特許第6091250号(P6091250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091250香辛調味液の製造方法および香辛調味ペーストの製造方法
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  • 特許6091250-香辛調味液の製造方法および香辛調味ペーストの製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091250
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】香辛調味液の製造方法および香辛調味ペーストの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20170227BHJP
【FI】
   A23L27/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-36247(P2013-36247)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-161289(P2014-161289A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】513046331
【氏名又は名称】株式会社マキ屋フーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】金城 正直
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−047379(JP,A)
【文献】 特開2002−153235(JP,A)
【文献】 特開2009−159875(JP,A)
【文献】 特開2007−319129(JP,A)
【文献】 特開2005−058147(JP,A)
【文献】 特開2006−191825(JP,A)
【文献】 特開2008−228693(JP,A)
【文献】 特開2000−197464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L27/00−27/40
A23L27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅麹、酒類および大豆乳を含む漬込み液に、生または半生の唐辛子をまるごと浸漬し、発酵または熟成させることを特徴とする香辛調味液の製造方法。
【請求項2】
漬込み液に含まれる紅麹の割合が4〜30%であり、大豆乳の割合が5〜25%であり、漬込み液のアルコール度数が9〜18度であり、さらに漬込み液に浸漬する生または半生の唐辛子の割合が、漬込み液と唐辛子の合計質量の6〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の香辛調味液の製造方法。
【請求項3】
生または半生の唐辛子として、これらの冷凍処理物を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の香辛調味液の製造方法。
【請求項4】
紅麹、酒類および大豆乳を含む漬込み液に、生または半生の唐辛子をまるごと浸漬し、発酵または熟成させ、その後該唐辛子を取り出して粉砕することによりペースト状物とし、必要に応じて他の原料と混合することを特徴とする香辛調味ペーストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の第1の発明は、香辛調味液の製造方法に関し、特に、唐辛子の辛味と風味を有し、優れた芳香と旨味が感じられる辛味調味液の製造方法に関する。
また、本発明の第2の発明は、香辛調味ペーストの製造方法に関し、特に、唐辛子の辛味が強く、優れた芳香と旨味が感じられると共に、水性媒体への分散性が良好な辛味調味ペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生または半生の状態の唐辛子の果実(以下、単に「唐辛子」ともいう。)を原料に用いる香辛調味液として、沖縄県の伝統的な香辛調味料の「コーレーグス」知られている。
コーレーグスは、一般に、濃いオレンジ色に熟した生または収穫後数日間陰干しした半生の島唐辛子の果実(以下、単に「島唐辛子」ともいう。)を、まるごと泡盛に浸漬して、3〜4週間漬け込み、島唐辛子から辛味成分と風味成分を抽出することによって製造される香辛調味液であり、沖縄県では、「沖縄そば」などの各種郷土料理の薬味として多用されており、一般家庭や飲食店の卓上に常備されている。
【0003】
