特許第6091275号(P6091275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091275曲げ加工中の金属管の管厚を測定する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091275
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】曲げ加工中の金属管の管厚を測定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 17/02 20060101AFI20170227BHJP
   G01N 29/07 20060101ALI20170227BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20170227BHJP
   B21D 7/16 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   G01B17/02 B
   G01N29/07
   B21C51/00 K
   B21D7/16
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-57588(P2013-57588)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-182048(P2014-182048A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599123393
【氏名又は名称】東亜非破壊検査株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(72)【発明者】
【氏名】松原 洋一
(72)【発明者】
【氏名】井手 茂
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−158251(JP,U)
【文献】 実開昭51−148964(JP,U)
【文献】 特開昭61−219810(JP,A)
【文献】 特開2007−212406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 17/00−17/08
G01N 29/00−29/52
B21D 5/00− 9/18
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げようとする金属管を、長手方向の狭幅領域を加熱冷却する加熱冷却装置に通して、加工先端側を回転可能な曲げアームにクランプし、該金属管を該加熱冷却装置で加熱しながら、長手方向に推進することにより加熱部に曲げモーメントを作用させて変形させ、その直後の部分を冷却する金属管の曲げ加工方法に於いて、該冷却部分の冷却水と該金属管の接触点である水冷線の近傍に、金属管の管厚を測定する装置の超音波厚さ計のプローブを収納したケースを、該金属管の曲げ中心に垂直方向に移動できるように配設し、該ケースを必要に応じて、駆動装置を駆動して該金属管の背面に押し付け、該プローブと該金属管の表面との間に予め設定した隙間を形成して、該隙間を該冷却水が通過できるようにして、該冷却水を接触媒質として利用して該金属管の管厚を測定することを特徴とする曲げ加工中の金属管の管厚を測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工中の金属管の管厚を測定する方法及び装置に関するもので、特に、オンラインで金属管の背面の管厚を測定する方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラント、ゴミ処理プラント等エネルギープラントの建設が積極的に行われ、各種流体を搬送するパイプとして、直管を曲げ加工した曲げ管を含む金属管が多く使用されるようになり、この事から曲げ管の製造技術は、減肉率を抑制する技術が開発される等日進月歩している。
【0003】
一方、曲げ管の品質を保証する金属管の背面の管厚を測定する技術は、曲げ管を曲げ機から検査定盤に載せかえて、決められた測定点にチョーク等を使用してプロットし、その測定点に超音波厚さ計を用いて検査員が手動で測定してデータを検査表に記載しる方法が取られている。特許文献1に記載された発明には、小口径の配管のベンド部に対して容易にしかも短時間で非破壊検査を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−212406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された非破壊検査冶具及び超音波非破壊検査装置の発明には、当該特許文献1の図9において、ベンド部の両端部を固定して、探触子をベンド部の背側の外周面の長手方向に摺動走査させて全領域について非破壊検査を行うことが示されている。これらは曲げ管をオフラインで手動又は自動で測定する方法であるため、曲げ途中でのオンラインで曲げ管の背側の肉厚を測定することができない。
本願発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、曲げ加工中の金属管の背面の管厚の測定をオンライン化することで検査作業の高効率化をはかり、又、取り扱いが簡単で、かつ安価な曲げ加工中の金属管の背面の管厚を測定する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題に関して鋭意研究を行った結果、下記の知見を得た。
すなわち、金属管の加熱部に曲げモーメントを作用させて変形させ、その直後の部分を冷却する金属管の曲げ加工方法に於いて、該冷却部分の冷却水と該金属管の接触点である水冷線の近傍に金属管の管厚を測定する装置の超音波厚さ計のプローブを収納したケースを、該金属管の曲げ中心oに垂直方向に移動できるように配設し、該ケースを必要に応じて駆動装置を駆動して該金属管の背面に押し付け、該プローブと該金属管の表面との間に予め設定した隙間を形成して、該隙間を該冷却水が通過できるようにすることで、該冷却水を接触媒質として利用して該金属管の背面の管厚を測定することが出来ることを見出した。
