(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091267
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】送信装置及び方法、受信装置及び方法、情報通信システム、並びに、情報送受信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 13/00 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
H04B13/00
【請求項の数】34
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-52731(P2013-52731)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-179829(P2014-179829A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康成
【審査官】
大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−042936(JP,A)
【文献】
特開平05−243900(JP,A)
【文献】
特開2000−099165(JP,A)
【文献】
特開2011−209128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置と受信装置を備える情報通信システムであって、
前記送信装置は、
温度生成部と、
送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する情報変換部と、
前記離散値に対応する時間に前記温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、前記離散値に対応する場所に存在する前記温度生成部を所定の温度となるように制御する制御部と、
を有し、
前記受信装置は、
所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、前記送信する情報を復元する情報復元部と、
を有する、情報通信システム。
【請求項2】
前記送信装置は、異なる場所に位置する複数の前記温度生成部を有し、
前記制御部は、特定の場所に位置する前記温度生成部を前記所定の温度になるように制御し、
前記受信装置は、前記特定の場所に関する情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記温度検出部は、所定の範囲内の温度を有する場所を表す温度分布画像を取得し、
前記情報復元部は、前記特定の場所に関する情報に基づいて、前記温度分布画像を変換し、前記特定の場所に位置する前記温度生成部が画像中の所定の位置及び大きさに表示される正規化画像を生成し、前記正規化画像において所定の範囲内の温度を有する場所として表された位置に基づいて、前記送信する情報を復元する、請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項3】
前記情報復元部は、前記温度分布画像に含まれる所定の範囲内の温度を有する領域を、射影変換を行って、前記正規化画像を生成する、請求項2に記載の情報通信システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記離散値の各ビットに対して異なる場所の前記温度生成部を割り当て、前記各ビットの値が所定の値である場合、前記各ビットに対応する前記温度生成部を所定の温度となるように制御する、請求項2又は3のいずれかに記載の情報通信システム。
【請求項5】
前記制御部は、QRコードの情報表示方法に基づいて、前記離散値に対応する場所を定める、請求項4に記載の情報通信システム。
【請求項6】
前記情報変換部は、前記送信する情報を表す図形又は文字を生成し、前記所定の温度となる前記温度生成部の集まりが前記図形又は前記文字を表すように、前記離散値を生成し、
前記情報復元部は、前記温度検出部により検出された場所に基づいて、前記図形又は前記文字を前記送信する情報として復元する、請求項2又は3のいずれかに記載の情報通信システム。
【請求項7】
前記情報変換部は、前記送信する情報を、前記異なる場所に位置する複数の前記温度生成部によって表しうる情報量単位で分割し、前記分割された情報の各々に対して割り当てられた時間を表す第1離散値を生成し、前記第1離散値に対応する前記分割された情報を表す第2離散値に変換し、前記第1離散値と前記第2離散値を連結した第3離散値を生成し、
前記制御部は、前記第1離散値に対応する時間において、前記第3離散値の各ビットに対応する場所に存在する前記温度生成部を、前記第3離散値の各ビットの値に対応する温度となるように制御し、
前記情報復元部は、複数の異なる時間に取得された温度分布画像から前記第1離散値と前記第2離散値を求め、前記送信する情報を復元する、請求項2から6のいずれかに記載の情報通信システム。
【請求項8】
前記情報変換部は、送信する情報をモールス信号に相当する離散値に変換し、
前記制御部は、前記離散値に対応する時間に前記温度生成部を所定の温度となるように制御し、
前記温度検出部は、所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間を検出し、
前記情報復元部は、前記温度検出部により検出された時間と前記モールス信号の符号表に基づいて、前記送信する情報を復元する、請求項1に記載の情報通信システム。
【請求項9】
前記送信装置は、前記温度検出部と、前記情報復元部とをさらに有し、
前記受信装置は、前記温度生成部と、前記情報変換部と、前記制御部とをさらに有する、請求項1から8のいずれかに記載の情報通信システム。
【請求項10】
前記受信装置は、
前記情報復元部において、前記送信する情報を復元すると、
前記情報変換部において、受領確認を表す情報を第4離散値に変換し、
前記制御部において、前記第4離散値に基づいて前記温度生成部を制御し、
前記送信装置は、
前記温度検出部において、所定の範囲内の温度となった場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出し、
前記情報復元部において、前記受領確認を表す情報を復元する、
請求項9に記載の情報通信システム。
【請求項11】
前記温度生成部は、ペルチェ素子から成る、請求項1から10のいずれかに記載の情報通信システム。
【請求項12】
前記温度検出部は、サーモカメラから成る、請求項1から11に記載の情報通信システム。
【請求項13】
温度生成部と、
送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する情報変換部と、
前記離散値に対応する時間に前記温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、前記離散値に対応する場所に存在する前記温度生成部を所定の温度となるように制御する制御部と、
を有する送信装置。
【請求項14】
異なる場所に位置する複数の前記温度生成部を有し、