原料の島唐辛子は、トウガラシ属キダチトウガラシ品種に分類される非常に辛味が強い小ぶりな唐辛子であり、沖縄県で多く栽培されている。島唐辛子の辛味成分は、主にカプサイシンとジヒドロカプサイシン(以下、まとめて「カプサイシン類」ともいう。)であり、島唐辛子の果皮に多く含まれている。これらは、極めて強い辛味を呈する油溶性の物質であり、エチルアルコール(以下、単に「アルコール」ともいう。)には溶けやすいが、冷水にはほとんど溶けないことが知られている。
【0004】
生または半生の島唐辛子を、アルコール度数が比較的高い酒類である泡盛に漬け込むと、島唐辛子に含まれる辛味成分が泡盛に含まれるアルコールに溶け込み、泡盛中に抽出される。また、辛味成分以外にも、生または半生の島唐辛子に特有の好ましい風味成分が抽出される。
さらに、コーレーグスは、島唐辛子を細断せずにまるごと、つまりホール状のまま泡盛に漬け込むので、植物の細胞壁の破壊によって生ずる青臭さのような、好ましくない風味成分の溶出は抑制することができる。また、泡盛に含まれるアルコールにより、生または半生の島唐辛子の腐敗を防ぐことができる。
このように、コーレーグスは、島唐辛子と泡盛という沖縄県の特産品を組み合わせた、非常に合理的で優れた香辛調味液である。
しかしながら、コーレーグスは、原料の泡盛に由来するアルコールの刺激臭が強く感じられるため、消費者のアルコール嗜好面での好き嫌いが明確に表れ、万人向けの香辛調味液ではないという問題がある。
【0005】
そこで、アルコールの刺激臭を低減した香辛調味液の製造方法が、特許第4568740号公報(特許文献1)に開示されている。
この特許文献1には、生の唐辛子を破砕処理した後に清酒と混合し、所定時間煮沸してアルコール分を蒸発させて除去し、ペーパーフィルターなどでろ過処理することで、辛味の強い香辛調味液を製造することができる旨が記載されている。
この方法によれば、アルコール分を蒸発させて除去するため、香辛調味液のアルコールの刺激臭は低減されるものの、唐辛子や清酒などに含まれている好ましい風味成分も、その多くが蒸発して失われるため、個性の少ない単調な風味の香辛調味液になってしまうという問題がある。
【0006】
また、他のコーレーグスの製造方法が、特開2006−191825号公報(特許文献2)に開示されており、泡盛に乾燥させた島唐辛子を2回に分けて漬け込むことにより、辛味が強く、見た目がきれいなコーレーグスを製造できる旨が記載されている。
しかし、この方法で得られるコーレーグスは、泡盛由来のアルコールの刺激臭が強く感じられ、また、乾燥させた島唐辛子を使用するため、生または半生の島唐辛子に特有の風味が感じられるものではない。
【0007】
さらに、唐辛子を原料とする香辛調味料であって、アルコールを含まないものの製造方法が、特許第3545236号公報(特許文献3)に開示されている。
この特許文献3には、収穫後に自然乾燥し、あるいは塩漬けにした唐辛子を、数日間雪にさらした後に粉砕し、食塩や麹などの他の原料と混合して1年以上発酵させることにより、風味の良好な香辛調味料を製造することができる旨が記載されている。
しかし、この方法は、唐辛子の乾燥処理物または塩漬け処理物を粉砕して使用する方法なので、得られる香辛調味液は、生または半生の唐辛子に特有の風味が感じられるものではない。
【0008】
以上のように、唐辛子を原料として使用する香辛調味液であって、唐辛子特有の辛味を有するとともに、生または半生の唐辛子特有の好ましい風味が感じられ、さらに、アルコールの刺激臭が低減された香辛調味液は、未だ開発されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4568740号公報
【特許文献2】特開2006−191825号公報
【特許文献3】特許第3545236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者は、上記の問題点を解決すべく、唐辛子の辛味と生または半生の唐辛子の好ましい風味を有し、かつ、アルコールの刺激臭が低減された香辛調味液を得ることを目的とし、本発明の開発に着手した。
本発明者は、当初、沖縄県の伝統的な食品である「豆腐よう」が、泡盛を多く含んでいるにもかかわらず、アルコールの刺激臭が相当に緩和されているという点に気づき、コーレーグスに、豆腐ようの風味を付与すれば、アルコールの刺激臭を低減できるのものと予測した。
なお、「豆腐よう」とは、通常の豆腐よりも水分が少なく固い「島豆腐」を、紅麹、黄麹および泡盛を含む漬汁に浸漬して発酵・熟成させた、沖縄県の伝統的な食品であり、紅麹による独特の芳香と旨味を有すると共に、美しい赤色を呈し、チーズのような食感が特徴である。
【0011】
