特許第6091247号(P6091247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091247車載オーディオシステム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091247
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】車載オーディオシステム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/04 20060101AFI20170227BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20170227BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H04R3/04
   H04R3/12 Z
   B60R11/02 S
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-32845(P2013-32845)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-165569(P2014-165569A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌平
(72)【発明者】
【氏名】安齋 政実
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−264732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/00−11/06
H04R 1/20− 1/40
H04R 3/00− 3/14
H04R 5/00− 5/04
H04S 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載されるオーディオシステムであって、
車室前方に配置されたフロントスピーカと、
車室後方に配置されたリアスピーカと、
前席近傍の位置に配置された前席用スピーカと、
後席近傍の位置に配置された後席用スピーカと、
音声の周波数特性を調整し前記フロントスピーカに出力するフロント音声処理部と、
音声の周波数特性を調整し前記リアスピーカに出力するリア音声処理部と、
音声の周波数特性を調整し前記前席用スピーカに出力する前席音声処理部と、
音声の周波数特性を調整し前記後席用スピーカに出力する後席音声処理部と、
制御部とを有し、
前席のユーザ用の音源と後席のユーザ用の音源として異なる音源が設定された場合に、前記制御部は、
前記フロント音声処理部に、前記前席のユーザ用の音源から出力される音声の所定の周波数帯域を減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記フロントスピーカへの出力を行わせ、
前記前席音声処理部に、前記前席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域以外の周波数帯域を前記所定の周波数帯域よりも大きく減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記前席用スピーカへの出力を行わせ、
前記リア音声処理部に、前記後席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域を減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記リアスピーカへの出力を行わせ、
前記後席音声処理部に、前記後席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域以外の周波数帯域を前記所定の周波数帯域よりも大きく減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記後席用スピーカへの出力を行わせ、かつ、
前記所定の周波数帯域は音声の中域を構成する周波数帯域またはその一部の帯域であることを特徴とする車載オーディオシステム。
【請求項2】
請求項1記載の車載オーディオシステムであって、
前記所定の周波数帯域は600Hzを対数周波数軸上の中心周波数とする帯域であることを特徴とする車載オーディオシステム。
【請求項3】
請求項1記載の車載オーディオシステムであって、
前記所定の周波数帯域は120Hzから3kHzの間の帯域であることを特徴とする車載オーディオシステム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の車載オーディオシステムであって、
前記前席用スピーカは、前記前席のヘッドレストの近傍の位置に配置され、
前記後席用スピーカは、前記後席のヘッドレストの近傍の位置に配置されていることを特徴とする車載オーディオシステム。
【請求項5】
請求項1、2または3車載オーディオシステムであって、
前記前席用スピーカは、前記前席のヘッドレストの両側に少なくとも一つずつ配置され、
前記後席用スピーカは、前記後席のヘッドレストの両側に少なくとも一つずつ配置されていることを特徴とする車載オーディオシステム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の車載オーディオシステムであって、
前記制御部は、前席のユーザ用と後席のユーザ用に共通の音源が設定された場合に、
前記フロント音声処理部に、前記共通の音源から出力される音声の、前席のユーザ用と後席のユーザ用に共通の音源が設定されている場合用に用意された所定のゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記フロントスピーカへの出力を行わせ、
前記前席音声処理部の前記前席用スピーカへの音声の出力を抑止し、
前記リア音声処理部に、前記共通の音源から出力される音声の、前記所定のゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記リアスピーカへの出力を行わせ、