前記制御部は、特定の場所に位置する前記温度生成部を前記所定の温度になるように制御する、請求項13に記載の送信装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記離散値の各ビットに対して異なる場所の前記温度生成部を割り当て、前記各ビットの値が所定の値である場合、前記各ビットに対応する前記温度生成部を所定の温度となるように制御する、請求項14に記載の送信装置。
【請求項16】
前記制御部は、QRコードの情報表示方法に基づいて、前記離散値に対応する場所を定める、請求項15に記載の送信装置。
【請求項17】
前記情報変換部は、前記送信する情報を表す図形又は文字を生成し、前記所定の温度となる前記温度生成部の集まりが前記図形又は前記文字を表すように、前記離散値を生成する、請求項14に記載の送信装置。
【請求項18】
前記情報変換部は、前記送信する情報を、前記異なる場所に位置する複数の前記温度生成部によって表しうる情報量単位で分割し、前記分割された情報の各々に対して割り当てられた時間を表す第1離散値を生成し、前記第1離散値に対応する前記分割された情報を第2離散値に変換し、前記第1離散値と前記第2離散値を連結した第3離散値を生成し、
前記制御部は、前記第1離散値に対応する時間において、前記第3離散値の各ビットに対応する場所に存在する前記温度生成部を、前記第3離散値の各ビットの値に対応する温度となるように制御する、請求項14から17のいずれかに記載の送信装置。
【請求項19】
前記情報変換部は、送信する情報をモールス信号に相当する離散値に変換し、
前記制御部は、前記離散値に対応する時間に前記温度生成部を所定の温度となるように制御する、請求項13に記載の送信装置。
【請求項20】
前記温度生成部は、ペルチェ素子から成る、請求項13から19のいずれかに記載の送信装置。
【請求項21】
所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、情報を復元する情報復元部と、
を有する、受信装置。
【請求項22】
特定の場所に関する情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記温度検出部は、所定の範囲内の温度を有する場所を表す温度分布画像を取得し、
前記情報復元部は、前記特定の場所に関する情報に基づいて、前記温度分布画像を変換し、前記特定の場所に位置する温度生成部が画像中の所定の位置及び大きさに表示される正規化画像を生成し、前記正規化画像において所定の範囲内の温度を有する場所として表された位置に基づいて、前記情報を復元する、請求項21に記載の受信装置。
【請求項23】
前記情報復元部は、前記温度分布画像に含まれる所定の範囲内の温度を有する領域を、射影変換を行って、前記正規化画像を生成する、請求項22に記載の受信装置。
【請求項24】
前記情報復元部は、前記温度検出部により検出された場所に基づいて、図形又は文字を復元する、請求項22又は23のいずれかに記載の受信装置。
【請求項25】
前記情報復元部は、複数の異なる時間に取得された温度分布画像から、時間を表す第1離散値と、前記第1離散値に対応する分割された前記情報を表す第2離散値を求め、前記情報を復元する、請求項22から24のいずれかに記載の受信装置。
【請求項26】
前記温度検出部は、所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間を検出し、
前記情報復元部は、前記温度検出部により検出された時間とモールス信号の符号表に基づいて、前記情報を復元する、請求項21に記載の受信装置。
【請求項27】
前記温度検出部は、サーモカメラから成る、請求項21から26のいずれかに記載の受信装置。
【請求項28】
温度生成部と、
送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する情報変換部と、
前記離散値に対応する時間に前記温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、前記離散値に対応する場所に存在する前記温度生成部を所定の温度となるように制御する制御部と、
所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、情報を復元する情報復元部と、
を有する、情報送受信装置。
【請求項29】
前記情報復元部が、前記情報を復元すると、
前記情報変換部が、受領確認を表す情報を第4離散値に変換し、
前記制御部が、前記第4離散値に基づいて前記温度生成部を制御する、
請求項28に記載の情報送受信装置。
【請求項30】
前記情報変換部が、前記送信する情報を前記離散値に変換し、
前記制御部が、前記離散値に基づいて、前記温度生成部を制御し、
前記温度検出部が、前記所定の範囲内の温度となった場所又は前記所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出し、
前記情報復元部が、受領確認を表す情報を復元する、
請求項28又は29に記載の情報送受信装置。
【請求項31】
温度生成部を備える送信装置と、温度検出部を備える受信装置による情報送受信方法であって、
前記送信装置が、送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換し、
前記送信装置が、前記離散値に対応する時間に前記温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、前記離散値に対応する場所に存在する前記温度生成部を所定の温度となるように制御し、
前記受信装置が、前記温度検出部によって、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出し、
前記受信装置が、前記温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、前記送信する情報を復元する、
情報送受信方法。
【請求項32】
前記送信装置は、温度検出部をさらに備え、
前記受信装置は、温度生成部をさらに備え、
前記受信装置は、前記送信する情報を復元すると、受領確認を表す情報を第4離散値に変換し、前記第4離散値に基づいて前記温度生成部を制御し、
前記送信装置は、前記温度検出部において、前記所定の範囲内の温度となった場所又は前記所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出し、前記受領確認を表す情報を復元する、
請求項31に記載の情報送受信方法。
【請求項33】
温度生成部を備える送信装置による情報の送信方法であって、
前記送信装置が、送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換し、
前記送信装置が、前記離散値に対応する時間に前記温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、前記離散値に対応する場所に存在する前記温度生成部を所定の温度となるように制御する、
送信方法。
【請求項34】
温度検出部を備える受信装置による情報の受信方法であって、
前記温度検出部が、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出し、
前記受信装置が、前記温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、情報を復元する、