本発明者は、初めに、豆腐ようをその漬汁ごとジューサーミキサーを用いて粉砕して液状物とし、この液状物をコーレーグスに添加して、豆腐よう風味のコーレーグスを試作した。ところが、この豆腐よう風味のコーレーグスは、アルコールの刺激臭がほとんど低減されておらず、さらに、多量の沈殿物が生じ、見た目や舌触りが良くないものであり、上記の目的を達成する香辛調味液は得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明者は、さらに研究を重ね、豆腐ようの製造方法を応用するものの、固体の島豆腐を使用せず、また、島唐辛子を漬込み液に浸漬して発酵または熟成させるという独特の方法を案出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明うち、特許請求の範囲の請求項1に記載する発明は、紅麹、酒類および大豆乳を含む漬込み液に、生または半生の唐辛子をまるごと浸漬し、発酵または熟成させることを特徴とする香辛調味液の製造方法である。
【0013】
同じく請求項2に記載する発明は、漬込み液に含まれる紅麹の割合が4〜30%であり、大豆乳の割合が5〜25%であり、漬込み液のアルコール度数が9〜18度であり、さらに漬込み液に浸漬する生または半生の唐辛子の割合が、漬込み液と唐辛子の合計質量の6〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の香辛調味液の製造方法である。
【0014】
同じく請求項3に記載する発明は、生または半生の唐辛子として、これらの冷凍処理物を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の香辛調味液の製造方法である。
【0015】
また、本発明の第2の発明は、特許請求の範囲の請求項4に記載するとおり、紅麹、酒類および大豆乳を含む漬込み液に、生または半生の唐辛子をまるごと浸漬し、発酵または熟成させ、その後該唐辛子を取り出して粉砕することによりペースト状物とし、必要に応じて他の原料と混合することを特徴とする香辛調味ペーストの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の発明のうち、請求項1に記載する香辛調味液の製造方法によれば、唐辛子に特有の辛味を有し、生または半生の唐辛子に特有の好ましい風味が感じられると共に、豆腐ようのような芳香と旨味を有し、かつ、アルコールの刺激臭が低減された新規な香辛調味液を製造することができる。
【0017】
同じく請求項2に記載する香辛調味液の製造方法によれば、漬込み液に含まれる紅麹および大豆乳の割合と、漬込み液のアルコール度数を所定範囲内に調節し、さらに、漬込み液に浸漬する生または半生の唐辛子の割合を所定範囲内に調節することにより、唐辛子の辛味と、生または半生の唐辛子の好ましい風味と、豆腐ようのような芳香と旨味のいずれもが程良く感じられ、かつ、アルコールの刺激臭が十分に低減された、新規な香辛調味液を製造することができる。
【0018】
同じく請求項3に記載する香辛調味液の製造方法によれば、原料として生または半生の唐辛子の冷凍処理物を使用することにより、漬込み液に唐辛子を浸漬した際に、唐辛子から辛味成分および生または半生の唐辛子の好ましい風味が抽出され易くなる。
その理由は、冷凍処理した生または半生の唐辛子を解凍した場合、唐辛子の果皮が冷凍前よりも軟化するため、漬込み液に含まれるアルコールなどが、唐辛子の果皮の組織内に浸み込み易くなることによると考えられる。
したがって、漬け込み液への唐辛子の浸漬期間を短縮できるか、あるいは、唐辛子の使用量を減らすことができるため、香辛調味液の製造コストを低減することが可能である。
【0019】
本発明の第2の発明である請求項4に記載する香辛調味ペーストの製造方法は、いわば、本発明の第1の各発明の香辛調味液の製造方法によって製造した香辛調味液の中から、熟成した唐辛子を取り出して粉砕し、必要に応じて他の原料と混合して香辛調味ペーストを製造する方法である。
香辛調味液の中から取り出された唐辛子は、漬込み液に浸漬された状態のまま発酵または熟成工程を経ているため、熟成して軟化しており、また、香辛調味液と同様に、豆腐ようのような芳香と旨味が付与されている。
したがって、この熟成した唐辛子を粉砕してペースト状物にすることにより、唐辛子特有の強い辛味を有し、豆腐ようのような芳香と旨味を有し、さらに、スープ、出し汁、しょうゆ、ソースなどの水性媒体への分散性に優れる新規な香辛調味ペーストを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の香辛調味液および香辛調味ペーストの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において、特に規定しない限り、「%」は「質量%」を意味する。また、「アルコール度数」とは、15℃の温度条件において、原容量百分中に含まれるエチルアルコールの容量である。