前記後席音声処理部の前記後席用スピーカへの音声の出力を抑止することを特徴とする車載オーディオシステム。
【請求項7】
請求項6記載の車載オーディオシステムであって、
サブウーハスピーカを備え、
前記制御部は、
前席のユーザ用の音源と後席のユーザ用の音源として異なる音源が設定された場合に、前記サブウーハスピーカの音声の出力を抑止し、
前席のユーザ用と後席のユーザ用に共通の音源が設定された場合に、前記共通の音源から出力される音声の前記サブウーハスピーカからの出力を行うことを特徴とする車載オーディオシステム。
【請求項8】
車室前方に配置されたフロントスピーカと、車室後方に配置されたリアスピーカと、前席近傍の位置に配置された前席用スピーカと、後席近傍の位置に配置された後席用スピーカとを備えた自動車に搭載されるコンピュータによって読み取られ実行されるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
音声の周波数特性を調整し前記フロントスピーカに出力するフロント音声処理部と、
音声の周波数特性を調整し前記リアスピーカに出力するリア音声処理部と、
音声の周波数特性を調整し前記前席用スピーカに出力する前席音声処理部と、
音声の周波数特性を調整し前記後席用スピーカに出力する後席音声処理部と、
周波数特性を調整する後席周波数特性調整部と、
制御部として機能させ、
前席のユーザ用の音源と後席のユーザ用の音源として異なる音源が設定された場合に、前記制御部は、
前記フロント音声処理部に、前記前席のユーザ用の音源から出力される音声の所定の周波数帯域を減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記フロントスピーカへの出力を行わせ、
前記前席音声処理部に、前記前席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域以外の周波数帯域を前記所定の周波数帯域よりも大きく減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記前席用スピーカへの出力を行わせ、
前記リア音声処理部に、前記後席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域を減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記リアスピーカへの出力を行わせ、
前記後席音声処理部に、前記後席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域以外の周波数帯域を前記所定の周波数帯域よりも大きく減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記後席用スピーカへの出力を行わせ、かつ、
前記所定の周波数帯域は音声の中域を構成する周波数帯域またはその一部の帯域であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8記載の車載コンピュータプログラムであって、
前記所定の周波数帯域は600Hzを対数周波数軸上の中心周波数とする帯域であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項8記載のコンピュータプログラムであって、
前記所定の周波数帯域は120Hzから3kHzの間の帯域であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項8、9または10記載のコンピュータプログラムであって、
前記制御部は、前席のユーザ用と後席のユーザ用に共通の音源が設定された場合に、
前記フロント音声処理部に、前記共通の音源から出力される音声の、前席のユーザ用と後席のユーザ用に共通の音源が設定されている場合用に用意された所定のゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記フロントスピーカへの出力を行わせ、
前記前席音声処理部の前記前席用スピーカへの音声の出力を抑止し、
前記リア音声処理部に、前記共通の音源から出力される音声の、前記所定のゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記リアスピーカへの出力を行わせ、
前記後席音声処理部の前記後席用スピーカへの音声の出力を抑止することを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される車載オーディオシステムにおいて、車内の各エリア内のユーザが、エリア毎に異なる音源の音声を良好に聴くことができるように、前記各音源の音声の出力を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される車載オーディオシステムにおいて、車内の各エリア内のユーザが、エリア毎に異なる音源の音声を良好に聴くことができるように、前記各音源の音声の出力を行う技術としては、フロントスピーカとリアスピーカと、前席シートのヘッドレスト付近に設けられたFHスピーカと、後席シートのヘッドレスト付近に設けられたRHスピーカとを備え、前席のユーザに前席用の音源の音声を、後席のユーザに後席用の音源の音声を出力する場合に、フロントスピーカとFHスピーカには、前席用の音源の高域と低域を減衰させた音声を出力し、リアスピーカとRHスピーカには、後席用の音源の高域と低域を減衰させた音声を出力する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-264732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した、フロントスピーカとFHスピーカには、前席用の音源の高域と低域を減衰させた音声を出力し、リアスピーカとRHスピーカには、後席用の音源の高域と低域を減衰させた音声を出力する技術によれば、各席のユーザには、音源の高域と低域を減衰させた音声のみが出力されることとなり、ユーザが聴く音声は主として中域の帯域のみを有する低品質の音声となる。すなわち、この技術によれば、たとえば、音源の音声が音楽である場合には、ユーザが聴く音楽は中域の音のみを含む貧弱なものとならざるを得ない。