受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置及び方法、受信装置及び方法、情報通信システム、並びに、情報送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両などの移動する機器間の情報伝達は、無線を用いた手段が多く用いられている。しかし、無線を用いた通信は、遠方の不特定多数の対象に情報を伝達してしまうため、伝達内容の漏洩など秘匿性に問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、熱を用いた情報伝達を行うことによって、遠方の対象に情報を伝達しない秘匿性の高い情報伝達手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1側面に係る情報通信システムは、送信装置と受信装置を備える情報通信システムである。送信装置は、温度生成部と、送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する情報変換部と、離散値に対応する時間に温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、離散値に対応する場所に存在する温度生成部を所定の温度となるように制御する制御部と、を有する。受信装置は、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する温度検出部と、温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、送信する情報を復元する情報復元部と、を有する。
【0005】
送信装置は、異なる場所に位置する複数の温度生成部を有するとよい。制御部は、特定の場所に位置する温度生成部を所定の温度になるように制御するとよい。受信装置は、特定の場所に関する情報を記憶する記憶部をさらに有するとよい。温度検出部は、所定の範囲内の温度を有する場所を表す温度分布画像を取得するとよい。情報復元部は、特定の場所に関する情報に基づいて、温度分布画像を変換し、特定の場所に位置する温度生成部が画像中の所定の位置及び大きさに表示される正規化画像を生成し、正規化画像において所定の範囲内の温度を有する場所として表された位置に基づいて、送信する情報を復元するとよい。
【0006】
情報復元部は、前記温度分布画像に含まれる所定の範囲内の温度を有する領域を、射影変換を行って、正規化画像を生成するとよい。
【0007】
制御部は、離散値の各ビットに対して異なる場所の温度生成部を割り当て、各ビットの値が所定の値である場合、各ビットに対応する温度生成部を所定の温度となるように制御するとよい。
【0008】
制御部は、QRコード(登録商標:以下、省略)の情報表示方法に基づいて、離散値に対応する場所を定めるとよい。
【0009】
情報変換部は、送信する情報を表す図形又は文字を生成し、所定の温度となる温度生成部の集まりが図形又は文字を表すように、離散値を生成するとよい。情報復元部は、温度検出部により検出された場所に基づいて、図形又は文字を送信する情報として復元するとよい。
【0010】
情報変換部は、送信する情報を、異なる場所に位置する複数の温度生成部によって表しうる情報量単位で分割し、分割された情報の各々に対して割り当てられた時間を表す第1離散値を生成し、第1離散値に対応する分割された情報を第2離散値に変換し、第1離散値と第2離散値を連結した第3離散値を生成するとよい。制御部は、第1離散値に対応する時間において、第3離散値の各ビットに対応する場所に存在する温度生成部を、第3離散値の各ビットの値に対応する温度となるように制御するとよい。情報復元部は、複数の異なる時間に取得された温度分布画像から第1離散値と第2離散値を求め、送信する情報を復元するとよい。
【0011】
情報変換部は、送信する情報をモールス信号に相当する離散値に変換するとよい。制御部は、離散値に対応する時間に温度生成部を所定の温度となるように制御するとよい。温度検出部は、所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間を検出するとよい。情報復元部は、温度検出部により検出された時間とモールス信号の符号表に基づいて、送信する情報を復元するとよい。
【0012】
送信装置は、温度検出部と、情報復元部とをさらに有するとよい。受信装置は、温度生成部と、情報変換部と、制御部とをさらに有するとよい。
【0013】
受信装置は、情報復元部において、送信する情報を復元すると、情報変換部において、受領確認を表す情報を第4離散値に変換し、制御部において、第4離散値に基づいて温度生成部を制御するとよい。送信装置は、温度検出部において、所定の範囲内の温度となった場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出し、情報復元部において、受領確認を表す情報を復元するとよい。
【0014】
温度生成部は、ペルチェ素子から成るとよい。また、温度検出部は、サーモカメラから成るとよい。
【0015】
本発明の第2側面に係る送信装置は、温度生成部と、送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する情報変換部と、離散値に対応する時間に温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、離散値に対応する場所に存在する温度生成部を所定の温度となるように制御する制御部と、を有する。
【0016】
前述の送信装置は、異なる場所に位置する複数の温度生成部を有するとよい。制御部は、特定の場所に位置する温度生成部を所定の温度になるように制御するとよい。
【0017】
制御部は、離散値の各ビットに対して異なる場所の温度生成部を割り当て、各ビットの値が所定の値である場合、各ビットに対応する温度生成部を所定の温度となるように制御するとよい。
【0018】
制御部は、QRコードの情報表示方法に基づいて、離散値に対応する場所を定めるとよい。
【0019】
情報変換部は、送信する情報を表す図形又は文字を生成し、所定の温度となる温度生成部の集まりが図形又は文字を表すように、離散値を生成するとよい。
【0020】
情報変換部は、送信する情報を、異なる場所に位置する複数の温度生成部によって表しうる情報量単位で分割し、分割された情報の各々に対して割り当てられた時間を表す第1離散値を生成し、第1離散値に対応する分割された情報を第2離散値に変換し、第1離散値と第2離散値を連結した第3離散値を生成するとよい。制御部は、第1離散値に対応する時間において、第3離散値の各ビットに対応する場所に存在する温度生成部を、第3離散値の各ビットの値に対応する温度となるように制御するとよい。
【0021】
情報変換部は、送信する情報をモールス信号に相当する離散値に変換するとよい。制御部は、離散値に対応する時間に温度生成部を所定の温度となるように制御するとよい。
【0022】
温度生成部は、ペルチェ素子から成るとよい。
【0023】
本発明の第3側面に係る受信装置は、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する温度検出部と、温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、情報を復元する情報復元部と、を有する。
【0024】
