給電シート接着工程を行う。
給電シート接着工程では、無機封止層7に軟質接着層8及び硬質接着層10を形成して、給電シート11を接着する。
具体的には、まず、上記した手順によって成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって封止用絶縁溝24を形成する(
図9(e))。
このとき、第2電極層6の外周端に沿って封止用絶縁溝24が形成されている。また、封止用絶縁溝24の底部では、第1電極層3が露出している。
【0073】
続いて、無機封止層7上に軟質接着層8を真空ラミネーターで貼り合わせる(
図9(f))。
このとき、軟質接着層8を形成するに当たって、軟質接着層8の両面に絶縁性のセパレーターが被覆したものを用いる。また、貼り合わせ時には、軟質接着層8の片面のセパレーターを剥離して、剥離面を無機封止層7上に貼り合わせる。
そして、この貼り合わせた状態では、
図2,
図4のように軟質接着層8は少なくとも発光素子18全体を覆っている。軟質接着層8は、封止用絶縁溝24まで至っていない。すなわち、封止用絶縁溝24には、軟質接着層8は被覆しておらず、封止用絶縁溝24の底部には、第1電極層3が露出している。
【0074】
その後、前記剥離面の反対側の面のセパレーターを剥離し、硬質接着層10の原料をディスペンサーによって塗布し、これら軟質接着層8及び硬質接着層10上に第1導電部材12を載置する。そして、硬質接着層10の原料を乾燥/硬化させることによって、硬質接着層10を成膜する(
図9(g)から
図9(h))。
このとき、発光領域30と第2給電領域33においては、硬質接着層10は、軟質接着層8の一部を覆っており、軟質接着層8と無機封止層7に跨がって塗布されて形成されている。また、第1給電領域32においては、硬質接着層10は、第2電極層6の端部に沿って塗布されて形成されている。
第1導電部材12は、
図4のように軟質接着層8及び硬質接着層10の上面全面を覆っており、軟質接着層8及び硬質接着層10の接着機能によって無機封止層7及び第2電極層6に一体化されている。
また、第2給電領域33においては、第1導電部材12は、被覆していない。すなわち、第2給電領域33には、第1電極層3が露出した給電部36が存在する。
【0075】
続いて、この基板の第1導電部材12上に絶縁シート13を載置し、真空ラミネーターで貼り合わせる(
図10(i))。
【0076】
このとき、絶縁シート13は
図10(i)のように第1導電部材12の外部への露出部分全体に覆っており、絶縁シート13の貫通孔37の開口が中央に位置している。絶縁シート13の貫通孔37の開口から第1導電部材12が露出して第1端子部39を形成している。
また、第2給電領域33においては、絶縁シート13は、ほとんど被覆していない。すなわち、第1電極層3が露出した給電部36が存在する。
【0077】
続いて、絶縁シート13が設けられた基板上に、第1接着材16及び第2接着材17の原料をディスペンサーによって塗布し、絶縁シート13上に第2導電部材14を載置する。そして、第1接着材16及び第2接着材17の原料を乾燥/硬化させることによって、第2導電部材14を接着する(
図10(j)から
図10(k))。
【0078】
このとき、第1電極層3が露出した給電部36に第1接着材16と無機封止層7の間を通過して第2導電部材14が接触している。
また、第2導電部材14の貫通孔38は、絶縁シート13の貫通孔37と部材厚方向に重なっていない。第2導電部材14の貫通孔38の開口から絶縁シート13の一部が露出して離間部40を形成している。第2導電部材14の貫通孔38の開口の周りには、第2端子部41が形成されている。
【0079】
このようにして給電シート接着工程を終了し、有機EL装置1が完成する。
【0080】
続いて、有機EL装置1に外部電源の端子を取り付け給電した際の電流の流れについて説明する。すなわち、
図11のように第2導電部材14の第2端子部41に正極端子を取り付け、第1導電部材12の第1端子部39に負極端子を取り付けた場合について説明する。
【0081】
外部電源から供給された電流は、
図11のように、中央の第2端子部41から第2導電部材14を介して第2給電領域33内の第1電極層3に伝わる。そして、第2給電領域33内の第1電極層3に伝わった電流は、
図12のように第2給電領域33内で第1絶縁溝22の内側絶縁横溝25及び第2絶縁溝23の内側絶縁縦溝27を迂回して、隣接する第1絶縁溝22,22間又は隣接する第2絶縁溝23,23間の第1電極層3を通過して発光領域30内の第1電極層3に至る。
そして、発光領域30内の第1電極層3に至った電流は、
図11のように発光領域30内で機能層5を経由して第2電極層6に至る。このとき、機能層5に電流が通過し、所望の発光色を呈する。
発光領域30内の第2電極層6に至った電流は、
図13のように第1給電領域32内の第2電極層6に拡散する。第1給電領域32内の第2電極層6(露出部42)に至った電流は、孤立部35を介さず、直接第1導電部材12に伝わり、第1端子部39から外部電源に戻る。
このように、外部電源から供給される電流は、有機EL装置1の中央から入って発光領域30内の機能層5全体が発光し、再び有機EL装置1の中央に戻る。