【0007】
本願請求項1の発明は、以上の知見を基になされたものである。
【0008】
本願請求項1の発明を実施するための金属管の管厚を測定する装置は下記の構成からなる。
すなわち、曲げ加工中の金属管の冷却部分の冷却水と該金属管の接触点である水冷線の近傍の管厚を測定するためのプローブと、該プローブを収納したケースと、該プローブと該金属管の表面との隙間を調整した後ロックするセットボルトと、該プローブと該金属管の表面との該隙間を一定に確保するため該ケースに取付けたローラと、該ケースと該金属管の表面との距離を駆動して可変する駆動装置を備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項1の発明の基本的な測定原理を説明する。
図1は、本発明の基本的な原理を説明する図であり、図2の正面図のA−Aから下側を拡大した図で、曲げ加工中の金属管の曲げ部の背面に管厚を測定する装置を押し付けた状態を示す図である。
曲げ加工中の金属管の曲げ部の背面の管厚を測定するため、金属管の管厚を測定する装置100のプローブ101を収納したケース103を、駆動装置102を用いて金属管の曲げ中心o方向に駆動して、冷却部分の冷却水8と金属管2の接触点である水冷線の近傍にセットした状態を示す図であり、この時、プローブ101と金属管2の表面との間に適宜の隙間gが保たれるようにセットボルト105を用いて予め調整しておき、この隙間gを通過する冷却水8をハッチィングで示すように接触媒質として利用するようにしている。
又、プローブ101と金属管2の表面との隙間gを一定に保つため、駆動装置102を用いて、ローラ104が金属管2の表面に接触するまで押し付けている。
【0010】
なお、駆動装置は、エアーシリンダー、油圧シリンダー、電動モータ等を意味し、本図はエアーシリンダーの場合である。
又、駆動装置にはケースの回り止め機能が付いている(図示せず)。
【0011】
図2は、金属管の管厚を測定する装置100を示し、金属管の曲げ中心o方向に駆動するように配設する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、金属管の管厚を測定する方法及び装置を用いることで、曲げ加工中の金属管の背面の管厚の測定をオンライン化でき、生産性の向上に寄与することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の基本的な原理を説明する図であり、図2の正面図のA−Aから下側を拡大した図である。
図2図2は、金属管の管厚を測定する装置を示す。
図3図3は、本発明請求項1の本発明を実施するための説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願請求項1を実施するための形態
実施の形態1
図3に、本願請求項1の本発明を実施するための説明図を示す。
図3の(A)は、曲げ待機中の曲げ機と金属管の管厚を測定する装置100の関係位置を示す図。
図3の(B)は、曲げ加工中の図で、金属管2の背面に、金属管の管厚を測定する装置100のプローブ101を収納したケース103を、駆動装置102を用いて金属管の曲げ中心o方向に駆動して冷却部分の冷却水8と金属管2の接触点である水冷線の近傍にローラ104が接触するまで押し付けた状態を示す図である。
この時には、予めプローブ101と金属管2の表面との間に適宜の隙間gが保たれるように調整されており、この隙間gを通過する冷却水8を接触媒質として利用するようにしている。
金属管の管厚の測定値は厚さ変換器6の出力信号tと、アームの旋回角度検出器5の出力信号θと共に記録計9に送られ記録される。
金属管の管厚の測定値tは、旋回角度θをパラメータとして、任意に設定した旋回角度ピッチでオンラインで記録計9に記録される。
【0015】
尚、管厚を測定する装置を用いてオンラインで測定するのにあたり、金属管と同じ材料の厚さ10、8、6mmの校正用試験片を用意し、プローブと校正用試験片の表面の隙間を0.5mm以内に設定してこの隙間に水を流しながら校正を行い、オンライン測定時の金属管の温度を考慮して管厚を薄めに表示するように設定した。
又、測定予定の金属管と同一曲げ半径の曲げ管のサンプルを用いて、プローブと金属管の表面の隙間gを0.5mm以内に設定した。
【0016】
実施例1
実際の曲げ加工に適用した時の実施例について述べる。
図3に示す装置構成で、鉄鋼材料のSTPG38、寸法は、外径165.2mm、管厚9.3mm、曲げ半径Rは800mm、曲げ角度90°、曲げ部の加熱温度は950℃で曲げ加工したときの金属管背面の管厚は、管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した場合と、検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した場合を比較すると下記の通りであった。
尚、曲げ加工中の金属管の管厚の測定は、この曲げにより金属管の背面の管厚が約10%減肉すると予想されたので、金属管の背面の管厚は8.5mm程度になるものと推定し、8mmの校正用試験片を用いて校正した後に、曲げ始めの直管と曲管の境界部から10°、25°、45°、65°、80°の5箇所の背面管厚を、金属管の管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した。
加工後の金属管の管厚の測定は、検査定盤上でオンライン測定と同じく、曲げ始めの直管と曲管の境界部から10°、25°、45°、65°、80°の5箇所の背面管厚を検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した。
比較データを表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
結果
以上の結果より、管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した場合と、検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した場合では、オンラインで測定した方が薄く表示されてはいるが、大差ないことを確認することが出来た。