前述の受信装置は、特定の場所に関する情報を記憶する記憶部をさらに有するとよい。温度検出部は、所定の範囲内の温度を有する場所を表す温度分布画像を取得するとよい。情報復元部は、特定の場所に関する情報に基づいて、温度分布画像を変換し、特定の場所に位置する温度生成部が画像中の所定の位置及び大きさに表示される正規化画像を生成し、正規化画像において所定の範囲内の温度を有する場所として表された位置に基づいて、情報を復元するとよい。
【0025】
情報復元部は、温度分布画像に含まれる所定の範囲内の温度を有する領域を、射影変換を行って、正規化画像を生成するとよい。
【0026】
情報復元部は、温度検出部により検出された場所に基づいて、図形又は文字を復元するとよい。
【0027】
情報復元部は、複数の異なる時間に取得された温度分布画像から、時間を表す第1離散値と、第1離散値に対応する分割された情報を表す第2離散値を求め、情報を復元するとよい。
【0028】
温度検出部は、所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間を検出するとよい。情報復元部は、温度検出部により検出された時間とモールス信号の符号表に基づいて、情報を復元するとよい。
【0029】
温度検出部は、サーモカメラから成るとよい。
【0030】
本発明の第4側面に係る情報送受信装置は、温度生成部と、送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する情報変換部と、離散値に対応する時間に温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、離散値に対応する場所に存在する温度生成部を所定の温度となるように制御する制御部と、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する温度検出部と、温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、情報を復元する情報復元部と、を有するとよい。
【0031】
情報復元部が、情報を復元すると、情報変換部が、受領確認を表す情報を第4離散値に変換し、制御部が、第4離散値に基づいて温度生成部を制御するとよい。
【0032】
情報変換部が、送信する情報を離散値に変換し、制御部が、離散値に基づいて、温度生成部を制御し、温度検出部が、所定の範囲内の温度となった場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間を検出し、情報復元部が、受領確認を表す情報を復元するとよい。
【0033】
本発明の第5側面に係る情報送受信方法は、温度生成部を備える送信装置と、温度検出部を備える受信装置による情報送受信方法である。送信装置が、送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する。そして、送信装置が、離散値に対応する時間に温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、離散値に対応する場所に存在する温度生成部を所定の温度となるように制御する。そして、受信装置が、温度検出部によって、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する。そして、受信装置が、温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、送信する情報を復元する。
【0034】
送信装置は、温度検出部をさらに備えるとよく、受信装置は、温度生成部をさらに備えるとよい。そして、受信装置は、送信する情報を復元すると、受領確認を表す情報を第4離散値に変換し、第4離散値に基づいて温度生成部を制御するとよい。送信装置は、温度検出部において、所定の範囲内の温度となった場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出し、受領確認を表す情報を復元するとよい。
【0035】
本発明の第6側面に係る情報の送信方法は、温度生成部を備える送信装置による情報の送信方法である。送信装置が、送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する。そして、送信装置が、離散値に対応する時間に温度生成部を所定の温度となるように制御するか、或いは、離散値に対応する場所に存在する温度生成部を所定の温度となるように制御する。
【0036】
本発明の第7側面に係る情報の受信方法は、温度検出部を備える受信装置による情報の受信方法である。温度検出部が、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する。受信装置が、温度検出部により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、情報を復元する。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る送信装置及び方法、受信装置及び方法、情報通信システム、並びに、情報送受信方法は、熱を用いた情報伝達を行うことによって、遠方の対象に情報を伝達しない秘匿性の高い情報伝達手段を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る情報通信システムのシステムブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る情報通信システムの動作の一例を示すフローチャート。
【
図3】第1実施形態に係る情報通信システムの動作の別の一例を示すフローチャート。
【
図4】複数の温度生成部がアレイ状に配置された例。
【
図6】温度検出部が取得した温度分布画像と、正規化画像との関係の一例を示す図。
【
図7】第1実施形態に係る情報通信システムの動作の別の一例を示すフローチャート。
【
図9】第1実施形態に係る情報通信システムの動作の別の一例を示すフローチャート。
【
図10】
図9の動作例に係るデータの分割/統合を説明するための図。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る情報通信システムのシステムブロック図。
【
図12】第2実施形態に係る情報通信システムの動作の一例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[第1実施形態:構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る情報通信システムのブロック図である。この情報通信システム1は、送信装置100と、受信装置200とを有している。送信装置100は、入力部10、情報変換部20、制御部30、温度生成部40、及び、第1記憶部50を備える。受信装置200は、温度検出部60、情報復元部70、出力部80、及び、第2記憶部90を備える。送信装置100と受信装置200は、温度によって情報を伝達するために、好ましくは近距離に離隔されている。
【0040】