【0082】
本実施形態の有機EL装置1は、上記したように、内側絶縁横溝25及び内側絶縁縦溝27を迂回して発光領域30に位置する発光素子18に給電される。
ここで、内側絶縁横溝25及び内側絶縁縦溝27を設けなかった場合の電流の流れについて説明する。
通常、電流は、電圧がかかった電極間の最短距離を移動する。そのため、
図14のように内側絶縁横溝25及び内側絶縁縦溝27がない場合には、電流が第2給電領域33から発光領域30に伝わる部位が第1給電領域32に近すぎるため、発光領域30全体にまんべんなく伝導する前に第1給電領域32に伝わってしまい、輝度むらが生じる場合がある。
そこで、本実施形態の有機EL装置1では、内側絶縁横溝25及び内側絶縁縦溝27を設けることによって、第2給電領域33から発光領域30に伝わる部位と第1給電領域32の距離を離間することによって、発光領域30全体に電流を行き渡らせることが可能であり、面内の輝度むらの発生を抑制できる。
【0083】
最後に、有機EL装置1の各層の構成について説明する。
【0084】
基板2は、透光性及び絶縁性を有したものであり、具体的には、ソーダ石灰ガラスや、無アルカリガラスなどが採用できる。
基板2は、多角形状をしており、その中でも四角形であることが好ましい。本実施形態では、長方形状のガラス基板を採用している。
【0085】
第1電極層3の素材は、透明であって、導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性酸化物などが採用される。機能層5内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOが特に好ましい。本実施形態では、ITOを採用している。
【0086】
機能層5は、第1電極層3と第2電極層6との間に設けられ、少なくとも一つの発光層を有している層である。機能層5は、主に有機化合物からなる複数の層から構成されている。この機能層5は、一般的な有機EL装置に用いられている低分子系色素材料や、共役系高分子材料などの公知のもので形成することができる。また、この機能層5は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層からなる積層多層構造であってもよい。
【0087】
第2電極層6の材料は、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などの金属が挙げられる。本実施形態の第2電極層6は、Alで形成されている。また、これらの材料はスパッタ法又は真空蒸着法によって堆積されることが好ましい。
また、第2電極層6の電気伝導率及び熱伝導率は、第1電極層3よりも大きい。言い換えると、第2電極層6は、第1電極層3よりも電気伝導性及び熱伝導性が高い。
【0088】
無機封止層7は、
図4のように有機EL素子20側から乾式法によって形成される第1無機封止層50と、湿式法によって形成される第2無機封止層51がこの順に積層されて形成されている。
第1無機封止層50は、化学気相蒸着によって形成される層であり、さらに詳細にはシランガスやアンモニアガス等を原料としてプラズマCVD法で成膜される層である。第1無機封止層50は、後述するように有機EL装置1の製造工程において、水分含量が少ない雰囲気下で、有機EL素子20の形成工程に連続して成膜できるため、空気や水蒸気に晒さずに成膜でき、使用直後の初期ダークスポットの発生を低減することができる。
第1無機封止層50の素材は、酸素、炭素、窒素の中から選ばれた1種類以上の元素と、ケイ素元素とからなるシリコン合金により形成されている。Si−O、Si−N、Si−H、N−H等の結合を含む窒化珪素や酸化珪素、及び両者の中間固溶体である酸窒化珪素であることが特に好ましい。
【0089】
第2無機封止層51は、液体状又はゲル状の原料を塗布した後、化学反応を介して成膜される層である。第2無機封止層51は、より詳細には、緻密性を有したシリカを素材としている。また、第2無機封止層51はポリシラザン誘導体を原料とするのが好ましい。ポリシラザン誘導体を用いてシリカ転化によって第2無機封止層51を成膜した場合、シリカ転化時に重量増加を生じ、体積収縮が小さい。また、シリカ膜転化時(固化時)に樹脂の耐え得る温度で十分にしかもクラックを生じ難くすることができる。
なお、ここでいうポリシラザン誘導体は、珪素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO
2、Si
3N
4、及び両者の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体ポリマーである。また、このポリシラザン誘導体は、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体も含む。
ポリシラザン誘導体の中でも特に側鎖が全て水素であるペルヒドロポリシラザンや、珪素と結合する水素部分が一部メチル基に置換された誘導体が好ましい。
【0090】
また、このポリシラザン誘導体は、有機溶媒に溶解した溶液状態で塗布し使用することが好ましい。この溶解する有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。