【0005】
また、リアスピーカから出力される音声は前席にも届き、フロントスピーカから出力される音声は後席にも届くこととなるため、この技術によれば、聴覚上の認識の良好性の劣化に対する影響の大きい中域において、前席用の音源の音声と後席用の音源の音声とが混じり合って各席のユーザに聞こえてしまうことを充分に排除することはできず、結果、各席のユーザは当該席用の音源の音声を良好に聴くことができない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、自動車に搭載される車載オーディオシステムにおいて、車内の各エリア内の各ユーザが、エリア毎に異なる音源の音声を、より高品質かつ良好に聴くことができるように前記各音源の音声の出力を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載されるオーディオシステムに、車室前方に配置されたフロントスピーカと、車室後方に配置されたリアスピーカと、前席近傍の位置に配置された前席用スピーカと、後席近傍の位置に配置された後席用スピーカと、音声の周波数特性を調整し前記フロントスピーカに出力するフロント音声処理部と、音声の周波数特性を調整し前記リアスピーカに出力するリア音声処理部と、音声の周波数特性を調整し前記前席用スピーカに出力する前席音声処理部と、音声の周波数特性を調整し前記後席用スピーカに出力する後席音声処理部と、制御部とを設け、前席のユーザ用の音源と後席のユーザ用の音源として異なる音源が設定された場合に、前記制御部において、前記フロント音声処理部に、前記前席のユーザ用の音源から出力される音声の所定の周波数帯域を減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記フロントスピーカへの出力を行わせ、前記前席音声処理部に、前記前席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域以外の周波数帯域を前記所定の周波数帯域よりも大きく減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記前席用スピーカへの出力を行わせ、前記リア音声処理部に、前記後席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域を減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記リアスピーカへの出力を行わせ、前記後席音声処理部に、前記後席のユーザ用の音源から出力される音声の前記所定の周波数帯域以外の周波数帯域を前記所定の周波数帯域よりも大きく減衰させるゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記後席用スピーカへの出力を行わせると共に、前記所定の周波数帯域を音声の中域を構成する周波数帯域またはその一部の帯域としたものである。
【0008】
ここで、このような車載オーディオシステムにおいて、前記所定の周波数帯域は600Hzを対数周波数軸上の中心周波数とする帯域であってもよい。または、前記所定の周波数帯域は120Hzから3kHzの間の帯域であってもよい。
【0009】
また、以上の車載オーディオシステムにおいて、前記前席用スピーカは、前記前席のヘッドレストの近傍の位置に配置されるものであってよく、前記後席用スピーカは、前記後席のヘッドレストの近傍の位置に配置されるものであってもよい。または、前記前席用スピーカは、前記前席のヘッドレストの両側に少なくとも一つずつ配置されるものであってもよく、前記後席用スピーカは、前記後席のヘッドレストの両側に少なくとも一つずつ配置されるものであってよい。
【0010】
このような車載オーディオシステムによれば、前席のユーザ用の音源と後席のユーザ用の音源として異なる音源が設定された場合に、フロントスピーカから前席のユーザ用の音源の音声の所定の周波数帯域を減衰させた音声を出力し、前席用スピーカから前席のユーザ用の音源の音声の前記所定の周波数帯域以外の周波数帯域を前記所定の周波数帯域よりも大きく減衰させた音声を出力すると共に、リアスピーカから後席のユーザ用の音源の音声の所定の周波数帯域を減衰させた音声を出力し、後席用スピーカから後席のユーザ用の音源の音声の前記所定の周波数帯域以外の周波数帯域を前記所定の周波数帯域よりも大きく減衰させた音声を出力する。
【0011】
ここで、前席用スピーカは、前席に着席したユーザ専用のスピーカであり、前席近傍したがって前席に着席したユーザの近傍に配置されているために出力音量は比較的小さく設定され、後席用スピーカは、後席に着席したユーザ専用のスピーカであり、後席近傍したがって後席に着席したユーザの近傍に配置されているために出力音量は比較的小さく設定される。よって、これらの設定によって、前席用スピーカの出力する音声は後席のユーザに届かず、後席用スピーカの出力する音声は前席のユーザに届かないようになる。また、前席用スピーカは、前席のユーザ方向に強い指向性を持たせても不都合は生じず、後席用スピーカは、後席のユーザ方向に強い指向性を持たせても不都合は生じない。そして、このように指向性を持たせることにより、より効果的に、前席用スピーカの出力する音声が後席のユーザに届かず、後席用スピーカの出力する音声が前席のユーザに届かないようにすることができる。
【0012】
また、前記所定の周波数帯域は、音声の中域に設定することができ、これにより、前席のユーザには、前席のユーザに聞こえる音声は、フロントスピーカから出力される前席のユーザ用の音源の音声の高低域成分と、前席用スピーカから出力される前席のユーザ用の音源の音声の中域成分と、遠くのリアスピーカから出力されるために小さく聞こえる後席のユーザ用の音源の音声の高低域成分となる。ここで、フロントスピーカから出力される前席のユーザ用の音源の音声の高低域成分と前席用スピーカから出力される前席のユーザ用の音源の音声の中域成分の加算によって、前席のユーザには、全周波数帯域が揃った前席のユーザ用の音源の音声が聞こえることとなる。よって、前席のユーザは、前席のユーザ用の音源の音声を高品質に聴くことができる。また、前席のユーザには、聴覚上の認識の良好性の劣化に対する影響の大きい中域について、後席のユーザ用の音源の音声が聞こえることはないので、前席のユーザ用の音源の音声を良好に聴くことができるようになる。