入力部10は、情報発信者が、送信装置100により発信する情報を入力する。入力部10は、例えば、キーやボタンなどから成る。情報変換部20は、送信する情報を、時空間の少なくとも一方を表す離散値に変換する。制御部30は、前述の離散値に対応する時間に温度生成部40を所定の温度となるように制御するか、或いは、前述の離散値に対応する場所に存在する温度生成部40を所定の温度となるように制御する。温度生成部40は、前記制御部30からの信号に基づいて、自らの表面が所定の温度となるように発熱する。温度生成部40は、例えば、ペルチェ素子などの熱電素子である。第1記憶部50は、送信装置100と受信装置200との間で共有する情報を記憶する。第1記憶部50は、好ましくは、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなる。第1記憶部50に記憶される情報は、情報変換部20によって利用される。第1記憶部50に格納される情報は、例えば、モールス信号の符号表のように、情報を時系列の複数種類の出力に変換する情報、QRコードを処理するために必要な情報のように、情報を2次元の形状として符号化するために利用される情報などを含む。
【0041】
温度検出部60は、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する。温度検出部60は、例えば、サーモカメラである。情報復元部70は、温度検出部60により検出された場所又は時間の少なくとも一方に基づいて、送信装置100が送信した情報を復元する。出力部80は、情報復元部70が復元した情報を情報受信者が理解できるように出力する。出力部80は、例えば、モニタやスピーカなどから成る。第2記憶部90は、送信装置100と受信装置200との間で共有する情報を記憶する。第2記憶部90は、好ましくは、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなる。第2記憶部90に記憶される情報は、情報復元部70によって利用される。第2記憶部90に格納される情報は、例えば、モールス信号の符号表のように、情報を時系列の複数種類の出力に変換する情報、QRコードを処理するために必要な情報のように、情報を2次元の形状として符号化するために利用される情報などを含む。
【0042】
[第1実施形態:動作]
図2は、第1実施形態に係る情報通信システム1の動作の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS10において、入力部10において、送信装置100が送信する情報が入力される。ステップS20において、情報変換部20は、送信装置100が送信する情報を、時間を表す離散値に変換する。本例では、モールス信号に変換する。この場合、第1記憶部50及び第2記憶部90には、モールス信号の符号表が記憶されている。モールス信号では、温度生成部40の時間分解能をTとするとき、3Tの時間を使用して2つの情報「・」と「−」を送信する。「・」と「・」、「・」と「−」、「−」と「・」、「−」と「−」との間には、時間間隔Tをあけることとなっている。そして、2つの言葉の間には時間間隔7Tを空けることとなっている。例えば、送信装置100が送信する情報が「ABC」であるとき、モールス信号は、「・− −・・・ −・−・」のようになる。さらに、情報変換部20は、時間分解能Tごとの温度生成部40を所定の温度にするか否かを「1」「0」で表した離散値に変換する。上述のモールス信号の場合、離散値は、「100011100000001110100010001000000000111010001110100」(2進数で表示)となる。
【0043】
つぎに、ステップS30において、制御部30は、上述の離散値に対応する時間に、温度生成部40を所定の温度となるように制御する。ここでは、制御部30が制御する温度生成部40の温度は、高温Hと低温Lの2種類の温度となる場合を考える。上記離散値が「1」であるとき、そのビットに対応する時間t1において、時間間隔Tの間、制御部30は、温度生成部40を温度Hとなるように制御する。上記離散値が「0」であるとき、そのビットに対応する時間t2において、時間間隔Tの間、制御部30は、温度生成部40を温度Lとなるように制御する。なお、温度検出部60が高温Hと低温Lの識別が可能なように、高温Hと低温Lとの差の温度は十分に大きいことが望ましい。以上によって、温度生成部40は、上述の離散値に対応する時間に、所定の温度とするように発熱する。
【0044】
ステップS40において、受信装置200の温度検出部60は、所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間を検出する。例えば、温度検出部60は、自らが撮影する領域の範囲内に、[H−Δ,H+Δ](Δは、ノイズの大きさや赤外線の減衰を考慮に入れて予め定めた定数)の範囲内の温度を有する領域が存在するかどうかを、時間間隔Tごとに検出する。なお、温度検出部60は、周辺環境に応じて、自らが撮影する領域の範囲内に、[L−Δ,L+Δ](Δは、予め定めた定数)の範囲内の温度を有する領域が存在するかどうかを、時間間隔Tごとに検出してもよい。さらには、温度検出部60は、自らが撮影する領域の範囲内に、[L−Δ,L+Δ]の範囲内の温度を有する領域と、[H−Δ,H+Δ]の範囲内の温度を有する領域との両方が存在するかどうかを、時間間隔Tごとに検出してもよい。
【0045】
ステップS50において、情報復元部70は、温度検出部60により検出された時間と、第2記憶部90に格納されているモールス信号の符号表に基づいて、送信装置100が送信する情報を復元する。具体的には、情報復元部70は、温度検出部60が撮影する領域の範囲内に、[H−Δ,H+Δ]の範囲内の温度を有する領域が存在する場合を1、当該領域が存在しない場合を0として、上述の離散値を求める。また、温度検出部60は、[L−Δ,L+Δ]の範囲内の温度を有する領域が存在するかどうかを検出する場合、情報復元部70は、温度検出部60が撮影する領域の範囲内に、[L−Δ,L+Δ]の範囲内の温度を有する領域が存在する場合を0、当該領域が存在しない場合を1として、上述の離散値を求めることもできる。また、温度検出部60は、[L−Δ,L+Δ]の範囲内の温度を有する領域と、[H−Δ,H+Δ]の範囲内の温度を有する領域との両方が存在するかどうかを検出する場合、情報復元部70は、以下のように上述の離散値を求めることができる。この場合、情報復元部70は、[H−Δ,H+Δ]の範囲内の温度を有する領域のみが存在する場合を1、[L−Δ,L+Δ]の範囲内の温度を有する領域のみが存在する場合を0とし、[H−Δ,H+Δ]の範囲内の温度を有する領域と、[L−Δ,L+Δ]の範囲内の温度を有する領域との両方が存在する場合と、[H−Δ,H+Δ]の範囲内の温度を有する領域と、[L−Δ,L+Δ]の範囲内の温度を有する領域との両方が存在しない場合には、エラーとして無視することもできる。
【0046】
このように離散値を求めると、情報復元部70は、離散値からモールス信号の符号を求め、第2記憶部90に格納されているモールス信号の符号表に基づいて、送信装置100が送信する情報を復元する。ステップS60において、出力部80は、情報復元部70が復元した情報を情報受信者が理解できるように出力する。
【0047】
図3は、第1実施形態に係る情報通信システム1の動作の別の一例を示すフローチャートである。本動作例では、
図4に示すように、送信装置100では、複数の温度生成部40がアレイ状に配置されている。
図4は、温度生成部40の集まりによってバージョン1のQRコードを表現できるように、21個×21個の温度生成部40をアレイ状に配置している。