【0091】
第2無機封止層51は、第1無機封止層50とは異なる材料を封止層として積層したものであり、相互の欠陥を補完することによって、封止性能を高め、経時的な新たなダークスポットの発生を防止したり、発生したダークスポットの拡大化を抑制したりすることができる。
【0092】
無機封止層7の平均厚みは、1μmから10μmであることが好ましく、2μm〜5μmであることがより好ましい。
無機封止層7の一部を担う第1無機封止層50の厚みは、1μmから5μmであることが好ましく、1μmから2μmであることがより好ましい。
また、無機封止層7の一部を担う第2無機封止層51の厚みは、好ましくは1μmから5μmであることが好ましく、1μmから3μmであることがより好ましい。
【0093】
軟質接着層8に目を移すと、軟質接着層8は、柔軟性を有し、所定の条件によって塑性変形又は弾性変形する層である。本実施形態では、軟質接着層8は、無機封止層7の圧縮応力などを受けた場合に、その応力にほとんど逆らわずに、塑性変形可能となっている。
JIS K 6253に準じた軟質接着層8のショア硬さは、ショア硬さがA30以上A70以下であり、A40以上A65以下であることが好ましく、A45以上A63以下であることがより好ましい。
軟質接着層8のショア硬さがA70より大きい場合、軟質接着層8の剛性が大きすぎて、膨らみや衝撃が十分吸収できない。また、給電シート11として例えば剛性が低いものを採用する際に、軟質接着層8のショア硬さがA30より小さい場合には、軟質接着層8の剛性が小さすぎて給電シート11の形状を維持できない。
軟質接着層8の曲げ弾性率は、3MPa以上、30MPa以下であることが好ましく、3MPa以上、25Pa以下であることがより好ましく、3.9MPa以上23MPa以下であることが特に好ましい。
【0094】
軟質接着層8の具体的な材質としては、アクリルゴム(ACM)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、シリコーンゴム(Q)、ブチルゴム(IIR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料が使用できるが、一定の水蒸気バリア性を有し、安価に入手可能である点から、アクリルゴム系樹脂、エチレンプロピレンゴム系樹脂、シリコーンゴム系樹脂、及びブチルゴム系樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましく、その中でもフィルムとして入手が容易な、ブチルゴム系樹脂がより好ましい。
【0095】
また、本実施形態の軟質接着層8は、接着性を有しており、複数の部材を互いに接着可能となっている。具体的には、本実施形態の軟質接着層8は、シート状又は板状の部材であり、表面に粘着性加工を施されている。
軟質接着層8の平均厚みは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
軟質接着層8の平均厚みが2μmより薄くなると、無機封止層7の膨らみや衝撃が十分吸収できない。100μmより厚くなると、給電シート11まで、熱が伝わらず、軟質接着層8内で熱がこもる場合がある。
【0096】
硬質接着層10は、軟質接着層8よりも剛性が高く硬い材料となっている。具体的には、JIS K 6253に準じた硬質接着層10のショア硬さ(及び対応する曲げ弾性率の概算値)は、ショアA80以上、すなわち、ショアD30以上(25MPa以上)であることが好ましく、より高信頼性の有機EL装置とする観点からショアD55以上(250MPa以上)、ショアD95以下(6000MPa以下)とすることがより好ましく、ショアD80以上(1500MPa以上)、ショアD90以下(4000MPa以下)とすることがさらに好ましい。
また、本実施形態の硬質接着層10は、防水性及び接着性を有しており、複数部材を互いに接着可能となっている。具体的には、本実施形態の硬質接着層10は、溶液又はゲル状の流動体を固化して形成されるものである。
硬質接着層10の具体的な材質としては、熱硬化性樹脂が採用できる。なお、本実施形態では、熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂を採用している。
【0097】
本実施形態の有機EL装置1によれば、発光領域30内の有機EL素子20は、無機封止層7によって、1次封止をされており、さらに、その外側を給電シート11、硬質接着層10、並びに第1接着材16によって、2次封止しているため、発光領域30内の有機EL素子20に水等が進入しにくく、ダークスポットが形成しにくい。
【0098】
また、本実施形態の有機EL装置1によれば、発光領域30内の有機EL素子20で発生した熱は、第1導電部材12で均熱され、さらに、第2導電部材14によって均熱機能を高めている。そのため、発光領域30内の発光素子18の温度が均等となり、輝度むらを抑制することができる。
【0099】
上記した実施形態では、軟質接着層8を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、軟質接着層8を設けなくてもよい。