【0013】
また、同様に、後席のユーザには、後席のユーザに聞こえる音声は、リアスピーカから出力される後席のユーザ用の音源の音声の高低域成分と、後席用スピーカから出力される後席のユーザ用の音源の音声の中域成分と、遠くのフロントスピーカから出力されるために小さく聞こえる前席のユーザ用の音源の音声の高低域成分となる。ここで、リアスピーカから出力される後席のユーザ用の音源の音声の高低域成分と後席用スピーカから出力される後席のユーザ用の音源の音声の中域成分の加算によって、後席のユーザには、全周波数帯域が揃ったリアソースの音声が聞こえることとなる。よって、後席のユーザは、後席のユーザ用の音源の音声を高品質に聴くことができる。また、後席のユーザには、聴覚上の認識の良好性の劣化に対する影響の大きい中域について、前席のユーザ用の音源の音声が聞こえることはないので、後席のユーザ用の音源の音声を良好に聴くことができるようになる。
【0014】
なお、以上のような車載オーディオシステムは、前記制御部において、前席のユーザ用と後席のユーザ用に共通の音源が設定された場合に、前記フロント音声処理部に、前記共通の音源から出力される音声の、前席のユーザ用と後席のユーザ用に共通の音源が設定されている場合用に用意された所定のゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記フロントスピーカへの出力を行わせ、前記前席音声処理部の前記前席用スピーカへの音声の出力を抑止し、前記リア音声処理部に、前記共通の音源から出力される音声の、前記所定のゲイン特性による周波数特性の調整と、当該調整後の音声の前記リアスピーカへの出力を行わせ、前記後席音声処理部の前記後席用スピーカへの音声の出力を抑止するように構成してもよい。
【0015】
また、以上の車載オーディオシステムに、サブウーハスピーカを設け、前記制御部において、前席のユーザ用の音源と後席のユーザ用の音源として異なる音源が設定された場合に、前記サブウーハスピーカの音声の出力を抑止し、前席のユーザ用と後席のユーザ用に共通の音源が設定された場合に、前記共通の音源から出力される音声の前記サブウーハスピーカからの出力を行うように構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、自動車に搭載される車載オーディオシステムにおいて、車内の各エリア内の各ユーザが、エリア毎に異なる音源の音声を、より高品質かつ良好に聴くことができるように前記各音源の音声の出力を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るオーディオシステムの配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るオーディオ出力設定テーブルを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る中域減衰パターンと高低域減衰パターンのゲイン特性を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るオーディオ出力設定制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るAV(オーディオ・ビジュアル)システムの構成を示す。
ここで、本実施形態に係るAVシステムは自動車に搭載されるAVシステムであり、
図示するように、TV受信機やビデオディスクプレイヤなどのビデオを出力する複数のビデオソース機器1、ラジオ受信機やオーディオディスクプレイヤなどのオーディオを出力する複数のオーディオソース機器2、入力装置3、制御ユニット4、フロントディスプレイ5、リアディスプレイ6、フロントスピーカセット7、リアスピーカセット8、前席の各席(運転席と助手席)毎に設けられた前席ショルダースピーカセット9、後席の各席毎に設けられた後席ショルダースピーカセット10、サブウーハスピーカ11を備えている。
【0019】
ここで、フロントスピーカセット7、リアスピーカセット8、前席ショルダースピーカセット9、後席ショルダースピーカセット10は、それぞれR(右)チャネル用のスピーカとL(左)チャネル用のスピーカとの一対のスピーカで構成される。
ここで、図2a、bに示すように、制御ユニット4やビデオソース機器1やオーディオソース機器2は自動車のダッシュボード内に設置され、フロントディスプレイ5はダッシュボードに表示面を前席のユーザに向けて露出して配置されている。また、リアディスプレイ6は、前席と後席の間の天井に表示面を後席のユーザに向けて設置されている。また、入力装置3は、たとえば、フロントディスプレイ5の表示面に重ねて配置されたタッチパネルや、リモートコントローラ等である。
【0020】
また、フロントスピーカセット7のRチャネル用のスピーカ71は前右ドアに配置されており、フロントスピーカセット7のLチャネル用のスピーカ72は前左ドアに配置されている。また、リアスピーカセット8のRチャネル用のスピーカ81は車内の後右ドアの少し後方の位置に配置されており、リアントスピーカセットのLチャネル用のスピーカ82は車内の後左ドアの少し後方の位置に配置されている。又、サブウーハスピーカ11は、後部荷室に配置されている。
【0021】
また、前席ショルダースピーカセット9は前席の各席に対応して設けられ、図2cに示すように、前席ショルダースピーカセット9のRチャネル用のスピーカ91は対応する席のヘッドレストの右側に左斜め前方向を向けて配置され、前席ショルダースピーカセット9のLチャネル用のスピーカ92はヘッドレストの左側に右斜め前方向を向けて配置されている。
【0022】
そして、後席ショルダースピーカセット10は後席の各席に対応して設けられ、前席ショルダースピーカセット9と同様に、後席ショルダースピーカセット10のRチャネル用のスピーカ101は対応する席のヘッドレストの右側に左斜め前方向を向けて配置され、後席ショルダースピーカセット10のLチャネル用のスピーカ102はヘッドレストの左側に右斜め前方向を向けて配置されている。