図4は、異なる場所の温度生成部40を1−1〜21−21(x−yとすると、xが行方向の位置、yが列方向の位置を表す)として示している。なお、他のバージョンのQRコード、もしくはマイクロQRコードを表現するために、別の個数の温度生成部40をアレイ状に配置してもよい。本動作例では、QRコードを用いて情報伝達を行うために、第1記憶部50及び第2記憶部90には、QRコードを処理するために必要な情報が記憶されている。本動作例では、送信装置100と受信装置200は、以下のように動作する。なお、
図3では、
図2と同じ動作については、同じ符号を付しており、説明を省略する。
【0048】
ステップS21において、情報変換部20は、送信装置100が送信する情報を、空間を表す離散値に変換する。具体的には、まず、情報変換部20は、送信する情報からQRコードを生成する。例えば、送信装置100が送信する情報が「ABC」であるとき、情報変換部20が生成するQRコードは、
図5に表されるようなものとなる。QRコードは、送信装置100が送信する情報の内容とは無関係に必ず含まれる切り出しシンボル(ファインダパターン)FP1〜FP3と、その他領域DAを含む。
【0049】
つぎに、情報変換部20は、異なる位置にある各温度生成部1−1〜21−21に対して、異なるビットを割り当てて、そのビットに対応する各温度生成部1−1〜21−21を所定の温度にするか否かを「1」「0」で表した離散値を生成する。例えば、情報変換部20は、最上位ビットを温度生成部1−1に割り当てる。その次に、情報変換部20は、1−2から1−21の温度生成部を順に上位から下位に向かってビットを割り当てる。さらに、情報変換部20は、2−1から2−21の温度生成部を順に上位から下位に向かってビットを割り当てる。最後に、情報変換部20は、最下位ビットを温度生成部21−21に割り当てる。そして、QRコードの黒で表示される位置にある温度生成部40に対応するビットを「1」とし、QRコードの白で表示される位置にある温度生成部40に対応するビットに対して「0」とする離散値に変換する。なお、上述するビットの割り当て方法はあくまでも一例であって、他の方法によって温度生成部40と離散値のビットとの対応関係を定めてもよい。また、QRコードの白で表示される位置にある温度生成部40に対応するビットを「1」とし、QRコードの黒で表示される位置にある温度生成部40に対応するビットに対して「0」としてもよい。
【0050】
つぎに、ステップS31において、制御部30は、上述の離散値に対応する場所に存在する温度生成部40を所定の温度となるように制御する。具体的には、制御部30は、上述する離散値のビットの順番から対応する温度生成部40の位置を求め、当該ビットが「1」であれば、そのビットに対応する温度生成部40の温度を高温Hとし、当該ビットが「0」であれば、そのビットに対応する温度生成部40の温度を低温Lとするように、制御部30は温度生成部40を制御する。なお、「1」に対応する温度生成部40の温度と、「1」に対応する温度生成部40の温度が上述の例と逆であってもよい。また、温度検出部60が高温Hと低温Lの識別が可能なように、高温Hと低温Lとの差の温度は十分に大きいことが望ましい。以上によって、温度生成部40は、QRコードを表現するように発熱する。なお、QRコードは、送信装置100が送信する情報の内容とは無関係にファインダパターンFP1〜FP3を必ず含む。したがって、ファインダパターンFP1〜FP3に対応する場所に存在する特定の温度生成部40は、制御部30によって、必ず所定の温度となるように制御される。
【0051】
ステップS41において、受信装置200の温度検出部60は、所定の範囲内の温度を有する場所を検出する。すなわち、温度検出部60は、所定の範囲内の温度を有する場所を表す温度分布画像を取得する。例えば、温度検出部60は、[L−Δ,L+Δ]の範囲内の温度を有する領域と、[H−Δ,H+Δ]の範囲内の温度を有する領域との両方を有する温度分布画像を取得する。
図6の上図は、温度検出部60が取得した温度分布画像の一例である。送信装置100と受信装置200は移動体であるため、温度生成部40のアレイから成る平面は、温度検出部60の撮像面に対して平行であるとは限らないため、
図6の上図に示すように、一般的には、温度検出部60が取得する温度分布画像は、変形されたQRコードを示している。
【0052】
ステップS51において、情報復元部70は、温度検出部60により検出された場所に基づいて、送信装置100が送信する情報を復元する。具体的には、情報復元部70は、まず、第2記憶部40に記憶されたQRコードを処理するために必要な情報に基づいて、前述する温度分布画像を変換し、特定の場所に位置する温度生成部が画像中の所定の位置及び大きさに表示される正規化画像を生成する。ここでの特定の場所に位置する温度生成部とは、例えば、ファインダパターンFP1〜FP3を形成する温度生成部のことである。また、QRコードを処理するために必要な情報とは、ファインダパターンFP1〜FP3の位置及び大きさに関係する情報である。情報復元部70は、
図6の上図のような温度検出部60が取得する温度分布画像を射影変換し、
図6の下図のような正規化画像を生成する。なお、この射影変換や正規化に関する方法は、周知のQRコードの読み取り方法を利用すればよい。
【0053】
つぎに、情報復元部70は、生成した正規化画像において所定の範囲内の温度を有する場所として表された位置に基づいて、送信装置100が送信した情報を復元する。例えば、情報復元部70は、生成した正規化画像のその他領域DAの各セルにおいて表されたビットを読み取り、QRコードが表す情報を復元する。
【0054】
図7は、第1実施形態に係る情報通信システム1の動作のさらに別の一例を示すフローチャートである。本動作例でも、送信装置100では、複数の温度生成部40がアレイ状に配置されている。また、第1記憶部50及び第2記憶部90には、
図3の動作例と同じ情報、すなわち、ファインダパターンFP1〜FP3の位置及び大きさに関係する情報が記憶されている。なお、
図7では、
図3と同じ動作については、同じ符号を付しており、説明を省略する。
【0055】
ステップS22において、情報変換部20は、送信装置100が送信する情報を表す図形又は文字を生成する。そして、情報変換部20は、所定の温度となる温度生成部40の集まりが前述する図形又は文字を表すように離散値を生成する。
図8は、情報変換部が生成する図形の一例である。
図8は、「右に曲がる」という情報発信者の意図を表す右方向の矢印を表示したものである。前述した射影変換や正規化が可能なように、本図形にも、ファインダパターンFP1〜FP3が含まれている。なお、
図8は図形を表示した一例であって、右下の領域に文字を表示するようなものであってもよい。
図8のような図形から離散値を生成する方法は、
図3のステップS21と同じである。
【0056】
ステップS52において、情報復元部70は、温度検出部60により検出された場所に基づいて、前述した図形や文字を、送信装置100が送信する情報として復元する。具体的には、情報復元部70は、まず、第2記憶部40に記憶されたファインダパターンFP1〜FP3の位置及び大きさに関係する情報に基づいて、
図3のステップS51と同様の方法で、温度分布画像を変換し、正規化画像を生成する。
【0057】
図3及び
図7の動作例は、1回のパターンにより情報を伝達する例である。しかし、QRコードのようなパターンによって情報で伝送する場合、アレイを形成する温度生成部40の数や並べ方に応じて、1つのパターンで伝送できる情報量(以下、このような情報量をパターン容量と呼ぶ)に限界がある。パターン容量より多い量の情報を伝送する場合、制御部30は、異なる時間に複数の異なるパターンを温度生成部40から出力するように制御する必要がある。