【0022】
まず、本発明の第1の発明である香辛調味液の製造方法を説明する。
図1に示すとおり、最初に紅麹、酒類、大豆乳と必要に応じて他の原料を加え、混合して漬込み液を調製する。
ここで紅麹とは、紅麹菌(モナスカス属糸状菌)を、米、麦、大豆、とうもろこしなどの澱粉や蛋白質を含有する穀類またはその加工品に繁殖させたものである。本発明においては、香辛調味液に好ましい風味を付与するために、米紅麹を用いることがこのましい。
紅麹は、糖質や蛋白質などの食品成分に作用する種々の酵素類、独特の芳香成分、赤色色素(モナスコルビン)などを含んでいるため、発酵・熟成食品の製造に広く利用されており、例えば、豆腐ようや、もろみ飲料などの製造に利用されている。
【0023】
本発明に使用する紅麹の調製に用いる紅麹菌としては、モナスカス・アンカ、モナスカス・ピローサス、モナスカス・プルプレウス、モナスカス・カオリアンなどの一般に豆腐ようの製造に用いられるモナスカス属糸状菌を挙げることができるが、特に、香辛調味液に好ましい芳香とピンク色を付与できるモナスカス・アンカを用いることが好ましい。
紅麹は常法によって製造すればよく、例えば、米紅麹の場合は、蒸煮した精白米の表面に紅麹菌の胞子(種麹)を付着させ、約25〜35℃の温度条件で約2〜7日間培養して菌糸を増殖させればよい。
【0024】
本発明においては、紅麹を単独で使用してもよく、また、他の糸状菌による一般の麹と混合して用いてもよい。紅麹と組み合わせる他の糸状菌による麹としては、例えば、通常の豆腐ようの製造に用いられるアスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・ソイエーなどのアスペルギルス属糸状菌を増殖させた黄麹を挙げることができるが、特に、香辛調味液の風味を向上させる観点から、アスペルギルス・オリゼーを米に繁殖させた米黄麹が好ましい。
このように、紅麹と他の糸状菌による麹とを混合して用いる場合、原料麹全体における紅麹の配合割合は、10〜70%の範囲内であることが好ましい。
【0025】
また、漬込み液を調製する際の紅麹の配合割合は、4〜30%であることが好ましい。かかる範囲内であれば、香辛調味液に対して紅麹由来の芳香とピンク色を程良く付与することができ、また、香辛調味液のアルコール刺激臭をより低減することができるからである。
【0026】
次に、本発明において使用する酒類としては、焼酎、泡盛、清酒、果実酒などの他、酒精(エチルアルコール)を用いることができるが、香辛調味液に好ましい風味を付与することができ、さらに、アルコール度数が比較的高く、生または半生の唐辛子から辛味成分および風味成分を効率的に抽出することができる、焼酎または泡盛を用いることが好ましい。
ここで、焼酎とは、米、麦、芋などの澱粉質を麹で糖化、発酵させ、また糖蜜などの糖質を発酵させ、蒸留して製造する酒類である。主に甲類と乙類とがあり、甲類は、連続式蒸留機を使用し、乙類は、単式蒸留機(ポットスチル)を使用して製造する。アルコール度数は、一般に、甲類は36度以下であり乙類は45度以下である。
また、泡盛とは、主に沖縄県で製造される焼酎の一種であり、タイ米を原料として糖化、発酵させ、蒸留して製造する酒類である。
【0027】
本発明において、漬込み液を調製する際の酒類の配合割合は、漬込み液のアルコール度数が9〜18度になるように調節することが好ましい。かかる範囲内であれば、次工程において漬込み液に生または半生の唐辛子を浸漬した際に、唐辛子の腐敗を防ぐことができ、また、唐辛子から辛味成分および風味成分を効率的に抽出することができるからである。
【0028】
次に、本発明において使用する大豆乳としては、一般に「豆乳」と呼ばれる大豆の搾汁を用いることが最も好適であるが、その他、豆腐を摩砕して液状にしたものや、緩くゲル化され流動性のある、いわゆる液状豆腐を使用することができる。
豆乳の一般的な製造方法はとしては、脱皮または脱皮脱胚軸された大豆を粉砕し、次いで熱水とともに加熱した後、摩砕し、さらに繊維分(おから)を分離した後、脱臭処理し、均質化処理を行った後、殺菌して豆乳を得る方法が知られている。
【0029】
本発明においては、原料として大豆乳を用いることにより、大豆乳が紅麹により発酵または熟成され、大豆に含まれる蛋白質や糖質などの各種成分が分解され、種々の風味成分や旨味成分が生成することで、香辛調味液に豆腐ようのような芳香と旨味を付与することができるものと考えられる。
また、大豆乳として豆乳を使用することにより、風味がよりまろやかで、かつ舌触りが滑らかな香辛調味液を製造することができる。
【0030】