【0023】
さて、図1に戻り、制御ユニット4は、ビデオソース機器1から入力する符号化ビデオデータから映像データとオーディオデータとを復号する二つのビデオデコーダ401、ビオーディオソース機器から入力する符号化オーディオデータからオーディオデータを復号する二つのオーディオデコーダ402、制御部403、ビデオデコーダ401から入力する映像データが表す映像に調整加工等を施してフロントディスプレイ5に出力するフロント映像処理部410、ビデオデコーダ401から入力する映像データが表す映像に調整加工などを施してリアディスプレイ6に出力するリア映像処理部411、フロントスピーカセット7に対応して設けられたフロント音声処理部412、リアスピーカセット8に対応して設けられたリア音声処理部413、前席ショルダースピーカセット9に対応して設けられた前席ショルダー音声処理部414、後席ショルダースピーカセット10に対応して設けられた後席ショルダー音声処理部415、サブウーハ音声処理部416を備えている。
【0024】
そして、フロント音声処理部412は、イコライザ(EQ)421とDAコンバータ(DAC)422とアンプ423のセットを、Rチャネル用とLチャネル用に2セット備えている。そして、フロント音声処理部412の、Rチャネル用のセットは、イコライザ421で、ビデオデコーダ401またはオーディオデコーダ402からフロント音声処理部412に出力されたRチャネルのオーディオデータの周波数特性を制御部403から指定されたゲイン特性で変更した上で、DAコンバータ422でアナログ音声信号に変換し、変換したアナログ音声信号をアンプ423で制御部403から指定された増幅率で増幅してフロントスピーカのRチャネル用のスピーカ71に出力する。また、フロント音声処理部412の、Lチャネル用のセットは、イコライザ421で、ビデオデコーダ401またはオーディオデコーダ402からフロント音声処理部412に出力されたLチャネルのオーディオデータの周波数特性を制御部403から指定されたゲイン特性で変更した上で、DAコンバータ422でアナログ音声信号に変換し、変換したアナログ音声信号をアンプ423で制御部403から指定された増幅率で増幅してフロントスピーカのLチャネル用のスピーカ72に出力する。
【0025】
次に、リア音声処理部413、前席ショルダー音声処理部414、後席ショルダー音声処理部415も、フロント音声処理部412と同様に、イコライザ421とDAコンバータ(EQ)422とアンプ423のセットを、Rチャネル用とLチャネル用に2セット備えている。そして、リア音声処理部413、前席ショルダー音声処理部414、後席ショルダー音声処理部415は、それぞれ、ビデオデコーダ401またはオーディオデコーダ402から自身に出力されたR/Lチャネルのオーディオデータの周波数特性を制御部403から指定されたゲイン特性で変更した上でアナログ音声信号に変換し、変換したアナログ音声信号を制御部403から指定された増幅率で増幅して、対応するスピーカセットのR/Lチャネル用のスピーカに出力する。
【0026】
但し、前席ショルダースピーカセット9と、後席ショルダースピーカセット10とは、ユーザの耳の近くに配置されているため、前席ショルダースピーカセット9や後席ショルダースピーカセット10から出力する音声の大きさは、フロントスピーカセット7やリアスピーカセット8から出力する音声の大きさより小さくする必要がある。そこで、制御部403は、たとえば、前席ショルダー音声処理部414と後席ショルダー音声処理部415のアンプ423の増幅率を、前席ショルダースピーカセット9や後席ショルダースピーカセット10から出力される音声の大きさが、フロントスピーカセット7やリアスピーカセット8から出力する音声の大きさより一定の比率で小さくなるように設定する。
【0027】
また、サブウーハ音声処理部416は、DAコンバータとアンプ422を備えており、オーディオデコーダ402から出力されるオーディオデータが表す音声を制御部403から指定された増幅率で増幅してサブウーハスピーカ11に出力する。なお、サブウーハスピーカ11の出力する音声帯域は低域のみである。
ただし、以上の制御ユニット4は、ハードウエア的には、マイクロプロセッサや、メモリや、その他の周辺デバイスを有する一般的な構成を備えたコンピュータを用いて構成してよく、この場合、ビデオデコーダ401やオーディオデコーダ402や制御部403や各音声処理部のイコライザ421は、マイクロプロセッサが予め用意されたプログラムを実行することにより実現されるものであってもよい。
【0028】
さて、このような構成において、オーディオシステムは動作モードとして、1ゾーンモードと2ゾーンモードを備えている。
そして、制御部403は、入力装置3で受け付けたユーザ操作に応じて、動作モードを1ゾーンモードと2ゾーンモードとの間で切り替える処理を行う。
また、制御部403は、入力装置3で受け付けたユーザ操作に応じて、ソースとして設定するソース機器(ビデオソース機器1またはオーディオソース機器2)を切り替える処理を行う。ここで、動作モードとして1ゾーンモードが設定されているときに、ソースとして設定することができるのは、共通ソースのみであり、制御部403は、入力装置3で受け付けたユーザ操作に応じて、いずれかのビデオソース機器1またはオーディオソース機器2を共通ソースとして設定する。また、動作モードとして2ゾーンモードが設定されているときに、ソースとして設定することができるのは、フロントソースとリアソースの二つであり、制御部403は、入力装置3で受け付けたユーザ操作に応じて、いずれかのビデオソース機器1またはオーディオソース機器2をフロントソースとして設定し、入力装置3で受け付けたユーザ操作に応じて、いずれかのビデオソース機器1またはオーディオソース機器2のいずれかをリアソースとして設定する。ただし、フロントソースとリアソースとして同じ機器(ビデオソース機器1またはオーディオソース機器2)を設定することは禁止する。
【0029】
以下、このような動作モードとソースの設定に応じて、制御部403が行うオーディオ出力設定の制御動作について説明する。