図9は、このような場合における情報通信システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
図10では、
図9の動作例に係るデータの分割/統合を説明するための図である。本動作例でも、送信装置100では、複数の温度生成部40がアレイ状に配置されている。また、第1記憶部50及び第2記憶部90には、
図3の動作例と同じ情報、すなわち、ファインダパターンFP1〜FP3の位置及び大きさに関係する情報が記憶されている。なお、
図9では、
図3と同じ動作については、同じ符号を付しており、説明を省略する。
【0058】
ステップS23において、情報変換部20は、送信装置100が送信する情報を、(パターン容量−ヘッダ容量)単位で分割する。
図10の例では、送信するデータを3つのデータ(データA、データB、データC)に分割する場合を示している。ここで、ヘッダ容量とは、情報を複数のパターンを通じて送信する場合に、複数のパターンを識別するために利用するヘッダ情報を入力するために必要な容量を意味する。すなわち、(パターン容量−ヘッダ容量)は、異なる場所に位置する複数の温度生成部40によって表しうる情報量である。
【0059】
ステップS24において、情報変換部20は、分割された情報の各々に対して割り当てられた時間を表す第1離散値を生成する。この第1離散値とは、例えば、パターンの伝送順序を表す数字等を表す。
図10の例では、最初に伝送するパターンに対して「1」を表す第1離散値とし、その次に伝送するパターンに対して「2」を表す第1離散値とし、最後に伝送するパターンに対して「数字+(終了を表す文字列)」を表すものを第1離散値としてもよい。なお、第1離散値は、上述するヘッダに相当する。
【0060】
ステップS25において、情報変換部20は、第1離散値に対応する時間に伝送される分割された情報を第2離散値に変換する。この第2離散値は、
図3のステップS21の離散値と等価なものであるとよい。なお、第2離散値は、1つのパターンにより伝送されるデータに相当する。
【0061】
ステップS26において、情報変換部20は、第1離散値と第2離散値を連結した第3離散値を生成する。なお、第3離散値の各ビットと、異なる位置にある各温度生成部40との対応関係は、
図3のステップS21において示された対応関係と同じである。
【0062】
ステップS33において、制御部30は、第1離散値に対応する時間に、第3離散値の各ビットに対応する場所に存在する温度生成部40を、第3離散値の各ビットの値に対応する温度となるように制御する。第3離散値の各ビットの値と、温度生成部40が出力する温度との対応関係は、
図3のステップS31において示された対応関係と同じである。
【0063】
ステップS41において、受信装置200の温度検出部60は、温度分布画像を複数の異なる時間において取得すると、ステップS53において、情報復元部70は、複数の異なる時間に取得された温度分布画像から第1離散値と第2離散値を求める。具体的には、
図3のステップS51と同様に、温度分布画像から正規化画像を求め、生成した正規化画像において所定の範囲内の温度を有する場所として表された位置に基づいて、第1離散値と第2離散値とを求める。そして、情報復元部70は、第1離散値が表す順序に基づいて、第2離散値で表されたデータを統合し、送信装置100が送信する情報を復元する。
図10の例では、第1離散値が表す数字(1、2、3)の順に、それらの数字に対応するデータ(A、B、C)を連結している。
【0064】
[第2実施形態:構成]
図11は、本発明の第2実施形態に係る情報通信システムのブロック図である。この情報通信システム2は、第1送受信装置300Aと、第2送受信装置300Bとを有している。第1送受信装置300Aと第2送受信装置300Bは、実質的に同じ構成である。第1送受信装置300Aは、入力部11A、情報変換部21A、制御部31A、温度生成部41A、記憶部51A、温度検出部61A、情報復元部71A、及び、出力部81Aを備える。第2送受信装置300Bは、入力部11B、情報変換部21B、制御部31B、温度生成部41B、記憶部51B、温度検出部61B、情報復元部71B、及び、出力部81Bを備える。第1送受信装置300Aと第2送受信装置300Bは、温度によって情報を伝達するために、好ましくは近距離に離隔されている。
【0065】
入力部11A及び11B、情報変換部21A及び21B、温度生成部41A及び41B、温度検出部61A及び61B、情報復元部71A及び71B、並びに、出力部81A及び81Bは、それぞれ、入力部10、情報変換部20、制御部30、温度生成部40、温度検出部60、情報復元部70、並びに、出力部80の機能を含む。記憶部51A及び51Bは、第1記憶部50と同一である。すなわち、記憶部51A及び51Bは、第2記憶部90と同一であるとも言える。
【0066】
情報変換部21A及び21B、温度生成部41A及び41B、温度検出部61A及び61B、並びに、情報復元部71A及び71Bは、第1実施形態の機能に加えて、以下の機能を有する。送受信装置300Aの情報復元部71Aにおいて、送受信装置300Bが送信する情報を復元すると、送受信装置300Aの情報変換部21Aは、受領確認を表す情報を第4離散値に変換する。そして、送受信装置300Aの制御部31Aは、第4離散値に基づいて温度生成部41Aを制御する。すなわち、送受信装置300Aの制御部31Aは、第4離散値に対応する時間に温度生成部41Aを所定の温度となるように制御するか、或いは、第4離散値に対応する場所に存在する温度生成部41Aを所定の温度となるように制御する。送受信装置300Bの温度検出部61Bは、送受信装置300Aの制御部31Aによって前述の制御がされる温度生成部41Aに対して、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する。送受信装置300Bの情報復元部71Bは、前述する受領確認を表す情報を復元する。
【0067】
なお、送受信装置300A、300Bにおける送受信するデータの関係が前述した関係と逆であってもよい。すなわち、送受信装置300Bの情報復元部71Bにおいて、送受信装置300Aが送信する情報を復元すると、送受信装置300Bの情報変換部21Bは、受領確認を表す情報を第4離散値に変換する。そして、送受信装置300Bの制御部31Bは、第4離散値に基づいて温度生成部41Bを制御する。すなわち、送受信装置300Bの制御部31Bは、第4離散値に対応する時間に温度生成部41Bを所定の温度となるように制御するか、或いは、第4離散値に対応する場所に存在する温度生成部41Bを所定の温度となるように制御する。送受信装置300Aの温度検出部61Aは、送受信装置300Bの制御部31Bによって前述の制御がされる温度生成部41Bに対して、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する。送受信装置300Aの情報復元部71Aは、前述する受領確認を表す情報を復元する。
【0068】
[第2実施形態:動作]
図12は、第2実施形態に係る情報通信システム2の動作の一例を示すシーケンス図である。
図12では、送受信装置300Aから送受信装置300Bに対してデータを伝送する例を示している。しかし、送受信装置300Bから送受信装置300Aに対してデータを伝送する場合においても同様の処理を適用することができる。