本発明において、漬込み液を調製する際の大豆乳の配合割合は、5〜25%であることが好ましい。かかる範囲内であれば、香辛調味液に、豆腐ようのような旨味を程良く付与することができ、また、香辛調味液のアルコール刺激臭をより低減することができるからである。
【0031】
なお、漬込み液を調製する際には、上記の紅麹、酒類、大豆乳の他に、必要に応じて他の原料を加えることもできる。例えば、食塩、クエン酸、食酢などを加えることにより、次工程の発酵や熟成の速度を調節することができると共に、漬込み液に浸漬する唐辛子の腐敗を防ぐことができる。
また、漬込み液は、上記の各原料を一度にまとめて、ジューサーミキサー、グラインダー、コロイドミルなどを用いて液状になるまで粉砕混合することにより調製できるが、原料ごとに添加・混合する時期を変更してもよい。例えば、まず、紅麹、酒類および食塩を粉砕混合し、数日間静置して紅麹を軟化させ、その後大豆乳を加えてさらに攪拌混合することにより、より舌触りが滑らかで、まろやかな風味の香辛調味液を製造することができる。
【0032】
上記のように漬込み液を調製した後、図1に示すとおり、漬込み液に生または半生の唐辛子をまるごと浸漬する。
ここで唐辛子とは、ナス科トウガラシ属に分類され果実に辛味成分であるカプサイシン類が含まれる品種であり、例えば、島唐辛子、唐辛子(狭義)、鷹の爪、ハラペーニョ、ハバネロ、タバスコペッパーなどを挙げることができる。
【0033】
本発明においては、これらの唐辛子の果実を、収穫直後の生の状態で使用するか、あるいは数日間陰干しするなどして、含水量を数割程度減らした半生の状態で使用する。これらの生または半生の唐辛子を、前記の漬込み液に浸漬すると、唐辛子に含まれる辛味成分が漬込み液に含まれるアルコールに溶け込み、漬け込み液中に抽出される。さらに、辛味成分以外に、生または半生の唐辛子に特有の好ましい風味成分が抽出される。
また、本発明では、唐辛子からヘタ部分を取り除き、細断などはせずに、まるごとホール状のまま漬込み液に浸漬するので、植物の細胞壁の破壊によって生ずる青臭さのような、好ましくない風味成分の溶出は抑制することができる。
【0034】
さらに、本発明では、生または半生の唐辛子の冷凍処理物を使用することが好ましい。
唐辛子の冷凍処理物は、解凍した場合に、その果皮が冷凍処理前よりも軟化しているため、漬込み液に含まれるアルコールなどが、唐辛子の果皮の組織内に浸み込み易くなっていると考えられ、冷凍処理していない唐辛子よりも、辛味成分および風味成分の抽出速度が速いという利点がある。したがって、漬け込み液への唐辛子の浸漬期間を短縮できるか、あるいは、唐辛子の使用量を減らすことができるため、香辛調味液の製造コストを低減できる。
また、唐辛子の収穫時期は、一般に夏場の数ヶ月間なので、その時期に収穫した唐辛子をまとめて冷凍保存しておき、適宜に解凍して使用することにより、香辛調味料の製造量を、年間を通じて均等化できるため、製造コストをより低減できるという利点がある。
なお、本発明で使用する唐辛子の冷凍処理物は、必ずしも食品衛生法の規格基準であるマイナス18℃以下まで冷却されたものである必要はなく、マイナス数℃程度の低温で冷凍処理されたものであっても差し支えない。
【0035】
本発明において、生または半生の唐辛子の配合割合は、唐辛子と漬込み液の合計質量の6〜30%であることが好ましい。かかる範囲内であれば、香辛調味液に、唐辛子の辛味と、生または半生の唐辛子の好ましい風味を程良く付与することができ、また、香辛調味液のアルコール刺激臭をより低減できるからである。
【0036】
次に、漬込み液に生または半生の唐辛子を浸漬した後、静置し、あるいは時々攪拌しつつ発酵または熟成させることにより、唐辛子から辛味成分と風味成分を抽出すると同時に、豆腐ようのような芳香と旨味を醸成する。
ここで発酵とは、紅麹菌などの微生物の活動によって、漬込み液に含まれる蛋白質や糖質などの有機物を分解させ、より低分子量の旨味成分や風味成分に変化させることである。
また、熟成とは、紅麹菌などの微生物が産出した酵素、あるいは自然に含まれる酵素などによって、漬込み液に含まれる蛋白質や糖質などの有機物を分解させ、より低分子量の旨味成分や風味成分に変化させることである。
【0037】
本発明において、漬込み液には、紅麹菌を含む紅麹が含まれているが、アルコールおよび必要に応じて食塩・クエン酸・食酢などの、紅麹菌の活動を阻害する物質が含まれている。したがって、漬込み液に唐辛子を浸漬して室温程度に維持した場合に、徐々に豆腐ようのような芳香と旨味が醸成されてくるが、この分解反応が、紅麹菌の活動による発酵により生じたものか、あるいは、紅麹菌は活動していないものの、紅麹などに含まれている各種酵素による熟成により生じたものか、さらに、発酵と熟成の両方により生じたものかを見極めることは困難である。
【0038】