まず、オーディオ出力設定の制御のために予め制御部403に設定されているオーディオ出力設定テーブルについて説明する。
図3に、オーディオ出力設定テーブルの内容を示す。
図示するようにオーディオ出力設定テーブルには、1ゾーンモードと2ゾーンモードのそれぞれに対して、各音声処理部の出力の有無と、ソースと、イコライザ421の設定が登録されている。ここで、出力の有無は、その音声処理部から音声の出力を行うかどうかの設定を表し、ソースは、その音声処理部に入力させるオーディオデータすなわちその音声処理部に対応するスピーカ/スピーカセットから出力する音声のソースの設定を表し、イコライザ設定には、その音声処理部のイコライザ421のゲイン特性の設定を表している。
【0030】
すなわち、図示するように、オーディオ出力設定テーブルには、1ゾーンモードのときには、フロント音声処理部412とリア音声処理部413とサブウーハ音声処理部416から共通ソースを音源とするオーディオデータの音声出力を行い、前席ショルダー音声処理部414と後席ショルダー音声処理部415からは音声出力を行わないことが登録されている。
【0031】
また、オーディオ出力設定テーブルには、1ゾーンモードのときには、フロント音声処理部412とリア音声処理部413のイコライザ421のゲイン特性を、標準のゲイン特性に設定することが登録されている。ここで、標準のゲイン特性は、全周波数帯域に渡ってゲインが一律な(フラットな)ゲイン特性、または、ユーザが1ゾーンモード用に別途設定したゲイン特性とする。
【0032】
また、オーディオ出力設定テーブルには、2ゾーンモードのときには、フロント音声処理部412と前席ショルダー音声処理部414からはフロントソースを音源とするオーディオデータの音声出力を行い、リア音声処理部413と後席ショルダー音声処理部415からはリアソースを音源とするオーディオデータの音声出力を行い、サブウーハ音声処理部416からは音声出力を行わないことが登録されている。
【0033】
また、オーディオ出力設定テーブルには、2ゾーンモードのときには、フロント音声処理部412とリア音声処理部413のイコライザ421のゲイン特性を、中域減衰パターンのゲイン特性に設定し、前席ショルダー音声処理部414と後席ショルダー音声処理部415とのイコライザ421のゲイン特性を高低域減衰パターンのゲイン特性に設定することが登録されている。
【0034】
ここで、中域減衰パターンのゲイン特性とは中域の周波数帯域を減衰させるゲイン特性であり、たとえば、図4aの301に示すように、対数周波数軸上の中心周波数を600Hzとして120Hz-3kHzの中域の周波数帯域を減衰させるゲイン特性である。また、高低域減衰パターンのゲイン特性とは中域以外の高低域の周波数帯域を減衰させるゲイン特性であり、たとえば、図4aの302に示すように、中域減衰パターン301で減衰させなかった周波数帯域を減衰させるゲイン特性とする。すなわち、120Hz-3kHzの中域の周波数帯域を減衰させる中域減衰パターンのゲイン特性301に対しては、高低域減衰パターンのゲイン特性として、120Hz-3kHzの中域の周波数帯域以外の高低中域の周波数帯域を減衰させるゲイン特性を用いる。
【0035】
より具体的には、高低域減衰パターンのゲイン特性は、予め実験的に以下のようにして求めて設定するようにしてもよい。
すなわち、たとえば、フロント音声処理部412のイコライザ421のゲイン特性をフラットなゲイン特性としてフロントスピーカセット7のみからテスト用の音楽を出力し、前席に座ったユーザの耳が配置される位置における音圧の周波数スペクトルを測定し基準周波数スペクトル(たとえば、図4bの310)とする。
【0036】
そして、フロント音声処理部412のイコライザ421のゲイン特性を中域減衰パターンのゲイン特性として、フロントスピーカセット7からテスト用の音楽を出力しつつ、前席ショルダー音声処理部414のゲイン特性を変化させながら、前席ショルダースピーカセット9からもテスト用の音楽を出力し、前席に座ったユーザの耳が配置される位置における音圧の周波数スペクトル(たとえば、図4bの311)が最も基準周波数スペクトルに近似したときの前席ショルダー音声処理部414のゲイン特性を、前席ショルダー音声処理部414のイコライザ421について用いる高低域減衰パターンのゲイン特性として設定する。
【0037】
また、同様に、リア音声処理部413のイコライザ421のゲイン特性をフラットなゲイン特性として8リアスピーカセットのみからテスト用の音楽を出力し、後席に座ったユーザの耳が配置される位置における音圧の周波数スペクトルを測定し基準周波数スペクトルとする。
【0038】
そして、リア音声処理部413のイコライザ421のゲイン特性を中域減衰パターンのゲイン特性として、リアスピーカセット8からテスト用の音楽を出力しつつ、後席ショルダー音声処理部415のゲイン特性を変化させながら、後席ショルダースピーカセット10からもテスト用の音楽を出力し、後席に座ったユーザの耳が配置される位置における音圧の周波数スペクトルが最も基準周波数スペクトルに近似したときの後席ショルダー音声処理部415のゲイン特性を、後席ショルダー音声処理部415のイコライザ421について用いる高低域減衰パターンのゲイン特性として設定する。
【0039】
以下、このようなオーディオ出力設定テーブルを用いて、制御部403が行うオーディオ出力設定制御処理について説明する。
図5に、オーディオ出力設定制御処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、動作モードとソースの設定のいずれかの変更の発生を監視し(ステップ502)、変更が発生したならば、各ソースにデコーダを割り当てる(ステップ502)。
すなわち、ステップ504では、動作モードが1ゾーンモードであり、共通ソースがビデオソース機器1であれば、一つのビデオデコーダ401を共通ソースに割り当て、割り当てたビデオデコーダ401に共通ソースから出力されるビデオデータから映像データとオーディオデータをデコードさせ、動作モードが1ゾーンモードであり、共通ソースがオーディオソース機器2であれば、一つのオーディオデコーダ402を共通ソースに割り当て、割り当てたオーディオデコーダ402に共通ソースから出力される符号化オーディオデータからオーディオデータをデコードさせる。