【0069】
ステップS100において、入力部11Aによって、送受信装置300Aが送信する情報が入力される。この処理は、
図2、
図3、
図7、
図9のステップS10と等価な処理である。ステップS110において、情報変換部21Aは、送受信装置300Aが送信する情報を離散値に変換する。この処理は、
図2のステップS20、
図3のステップS21、
図7のステップS22、或いは、
図9のステップS23〜S26のいずれかと等価な処理である。
【0070】
ステップS120において、制御部31Aは、離散値に基づいて温度生成部41Aを制御する。この処理は、
図2のステップS30、
図3及び
図7のステップS31、
図9のステップS33のいずれかと等価な処理である。
【0071】
ステップS200において、送受信装置300Bの温度検出部61Bは、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する。この処理は、
図2のステップS40、
図3、
図7、或いは、
図9のステップS41のいずれかと等価な処理である。
【0072】
ステップS210において、送受信装置300Bの情報復元部71Bは、送受信装置300Aが送信する情報を復元する。この処理は、
図2のステップS50、
図3のステップS51、
図7のステップS52、或いは、
図9のステップS53のいずれかと等価な処理である。
【0073】
ステップS210において情報の復元に成功すると、ステップS220において、送受信装置300Bの情報変換部21Bは、受領確認を表す情報を生成する。ステップS230において、情報変換部21Bは、受領確認を表す情報を第4離散値に変換する。離散値への変換処理は、
図2のステップS20、
図3のステップS21、
図7のステップS22、或いは、
図9のステップS23〜S26のいずれかと等価である。
【0074】
ステップS240において、送受信装置300Bの制御部31Bは、第4離散値に基づいて温度生成部41Bを制御する。この処理は、
図2のステップS30、
図3及び
図7のステップS31、
図9のステップS33のいずれかと等価な処理である。
【0075】
ステップS300において、送受信装置300Aの温度検出部61Aは、所定の範囲内の温度を有する場所又は所定の範囲内の温度を有する領域が存在する時間の少なくとも一方を検出する。この処理は、
図2のステップS40、
図3、
図7、或いは、
図9のステップS41のいずれかと等価な処理である。
【0076】
ステップS310において、送受信装置300Aの情報復元部71Aは、送受信装置300Bが送信した受領確認を表す情報を復元する。この処理は、
図2のステップS50、
図3のステップS51、
図7のステップS52、或いは、
図9のステップS53のいずれかと等価な処理である。
【0077】
ステップS240の後、ステップS250において、送受信装置300Bの出力部81Bは、情報復元部71Bが復元した情報を、情報受信者が理解できるように出力する。この処理は、
図2、
図3、
図7、
図9のステップS60と等価な処理である。なお、
図12では、ステップS250は、ステップS240の後である場合を図示しているが、ステップS250の処理は、ステップS210の後であれば、いかなるタイミングで行われてもよい。
【0078】
[特徴]
本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る情報通信システムの特徴は、以下の通りである。
【0079】
(1)情報通信システム1、2では、送信装置100(または、送受信装置300A,B)が送信する情報を、温度情報に変化させて伝達させる。温度情報は、温度検出部60(61A,B)が検出できる比較的近距離までしか伝達しない。よって、無線などの他の伝達媒体に比べて秘匿性が高い。
【0080】
(2)温度情報を伝達するため、温度生成部40(41A,B)を覆う遮蔽物を設けても遮蔽物を通じて、情報を伝達できる。また、温度情報のため、人間の目にも視認されない。よって、情報発信者の位置が特定されない、秘匿性の高い情報伝達を実現することができる。
【0081】
(3)制御部30(31A,B)によって、低温の温度を出力させるように温度生成部40(41A,B)を制御すれば、伝達される温度情報を屋外の周辺環境の温度の中にまぎれさせることができる。その結果、屋外において、さらに秘匿性の高い情報伝達を実現することができる。
【0082】
(4)送信装置100(または、送受信装置300A,B)は、特定の場所に位置する温度生成部40(41A,B)を所定の温度となるように制御し、受信装置200(または、送受信装置300A,B)は、特定の場所に関する情報に基づいて、射影変換等によって温度分布画像から正規化画像に変換する。したがって、温度生成部40と温度検出部60が正対していなくても情報を伝達することができる。
【0083】
(5)送信装置100(または、送受信装置300A,B)は、モールス信号、QRコード、図形や文字など多様な方法で情報を伝達することができる。
【0084】
(6)送受信装置300A,Bは、他方の送受信装置から伝達された情報の復元に成功すると、受領確認を表す情報を、他方の送受信装置に伝達する。したがって、情報を送信した送受信装置は、相手の送受信装置に情報が伝達されたかどうか確認することができる。
【0085】
[変形例]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0086】
上述の実施形態では、1対1の通信を例示したが、1対多の通信に適用されてもよい。すなわち、1つの送信装置100の温度生成部40が生成する温度を、複数の受信装置200の温度検出部60が検出してもよい。
【0087】
温度生成部40(41A,B)は、ペルチェ素子以外の熱電素子であってもよい。また、熱電素子が発する熱によって生じる赤外線が暗視カメラによっても検出できる場合、温度検出部60(61A,B)として、暗視カメラが利用されてもよい。
【0088】
情報復元部70(71A,B)は、QRコードの処理において周知の誤り訂正機能を有してもよい。
【0089】
送受信装置300A,Bは、情報復元部71A,Bにおいて、他方の送受信装置から伝達された情報の復元に失敗した場合、復元に失敗した情報を、他方の送受信装置に伝達してもよい。
【0090】
温度検出部60(61A,B)は、送信装置100(または、送受信装置300A,B)の位置や向きを無線や可視光などで検出して、その位置や向きに応じてズーム・パン・チルトなどの制御を行ってもよい。また、一度、温度検出部60(61A,B)が温度生成部40(41A,B)に係る温度分布画像の取得に成功すると、以後の時間において温度生成部40(41A,B)が温度分布画像に撮影されるように、温度検出部60(61A,B)は、トラッキング等の制御を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、情報を伝達する相手を絞った秘匿性の高い情報伝達手段として有用である。
【符号の説明】
【0092】
1、2 情報通信システム
20、21A、21B 情報変換部
30、31A、31B 制御部
40、41A、41B 温度生成部
60、61A、61B 温度検出部
70、71A、71B 情報復元部
100 送信装置
200 受信装置
300A、300B 送受信装置