【0019】
実施例2
実施例1と同じ金属管で異なる曲げ半径に適用した時の実施例について述べる。
図3に示す装置構成で、鉄鋼材料のSTPG38、寸法は、外径165.2mm、管厚9.3mm、曲げ半径Rは400mm、曲げ角度90°、曲げ部の加熱温度は950℃で曲げ加工したときの金属管背面の管厚は管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した場合と、検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した場合を比較すると下記の通りであった。
尚、曲げ加工中の金属管の管厚の測定は、この曲げにより金属管の背面の管厚が約15%減肉すると予想されたので、金属管の背面の管厚は8mm程度になるものと推定し、8mmの校正用試験片を用いて校正した後に、曲げ始めの直管と曲管の境界部から10°、25°、45°、65°、80°の5箇所の背面管厚を、金属管の管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した。
加工後の金属管の管厚の測定は、検査定盤上でオンライン測定と同じく、曲げ始めの直管と曲管の境界部から10°、25°、45°、65°、80°の5箇所の背面管厚を検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した。
比較データを表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
結果
以上の結果より、管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した場合と、検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した場合では、オンラインで測定した方が薄く表示されてはいるが、大差ないことを確認することが出来た。
【0022】
実施例3
実際の曲げ加工で異なる金属管の外径及び曲げ半径に適用した時の実施例について述べる。
図3に示す装置構成で、鉄鋼材料のSTPG38、寸法は、外径139.8mm、管厚7.1mm、曲げ半径Rは600mm、曲げ角度90°、曲げ部の加熱温度は950℃で曲げ加工したときの金属管背面の管厚は管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した場合と、検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した場合を比較すると下記の通りであった。
尚、曲げ加工中の金属管の管厚の測定は、この曲げにより金属管の背面の管厚が約10%減肉すると予想されたので、金属管の背面の管厚は6.5mm程度になるものと推定し、6mmの校正用試験片を用いて校正した後に、曲げ始めの直管と曲管の境界部から10°、25°、45°、65°、80°の5箇所の背面管厚を金属管の管厚を、測定する装置100を用いてオンラインで測定した。
加工後の金属管の管厚の測定は、検査定盤上でオンライン測定と同じく、曲げ始めの直管と曲管の境界部から10°、25°、45°、65°、80°の5箇所の背面管厚を検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した。
比較データを表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
結果
以上の結果より、管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した場合と、検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した場合では、オンラインで測定した方が薄く表示されてはいるが、大差ないことを確認することが出来た。
【0025】
実施例4
実施例3と同じ金属管で異なる曲げ半径に適用した時の実施例について述べる。
図3に示す装置構成で、鉄鋼材料のSTPG38、寸法は、外径139.8mm、管厚7.1mm、曲げ半径Rは300mm、曲げ角度90°、曲げ部の加熱温度は950℃で曲げ加工したときの金属管背面の管厚は管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した場合と、検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した場合を比較すると下記の通りであった。
尚、曲げ加工中の金属管の管厚の測定は、この曲げにより金属管の背面の管厚が約20%減肉すると予想されたので、金属管の背面の管厚は6mm程度になるものと推定し、6mmの校正用試験片を用いて校正した後に、曲げ始めの直管と曲管の境界部から10°、25°、45°、65°、80°の5箇所の背面管厚を、金属管の管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した。
加工後の金属管の管厚の測定は、検査定盤上でオンライン測定と同じく、曲げ始めの直管と曲管の境界部から10°、25°、45°、65°、80°の5箇所の背面管厚を検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した。
比較データを表4に示す。
【0026】
【表4】
【0027】
結果
以上の結果より、管厚を測定する装置100を用いてオンラインで測定した場合と、検査員が手動で超音波厚さ計を用いて測定した場合では、オンラインで測定した方が薄く表示されてはいるが、大差ないことを確認することが出来た。
【符号の説明】
【0028】
1 金属管
2 金属管の曲げられた部分
3 曲げアーム
4 旋回軸
5 旋回角度検出器
6 厚さ変換器
7 加熱冷却コイル
8 冷却水
9 記録計
100 金属管の管厚を測定する装置
101 プローブ
102 エアーシリンダー
103 ケース
104 ローラ
105 セットボルト
V 金属管の進行方向
R 曲げ半径
o 曲げ中心
t 厚さ信号
θ 角度信号
g 金属管表面とプローブとの隙間
図1
図2
図3