いずれにしても、本発明では、香辛調味液に豆腐ようのような芳香と旨味を付与することが重要であり、発酵または熟成の少なくともいずれか一方による分解反応を生じさせる必要がある。
このような発酵または熟成は、唐辛子を浸漬した漬込み液を、静置し、あるいは時々攪拌しつつ、15〜30℃の温度条件で1〜3週間保持することにより行うことができ、かかる発酵または熟成の期間が経過することで香辛調味液が完成する。
完成した香辛調味液には、未だホール状の唐辛子が浸漬されているが、例えば、コーレーグスのように、香辛調味液中に唐辛子を浸漬したまま製品としてもよく、あるいは、固液分離処理して唐辛子を取り除いた後の香辛調味液を製品としてもよい。
なお、固液分離処理により取り除かれた唐辛子は、本発明の第2の発明である香辛調味ペーストの製造方法において、原料として使用することができるため無駄になることはない。
【0039】
上記の製造方法により得られた香辛調味液は、唐辛子の辛味を有し、生または半生の唐辛子の好ましい風味が感じられると共に、豆腐ようのような芳香と旨味を有し、かつ、アルコールの刺激臭が低減されている。
かかる香辛調味液について、アルコールの刺激臭が低減される理由は定かではないが、紅麹、酒類および大豆乳を含む漬込み液を、生または半生の唐辛子を浸漬した状態で発酵または熟成させることにより、アルコールの刺激臭をマスキングできる風味成分あるいは呈味成分が生成するものと推察される。
【0040】
次に、本発明の第2の発明である香辛調味ペーストの製造方法を説明する。
かかる香辛調味ペーストの製造方法は、上記の第1の発明の香辛調味液の製造方法によって得られた香辛調味液の中から、熟成した唐辛子を取り出して粉砕することによりペースト状物とし、必要に応じて他の原料と混合する方法である。
つまり、紅麹、酒類、大豆乳と、必要に応じて他の原料を混合して漬込み液を調製する工程と、この漬込み液に、生または半生の唐辛子をまるごと浸漬して発酵または熟成させる工程は、第1の発明である香辛調味液の製造方法と全く同じである。したがって、これらの工程について上記の香辛調味液の製造方法において説明した事項は、そのまま香辛調味ペーストの製造方法にも適用できる。
【0041】
以下、図1に示す「香辛調味液(熟成唐辛子入り)」から「香辛調味ペースト」までの製造工程について説明する。
まず、ホール状の唐辛子が浸漬されたままの状態の香辛調味液から、固液分離処理により唐辛子を取り出す。
ここで固液分離処理は、ホール状の唐辛子と液体の香辛調味液とを分離できればよいので、唐辛子が浸漬されている香辛調味液を、目開きが比較的大きな篩、ストレーナーなどを通過させればよい。例えば、目開きが1.00mm(16メッシュ)〜3.35mm(5.5メッシュ)程度の篩、ストレーナーなどを用いることができる。
【0042】
香辛調味液から取り出した唐辛子は、その周囲に香辛調味液が付着したままでもよく、あるいは、水洗いなどにより香辛調味液を洗い流してもよい。
このようにして香辛調味液から取り出した唐辛子は、漬込み液に浸漬された状態のまま発酵または熟成工程を経ているため、熟成して、果皮が指先で軽く押し潰せる程度に軟化しており、また、上記の香辛調味液と同様に、豆腐ようのような芳香と旨味が付与されている。
【0043】
次に、香辛調味液から取り出した唐辛子を、粉砕処理してペースト状物を調製する。
かかる粉砕処理は、ジューサーミキサー、グラインダー、コロイドミルなどを用いて行うことができ、また、唐辛子だけを粉砕してもよいが、調製するペースト状物の粘度や濃さを調節するために、前記香辛調味液、スープ、水、その他の調味液などの液体原料を適量加えて粉砕してもよい。
得られたペースト状物は、そのままの状態で香辛調味ペーストとして製品にしてもよいが、さらに、他の原料と混合して調味などを行い製品にしてもよい。唐辛子のペースト状物と混合することができる原料としては、食塩、糖類、食酢、みそ、しょうゆ、マヨネーズ、柑橘果汁のような各種調味料、ごま、落花生、アーモンドなどを主原料とした各種ペースト類および粉類などを任意に選択することができる。
【0044】
上記の方法により得られた香辛調味ペーストは、唐辛子特有の強い辛味を有し、豆腐ようのような芳香と旨味を有し、さらに、スープ、出し汁、ポン酢しょうゆ、ソースなどの水性媒体への分散性に優れている。なお、水性媒体に分散し易い理由は、熟成により唐辛子の果皮が軟化しているため、粉砕してペースト状物とした場合に、果皮が細かく砕かれた状態になり、水性媒体となじみ易くなっていることによると推察される。
【実施例】
【0045】
≪実施例1≫
<香辛調味液の製造>
(1)米紅麹の調製
蒸煮した精白米に、モナスカス・アンカの胞子(種麹)を植菌し、30℃で7日間培養して米紅麹を調製した。
(2)米黄麹の調製
蒸煮した精白米に、アスペルギルス・オリゼーの胞子を植菌し、30℃で2日間培養して米黄麹を調製した。