【0040】
また、ステップ504では、動作モードが2ゾーンモードであり、フロントソースがビデオソース機器1であれば、一つのビデオデコーダ401をフロントソースに割り当て、割り当てたビデオデコーダ401にフロントソースから出力されるビデオデータから映像データとオーディオデータをデコードさせ、動作モードが2ゾーンモードであり、フロントソースがオーディオソース機器2であれば、一つのオーディオデコーダ402をフロントソースに割り当て、割り当てたオーディオデコーダ402にフロントソースから出力される符号化オーディオデータからオーディオデータをデコードさせる。
【0041】
また、ステップ504では、動作モードが2ゾーンモードであり、リアソースがビデオソース機器1であれば、フロントソースに割り当てていない一つのビデオデコーダ401をリアソースに割り当て、割り当てたビデオデコーダ401にリアソースから出力されるビデオデータから映像データとオーディオデータをデコードさせ、動作モードが2ゾーンモードであり、リアソースがオーディオソース機器2であれば、フロントソースに割り当てていない一つのオーディオデコーダ402をリアソースに割り当て、割り当てたオーディオデコーダ402にリアソースから出力される符号化オーディオデータからオーディオデータをデコードさせる。
【0042】
そして、次に、動作モードとソース設定とオーディオ出力設定テーブルに従って、各映像処理部、各音声処理部への入力を設定する(ステップ506)。
すなわち、ステップ506では、動作モードが1ゾーンモードであり、共通ソースがビデオソース機器1である場合には、共通ソースに割り当てたビデオデコーダ401がデコードした映像データのフロント映像処理部410とリア映像処理部411への出力開始を制御すると共に、共通ソースに割り当てたビデオデコーダ401がデコードしたオーディオデータのフロント音声処理部412、リア音声処理部413、サブウーハ音声処理部416への出力開始を制御する。また、動作モードが1ゾーンモードであり、共通ソースがオーディオソース機器2である場合には、共通ソースに割り当てたオーディオデコーダ402がデコードしたオーディオデータのフロント音声処理部412、リア音声処理部413、サブウーハ音声処理部416への出力開始を制御する。
【0043】
また、ステップ506では、動作モードが2ゾーンモードであり、フロントソースがビデオソース機器1である場合には、フロントソースに割り当てたビデオデコーダ401がデコードした映像データのフロント映像処理部410への出力開始を制御すると共に、フロントソースに割り当てたビデオデコーダ401がデコードしたオーディオデータのフロント音声処理部412、前席ショルダー音声処理部414への出力開始を制御する。また、動作モードが2ゾーンモードであり、フロントソースがオーディオソース機器2である場合には、フロントソースに割り当てたオーディオデコーダ402がデコードしたオーディオデータのフロント音声処理部412、前席ショルダー音声処理部414への出力開始を制御する。
【0044】
また、ステップ506では、動作モードが2ゾーンモードであり、リアソースがビデオソース機器1である場合には、リアソースに割り当てたビデオデコーダ401がデコードした映像データのリア映像処理部411への出力開始を制御すると共に、リアソースに割り当てたビデオデコーダ401がデコードしたオーディオデータのリア音声処理部413、後席ショルダー音声処理部415への出力開始を制御する。また、動作モードが2ゾーンモードであり、リアソースがオーディオソース機器2である場合には、リアソースに割り当てたオーディオデコーダ402がデコードしたオーディオデータのリア音声処理部413、後席ショルダー音声処理部415への出力開始を制御する。
【0045】
そして、次に、動作モードとオーディオ出力設定テーブルに従って、各音声処理部の出力有無とイコライザ421のゲイン特性を設定し(ステップ508)、ステップ502からの処理に戻る。
すなわち、ステップ508では、動作モードが1ゾーンモードであれば、前席ショルダー音声処理部414と後席ショルダー音声処理部415に出力無を設定し、他の音声処理部の出力有を設定すると共に、フロント音声処理部412とリア音声処理部413のイコライザ421のゲイン特性として標準のゲイン特性を設定する。ここで、出力無を設定された音声処理部は音声出力を抑止し、出力有を設定された音声処理部は音声出力の抑止は行わない。なお、音声出力を抑止は、たとえば、アンプ423の出力をとすることなどにより実現できる。
【0046】
また、ステップ508では、動作モードが2ゾーンモードであれば、サブウーハ音声処理部416に出力無を設定し、他の音声処理部の出力有を設定すると共に、フロント音声処理部412とリア音声処理部413のイコライザ421のゲイン特性として中域減衰パターンのゲイン特性を設定すると共に、前席ショルダー音声処理部414と後席ショルダー音声処理部415のゲイン特性として高低域減衰パターンのゲイン特性を設定する。
【0047】
以上、制御部403が行うオーディオ出力設定制御処理について説明した。
以上のようなオーディオ出力設定制御処理によれば、動作モードとして1ゾーンモードが設定されているときには、フロントスピーカセット7、リアスピーカセット8から、共通ソースに設定されたビデオソース機器1またはオーディオソース機器2を音源とする音声が、標準のゲイン特性で周波数特性が調整された上で出力されると共に、サブウーハスピーカ11から共通ソースを音源とする音声の低域成分が出力される。また、このとき、前席ショルダースピーカセット9と後席ショルダースピーカセット11からは音声は出力されない。
【0048】
一方、動作モードとして2ゾーンモードが設定されているときには、フロントスピーカセット7と前席ショルダースピーカセット9からは、フロントソースに設定されたビデオソース機器1またはオーディオソース機器2を音源とする音声が出力され、リアスピーカセット8と後席ショルダースピーカセット10からは、リアソースに設定されたビデオソース機器1またはオーディオソース機器2を音源とする音声が出力される。また、このとき、サブウーハスピーカ11からは音声は出力されない。