(3)漬込み液の調製
前記米紅麹300g、前記米黄麹1500g、泡盛(株式会社久米島製、アルコール度数30度)1600g、食塩100gをグラインダー(株式会社長沢機械製作所製、商品名:サワーボーイ)に投入して粉砕混合し、得られた混合液を23℃で7日間静置した。なお、この混合液のアルコール度数を、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析装置を用いて測定したところ約18度であった。
次に、静置後の混合液に、豆乳(株式会社まえさと製)500gを加えて攪拌混合し、漬込み液を調製した。得られた漬込み液のアルコール度数は約13度であった。
(4)島唐辛子の漬込み前処理
収穫後すぐに−18℃の冷凍庫に入れて冷凍処理した島唐辛子を、流水解凍し、その後へた部分を切除した。
(5)発酵・熟成処理
前記漬込み液4000gに、前記処理済みの島唐辛子500gをまるごと浸漬し、軽く攪拌した後、23℃で14日間静置し、発酵または熟成させることにより香辛調味液を製造した。
【0046】
<香辛調味液の評価>
得られた香辛調味液の液体部分のアルコール度数は約11度であった。また、液体部分のカプサイシンおよびジヒドロカプサイシンの含有割合を、高速液体クロマトグラフ法により測定したところ、両成分の含有割合の合計値は約12mg/100gであった。
この香辛調味液の液体部分を試食したところ、唐辛子の辛味と、生または半生の唐辛子の好ましい風味と、豆腐ようのような芳香と旨味のいずれもが程良く感じられ、かつ、アルコールの刺激臭が十分に低減されており、新規でとても美味しい香辛調味液であった。また、米紅麹由来のピンク色を呈し、見た目にも美しい香辛調味液であった。
【0047】
≪実施例2≫
<香辛調味ペーストの製造>
上記の実施例1の香辛調味液の製造工程(1)〜(5)に準じ、ホール状の島唐辛子が浸漬された状態の香辛調味液を製造した。
【0048】
(6)固液分離処理
前記の島唐辛子が浸漬された状態の香辛調味液を、目開き2.00mm(8.6メッシュ)の篩を通過させて濾し、島唐辛子を取り出した。
取り出した島唐辛子は、周囲に香辛調味液が少し付着した状態であり、熟成され、指先で摘まみ比較的弱い力を加えるだけで果皮部分を押し潰すことができる程度に軟化していた。
(7)島唐辛子の粉砕処理
前記の熟成した島唐辛子を、グラインダー(株式会社長沢機械製作所製、商品名:サワーボーイ)を用いて粉砕することにより、香辛調味ペーストを製造した。
【0049】
<香辛調味ペーストの評価>
得られた香辛調味ペーストは、島唐辛子特有の濃いオレンジ色を呈しており見た目に美しく、試食したところ、唐辛子の辛味が非常に強く感じられ、豆腐ようのような芳香と旨味を有し、かつ、アルコールの刺激臭があまり感じられず、新規でとても美味しい香辛調味ペーストであった。
また、この香辛調味ペーストを、ポン酢しょうゆに少量加えてかき混ぜたところ、ダマにならず素早く分散し、ポン酢しょうゆに辛味と新規な好ましい風味を付与することができた。
【0050】
≪比較例≫
<豆腐よう入りコーレーグスの製造>
(1)米紅麹の調製
前記実施例1と同様の方法で米紅麹を調製した。
(2)米黄麹の調製
前記実施例1と同様の方法で米黄麹を調製した。
(3)漬汁の調製
前記米紅麹300g、前記米黄麹1350g、泡盛(株式会社久米島製、アルコール度数30度)1450g、食塩200gを、前記実施例1と同じグラインダーを用いて粉砕混合し、得られた混合液を23℃で7日間静置して漬汁を調製した。なお、この漬汁のアルコール度数を、ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析装置を用いて測定したところ約17度であった。
(4)発酵・熟成処理
前記漬汁3000gに、一辺が5〜10mm程度にさいの目切りした島豆腐1000gを浸漬し、軽く攪拌した後、23℃で30日間静置し、発酵または熟成させた。発酵・熟成後に、島豆腐を浸漬した状態の漬汁を、前記グラインダーに投入して粉砕混合し、豆腐よう風味の発酵・熟成液を得た。なお、この発酵・熟成液のアルコール度数は約11度であった。
(5)豆腐よう入りコーレーグスの調製
前記の発酵・熟成液1000gに、コーレーグス(株式会社ひまわり総合食品製)の液体部分200gを加えて攪拌混合して、豆腐よう入りのコーレーグスを製造した。
【0051】
<豆腐よう入りコーレーグスの評価>
得られた豆腐よう入りコーレーグスのアルコール度数は約12.5度であった。
この豆腐よう入りコーレーグスを試食したところ、唐辛子の辛味と、生または半生の唐辛子の好ましい風味と、豆腐ようのような芳香が感じられた。
しかし、アルコールの刺激臭が強く感じられ、また、豆腐ようのような旨味はあまり感じられなかった。さらに、島豆腐の粉砕物と思われる沈殿が多く生じており、見た目に美しくない状態であった。
【0052】
≪試験例1≫
香辛調味液の製造工程において調製する漬込み液における米紅麹の配合割合が、香辛調味液の特性に及ぼす影響を調べた。
<香辛調味液のサンプルの製造>
原料として使用する米紅麹と米黄麹の配合量を、表1に示すとおりに変更し、その他は上記実施例1と同様の方法により、a1〜a6の6種類の香辛調味液のサンプルを製造した。
なお、表1中の「割合(%)」欄は、漬込み液に含まれる米紅麹の割合(質量%)を示している。
また、サンプルa3は、実施例1と同配合物である。
<サンプルの評価方法>
a1〜a6の香辛調味液の各サンプルの液体部分を試食し、アルコールの刺激臭の強さと、米紅麹に特有の芳香の強さを評価した。また、各サンプルの外観を目視により評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0053】
【表1】
【0054】
<考察>
表1より、各サンプルのうちa2〜a5は、アルコールの刺激臭が弱く感じられ、かつ、米紅麹の芳香が良好に感じられることが分かる。特にa3とa4は、アルコールの刺激臭が非常に弱く感じられ、かつ、米紅麹の芳香が極めて良好に感じられることが分かる。また、a2〜a6では、米紅麹由来のピンク色が視認できることが分かる
したがって、香辛調味液の製造工程において調製する漬込み液における米紅麹の配合割合は、4.0〜30.0%の範囲内が好ましく、さらに好ましくは7.5〜15.0%の範囲内であることが理解できる。
【0055】
≪試験例2≫
香辛調味液の製造工程において調製する漬込み液における豆乳の配合割合が、香辛調味液の特性に及ぼす影響を調べた。
<香辛調味液のサンプルの製造>
原料として使用する豆乳と米黄麹と水の配合量を、表2に示すとおりに変更し、その他は上記実施例1と同様の方法により、b1〜b6の6種類の香辛調味液のサンプルを製造した。
なお、表1中の「割合(%)」欄は、漬込み液に含まれる豆乳の割合(質量%)を示している。
また、サンプルb3は、実施例1と同配合物である。
<サンプルの評価方法>
b1〜b6の香辛調味液の各サンプルの液体部分を試食し、アルコールの刺激臭の強さと、豆腐ようのような旨味の強さを評価した。結果は、表2に示すとおりである。
【0056】
【表2】
【0057】
<考察>
表2より、各サンプルのうちb2〜b5は、アルコールの刺激臭が弱く感じられ、かつ、豆腐ようのような旨味が程良く感じられることが分かる。特にb3とb4は、アルコールの刺激臭が非常に弱く感じられ、かつ、旨味が極めて良好に感じられることが分かる。
したがって、香辛調味液の製造工程において調製する漬込み液における豆乳の配合割合は、5.0〜25.0%の範囲内が好ましく、さらに好ましくは12.5〜18.0%の範囲内であることが理解できる。
【0058】
≪試験例3≫
香辛調味液の製造工程において、漬込み液に浸漬する島唐辛子の配合割合が、香辛調味液の特性に及ぼす影響を調べた。
<香辛調味液のサンプルの製造>
原料として使用するホール状の島唐辛子(冷凍処理後に解凍したもの)と漬込み液の配合量を、表3に示すとおりに変更し、その他は上記実施例1と同様の方法により、c1〜c6の6種類の香辛調味液のサンプルを製造した。
なお、表1中の「割合(%)」欄は、島唐辛子と漬込み液の合計質量に対する島唐辛子の割合(質量%)を示している。また、サンプルc3は、実施例1と同配合物である。
<サンプルの評価方法>
c1〜c6の香辛調味液の各サンプルの液体部分を試食し、アルコールの刺激臭の強さと、辛味の強さと、生または半生の島唐辛子の好ましい風味の強さを評価した。結果は表3に示すとおりである。
【0059】
【表3】
【0060】
<考察>
表3より、各サンプルのうちc2〜c5は、アルコールの刺激臭が弱く感じられ、かつ、辛味が程良く感じられ、さらに生または半生の唐辛子の好ましい風味が良好であることが分かる。特にc3〜c5は、アルコールの刺激臭が非常に弱く感じられることが分かる。
したがって、香辛調味液の製造工程において、漬込み液に浸漬する島唐辛子の割合は、島唐辛子と漬込み液の合計質量の6.0〜30.0%の範囲内が好ましく、さらに好ましくは11.
1〜30.0%の範囲内であることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の第1の発明は、唐辛子の辛味を有し、生または半生の唐辛子の好ましい風味が感じられると共に、豆腐ようのような芳香と旨味を有し、かつ、アルコールの刺激臭が低減された香辛調味液の製造方法として有用である。
また、本発明の第2の発明は、強い辛味を有し風味が良く、かつ、水性媒体への分散性に優れた香辛調味ペーストの製造方法として有用である。
図1