【0049】
また、このように2ゾーンモードが設定されているときのフロントソースを音源とする音声の出力は、フロントスピーカセット7から出力される高低域成分と、前席ショルダースピーカセット9から出力される中域成分となる。また、2ゾーンモードが設定されているときのリアソースを音源とする音声の出力は、リアスピーカセット8から出力される高低域成分と、後席ショルダースピーカセット10から出力される中域成分となる。
【0050】
また、前席ショルダースピーカセット9は、前席に着席したユーザ専用のスピーカであり、前席に着席したユーザの耳近傍に配置されているために出力音量は比較的小さく設定される。また、後席ショルダースピーカセット10は、後席に着席したユーザ専用のスピーカであり、後席に着席したユーザの耳近傍に配置されているために出力音量は比較的小さく設定される。そして、このために、前席ショルダースピーカセット9から出力された音声は、後席のユーザにほとんど届かず、後席ショルダースピーカセット10から出力された音声は、前席のユーザにほとんど届かない。また、前席ショルダースピーカセット9に前席のユーザ方向に強い指向性を持たせても不都合は生じず、後席ショルダースピーカセット10に、後席のユーザ方向に強い指向性を持たせても不都合は生じない。そして、このように指向性を持たせることにより、より効果的に、前席ショルダースピーカセット9から出力された音声が後席のユーザに届かず、後席ショルダースピーカセット10から出力された音声が前席のユーザに届かないようにすることができる。
よって、以上より、前席のユーザには、後席ショルダースピーカセット10から出力されるリアソースの音声の中域成分はほとんど聞こえず、前席のユーザに聞こえる音声は、フロントスピーカセット7から出力されるフロントソースの音声の高低域成分と、前席ショルダースピーカセット9から出力されるフロントソースの音声の中域成分と、遠くのリアスピーカセット8から出力されるために小さく聞こえるリアソースの音声の高低域成分となる。ここで、フロントスピーカセット7から出力されるフロントソースの音声の高低域成分と前席ショルダースピーカセット9から出力されるフロントソースの音声の中域成分の加算によって、前席のユーザには、全周波数帯域が揃ったフロントソースの音声が聞こえることとなる。よって、前席のユーザは、フロントソースの音声を高品質に聴くことができる。また、前席のユーザには、聴覚上の認識の良好性の劣化に対する影響の大きい中域について、リアソースの音声が聞こえることはないので、フロントソースの音声を良好に聴くことができるようになる。
【0051】
同様に、後席のユーザには、前席ショルダースピーカセット9から出力されるフロントソースの音声の中域成分はほとんど聞こえず、後席のユーザに聞こえる音声は、リアスピーカセット8から出力されるリアソースの音声の高低域成分と、後席ショルダースピーカセット10から出力されるリアソースの音声の中域成分と、遠くのフロントスピーカセット7から出力されるために小さく聞こえるフロントソースの音声の高低域成分となる。ここで、リアスピーカセット8から出力されるリアソースの音声の高低域成分と後席ショルダースピーカセット10から出力されるリアソースの音声の中域成分の加算によって、後席のユーザには、全周波数帯域が揃ったリアソースの音声が聞こえることとなる。よって、後席のユーザは、リアソースの音声を高品質に聴くことができる。また、後席のユーザには、聴覚上の認識の良好性の劣化に対する影響の大きい中域について、フロントソースの音声が聞こえることはないので、リアソースの音声を良好に聴くことができるようになる。
【0052】
なお、2ゾーンモードが設定されているときに、フロントスピーカとリアスピーカとから出力する高低域成分の音声を、中域減衰パターンのゲイン特性を用いて音源の音声の600Hzを中心とする120Hz-3kHzの周波数帯域の成分を減衰させた音声としたのは、この周波数帯域に音楽のボーカルや楽器のメロディパートなどのリスナーにとって最も意味のある又はリスニングのメインの対象となる音声成分が多く含まれており、異なる音源のこの周波数帯域の音声が混じり合うと、各音源の音声の聞き取りの良好性を大きく劣化させることになるためである。すなわち、フロントスピーカとリアスピーカとから出力する高低域成分の音声から、600Hzを中心とする120Hz-3kHzの周波数帯域の音声成分を除外することにより、ユーザにとって最も意味のある又はリスニングのメインの対象となる周波数帯域について、ユーザに聞こえる音声が異なる音源の音声が混合したものとなってしまうことを排除し、当該周波数帯域について、ユーザに聞こえる音声を当該ユーザがリスニングの対象としている音源からの音声のみとすることができる。
【0053】
但し、このような中域減衰パターンの減衰の(対数周波数軸上の)中心周波数を必ずしも厳密に600Hzとする必要はない。
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上の実施形態は、前席ショルダースピーカセット9に代えて前席近傍の任意位置に配置したスピーカセットを用いたり、後席ショルダースピーカセット10に代えて後席近傍の任意位置に配置したスピーカセットを用いたりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…ビデオソース機器、2…オーディオソース機器、3…入力装置、4…制御ユニット、5…フロントディスプレイ、6…リアディスプレイ、7…フロントスピーカセット、8…リアスピーカセット、9…前席ショルダースピーカセット、10…後席ショルダースピーカセット、11…サブウーハスピーカ、401…ビデオデコーダ、402…オーディオデコーダ、403…制御部、410…フロント映像処理部、411…リア映像処理部、412…フロント音声処理部、413…リア音声処理部、414…前席ショルダー音声処理部、415…後席ショルダー音声処理部、416…サブウーハ音声処理部、421…イコライザ、422…DAコンバータ、423…アンプ。
図1
図2
図3
図4
図5